説明

装具用ストラップ

【課題】 装具の使用性を向上することのできる装具用ストラップを提供する。
【解決手段】ストラップ21は、基端部の一側面を第1装着部12の壁部16に当接させてなるストラップ本体22と、該ストラップ本体22の他側面の全面に接合されてなるカバー部材23と、ストラップ本体22とカバー部材23との間に挟着されてなるガイド部材24とより構成されている。ガイド部材24は、熱可塑性ポリエステルエラストマーからなる弾性体より形成されている。このガイド部材24はストラップ21の基端部に円弧状に配設されていることから、同ストラップ21は、第1装着部12の当接面17上から退避するように付勢されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、リハビリに使用される装具、或いは肘、膝等を保護するプロテクター等の装具を人体の所定部位に固定するための装具用ストラップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に示すように、リハビリに使用される装具には、同装具を人体に固定すべくストラップが設けられている。当該ストラップは、一対のバンドからなり、各バンドはそれぞれの一端が装具に固定されている。また、各バンドにはそれぞれ面ファスナーが設けられている。そして、人体の所定部位に装具を当接させた状態で、各バンドと装具とで人体を緊結するようにそれぞれのバンドを接合し、複数のストラップで人体を締め付けることにより、装具が人体の所定部位に固定されるようになっている。
【特許文献1】特開2004−166811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来のストラップは、長年の使用の結果、装具を固定した形状でくせがついて変形したり、自重等によって撓んだ形状となったりしやすい。このため、装具を取り外した後も、ストラップが装具を覆う、或いは装具を塞ぐように、その内部で横たわったままとなりやすい。すると、装具を装着するとき、当該ストラップが装着を邪魔することとなる。そうした場合、使用者は、装具を装着する都度、まず、ストラップを装具の内部から引き起こし、装具の内部を開放するという煩雑な操作を行う必要があった。従って、上記従来のストラップを備える装具は、使い勝手(使用性)の点においてなお改善の余地を残すものとなっていた。
【0004】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装具の使用性を向上することのできる装具用ストラップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の装具用ストラップは、人体の所定部位に当接される装具を、当該人体に固定する装具用ストラップであって、前記装具の当接面上に架設されて同装具を前記人体の所定部位に固定した固定位置と、前記装具の当接面上から退避されて同装具を人体の所定部位に装着する装着位置との2つの位置の間を変動するストラップ本体と、前記ストラップ本体を前記装着位置に保持するガイド部材とを有してなることを要旨とする。
【0006】
このように構成した場合、ストラップ本体は、ガイド部材により、装具の当接面上から退避するように案内されて装着位置に保持されているため、人体から装具を外した場合でも、同ストラップ本体が装具の当接面上に横たわって同装具の装着の邪魔となることが抑制される。従って、本構成によれば、人体の所定部位に装具を装着する際には、ストラップ本体が装具の当接面上に横たわって邪魔となることがなく、装着の都度ストラップ本体を引き上げる等の煩雑な操作が省略される。このため、装具の使用性の向上が図られる。
【0007】
請求項2に記載の発明の装具用ストラップは、請求項1に記載の発明において、前記ガイド部材は、前記ストラップ本体を前記当接面上から退避させるように付勢する弾性体より形成されていることを要旨とする。
【0008】
このように構成した場合、固定を解除した状態にあるストラップ本体は、ガイド部材の弾性力により、装具の当接面上から速やかに退避する。このため、装具の当接面が速やかに開放される。
【0009】
請求項3に記載の発明の装具用ストラップは、請求項2に記載の発明において、前記ガイド部材は、前記ストラップ本体に対し、同ストラップ本体の前記人体側となる一面上に接合されてなることを要旨とする。
【0010】
このように構成した場合、ガイド部材は人体側に配設されるため、固定を解除した状態にあるストラップ本体を装具の当接面上から跳ね上げるように退避させることができるようになる。また、ガイド部材はストラップ本体に接合されることから、固定を解除した状態にあるストラップ本体に対して付勢力が伝達されやすくなる。
