説明

装着型無線伝送式心電計

【課題】長時間に亘る心電計測を、被験者の胸部に連続的に装着されるため邪魔にならないように小さな電池を具える装着型心電計で行い得るようにして、電極に繋いだ長いコードをなくし、長時間に亘る心電計測を快適にかつ確実に行い得るようにすることにある。
【解決手段】胸部に連続的に装着される心電計であって、心電を計測する心電計測ユニット7および電極3,4,5と、その心電計測ユニット7が計測して出力した心電データを無線で送信する無線送信ユニット8と、心電計測ユニット7の出力信号に基づく単位時間当たり心拍数が所定数を超えた場合、その単位時間当たり心拍数の変化率が所定変化率を超えた場合および前記心電センサの出力信号に基づく拍動間隔が所定範囲を外れた場合のうちの少なくとも一つの場合である高負荷時に無線送信ユニット8を作動させて所定時間に亘る心電データを送信させるCPU7cと、を具えてなる、装着型無線伝送式心電計である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯型の心電計に関し、特に、胸部に連続的に装着される心電計であって、心電センサと、その心電センサが計測したデータを無線で記録装置や無線中継ユニット等に送る無線送信ユニットと、を具える装着型無線伝送式心電計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯型の心電計としては、たとえば特許文献1記載のものが知られており、この心電計は、ケースに二つの電極を露出させ、被験者が両手でそれらの電極に触れながら前記ケースを持った状態で作動させると、両手から電極を介して検出される心電信号をアンプでそれぞれ増幅した後、差動増幅器でそれらの信号の差分を求めて出力信号とし、それを増幅した後デジタル信号に変換し、それをマイクロコンピュータで処理して心電図データとし、その心電図データを上記ケースの表面の表示器で表示する。
【0003】
また、従来の携帯型の心電計としては、いわゆるホルター心電計も知られており、ホルター心電計は、被験者の心臓付近に装着した複数の電極をそれぞれコードで、腰等に装着した本体に送り、それらの電極で検出した心電信号を本体内のカセットテープ等に長時間(通常24時間以上)連続的に記録するものである。
【特許文献1】特開平9−117420
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記前者の従来の携帯型心電計では、両手で電極に触れて心電を計測するものであるため、長時間連続的に心電計測を行うことができないという問題があった。
【0005】
また、上記後者の従来の携帯型心電計では、被験者の心臓付近に装着した複数の電極を腰等に装着した本体にそれぞれ長いコードで繋いでいることから、長時間に亘る心電計測ではそれらのコードが邪魔になって身動きしづらいため生活に支障があり、コードが引っ張られて電極が剥がれる可能性も高いという問題があった。
【0006】
そして、上記問題の解決のためには、電極で検出した心電信号を、電極付近に設けた送信機から無線で本体に伝送することも考えられるが、送信機も胸部に連続的に装着することにすると、送信機の電池も小さなものに限られ、かかる小さな電池で比較的消費電力が多い送信機を連続的に作動させて心電信号を連続的に伝送しようとすると、長時間に亘る計測では電池が持たないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、この発明の装着型無線伝送式心電計は、胸部に連続的に装着される心電計であって、心電を計測する心電センサと、その心電センサが計測して出力した心電データを無線で送信する無線送信ユニットと、前記心電センサの出力信号に基づく単位時間当たり心拍数が所定数を超えた場合、その単位時間当たり心拍数の変化率が所定変化率を超えた場合および前記心電センサの出力信号に基づく拍動間隔が所定範囲を外れた場合のうちの少なくとも一つの場合である高負荷時に前記無線送信ユニットを作動させて所定時間に亘る前記心電データを送信させる送信規制手段と、を具えてなるものである。
【発明の効果】
【0008】
