説明

裁断装置及び裁断方法

【課題】シート材を調整領域から裁断領域に移送可能な裁断装置に関し、調整領域で裁断の位置が調整された裁断パターンを、裁断領域で、ずれが生じることなく裁断を実行できる裁断装置を提供すること。
【解決手段】裁断テーブル2の支持面21の調整領域Aaに布地6Aを配置し、裁断パターン7の位置の調整が行われた後、裁断パターン7を表す配置データを作成する。裁断ユニット3の裁断ヘッド33によってマーカ38を布地6Aの表面に配置し、センサ35でマーカ38の位置を検出する。支持面21を包含するコンベヤ23を駆動して、布地6Aをマーカ38が配置された状態で調整領域Aaから裁断領域Acに移送した後、マーカ38の位置を検出する。移送の前後におけるマーカ38の検出位置の差分に基づいて配置データを修正した裁断データに従い、裁断ユニット3で布地6Aを裁断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材を裁断してパターンピースを作製する際に、シート材の柄や欠陥に応じて裁断パターン毎に裁断位置を調整可能な裁断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被服用の布地を裁断して所望の形状のパターンピースを作製する裁断装置として、布地を支持する支持面を有する裁断テーブルと、裁断刃を内蔵して裁断テーブルの支持面上を平面方向に駆動される裁断ヘッドを備えたプロッタ型の裁断装置がある。プロッタ型の裁断装置は、パターンピースの形状を表す裁断データが入力され、入力された裁断データに基づいて裁断ヘッドを平面方向に駆動しながら裁断刃を作動させ、支持面上の布地を裁断してパターンピースを作製するように構成されている。
【0003】
裁断装置において、従来、布地の不良箇所を避けてパターンピースを作製するため、裁断テーブル上に配置された布地に対して、裁断を行うべき裁断パターンの位置を調節可能にした裁断装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この裁断装置は、裁断テーブルにスタイラスペンの信号を受ける受信装置を有し、この受信装置に、パターンピースの裁断データを格納するデータベースとディスプレイを有する制御装置が接続されている。操作者によるスタイラスペンの操作により、裁断テーブル上に配置された布地の形状と不良部分の輪郭形状が入力されると、ディスプレイに、布地の形状と不良部分の輪郭形状に重ねて裁断パターンを表示する。布地の不良部分が裁断パターンと重なり合う場合、ディスプレイを視認する操作者によって裁断テーブル上でスタイラスペンがクリック操作され、これにより、ディスプレイに表示した所定の裁断パターンを選択モードに変更する。引き続いて、操作者によるスタイラスペンのドラッグ入力に応じて、ディスプレイ上の所定の裁断パターンの位置を変更し、裁断パターンの不良部分との重複が解消すると、操作者から裁断パターンの位置の決定入力を受ける。この後、裁断ヘッドを駆動し、布地の不良部分との重複が解消された位置で裁断パターンに沿った裁断を行い、不良部分の無いパターンピースを作製している。
【0004】
このように裁断パターンの位置が調整可能な裁断装置では、裁断を行う前に、裁断パターンの位置の調整を行うので、パターンピースの作製効率が比較的低いという問題がある。そこで、裁断テーブルの支持面に、布地に対して裁断パターンの位置の調整を行うための調整領域と、布地の裁断を行うための裁断領域とを設け、調整領域における裁断パターンの位置調整と、裁断領域における布地の裁断とを同時に行うように構成された裁断装置が提案されている。この裁断装置では、調整領域で裁断パターンの位置調整を行った布地を、コンベヤ等の移送手段によって裁断領域に移送している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−131698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
裁断テーブルの支持面に調整領域と裁断領域とを設けた裁断装置は、調整領域で裁断パターンを調整した後の裁断パターンのデータを、裁断領域で裁断を行うために裁断データに変換するが、このデータの変換は、予め設定された移送手段による移送距離を考慮して行うこととなる。しかしながら、移送手段によって布地を調整領域から裁断領域へ移送する際に、移送手段の作動誤差や布地の歪みが生じるので、布地に対する裁断パターンの位置にずれが生じるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、布地等のシート材を調整領域から裁断領域に移送可能な裁断装置に関し、調整領域で裁断の位置が調整された裁断パターンを、裁断領域で、ずれが生じることなく裁断を実行できる裁断装置及び裁断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の裁断装置は、
シート材を支持する支持面を有し、この支持面に、シート材に対する裁断パターンの位置合わせを行う調整領域と、裁パターンに沿ってシート材の裁断を行う裁断領域とが設けられた裁断テーブルと、
上記調整領域に支持されたシート材に対して裁断を行うべき裁断パターンの配置状態を表示し、所定の裁断パターンの位置を変更する旨の入力に応じて上記裁断パターンの位置を調整するパターン位置調整手段と、
上記裁断テーブルの支持面に支持されたシート材の上に配置されるマーカと、
上記マーカの位置を検出する位置検出手段と、
上記調整領域に支持されたシート材を、上記マーカが配置された状態で上記裁断領域に移送する移送手段と、