【0011】
請求項4に記載の発明の装具用ストラップは、請求項3に記載の発明において、前記ガイド部材と前記人体の表面との間には保護部材が設けられてなることを要旨とする。
このように構成した場合、ガイド部材と人体との間に保護部材が配置されることから、ガイド部材が人体に直接接触することがなく、良好な肌触りを有する保護部材が人体の表面に密接される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の装具用ストラップによれば、装具の使用性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明の装具を、使用者の脚部に装着されるリハビリ用装具(短下肢装具、長下肢装具等)とした第1の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態のリハビリ用装具11は、使用者の足底に装着される第1装着部12と、該第1装着部12の後端に固定されて上下方向に延設されてなる支持部13と、該支持部13の上端に固定されてなる第2装着部14とより構成されている。
【0014】
図2に示すように、第1装着部12は、使用者の足底に配設される載置部15と、該載置部15の側縁から上方に立設されてなる壁部16とを備えている。載置部15は、足底に当接される当接面17を有している。図1に示すように、第2装着部14は、使用者の脹脛の表面形状に沿った半円弧状に形成されている。第2装着部14は、その内面に、脹脛の表面に当接される当接面18を有している。
【0015】
第1装着部12の壁部16には、二対の装具用ストラップ(以下、ストラップと称す)の一端部(基端部)がリベット19により固定されている。ストラップは、細長く延びる帯状に形成されており、リベット19を軸としてそれぞれ上下方向に回動可能に構成されている。ここで、図2に示すように、相対向する壁部16のうち、一側(同図右側)の壁部16に設けられたストラップを第1ストラップ21、他側(同図左側)の壁部16に設けられたストラップを第2ストラップ31とする。
【0016】
また、図1に示すように、第2装着部14の一側縁部(図1では左側縁部)には、第1ストラップ21の一端部(基端部)がリベット(図示略)により固定されている。この第2装着部14の第1ストラップ21は、前記第1装着部12の同部材に比べて、幅が大きく設定されている以外は同様の構成を有している。一方、第2装着部14の他側縁部(図1では右側縁部)には、第2ストラップ31の一端部(基端部)がリベット(図示略)により固定されている。この第2装着部14の第2ストラップ31は、前記第1装着部12の同部材に比べて、幅が大きく設定されている以外は同様の構成を有している。
【0017】
まず、第1ストラップ21について説明する。図2及び図3に示すように、第1ストラップ21は、基端部の一側面を壁部16に当接させてなるストラップ本体22と、該ストラップ本体22の他側面の全面に接合されてなるカバー部材23と、ストラップ本体22とカバー部材23との間に挟着されてなるガイド部材24とより構成されている。
【0018】
ストラップ本体22は、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維及びポリプロピレン繊維のうちのいずれか、又はこれらの混紡糸の他、スフ糸、織物等により構成されている。ストラップ本体22の一側面(表面)において、その周縁部を除く部分には雄面ファスナー25が設けられている。
【0019】
カバー部材23は合成皮革より形成されている。このカバー部材23には、抗菌作用を付与すべく抗菌剤が練り込まれている。この抗菌剤としては、銀、銅、亜鉛、二酸化チタン等の無機系抗菌剤が挙げられる。さらに、同カバー部材23の表面には、防汚作用を付与すべくフッ素処理が施されている。このフッ素処理は、フッ素ガスと酸素ガスとを含有する混合ガスをカバー部材23の表面に接触させる処理である。また、カバー部材23には、耐アルコール性を付与すべく、ポリウレタンを主成分とするコーティング剤組成物が含浸されている。
【0020】
なお、前記カバー部材23の表面とは、ストラップ本体22との接合面の反対側に位置する面を意味する。同カバー部材23は、前記ストラップ本体22と同一形状を有し、両者の周縁が一致するようにストラップ本体22に重ね合わされている。
【0021】
