説明

装飾品

【課題】 柱体状のプリズムの一面に表示を設けるという簡単な作業だけで、他の面からの視野で左右一対のデザイン性に富んだ表示を現出させることができる装飾品を提供する。
【解決手段】 断面三角形の柱体状のプリズムからなり、該プリズムの第一辺に沿って表示が設けられ、該表示の鏡像表示が隣接する第二辺に形成され、残りの第三辺からの視野で左右一対の表示として現出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内または屋外に配置される装飾品に関するものであり、詳しくは、プリズムからなる三角柱体に模様等の表示を施し、光の透過屈折・反射を利用して多様なデザインを現出させるものである。
【背景技術】
【0002】
光の透過屈折や反射等を利用した透明体からなる装飾品は、従来より多種多様のものが提案されている。また、レーザ光線技術の進歩によって、パルスレーザビームを用いてガラスなど透明体の内部に三次元の画像を描くことが可能となり、より審美性の高い装飾品が得られるようになっている。
例えば、特開平11−157300号公報には、図5に示すように、ガラス質ブロック1と、このガラス質ブロック1内に存在する1個以上の気泡2と、この気泡2を構成の一部とし、ブロック内部にパルスレーザビームにより描画された画像3を有するガラス質装飾品4が提案されている。
【0003】
しかし、このような三次元の描画が内部に施されたガラス質装飾品のブロックの各面には、描画そのものの像が現出するのみで、デザインとして単調になってしまうという問題がある。また、ガラス質ブロックの各面にイメージの異なったデザインを形成させるには、それぞれの面に彫刻などの描画を施す必要があり、時間と手間を要するという問題もあった。
【0004】
【特許文献1】特開平11−157300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、柱体状のプリズムの一面に表示を設けるという簡単な作業だけで、他の面からの視野で左右一対の表示を現出させることができるデザイン性に富んだ装飾品を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、断面三角形の柱体状のプリズムからなり、該プリズムの第一辺に沿って表示が設けられ、該表示の鏡像表示が隣接する第二辺に形成され、残りの第三辺からの視野で左右一対の表示として現出させることを特徴とする装飾品を提供している。
【0007】
前記のように、断面三角形の柱体状のプリズムを用い、その第一辺に沿って模様等の表示を設けることにより、第一辺が隣接する第二辺の面で前記表示が反射した像、即ち第二辺の面に形成された前記表示の鏡像と、前記表示そのものの像の両方を残りの第三辺からの視野で現出させることが可能となる。即ち、第三辺の方向から見ると、左右一対のデザイン性のある表示として認識することができ、さらに、視野を変えると左右一対の表示の形状も変化するため、装飾品として変化に富んだデザインを形成することができる。
【0008】
前記プリズムは、断面正三角形あるいは二等辺三角形からなり、かつ、無色透明あるいは有色透明とし、ガラスあるいは樹脂から形成していることが好ましい。
前記のように、プリズムを断面正三角形とすることにより、いずれの面に表示を設けても、隣接する第二辺の面に前記表示の鏡像を形成することができ、その鏡像と表示そのものの像の左右一対の表示を、残りの辺である第三辺からの視野に現出させることができる。
即ち、表示を設けた面以外のいずれの面から見ても、左右一対の表示を現出させることが可能であり、かつ見る面によって左右対称の表示の形状を変化させることができる。
なお、第三辺からの視線の方向や前記表示の位置によっては、前記表示の鏡像が視野に入らなくなる場合がある。したがって、例えば、第三辺に対して垂直となる方向から第三辺を見たときに左右一対の表示を現出させるためには、第一辺のほぼ中央部より第二辺寄りの位置に前記表示を設けることが好ましい。
【0009】
また、前記のように、プリズムを断面二等辺三角形とし、二等辺三角形の頂角が鈍角にならないように角度を適宜調節することにより、二等辺三角形のいずれの辺に沿って表示を設けても隣接する第二辺の面に前記表示の鏡像を形成することができ、その鏡像と表示そのものの像との左右一対の表示を第三辺からの視野に現出させることが可能となる。なお、第三辺からの視線の方向や二等辺三角形の角度によっては表示の鏡像が視野に入らなくなる場合もあるため、例えば、第三辺に対して垂直となる方向から第三辺を見たときに左右一対の表示を現出させるためには、第一辺に設けられる前記表示は、できるだけ第二辺に近接した位置に設けられることが好ましい。
【0010】
また、前記のように、プリズムを可視域で無色透明あるいは有色透明とし、ガラスあるいは樹脂から形成することにより、第一辺に沿って設けた表示の像を第三辺の視野から明瞭に現出させることが可能となる。
プリズムとして用いられるガラスとしては、珪酸を主成分とするクラウンガラスやフリントガラスなど一般的な光学ガラスを用いることができる。また、樹脂としては、例えば、メタクリル樹脂やポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂等の透明の樹脂材料を用いることができる。さらに、前記ガラスや透明の樹脂材料に有色の有機化合物や無機化合物を混合し、有色透明のガラスや樹脂材料を形成してプリズムとして用いることも可能である。
【0011】
前記断面二等辺三角形のプリズムは断面直角二等辺三角形とし、一方側の斜辺を前記表示が設けられる第一辺とすることが好ましい。
