装飾体、装飾体の製造方法
【課題】従来の装飾体では、図柄を視認できる範囲を広げることが困難である。
【解決手段】光透過性を有するシート材11と、シート材11の第1面15aに設けられた複数の図柄21と、シート材11の第2面15bに設けられた複数のレンズ3と、を有し、複数のレンズ3は、それぞれ、複数の図柄21のそれぞれに対応して設けられており、複数のレンズ3には、複数の第1レンズ25と複数の第2レンズ27とが含まれており、第1レンズ25と第2レンズ27とは、相互に焦点距離が異なる、ことを特徴とする装飾体。
【解決手段】光透過性を有するシート材11と、シート材11の第1面15aに設けられた複数の図柄21と、シート材11の第2面15bに設けられた複数のレンズ3と、を有し、複数のレンズ3は、それぞれ、複数の図柄21のそれぞれに対応して設けられており、複数のレンズ3には、複数の第1レンズ25と複数の第2レンズ27とが含まれており、第1レンズ25と第2レンズ27とは、相互に焦点距離が異なる、ことを特徴とする装飾体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾体、装飾体の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図柄を立体的な虚像として視認することができる装飾体が知られている。
このような装飾体では、従来、複数の凸レンズが設けられた透明シートの凸レンズ側とは反対側の面に、凸レンズに対応して印刷された模様(図柄)を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2761861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された装飾体では、複数の凸レンズの配列と、凸レンズごとに設けられた複数の図柄の配列とが互いにずれているので、複数の凸レンズを介して図柄が立体的な虚像として視認され得る。
ところで、凸レンズを介して図柄を視認する装飾体では、装飾体に対する視線の角度を小さくしていくと、図柄が視認されにくくなっていく。つまり、従来の装飾体では、図柄を視認することができる範囲を広げることが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0006】
[適用例1]光透過性を有する透光層と、前記透光層の第1面に設けられた複数の図柄と、前記透光層の前記第1面とは反対側の第2面に設けられた複数のレンズと、を有し、前記複数のレンズは、それぞれ、前記複数の図柄のそれぞれに対応して設けられており、前記複数のレンズには、複数の第1レンズと複数の第2レンズとが含まれており、前記第1レンズと前記第2レンズとは、相互に焦点距離が異なる、ことを特徴とする装飾体。
【0007】
この適用例の装飾体は、透光層と、複数の図柄と、複数のレンズと、を有する。
透光層は、光透過性を有する。
複数の図柄は、透光層の第1面に設けられている。
複数のレンズは、透光層の第1面とは反対側の第2面に設けられている。複数のレンズは、それぞれ、複数の図柄のそれぞれに対応して設けられている。
上記により、この装飾体では、複数のレンズを介して図柄が虚像として視認され得る。
そして、この装飾体では、複数のレンズには、複数の第1レンズと複数の第2レンズとが含まれている。第1レンズと第2レンズとは、相互に焦点距離が異なる。この装飾体では、例えば、第1レンズ及び第2レンズのうち焦点距離が短い方の焦点を図柄に合わせ、焦点距離が長い方の焦点を図柄よりも遠くに合わせることができる。これにより、第1レンズ及び第2レンズのうち焦点距離が短い方を介して図柄を鮮明に視認することができる。そして、装飾体に対する視線の角度を小さくしていったときに、第1レンズ及び第2レンズのうち焦点距離が長い方を介して図柄を鮮明に視認しやすくすることができる。この結果、この装飾体では、図柄を視認することができる範囲を広げやすくすることができる。
【0008】
[適用例2]上記の装飾体であって、前記複数の第1レンズは、それぞれ、前記複数の図柄のそれぞれに対応して、前記透光層の前記第2面に設けられており、前記複数の第2レンズは、それぞれ、前記複数の第1レンズの前記透光層側とは反対側で、前記複数の第1レンズのそれぞれに重なっている、ことを特徴とする装飾体。
【0009】
この適用例では、第1レンズが透光層の第2面に設けられており、第2レンズが第1レンズに重なっている。これにより、複数の第2レンズを介して図柄を鮮明に視認することができる。そして、装飾体に対する視線の角度を小さくしていったときに、複数の第1レンズを介して図柄を鮮明に視認しやすくすることができる。この結果、この装飾体では、図柄を視認することができる範囲を広げやすくすることができる。
また、この装飾体では、第1レンズと第2レンズとが互いに重なっているので、図柄の配置密度を高めやすくすることができる。
例えば、第1レンズと第2レンズとが、互いに隙間をあけた状態で透光層の第2面に設けられている場合、第1レンズ及び第2レンズのそれぞれに図柄を対応させる必要がある。
これに対し、この適用例では、第1レンズと第2レンズとが互いに重なっているので、互いに重なる第1レンズ及び第2レンズの組ごとに図柄を設ければよい。このため、図柄の配置密度を高めやすくすることができ、高精細な虚像を視認しやすくすることができる。
【0010】
[適用例3]光透過性を有する透光層において、複数の図柄が設けられた第1面とは反対側の第2面に複数のレンズを、前記レンズのそれぞれを前記図柄のそれぞれに対応させて、形成するレンズ形成工程を含み、前記レンズ形成工程では、前記透光層の前記第2面に配置される第1レンズと、前記第1レンズの前記透光層側とは反対側で前記第1レンズに重なる第2レンズと、を含む前記レンズを形成する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0011】
この適用例の装飾体の製造方法は、光透過性を有する透光層に複数のレンズを形成するレンズ形成工程を含む。
この透光層は、第1面と、第1面とは反対側の面である第2面と、を有する。第1面には、複数の図柄が設けられている。
レンズ形成工程では、透光層の第2面に複数のレンズを形成する。このとき、レンズのそれぞれを、図柄のそれぞれに対応させる。これにより、この装飾体では、複数のレンズを介して図柄が虚像として視認され得る。
この製造方法では、レンズ形成工程において、透光層の第2面に配置される第1レンズと、第1レンズの透光層側とは反対側で第1レンズに重なる第2レンズと、を含むレンズを形成する。これにより、少なくとも第1レンズ及び第2レンズを含む複数段のレンズを形成することができる。このため、複数の焦点を有するレンズを形成することができる。このとき、例えば、第2レンズの焦点を図柄に合わせ、第1レンズの焦点を図柄よりも遠くに合わせることができる。これにより、第2レンズを介して図柄を鮮明に視認することができる。そして、装飾体に対する視線の角度を小さくしていったときに、第1レンズを介して図柄を鮮明に視認しやすくすることができる。この結果、この装飾体では、図柄を視認することができる範囲を広げやすくすることができる。
【0012】
[適用例4]上記の装飾体の製造方法であって、前記レンズ形成工程では、光の照射を受けることによって硬化する液状体を前記透光層の前記第2面に塗布してから、前記第2面に塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から前記複数のレンズを形成する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0013】
この適用例では、レンズ形成工程において、光の照射を受けることによって硬化する液状体を透光層の第2面に塗布してから、第2面に塗布した液状体に向けて光を照射することによって、液状体から複数のレンズを形成することができる。
【0014】
[適用例5]上記の装飾体の製造方法であって、前記レンズ形成工程は、前記液状体を前記透光層の前記第2面に塗布してから、前記第2面に塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から複数の前記第1レンズを形成する第1レンズ形成工程と、前記第1レンズ形成工程の後に、液状体を前記複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布してから、前記第1レンズに塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から複数の前記第2レンズを形成する第2レンズ形成工程と、を含む、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0015】
この適用例では、レンズ形成工程は、複数の第1レンズを形成する第1レンズ形成工程と、第1レンズ形成工程の後に、複数の第2レンズを形成する第2レンズ形成工程と、を含む。
第1レンズ形成工程では、液状体を透光層の第2面に塗布してから、第2面に塗布した液状体に向けて光を照射することによって、液状体から複数の第1レンズを形成する。
第2レンズ形成工程では、液状体を複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布してから、第1レンズに塗布した液状体に向けて光を照射することによって、液状体から複数の第2レンズを形成する。
この製造方法によれば、第1レンズを構成する液状体の少なくとも一部を硬化させてから、この第1レンズに重ねて第2レンズを構成する液状体を塗布するので、第1レンズを構成する液状体と第2レンズを構成する液状体とが互いに混合することを避けやすい。この結果、第1レンズと第2レンズとを明確に区分しやすくすることができる。