ガイド部材24は、第1ストラップ21の基端部(第1ストラップ21の長さ方向中央部より基端側)に配設されている。このガイド部材24は、熱可塑性ポリエステルエラストマー(登録商標ハイトレル、デュポン社製)からなる弾性体より形成されている。このガイド部材24の厚みは凡そ1mmである。同ガイド部材24は、良好な形状保持性及び復元性を確保すべく、そのショアC硬度が10〜50の範囲に設定されているのが好ましい。なお、ガイド部材24は、人間の力により容易に屈曲して所望の形状保持性及び復元性を確保することができれば、上記の範囲を外れる硬度であってもよく、厚みも特に限定されるものではない。
【0022】
図4に示すように、ガイド部材24は、射出成形により断面円弧状をなすように湾曲形成されている。ガイド部材24は、ストラップ本体22を当接面17(18)上から退避させるよう付勢すべく上に凸とされた状態で、その上方にストラップ本体22が、下方にカバー部材23が位置するように重ね合わせた後、これらの周縁より内側(雄面ファスナー25の外周)を縫合することにより上記第1ストラップ21が構成される。これにより、同ガイド部材24は、第1ストラップ21を前記当接面17(18)上から退避させるよう付勢すべく配設されている。
【0023】
次に、第2ストラップ31について説明する。この第2ストラップ31は、上記第1ストラップ21とほぼ同様の構成(ほぼ左右対称の構成)及び同等の長さを有している。ここでは、第1ストラップ21と相違する点について記載する。
【0024】
図2に示すように、第2ストラップ31は、基端部の一側面を壁部16に当接させてなる保護部材32と、該保護部材32の他側面の全面に接合されてなるストラップ本体22と、保護部材32とストラップ本体22との間に挟着されてなるガイド部材24とより構成されている。ガイド部材24は、ストラップ本体22の人体側となる一面(他側面)上に縫合されて同ストラップ本体22と一体で構成されている。
【0025】
保護部材32は、上記と同様の合成皮革よりなるカバー部材23と、該カバー部材23の表面に接合された接触部33とより構成されている。この接触部33は、ポリウレタン繊維及び綿から構成される丸編の生地、すなわちメリヤス生地より形成されている。なお、当該接触部33は、人体に対して好適な肌触りが得られれば、いずれの材質より形成されてもよい。
【0026】
また、第2ストラップ31のストラップ本体22の一側面(表面)において、その周縁部を除く部分には雌面ファスナー34が設けられている。この第2ストラップ31は、ガイド部材24により、装着部12(14)の当接面17(18)上から退避するように前記第1ストラップ21とは逆方向へ付勢されている。
【0027】
そして、第1ストラップ21及び第2ストラップ31それぞれのストラップ本体22の雄面ファスナー25と雌面ファスナー34とが貼着された状態で、第1装着部12が両ストラップ21,31によって足底に固定されるようになっている。このときの両ストラップ21,31の位置を固定位置とする。また、雄面ファスナー25と雌面ファスナー34とが分離して前記当接面17(18)上から退避され、同リハビリ用装具11を人体の所定部位に装着し得るときの両ストラップ21,31の位置を装着位置とする。これら第1ストラップ21及び第2ストラップ31は、それぞれガイド部材24によって装着位置に保持されるようになっている。
【0028】
以下に、本実施形態のリハビリ用装具11の作用について説明する。
同リハビリ用装具11を脚部に固定する場合には、まず足底を第1装着部12の載置部15(当接面17)上に載置するとともに、脹脛表面に第2装着部14の当接面18を当接させる。このとき、ガイド部材24はストラップ21,31の基端部に円弧状に配設されていることから、第1装着部12の第1ストラップ21及び第2ストラップ31は、ともに第1装着部12の当接面17上から退避するように付勢されている。その結果、両ストラップ21,31は、それぞれ当接面17から遠ざかる方向に倒れており、第1装着部12の開口が開放されている。すなわち、足底を第1装着部12の載置部15(当接面17)上に載置する際に両ストラップ21,31が邪魔となることがなく、使用者の足底が第1装着部12に速やかに導入される。
【0029】
また、第2装着部14の第1ストラップ21及び第2ストラップ31に関しても、ガイド部材24により、ともに当接面18上から退避するように付勢されているため、当接面18から遠ざかる方向に倒れており、第2装着部14の開口が開放されている。すなわち、脹脛表面に第2装着部14を当接する際に両ストラップ21,31が邪魔となることがなく、第2装着部14の位置合わせが速やかに行われる。
【0030】
上述のように足底を第1装着部12に導入するとともに、第2装着部14を脹脛表面に位置合わせした後、まず、図5に示すように、足の甲に第1装着部12の両ストラップを締め付ける。すなわち、第1ストラップ21及び第2ストラップ31の先端部を手指で把持して両者を互いに引っ張り、同第2ストラップ31の保護部材32を足の甲に密接させた状態で、両ストラップの雄面ファスナー25と雌面ファスナー34とを貼着する。その結果、両ストラップにより足の甲が締め付けられ、足底に第1装着部12が固定される。
