説明

裁ち屑巻取装置

【課題】裁ち屑を破断しないように、かつ凹凸量が小さく適正な巻固さの巻取ロールとして巻取ることができる、構造が比較的簡素で占有空間が小さい裁ち屑巻取装置を得る。
【解決手段】固定ガイド8から巻枠7上の巻取ロールRtまでの裁ち屑Tの走行経路長さを、綾振りガイド9による裁ち屑Tの往復移動に関係なく略一定になるように補償するための補償ローラ10を備える。補償ローラ10の外周部を、固定ガイド8から綾振りガイド9までの裁ち屑Tの走行経路が最短になるときの当該補償ローラ10の裁ち屑Tとの係合箇所における外径を最大とし、その外径最大箇所から当該補償ローラ10の裁ち屑Tとの係合箇所が遠ざかるにつれ、固定ガイド8から綾振りガイド9までの裁ち屑Tの走行経路長さの増加分だけ綾振りガイド9から巻取ロールRtまでの裁ち屑Tの走行経路長さが減少するように当該補償ローラ10の裁ち屑Tとの係合箇所の外径を漸減させて形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルム、紙、金属箔等の帯状シートを複数の所要幅の帯状シートに分割するスリッターから出てくる帯状シートの裁ち屑を、回転駆動される巻枠の胴部のまわりに該胴部の幅方向に往復移動しながら巻取る裁ち屑巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スリッターは、帯状シートの走行経路上の所定位置に帯状シート幅方向に一列に配置した複数の切断刃を有しており、走行してくる帯状シートを各切断刃により夫々帯状シート長手方向に切断することができ、例えば、原反ロールから広幅の帯状シートを巻戻しながら複数の所要幅の帯状シートに分割して巻取るシート分割巻取装置に備えられる。シート分割巻取装置においてスリッターにより広幅の帯状シートを複数の所要幅の帯状シートに分割する際、広幅の帯状シートの両縁部をスリッターの切断刃により化粧裁ちするのが普通であり、この化粧裁ちされた縁部は裁ち屑となってスリッターから走り出る。そして、この裁ち屑を帯状シートの走行経路から排出しないとスリッターや帯状シートの案内ローラ等に絡まって帯状シートの分割や、分割された帯状シートの走行に支障をきたすことになるので、シート分割巻取装置には帯状シート走行経路の側方に裁ち屑巻取装置が付設してあり、この裁ち屑巻取装置により、スリッターから出てくる裁ち屑を、弛まないようかつ破断しないように巻枠に巻取る。その際、裁ち屑を巻枠の幅方向に往復移動させるので、スリッターから巻枠までの裁ち屑の走行経路長さが変化し、その走行経路長さの変化が裁ち屑の張力を変動させる原因になる。そして帯状シートの裁ち屑は幅が狭く破断し易いため、その裁ち屑に作用する張力の変動を極力小さく抑えることが必要である。
【0003】
従来、裁ち屑巻取装置としては、下記特許文献1に開示されるように、裁ち屑を巻取可能であって、巻取トルク調整装置を備える回転駆動機構により駆動される巻枠と、上記巻枠の両鍔間の幅一ぱいに入り込み、巻枠に巻いた裁ち屑を抑えつつ、その上に新しい裁ち屑を送り込むタッチローラと、裁ち屑の走行路に所要の力で付勢されて設けられ、走行中の裁ち屑に所要の張力を与えるダンサーローラと、上記ダンサーローラの変位信号により、前記タッチローラを、その周速が裁ち屑供給速度に等しくなるよう駆動する駆動機構とを備え、裁ち屑の巻取張力の変動を抑えながら巻取ることができるようにしたものがある。この裁ち屑巻取装置は、裁ち屑の幅が比較的広くなる大型のシート分割巻取装置には有効であるが、ダンサーローラや、タッチローラ並びにその駆動機構等を備えるので、構造が複雑で占有空間が大きく高価なものになり、小型のシート分割巻取装置用の裁ち屑巻取装置として殆ど使用されていない。
【0004】