【0016】
[適用例6]上記の装飾体の製造方法であって、前記第1レンズ形成工程では、前記液状体をインクジェット法で前記透光層の前記第2面に塗布し、前記第2レンズ形成工程では、前記液状体をインクジェット法で前記複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0017】
この適用例では、第1レンズ形成工程において、液状体をインクジェット法で透光層の第2面に塗布する。また、第2レンズ形成工程において、液状体をインクジェット法で複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布する。これにより、第1レンズを構成する液状体、及び第2レンズを構成する液状体のそれぞれを塗布することができる。
【0018】
[適用例7]上記の装飾体の製造方法であって、前記複数の図柄をインクジェット法で形成する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0019】
この適用例では、複数の図柄をインクジェット法で形成するので、レンズ形成工程における液状体の塗布の方法と、複数の図柄の形成方法とを互いに同じインクジェット法にそろえることができる。この結果、装飾体の製造方法の効率化を図りやすくすることができる。
【0020】
[適用例8]上記の装飾体の製造方法であって、前記透光層をインクジェット法で形成する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0021】
この適用例では、透光層をインクジェット法で形成するので、レンズ形成工程における液状体の塗布の方法と、複数の図柄の形成方法と、透光層の形成方法とを相互に同じインクジェット法にそろえることができる。この結果、装飾体の製造方法の効率化を一層図りやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態における装飾シートの平面図。
【図2】図1中のA−A線における断面図。
【図3】本実施形態におけるレンズと図柄との配置を説明する平面図。
【図4】本実施形態における虚像ユニットの配置を説明する平面図。
【図5】図2中のB部の拡大図。
【図6】第1実施形態における装飾シートの製造方法の流れを示す図。
【図7】第1実施形態におけるレンズ形成工程の流れを示す図。
【図8】第1実施形態における装飾シートの製造工程を説明する図。
【図9】第2実施形態における装飾シートの構成を説明する断面図。
【図10】第2実施形態における装飾シートの製造方法の流れを示す図。
【図11】第2実施形態における装飾シートの製造工程を説明する図。
【図12】第2実施形態における装飾シートの製造工程を説明する図。
【図13】第3実施形態における装飾シートの構成を説明する断面図。
【図14】図13中のC部の拡大図。
【図15】第3実施形態における装飾シートの製造工程を説明する図。
【図16】本実施形態におけるレンズと図柄との配置の他の例を説明する平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を参照しながら、実施形態について説明する。なお、各図面において、それぞれの構成を認識可能な程度の大きさにするために、構成や部材の縮尺が異なっていることがある。
本実施形態における装飾シート1は、図1に示すように、複数のレンズ3を有している。図1では、構成をわかりやすく示すため、レンズ3が誇張され、且つレンズ3の個数が減じられている。
【0024】
複数のレンズ3は、X方向及びY方向のそれぞれに沿って配列している。本実施形態では、Y方向に沿って1列に並ぶ複数のレンズ3が1つのレンズ列5を構成している。また、本実施形態では、X方向に沿って1列に並ぶ複数のレンズ3が1つのレンズ行7を構成している。
本実施形態において、Y方向は、レンズ列5が延在する方向である。そして、X方向は、平面視で、Y方向とは交差する方向である。つまり、本実施形態では、複数のレンズ列5が、X方向に並んでいる。なお、本実施形態では、X方向とY方向とが互いに直交している。このため、複数のレンズ3は、X方向を行方向とし、Y方向を列方向として、マトリクス状に配列している。
本実施形態では、X方向に隣り合う2つのレンズ3は、間隔Pで隣り合っている。また、Y方向に隣り合う2つのレンズ3は、間隔Pで隣り合っている。
【0025】
[第1実施形態]
第1実施形態における装飾シート1は、図1中のA−A線における断面図である図2に示すように、シート材11を有している。
シート材11は、光透過性を有する材料で構成されており、第1面15aと、第2面15bと、を有している。上述した複数のレンズ3は、シート材11の第2面15bに設けられている。第1面15aには、複数の図柄21が描かれている。シート材11の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコールなどが採用され得る。
【0026】
本実施形態では、複数のレンズ3は、それぞれ、第1レンズ25と、第2レンズ27と、を含む。
第1レンズ25は、シート材11の第2面15bに設けられている。第2レンズ27は、第1レンズ25のシート材11側とは反対側で、第1レンズ25に重なっている。つまり、本実施形態では、第2レンズ27は、第1レンズ25に積層されている。このため、複数のレンズ3は、それぞれ、シート材11の第2面15bに設けられた第1レンズ25に第2レンズ27を積層した構成を有している。
【0027】
複数の図柄21は、それぞれ、複数のレンズ3のそれぞれに対応している。つまり、本実施形態では、レンズ3ごとに図柄21が設けられている。換言すれば、図柄21ごとにレンズ3が設けられているともみなされ得る。ただし、複数のレンズ3の中には、2つの図柄21に対応するものが含まれている。複数の図柄21のそれぞれが、複数のレンズ3のそれぞれに対応するという表現には、複数の図柄21が1つのレンズ3に対応する場合も、1つの図柄21が複数のレンズ3に対応する場合も含まれる。
複数の図柄21は、レンズ3と図柄21との配置を説明する平面図である図3に示すように、X方向に間隔Qで並んでいる。また、複数の図柄21は、Y方向においても、間隔Qで並んでいる。なお、間隔Qは、間隔Pよりも短い。図3では、構成をわかりやすく示すため、レンズ3が破線で示されている。
複数のレンズ3のうちの1つのレンズ3aと、このレンズ3aに対応する図柄21との位置ずれが0である場合、レンズ3aからX方向において、間隔Pと間隔Qとの最小公倍数の距離D1にある位置に、位置ずれが0になるレンズ3と図柄21との組31が出現する。なお、本実施形態では、間隔Qが間隔Pよりも短いので、1つのレンズ3に2つの図柄21が対応する組31が存在する。
【0028】
また、このレンズ3aからY方向において、間隔Pと間隔Qとの最小公倍数の距離D1にある位置にも、位置ずれが0になるレンズ3と図柄21との組31が出現する。
レンズ3aから、X方向及びY方向のそれぞれにおいて、次に位置ずれが0になるレンズ3と図柄21との組31よりも1つ前の組31aまでのマトリクスが、1つの虚像ユニット33を構成する。
1つの虚像ユニット33では、図柄21を拡大した1つの模様が虚像として視認され得る。
【0029】
本実施形態では、虚像ユニット33の配置を説明する平面図である図4に示すように、複数の虚像ユニット33が、X方向及びY方向の双方に並んでいる。このため、装飾シート1では、複数のレンズ3側から装飾シート1を目視すると、虚像ユニット33ごとに、前述した模様41が出現する。
なお、図4では、模様41が水玉模様を呈している。しかしながら、模様41の態様は、これに限定されず、種々の模様が採用され得る。また、模様41に採用される模様には、記号や文字、図形、画像、紋様などの種々の模様が含まれる。
なお、本実施形態では、図柄21の間隔Qがレンズ3の間隔Pよりも短いので、模様41は、背景として視認されるシート材11の第1面15a(図2)よりも複数のレンズ3側とは反対側に沈み込んだ状態で視認される。
また、装飾シート1では、装飾シート1に対する視線の角度を変化させると、模様41が変位する。
【0030】
ここで、本実施形態では、複数のレンズ3のそれぞれにおいて、図2中のB部の拡大図である図5に示すように、第1レンズ25のシート材11側の焦点F1は、第2レンズ27のシート材11側の焦点F2よりも、第2面15bから遠くに位置している。つまり、本実施形態では、各レンズ3は、互いに焦点距離が異なる第1レンズ25と第2レンズ27とを有している。
本実施形態では、第2レンズ27のシート材11側の焦点F2の位置は、シート材11の第1面15aに設定されている。これにより、第2レンズ27の焦点F2を図柄21に合わせやすくすることができる。
このため、本実施形態では、第2レンズ27を介して視認する図柄21を鮮明な虚像として視認することができる。また、本実施形態では、第1レンズ25の焦点F1が第2レンズ27の焦点F2よりも遠くに位置しているので、装飾シート1に対する視線の角度を小さくしても、第1レンズ25を介して図柄21を鮮明に視認することができる。この結果、装飾シート1では、図柄21を視認することができる範囲である視野角を広げやすくすることができる。
つまり、本実施形態によれば、広い視野角にわたって、レンズ3を介して視認される模様41を鮮明に視認することができる。
【0031】
装飾シート1の製造方法について説明する。
本実施形態における装飾シート1の製造方法は、図6に示すように、描画工程S1と、レンズ形成工程S2と、を有している。