上記シート材が調整領域にあるときに上記位置検出手段で検出されたマーカの位置と、上記シート材が裁断領域にあるときに上記位置検出手段で検出されたマーカの位置とに基づいて、上記パターン位置調整手段で調整された後の裁断パターンの配置状態を表す配置データを修正し、裁断を実行するための裁断データを生成する裁断データ生成手段と、
上記裁断データ生成手段で生成された裁断データに基づいて、上記裁断領域に支持されたシート材を裁断する裁断手段と
を備えることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、裁断テーブルの支持面の調整領域にシート材が配置され、このシート材に対して裁断を行うべき裁断パターンの配置状態が位置調整手段によって表示される。位置調整手段は、シート材に対する裁断パターンの配置状態を、シート材の表面に画像を直接投射して表示してもよく、あるいは、液晶表示装置等の表示装置によって表示してもよい。位置調整手段は、表示された裁断パターンの配置状態を視認した操作者から、例えばシート材の柄に適合させるために、あるいは、シート材の不良部分を避けるために、所定の裁断パターンの位置を変更する旨の入力を受ける。この入力に応じて、位置調整手段は、該当する裁断パターンの位置を調整する。裁断テーブルの支持面に支持されたシート材の上には、位置検出手段によって位置が検出されるマーカが配置される。調整領域に支持されたシート材は、移送手段により、上記マーカが配置された状態で上記裁断領域に移送される。シート材が調整領域にあるときのマーカの位置と、シート材が裁断領域にあるときのマーカの位置とが位置検出手段で検出される。こうしてシート材が移送される前後に検出されたマーカの位置に基づいて、裁断データ生成手段により、パターン位置調整手段で調整された後の配置データが修正され、裁断データが生成される。この裁断データに基づいて、裁断手段により、裁断領域に支持されたシート材が裁断される。
【0010】
このように、本発明の裁断装置は、シート材の上にマーカを配置し、このマーカが配置された状態でシート材を移送し、このシートの移送の前後で各々検出されたマーカの位置に基づいて、裁断データを生成する。したがって、予め設定された移送手段の移送量に基づいて裁断データを生成するよりも、裁断領域にあるシート材に高精度に適合した裁断データを生成することができる。その結果、調整領域で調整された裁断パターンの位置とずれが少ない位置に、裁断手段で裁断を行うことができるので、高精度に柄合わせがされたパターンピースを得ることができ、あるいは、シート材の不良部分を高精度に避けたパターンピースを得ることができる。
【0011】
一実施形態の裁断装置は、上記裁断手段は、裁断刃を有する裁断ヘッドと、この裁断ヘッドを上記裁断テーブルの支持面上に平面方向に駆動する駆動手段とを有し、
上記裁断手段の裁断ヘッドに、上記マーカをシート材の上に配置し、また、上記マーカをシート材の上から回収するマーカ操作手段が設けられている。
【0012】
上記実施形態によれば、駆動手段によって裁断テーブルの支持面上を平面方向に駆動される裁断ヘッドにマーカ操作手段を設けることにより、裁断テーブルの支持面に支持されたシート材に対して、マーカの配置と回収を効率的に行うことができる。
【0013】
一実施形態の裁断装置は、上記位置検出手段は、光を出射する発光部と、この発光部からの光が反射してなる反射光が入射する受光部と、この受光部からの出力に基づいて画像処理を行う画像処理部とを有し、
上記マーカは、上記位置検出手段の発光部からの光を反射する反射面と、この反射面の表面に設けられた標的を有し、
上記マーカ操作手段は、上記マーカを磁力で吸着する電磁石を有する。
【0014】
上記実施形態によれば、位置検出手段の発光部から光が出射され、この光がマーカの反射面で反射してなる反射光が受光部に入射する。受光部からの出力に基づいて画像処理部で画像処理が行われ、上記標的によって表されるマーカの位置が検出される。このマーカは、マーカ操作手段の電磁石が励磁されると電磁石に吸着され、マーカ操作手段の電磁石が消磁されると電磁石から離脱する。したがって、マーカ操作手段の電磁石への通電を切り替えることにより、マーカをシート材に対して容易に回収及び設置することができる。ここで、上記マーカは、例えばステンレス等の磁性体の金属板を用いて、この金属板の表面を鏡面に仕上げて反射面を形成し、この反射面に印刷や刻印等で標的を形成することにより、簡易かつ安価に作製することができる。また、上記標的は、直線、点、曲線等で形成することができる。
【0015】
一実施形態の裁断装置は、上記裁断テーブルの支持面の調整領域に裁断パターンを投射する投射手段を備える。
【0016】
上記実施形態によれば、裁断テーブルの支持面の調整領域に配置されたシート材の表面に、投射手段によって裁断パターンを投射することにより、裁断を行うべき裁断パターンをシート材に直接表示することができる。したがって、容易かつ高精度に、シート材に存在する不良部分を避け、また、シート材の柄に適合するように、裁断パターンを調整できる。
【0017】
本発明の裁断方法は、シート材を支持する支持面に調整領域と裁断領域とが設けられた裁断テーブルを備える裁断装置を用いてシート材の裁断を行う裁断方法であって、
裁断テーブルの支持面の調整領域にシート材を配置するシート材配置工程と、
上記調整領域に支持されたシート材に対して裁断を行うべき裁断パターンの配置状態を表示し、所定の裁断パターンの位置を調整する調整工程と、
上記調整領域に支持されたシート材の上にマーカを配置するマーカ配置工程と、
上記調整領域に支持されたシート材の上に配置されたマーカの位置を検出する第1マーカ位置検出工程と、
上記調整領域に支持されたシート材を、上記マーカが配置された状態で上記裁断領域に移送するシート材移送工程と、