かかるこの発明の装着型無線伝送式心電計にあっては、当該心電計を被験者の胸部に連続的に装着すると、心電センサが被験者の心電を計測し、無線送信ユニットが、その心電センサが計測して出力した心電データ(心電図となるデータ)を無線で、被験者の腰等に装着等した記録装置や無線中継ユニット等に送信し、送信規制手段が、前記心電センサの出力信号に基づく単位時間当たり心拍数が所定数を超えた場合、その単位時間当たり心拍数の変化率が所定変化率を超えた場合および前記心電センサの出力信号に基づく拍動間隔が所定範囲を外れた場合(頻脈時および欠脈時)のうちの少なくとも一つを高負荷時の判断基準とし、その高負荷時に前記無線送信ユニットを作動させて所定時間に亘る前記心電データを送信させる。
【0009】
従って、この発明の装着型無線伝送式心電計によれば、通常時は無線送信ユニットを休止もしくは停止させ、心臓の負荷が高い時だけ無線送信ユニットを所定時間作動させて、例えばその高負荷時以後あるいはその高負荷時の前後の所定時間に亘る心電データを送信させることから、長時間に亘る心電計測でも無線送信ユニットの消費電力が僅かなものとなるので、長時間に亘る心電計測を、被験者の胸部に連続的に装着されるため邪魔にならないように小さな電池を具える装着型心電計で行い得て、電極に繋いだ長いコードによる生活の支障をなくして長時間に亘る心電計測を快適に行い得るようにするとともに、電極に繋いだ長いコードによる電極の剥がれの可能性をなくして長時間に亘る心電計測を確実に行い得るようにすることができる。
【0010】
なお、この発明においては、前記送信規制手段は、前記心電センサの出力信号に基づく単位時間当たり心拍数が所定数範囲内の場合およびその単位時間当たり心拍数の変化率が所定変化率以内の場合のうちの少なくとも一つの場合である安静時に所定時間間隔で前記無線送信ユニットを作動させて所定時間に亘る前記心電データを送信させても良く、このように単位時間当たり心拍数が所定数範囲内の場合およびその単位時間当たり心拍数の変化率が所定変化率以内の場合のうちの少なくとも一つを安静時の判断基準とし、その安静時に所定時間間隔で無線送信ユニットを作動させて所定時間に亘る心電データを送信させるようにすれば、無線送信ユニットの消費電力をさほど増やさずに安静時の心電データも入手し得て、その安静時の心電データと高負荷時の心電データとの比較により、より正確な診断を行うことができる。
【0011】
また、この発明においては、前記送信規制手段は、所定時間間隔で前記無線送信ユニットを作動させて前記心拍数のデータを送信させても良く、このようにすれば、心拍数のデータは僅かなため短時間で送信できるので、無線送信ユニットの消費電力をさほど増やさずに心拍数のデータも定期的に入手し得て、より正確な診断を行うことができる。
【0012】
さらに、この発明においては、前記心電センサは、長手方向に沿って折曲可能な本体の両端部に設けられた二つの電極と、前記本体と別体に形成された分離体に設けられた一つの電極とを有していても良く、このようにすれば、その本体を胸のカーブに合わせて曲げて胸に密着するように装着するとともに、その分離体を本体から充分に離して胸部に装着することで、装着性の良い本体と、それから離れた分離帯とを用いて、比較的広い範囲から良好に心電信号を計測することができる。
【0013】
さらに、この発明においては、少なくとも前記本体の両端部と前記分離体とは、粘着パッドを交換可能に保持していても良く、このようにすれば、粘着パッドの粘着力が低下した場合に粘着パッドを新品に交換し得て、当該心電計を常に確実に胸部に装着し続けることができる。
【0014】
さらに、この発明においては、前記二つの電極のうちの一方は不関電極とされ、前記心電センサは、前記二つの電極のうちの他方と、前記本体と別体に形成された分離体に設けられた一つの電極との出力信号とを増幅回路を介さずに差分回路に入力してその差分信号を心電データとしても良く、このようにすれば、ノイズの混じった電極からの心電信号を増幅せずにその差分をとるので、電極毎の増幅度の差によってノイズが差分回路で打ち消し合わなくなるのを防止し得て、ノイズの極めて少ない心電信号を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1(a),(b),(c)および(d)は、この発明の装着型無線伝送式心電計の一実施例の外観を示す正面図,側面図,裏面図および斜視図、図2は、その実施例の装着型