レンズ形成工程S2は、図7に示すように、第1レンズ形成工程S201と、第2レンズ形成工程S202と、を有している。
【0032】
描画工程S1では、まず、図8(a)に示すように、シート材11の第1面15aに、液状体51を塗布することによって、シート材11の第1面15aに複数の図柄パターン21aを描画する。液状体51は、紫外光の照射を受けることによって硬化する性質である光硬化性を有している。
複数の図柄パターン21aの描画には、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が活用され得る。
吐出ヘッド53から液状体51を液滴51aとして吐出する技術は、インクジェット技術と呼ばれる。そして、インクジェット技術を活用して液状体51などを所定の位置に配置する方法は、インクジェット法と呼ばれる。このインクジェット法は、塗布法の1つである。
次いで、図8(b)に示すように、複数の図柄パターン21aに紫外光55を照射する。これにより、複数の図柄パターン21aを構成する液状体51が硬化し、複数の図柄21が形成される。
【0033】
次いで、レンズ形成工程S2の第1レンズ形成工程S201では、まず、図8(c)に示すように、シート材11の第2面15bに、液状体59を塗布することによって、シート材11の第2面15bに複数の第1レンズパターン25aを描画する。
このとき、液状体59の塗布に、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が採用されている。
液状体59は、光透過性を有している。液状体59としては、例えば、アクリル系やエポキシ系などの液状体59が採用され得る。なお、上述した液状体51としては、液状体59に顔料などの色素を混合したものが採用され得る。これにより、図柄21に黒色や白色を含む色彩を付与することができる。また、液状体59は、光硬化性を有している。
複数の第1レンズパターン25aの描画に次いで、図8(d)に示すように、複数の第1レンズパターン25aに紫外光55を照射する。これにより、複数の第1レンズパターン25aを構成する液状体59が硬化し、複数の第1レンズ25が形成される。
【0034】
次いで、レンズ形成工程S2の第2レンズ形成工程S202では、まず、図8(e)に示すように、複数の第1レンズ25のシート材11側とは反対側に、液状体59を各第1レンズ25に重ねて塗布することによって、複数の第2レンズパターン27aを描画する。
このとき、液状体59の塗布に、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が採用されている。
複数の第2レンズパターン27aの描画に次いで、図8(f)に示すように、複数の第2レンズパターン27aに紫外光55を照射する。これにより、複数の第2レンズパターン27aを構成する液状体59が硬化し、複数の第2レンズ27が形成される。
上記により、図2に示す装飾シート1が製造され得る。
【0035】
第1実施形態において、装飾シート1が装飾体に対応し、シート材11が透光層に対応している。
本実施形態では、レンズ形成工程S2において、複数の第1レンズパターン25aに紫外光55を照射してから、複数の第2レンズパターン27aを描画する方法が採用されている。これにより、複数の第1レンズパターン25aを構成する液状体59の少なくとも一部を硬化させてから、複数の第2レンズパターン27aを描画することができる。このため、第1レンズパターン25aを構成する液状体59と第2レンズパターン27aを構成する液状体59とが互いに混合することを避けやすい。この結果、第1レンズ25と第2レンズ27とを明確に区分しやすくすることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、第1レンズ形成工程S201及び第2レンズ形成工程S202において、それぞれ、液状体59の塗布方法としてインクジェット法が採用されている。しかしながら、液状体59の塗布方法は、これに限定されない。液状体59の塗布方法としては、例えば、シリンジ法やディスペンス法などの種々の塗布方法も採用され得る。
【0037】
また、本実施形態では、図柄21の形成において、液状体51の塗布方法としてインクジェット法が採用されている。しかしながら、図柄21の形成方法は、これに限定されない。図柄21の形成方法としては、例えば、スクリーン印刷などの印刷法も採用され得る。
しかしながら、液状体51の塗布方法としてインクジェット法を採用すれば、レンズ形成工程S2における液状体59の塗布方法と、描画工程S1における液状体51の塗布方法とを、互いに同じインクジェット法に統一することができる。これにより、装飾シート1の製造方法の効率化を図りやすくすることができる。このため、液状体51の塗布方法としてインクジェット法を採用することは好ましい。
【0038】
なお、本実施形態では、装飾シート1の製造方法として、描画工程S1、第1レンズ形成工程S201、及び第2レンズ形成工程S202を、この順序で実施する流れが採用されている。しかしながら、装飾シート1の製造方法の流れは、これに限定されず、種々の変更を実施することができる。
以下に、装飾シート1の製造方法の流れの例を記す。以下の例では、記載されている順序で工程が流れていく。
[例1]第1レンズ形成工程S201、第2レンズ形成工程S202、描画工程S1の順。
[例2]第1レンズ形成工程S201、描画工程S1、第2レンズ形成工程S202の順。
例えば、シート材11に複数の第1レンズ25が設けられたレンズシートが市販品として入手可能な場合がある。このようなレンズシートを活用する場合には、装飾シート1の製造方法の流れとして、レンズシートの製造も含めて、上記例1や、例2の流れが適用され得る。
【0039】
[第2実施形態]
第2実施形態における装飾シート1は、断面図である図9に示すように、シート材11と、透光層61と、複数の図柄21と、レンズ3と、を有している。
第2実施形態における装飾シート1は、透光層61が追加されていることを除いては、第1実施形態における装飾シート1と同様の構成を有している。このため、以下においては、第2実施形態における装飾シート1の構成のうち、第1実施形態における装飾シート1と同一の構成については、第1実施形態と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0040】
透光層61は、光透過性を有する材料で構成されており、シート材11の第2面15bに設けられている。透光層61は、第1面63aと、第2面63bと、を有している。
第2実施形態では、透光層61の第2面63bに複数のレンズ3が設けられている。つまり、第2実施形態では、複数のレンズ3とシート材11との間に、透光層61が介在している。
また、第2実施形態では、複数の図柄21は、シート材11の第2面15bに設けられている。つまり、第2実施形態では、複数の図柄21は、シート材11と透光層61とによって挟持されている。このため、複数の図柄21は、透光層61の第1面63aに設けられているともみなされ得る。透光層61は、シート材11の第2面15b側から複数の図柄21を覆っている。
【0041】
第2実施形態における装飾シート1の製造方法について説明する。
第2実施形態における装飾シート1の製造方法は、図10に示すように、描画工程S1と、透光層形成工程S11と、第1レンズ形成工程S201と、第2レンズ形成工程S202と、を有している。
描画工程S1では、まず、図11(a)に示すように、シート材11の第2面15bに、液状体51を塗布することによって、シート材11の第2面15bに複数の図柄パターン21aを描画する。
次いで、図11(b)に示すように、複数の図柄パターン21aに紫外光55を照射することによって、複数の図柄21を形成する。
【0042】
次いで、透光層形成工程S11では、まず、図11(c)に示すように、シート材11の第2面15bに液状体67を塗布することによって、液状体67で複数の図柄21を覆う透光層61aを形成する。
このとき、液状体67の塗布に、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が採用されている。
なお、液状体67は、光透過性を有している。このような液状体67としては、例えば、アクリル系やエポキシ系などの液状体67が採用され得る。なお、上述した液状体51には、顔料などの色素が混合されているので、透光層61aと図柄21とが識別され得る。
また、液状体67は、光硬化性を有している。
透光層61aの形成に次いで、図11(d)に示すように、透光層61aに紫外光55を照射する。これにより、透光層61aを構成する液状体67が硬化し、透光層61が形成される。
【0043】
次いで、第1レンズ形成工程S201では、まず、図12(a)に示すように、透光層61の第2面63bに、液状体59を塗布することによって、透光層61の第2面63bに複数の第1レンズパターン25aを描画する。
このとき、液状体59の塗布に、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が採用されている。
複数の第1レンズパターン25aの描画に次いで、図12(b)に示すように、複数の第1レンズパターン25aに紫外光55を照射する。これにより、複数の第1レンズパターン25aを構成する液状体59が硬化し、複数の第1レンズ25が形成される。
【0044】
次いで、第2レンズ形成工程S202では、まず、図12(c)に示すように、複数の第1レンズ25の透光層61側とは反対側に、液状体59を各第1レンズ25に重ねて塗布することによって、複数の第2レンズパターン27aを描画する。
