説明

裁断機の目打ち装置および方法

【課題】 抜き屑の処理を適切に行い、穿孔後のシート材料からの空気漏れも防止することが可能な裁断機の目打ち装置および方法を提供する。
【解決手段】 目打ち装置1は、中心軸線5aまわりに回転する中空円筒状の回転ドリル5を備えている。中空孔5bには、押出しピン6が設けられている。押出しピン6の上部6aは、回転ドリル5の柄部5dよりも上方まで延びる。押出しピン6の下端6cは、回転ドリル5の刃先5eよりも下方まで、相対的に下げることもできる。押出しピン6の昇降は、支持機構7によって支持され、フットプレッサー8と連動して行われる。駆動シリンダー9で押出しピン6をフットプレッサー8と連動して昇降するように駆動するので、処理を適切に行うように、抜き屑4bを回転ドリル5内から排出することができる。抜き屑4bを、穿孔後のシート材料4に残せば、空気漏れも防止することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層状態のシート材に穿孔する裁断機の目打ち装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、裁断機には、布帛や皮革などのシート材を複数積層した状態で、吸引して保持する裁断テーブルが備えられている。吸引保持されるシート材は、裁断テーブル上を平面移動する裁断ヘッドに備えられるナイフで裁断される。このような裁断機の裁断ヘッドに、穿孔装置を備えれば、目打ちも行うことができる。穿孔装置としては、中空円筒状の回転ドリルなどが使用される(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されているシート材料穿孔装置では、穿孔の際に、シート材料から切離される部分である抜き屑を、回転ドリルの中空孔としてのボアに入れる。穿孔後に回転ドリルをシート材料から引上げると、ボアに入れた抜き屑も回転ドリルとともにシート材料の表面から抜出される。ボア内部には、裁断ヘッドのベースフレームに固定されるストッパロッドが設けられる。ドリルを上昇させると、ボア内部でストッパロッドが相対的に下降し、ストッパロッドの下端で、抜き屑を押下げる。押下げられた抜き屑は、回転ドリルの下端の開口部から排出される。穿孔後の上昇で、抜き屑をストッパロッドがドリル外に排出するので、穿孔を繰返しても、抜き屑がドリル内部に詰ることを防止できる。抜き屑がドリル内部に詰ると、シート材料をドリルで貫通することができなくなる。また、抜き屑がシート材を吸引する裁断テーブル側に移行すると、表面を形成する剛毛ブラシなどを詰らせるおそれもある。剛毛ブラシが詰ると、通気性を損ねて清掃が必要となったり、ドリルやナイフに対する柔軟性を損ねて、穿孔時や切断時に損傷を招いたりするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平6−30880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の穿孔装置では、抜き屑を一旦ボア内部に入れてから、シート材料の表面上に固定されたストッパロッドの下端でドリルから押出す。このため、シート材料表面からストッパロッドの下端までの高さは、シート材料の積層厚さよりも高くしておく必要がある。また、穿孔後のドリルは、積層厚さ以上に上昇させる必要もあり、昇降のストロークが大きくなる。さらに、ストッパロッドでドリルから押出された抜き屑は、シート材料表面に散乱して、裁断時の生地押えの下に入るなどのおそれもある。抜き屑が生地押えの下に入ると、裁断精度に悪影響がでる。さらにまた、抜き屑をシート材料から完全に抜き出してしまうと、穿孔後のシート材料からは、吸引時に空気漏れが生じ、吸引力が低下するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、抜き屑の処理を適切に行い、穿孔後のシート材料からの空気漏れも防止することが可能な裁断機の目打ち装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、裁断テーブル上にシート材料を保持し、裁断テーブル上方を平面移動可能な裁断ヘッドに設けられるナイフでシート材料を裁断する裁断機で、裁断ヘッドにナイフとともに設けられ、裁断テーブルに対して昇降移動可能、かつ内部に抜き屑を収容可能な中空円筒状の回転ドリルで、シート材料を表面からフットプレッサーで押えながら穿孔し、回転ドリル内部には、抜き屑排出用の押出しピンを備える目打ち装置において、