【0031】
次いで、これと同様に、第2装着部14の両ストラップ21,31を互いに引っ張り、第2ストラップ31の保護部材32を足の脛(すね)に密接させた状態で、両ストラップ21,31の雄面ファスナー25と雌面ファスナー34とをそれぞれ貼着する。その結果、両ストラップ21,31により足の脛が締め付けられ、脹脛表面に第2装着部14が固定される。
【0032】
さて、リハビリ用装具11を脚部から取り外す際には、まずストラップ21,31の面ファスナー25,34同士の貼着をそれぞれ解除する。すると、ストラップ21,31による脚部(足の甲及び脛)の締め付けが解除され、脚部からリハビリ用装具11が取り外されるようになる。この状態において、各ストラップ21,31は、ガイド部材24の付勢力により、第1装着部12及び第2装着部14それぞれの当接面17,18上から退避するように跳ね上がる。その結果、両装着部12,14の開口が開放される。よって、リハビリ用装具11を再度装着しようとする際にも、ストラップ21,31が当該装着の邪魔になることがなく、同リハビリ用装具11が人体に容易に装着される。
【0033】
ここで、装着部12,14の当接面17,18上にそれぞれストラップ21(31)が横たわった状態で、使用者がリハビリ用装具11を所定部位に装着しようとする場合には、その装着前にストラップ21(31)を起こして当接面17,18を開放する操作が必要である。この操作は、片手が不自由な片麻痺者等にとっては、相当の時間を要し、極めて煩雑なものであった。これに対し、本実施形態のリハビリ用装具11によれば、上記のような煩雑な操作を必要とせず、手放しの状態で人体の所定部位に装着することができ、使用性の向上が図られる。なお、両手の自由が利く健常者にとっても、上記と同等の効果が発揮されることが理解されるべきである。
【0034】
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 各ストラップ21,31は、ガイド部材24により、それぞれ装着部12,14の当接面17,18上から退避するように付勢されている。このため、本実施形態では、装着部12,14の当接面17,18上にそれぞれストラップ21(31)が横たわり、同ストラップ21(31)がリハビリ用装具11の装着時の邪魔となることがない。
【0035】
・ ガイド部材24はストラップ本体22と一体で接合されている。このため、ガイド部材24の付勢力がストラップ本体22に伝達されやすくなる。従って、解除状態にあるストラップ21(31)を装着部12,14の当接面17,18上から容易に退避させることができる。
【0036】
・ ガイド部材24をストラップ本体22に接合して両者を一体で構成することにより、ガイド部材24の弾性力を介してストラップ21,31の引張強度の向上が図られている。このため、ストラップ21,31を人体に締め付けるべく同ストラップ21,31を所定方向に強く引っ張る場合でも、ストラップ21,31の劣化を好適に抑制することができる。またこのように、ストラップ21,31を所定方向に強く引っ張る際には、リベット19に起因する反力によりストラップ21,31の基端部に剪断応力が生じてしまう。しかしながら、本実施形態ではこうした剪断応力は、ガイド部材24が伸張することで弱められるため、ストラップ21,31の基端部の劣化が抑制される。従って、本実施形態のリハビリ用装具11によれば、ストラップ21,31の耐久性の向上を図ることができる。
【0037】
・ 人体の所定部位にリハビリ用装具11が固定された際には、人体の表面(足の甲及び脛)に保護部材32が密接される。この保護部材32には、抗菌作用及び防汚作用が付与されているため、リハビリ用装具11を長時間使用する際にも、汗や湿気等によってカビ等が発生することがなく、汚れも生じにくい。すなわち、人体に密接する部位を長期に亘って清潔及び衛生的に保つことができる。また、この保護部材32において、人体の表面との接触部位(接触部33)は、当該人体に対する触感(肌触り)が良好な素材から形成されている。このため、使用者は、リハビリ用装具11を長時間使用する場合でも特に違和感が生じることがなく、快適な使用が可能となる。
【0038】