このとき、液状体59の塗布に、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が採用されている。
複数の第2レンズパターン27aの描画に次いで、図12(d)に示すように、複数の第2レンズパターン27aに紫外光55を照射する。これにより、複数の第2レンズパターン27aを構成する液状体59が硬化し、複数の第2レンズ27が形成される。
上記により、図9に示す装飾シート1が製造され得る。
【0045】
第2実施形態において、装飾シート1が装飾体に対応し、透光層61が透光層に対応している。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
さらに、第2実施形態では、シート材11に、複数の図柄21、透光層61、複数の第1レンズ25、及び複数の第2レンズ27をこの順に重ねて形成することによって装飾シート1が製造され得る。つまり、第2実施形態では、製造の過程でシート材11を反転させる手間を軽減することができる。
【0046】
[第3実施形態]
第3実施形態における装飾シート1は、断面図である図13に示すように、シート材11と、複数の図柄21と、レンズ3と、を有している。
第3実施形態における装飾シート1は、レンズ3の構成が異なることを除いては、第1実施形態における装飾シート1と同様の構成を有している。このため、以下においては、第3実施形態における装飾シート1の構成のうち、第1実施形態における装飾シート1と同一の構成については、第1実施形態と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0047】
第3実施形態では、レンズ3における第1レンズ25及び第2レンズ27が、それぞれ、シート材11の第2面15bに設けられている。
第1レンズ25と第2レンズ27とは、互いに曲率が異なっている。第1レンズ25と第2レンズ27とでは、第1レンズ25の曲率の方が第2レンズ27の曲率よりも小さい。このため、図13中のC部の拡大図である図14に示すように、第1レンズ25のシート材11側の焦点F1は、第2レンズ27のシート材11側の焦点F2よりも、第2面15bから遠くに位置している。
【0048】
第3実施形態における装飾シート1の製造方法は、複数の第2レンズ27をシート材11の第2面15bに形成することを除いて、第1実施形態における装飾シート1の製造方法と同様である。つまり、第3実施形態における装飾シート1の製造方法は、図6及び図7に示す製造方法が適用され得る。
ただし、レンズ形成工程S2の第2レンズ形成工程S202では、図15(a)に示すように、シート材11の第2面15bにおいて、液状体59を各第1レンズ25に隣り合わせて塗布することによって、複数の第2レンズパターン27aを描画する。
次いで、図15(b)に示すように、複数の第2レンズパターン27aに紫外光55を照射することにより、複数の第2レンズ27が形成される。
上記により、図13に示す装飾シート1が製造され得る。
【0049】
第3実施形態において、装飾シート1が装飾体に対応し、シート材11が透光層に対応している。
第3実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、第3実施形態では、装飾シート1の製造方法として、描画工程S1、第1レンズ形成工程S201、及び第2レンズ形成工程S202を、この順序で実施する流れが採用されている。しかしながら、装飾シート1の製造方法の流れは、これに限定されず、種々の変更を実施することができる。
以下に、第3実施形態における装飾シート1の製造方法の流れの例を記す。以下の例では、記載されている順序で工程が流れていく。
【0050】
[例3]第1レンズ形成工程S201、第2レンズ形成工程S202、描画工程S1の順。
[例4]第1レンズ形成工程S201、描画工程S1、第2レンズ形成工程S202の順。
[例5]第2レンズ形成工程S202、第1レンズ形成工程S201、描画工程S1の順。
[例6]第2レンズ形成工程S202、描画工程S1、第1レンズ形成工程S201の順。
[例7]描画工程S1、第2レンズ形成工程S202、第1レンズ形成工程S201の順。
上記例3〜例7のいずれによっても、第3実施形態における装飾シート1を製造することができる。
【0051】
なお、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態では、それぞれ、虚像として視認される模様41が背景よりも沈み込む例が示されている。しかしながら、模様41の態様は、これに限定されず、模様41が背景よりも浮き出る態様も採用され得る。
模様41が背景よりも浮き出る態様では、複数の図柄21は、レンズ3と図柄21との配置を説明する平面図である図16に示すように、X方向に間隔Rで並んでいる。また、複数の図柄21は、Y方向においても、間隔Rで並んでいる。この例では、間隔Rは、間隔Pよりも長い。
複数のレンズ3のうちの1つのレンズ3bと、このレンズ3bに対応する図柄21との位置ずれが0である場合、レンズ3bからX方向において、間隔Pと間隔Rとの最小公倍数の距離D2にある位置に、位置ずれが0になるレンズ3と図柄21との組71が出現する。なお、この例では、間隔Rが間隔Pよりも長いので、1つの図柄21が2つのレンズ3に対応する組71が存在する。
【0052】
また、このレンズ3bからY方向において、間隔Pと間隔Rとの最小公倍数の距離D2にある位置にも、位置ずれが0になるレンズ3と図柄21との組71が出現する。
レンズ3bから、X方向及びY方向のそれぞれにおいて、次に位置ずれが0になるレンズ3と図柄21との組71よりも1つ前の組71aまでのマトリクスが、1つの虚像ユニット33を構成する。
この例では、図柄21の間隔Rがレンズ3の間隔Pよりも長いので、模様41は、背景として視認されるシート材11の第1面15a(図2)よりも複数のレンズ3側に浮き出た状態で視認される。
【符号の説明】
【0053】
1…装飾シート、3…レンズ、11…シート材、15a…第1面、15b…第2面、21…図柄、21a…図柄パターン、25…第1レンズ、25a…第1レンズパターン、27…第2レンズ、27a…第2レンズパターン、31…組、31a…組、33…虚像ユニット、41…模様、51…液状体、53…吐出ヘッド、55…紫外光、59…液状体、61…透光層、61a…透光層、63a…第1面、63b…第2面、67…液状体、71…組、71a…組、D1…距離、D2…距離、F1…焦点、F2…焦点、P…間隔、Q…間隔、R…間隔。
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾体、装飾体の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図柄を立体的な虚像として視認することができる装飾体が知られている。
このような装飾体では、従来、複数の凸レンズが設けられた透明シートの凸レンズ側とは反対側の面に、凸レンズに対応して印刷された模様(図柄)を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2761861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された装飾体では、複数の凸レンズの配列と、凸レンズごとに設けられた複数の図柄の配列とが互いにずれているので、複数の凸レンズを介して図柄が立体的な虚像として視認され得る。
ところで、凸レンズを介して図柄を視認する装飾体では、装飾体に対する視線の角度を小さくしていくと、図柄が視認されにくくなっていく。つまり、従来の装飾体では、図柄を視認することができる範囲を広げることが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0006】
[適用例1]光透過性を有する透光層と、前記透光層の第1面に設けられた複数の図柄と、前記透光層の前記第1面とは反対側の第2面に設けられた複数のレンズと、を有し、前記複数のレンズは、それぞれ、前記複数の図柄のそれぞれに対応して設けられており、前記複数のレンズには、複数の第1レンズと複数の第2レンズとが含まれており、前記第1レンズと前記第2レンズとは、相互に焦点距離が異なる、ことを特徴とする装飾体。
【0007】
この適用例の装飾体は、透光層と、複数の図柄と、複数のレンズと、を有する。
透光層は、光透過性を有する。
複数の図柄は、透光層の第1面に設けられている。
複数のレンズは、透光層の第1面とは反対側の第2面に設けられている。複数のレンズは、それぞれ、複数の図柄のそれぞれに対応して設けられている。
上記により、この装飾体では、複数のレンズを介して図柄が虚像として視認され得る。
そして、この装飾体では、複数のレンズには、複数の第1レンズと複数の第2レンズとが含まれている。第1レンズと第2レンズとは、相互に焦点距離が異なる。この装飾体では、例えば、第1レンズ及び第2レンズのうち焦点距離が短い方の焦点を図柄に合わせ、焦点距離が長い方の焦点を図柄よりも遠くに合わせることができる。これにより、第1レンズ及び第2レンズのうち焦点距離が短い方を介して図柄を鮮明に視認することができる。そして、装飾体に対する視線の角度を小さくしていったときに、第1レンズ及び第2レンズのうち焦点距離が長い方を介して図柄を鮮明に視認しやすくすることができる。この結果、この装飾体では、図柄を視認することができる範囲を広げやすくすることができる。
【0008】