上記裁断領域に支持されたシート材の上に配置されたマーカの位置を検出する第2マーカ位置検出工程と、
上記シート材が調整領域にあるときのマーカの位置と、上記シート材が裁断領域にあるときのマーカの位置とに基づいて、上記所定の裁断パターンの位置が調整された後の裁断パターンの配置状態を表す配置データを修正し、裁断を実行するための裁断データを生成する裁断データ生成工程と、
上記裁断データに基づいて、上記裁断領域に支持されたシート材を裁断する裁断工程と
を備えることを特徴としている。
【0018】
上記実施形態によれば、シート材配置工程で、裁断テーブルの支持面の調整領域にシート材を配置する。調整工程で、上記調整領域に支持されたシート材に対して裁断を行うべき裁断パターンの配置状態を表示し、所定の裁断パターンの位置を調整する。ここで、シート材に対する裁断パターンの配置状態の表示は、シート材の表面に画像を直接投射して行ってもよく、あるいは、液晶表示装置等の表示装置で行ってもよい。マーカ配置工程で、調整領域に支持されたシート材の上にマーカを配置し、第1マーカ位置検出工程で、上記調整領域に支持されたシート材の上に配置されたマーカの位置を検出する。シート材移送工程で、上記調整領域に支持されたシート材を、上記マーカが配置された状態で上記裁断領域に移送する。第2マーカ位置検出工程で、上記裁断領域に支持されたシート材の上に配置されたマーカの位置を検出する。裁断データ生成工程で、上記シート材が調整領域にあるときのマーカの位置と、上記シート材が裁断領域にあるときのマーカの位置とに基づいて、上記所定の裁断パターンの位置が調整された後の裁断パターンの配置状態を表す配置データを修正し、裁断を実行するための裁断データを生成する。裁断工程で、上記裁断データに基づいて、上記裁断領域に支持されたシート材を裁断する。
【0019】
このように、本発明の裁断方法は、シート材の上にマーカを配置し、このマーカが配置された状態でシート材を移送し、このシートの移送の前後で各々検出されたマーカの位置に基づいて、裁断データを生成する。したがって、予め設定された移送手段の移送距離に基づいて裁断データを生成するよりも、裁断領域にあるシート材に高精度に適合した裁断データを生成することができる。その結果、調整領域で調整された裁断パターンの位置とずれが少ない位置に、裁断手段で裁断を行うことができ、シート材の不良部分を高精度に避けたパターンピースを得ることができ、あるいは、高精度に柄合わせがされたパターンピースを得ることができる。
【0020】
一実施形態の裁断方法は、上記シート材移送工程に並行して、第2のシート材を上記調整領域に配置する工程と、
上記第2マーカ位置検出工程の後に、上記調整領域に支持された第2のシート材の上にマーカを配置する工程と、
上記裁断工程と並行して、上記調整領域に支持された第2のシート材に対して裁断を行うべき裁断パターンの配置状態を表示し、所定の裁断パターンの位置を調整する工程と、
上記裁断工程により第1のシート材から作製されたパターンピースとシート材の残部を裁断領域から撤去する工程と、
上記調整領域に支持された第2のシート材の上に配置されたマーカの位置を検出する工程と、
上記調整領域に支持された第2シート材を、上記マーカが配置された状態で上記裁断領域に移送する工程と、
上記裁断領域に支持された第2のシート材の上に配置されたマーカの位置を検出する工程と、
上記第2のシート材が調整領域にあるときのマーカの位置と、上記第2のシート材が裁断領域にあるときのマーカの位置とに基づいて、上記所定の裁断パターンの位置が調整された後の裁断パターンの配置状態を表す配置データを修正し、裁断を実行するための裁断データを生成する工程と、
上記裁断データに基づいて、上記裁断領域に支持された第2のシート材を裁断する工程と
を備える。
【0021】
上記実施形態によれば、第1のシートを調整領域から裁断領域へ移送するシート材移送工程に並行して、第2のシート材を上記調整領域に配置する。裁断領域に移送された第1のシート材の上のマーカの位置を検出する第2マーカ位置検出工程の後に、上記調整領域に支持された第2のシート材の上にマーカを配置する。第1のシート材の裁断を行う裁断工程と並行して、上記調整領域に支持された第2のシート材に対して裁断を行うべき裁断パターンの配置状態を表示し、所定の裁断パターンの位置を調整する。上記裁断工程により第1のシート材から作製されたパターンピースとシート材の残部を、裁断領域から撤去する。一方、上記調整領域に支持された第2のシート材の上に配置されたマーカの位置を検出する。この第2シート材を、上記マーカが配置された状態で上記裁断領域に移送する。この後、上記裁断領域に支持された第2のシート材の上に配置されたマーカの位置を検出する。上記第2のシート材が調整領域にあるときのマーカの位置と、上記第2のシート材が裁断領域にあるときのマーカの位置とに基づいて、上記第2のシート材に関して所定の裁断パターンの位置が調整された後の裁断パターンの配置状態を表す配置データを修正し、裁断を実行するための裁断データを生成する。この裁断データに基づいて、上記裁断領域に支持された第2のシート材を裁断する。
【0022】
このように、本実施形態の裁断方法は、第1のシート材に対する裁断と、第2のシート材に対する裁断パターンの位置の調整とを実質的に同時に行うので、複数のシート材から効率的にパターンピースを作製することができる。
【0023】
一実施形態の裁断方法は、上記第2のシート材は第1のシート材と連続であり、上記第2のシート材に対して裁断を行う裁断パターンは、上記第1のシート材に対して裁断を行う裁断パターンと連続である。
【0024】