前記のように、直角二等辺三角形の二等辺のうちの一方側を第一辺とし、これに沿って表示が設けることにより、第二辺となる二等辺のうちの他方側の面で前記表示が全反射され、残りの第三辺からの視野で、表示そのものの像とそれに対称な鏡像の一対の表示がより明瞭に現出できる。また、この場合には、第一辺のいずれの位置に表示を設けても、直角に対向する第三辺からの視野で、明瞭な左右対称の一対の表示が現れ、より審美性の高い装飾品とすることができる。
【0012】
前記表示は、前記プリズムの表面に刻設されて形成された表示あるいは/およびプリズム表面への不透明着色による外側表示からなることが好ましい。
前記のように、表示をプリズム表面に刻設することにより、刻設した部分で光を散乱させ、刻設した模様等を表示させることができる。
また、プリズム表面に不透明着色による表示を設けることによっても、不透明着色の部分で光を反射させ、模様を表示させることができる。また、外側表示とすることで外側からの彫刻や塗工などで容易に表示を設けることができる。
【0013】
前記表示は、前記プリズム表面に近接した内部にパルスレーザビームで形成された内側表示としてもよい。このように、レーザ加工により表面に近接した内部に彫刻部が形成されるため、装飾品が屋外に展示されるような場合であっても、彫刻部に埃や汚れが付着せず、洗浄が不必要となるため利便性が向上する。
【0014】
前記表示は、左右対称形状の1つの模様の左右いずれか一方側の模様とされ、前記第三辺からの視野で前記左右対称形状の1つの模様として現出させることが好ましい。
前記構成によれば、例えば、おおよそ左右対称形状である人間や動物の顔半分のデザインを前記プリズムの第一辺に沿って設けることにより、隣接する第二辺には、前記顔半分の対称形状の鏡像が形成され、残りの第三辺からの視野で、表示した顔半分そのものの像と、それと対称な顔半分の鏡像を現出させることができる。即ち、第三辺からの視野で左右対称形状の1つの顔のデザインが現れることとなり、面白みのあるデザインとすることができる。特に、断面直角二等辺三角形のプリズムを用いると、二等辺の一辺全面に前記表示を設けた場合でも、直角に対向する第三辺からの視野で、鏡像側の外側端部が欠けて見えることなく完全に左右対称な形状が現出するため好ましい。
【0015】
前記プリズムは下端面に照明装置が付設されていることが好ましい。
前記構成によれば、照明装置からの光をプリズムの下端面から照射することにより、照射光は屈折しながらプリズムの外側に透過したり反射したり、さらに彫刻部分で乱反射したりして、装飾品が屋内に展示された場合や夜間など、幻想的な雰囲気を醸し出し、審美性をさらに高めることができる。照明装置の光源としては、蛍光ランプ、LED、ブラックライトなどを用いることができ、プリズムが配置される土台部分に照明装置を埋め込んだり、透明な土台の裏側に照明装置を設置したりして、プリズムの下端面から光を照射することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
前述したように、本発明によれば、柱体状のプリズムの断面形状や視線方向を考慮しつつ前記プリズムの一側面に模様等の表示を設けるだけで、他の面からの視野で左右一対のデザイン性に富んだ表示を現出させることができ、装飾品としての価値を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る装飾品10を示し、(A)は装飾品10の概略斜視図であり、(B)はその平面図である。
装飾品10は、クラウンガラスを材質とする一辺3cmの断面正三角形の柱体状プリズム(高さ10cm)からなり、第一辺11の面に(C)に示すような模様の表示14を刻設している。なお、(C)に示す表示14は(B)に示す矢印Aの方向(第一辺11に対して垂直方向)から見たものであり、Pは表示の右端部であり、Qは表示の左端部である。ここでは、表示14を第一辺11の中央部より第二辺12寄りの位置に設けている。
なお、本実施形態では、プリズムの一辺は3cm、高さは10cmとした屋内用としている。
【0018】
第一辺11に前記表示14を設けると、隣り合う第二辺12には、表示14の鏡像である14’が形成され、この鏡像14’は、第二辺12に対して表示14の対称の位置に表示14’があるように見える。
即ち、(B)に示すように、表示14のPの鏡像はP’の位置に、Qの鏡像はQ’の位置にあるように見える。したがって、第三辺13の矢印Bの方向(第三辺13に対して垂直方向)の視野では、(D)に示すように、表示そのものの像14と、その鏡像14´が左右一対の表示として現出される。
【0019】
前記構成によれば、断面正三角形の柱体状プリズムの一側面の適切な位置に表示を設けるだけで、他の面からの視野で左右一対の表示を現出させることができ、デザイン性に富んだ装飾品を得ることができる。
【0020】
図2は、本発明の第二実施形態に係る装飾品15を示し、(A)は装飾品15の概略斜視図であり、(B)はその平面図である。
装飾品15は、クラウンガラスを材質とする断面直角二等辺三角形の柱体状プリズムからなり、二等辺のうちの一辺である第一辺16の面に(C)に示すような人間の顔半分のデザインの表示19を刻設する。なお、(C)に示す表示19は(B)に示す矢印Aの方向(第一辺16に対して垂直方向)から見たものであり、Rは表示の右端部であり、Sは表示の左端部である。ここでは、表示19を第一辺16の全長にわたって設けている。
なお、本実施形態では二等辺の一辺の長さを3cm、高さ12cmの屋内用装飾品としている。
【0021】