[適用例2]上記の装飾体であって、前記複数の第1レンズは、それぞれ、前記複数の図柄のそれぞれに対応して、前記透光層の前記第2面に設けられており、前記複数の第2レンズは、それぞれ、前記複数の第1レンズの前記透光層側とは反対側で、前記複数の第1レンズのそれぞれに重なっている、ことを特徴とする装飾体。
【0009】
この適用例では、第1レンズが透光層の第2面に設けられており、第2レンズが第1レンズに重なっている。これにより、複数の第2レンズを介して図柄を鮮明に視認することができる。そして、装飾体に対する視線の角度を小さくしていったときに、複数の第1レンズを介して図柄を鮮明に視認しやすくすることができる。この結果、この装飾体では、図柄を視認することができる範囲を広げやすくすることができる。
また、この装飾体では、第1レンズと第2レンズとが互いに重なっているので、図柄の配置密度を高めやすくすることができる。
例えば、第1レンズと第2レンズとが、互いに隙間をあけた状態で透光層の第2面に設けられている場合、第1レンズ及び第2レンズのそれぞれに図柄を対応させる必要がある。
これに対し、この適用例では、第1レンズと第2レンズとが互いに重なっているので、互いに重なる第1レンズ及び第2レンズの組ごとに図柄を設ければよい。このため、図柄の配置密度を高めやすくすることができ、高精細な虚像を視認しやすくすることができる。
【0010】
[適用例3]光透過性を有する透光層において、複数の図柄が設けられた第1面とは反対側の第2面に複数のレンズを、前記レンズのそれぞれを前記図柄のそれぞれに対応させて、形成するレンズ形成工程を含み、前記レンズ形成工程では、前記透光層の前記第2面に配置される第1レンズと、前記第1レンズの前記透光層側とは反対側で前記第1レンズに重なる第2レンズと、を含む前記レンズを形成する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0011】
この適用例の装飾体の製造方法は、光透過性を有する透光層に複数のレンズを形成するレンズ形成工程を含む。
この透光層は、第1面と、第1面とは反対側の面である第2面と、を有する。第1面には、複数の図柄が設けられている。
レンズ形成工程では、透光層の第2面に複数のレンズを形成する。このとき、レンズのそれぞれを、図柄のそれぞれに対応させる。これにより、この装飾体では、複数のレンズを介して図柄が虚像として視認され得る。
この製造方法では、レンズ形成工程において、透光層の第2面に配置される第1レンズと、第1レンズの透光層側とは反対側で第1レンズに重なる第2レンズと、を含むレンズを形成する。これにより、少なくとも第1レンズ及び第2レンズを含む複数段のレンズを形成することができる。このため、複数の焦点を有するレンズを形成することができる。このとき、例えば、第2レンズの焦点を図柄に合わせ、第1レンズの焦点を図柄よりも遠くに合わせることができる。これにより、第2レンズを介して図柄を鮮明に視認することができる。そして、装飾体に対する視線の角度を小さくしていったときに、第1レンズを介して図柄を鮮明に視認しやすくすることができる。この結果、この装飾体では、図柄を視認することができる範囲を広げやすくすることができる。
【0012】
[適用例4]上記の装飾体の製造方法であって、前記レンズ形成工程では、光の照射を受けることによって硬化する液状体を前記透光層の前記第2面に塗布してから、前記第2面に塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から前記複数のレンズを形成する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0013】
この適用例では、レンズ形成工程において、光の照射を受けることによって硬化する液状体を透光層の第2面に塗布してから、第2面に塗布した液状体に向けて光を照射することによって、液状体から複数のレンズを形成することができる。
【0014】
[適用例5]上記の装飾体の製造方法であって、前記レンズ形成工程は、前記液状体を前記透光層の前記第2面に塗布してから、前記第2面に塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から複数の前記第1レンズを形成する第1レンズ形成工程と、前記第1レンズ形成工程の後に、液状体を前記複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布してから、前記第1レンズに塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から複数の前記第2レンズを形成する第2レンズ形成工程と、を含む、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0015】
この適用例では、レンズ形成工程は、複数の第1レンズを形成する第1レンズ形成工程と、第1レンズ形成工程の後に、複数の第2レンズを形成する第2レンズ形成工程と、を含む。
第1レンズ形成工程では、液状体を透光層の第2面に塗布してから、第2面に塗布した液状体に向けて光を照射することによって、液状体から複数の第1レンズを形成する。
第2レンズ形成工程では、液状体を複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布してから、第1レンズに塗布した液状体に向けて光を照射することによって、液状体から複数の第2レンズを形成する。
この製造方法によれば、第1レンズを構成する液状体の少なくとも一部を硬化させてから、この第1レンズに重ねて第2レンズを構成する液状体を塗布するので、第1レンズを構成する液状体と第2レンズを構成する液状体とが互いに混合することを避けやすい。この結果、第1レンズと第2レンズとを明確に区分しやすくすることができる。
【0016】
[適用例6]上記の装飾体の製造方法であって、前記第1レンズ形成工程では、前記液状体をインクジェット法で前記透光層の前記第2面に塗布し、前記第2レンズ形成工程では、前記液状体をインクジェット法で前記複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0017】
この適用例では、第1レンズ形成工程において、液状体をインクジェット法で透光層の第2面に塗布する。また、第2レンズ形成工程において、液状体をインクジェット法で複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布する。これにより、第1レンズを構成する液状体、及び第2レンズを構成する液状体のそれぞれを塗布することができる。
【0018】
[適用例7]上記の装飾体の製造方法であって、前記複数の図柄をインクジェット法で形成する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0019】
この適用例では、複数の図柄をインクジェット法で形成するので、レンズ形成工程における液状体の塗布の方法と、複数の図柄の形成方法とを互いに同じインクジェット法にそろえることができる。この結果、装飾体の製造方法の効率化を図りやすくすることができる。
【0020】
[適用例8]上記の装飾体の製造方法であって、前記透光層をインクジェット法で形成する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0021】
この適用例では、透光層をインクジェット法で形成するので、レンズ形成工程における液状体の塗布の方法と、複数の図柄の形成方法と、透光層の形成方法とを相互に同じインクジェット法にそろえることができる。この結果、装飾体の製造方法の効率化を一層図りやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態における装飾シートの平面図。
【図2】図1中のA−A線における断面図。
【図3】本実施形態におけるレンズと図柄との配置を説明する平面図。
【図4】本実施形態における虚像ユニットの配置を説明する平面図。
【図5】図2中のB部の拡大図。
【図6】第1実施形態における装飾シートの製造方法の流れを示す図。
【図7】第1実施形態におけるレンズ形成工程の流れを示す図。
【図8】第1実施形態における装飾シートの製造工程を説明する図。
【図9】第2実施形態における装飾シートの構成を説明する断面図。
【図10】第2実施形態における装飾シートの製造方法の流れを示す図。
【図11】第2実施形態における装飾シートの製造工程を説明する図。
【図12】第2実施形態における装飾シートの製造工程を説明する図。
【図13】第3実施形態における装飾シートの構成を説明する断面図。
【図14】図13中のC部の拡大図。
【図15】第3実施形態における装飾シートの製造工程を説明する図。
【図16】本実施形態におけるレンズと図柄との配置の他の例を説明する平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を参照しながら、実施形態について説明する。なお、各図面において、それぞれの構成を認識可能な程度の大きさにするために、構成や部材の縮尺が異なっていることがある。
本実施形態における装飾シート1は、図1に示すように、複数のレンズ3を有している。図1では、構成をわかりやすく示すため、レンズ3が誇張され、且つレンズ3の個数が減じられている。
【0024】
複数のレンズ3は、X方向及びY方向のそれぞれに沿って配列している。本実施形態では、Y方向に沿って1列に並ぶ複数のレンズ3が1つのレンズ列5を構成している。また、本実施形態では、X方向に沿って1列に並ぶ複数のレンズ3が1つのレンズ行7を構成している。