・ 外部に露出する第1ストラップ21のカバー部材23も、抗菌作用及び防汚作用を有する合成皮革より形成されているため、リハビリ用装具11を長時間使用する場合でも汚れが生じにくい。その結果、外部に露出する部位(カバー部材23)を清潔な状態で維持することができる。また、同カバー部材23は、耐溶媒性(耐アルコール性)にも優れている。このため、例えば、治療に使用される薬品等がカバー部材23に付着した場合でも、同カバー部材23の劣化が抑制される。従って、ストラップ21の耐久性を向上することができる。
【0039】
・ ガイド部材24はリベット19の近傍(ストラップの基端部)に配設されている。すなわち、ストラップ21(31)が変動する際の重心付近にガイド部材24が配設される。このため、固定を解除した状態にあるストラップ21(31)を、装着部12,14の当接面17,18上から一層容易且つスムーズに変動させることができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明の装具をリハビリ用装具11とした第2の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。第2の実施形態は、足の甲の締め付けに係る構成の点でのみ上記第1の実施形態と相違するので、その相違点を中心にして説明する。
【0040】
図6に示すように、本実施形態の第3ストラップ41は、第1の実施形態の第1ストラップ21に比べて長さが大きく構成されている。この第3ストラップ41は、基端部一側面を壁部16に当接させてなるカバー部材23と、該カバー部材23の他側面の全面に接合されてなるストラップ本体22と、カバー部材23とストラップ本体22との間に挟着されてなるガイド部材24とより構成されている。
【0041】
ストラップ本体22の長さ方向中央部より基端側に位置する表面には雌面ファスナー34が設けられている。一方、同ストラップ本体22の長さ方向中央部より先端側に位置する表面には雄面ファスナー25が設けられている。第3ストラップ41は、ガイド部材24により、第1装着部12の当接面17上から退避するように付勢されている。
【0042】
また、本実施形態では、上記第1の実施形態における第2ストラップ31に代えて、締め付け具43が設けられている。この締め付け具43は、第1装着部12の壁部16にリベット19により固定されてなるタブ44と、該タブ44の先端部に取着されてなるリング45とより構成されている。
【0043】
第1装着部12を足底に固定する場合には、まず足底を第1装着部12の載置部15(当接面17)上に載置する。このとき、第3ストラップ41は、ガイド部材24によって第1装着部12の当接面17上から退避するように付勢されているため、当接面17から遠ざかる方向に倒れており、第1装着部12の開口が開放されている。すなわち、足底を第1装着部12の載置部15(当接面17)上に載置する際に第3ストラップ41が邪魔となることがなく、使用者の足底が第1装着部12に速やかに導入される。
【0044】
そして、図7に示すように、第1装着部12の載置部15(当接面17)上に足底を載置した状態で、第3ストラップ41の先端部を締め付け具43のリング45に挿通し、次いで同第3ストラップ41を引っ張り、その中央部(雄面ファスナー25と雌面ファスナー34との境界付近)で先端部を折り返す。続いて、同第3ストラップ41の先端部を基端部側へと引っ張り、足の甲に対向するカバー部材23を当該足の甲に密接させた状態で、雄面ファスナー25と雌面ファスナー34とを貼着する。すると、第3ストラップ41により足の甲が締め付けられ、足底に第1装着部12が固定される。
【0045】
足底から第1装着部12を取り外す際には、まず、第3ストラップ41の雄面ファスナー25と雌面ファスナー34とを分離し、同第3ストラップ41の先端部をリング45から引き抜く。すると、第3ストラップ41による足の甲の締め付けが解除される。この状態で、第3ストラップ41は、ガイド部材24の付勢力により、第1装着部12の当接面17上から退避するように跳ね上がる。その結果、第1装着部12の開口が開放される。よって、リハビリ用装具11を再度装着しようとする際にも、第3ストラップ41が当該装着の邪魔になることがなく、同リハビリ用装具11が人体に容易に装着される。
【0046】
なお、両実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図8に示すように、第1の実施形態の第1ストラップ21において、それぞれカバー部材23を省略してもよい。
【0047】
・ 第1の実施形態の第2ストラップ31及び第2の実施形態の第3ストラップ41において、それぞれ保護部材32を省略してもよい。
・ 第1の実施形態の第2ストラップ31において、接触部33を省略してもよい。
【0048】
・ 第2の実施形態の第3ストラップ41において、人体の表面との接触部位(カバー部材23の中央部より基端側)に上記と同様の接触部33を設けてもよい。この場合、第3ストラップ41の基端側は、第1の実施形態の保護部材32と同様の構成となる。
