説明

装着部材

【課題】簡易な構成をもって装着部材の正常な装着状態を維持することのできる装着部材を提供する。
【解決手段】靴下1は、膝よりも足Lの先端側の部位を覆う被覆部2を有して足Lに装着されるものであり、被覆部2の内側面には足Lの延びる方向において所定の方向Aに傾斜する繊維状部材3が設けられる。具体的には、被覆部2は筒状をなし、靴下1は被覆部2の内部への足Lの挿入を通じて足Lに装着されるものである。また、上記所定の方向Aは、被覆部2に足Lを挿入する方向Aである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の四肢又は体幹を覆う被覆部を有して身体に装着される装着部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装着部材としては、例えば筒状をなす被覆部を有し、同被覆部の内部に足を挿入することで足に装着されるサポーターが周知である。また、例えば特許文献1に記載のサポーターでは、足の動きに伴いサポーターが脱げたり、回転したりすることを規制するために、サポーターを構成する膝当ての上部に設けられている吊り下げ用ベルトをズボン用ベルトに取り付ける一方、膝当ての下部に設けられている固定用ベルトを足首に巻き付けることで、膝当てを身体に固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−204708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、こうした従来のサポーターにあっては、サポーターを構成する膝当てが脱げたり、回転したりすることを抑制するために、膝当てとは別に吊り下げ用ベルトや固定用ベルトといった装着具が必要となるとともに、使用者はこうした装着具の各種ベルトをズボン用ベルトや足首に取り付けるといった煩雑な作業をその都度強いられるようになる。そのため、従来のサポーターにあっては、その装着作業が繁雑になりその構成も複雑なものとなるといった問題がある。
【0005】
尚、こうした問題は、上述した四肢に装着されるサポーターに限られるものではなく、他に例えば体幹に装着される装具や、靴下及び下着といった一般の衣類等、身体の四肢又は体幹を覆う被覆部を有して身体に装着される装着部材であれば、概ね共通して生じるものである。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成をもって装着部材の正常な装着状態を維持することのできる装着部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
尚、以下においては、装着部材を、一般の衣服はもちろんのこと、装具等を含むものの総称として定義する。
【0008】
(1)請求項1に記載の発明は、四肢又は体幹を覆う被覆部を有して身体に装着される装着部材であって、前記被覆部の内側面には前記四肢又は体幹の延びる方向において所定の方向に傾斜する繊維状部材が設けられることをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、四肢又は体幹の延びる方向において所定の方向に身体に対して被覆部が変位しようとする場合には、被覆部の内側面に設けられた繊維状部材が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、被覆部の上記所定の方向への変位を抑制することができる。従って、簡易な構成をもって装着部材の正常な装着状態を維持することができるようになる。
【0010】
(2)請求項2に記載の発明は、四肢又は体幹を覆う被覆部を有して身体に装着される装着部材であって、前記被覆部の内側面には前記四肢又は体幹の周方向において所定の方向に傾斜する繊維状部材が設けられることをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、四肢又は体幹の周方向において所定の方向に身体に対して被覆部が変位しようとする場合には、被覆部の内側面に設けられた繊維状部材が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、被覆部の上記所定の方向への変位、すなわち回転を抑制することができる。従って、簡易な構成をもって装着部材の正常な装着状態を維持することができるようになる。
【0012】
(3)請求項1又は請求項2に記載の装着部材としては、請求項3に記載の発明によるように、前記被覆部は筒状をなし、前記装着部材は前記被覆部の内部への前記四肢又は体幹の挿入を通じて身体に装着されるといった態様をもって具体化することができる。
【0013】