無線伝送式心電計の構造を示す断面図、図3(a),(b)および(c)は、上記実施例の装着型無線伝送式心電計の本体の三つの粘着パッドを示すケース側から見た斜視図、粘着材側から見た斜視図および粘着材側から見た一部切り欠き斜視図、図4は、上記実施例の装着型無線伝送式心電計の本体をその長手方向に沿って折曲された状態で示す断面図、図5は、上記実施例の装着型無線伝送式心電計の本体内の回路構成を示すブロック線図、図6は、図5に示す回路中の心電計測アンプを示す構成図、図7(a)および(b)は、図5に示す回路中のCPUの作動を示す説明図であり、図中符号1は、この実施例の装着型無線伝送式心電計の本体、2は、その本体1と別体に形成された分離体をそれぞれ示す。
【0016】
この実施例の装着型無線伝送式心電計は、図1に示すように、本体1と、分離体2とを具えており、本体1は、概略長円状をなしていて、長円形状の長手方向に沿った二カ所に図4に示すように屈曲可能な屈曲部を持つ合成樹脂製のベース1aと、そのベース1aの正面側を全体的に覆う軟質シリコン製のカバー1bとを有している。ベース1aの裏面側(図1(c)の下側)の、長円形状の長手方向の、上記二箇所の屈曲部で仕切られた両端部の中央部には、二つの電極3,4がそれぞれ設けられており、それらの電極3,4は各々弾性体を介してベース1aに支持されている。一方、分離体2も本体1と同様に、図示しないベースとその正面側を覆うカバー2aとを有し、そのベースの裏面側(図1(c)の下側)の中央部にも、一つの電極5が設けられており、この電極5も弾性体を介して分離体2のベースに支持されている。
【0017】
本体1のベース1aの背面側の、長円形状の長手方向の、上記二箇所の屈曲部で仕切られた両端部には、略D字状の粘着パッド1cが設けられ、また上記二箇所の屈曲部で仕切られた中央部には、略矩形状の粘着パッド1dが設けられている。一方、分離体2の上記ベースの背面側にも、略円盤状の粘着パッド2bが設けられている。
【0018】
ここにおける粘着パッド1c,1dはそれぞれ、図2に示すように、広い凹部を持つ薄いケース1e,1fと、それらのケースの凹部内に多少凹部から盛り上がるように収容された例えば粘着性シリコンからなら粘着材1g,1hとを有しており、粘着パッド2bも同様に、広い凹部を持つ薄いケースと、そのケースの凹部内に多少凹部から盛り上がるように収容された例えば粘着性シリコンからなら粘着材とを有している。そして粘着パッド1c,1dのケース1e,1fは、図4に示すように、本体1のベース1aの背面側に突設されたスナップ掛合部に掛脱可能に弾性的に掛止されて、粘着パッド1c,1dを本体1に対し着脱可能としており、粘着パッド2bのケースも同様に、分離体2のベースの背面側に設けられたスナップ掛合部に掛脱可能に弾性的に掛止されて、粘着パッド2bを分離体2に対し着脱可能としている。
【0019】
さらに、本体1の両端部用の粘着パッド1cの中央部には、図3に示すように、貫通孔1iが設けられており、本体1の電極3,4は、図4に示すように、その貫通孔1iを通って通常は粘着パッド1cの表面よりも突出し、後述する被験者の胸部への本体1の装着時には、胸部の皮膚との当接で、その電極を支持する弾性体を圧縮変形させつつ粘着パッド1cの表面位置まで押し戻され、弾性体の弾性力により附勢されて胸部の皮膚に密接する。一方、分離体2用の粘着パッド2bにも同様に中央部に貫通孔が設けられており、分離体2の電極5は、その貫通孔を通って通常は粘着パッド2bの表面よりも突出し、後述する被験者の胸部への分離体2の装着時には、胸部の皮膚との当接で、その電極を支持する弾性体を圧縮変形させつつ粘着パッド2bの表面位置まで押し戻され、弾性体の弾性力により附勢されて胸部の皮膚に密接する。
【0020】
本体1内には、図2に示すように、本体1の電極3,4および分離体2の電極5とともに心電センサを構成する心電計測ユニット7と、通常の無線送信ユニット8と、それら心電計測ユニット7と無線送信ユニット8とに電源を供給する例えばボタン型電池等の小型の電池9とが収納されており、電池9は、カバー1bに設けられた図示しない蓋の開閉によって適宜交換可能とされている。
【0021】