上記実施形態によれば、長尺のシート材を、第1のシート材に相当する部分と第2のシート材に相当する部分とに分け、第1のシート材に相当する部分に対応する裁断パターンの部分の位置調整を行った後、この第1のシート材を裁断領域に移送すると共に、第2のシート材に相当する部分を調整領域に導き、第1のシート材の裁断を行うと共に、第2のシート材に対する裁断パターンの部分の調整を行う。これにより、第1のシート材に相当する部分と第2のシート材に相当する部分とに連続する裁断パターンを裁断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態の裁断装置を示す図である。
【図2】裁断装置の主要部を模式的に示す縦断面図である。
【図3】マーカの位置を位置検出手段で検出する様子を模式的に示す平面図である。
【図4】裁断装置の裁断テーブル内の情報処理装置と投射制御装置を示す機能ブロック図である。
【図5】裁断装置の動作を示すフローチャートである。
【図6A】支持面の調整領域に布地を配置した様子を示す平面図である。
【図6B】布地の調整領域の部分を裁断領域へ移送した様子を示す平面図である。
【図6C】布地の裁断領域の部分に裁断を実行したと共に、布地の調整領域の部分に裁断パターンを投射した様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
本発明の実施形態の裁断装置は、シート材としての布地を裁断して被服のパターンピースを作製するプロッタ型の裁断装置である。図1に示すように、この裁断装置1は、裁断テーブル2と、裁断手段としての裁断ユニット3と、投射制御装置4と、プロジェクタ5を備える。
【0028】
裁断テーブル2は、シート材としての布地6を支持する支持面21を備える。この支持面21は、図2に示すように、裁断テーブル2内に収容された移送手段としてのベルトコンベヤ23を構成する無端ベルト24の上側面によって形成されている。このベルトコンベヤ23は、無端ベルト24が筒状のプーリ25,25の間に掛け渡されて構成され、このプーリ25を図示しないステッピングモータで回転駆動して、支持面21上の布地6をプーリ25の回転駆動量に応じた距離だけ移送制御するようになっている。上側面が支持面21を形成する無端ベルト24は、基布にパイル毛が植えられてなるモケット状の織物で形成されている。このブラシ状の無端ベルト24の上面を通して、図示しない真空ポンプで布地6を吸引し、支持面21に布地6を固定するように形成されている。
【0029】
裁断テーブル2の長手方向の一端にはロール保持部22が設けられており、このロール保持部22に保持されたロール62から布地6を巻き出して支持面21上に延出するようになっている。裁断テーブル2の支持面21には、図1に示すように、ロール保持部22の側から裁断テーブル2の他端に向かって順に、調整領域Aaと裁断領域Acとが設定されている。ロール62から巻き出された布地6は、調整領域Aaに延出されて裁断パターンの位置の調整が行われた後、ベルトコンベヤ23によって裁断領域Acに移送される。
【0030】
裁断ユニット3は、裁断テーブル2の幅方向の両側の縁に沿って長手方向に移動する2つのキャリア31,31と、このキャリア31,31の間に掛け渡されたレール32と、このレール32に沿って幅方向に移動する裁断ヘッド33を有する。上記キャリア31とレール32により、裁断ヘッド33の駆動手段を形成している。裁断ヘッド33は、表面側の回転刃と裏面側の下刃とのせん断作用により、布地6を切断するように形成されている。なお、裁断ヘッド33は、鋸状のカッターを往復駆動して布地6を切断するものでもよく、布地6の種類や枚数に応じた種々の切断方式のものを設定できる。この裁断ヘッド33には、図2に示すように、裁断ヘッド33のケーシングからロール保持部22側に突出した支持部材34の先端に、位置検出手段を構成するセンサ35が設けられている。支持部材34の中央には、マーカ操作手段を構成するエアシリンダ36と電磁石37が配置されている。エアシリンダ36は、支持部材34に、支持面21側に延出するように設置され、ロッドの先端に電磁石37が固定されている。エアシリンダ36は、矢印で示すように、電磁石37を支持面21に対して接離するようにロッドを出没駆動する。電磁石37は、通電されて励磁されたとき、支持面21に臨む面にマーカ38を吸着して保持する一方、通電が停止されて消磁されたとき、マーカ38を離脱させて支持面21上の布地6の表面に落下させるようになっている。
【0031】
マーカ38は、図3に示すように、略正方形のステンレス製の板材で形成され、表面が鏡面に仕上げられて反射面が形成されている。この反射面の中央に、標的として、直行する2つの基準線LX,LYが刻印により形成され、これらの基準線LX,LYの交点に、マーカの座標を特定するためのマーカ基準点Pが設定される。なお、基準線LX,LYは、印刷により形成されてもよく、また、反射面は鏡面に仕上げる必要はなく、要は、センサ35からの検出光の反射量の違いによって基準線LX,LYを検知可能に形成されていればよい。
【0032】
上記センサ35は、レーザの走査光を出射する発光部と、この発光部からの光がマーカ38で反射してなる反射光が入射する受光部とを有し、この受光部は、裁断テーブル2内に設けられた画像処理部10に接続されている。このセンサ35は、X軸方向とY軸方向に走査を行ってマーカ38の基準線LX,LYを検出するラインセンサであり、図3に示すように、発光部からX軸方向とY軸方向にレーザの走査光SX,SYを夫々照射し、マーカ38で反射されたレーザの反射光を受光部で受光する。レーザの反射光を受光した受光部からの出力が画像処理部10で画像処理され、X軸方向の基準線LXと、Y軸方向の基準線LYとが検知されて、各基準線LX,LYの座標が検出される。このように、上記センサ35と画像処理部10により、位置検出手段を構成している。