ここで特に、請求項1に記載の発明に対して本発明を適用する場合には、例えば、繊維状部材は、被覆部の内部に四肢又は体幹を挿入する方向に傾斜するといった態様をもって具体化することができる。この場合、筒状の被覆部を有する装着部材が脱げようとする場合には、被覆部の内側面に設けられた繊維状部材が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、装着部材が脱げることを抑制することができる。またこの場合、筒状の被覆部の内部に身体を挿入する場合には、被覆部の内側面に設けられた繊維状部材が順毛となるため、その挿入に際して生じる抵抗力は小さい。このため、被覆部の内側面に繊維状部材を設けることに起因して四肢又は体幹への装着部材の装着が困難なものとなることはない。
【0014】
また例えば、繊維状部材は、被覆部の内部に四肢又は体幹を挿入する方向とは逆の方向に傾斜するといった態様をもって具体化することができる。この場合、筒状の被覆部を有する装着部材がその挿入方向とは逆の方向に変位しようとする場合には、被覆部の内側面に設けられた繊維状部材が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、装着部材がその挿入方向とは逆の方向に変位することを抑制することができる。
【0015】
(4)こうした請求項3に記載の装着部材としては、例えば請求項4に記載の発明によるように、前記装着部材は靴下であるといった態様をもって具体化することができる。
(5)また、請求項1又は請求項2に記載の発明は、請求項5に記載の発明によるように、前記被覆部はシート状をなし、前記装着部材は前記四肢又は体幹に対する前記被覆部の巻回を通じて身体に装着されるといった態様をもって具体化することができる。
【0016】
(6)請求項1〜請求項3及び請求項5のいずれか一項に記載のこうした装着部材としては、例えば請求項6に記載の発明によるように、前記装着部材は前記四肢又は体幹に装着される装具であるといった態様をもって具体化することができる。
【0017】
ちなみに、上記請求項1〜請求項6に記載の繊維状部材の配設態様としては、被覆部の内側面に被覆部とは別体にて形成される繊維状部材を貼り付けるといった態様の他、被覆部自体によって繊維状部材を形成するといった態様を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る靴下について、足に装着された状態における靴下を中心とした側面構造を示す側面図。
【図2】同実施形態における靴下を中心とした縦断面構造を示す縦断面図。
【図3】本発明の第2実施形態に係るサポーターについて、膝に装着された状態におけるサポーターを中心とした側面構造を示す側面図。
【図4】同実施形態におけるサポーターを中心とした縦断面構造を示す縦断面図。
【図5】本発明の第3実施形態に係るサポーターについて、その縦断面構造を示す縦断面図。
【図6】同実施形態におけるサポーターを中心とした横断面構造を示す横断面図。
【図7】同実施形態におけるサポーターを中心とした横断面構造を示す横断面図。
【図8】(a)〜(c)本発明の第4実施形態に係るコルセットの概略構成を示す概略構成図。
【図9】(a)、(b)本発明の第5実施形態に係るコルセット及びインナーの概略構成を示す概略構成図。
【図10】本発明に係る装着部材の他の変形例について、腕に装着されたサポーターの側面構造を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下、図1及び図2を参照して、本発明に係る装着部材を靴下1として具体化した第1実施形態について説明する。
【0020】
図1に、本実施形態の靴下1について、足Lに装着された状態における同靴下1を中心とした側面構造を示す。また、図2に、靴下1の開口部を中心とした縦断面構造を部分的に示す。尚、図2では、説明の便宜上、繊維状部材3である起毛を誇張して記載している。また、靴下1と足Lとを離間して示しているが、実際には、これらは接触した状態となっている。
【0021】
図1に示すように、靴下1は、従来一般の靴下と同様にして、筒状をなすとともに膝Kよりも足Lの先端側の部位を覆う被覆部2を有しており、その装着に際しては、被覆部2の内部へ足Lを挿入するものとなっている。ここで、被覆部2は、伸縮性を有する繊維の編地により形成されている。また、図2に示すように、被覆部2の内側面には、より詳しくは靴下1の開口部近傍の内側面には、足Lの伸びる方向において所定の方向Aに傾斜する起毛である繊維状部材3が設けられている。繊維状部材3は、複数の起毛からなっており、被覆部2に足Lを挿入する方向Aに傾斜している。尚、本実施形態では、こうした繊維状部材3が、靴下1の開口部近傍の内側面において全周にわたり貼り付けられている。
【0022】
こうした靴下1によれば、図2に示すように、靴下1がその正常な装着位置から脱げようとする場合には、被覆部2の内側面に設けられた繊維状部材3が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、靴下1の脱げようとすることが抑制されるようになる。
【0023】
また、被覆部2の内部に足Lを挿入する場合には、被覆部2の内側面に設けられた繊維状部材3が順毛となるため、その挿入に際して生じる抵抗力は小さい。このため、被覆部2の内側面に繊維状部材3を設けることに起因して足Lへの靴下1の装着が困難なものとなることはない。