第一辺16に前記表示19を設けると、二等辺のうちの他辺である第二辺17には、表示19の鏡像である19’が形成され、この鏡像19´は、第二辺17に対して表示19の対称の位置に表示19’があるように見える。即ち、(B)に示すように、表示19のRの鏡像はR’の位置に、Sの鏡像はS´の位置にあるように見える。
したがって、第三辺13の矢印Bの方向(第三辺13に対して垂直方向)の視野では、(D)に示すように、表示そのものの像19と、表示19と左右対称形の鏡像19’が結合されて一つの人間の顔のデザインとして明瞭に現出される。
【0022】
前記構成によれば、断面直角二等辺三角形の柱体状プリズムの二等辺のうちの一辺の面に左右対称形状の模様の左右いずれか半分の表示を設けるだけで、直角に対向する面からの視野で左右対称形状の一つの模様を明瞭に現出させることができ、さらにデザイン性に富んだ装飾品を得ることができる。
【0023】
図3は本発明の第三実施形態に係る装飾品を示し、断面正三角形の第一辺11の面に設ける表示14’をパルスレーザビームにより表面から1mm内側のプリズム内部の面に刻設した点を除き、第一実施形態と同様にして作製した。
即ち、レーザビームの焦点を第一辺の面より1mm内側のプリズム内部の面に合わせてレーザ発振器から発振したレーザビームを照射することにより、その熱により表示14’を一辺11の表面に近接した内部の面に焼き付けている。
【0024】
前記構成としても、断面正三角形の柱体状プリズムの一辺の面に近接した内部の面に表示14’を設けるだけで、隣接辺に左右対称形状の一つの模様を明瞭に現出させることができる。
さらに、表示14’がプリズム内部に設けられていることから、屋外に展示した場合において、彫刻部に埃や汚れが付着することなく、常に美しい表示を現出させることができる。
【0025】
図4は本発明の第四実施形態に係る装飾品を示す。該第4実施形態の装飾品は、第二実施形態の装飾品15を配置した透明な土台20の裏側に照明装置21を付設し、装飾品15の下端面から光を照射している。なお、照明装置21の光源として蛍光ランプを用いている。
【0026】
前記構成によれば、照明装置21からの光をプリズムの下端面から照射することにより、照射光は屈折しながらプリズムの外側に透過したり反射したり、さらに表示の彫刻部分で乱反射したりして、装飾品15が屋内に展示された場合や夜間など、幻想的な雰囲気を醸し出し、装飾品の審美性をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(A)は本発明の第一実施形態に係る装飾品を示す概略斜視図、(B)はその平面図、(C)は矢印Aの方向から見たときの第一辺の表示を示す図、(D)は装飾品を矢印Bの方向から見た正面図である。
【図2】(A)は本発明の第二実施形態に係る装飾品を示す概略斜視図、(B)はその平面図、(C)は矢印Aの方向から見たときの第一辺の表示を示す図、(D)は装飾品を矢印Bの方向から見た正面図である。
【図3】本発明の第三実施形態を示す概略斜視図である。
【図4】本発明の第四実施形態に係る装飾品を示す概略斜視図である。
【図5】従来例を示す図面である。
【符号の説明】
【0028】
10、15 装飾品
11、16 第一辺
12、17 第二辺
13、18 第三辺
14、19 表示
14’、19’鏡像
20 土台
21 照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面三角形の柱体状のプリズムからなり、該プリズムの第一辺に沿って表示が設けられ、該表示の鏡像表示が隣接する第二辺に形成され、残りの第三辺からの視野で左右一対の表示として現出させることを特徴とする装飾品。
【請求項2】
前記プリズムは、断面正三角形あるいは二等辺三角形からなり、かつ、無色透明あるいは有色透明とし、ガラスあるいは樹脂から形成している請求項1に記載の装飾品。
【請求項3】
前記断面二等辺三角形のプリズムは断面直角二等辺三角形とされ、一方側の斜辺を前記表示が設けられる第一辺としている請求項2に記載の装飾品。
【請求項4】
前記表示は、前記プリズムの表面に刻設されて形成された表示あるいは/およびプリズム表面への不透明着色による外側表示からなる請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の装飾品。
【請求項5】
前記表示は、前記プリズム表面に近接した内部にパルスレーザビームで形成された内側表示からなる請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の装飾品。
【請求項6】
前記表示は、左右対称形状の1つの模様の左右いずれか一方側の模様とされ、前記第三辺からの視野で前記左右対称形状の1つの模様として現出させている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の装飾品。
【請求項7】
前記プリズムは下端面に照明装置が付設されている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の装飾品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−76086(P2007−76086A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264888(P2005−264888)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(505345897)
【Fターム(参考)】