従来の小型のシート分割巻取装置用の裁ち屑巻取装置としては、タッチローラを備えず、ダンサーローラと、このダンサーローラの下流に配置した、巻枠幅方向に往復運動可能なガイドとを備えたものが提案されている(例えば下記特許文献2参照)。しかし、この裁ち屑巻取装置では、それが巻取る裁ち屑は、小型のシート分割巻取装置のスリッターから出てくるものであるので、一般に大型のものに比べて幅が狭く破断し易い。またダンサーローラは、裁ち屑の巻取中、ガイドの往復運動により、スリッターから巻枠までの裁ち屑の走行経路長さが絶え間なく変化するので、その変化が裁ち屑の張力に影響を及ぼさないようにするためのものであり、裁ち屑の走行経路の長さの変化に追従して変位しなければならないが、このダンサーローラ自体の慣性等に起因して的確な変位が得られず、特に幅が狭く破断し易い裁ち屑に対してその裁ち屑の伸びや弛みを十分に抑制することができない。そのため、巻取中の裁ち屑が破断したり、或いは裁ち屑が弛んで案内ローラに絡まったりし易く、また裁ち屑の巻取ロールの巻固さのムラや、巻取ロール外周面の凹凸が大きくなり易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭63−20662号公報
【特許文献2】特開2000−289899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、裁ち屑を破断しないように、かつ凹凸量が小さく適正な巻固さの巻取ロールとして巻取ることができる、構造が比較的簡素で占有空間が小さい裁ち屑巻取装置を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スリッターから出てくる帯状シートの裁ち屑を、回転駆動される巻枠の胴部のまわりに該胴部の幅方向に往復移動しながら巻取る裁ち屑巻取装置において、前記巻枠の胴部に面すると共に該胴部から一定距離をおく所定位置に前記裁ち屑を導く固定ガイドと、前記固定ガイドから前記巻枠へ向かう裁ち屑を巻枠の胴部の幅方向に往復移動する綾振りガイドと、前記綾振りガイドにより往復移動している裁ち屑を前記巻枠へ案内すると共に、前記固定ガイドから前記巻枠の胴部のまわりに形成される巻取ロールまでの裁ち屑の走行経路長さが前記綾振りガイドによる裁ち屑の往復移動に関係なく略一定になるように補償するための、前記巻枠の回転中心軸線に平行な軸線を中心に回転可能に設けた補償ローラとを備え、前記補償ローラの外周部を、前記綾振りガイドによる裁ち屑の往復移動中に前記固定ガイドから前記綾振りガイドまでの裁ち屑の走行経路が最短になるときの当該補償ローラの前記裁ち屑との係合箇所における外径を最大とし、当該補償ローラの外径を最大とした箇所から当該補償ローラの前記裁ち屑との係合箇所が遠ざかるにつれ、前記固定ガイドから前記綾振りガイドまでの裁ち屑の走行経路長さの増加分だけ前記綾振りガイドから前記巻枠上の巻取ロールまでの裁ち屑の走行経路長さが減少するように当該補償ローラの前記裁ち屑との係合箇所の外径を漸減させて形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明よれば、綾振りガイドにより往復移動している裁ち屑を巻枠へ案内する補償ローラを、巻枠の回転中心軸線に平行な軸線を中心に回転可能に設け、補償ローラの外周部を、綾振りガイドによる裁ち屑の往復移動中に固定ガイドから綾振りガイドまでの裁ち屑の走行経路が最短になるときの当該補償ローラの裁ち屑との係合箇所における外径を最大とし、当該補償ローラの外径を最大とした箇所から当該補償ローラの裁ち屑との係合箇所が遠ざかるにつれ、固定ガイドから綾振りガイドまでの裁ち屑の走行経路長さの増加分だけ綾振りガイドから巻枠上の巻取ロールまでの裁ち屑の走行経路長さが減少するように当該補償ローラの裁ち屑との係合箇所の外径を漸減させて形成したことにより、巻取中に綾振りガイドが裁ち屑を往復移動しても、固定ガイドから巻枠上の巻取ロールまでの裁ち屑の走行経路長さを常に略一定に維持することができ、しかも補償ローラが回転するため裁ち屑が補償ローラ上をその幅方向に僅かな力で円滑に移動することができ、補償ローラから裁ち屑が受ける往復移動方向の抵抗を小さく抑えることができる。それゆえ、巻枠上へ供給される裁ち屑の張力変動を小さくすることができ、それによって巻取中の裁ち屑の破断を防ぐことができ、巻固さのムラが少なく巻取ロール外周部の凹凸が比較的小さい巻取ロールを巻枠上に形成することができる。しかも比較的構造が簡素で占有空間が小さい裁ち屑巻取装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る裁ち屑巻取装置を備えるシート分割巻取装置の説明図である。