【0024】
以上説明した本実施形態に係る装着部材によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)靴下1は、膝Kよりも足Lの先端側の部位を覆う被覆部2を有して足Lに装着されるものであり、被覆部2の内側面には足Lの延びる方向において所定の方向Aに傾斜する繊維状部材3が設けられるものとした。具体的には、被覆部2は筒状をなし、靴下1は被覆部2の内部への足Lの挿入を通じて足Lに装着されるものとした。また、上記所定の方向Aを、被覆部2に足Lを挿入する方向Aとした。これにより、簡易な構成をもって靴下1の正常な装着状態を維持することができるようになる。
<第2実施形態>
以下、図3及び図4を参照して、本発明に係る装着部材を膝用サポーター(以下、サポーター)11として具体化した第1実施形態について説明する。
【0025】
図3に、本実施形態のサポーター11について、膝Kに装着された状態における同サポーター11を中心とした側面構造を示す。また、図4に、サポーター11を中心とした縦断面構造を部分的に示す。尚、図4では、説明の便宜上、繊維状部材13である起毛を誇張して記載している。また、サポーター11と足Lとを離間して示しているが、実際には、これらは接触した状態となっている。
【0026】
図3に示すように、サポーター11は、従来一般のサポーターと同様にして、筒状をなすとともに膝Kを覆う被覆部12を有しており、その装着に際しては、被覆部12の内部へ足Lを挿入するものとなっている。ここで、被覆部12は、伸縮性を有する繊維の編地により形成されている。また、図4に示すように、被覆部12の内側面には、足Lの伸びる方向において所定の方向Aに傾斜する起毛である繊維状部材13が設けられている。具体的には、繊維状部材13は、複数の起毛からなっており、被覆部12に足Lを挿入する方向Aに傾斜している。尚、本実施形態では、こうした繊維状部材13が被覆部2の内側面に貼り付けられている。
【0027】
こうしたサポーター11によれば、図4に示すように、サポーター11がその正常な装着位置から脱げようとする場合には、被覆部12の内側面に設けられた繊維状部材13が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、サポーター11が脱げようとすることが抑制されるようになる。
【0028】
また、被覆部12の内部に足Lを挿入する場合には、被覆部12の内側面に設けられた繊維状部材13が順毛となるため、その挿入に際して生じる抵抗力は小さい。このため、被覆部12の内側面に繊維状部材13を設けることに起因して足Lへのサポーター11の装着が困難なものとなることはない。
【0029】
以上説明した本実施形態に係る装着部材によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(2)サポーター11は、膝Kを覆う被覆部12を有して足Lに装着されるものであり、被覆部12の内側面には足Lの延びる方向において所定の方向Aに傾斜する繊維状部材13が設けられるものとした。具体的には、被覆部12は筒状をなし、サポーター11は被覆部12の内部への足Lの挿入を通じて足Lに装着されるものとした。また、上記所定の方向Aを、被覆部12に足Lを挿入する方向Aとした。これにより、簡易な構成をもってサポーター11の正常な装着状態を維持することができるようになる。
<第3実施形態>
以下、図5〜図7を参照して、本発明に係る装着部材を膝用サポーター(以下、サポーター)21として具体化した第3実施形態について説明する。
【0030】
図5に、本実施形態のサポーター21についてその縦断面構造を示す。また、図6及び図7に、足Lに装着された状態におけるサポーター21を中心とした横断面構造を部分的に示す。尚、図6は、サポーター21の挿入方向Aにおいて第1繊維状部材23Aが含まれる位置での横断面構造を示したものであり、図7は、サポーター21の挿入方向Aにおいて第2繊維状部材23Bが含まれる位置での横断面構造を示したものである。また、図6及び図7では、説明の便宜上、繊維状部材23A、23Bである起毛を誇張して記載している。また、サポーター21と足Lとを離間して示しているが、実際には、これらは接触した状態となっている。
【0031】
図5に示すように、サポーター21は、先の第2実施形態のサポーター11と同様にして、筒状をなすとともに膝Kを覆う被覆部22を有している。
ただし、本実施形態では、先の第2実施形態にて例示した繊維状部材13は設けられておらず、これに代えて、図5〜図7に併せ示すように、被覆部22の内側面には、足Lの周方向、すなわち被覆部22の周方向において所定の方向Yに傾斜する起毛である第1繊維状部材23Aと、同所定の方向Yとは逆の方向Xに傾斜する起毛である第2繊維状部材23Bとが設けられている。具体的には、図5に示すように、大腿部側から下腿部側に向けて、すなわち同図中上側から下側に向けて、第1繊維状部材23Aと第2繊維状部材23Bとが交互に貼り付けられている。各繊維状部材23A、23Bは、サポーター21の内周面全周にわたり所定の幅をもって形成されている。