【0033】
裁断テーブル2の支持面21には、裁断ユニット3の制御に用いる機械原点と機械座標が設定されている。機械座標は、支持面21の長手方向、すなわち、布地6の延出方向にX軸が設定され、支持面21の幅方向にY軸が設定されている。ベルトコンベヤ23の動作は、ステッピングモータで駆動されるプーリ25の回転駆動量に基づいて、無端ベルト24のX軸方向の移動量が算出され、ベルトコンベヤ23の上側面の支持面21による布地6の移送距離が制御される。
【0034】
投射制御装置4は、裁断テーブル2の支持面21の調整領域Aaに配置された布地6に裁断パターン7を投射し、また、投射された裁断パターン7を移動する制御を行うものであり、市販のノート型PC(パーソナルコンピュータ)によって構成されている。投射制御装置4は、操作者に操作されるコントローラ41に接続されている。コントローラ41は、布地6上に投射する裁断パターンの選択や、投射した裁断パターンの位置及び縮尺の調整等に関する入力を操作者から受けるものであり、市販のゲーム用コントローラを用いることができる。投射制御装置4は、ディスプレイ42を備え、後述するプロジェクタ5で布地6に投射する裁断パターン7と同じ裁断パターンを表示し、また、裁断パターンの位置や角度等の情報を表示する。投射制御装置4は、裁断テーブル2内に設置された情報処理装置に接続され、裁断パターン7に関する情報を送受信するようになっている。
【0035】
プロジェクタ5は、裁断テーブル2の支持面21の調整領域Aaに配置された布地6に裁断パターン7を投射するものであり、市販の液晶プロジェクタによって構成されている。このプロジェクタ5は、約1.6mの幅と約2.5mの長さを有する調整領域Aaの全面に、裁断パターン7を実寸で投射するものであり、支持面21から約1.5mの高さに設置されている。
【0036】
図4は、裁断テーブル2内に設置された情報処理装置と投射制御装置4を示す機能ブロック図である。裁断テーブル2の情報処理装置は、裁断パターンの情報を処理するデータ制御部9と、センサ35からの出力を画像処理する画像処理部10と、画像処理部10からの出力に基づいてマーカ38の変位量を検出する変位量検出部11と、裁断ユニット3の動作を制御する裁断ユニット制御部12を含む。
【0037】
データ制御部9は、マーカーデータが入力されるマーカーデータ入力部91と、入力されたマーカーデータに基づいて配置データを生成する配置データ生成部92を有する。マーカーデータは、パターンピースの形状である裁断パターンを布地の寸法範囲内に配置した情報であり、配置データは、マーカーデータ内に含まれる裁断パターンの位置を調整するための情報である。配置データ生成部92で生成された配置データは、投射制御装置4に出力されると共に、投射制御装置4から入力された調整信号に基づいて、配置データ調整部93で調整される。配置データ調整部93で調整された配置データは、裁断データ生成部94で修正され、裁断データが生成される。裁断データは、パターンピースを作製するために裁断ユニット3に裁断を実行させる情報であり、裁断ユニット制御部12に出力される。裁断ユニット制御部12により、裁断データに基づいて裁断ユニット3が制御され、布地の裁断が実行される。
【0038】
投射制御装置4は、配置データ生成部92から配置データを受け取り、投射データ作製部44により、配置データに基づいて投射データを作成する。投射データ作製部44で作成した投射データをプロジェクタ5へ出力し、プロジェクタ5は投射データに対応する裁断パターン7を調整領域Aaの布地6に投射する。操作者は、調整領域Aaの布地6に投射された裁断パターン7を視認しながらコントローラ41を操作し、布地6が有する柄61に対して適合する位置となるように、裁断パターン7の位置と、布地6の法線方向の軸周りの回転角度を調整する。操作者がコントローラ41を操作するに伴い、コントローラ41から投射データ調整部45に操作信号が入力され、操作信号を受けた投射データ調整部45により、上記操作信号によって表される裁断パターン7の位置及び回転角度となるように投射データ作成部44の出力情報が調整される。こうして、プロジェクタ5から投射される裁断パターン7の位置及び角度を、操作者がコントローラ41を操作してリアルタイムで調整するようになっている。これにより、操作者は、裁断パターン7で表されるパターンピースを布地6の上に配置して移動させるような感覚が得られる。
【0039】
裁断パターン7の位置及び角度が確定すると、操作者のコントローラ41の操作により、投射データ調整部45から、確定した裁断パターン7の位置及び角度に関する情報が配置データ調整部93へ出力される。配置データ調整部93は、入力された裁断パターン7の位置及び角度に関する情報に基づいて配置データを調整し、調整した配置データを裁断データ生成部94に出力する。
【0040】
裁断データ生成部94は、配置データを、ベルトコンベヤ23による移送による移送距離に基づいて修正し、裁断データを生成する。裁断データ生成部94による配置データの修正は、センサ35によって採取され、画像処理部10と変位量検出部11で検出されたマーカ38の移送距離に基づいて行われる。センサ35、画像処理部10、変位量検出部11及び裁断データ生成部94の機能の詳細は、図5のフローチャートを参照しながら後に詳述する。
【0041】
裁断ユニット制御部29は、裁断データに基づいて裁断ユニット22を駆動し、その結果、裁断ユニット22により、裁断パターン7の形状に沿って布地6が裁断される。こうして、布地6の柄に合わせた位置に裁断パターン7を設定し、高精度に柄合わせが施されたパターンピース8を作製できる。あるいは、布地6の不良部を避けて裁断パターン7を設定し、不良部を含まないパターンピースを作製できる。