本実施形態において、Y方向は、レンズ列5が延在する方向である。そして、X方向は、平面視で、Y方向とは交差する方向である。つまり、本実施形態では、複数のレンズ列5が、X方向に並んでいる。なお、本実施形態では、X方向とY方向とが互いに直交している。このため、複数のレンズ3は、X方向を行方向とし、Y方向を列方向として、マトリクス状に配列している。
本実施形態では、X方向に隣り合う2つのレンズ3は、間隔Pで隣り合っている。また、Y方向に隣り合う2つのレンズ3は、間隔Pで隣り合っている。
【0025】
[第1実施形態]
第1実施形態における装飾シート1は、図1中のA−A線における断面図である図2に示すように、シート材11を有している。
シート材11は、光透過性を有する材料で構成されており、第1面15aと、第2面15bと、を有している。上述した複数のレンズ3は、シート材11の第2面15bに設けられている。第1面15aには、複数の図柄21が描かれている。シート材11の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコールなどが採用され得る。
【0026】
本実施形態では、複数のレンズ3は、それぞれ、第1レンズ25と、第2レンズ27と、を含む。
第1レンズ25は、シート材11の第2面15bに設けられている。第2レンズ27は、第1レンズ25のシート材11側とは反対側で、第1レンズ25に重なっている。つまり、本実施形態では、第2レンズ27は、第1レンズ25に積層されている。このため、複数のレンズ3は、それぞれ、シート材11の第2面15bに設けられた第1レンズ25に第2レンズ27を積層した構成を有している。
【0027】
複数の図柄21は、それぞれ、複数のレンズ3のそれぞれに対応している。つまり、本実施形態では、レンズ3ごとに図柄21が設けられている。換言すれば、図柄21ごとにレンズ3が設けられているともみなされ得る。ただし、複数のレンズ3の中には、2つの図柄21に対応するものが含まれている。複数の図柄21のそれぞれが、複数のレンズ3のそれぞれに対応するという表現には、複数の図柄21が1つのレンズ3に対応する場合も、1つの図柄21が複数のレンズ3に対応する場合も含まれる。
複数の図柄21は、レンズ3と図柄21との配置を説明する平面図である図3に示すように、X方向に間隔Qで並んでいる。また、複数の図柄21は、Y方向においても、間隔Qで並んでいる。なお、間隔Qは、間隔Pよりも短い。図3では、構成をわかりやすく示すため、レンズ3が破線で示されている。
複数のレンズ3のうちの1つのレンズ3aと、このレンズ3aに対応する図柄21との位置ずれが0である場合、レンズ3aからX方向において、間隔Pと間隔Qとの最小公倍数の距離D1にある位置に、位置ずれが0になるレンズ3と図柄21との組31が出現する。なお、本実施形態では、間隔Qが間隔Pよりも短いので、1つのレンズ3に2つの図柄21が対応する組31が存在する。
【0028】
また、このレンズ3aからY方向において、間隔Pと間隔Qとの最小公倍数の距離D1にある位置にも、位置ずれが0になるレンズ3と図柄21との組31が出現する。
レンズ3aから、X方向及びY方向のそれぞれにおいて、次に位置ずれが0になるレンズ3と図柄21との組31よりも1つ前の組31aまでのマトリクスが、1つの虚像ユニット33を構成する。
1つの虚像ユニット33では、図柄21を拡大した1つの模様が虚像として視認され得る。
【0029】
本実施形態では、虚像ユニット33の配置を説明する平面図である図4に示すように、複数の虚像ユニット33が、X方向及びY方向の双方に並んでいる。このため、装飾シート1では、複数のレンズ3側から装飾シート1を目視すると、虚像ユニット33ごとに、前述した模様41が出現する。
なお、図4では、模様41が水玉模様を呈している。しかしながら、模様41の態様は、これに限定されず、種々の模様が採用され得る。また、模様41に採用される模様には、記号や文字、図形、画像、紋様などの種々の模様が含まれる。
なお、本実施形態では、図柄21の間隔Qがレンズ3の間隔Pよりも短いので、模様41は、背景として視認されるシート材11の第1面15a(図2)よりも複数のレンズ3側とは反対側に沈み込んだ状態で視認される。
また、装飾シート1では、装飾シート1に対する視線の角度を変化させると、模様41が変位する。
【0030】
ここで、本実施形態では、複数のレンズ3のそれぞれにおいて、図2中のB部の拡大図である図5に示すように、第1レンズ25のシート材11側の焦点F1は、第2レンズ27のシート材11側の焦点F2よりも、第2面15bから遠くに位置している。つまり、本実施形態では、各レンズ3は、互いに焦点距離が異なる第1レンズ25と第2レンズ27とを有している。
本実施形態では、第2レンズ27のシート材11側の焦点F2の位置は、シート材11の第1面15aに設定されている。これにより、第2レンズ27の焦点F2を図柄21に合わせやすくすることができる。
このため、本実施形態では、第2レンズ27を介して視認する図柄21を鮮明な虚像として視認することができる。また、本実施形態では、第1レンズ25の焦点F1が第2レンズ27の焦点F2よりも遠くに位置しているので、装飾シート1に対する視線の角度を小さくしても、第1レンズ25を介して図柄21を鮮明に視認することができる。この結果、装飾シート1では、図柄21を視認することができる範囲である視野角を広げやすくすることができる。
つまり、本実施形態によれば、広い視野角にわたって、レンズ3を介して視認される模様41を鮮明に視認することができる。
【0031】
装飾シート1の製造方法について説明する。
本実施形態における装飾シート1の製造方法は、図6に示すように、描画工程S1と、レンズ形成工程S2と、を有している。
レンズ形成工程S2は、図7に示すように、第1レンズ形成工程S201と、第2レンズ形成工程S202と、を有している。
【0032】
描画工程S1では、まず、図8(a)に示すように、シート材11の第1面15aに、液状体51を塗布することによって、シート材11の第1面15aに複数の図柄パターン21aを描画する。液状体51は、紫外光の照射を受けることによって硬化する性質である光硬化性を有している。
複数の図柄パターン21aの描画には、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が活用され得る。
吐出ヘッド53から液状体51を液滴51aとして吐出する技術は、インクジェット技術と呼ばれる。そして、インクジェット技術を活用して液状体51などを所定の位置に配置する方法は、インクジェット法と呼ばれる。このインクジェット法は、塗布法の1つである。
次いで、図8(b)に示すように、複数の図柄パターン21aに紫外光55を照射する。これにより、複数の図柄パターン21aを構成する液状体51が硬化し、複数の図柄21が形成される。
【0033】
次いで、レンズ形成工程S2の第1レンズ形成工程S201では、まず、図8(c)に示すように、シート材11の第2面15bに、液状体59を塗布することによって、シート材11の第2面15bに複数の第1レンズパターン25aを描画する。
このとき、液状体59の塗布に、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が採用されている。
液状体59は、光透過性を有している。液状体59としては、例えば、アクリル系やエポキシ系などの液状体59が採用され得る。なお、上述した液状体51としては、液状体59に顔料などの色素を混合したものが採用され得る。これにより、図柄21に黒色や白色を含む色彩を付与することができる。また、液状体59は、光硬化性を有している。
複数の第1レンズパターン25aの描画に次いで、図8(d)に示すように、複数の第1レンズパターン25aに紫外光55を照射する。これにより、複数の第1レンズパターン25aを構成する液状体59が硬化し、複数の第1レンズ25が形成される。
【0034】
次いで、レンズ形成工程S2の第2レンズ形成工程S202では、まず、図8(e)に示すように、複数の第1レンズ25のシート材11側とは反対側に、液状体59を各第1レンズ25に重ねて塗布することによって、複数の第2レンズパターン27aを描画する。
このとき、液状体59の塗布に、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が採用されている。
複数の第2レンズパターン27aの描画に次いで、図8(f)に示すように、複数の第2レンズパターン27aに紫外光55を照射する。これにより、複数の第2レンズパターン27aを構成する液状体59が硬化し、複数の第2レンズ27が形成される。
上記により、図2に示す装飾シート1が製造され得る。
【0035】
第1実施形態において、装飾シート1が装飾体に対応し、シート材11が透光層に対応している。
本実施形態では、レンズ形成工程S2において、複数の第1レンズパターン25aに紫外光55を照射してから、複数の第2レンズパターン27aを描画する方法が採用されている。これにより、複数の第1レンズパターン25aを構成する液状体59の少なくとも一部を硬化させてから、複数の第2レンズパターン27aを描画することができる。このため、第1レンズパターン25aを構成する液状体59と第2レンズパターン27aを構成する液状体59とが互いに混合することを避けやすい。この結果、第1レンズ25と第2レンズ27とを明確に区分しやすくすることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、第1レンズ形成工程S201及び第2レンズ形成工程S202において、それぞれ、液状体59の塗布方法としてインクジェット法が採用されている。しかしながら、液状体59の塗布方法は、これに限定されない。液状体59の塗布方法としては、例えば、シリンジ法やディスペンス法などの種々の塗布方法も採用され得る。