押出しピンを、裁断テーブルに対して昇降可能に、かつ押出しピンの下端とシート材料の表面との間隔がシート材料の厚さよりも小さくなるまで近接可能に、支持する支持機構と、
支持機構で支持される押出しピンを、駆動して昇降させる駆動手段とを、
含むことを特徴とする裁断機の目打ち装置である。
【0008】
また本発明で、前記駆動手段は、前記フットプレッサーと連動して、前記押出しピンが昇降するように、前記支持機構を駆動する、
ことを特徴とする。
【0009】
また本発明で、前記支持機構は、
前記押出しピンの前記下端が前記シート材料の表面に接近する位置を設定する位置設定機構と、
押出しピンを前記回転ドリルの中心軸線まわりに回転可能に支持する回転支持機構とを含む、
ことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記シート材料の表面近傍の高さで、前記抜き屑を除去する除去装置をさらに含む、
ことを特徴とする。
【0011】
さらに本発明は、裁断テーブル上にシート材料を保持し、裁断テーブル上方を平面移動可能な裁断ヘッドに設けられるナイフでシート材料を裁断する裁断機で、裁断ヘッドにナイフとともに設けられ、裁断テーブルに対して昇降移動可能、かつ内部に抜き屑を収容可能な中空円筒状の回転ドリルで、シート材料に穿孔し、回転ドリル内部に備える押出しピンで抜き屑を除去する裁断機の目打ち方法において、
シート材料への穿孔後、回転ドリルをシート材料表面から引上げる際に、押出しピンを、下端がシート材料の表面に接する位置、または表面からシート材料の厚さよりも小さい間隔をあける位置に留め、回転ドリルとともに引上げられる抜き屑の上端を押えて、抜き屑の少なくとも一部を、シート材料の穿孔部分に残す、
ことを特徴とする裁断機の目打ち方法である。
【0012】
また本発明は、前記抜き屑のうち、前記穿孔部分に残す部分以外を、前記押出しピンで前記回転ドリル内から前記シート材料表面に排出しながら、排出された抜き屑を除去する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、中空円筒状の回転ドリルによるシート材料への穿孔で、回転ドリル内部に抜き屑が収容される。回転ドリル内部には、支持機構で昇降可能に支持される押出しピンが設けられる。駆動手段で押出しピンを、下端とシート材料の表面との間隔がシート材料の厚さよりも小さくなるまで接近させておけば、穿孔後に回転ドリルを引上げる際に、抜き屑の少なくとも一部を穿孔後のシート材料に残すように回転ドリル内から排出することが可能となる。穿孔後のシート材料の穿孔部分に抜き屑の少なくとも一部が残ると、空気漏れを防止し、穿孔部分の近傍を裁断する際の裁断精度低下を避けることもできる。
【0014】
また本発明によれば、駆動手段は、シート材料の表面を押えるフットプレッサーと連動して押出しピンを昇降させるので、押出しピンを単独で昇降させる機構を設ける必要はなく、フットプレッサーと押出しピンとを連動させて、抜き屑の処理を行わせることができる。
【0015】
また本発明によれば、位置設定機構で押出しピンがシート材料表面に接近する位置を設定し、回転支持機構で押出しピンが回転ドリルに追従して回転可能に支持することができる。押出しピンが回転ドリルに対して連れ回りするようになるので、回転ドリルの中空孔と押出しピンとの隙間への抜き屑の噛み込みによる抵抗増大などを防ぐことができる。
【0016】
また本発明によれば、シート材料の表面近傍の高さで、回転ドリル内から押出しピンで排出された抜き屑を、除去装置でシート材料の表面から確実に除去することができる。
【0017】
さらに本発明によれば、シート材料の穿孔後に、抜き屑の少なくとも一部を穿孔部分に残すので、穿孔部分からの空気漏れを防ぐことができる。穿孔部分に残す抜き屑は、シート材料への裁断や目打ちとしての穿孔が終了した後で除去すればよく、抜き屑の処理を適切に行うことができる。
【0018】