【0042】
図5のフローチャートは、裁断装置1にマーカーデータを読み込み、マーカーデータ中の所定の裁断パターンを調整し、調整した裁断パターンを布地6に裁断する場合の裁断装置1の動作を示したものである。図6A乃至6Cは、裁断テーブル2の支持面21上で布地6に対して裁断パターン7の位置の調整と裁断を行う様子を示す工程図である。以下、図6A乃至6Cをしながら、図5に沿って裁断装置1の動作を説明する。
【0043】
まず、ロール保持部22に保持されたロール62から布地6を巻き出して、図6Aに示すように、支持面21の調整領域Aaに配置する(ステップS1)。以下、当初に調整領域Aaに配置された布地の参照番号を6Aとし、この布地6Aが調整領域Aaから裁断領域Acに移送されるに伴って調整領域Aaに配置される布地の参照番号を6Bとする。当初に調整領域Aaに配置された布地6Aと、この布地6Aに続いて調整領域Aaに配置される布地6Bは連続しているが、切り離されてもよい。
【0044】
続いて、調整領域Aaに配置した布地6Aの表面に、プロジェクタ5で裁断パターン7を投射する(ステップS2)。操作者は、布地6Aの表面に投射された裁断パターン7を確認し、コントローラ41を操作し、布地6Aの柄61に適合するように裁断パターン7の位置を調整する(ステップS3)。裁断パターン7の位置の調整は、コントローラ41の選択ボタンを操作して対象の裁断パターン7を選択し、コントローラ41の十字状の方向ボタンを操作して移動方向と移動距離を入力する。なお、裁断パターン7は、移動方向及び移動距離に加えて、布地6Aの法線方向の軸周りの回転角度を調整してもよい。裁断パターン7の位置の調整が終了すると、コントローラ41を操作して調整の終了を指令する。これにより、データ制御部9では、裁断パターン7の位置調整後の配置データが、配置データ調整部93から裁断データ生成部94に入力される。
【0045】
続いて、操作者がコントローラ41を操作して裁断の開始を指令すると(ステップS4)、裁断ユニット3を駆動して裁断ヘッド33を布地6Aの上に移動させ、図6Aに示すように布地6Aの表面にマーカ38を配置する(ステップS5)。マーカ38は、エアシリンダ36のロッドを突出して電磁石37と共に布地6Aの表面に近接させた後、電磁石37の通電を停止して消磁し、布地6Aの表面に落下させて配置する。引き続いて、裁断ユニット3をわずかに移動させ、センサ35をマーカ38の上に配置した状態で、センサ35を起動し、マーカ38の位置を検出する(ステップS6)。マーカ38の位置は、センサ35の発光部がレーザの走査光を出射し、この発光部からの光がマーカ38で反射してなる反射光を受信部が受け、受信部からの出力を画像処理部10の画像処理により基準線LX,LYを検知し、変位検出部11の情報処理により、基準線LX,LYの交点の機械座標を、調整領域の基準点Paの座標として検出する。基準点Paの座標は、配置データ調整部93で調整されて出力された配置データの座標系に、対応付けられる。
【0046】
布地6Aの移送前のマーカ38の位置が検出されると、ベルトコンベヤ23を駆動し、図6Bに示すように、調整領域Aaにある布地6Aをマーカ38が配置された状態で裁断領域Acに移送する(ステップS7)。これに伴い、調整領域Aaにある布地6Aに連続する布地6Bが、ロール62から巻き出されて調整領域Aaに配置される。なお、図5のフローチャートには、最初に調整領域Aaに導入された布地6Aに対する調整工程と裁断工程のみを記載しているが、この布地6Aに連続する布地6Bに対して、先行する布地6Aに裁断工程を行うのと並行して、裁断パターン7の調整工程を行う。
【0047】
布地6Aを調整領域Aaから裁断領域Acに移送した後、布地6Aの上のマーカ38の位置を検出する(ステップS8)。マーカ38の位置は、調整領域Aaで検出したのと同様に、裁断ユニット3を駆動して裁断ヘッド33をマーカ38の近傍に移動し、センサ35を作動させて検出する。裁断領域Acでのマーカ38の位置は、マーカ38の基準線LX,LYの交点の機械座標を、裁断領域の基準点Pcの座標として検出する。引き続いて、マーカ38を裁断領域Acの布地6Aの上から回収する(ステップS9)。マーカ38の回収は、裁断ユニット3を駆動して裁断ヘッド33を布地6Aの上に移動させ、エアシリンダ36のロッドを突出して電磁石37をマーカ38に近づけ、電磁石37に通電して励磁し、マーカ38を電磁石37に吸着させて行う。この後、布地6Aの移送前後におけるマーカ38の座標に基づいて、データ制御部9で裁断データを生成する(ステップS10)。すなわち、変位量検出部11により、移送前の調整領域Aaにおけるマーカ38の位置を表す基準点Paの座標と、移送後の裁断領域Acにおけるマーカ38の位置を表す基準点Pcの座標から、図6Bに示す布地6Aの移送によるX軸方向の変位量DXと、Y軸方向の変位量DYとを算出する。なお、図6Bにおいて、M0は機械座標の原点である。変位量検出部11によって算出したX軸方向の変位量DXとY軸方向の変位量DYを裁断データ生成部94に出力し、裁断データ生成部94は、配置データ調整部93から出力された裁断パターンの調整後の配置データに、上記X軸及びY軸方向の変位量DX,DYを減じて裁断データを生成する。このように、裁断データ生成部94は、変位量検出部11による変位量に基づいて、配置データの座標変換を行って裁断データを生成する。
【0048】
裁断データ生成部94により裁断データが生成されると、この裁断データを裁断ユニット制御部12に出力し、裁断ユニット制御部12は、裁断データに基づいて裁断ユニット3の動作を開始して裁断を実行する(ステップS11)。裁断ユニット3による裁断領域Acの布地6Aの裁断が実行され、支持面21の裁断領域Ac上に、パターンピース8が作製される。