【0049】
・ 図9に示すように、両実施形態において、ストラップ本体22の他側面の全面に亘ってガイド部材24を設ける構成を採用してもよい。この場合、ストラップ本体22に所定の付勢力を付与すべく、ガイド部材24は基端部が弧状に湾曲形成される。同構成によれば、ストラップ本体22に対してより一層強い付勢力が付与されるため、固定を解除した状態にあるストラップ21,31をそれぞれ装着部12,14の当接面17,18上からさらに容易に退避させることができる。
【0050】
・ 両実施形態では、カバー部材23及び保護部材32のそれぞれがストラップ本体22の全面を覆う構成を採用したが、これを以下のように変更してもよい。すなわち、カバー部材23及び保護部材32のそれぞれがストラップ本体22の一部のみを覆う構成としてもよい。この構成としては、例えば、ストラップ本体22の先端部のみにカバー部材23(保護部材32)を設ける等が挙げられる。この場合、ストラップ21,31を人体に締め付ける際に把持される部位(先端部)の汚れが効果的に抑制される。
【0051】
・ 両実施形態において、ガイド部材24をストラップ本体22と各別に設ける構成を採用してもよい。
・ 両実施形態のカバー部材23及び保護部材32は、抗菌性や防汚性等を特に要求しない場合に限っては、如何なる材料より形成されてもよい。すなわち、カバー部材23及び保護部材32を、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維及びポリプロピレン繊維のうちのいずれか、又はこれらの混紡糸の他、スフ糸、織物等により形成してもよい。
【0052】
・ 両実施形態のガイド部材24は、人間の力により容易に屈曲して所望の形状保持性及び復元性を確保することができれば、いずれの樹脂より形成されてもよい。この樹脂としては、例えば、ポリアミド系エラストマー、ウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマーの他、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。
【0053】
・ 両実施形態において、第2装着部14に設けられた各ストラップ21,31を以下のように変更してもよい。すなわち、図10に示すように、第2装着部14に上記第2の実施形態と同様の第3ストラップ41及び締め付け具43を設けてもよい。当該ストラップ41のストラップ本体22の先端には、その表面から外方へ浮き上がるように形成された把持部51が突設されている。そして、この把持部51を手指で把持することにより、面ファスナー25,34同士の着脱が容易とされる。なお、この把持部51を第1ストラップ21及び第3ストラップ41のストラップ本体22にも設けてもよい。
【0054】
・ 両実施形態において、ストラップ本体22と、各部材(ガイド部材24、カバー部材23、保護部材32)とを、両面テープ、接着剤又は高周波ウエルダー加工により接合してもよい。すなわちこの場合、ストラップ本体22と前記各部材との対向面にそれぞれ両面テープ、接着剤又は高周波ウエルダー加工が施され、ストラップ本体22と前記各部材とを接合することによりストラップが構成される。
【0055】
・ 両実施形態において、各ストラップは、ストラップ本体22、ガイド部材24及びカバー部材23(保護部材32)を重ね合わせた状態でこれらを縫合することにより構成されたが、これを以下のように適宜変更してもよい。例えば、まずストラップ本体22とカバー部材23(保護部材32)とを重ね合わせ、それらの周縁部のうち3辺を縫合して袋状に構成する。すなわち、残りの1辺は開口されており、その状態で当該開口からガイド部材24を両部材間に挿入する。その後、残りの1辺を塞ぐように前記開口を縫合する。このとき、ガイド部材24をストラップ本体22に縫合してこれらを一体で形成するか否かは適宜変更されてもよい。
【0056】
・ 両実施形態において、射出成形後のガイド部材24の形状は、ストラップ本体22に対して所望の付勢力を付与することができればいずれの形状であってもよく、例えば平板状等であってもよい。
【0057】
・ 両実施形態において、ガイド部材24は、射出成形の他、以下の方法により製造されるものであってもよい。すなわち、この種の製造方法としては、例えば、平板状に成形されたシートを成形型の中に入れ、その状態で当該シートを加熱して所定の形状に変形するもの等が挙げられる。
【0058】
・ 両実施形態において、各ストラップ本体22の面ファスナー25,34を、雄面ファスナーと雌面ファスナーとを混合させたフリー面ファスナーに変更してもよい。