【0037】
また、本実施形態では、図柄21の形成において、液状体51の塗布方法としてインクジェット法が採用されている。しかしながら、図柄21の形成方法は、これに限定されない。図柄21の形成方法としては、例えば、スクリーン印刷などの印刷法も採用され得る。
しかしながら、液状体51の塗布方法としてインクジェット法を採用すれば、レンズ形成工程S2における液状体59の塗布方法と、描画工程S1における液状体51の塗布方法とを、互いに同じインクジェット法に統一することができる。これにより、装飾シート1の製造方法の効率化を図りやすくすることができる。このため、液状体51の塗布方法としてインクジェット法を採用することは好ましい。
【0038】
なお、本実施形態では、装飾シート1の製造方法として、描画工程S1、第1レンズ形成工程S201、及び第2レンズ形成工程S202を、この順序で実施する流れが採用されている。しかしながら、装飾シート1の製造方法の流れは、これに限定されず、種々の変更を実施することができる。
以下に、装飾シート1の製造方法の流れの例を記す。以下の例では、記載されている順序で工程が流れていく。
[例1]第1レンズ形成工程S201、第2レンズ形成工程S202、描画工程S1の順。
[例2]第1レンズ形成工程S201、描画工程S1、第2レンズ形成工程S202の順。
例えば、シート材11に複数の第1レンズ25が設けられたレンズシートが市販品として入手可能な場合がある。このようなレンズシートを活用する場合には、装飾シート1の製造方法の流れとして、レンズシートの製造も含めて、上記例1や、例2の流れが適用され得る。
【0039】
[第2実施形態]
第2実施形態における装飾シート1は、断面図である図9に示すように、シート材11と、透光層61と、複数の図柄21と、レンズ3と、を有している。
第2実施形態における装飾シート1は、透光層61が追加されていることを除いては、第1実施形態における装飾シート1と同様の構成を有している。このため、以下においては、第2実施形態における装飾シート1の構成のうち、第1実施形態における装飾シート1と同一の構成については、第1実施形態と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0040】
透光層61は、光透過性を有する材料で構成されており、シート材11の第2面15bに設けられている。透光層61は、第1面63aと、第2面63bと、を有している。
第2実施形態では、透光層61の第2面63bに複数のレンズ3が設けられている。つまり、第2実施形態では、複数のレンズ3とシート材11との間に、透光層61が介在している。
また、第2実施形態では、複数の図柄21は、シート材11の第2面15bに設けられている。つまり、第2実施形態では、複数の図柄21は、シート材11と透光層61とによって挟持されている。このため、複数の図柄21は、透光層61の第1面63aに設けられているともみなされ得る。透光層61は、シート材11の第2面15b側から複数の図柄21を覆っている。
【0041】
第2実施形態における装飾シート1の製造方法について説明する。
第2実施形態における装飾シート1の製造方法は、図10に示すように、描画工程S1と、透光層形成工程S11と、第1レンズ形成工程S201と、第2レンズ形成工程S202と、を有している。
描画工程S1では、まず、図11(a)に示すように、シート材11の第2面15bに、液状体51を塗布することによって、シート材11の第2面15bに複数の図柄パターン21aを描画する。
次いで、図11(b)に示すように、複数の図柄パターン21aに紫外光55を照射することによって、複数の図柄21を形成する。
【0042】
次いで、透光層形成工程S11では、まず、図11(c)に示すように、シート材11の第2面15bに液状体67を塗布することによって、液状体67で複数の図柄21を覆う透光層61aを形成する。
このとき、液状体67の塗布に、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が採用されている。
なお、液状体67は、光透過性を有している。このような液状体67としては、例えば、アクリル系やエポキシ系などの液状体67が採用され得る。なお、上述した液状体51には、顔料などの色素が混合されているので、透光層61aと図柄21とが識別され得る。
また、液状体67は、光硬化性を有している。
透光層61aの形成に次いで、図11(d)に示すように、透光層61aに紫外光55を照射する。これにより、透光層61aを構成する液状体67が硬化し、透光層61が形成される。
【0043】
次いで、第1レンズ形成工程S201では、まず、図12(a)に示すように、透光層61の第2面63bに、液状体59を塗布することによって、透光層61の第2面63bに複数の第1レンズパターン25aを描画する。
このとき、液状体59の塗布に、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が採用されている。
複数の第1レンズパターン25aの描画に次いで、図12(b)に示すように、複数の第1レンズパターン25aに紫外光55を照射する。これにより、複数の第1レンズパターン25aを構成する液状体59が硬化し、複数の第1レンズ25が形成される。
【0044】
次いで、第2レンズ形成工程S202では、まず、図12(c)に示すように、複数の第1レンズ25の透光層61側とは反対側に、液状体59を各第1レンズ25に重ねて塗布することによって、複数の第2レンズパターン27aを描画する。
このとき、液状体59の塗布に、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が採用されている。
複数の第2レンズパターン27aの描画に次いで、図12(d)に示すように、複数の第2レンズパターン27aに紫外光55を照射する。これにより、複数の第2レンズパターン27aを構成する液状体59が硬化し、複数の第2レンズ27が形成される。
上記により、図9に示す装飾シート1が製造され得る。
【0045】
第2実施形態において、装飾シート1が装飾体に対応し、透光層61が透光層に対応している。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
さらに、第2実施形態では、シート材11に、複数の図柄21、透光層61、複数の第1レンズ25、及び複数の第2レンズ27をこの順に重ねて形成することによって装飾シート1が製造され得る。つまり、第2実施形態では、製造の過程でシート材11を反転させる手間を軽減することができる。
【0046】
[第3実施形態]
第3実施形態における装飾シート1は、断面図である図13に示すように、シート材11と、複数の図柄21と、レンズ3と、を有している。
第3実施形態における装飾シート1は、レンズ3の構成が異なることを除いては、第1実施形態における装飾シート1と同様の構成を有している。このため、以下においては、第3実施形態における装飾シート1の構成のうち、第1実施形態における装飾シート1と同一の構成については、第1実施形態と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0047】
第3実施形態では、レンズ3における第1レンズ25及び第2レンズ27が、それぞれ、シート材11の第2面15bに設けられている。
第1レンズ25と第2レンズ27とは、互いに曲率が異なっている。第1レンズ25と第2レンズ27とでは、第1レンズ25の曲率の方が第2レンズ27の曲率よりも小さい。このため、図13中のC部の拡大図である図14に示すように、第1レンズ25のシート材11側の焦点F1は、第2レンズ27のシート材11側の焦点F2よりも、第2面15bから遠くに位置している。
【0048】
第3実施形態における装飾シート1の製造方法は、複数の第2レンズ27をシート材11の第2面15bに形成することを除いて、第1実施形態における装飾シート1の製造方法と同様である。つまり、第3実施形態における装飾シート1の製造方法は、図6及び図7に示す製造方法が適用され得る。
ただし、レンズ形成工程S2の第2レンズ形成工程S202では、図15(a)に示すように、シート材11の第2面15bにおいて、液状体59を各第1レンズ25に隣り合わせて塗布することによって、複数の第2レンズパターン27aを描画する。
次いで、図15(b)に示すように、複数の第2レンズパターン27aに紫外光55を照射することにより、複数の第2レンズ27が形成される。
上記により、図13に示す装飾シート1が製造され得る。
【0049】
第3実施形態において、装飾シート1が装飾体に対応し、シート材11が透光層に対応している。
第3実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、第3実施形態では、装飾シート1の製造方法として、描画工程S1、第1レンズ形成工程S201、及び第2レンズ形成工程S202を、この順序で実施する流れが採用されている。しかしながら、装飾シート1の製造方法の流れは、これに限定されず、種々の変更を実施することができる。
以下に、第3実施形態における装飾シート1の製造方法の流れの例を記す。以下の例では、記載されている順序で工程が流れていく。
【0050】
[例3]第1レンズ形成工程S201、第2レンズ形成工程S202、描画工程S1の順。
[例4]第1レンズ形成工程S201、描画工程S1、第2レンズ形成工程S202の順。
[例5]第2レンズ形成工程S202、第1レンズ形成工程S201、描画工程S1の順。
[例6]第2レンズ形成工程S202、描画工程S1、第1レンズ形成工程S201の順。