【図2】図2は本発明の一実施例に係る裁ち屑巻取装置の正面図である。
【図3】図3は図2におけるA−A矢視断面図である。
【図4】図4は裁ち屑の往復運動に伴う補償ローラと裁ち屑との係合箇所の変化を説明するための、補償ローラの正面図である。
【図5】図5は、補償ローラの裁ち屑との係合箇所とその外径との関係を説明するための、補償ローラの横断面図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施例に係る綾振りガイドの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明の一実施例に係る裁ち屑巻取装置を備えるシート分割巻取装置の説明図、図2は図1に示す裁ち屑巻取装置の正面図、図3は図2におけるA−A矢視断面図である。裁ち屑巻取装置1はシート分割巻取装置2の機側に付設してあり、シート分割巻取装置2は、広幅の帯状シートS0を原反ロールR0から巻戻しながらスリッター3により複数の所要幅の帯状シートSに分割し、その分割した帯状シートSを巻軸4のまわりにロール状に巻取る。
【0011】
スリッター3は、広幅の帯状シートS0の幅方向に一列に配置した複数個の切断刃3aを備えており、各切断刃3aは夫々走行してくる広幅の帯状シートS0をその長手方向に切断することができ、図1に示す実施例では3個の切断刃3aが備えてあり、広幅の帯状シートS0をその両縁部を化粧裁ちすると共に、その化粧裁ちした残りの部分を二つの所要幅の帯状シートSに分割する。
【0012】
化粧裁ちされた広幅のシートS0の両縁部は夫々裁ち屑Tとなり、この裁ち屑Tは、帯状シートSの走行速度と同じ速度でスリッター3から走り出るので、帯状シートSの走行に障害にならないよう帯状シートSの走行経路の側方へと導かれ、裁ち屑巻取装置1により巻取られる。
【0013】
この実施例の場合、広幅のシートS0の両縁部の裁ち屑Tは夫々両側に鍔をもつ案内ローラ5、6により裁ち屑巻取装置1へ案内され、各裁ち屑Tは夫々に共通の巻枠7に巻取られる。なお、必要に応じて裁ち屑T毎に裁ち屑巻取装置を備え、各裁ち屑Tを個別に巻取るようにしてもよい。
【0014】
裁ち屑巻取装置1は、裁ち屑Tを、回転駆動される巻枠7の胴部7aのまわりに該胴部7aの幅方向(図1では紙面の左右方向)に往復移動しながら巻取るものであり、裁ち屑Tを、巻枠7の胴部7aに面すると共に該胴部7aから一定距離をおく所定位置に導く固定ガイド8と、固定ガイド8から巻枠7へ向かう裁ち屑Tを巻枠7の胴部7aの幅方向に往復移動する綾振りガイド9と、綾振りガイド9により往復移動している裁ち屑Tを巻枠7へ案内するための、巻枠7の回転中心軸線に平行な軸線を中心に回転可能に設けた補償ローラ10とを備える。
【0015】
綾振りガイド9は、巻枠7の回転中心軸線に平行に固設した案内軸11に沿って往復運動する移動体12に装着してある。そして移動体12は、フレーム13に回転可能に装着した、案内軸11に平行な円筒カム14によって貫通されており、その円筒カム14のカム溝に係合している。円筒カム14は可変速モータ15により、駆動軸16、プーリ17、ベルト18、プーリ19を介して回転駆動することができるようになっている。また綾振りガイド9は、この実施例では裁ち屑Tの往復移動方向と交差する軸線を中心に回転自在に設けた一対のガイドローラ20からなる。一対のガイドローラ20は互いに接近しており、その相互間を通る裁ち屑Tを案内する。したがって一対のガイドローラ10は、可変速モータ15により円筒カム14を回転駆動することにより巻枠7の回転中心軸線に平行に往復運動することができる。ガイドローラ20の一端部は巻枠7の回転中心軸線に平行に片持ち支持した支持軸21に装着してあり、支持軸21を中心に回動させて固定することができるようにしてあるので、ガイドローラ20は支持軸21を中心に傾けて姿勢を変えることができる。