また本発明によれば、回転ドリルからシート材料の表面に抜き屑が排出されても、排出された抜き屑は除去されるので、裁断や目打ちの続行時に支障が生じないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施例としての裁断機2の目打ち装置1の概略的な構成を示す左側面図である。
【図2】図2は、図1の目打ち装置1の正面図である。
【図3】図3は、図1の目打ち装置1で、回転ドリル5によるシート材料4の穿孔状態を示す左側面図である。
【図4】図4は、図1の目打ち装置1の上部に設ける昇降ベース20および押出しピン連結部材21に関連する構成を示す平面図および部分的な正面図である。
【図5】図5は、図1の目打ち装置1で、図4の調整部材21の調整で実現される動作の一例を示す部分的な正面図である。
【図6】図6は、図1の目打ち装置1で、図4の調整部材21の調整で実現される動作の他の例を示す部分的な正面図である。
【図7】図7は、本発明の他の実施例として、吸引除去装置30を設ける場合の構成を示す部分的な左側面部である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜図4で本発明の一実施例としての裁断機2の目打ち装置1の構成を説明する。図5および図6では、目打ち装置1を使用して目打ちを行う方法を説明する。図7で、本発明の他実施例に使用する吸引除去装置30の構成を説明する。各図の説明では、当該図面には存在せずに先に説明する図には存在する符号を用いて説明したり、先に説明する図に示す部分と対応する部分には同一の参照符を付し、重複する説明を省略したりする場合がある。
【実施例1】
【0021】
図1および図2(a)に示す目打ち装置1は、裁断機2の裁断テーブル3の表面に沿って、平面移動する裁断ヘッドに備えられる。裁断ヘッドおよびナイフの図示は省略しているけれども、ナイフは、裁断テーブル3上に積層状態で載置されるシート材料4を、予め設定される裁断データに従って裁断する。ナイフによる裁断時に、シート材料4を保持しておくために、裁断テーブル3の表面は、剛毛ブラシ3aなどによって構成される。剛毛ブラシ3aは、下方からの吸引力を作用させるための通気性を保ちながら、ナイフの刃先が侵入すると、刃先から逃げる柔軟性も備えている。積層されるシート材料4の表面は、非通気性フィルム4aで覆われる。目打ち装置1は、目打ちを行うために、中空円筒状の回転ドリル5を備えている。
【0022】
図2(b)は、回転ドリル5の構成を示す。回転ドリル5は、中心軸線5aまわりに回転する。回転ドリル5の内部には、中空孔5bが設けられ、下端付近の外周は、傾斜面5cとなり、上端付近は、柄部5dとなっている。傾斜面5cの下端は、刃先5eとなっており、回転しながらシート材料4を貫通させると、穿孔を行うことができる。
【0023】
図1および図2(a)に示す目打ち装置1では、回転ドリル5の中空孔5bに抜き屑排出用の押出しピン6が挿通される。押出しピン6の上部6aは、回転ドリル5の柄部5dよりも上方まで延びる。押出しピン6の下部6bは、下端6cを、図に示すように、回転ドリル5の刃先5eよりも下方まで下げることもできる。押出しピン6の昇降は、支持機構7によって支持されて可能となる。本実施例の支持機構7は、押出しピン6を、フットプレッサー8と連動して昇降するように、駆動手段である駆動シリンダー9によって駆動される。
【0024】
図に示す状態では、押出しピン6の下部6bは、下端6cがフットプレッサー8の底面と一致し、シート材料4の表面から間隔をあけて上昇している。押出しピン6の上部6aおよびフットプレッサー8は、両軸タイプのエアシリンダーである駆動シリンダー9の上ロッド9aおよび下ロッド9bでそれぞれ昇降移動するように駆動される。駆動シリンダー9は、二基が平行するように、ベースフレーム10に取付けられる。ベースフレーム10は、裁断ヘッドに取付けられる。ベースフレーム10の上方および側方には、上方ベース10aおよび側方ベース10bがそれぞれ取付けられる。ただし、図1では、側方ベース10bの図示を省略している。なお、駆動手段としては、駆動シリンダー9ばかりではなく、モーターとボールねじの組合せなども使用することができる。また、たとえば下ロッド9bがベースフレーム10を挿通する部分などには、軸受ブッシュ等が設けられるけれども、図示は省略している。