[例7]描画工程S1、第2レンズ形成工程S202、第1レンズ形成工程S201の順。
上記例3〜例7のいずれによっても、第3実施形態における装飾シート1を製造することができる。
【0051】
なお、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態では、それぞれ、虚像として視認される模様41が背景よりも沈み込む例が示されている。しかしながら、模様41の態様は、これに限定されず、模様41が背景よりも浮き出る態様も採用され得る。
模様41が背景よりも浮き出る態様では、複数の図柄21は、レンズ3と図柄21との配置を説明する平面図である図16に示すように、X方向に間隔Rで並んでいる。また、複数の図柄21は、Y方向においても、間隔Rで並んでいる。この例では、間隔Rは、間隔Pよりも長い。
複数のレンズ3のうちの1つのレンズ3bと、このレンズ3bに対応する図柄21との位置ずれが0である場合、レンズ3bからX方向において、間隔Pと間隔Rとの最小公倍数の距離D2にある位置に、位置ずれが0になるレンズ3と図柄21との組71が出現する。なお、この例では、間隔Rが間隔Pよりも長いので、1つの図柄21が2つのレンズ3に対応する組71が存在する。
【0052】
また、このレンズ3bからY方向において、間隔Pと間隔Rとの最小公倍数の距離D2にある位置にも、位置ずれが0になるレンズ3と図柄21との組71が出現する。
レンズ3bから、X方向及びY方向のそれぞれにおいて、次に位置ずれが0になるレンズ3と図柄21との組71よりも1つ前の組71aまでのマトリクスが、1つの虚像ユニット33を構成する。
この例では、図柄21の間隔Rがレンズ3の間隔Pよりも長いので、模様41は、背景として視認されるシート材11の第1面15a(図2)よりも複数のレンズ3側に浮き出た状態で視認される。
【符号の説明】
【0053】
1…装飾シート、3…レンズ、11…シート材、15a…第1面、15b…第2面、21…図柄、21a…図柄パターン、25…第1レンズ、25a…第1レンズパターン、27…第2レンズ、27a…第2レンズパターン、31…組、31a…組、33…虚像ユニット、41…模様、51…液状体、53…吐出ヘッド、55…紫外光、59…液状体、61…透光層、61a…透光層、63a…第1面、63b…第2面、67…液状体、71…組、71a…組、D1…距離、D2…距離、F1…焦点、F2…焦点、P…間隔、Q…間隔、R…間隔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する透光層と、
前記透光層の第1面に設けられた複数の図柄と、
前記透光層の前記第1面とは反対側の第2面に設けられた複数のレンズと、を有し、
前記複数のレンズは、それぞれ、前記複数の図柄のそれぞれに対応して設けられており、
前記複数のレンズには、複数の第1レンズと複数の第2レンズとが含まれており、
前記第1レンズと前記第2レンズとは、相互に焦点距離が異なる、
ことを特徴とする装飾体。
【請求項2】
前記複数の第1レンズは、それぞれ、前記複数の図柄のそれぞれに対応して、前記透光層の前記第2面に設けられており、
前記複数の第2レンズは、それぞれ、前記複数の第1レンズの前記透光層側とは反対側で、前記複数の第1レンズのそれぞれに重なっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の装飾体。
【請求項3】
光透過性を有する透光層において、複数の図柄が設けられた第1面とは反対側の第2面に複数のレンズを、前記レンズのそれぞれを前記図柄のそれぞれに対応させて、形成するレンズ形成工程を含み、
前記レンズ形成工程では、前記透光層の前記第2面に配置される第1レンズと、前記第1レンズの前記透光層側とは反対側で前記第1レンズに重なる第2レンズと、を含む前記レンズを形成する、
ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【請求項4】
前記レンズ形成工程では、光の照射を受けることによって硬化する液状体を前記透光層の前記第2面に塗布してから、前記第2面に塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から前記複数のレンズを形成する、
ことを特徴とする請求項3に記載の装飾体の製造方法。
【請求項5】
前記レンズ形成工程は、
前記液状体を前記透光層の前記第2面に塗布してから、前記第2面に塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から複数の前記第1レンズを形成する第1レンズ形成工程と、
前記第1レンズ形成工程の後に、液状体を前記複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布してから、前記第1レンズに塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から複数の前記第2レンズを形成する第2レンズ形成工程と、を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の装飾体の製造方法。
【請求項6】
前記第1レンズ形成工程では、前記液状体をインクジェット法で前記透光層の前記第2面に塗布し、
前記第2レンズ形成工程では、前記液状体をインクジェット法で前記複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布する、
ことを特徴とする請求項5に記載の装飾体の製造方法。
【請求項7】
前記複数の図柄をインクジェット法で形成する、
ことを特徴とする請求項6に記載の装飾体の製造方法。
【請求項8】
前記透光層をインクジェット法で形成する、
ことを特徴とする請求項7に記載の装飾体の製造方法。
【請求項1】
光透過性を有する透光層と、
前記透光層の第1面に設けられた複数の図柄と、
前記透光層の前記第1面とは反対側の第2面に設けられた複数のレンズと、を有し、
前記複数のレンズは、それぞれ、前記複数の図柄のそれぞれに対応して設けられており、
前記複数のレンズには、複数の第1レンズと複数の第2レンズとが含まれており、
前記第1レンズと前記第2レンズとは、相互に焦点距離が異なる、
ことを特徴とする装飾体。
【請求項2】
前記複数の第1レンズは、それぞれ、前記複数の図柄のそれぞれに対応して、前記透光層の前記第2面に設けられており、
前記複数の第2レンズは、それぞれ、前記複数の第1レンズの前記透光層側とは反対側で、前記複数の第1レンズのそれぞれに重なっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の装飾体。
【請求項3】
光透過性を有する透光層において、複数の図柄が設けられた第1面とは反対側の第2面に複数のレンズを、前記レンズのそれぞれを前記図柄のそれぞれに対応させて、形成するレンズ形成工程を含み、
前記レンズ形成工程では、前記透光層の前記第2面に配置される第1レンズと、前記第1レンズの前記透光層側とは反対側で前記第1レンズに重なる第2レンズと、を含む前記レンズを形成する、
ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【請求項4】
前記レンズ形成工程では、光の照射を受けることによって硬化する液状体を前記透光層の前記第2面に塗布してから、前記第2面に塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から前記複数のレンズを形成する、
ことを特徴とする請求項3に記載の装飾体の製造方法。
【請求項5】
前記レンズ形成工程は、
前記液状体を前記透光層の前記第2面に塗布してから、前記第2面に塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から複数の前記第1レンズを形成する第1レンズ形成工程と、
前記第1レンズ形成工程の後に、液状体を前記複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布してから、前記第1レンズに塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から複数の前記第2レンズを形成する第2レンズ形成工程と、を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の装飾体の製造方法。
【請求項6】
前記第1レンズ形成工程では、前記液状体をインクジェット法で前記透光層の前記第2面に塗布し、
前記第2レンズ形成工程では、前記液状体をインクジェット法で前記複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布する、
ことを特徴とする請求項5に記載の装飾体の製造方法。
【請求項7】
前記複数の図柄をインクジェット法で形成する、
ことを特徴とする請求項6に記載の装飾体の製造方法。
【請求項8】
前記透光層をインクジェット法で形成する、
ことを特徴とする請求項7に記載の装飾体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−39738(P2013−39738A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178269(P2011−178269)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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