【0016】
巻枠7は、胴部7aとその両側に設けた円形状の側板7b、7cとからなり、胴部7aの支持軸22をフレーム13により回転可能に片持ち支持することにより回転可能に設けてある。この支持軸22の左端部はパウダークラッチ23の出力軸に結合してあり、パウダークラッチ23の、出力軸により貫通されている入力軸に設けたプーリ24と、駆動軸に固着したプーリ25とにベルト26が掛けてあるので、モータ15の回転力をパウダークラッチ23により所要回転力に調節して巻枠7に伝達することができ、それによって巻枠7に所要の巻取トルクを付与し、裁ち屑Tの巻取張力を調節することができる。
【0017】
固定ガイド8は、両端に鍔を有する案内ローラからなり、シート分割巻取装置2の機枠27から伸びた腕28の先端に装着した中心軸29に回転自在に設けてある。また固定ガイド8は、図2に示すように当該固定ガイド8から綾振りガイド9への裁ち屑Tの走行経路が、巻枠7の胴部7aの幅方向の中央付近で巻枠7の胴部7aと垂直に交差するように配置してある。
【0018】
案内ローラ6から裁ち屑巻取装置1へ供給された裁ち屑Tは、固定ガイド8、綾振りガイド9、補償ローラ10を経て巻枠7の胴部7aのまわりに巻取られる。裁ち屑Tの巻取中に綾振りガイド9は巻枠7の回転中心軸線に平行に往復運動するので、綾振りガイド9を通過する裁ち屑Tは、巻枠7の胴部7aの幅方向に往復移動し、裁ち屑Tの、巻枠7の胴部7aへの巻取位置が幅方向に時々刻々変わると共に、裁ち屑Tが補償ローラ10上を通過する位置も補償ローラ10の長手中心軸線方向に時々刻々変わる。
【0019】
図4に示すように補償ローラ10は、この実施例では中心軸10aと、この中心軸10aの所定位置にベアリング10bにより回転自在に支持された胴部10cとからなり、胴部10cにより、走行する裁ち屑Tを支えて案内する。つまり胴部10cは補償ローラ10の外周部となっている。
【0020】
図4において、固定ガイド8上の点P8から綾振りガイド9のガイドローラ20上の点P9までの裁ち屑Tの長さを、固定ガイド8かに綾振りガイド9までの裁ち屑Tの走行経路の長さとすると、固定ガイド8から綾振りガイド9までの裁ち屑Tの走行経路が、一点鎖線で示すように補償ローラ10の長手中心軸線と直角になるとき、固定ガイド8から綾振りガイド9までの裁ち屑Tの走行経路が最短になる。このとき、一点鎖線で示すガイドローラ20を通過した裁ち屑Tは補償ローラ10上の点P0を通って巻枠7へ走行する。綾振りガイド9が一点鎖線で示す位置から実線で示す位置へ移動すると、裁ち屑Tが補償ローラ10上の点Pxを通り、固定ガイド8から綾振りガイド9までの裁ち屑Tの走行経路が実線で示すように傾く。裁ち屑Tが点P0を通るときの補償ローラ10の裁ち屑Tとの係合箇所をP0とし、裁ち屑Tが点Pxを通るときの補償ローラ10の裁ち屑Tとの係合箇所をPxとすると、補償ローラ10の裁ち屑Tとの係合箇所Pxが、係合箇所P0から遠ざかるにつれ、固定ガイド8から綾振りガイド9までの裁ち屑Tの走行経路の長さが増加する。また二点鎖線で示す裁ち屑Tの走行経路は、綾振りガイド9が一点鎖線で示す位置から最も遠くに移動したときとの裁ち屑Tの走行経路であり、このとき裁ち屑Tは、補償ローラ10上の点P1を通る。点P8、点P9は、固定ガイド8、ガイドローラ20上の、綾振りガイド9が往復運動しても裁ち屑Tの走行経路が変化しない箇所を選んで設定している。
【0021】