【0025】
ベースフレーム10に対しては、回転ドリル5を回転駆動するためのモータ11も固定される。モータ11の出力軸には、駆動プーリ12が取付けられ、駆動プーリ12からベルト13を介して従動プーリ14に回転駆動力が伝達される。ただし、図2(a)では、モータ11および駆動プーリ12の図示を省略する。従動プーリ14は、従動軸15に取付けられている。従動軸15は、下方に延びて、ギヤボックス16内の駆動ギヤ16aを駆動する。ギヤボックス16は、駆動ギヤ16aが従動軸15で駆動される状態で、従動軸15に沿って上下に移動可能である。ギヤボックス16内で、駆動ギヤ16aは、従動ギヤ16bと噛合し、従動ギヤ16bは、回転軸17の上部に取付けられている。回転軸17の下部は、ギヤボックス16の下方に延び、下端にはチャック18が取付けられる。ギヤボックス16の上下移動は、上方に設けられる目打ちシリンダー19から下方に延びるロッドによって行われる。
【0026】
押出しピン6の支持機構7は、駆動シリンダー9の上ロッド9aが連結される昇降ベース20、および昇降ベース20に取付けられる押出しピン連結部材21を含む。押出しピン連結部材21の下端には、押出しピン6の上部6aが接続される。
【0027】
図2(b)は、回転ドリル5と回転軸17の下部とを接続するチャック18付近の構成を詳細に示す。回転軸17の下部には、すり割り17aが設けられている。チャック18の部分で、回転ドリル5の柄部5dをすり割り17aに挿入し、止めねじ18aの先端ですり割り17aの外方から押圧すると、すり割り17aの径が縮小し、回転軸17の下部内周に回転ドリル5の柄部5dの外周が押しつけられ、密着して固定される。
【0028】
図3は、回転ドリル5をシート材料4の表面から貫通させた状態を示す。フットプレッサー8は、回転ドリル5による穿孔開始前、シート材料4の表面を押える状態となるように、駆動シリンダー9の下ロッド9bが下降する。フットプレッサー8と連動して、押出しピン6も下降し、下端6cは、シート材料4の表面に接触して押える。回転ドリル5を回転させながら、刃先5eをシート材料4の表面に下降させると、刃先5eによってシート材料4が切断され、刃先5eよりも内側の部分は、抜き屑4bとなって回転ドリル5内の中空孔5bに収容される。
【0029】
図4は、押出しピン6をフットプレッサー8と連動させる機構を示す。図4(a)および図4(b)に示すように、昇降ベース20を介して、上ロッド9aと押出しピン連結部材21とが連結される。押出しピン連結部材21は、頭部に内ねじ21aが設けられ、頭部から下部まで貫通する中空孔21bも設けられる。中空孔21bの下部には、押出しピン6を回転ドリル5の中心軸線5aまわりに回転可能に支持する回転支持機構として、ベアリング22および連結ボルト23が収容され、押出しピン6は回転ドリル5と連れ回り可能となる。図3に示すようなフットプレッサー8の下降時に、押出しピン6の下端6cがシート材料4の表面に接近する位置は、押出しピン連結部材21と止めねじ24とによる位置設定機構で設定する。
【0030】
回転ドリルに対する押出しピン6の連れ回りは、回転ドリル5の中空孔5b内に収容される押出しピン6の外周面と、中空孔5bの内周との間の隙間への抜き屑4bの噛み込みなどによる抵抗増大を防止するために行う。連れ回りは、押出しピン6への非通気性フィルム4aの巻付き防止のためにも行われる。ただし、シート材料4の材質、回転ドリル5の径、中空孔5bと押出しピン6との隙間の大きさなどの組合せによっては、回転ドリル5に対して押出しピン6の連れ回りを行わない方が好ましい場合もある。
【0031】
図4(c)は、図4(b)に示す中空孔21bに、ゴム棒25を挿入し、押出しピン調連結部材21の頭部の内ねじ21aに押しねじ26を螺合させて押えている状態を示す。ゴム棒25を押しねじ26で上方から押圧すると、ゴム棒25の下端は連結ボルト23の頭部を押圧し、ゴム棒25の側面は外方に膨らみ、連れ回りを止めることができる。
【0032】