・ 両実施形態において、ストラップ本体22に設けられる面ファスナーとしては、両面面ファスナー、伸縮面ファスナー等の他、これらのうちいずれかと前記フリー面ファスナーとの組み合わせによるものを採用してもよい。
【0059】
・ 第1の実施形態において、第2ストラップ31の長さを、第1ストラップ21よりも短く設定してもよい。また、第4ストラップの長さを、第3ストラップ41よりも短く設定してもよい。この場合、製造コストの低減を図ることができる。
【0060】
・ 第1の実施形態において、雄面ファスナー25と雌面ファスナー34との位置関係を変更してもよい。すなわちこの場合、第1ストラップ21及び第3ストラップ41に雌面ファスナー34が、第2ストラップ31及び第4ストラップに雄面ファスナー25が設けられる。
【0061】
・ 第1の実施形態において、各ストラップ本体22の面ファスナーを当該ストラップ本体22の一部のみに設ける構成に変更してもよい。すなわちこの場合、ストラップ本体22の基端部側の面ファスナーを省略し、その先端部側にのみ面ファスナーを設ける構成が好ましい。
【0062】
・ 第2の実施形態において、雄面ファスナー25と雌面ファスナー34との位置関係を変更してもよい。すなわちこの場合、ストラップ本体22の基端部側に雄面ファスナー25が、先端部側に雌面ファスナー34が設けられる。
【0063】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記ガイド部材は、前記ストラップ本体の基端部に接合されてなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の装具用ストラップ。この構成によれば、固定を解除した状態にあるストラップ本体を装具の当接面上から容易に退避させることができる。
【0064】
・ 前記ストラップ本体にはカバー部材が接合されており、当該カバー部材は、前記ストラップ本体とで前記ガイド部材を挟着してなることを特徴とする請求項3に記載の装具用ストラップ。この構成によれば、ガイド部材はストラップ本体とカバー部材との間に挟着されることから、装具を長期に亘って使用する場合でも同ガイド部材が所定箇所に安定に保持され、その作用効果を好適に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1の実施形態のリハビリ用装具を示す斜視図。
【図2】同実施形態のリハビリ用装具を示す正断面図。
【図3】第1ストラップを示す斜視図。
【図4】同第1ストラップを示す分解正断面図。
【図5】同リハビリ用装具を足底に固定する直前の状態を示す正断面図。
【図6】第2の実施形態のリハビリ用装具を示す正断面図。
【図7】同リハビリ用装具を足底に固定する直前の状態を示す正断面図。
【図8】両実施形態以外のストラップを示す斜視図。
【図9】両実施形態以外のストラップを示す斜視図。
【図10】両実施形態以外のリハビリ用装具を示す部分斜視図。
【符号の説明】
【0066】
11…リハビリ用装具、12…第1装着部、14…第2装着部、17,18…当接面、21…第1ストラップ、22…ストラップ本体、24…ガイド部材、31…第2ストラップ、32…保護部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の所定部位に当接される装具を、当該人体に固定する装具用ストラップであって、
前記装具の当接面上に架設されて同装具を前記人体の所定部位に固定した固定位置と、前記装具の当接面上から退避されて同装具を人体の所定部位に装着する装着位置との2つの位置の間を変動するストラップ本体と、前記ストラップ本体を前記装着位置に保持するガイド部材とを有してなることを特徴とする装具用ストラップ。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記ストラップ本体を前記当接面上から退避させるように付勢する弾性体より形成されていることを特徴とする請求項1に記載の装具用ストラップ。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記ストラップ本体に対し、同ストラップ本体の前記人体側となる一面上に接合されてなることを特徴とする請求項2に記載の装具用ストラップ。
【請求項4】
前記ガイド部材と前記人体の表面との間には保護部材が設けられてなることを特徴とする請求項3に記載の装具用ストラップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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