【0049】
上記ステップS11において、裁断領域Acの布地6Aに対して裁断を実行する間、調整領域Aaの布地6Bに対して、ステップS2〜S3と同様の工程を実行する。すなわち、裁断領域Acで布地6Aの裁断を行うに並行して、調整領域Aaで布地6Bの表面にプロジェクタ5によって裁断パターン7を投射し、この裁断パターン7の位置を調整する。上記ステップS11が完了し、裁断領域Ac上に作製されたパターンピース8及び布地6Aの残部を回収した後、調整領域Aaの布地6Bに対して、ステップS4〜S11と同様の工程を実行する。すなわち、調整領域Aaの布地6Bに関し、操作者がコントローラ41を介して裁断の開始を指令し、裁断ユニット3で布地6Bの表面にマーカ38を配置し、センサ35でマーカ38の位置を検出する。この後、調整領域Aaにある布地6Bをマーカ38が配置された状態で裁断領域Acに移送し、布地6Bの上のマーカ38の位置を検出した後、マーカ38を裁断領域Acの布地6Bの上から回収する。布地6Bの移送前後におけるマーカ38の座標に基づいて、データ制御部9で裁断データを生成し、裁断データに基づいて裁断ユニット3を駆動して裁断を実行し、パターンピース8を作製する。
【0050】
以上のように、本実施形態の裁断装置1は、調整領域Aaで布地6A,6Bに対する裁断パターンの位置の調整を行った後、裁断領域Acに布地6A,6Bを移送し、この移送の前後におけるマーカ38の検出位置に基づいて裁断データを修正するので、布地6A,6Bの移送の際にコンベヤ23の作動誤差等が生じても、裁断領域Acに移送した布地6A,6Bに対して、調整領域Aaでの調整位置とずれの無い位置に裁断を行うことができる。その結果、高精度に柄合わせがされたパターンピースを得ることができ、あるいは、布地6A,6Bの不良部分を高精度に避けたパターンピースを得ることができる。
【0051】
また、上記裁断装置1は、センサ35によって位置が検知されるマーカ38を、布地6A,6Bに直接配置し、計測を行うので、布地6A,6Bが調整領域Aaから裁断領域Acへ移送される際の変位量を高精度に検出することができる。
【0052】
また、上記裁断装置1は、布地6Aの裁断を裁断領域Acで行うに並行して、布地6Bに対する裁断パターンの調整を調整領域Aaで行うので、布地6を高い効率で裁断でき、パターンピースを高い効率で作製することができる。
【0053】
なお、上記実施形態において、布地6A,6Bをロール62から巻き出して調整領域Aaに配置したが、独立した矩形の布地を、調整領域Aaに順次配置してもよい。
【0054】
また、上記実施形態において、布地6A,6Bの上に1つのマーカ38を配用いたが、2つ以上の複数のマーカを用いてもよい。すなわち、調整領域Aaにある布地上に3つのマーカを配置し、これらのマーカの位置を検出し、布地の移送の前後における3つのマーカの各々の位置の差分を求め、これらの差分に基づいて、配置データを修正して裁断データを生成してもよい。3つのマーカの位置の差分を求めることにより、布地の移動量のほか、布地の歪みを求めて配置データを修正することができる。また、マーカのX座標及びY座標に加えて、支持面21の法線方向軸周りの角度を検出してもよい。マーカの支持面21の法線方向軸周りの角度を求めることにより、布地の移送の前後における歪みを容易に検出することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、連続した布地6A,6Bに、複数の分離した裁断パターン7,7・・・を設定して複数のパターンピースを作製したが、連続した布地6A,6Bに、連続した裁断パターンを設定して、連続したパターンピースを作製してもよい。例えば、上記実施形態の布地6A,6Bから連続したパターンピースを作製する場合、調整領域Aaに布地6Aを配置し、この布地6Aに相当する裁断パターンの部分の位置調整を行った後、この布地6Aを裁断領域Acに移送すると共に、この布地6Aに連続する布地6Bを調整領域Aaに導く。そして、裁断領域Acの布地6Aに裁断パターンの部分の裁断を行うと共に、調整領域Aaの布地6Bに対して裁断パターンの部分の位置の調整を行う。裁断領域Acの布地6Aの裁断が完了すると、この布地6Bを裁断領域Acに移送し、残りの裁断パターンの部分の裁断を行う。これにより、調整領域Aa又は裁断領域Acよりも広い面積の布地6に対して、調整領域Aa又は裁断領域Acよりも寸法の大きい裁断パターンを裁断することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、シート材としての布地6を裁断して被服用のパターンピースを作製する場合に本発明を適用したが、例えば、布地を裁断してカーテンを作製する場合や、樹脂性のカッティングシートを裁断してステッカーを作成する場合や、炭素繊維シートを裁断してプラスチック部品の補強体を作成する場合にも本発明を適用することができる。すなわち、布以外に、皮革や樹脂膜等、種々のシート状の材料を所定の形状に裁断する場合に、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 裁断装置
2 裁断テーブル
3 裁断ユニット
4 投射制御装置
5 プロジェクタ
6 布地
7 裁断パターン
8 パターンピース
10 画像処理部
11 変位量検出部
12 裁断ユニット制御部
21 支持面
23 ベルトコンベヤ
33 裁断ヘッド
35 センサ
36 エアシリンダ
37 電磁石
38 マーカ
94 裁断データ生成部
Aa 調整領域