なお、押出しピン6をフットプレッサー8と連動させるように支持するだけであれば、押出しピン6の上部6aを直接昇降ベース20に取付けるようにしてもよい。上部6aの昇降ベース20に対する取付け高さの調整で、フットプレッサー8の下降時に、押出しピン6の下端6cがシート材料4の表面に接近する位置を調整することもできる。
【0033】
図5は、図1〜図3に示すように、押出しピン6の下端6cをフットプレッサー8の底面まで下げて使用する目打ち動作を示す。図5(a)は、フットプレッサー8でシート材料4の表面を押えながら、シート材料4の積層厚全体まで、回転ドリル5を貫通させ、中空孔5bに抜き屑4bを収容している状態を示す。図5(b)は、回転ドリル5の引上げを開始している状態を示す。抜き屑4bは、上部が押出しピン6の下端6cで押されてシート材料4の表面の高さに留まり、回転ドリル5の引上げにともない、抜き屑4bの下部は刃先5eからシート材料4の穿孔部分に排出される。図5(c)は、回転ドリル5をシート材料4から引き上げた状態を示す。抜き屑4bの全体は、シート材料4の穿孔部分に残る。図5(d)は、押出しピン6およびフットプレッサー8をシート材料4の表面から引き上げた状態を示す。抜き屑4bは、全部がシート材料4中の穿孔部分に残り、次の目打ちまたは裁断に移ることができる。
【0034】
図6は、図4に示す押出しピン連結部材21の昇降ベース20に対する高さ調整で、押出しピン6の下端6cをフットプレッサー8の底面よりも上げて使用する目打ち動作を示す。ただし、押出しピン6の下端6cとシート材料4との間隔は、シート材料4の厚さよりも小さくなるまで近接させる。図6(a)は、フットプレッサー8でシート材料4の表面を押えながら、シート材料4の積層厚全体まで、回転ドリル5を貫通させ、中空孔5bに抜き屑4bを収容している状態を示す。図6(b)は、回転ドリル5の引上げを開始している状態を示す。ただし、抜き屑4bの上部は、押出しピン6の下端6cに達しないので、抜き屑4bは、回転ドリル5の中空孔5bに収容される状態で、回転ドリル5とともに上昇する。図6(c)は、回転ドリル5をシート材料4からさらに引き上げ、抜き屑4bの全体を、静止している押出しピン6の下端6cで回転ドリル5の刃先5eよりも下方に押出している状態を示す。抜き屑4bの下部はシート材料4の穿孔部分に残る。図6(d)は、押出しピン6およびフットプレッサー8をシート材料4の表面から引き上げた状態を示す。抜き屑4bは、下部がシート材料4中の穿孔部分に残る。シート材料4の表面上に出る抜き屑4bの上部は、積層が解除されて、シート材料4の表面に散らばる。たとえば、フットプレッサー8に噴出しノズルを設ければ、シート材料4の表面に散らばらずに、一定方向に吹き飛ばすことができる。
【0035】
以上のように本実施例では、シート材料4の表面を押えるフットプレッサー8と連動して押出しピン6を昇降させるので、押出しピン6を単独で昇降させる機構を設ける必要はない。ただし、押出しピン6は、フットプレッサー8と共用の駆動シリンダー9ではなく、独立した駆動手段を用いて昇降するように駆動することもできる。独立させることによって、種々の排出方法を実行することができる。たとえば、中空孔5bに抜き屑4bを収容した状態で回転ドリル5をシート材料4の表面から引上げ、裁断ヘッドの移動後、シート材料4の端などの裁断テーブル3の特定位置で、押出しピン6を独立して下降させ、抜き屑4bを排出させることもできる。
【0036】
図5に示すように抜き屑4bの全部、または図6に示すように抜き屑4bの一部を穿孔後のシート材料4に残すことは、漏れ防止ばかりではなく、穿孔部分の近傍を裁断する際の精度低下を避けることにも寄与する。シート材料4を穿孔して抜き屑4bを完全に除去してしまうと、穿孔部分の近傍をナイフで裁断する場合、シート材料4が穿孔部分側に崩れて、裁断位置がずれ、裁断精度低下のおそれがある。穿孔部分に残す抜き屑4bの割合を多くすれば、裁断精度の低下を免れ易くなるけれども、後工程で穿孔部分から抜き屑4bを除去する手間がかかるので、漏れ防止や裁断精度の必要性との兼合いで抜き屑4bの割合を設定する。
【実施例2】
【0037】