心電計測ユニット7は、図5に示すように、本体1の二つの電極3,4を接続されるとともに分離体2の電極5をコード6を介して接続されている心電計測アンプ7aと、その心電計測アンプ7aが出力するアナログ心電信号をデジタル心電信号に変換するアナログ/デジタルコンバータ(A/D)7bと、図示しない読み出し専用メモリ(ROM)および書き込み可能メモリ(RAM)等の通常のメモリと、そのメモリにあらかじめ与えられたプログラムに基づき作動し、A/D7bが出力するデジタル心電信号を極めて短い時間間隔で繰り返しサンプリング処理して被験者の単位時間当たり心拍数(以下、単に「心拍数」という。)および拍動間隔を継続的に求めるとともに、後述する送信規制制御を行う、送信規制手段としての通常の中央処理ユニット(CPU)7cと、そのCPU7cに計時データを送るタイマ7dとを有している。
【0022】
ここで、心電計測アンプ7aは、図6に示すように、本体1の二つの電極のうちの一方である電極3と分離体2の電極5とから抵抗Rを介して心電信号を入力されてそれらの心電信号の差分を出力する、差分回路としての差動アンプ7eと、その差動アンプ7eの出力信号を濾波してノイズ成分を減らすハイパスフィルタ7fおよびローパスフィルタ7gと、その濾波後の出力信号を増幅してA/D7bへ出力する通常の終段アンプ7hとを持ち、本体1の二つの電極のうちの他方である電極4は不関電極とされて、その心電計測アンプ7aのグラウンド回路(G)に接続される。
【0023】
そして、心電計測ユニット7のCPU7cは、図7(a),(b)に示す如き通信規制制御を行う。すなわちCPU7cは、被験者の心拍数が図7(a)に示すように所定の設定レベルを超えたか否かと、その心拍数の変化率が図7(b)に示すように所定の設定変化率を超えたか否かと、図示しないが被験者の拍動間隔が所定の設定範囲を外れたか否かとを継続的にチェックするとともに、常時例えば10分間分等の一定時間Ts分の心電データ(心電図となるデータ)を更新しつつメモリに保存し、チェックした心拍数が所定の設定レベルを超えた時、チェックした心拍数の変化率が所定の設定変化率を超えた時およびチェックした拍動間隔が所定の設定範囲を外れた時すなわち頻脈時および欠脈時の何れの時も高負荷時Taと判断して、その高負荷時Taには、無線送信ユニット8を例えば10分間等の所定時間だけ実質的に作動させるとともに、その高負荷時Taを中心とした上記一定時間Ts分の心電データを無線送信ユニット8に出力し、無線送信ユニット8はその一定時間Ts分の心電データを、被験者の腰等に装着等した記録装置や無線中継ユニット等に向けて送信する。
【0024】
また、心電計測ユニット7のCPU7cは、タイマ7dから例えば1時間毎等の所定時間毎に与えられるタイミング信号に基づき、被験者の心拍数が所定数範囲内か否かおよび、その心拍数の変化率が所定変化率以内か否かをチェックし、被験者の心拍数が所定数範囲内でかつその心拍数の変化率が所定変化率以内の時は安静時と判断して、その安静時にも無線送信ユニット8を上記高負荷時よりは短い所定時間だけ実質的に作動させるとともに、その安静時の上記所定時間分の心電データを無線送信ユニット8に出力し、無線送信ユニット8はその短い所定定時間分の心電データを、被験者の腰等に装着等した記録装置や無線中継ユニット等に向けて送信する。
【0025】
さらに、心電計測ユニット7のCPU7cは、タイマ7dから例えば10分毎等の所定時間毎に与えられるタイミング信号に基づき、無線送信ユニット8を短時間だけ実質的に作動させるとともに、その時点での心拍数のデータを無線送信ユニット8に出力し、無線送信ユニット8はその心拍数データを、被験者の腰等に装着等した記録装置や無線中継ユニット等に向けて送信する。
【0026】
かかる実施例の装着型無線伝送式心電計にあっては、当該心電計の本体1および分離体2をその粘着パッド1c,1d,2bの粘着力によって被験者の胸部に連続的に装着すると、本体1の電極3,4および分離体2の電極5とともに心電センサを構成する心電計測ユニット7が被験者の心電を計測し、無線送信ユニット8が、その心電計測ユニット7が計測して出力した心電データを無線で、被験者の腰等に装着等した記録装置や無線中継ユニット等に送信し、また心電計測ユニット7のCPU7cが、心電計測ユニット7の心電計測アンプ7aの出力信号に基づく心拍数が所定数を超えた場合と、その心拍数の変化率が所定変化率を超えた場合と、上記出力信号に基づく拍動間隔が所定の設定範囲を外れた場合の何れの場合でもある高負荷時に、通常は休止もしくは停止している無線送信ユニット8を所定時間だけ実質的に作動させて所定時間に亘る心電データを送信させる。