【0032】
こうしたサポーター21によれば、図6に示すように、サポーター21がその正常な装着位置から、その被覆部22の周方向において所定の方向Yに回転しようとする場合には、同被覆部22の内側面に設けられた第1繊維状部材23Aが逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、被覆部22の周方向において上記所定の方向Yへのサポーター21の回転が抑制されるようになる。
【0033】
また、図7に示すように、サポーター21がその正常な装着位置から、その被覆部22の周方向において上記所定の方向Yとは逆の方向Xに回転しようとする場合には、同被覆部22の内側面に設けられた第2繊維状部材23Bが逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、被覆部22の周方向において上記逆の方向Xへのサポーター21の回転が抑制されるようになる。
【0034】
このようにして、足Lに対してサポーター21が、上記所定の方向Yに回転する場合であれ、同所定の方向Yとは逆の方向Xに回転する場合であれ、それらが抑制されるようになる。すなわち、足Lに対してサポーター21がその周方向に回動することが抑制されるようになる。
【0035】
以上説明した本実施形態に係る装着部材によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(3)サポーター21は、膝Kを覆う被覆部22を有して足Lに装着されるものであり、被覆部22の内側面には足Lの周方向において所定の方向Yに傾斜する第1繊維状部材23Aと、同所定の方向Yとは逆の方向Xに傾斜する第2繊維状部材23Bとが設けられるものとした。具体的には、被覆部22は筒状をなし、サポーター21は被覆部22の内部への足Lの挿入を通じて足Lに装着されるものとした。これにより、簡易な構成をもってサポーター21の正常な装着状態を維持することができるようになる。
<第4実施形態>
以下、図8を参照して、本発明に係る装着部材を腰椎用装具(以下、コルセット)31として具体化した第4実施形態について説明する。
【0036】
図8に、本実施形態のコルセット31の概略構成を示す。尚、図8(a)は、コルセット31を中心とした側面構造である。また、図8(b)は、コルセット31の平面構造である。また、図8(c)は、コルセット31を中心とした縦断面構造を部分的に示したものである。尚、図8(c)では、説明の便宜上、繊維状部材33である起毛を誇張して記載している。また、コルセット31と腰部Wとを離間して示しているが、実際には、これらは接触した状態となっている。
【0037】
図8(a)、(b)に示すように、コルセット31は、シート状、より詳しくは帯状をなすとともに腰部Wを覆う被覆部32を有しており、その装着に際しては、腰部Wに対して被覆部32を巻き付けるものとなっている。尚、被覆部32の長手方向の一端部には、その他端部36と係合する係合部材35が設けられている。ここで、被覆部32は、従来一般のコルセットと同様の繊維材料により形成されている。ただし本実施形態では、図8(b)、(c)に併せ示すように、被覆部32の内側面に、体幹の延びる方向において所定の方向B、すなわち図中上方に傾斜する繊維状部材33が設けられている。具体的には、繊維状部材33は、複数の起毛からなっており、腰部Wから胸部への方向Bに傾斜している。尚、本実施形態では、こうした繊維状部材33が被覆部32の内側面に貼り付けられている。
【0038】
体幹においてコルセットの正常の装着位置よりも胸部側には他の部位に比べて縮径された所謂くびれが存在することから、従来一般のコルセットにあっては、コルセットを腰部Wに巻き付けて装着した場合であっても、コルセットが胸部側に向けて変位するといった問題が生じやすい。こうした問題は、男性に比べてくびれの大きい女性においては特に顕著なものとなる。
【0039】
これに対して、本実施形態のコルセット31によれば、コルセット31がその正常な装着位置から胸部側に向けて変位しようとする場合には、被覆部32の内側面に設けられた繊維状部材33が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、コルセット31がその正常な装着位置から胸部側に向けて変位することが抑制されるようになる。
【0040】
以上説明した本実施形態に係る装着部材によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(4)コルセット31は、腰部Wを覆う被覆部32を有して腰部Wに装着されるものであり、被覆部32の内側面には体幹の延びる方向において所定の方向Bに傾斜する繊維状部材33が設けられるものとした。具体的には、被覆部32は帯状をなし、コルセット31は腰部Wに対する被覆部32の巻回を通じて腰部Wに装着されるものとした。また、上記所定の方向Bとは、体幹において腰部Wから胸部への方向とした。これにより、簡易な構成をもってコルセット31の正常な装着状態を維持することができるようになる。