Ac 裁断領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を支持する支持面を有し、この支持面に、シート材に対する裁断パターンの位置合わせを行う調整領域と、裁パターンに沿ってシート材の裁断を行う裁断領域とが設けられた裁断テーブルと、
上記調整領域に支持されたシート材に対して裁断を行うべき裁断パターンの配置状態を表示し、所定の裁断パターンの位置を変更する旨の入力に応じて上記裁断パターンの位置を調整するパターン位置調整手段と、
上記裁断テーブルの支持面に支持されたシート材の上に配置されるマーカと、
上記マーカの位置を検出する位置検出手段と、
上記調整領域に支持されたシート材を、上記マーカが配置された状態で上記裁断領域に移送する移送手段と、
上記シート材が調整領域にあるときに上記位置検出手段で検出されたマーカの位置と、上記シート材が裁断領域にあるときに上記位置検出手段で検出されたマーカの位置とに基づいて、上記パターン位置調整手段で調整された後の裁断パターンの配置状態を表す配置データを修正し、裁断を実行するための裁断データを生成する裁断データ生成手段と、
上記裁断データ生成手段で生成された裁断データに基づいて、上記裁断領域に支持されたシート材を裁断する裁断手段と
を備えることを特徴とする裁断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の裁断装置において、
上記裁断手段は、裁断刃を有する裁断ヘッドと、この裁断ヘッドを上記裁断テーブルの支持面上に平面方向に駆動する駆動手段とを有し、
上記裁断手段の裁断ヘッドに、上記マーカをシート材の上に配置し、また、上記マーカをシート材の上から回収するマーカ操作手段が設けられていることを特徴とする裁断装置。
【請求項3】
請求項1に記載の裁断装置において、
上記位置検出手段は、光を出射する発光部と、この発光部からの光が反射してなる反射光が入射する受光部と、この受光部からの出力に基づいて画像処理を行う画像処理部とを有し、
上記マーカは、上記位置検出手段の発光部からの光を反射する反射面と、この反射面の表面に設けられた標的を有し、
上記マーカ操作手段は、上記マーカを磁力で吸着する電磁石を有する
ことを特徴とする裁断装置。
【請求項4】
請求項1に記載の裁断装置において、
上記裁断テーブルの支持面の調整領域に裁断パターンを投射する投射手段を備えることを特徴とする裁断装置。
【請求項5】
シート材を支持する支持面に調整領域と裁断領域とが設けられた裁断テーブルを備える裁断装置を用いてシート材の裁断を行う裁断方法であって、
裁断テーブルの支持面の調整領域にシート材を配置するシート材配置工程と、
上記調整領域に支持されたシート材に対して裁断を行うべき裁断パターンの配置状態を表示し、所定の裁断パターンの位置を調整する調整工程と、
上記調整領域に支持されたシート材の上にマーカを配置するマーカ配置工程と、
上記調整領域に支持されたシート材の上に配置されたマーカの位置を検出する第1マーカ位置検出工程と、
上記調整領域に支持されたシート材を、上記マーカが配置された状態で上記裁断領域に移送するシート材移送工程と、
上記裁断領域に支持されたシート材の上に配置されたマーカの位置を検出する第2マーカ位置検出工程と、
上記シート材が調整領域にあるときのマーカの位置と、上記シート材が裁断領域にあるときのマーカの位置とに基づいて、上記所定の裁断パターンの位置が調整された後の裁断パターンの配置状態を表す配置データを修正し、裁断を実行するための裁断データを生成する裁断データ生成工程と、
上記裁断データに基づいて、上記裁断領域に支持されたシート材を裁断する裁断工程と
を備えることを特徴とする裁断方法。
【請求項6】
請求項5に記載の裁断方法において、
上記シート材移送工程に並行して、第2のシート材を上記調整領域に配置する工程と、
上記第2マーカ位置検出工程の後に、上記調整領域に支持された第2のシート材の上にマーカを配置する工程と、
上記裁断工程と並行して、上記調整領域に支持された第2のシート材に対して裁断を行うべき裁断パターンの配置状態を表示し、所定の裁断パターンの位置を調整する工程と、
上記裁断工程により第1のシート材から作成されたパターンピースとシート材の残部を裁断領域から撤去する工程と、
上記調整領域に支持された第2のシート材の上に配置されたマーカの位置を検出する工程と、
上記調整領域に支持された第2シート材を、上記マーカが配置された状態で上記裁断領域に移送する工程と、
上記裁断領域に支持された第2のシート材の上に配置されたマーカの位置を検出する工程と、
上記第2のシート材が調整領域にあるときのマーカの位置と、上記第2のシート材が裁断領域にあるときのマーカの位置とに基づいて、上記第2のシート材に関して所定の裁断パターンの位置が調整された後の裁断パターンの配置状態を表す配置データを修正し、裁断を実行するための裁断データを生成する工程と、
上記裁断データに基づいて、上記裁断領域に支持された第2のシート材を裁断する工程と
を備えることを特徴とする裁断方法。
【請求項7】
請求項6に記載の裁断方法において、
上記第2のシート材は第1のシート材と連続であり、上記第2のシート材に対して裁断を行う裁断パターンは、上記第1のシート材に対して裁断を行う裁断パターンと連続であることを特徴とする裁断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公開番号】特開2011−167786(P2011−167786A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32570(P2010−32570)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(591264474)有限会社ナムックス (10)
【Fターム(参考)】