【0027】
従って、この実施例の装着型無線伝送式心電計によれば、心臓の負荷の高い時だけ無線送信ユニット8を所定時間作動させて、その高負荷時の前後の所定時間に亘る心電データを送信させることから、長時間に亘る心電計測でも無線送信ユニット8の消費電力が僅かなものとなるので、長時間に亘る心電計測を、被験者の胸部に連続的に装着されるため邪魔にならないように小さな電池9を具える装着型心電計で行い得て、電極に繋いだ長いコードによる生活の支障をなくして長時間に亘る心電計測を快適に行い得るようにするとともに、電極に繋いだ長いコードによる電極の剥がれの可能性をなくして長時間に亘る心電計測を確実に行い得るようにすることができる。
【0028】
しかも、この実施例の装着型無線伝送式心電計によれば、CPU7cは、心電計測ユニット7の心電計測アンプ7aの出力信号に基づく心拍数が所定数範囲内の場合またはその心拍数の変化率が所定変化率以内の場合の何れの場合でもある安静時に所定時間間隔で無線送信ユニット8を意常時よりも短い所定時間作動させることから、無線送信ユニット8の消費電力をさほど増やさずに安静時の心電データも入手し得て、その安静時の心電データと高負荷時の心電データとの比較により、より正確な診断を行うことができる。
【0029】
さらに、この実施例の装着型無線伝送式心電計によれば、CPU7cは、所定時間間隔で無線送信ユニット8を作動させて心拍数のデータを送信させ、心拍数のデータは僅かなため短時間で送信できるので、無線送信ユニット8の消費電力をさほど増やさずに心拍数のデータも定期的に入手し得て、より正確な診断を行うことができる。
【0030】
また、この実施例の装着型無線伝送式心電計によれば、心電計測ユニット7は、長手方向に沿って二箇所で折曲可能な本体1の両端部に設けられた二つの電極3,4と、その本体1と別体に形成された分離体2に設けられた一つの電極5とを有していることから、その本体1を胸のカーブに合わせて曲げて胸に密着するように装着するとともに、分離体2を本体1から充分に離して胸部に装着することで、装着性の良い本体1と、それから離れた分離帯2とを用いて、比較的広い範囲から良好に心電信号を計測することができる。
【0031】
さらに、この実施例の装着型無線伝送式心電計によれば、本体1の両端部と分離体2とはそれぞれ、粘着パッド1c,1d,2bを交換可能に保持していることから、それらの粘着パッドの粘着力が低下した場合に粘着パッドを新品に交換し得て、当該心電計を常に確実に胸部に装着し続けることができる。
【0032】
さらに、この実施例の装着型無線伝送式心電計によれば、本体1の二つの電極3,4のうちの電極4は不関電極とされ、心電計測ユニット7の心電計測アンプ7aは、本体1の二つの電極3,4のうちの電極3と、本体1と別体に形成された分離体2に設けられた一つの電極5との出力信号とを増幅回路を介さずに差動アンプ7eに入力してその差分信号を心電データとしていることから、ノイズの混じった電極3,5からの心電信号を増幅せずにその差分をとるので、電極毎の増幅度の差によってノイズが差分回路で打ち消し合わなくなるのを防止し得て、ノイズの極めて少ない心電信号を得ることができる。
【0033】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、例えば、本体1の電極の数は3つ以上でも良く、分離体2の数も2個以上でも良い。また、粘着パッドは本体1や分離体2のベースに対し、スナップ掛合部の代わりに面ファスナで交換可能に保持されていても良い。さらに、無線送信ユニット8が送信する心電データは、所定の方式で圧縮したものでも良い。そして寸法も図示例には限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