図7は、本発明の他の実施例として、シート材料4の表面近傍に除去装置30を設ける構成を示す。除去装置30は、駆動シリンダー9の下ロッド9bで昇降駆動されるフットプレッサー31に組込まれる。フットプレッサー31には吸引ホース32が接続される。フットプレッサー31には、噴出ノズル33も設けられ、噴出ホース34を介して、圧縮空気が供給される。フットプレッサー31内でシート材料4の表面に留まるように、押出しピン6の下端6cで押えられている抜き屑4bは、噴出ノズル33からの圧縮空気の噴出で吸引ホース32に移動させ、吸引除去することができる。吸引力が大きければ、噴出ノズル33を設けなくてもよい。また、吸引ホース32などの吸引側の構成を用いず、フットプレッサー31に出口の孔を設け、噴出ノズル33からは噴出のみを行い、シート材料4で裁断や穿孔が終了した領域に抜き屑4bを吹飛ばして移動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 目打ち装置
2 裁断機
3 裁断テーブル
4 シート材料
4a 抜き屑
5 回転ドリル
5a 中心軸線
5b 中空孔
6 押出しピン
6c 下端
7 支持機構
8,31 フットプレッサー
9 駆動シリンダー
10 ベースフレーム
16 ギヤボックス
19 目打ちシリンダー
21 押出しピン連結部材
22 ベアリング
23 連結ボルト
24 止めねじ
25 ゴム棒
26 押しねじ
30 除去装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裁断テーブル上にシート材料を保持し、裁断テーブル上方を平面移動可能な裁断ヘッドに設けられるナイフでシート材料を裁断する裁断機で、裁断ヘッドにナイフとともに設けられ、裁断テーブルに対して昇降移動可能、かつ内部に抜き屑を収容可能な中空円筒状の回転ドリルで、シート材料を表面からフットプレッサーで押えながら穿孔し、回転ドリル内部には、抜き屑排出用の押出しピンを備える目打ち装置において、
押出しピンを、裁断テーブルに対して昇降可能に、かつ押出しピンの下端とシート材料の表面との間隔がシート材料の厚さよりも小さくなるまで近接可能に、支持する支持機構と、
支持機構で支持される押出しピンを、駆動して昇降させる駆動手段とを、
含むことを特徴とする裁断機の目打ち装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記フットプレッサーと連動して、前記押出しピンが昇降するように、前記支持機構を駆動する、
ことを特徴とする請求項1記載の裁断機の目打ち装置。
【請求項3】
前記支持機構は、
前記押出しピンの前記下端が前記シート材料の表面に接近する位置を設定する位置設定機構と、
押出しピンを前記回転ドリルの中心軸線まわりに回転可能に支持する回転支持機構とを含む、
ことを特徴とする請求項1または2記載の裁断機の目打ち装置。
【請求項4】
前記シート材料の表面近傍の高さで、前記抜き屑を除去する除去装置をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の裁断機の目打ち装置。
【請求項5】
裁断テーブル上にシート材料を保持し、裁断テーブル上方を平面移動可能な裁断ヘッドに設けられるナイフでシート材料を裁断する裁断機で、裁断ヘッドにナイフとともに設けられ、裁断テーブルに対して昇降移動可能、かつ内部に抜き屑を収容可能な中空円筒状の回転ドリルで、シート材料に穿孔し、回転ドリル内部に備える押出しピンで抜き屑を除去する裁断機の目打ち方法において、
シート材料への穿孔後、回転ドリルをシート材料表面から引上げる際に、押出しピンを、下端がシート材料の表面に接する位置、または表面からシート材料の厚さよりも小さい間隔をあける位置に留め、回転ドリルとともに引上げられる抜き屑の上端を押えて、抜き屑の少なくとも一部を、シート材料の穿孔部分に残す、
ことを特徴とする裁断機の目打ち方法。
【請求項6】
前記抜き屑のうち、前記穿孔部分に残す部分以外を、前記押出しピンで前記回転ドリル内から前記シート材料表面に排出しながら、排出された抜き屑を除去する、
ことを特徴とする請求項5記載の裁断機の目打ち方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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