図4の円C0、Cxは、係合箇所P0、Pxにおける補償ローラ10の横断面の円周を示し、図5の(A)は、図4の係合箇所P0における補償ローラ10の横断面を示し、図5の(B)は、図4の係合箇所Pxにおける補償ローラ10の横断面を示す。また図4の点P9は、図5の点P9に対応しており、図5において裁ち屑Tは、点P9から点Pa、Pbを経て巻取ロールRt上の点Prに至る。点Paは点P9から補償ローラ10へ向かう裁ち屑Tと補償ローラ10との接点、点Pbは、補償ローラ10から巻取ロールRtへ向かう裁ち屑Tの、補償ローラ10との接点、点Prは、巻取ロールRtへ向かう裁ち屑Tと巻取ロールRtとの接点である。
【0022】
補償ローラ10は、固定ガイド8から巻枠7の胴部7aのまわりに形成される巻取ロールRtまでの裁ち屑Tの走行経路長さが、綾振りガイド9による裁ち屑の往復移動に関係なく略一定になるように補償するものであり、補償ローラ10の外周部は、綾振りガイド9による裁ち屑Tの往復移動中に固定ガイド8から綾振りガイド9までの裁ち屑Tの走行経路が最短になるときの当該補償ローラ10の裁ち屑Tとの係合箇所P0における外径を最大とし、当該補償ローラ10の外径を最大とした箇所P0から当該補償ローラ10の裁ち屑Tとの係合箇所Pxが遠ざかるにつれ、固定ガイド8から綾振りガイド9までの裁ち屑Tの走行経路長さの増加分だけ綾振りガイド9から巻枠7上の巻取ロールRtまでの裁ち屑Tの走行経路長さが減少するように、当該補償ローラ10の裁ち屑Tとの係合箇所Pxの外径を漸減させて形成してある。
【0023】
なお、巻取中に巻枠7上の巻取ロールRtの外径が変化すると、綾振りガイド9による裁ち屑Tの往復移動の各位置について、綾振りガイド9から巻取ロールRtまでの裁ち屑Tの走行経路長さは夫々僅かに変化するので、固定ガイド8から綾振りガイド9までの裁ち屑Tの走行経路長さの増加分に対して、綾振りガイド9から巻枠7上の巻取ロールRtまでの裁ち屑Tの走行経路長さの減少分が変化し得る。そのため、固定ガイド8から綾振りガイド9までの裁ち屑Tの走行経路長さの増加分に応じて綾振りガイド9から巻枠7上の巻取ロールRtまでの裁ち屑Tの走行経路長さが減少するようにするには、厳密には、補償ローラの外周各部の外径を巻取中に変化させる必要があるが、この変化量は極めて小さく無視し得るので、この実施例では、綾振りガイド9から巻枠7上の巻取ロールRtまでの裁ち屑Tの走行経路長さは、図5に示すように一定の外径を有する巻取ロールRtに基づき、点P9と接点Paとの間の線分の長さと、点PaとPbとの間の円弧の長さと、接点Prと接点Pbとの間の線分の長さとの和として求めているが、必要に応じて、例えば、巻枠7の胴部7aの外径に基づき、接点PrとPbとの間の線分の代わりに、図5(A)に2点鎖線で示す線分の長さを用いて求めてもよいし、最大径のときの巻取ロールRtに基づき求めてもよい。
【0024】
係合箇所Pxにおける補償ローラ10の外径は、図4の固定ガイド8上の点P8から実線で示すガイドローラ20上の点P9までの裁ち屑Tの走行経路の長さと、点P8から一点鎖線で示すガイドローラ20上の点P9までの裁ち屑Tの走行経路の長さとの差を求めて、その差を裁ち屑Tの走行経路長さの増加分とし、その増加分を、図5(A)における点P9、Pa間の線分の長さと、点Pa、Pb間の円弧の長さと、点Pb、Pt間の線分の長さの和から差し引いた長さが、図5(B)における点P9、Pa間の線分の長さと、点Pa、Pb間の円弧の長さと、点Pb、Pt間の線分の長さの和に等しくなるように求める。
【0025】
補償ローラ10の外周各部の外径は、図4に示すように点P0から点Pxまでの距離xを独立変数とし、点Pxにおける補償ローラ10の外径yを従属変数とする関数を求め、この関数に基づいて求めるのが望ましい。また補償ローラ10上に裁ち屑Tとの係合箇所Pxをいくつか設定し、この設定した各係合箇所Pxについて補償ローラ10の外径(直径)を夫々求め、各係合箇所Pxおける外径に等しい長さの線分を、補償ローラ10の長手中心軸線上の点Pxにおいて、その線分の中点が、補償ローラ10の長手中心軸線と直交するように夫々描き、その線分の各先端を、滑らかな曲線となるようにつなぐことにより、補償ローラ10の各部分の外径を近似的に求めてもよい。この実施例では、図4に示すように固定ガイド8から綾振りガイド9までの距離が十分に長いので、補償ローラ10の外周部の左右の形状の差は無視することができるため、補償ローラ10の外周部は、係合箇所P0から右側の部分について、点P0、点P1及びその間に設定したいくつかの係合箇所Pxの外径を求め、これに基づき、係合箇所P0を中心に左右対称になるように形成してある。