かくしてこの発明の装着型無線伝送式心電計によれば、心臓の動きの高負荷時だけ無線送信ユニットを所定時間作動させて、例えばその高負荷時以後あるいはその高負荷時の前後の所定時間に亘る心電データを送信させることから、長時間に亘る心電計測でも無線送信ユニットの消費電力が僅かなものとなるので、長時間に亘る心電計測を、被験者の胸部に連続的に装着されるため邪魔にならないように小さな電池を具える装着型心電計で行い得て、電極に繋いだ長いコードによる生活の支障をなくして長時間に亘る心電計測を快適に行い得るようにするとともに、電極に繋いだ長いコードによる電極の剥がれの可能性をなくして長時間に亘る心電計測を確実に行い得るようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a),(b),(c)および(d)は、この発明の装着型無線伝送式心電計の一実施例の外観を示す正面図,側面図,裏面図および斜視図である。
【図2】上記実施例の装着型無線伝送式心電計の構造を示す断面図である。
【図3】(a),(b)および(c)は、上記実施例の装着型無線伝送式心電計の本体の三つの粘着パッドを示すケース側から見た斜視図、粘着材側から見た斜視図および粘着材側から見た一部切り欠き斜視図である。
【図4】上記実施例の装着型無線伝送式心電計の本体をその長手方向に沿って折曲された状態で示す断面図である。
【図5】上記実施例の装着型無線伝送式心電計の本体内の回路構成を示すブロック線図である。
【図6】図5に示す回路中の心電計測アンプを示す構成図である。
【図7】(a)および(b)は、図5に示す回路中のCPUの作動を示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 本体
1a ベース
1b カバー
1c,1d,2b 粘着パッド
1e,1f ケース
1g,1h 粘着材
1i 貫通孔
2 分離体
2a カバー
3,4,5 電極
6 コード
7 心電計測ユニット
7a 心電計測アンプ
7b アナログ/デジタルコンバータ(A/D)
7c 中央処理ユニット(CPU)
7d タイマ
7e 差動アンプ
7f ハイパスフィルタ
7g ローパスフィルタ
7h 終段アンプ
8 無線送信ユニット
9 電池


【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸部に連続的に装着される心電計であって、
心電を計測する心電センサと、
その心電センサが計測して出力した心電データを無線で送信する無線送信ユニットと、
前記心電センサの出力信号に基づく単位時間当たり心拍数が所定数を超えた場合、その単位時間当たり心拍数の変化率が所定変化率を超えた場合および前記心電センサの出力信号に基づく拍動間隔が所定範囲を外れた場合のうちの少なくとも一つの場合である高負荷時に前記無線送信ユニットを作動させて所定時間に亘る前記心電データを送信させる送信規制手段と、
を具えてなる、装着型無線伝送式心電計。
【請求項2】
前記送信規制手段は、前記心電センサの出力信号に基づく単位時間当たり心拍数が所定数範囲内の場合およびその単位時間当たり心拍数の変化率が所定変化率以内の場合の少なくとも一つの場合である安静時には所定時間間隔で前記無線送信ユニットを作動させて所定時間に亘る前記心電データを送信させることを特徴とする、請求項1記載の装着型無線伝送式心電計。
【請求項3】
前記送信規制手段は、所定時間間隔で前記無線送信ユニットを作動させて前記心拍数のデータを送信させることを特徴とする、請求項1または2記載の装着型無線伝送式心電計。
【請求項4】
前記心電センサは、長手方向に沿って折曲可能な本体の両端部に設けられた二つの電極と、前記本体と別体に形成された分離体に設けられた一つの電極とを有することを特長とする、請求項1から3までの何れか記載の装着型無線伝送式心電計。
【請求項5】
少なくとも前記本体の両端部と前記分離体とは、粘着パッドを交換可能に保持することを特長とする、請求項4記載の装着型無線伝送式心電計。
【請求項6】
前記二つの電極のうちの一方は不関電極とされ、
前記心電センサは、前記二つの電極のうちの他方と、前記本体と別体に形成された分離体に設けられた一つの電極との出力信号とを増幅回路を介さずに差分回路に入力してその差分信号を心電データとすることを特徴とする、請求項4または5記載の装着型無線伝送式心電計。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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