<第5実施形態>
以下、図9を参照して、本発明に係る装着部材を、腰椎用装具であるコルセット31及び同コルセット31と共に装着される下半身用下着であるインナー41としてそれぞれ具体化した第5実施形態について説明する。
【0041】
図9に、本実施形態のコルセット31及びインナー41の概略構成を示す。尚、図9(a)は、コルセット31及びインナー41を中心とした側面構造である。また、図9(b)は、コルセット31及びインナー41を中心とした縦断面構造を部分的に示したものである。尚、図9(b)では、説明の便宜上、繊維状部材33、43である起毛をそれぞれ誇張して記載している。また、コルセット31とインナー41とを離間して示すとともに、インナー41と腰部Wとを離間して示しているが、実際には、これらは接触した状態となっている。また、本実施形態におけるコルセット31は、先の第4実施形態において例示したものと同一である。
【0042】
コルセット31が腰部Wに装着される場合には、下半身用の下着であるインナーが装着された状態の腰部Wにコルセット31が装着されることが多い。この場合、インナーに対するコルセット31の変位についてはこれをコルセット31の被覆部32の内側面に設けられた繊維状部材33により抑制することができるものの、インナーの構成によっては、腰部Wに対してインナーが変位することを抑制することができない。従って、こうした場合には、腰部Wに対してコルセット31が変位することを的確に抑制することができないおそれがある。
【0043】
そこで、本実施形態では、図9(a)、(b)に示すように、腰部W等を直接覆うインナー41の被覆部42の内側面に、体幹の延びる方向において所定の方向Bに傾斜する繊維状部材43を設けることにより、上述した問題を解決するようにしている。具体的には、繊維状部材43は、複数の起毛からなっており、体幹において腰部Wから胸部への方向Bに傾斜している。尚、本実施形態では、こうした繊維状部材43が被覆部42の内側面に貼り付けられている。
【0044】
こうしたコルセット31及びインナー41によれば、図9(b)に示すように、インナー41がその正常な装着位置から胸部側に向けて変位しようとする場合には、インナー41の内側面に設けられた繊維状部材43が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、インナー41の上記所定の方向Bへの変位が抑制されるようになる。従って、腰部Wに対するコルセット31の変位が抑制されるようになる。
【0045】
以上説明した本実施形態に係る装着部材によれば、先の第4実施形態の効果(4)に加え、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(5)腰部Wに直接装着されるインナー41を備え、コルセット31はインナー41が装着された状態の腰部Wに装着されるものとした。インナー41の内側面には体幹の延びる方向において所定の方向Bに傾斜する繊維状部材43が設けられるものとした。また、上記所定の方向Bとは、体幹において腰部Wから胸部への方向とした。これにより、インナー41が装着された状態の腰部Wにコルセット31を装着する場合であれ、腰部Wに対するコルセット31の上記所定の方向Bへの変位を的確に抑制することができるようになる。
【0046】
尚、本発明に係る装着部材は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
・上記第1実施形態では、筒状の被覆部2の内側面において、その周方向全体に繊維状部材3を設けるようにしているが、これに代えて、その周方向において部分的に繊維状部材を設けるようにしてもよい。
【0047】
・上記第1実施形態によるように、靴下1の開口部が、ふくらはぎの上方に位置するもの、すなわち靴下1が足Lに装着された状態においてその開口部の位置する足の部位が、同部位よりも足Lの先端側の部位よりも小径である場合には、靴下1の被覆部2の開口部近傍にのみ所定の幅をもつ繊維状部材3を設けることにより、靴下1が脱げることを好適に抑制することができる。しかしながら、例えば靴下の丈が短く、その開口部が上記第1実施形態において例示した位置よりも足Lの先端側に位置するものの場合には、同開口部の位置する足の部位から同部位よりも足Lの先端側の部位に向けて足の径が徐々に小さくなることから、靴下が脱げやすくなる。この場合、靴下がその正常な装着位置から脱げようとする際に作用する抵抗をより大きくすべく、上記第1実施形態において例示したものに比べて、被覆部2の内側面において繊維状部材を設ける面積を大きくすれば、靴下の丈が短い場合であれ、同靴下が脱げることを好適に抑制することができるようになる。
【0048】