【0026】
図6は、本発明の他の実施例に係る綾振りガイド9の側面図であり、綾振りガイド9は補償ローラ10の上流側の一対のガイドローラ20と、補償ローラ10の下流側の一対のガイドローラ30とからなる。上流側の一対のガイドローラ20は、図3に示す一対のガイドローラ20と同様に構成されている。下流側の一対のガイドローラ30は、補償ローラ10の上流側の一対のガイドローラ20と同様に移動体12上に装着してあり、かつ裁ち屑Tを案内することができる。更に、一対のガイドローラ20と一対のガイドローラ30とは、補償ローラ10の長手中心軸線に直角に交わる平面内に設定された裁ち屑Tの走行経路に沿って前後に並ぶと共にその裁ち屑Tの走行経路を各々挟むように配置してある。それによって、一対のガイドローラ20と一対のガイドローラ30とは同期して往復運動をすることができ、綾振りガイド9は、補償ローラ10の上流側の裁ち屑Tと下流側の裁ち屑Tとが互いに往復移動方向にずれて走行することがないように裁ち屑Tを往復移動することができる。それゆえ、この綾振りガイド9は、例えば裁ち屑の巻取ロールの中央部の外径が両端部の外径より大きくなって巻取不良になる場合に有効である。
【符号の説明】
【0027】
R0 原反ロール
Rt 裁ち屑の巻取ロール
1 裁ち屑巻取装置
2 シート分割巻取装置
3 スリッター
4 巻軸
7 巻枠
7a 胴部
8 固定ガイド
9 綾振りガイド
10 補償ローラ
11 案内軸
12 移動体
13 フレーム
14 円筒カム
15 モータ
16 駆動軸
18 ベルト
20 ガイドローラ
21 支持軸
23 パウダークラッチ
26 ベルト
27 機枠
30 ガイドローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリッターから出てくる帯状シートの裁ち屑を、回転駆動される巻枠の胴部のまわりに該胴部の幅方向に往復移動しながら巻取る裁ち屑巻取装置において、前記巻枠の胴部に面すると共に該胴部から一定距離をおく所定位置に前記裁ち屑を導く固定ガイドと、前記固定ガイドから前記巻枠へ向かう裁ち屑を巻枠の胴部の幅方向に往復移動する綾振りガイドと、前記綾振りガイドにより往復移動している裁ち屑を前記巻枠へ案内すると共に、前記固定ガイドから前記巻枠の胴部のまわりに形成される巻取ロールまでの裁ち屑の走行経路長さが前記綾振りガイドによる裁ち屑の往復移動に関係なく略一定になるように補償するための、前記巻枠の回転中心軸線に平行な軸線を中心に回転可能に設けた補償ローラとを備え、前記補償ローラの外周部を、前記綾振りガイドによる裁ち屑の往復移動中に前記固定ガイドから前記綾振りガイドまでの裁ち屑の走行経路が最短になるときの当該補償ローラの前記裁ち屑との係合箇所における外径を最大とし、当該補償ローラの外径を最大とした箇所から当該補償ローラの前記裁ち屑との係合箇所が遠ざかるにつれ、前記固定ガイドから前記綾振りガイドまでの裁ち屑の走行経路長さの増加分だけ前記綾振りガイドから前記巻枠上の巻取ロールまでの裁ち屑の走行経路長さが減少するように当該補償ローラの前記裁ち屑との係合箇所の外径を漸減させて形成したことを特徴とする裁ち屑巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−144304(P2012−144304A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1634(P2011−1634)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000154705)株式会社片岡機械製作所 (34)
【Fターム(参考)】