・上記第2実施形態では、サポーター11を構成する被覆部12の内側面に同被覆部12の内部に足Lを挿入する方向Aに傾斜する繊維状部材13が設けられるものについて例示したが、これに代えて、或いはこれに加えて、被覆部12の内側面に同被覆部12に足Lを挿入する方向Aとは逆の方向に傾斜する繊維状部材を設けるようにしてもよい。これにより、サポーターがその挿入方向Aとは逆の方向に変位しようとする場合には、被覆部の内側面に設けられた繊維状部材が逆毛となるため、大きな抵抗力が生じる。このため、サポーターがその挿入方向Aとは逆の方向に変位することを抑制することができるようになる。
【0049】
・上記第3実施形態では、サポーター21を構成する被覆部22の内側面に同被覆部22の周方向において所定の方向Y(X)に傾斜する繊維状部材23A(23B)がそれぞれ設けられるものについて例示した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、第1繊維状部材23Aのみ、或いは第2繊維状部材23Bのみを設けるようにすることもできる。
【0050】
・上記第2実施形態、同第2実施形態の変形例、第3実施形態、及び同第3実施形態の変形例においてそれぞれ例示した各繊維状部材のうち2つ以上の繊維状部材を、サポーターを構成する被覆部の内側面に選択的に設けるようにしてもよい。
【0051】
・上記第2実施形態、同第2実施形態の変形例、第3実施形態、及び同第3実施形態の変形例では、足に装着される装具について例示したが、本発明はこれに限られるものではなく、手に装着される装具、例えば図10に示す腕用サポーター51として具現化することもできる。
【0052】
・上記第4、第5実施形態では、コルセット31の被覆部32の内側面に、体幹において腰部Wから胸部への方向Bに傾斜する繊維状部材33が設けられるものについて例示したが、コルセットの腰部Wを中心とした回転が問題となる場合には、これに加えて、或いはこれに代えて、コルセットの被覆部の内側面に、腰部Wの周方向において所定の方向に傾斜する繊維状部材を設けるようにすればよい。
【0053】
・上記第4、第5実施形態では、腰椎用装具であるコルセット31について例示したが、こうした装具としては、腰椎用のものに限られるものではなく、他に例えば、胸椎用装具として本発明を具現化することもできる。また、胸腰椎用装具として具現化することもできる。
【0054】
・上記第5実施形態では、インナー41をコルセット31と腰部Wとの間に位置するものとして例示しているが、本発明に係る装着部材はこれに限られるものではない。インナーを、装具用のものとしてではなく、一般の衣類として具現化することもできる。
【0055】
要するに、装着部材としては身体の四肢又は体幹を覆う被覆部を有して身体に装着されるものであればよい。
【符号の説明】
【0056】
1…靴下、2、12、22、32、42…被覆部、3、13、23、33、43…繊維状部材、11、21…サポーター、23A…第1繊維状部材、23B…第2繊維状部材、31…コルセット、35…係合部材、36…他端部、41…インナー、51…腕用サポーター、K…膝、L…足、W…腰部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四肢又は体幹を覆う被覆部を有して身体に装着される装着部材であって、
前記被覆部の内側面には前記四肢又は体幹の延びる方向において所定の方向に傾斜する繊維状部材が設けられる
ことを特徴とする装着部材。
【請求項2】
四肢又は体幹を覆う被覆部を有して身体に装着される装着部材であって、
前記被覆部の内側面には前記四肢又は体幹の周方向において所定の方向に傾斜する繊維状部材が設けられる
ことを特徴とする装着部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の装着部材において、
前記被覆部は筒状をなし、
前記装着部材は前記被覆部の内部への前記四肢又は体幹の挿入を通じて身体に装着される
ことを特徴とする装着部材。
【請求項4】
請求項3に記載の装着部材において、
前記装着部材は靴下である
ことを特徴とする装着部材。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の装着部材において、
前記被覆部はシート状をなし、
前記装着部材は前記四肢又は体幹に対する前記被覆部の巻回を通じて身体に装着される
ことを特徴とする装着部材。
【請求項6】
請求項1〜請求項3及び請求項5のいずれか一項に記載の装着部材において、
前記装着部材は前記四肢又は体幹に装着される装具である
ことを特徴とする装着部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−99173(P2011−99173A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254071(P2009−254071)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(308020722)
【Fターム(参考)】