説明

装飾建材用塗材及び該装飾建材用塗材を用いた装飾建材

【課題】乾きが早く、作業性に優れ、基材に施された造形を精密に再現できる装飾建材用塗材の提供。
【解決手段】建築用基材に塗装される装飾建材用塗材において、アクリル系共重合体中空微粉体と、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液を含むことを特徴とする。建築用基材としては、所定形状に調製したポリスチレン発泡体、所定形状に調製したポリスチレン発泡体に、ラッカー系シンナーを吹付け、粗面化処理を施してなるもの、所定形状に調製したポリスチレン発泡体にアクリル酸エステル・スチレン共重合体を主成分とするシーラベース、ポルトランドセメント及び珪砂を含む水系塗材を塗装してなるものを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾建材用塗材及び、当該装飾建材用塗材を用いた装飾建材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築用基材に塗装される塗材として、特許文献1に記載のように、アクリル酸エステル・スチレン共重合体、ポルトランドセメント、珪砂を含む水系塗材がある。この塗材を例えば、もろいポリスチレン発泡体のような基材に塗装することによって、硬さ・耐久性・軽量性を兼ね備えた装飾建材が出来上がる。
【0003】
【特許文献1】国際公開第05/019563号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の塗材は、珪砂を含んでいるため、塗材の乾きが極端に遅く、作業性が悪い・建材の生産に時間がかかるという問題があった。また、セメントと珪砂の併用により塗膜が必然的に厚くなるため、建材全体として重量が増すばかりか、微細な造形が施された基材に塗装した場合に、その造形が精密に再現されないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、乾きが早く、作業性に優れ、基材に施された造形を精密に再現できる装飾建材用塗材及び、当該装飾建材用塗材を用いた装飾建材を提供することにある。
【0006】
本発明の要旨は、建築用基材に塗装される装飾建材用塗材において、アクリル系共重合体中空微粉体と、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液を含むことを特徴とする装飾建材用塗材及び、当該装飾建材用塗材を用いた装飾建材である。
【0007】
このような装飾建材用塗材によれば、装飾建材用塗材がアクリル系共重合体中空微粉体を含むことにより、塗材の軽量化・ダレ防止が図られるので、基材に塗装した後の乾きが早く、塗装の作業性が向上する。また、基材に形成される塗膜が約0.3mmと、薄くてすむので、基材に施された造形を精密に再現することができる。
【0008】
更に、アクリル系共重合体中空微粉体を含むことにより、光を反射しシルキー調(漆喰調の滑らかさ、光の反射性による透けるような透明感)の風合いを出すことができるので、アールデコ調の高級感溢れる装飾建材が出来上がる。
【0009】
また、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液を含むことにより、付着性・接着性に優れるので、アクリル系共重合体中空微粉体を混合しやすく、また、建築用基材への塗装がしやすくなり、作業性が向上する。
【0010】
また、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液を含むことにより、耐水性、耐汚れ性に優れ、汚れが付着しても落としやすい装飾建材が出来上がる。
【0011】
ここで本明細書において、建造物は、家屋、建物等の建築物、橋梁等の構造物等を含む広い範囲のものを意味している。本発明の装飾建材用塗材を用いた装飾建材は、これら建造物の内外に使用するものであり、当該装飾建材を使用することにより、建造物の美観が高まるものである。
【0012】
また、装飾建材用塗材は、アクリル系共重合体中空微粉体、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液に加え、体質顔料、成膜助剤、粘性調整剤、可塑剤等の添加剤と、水を含有することが好ましい。
【0013】
これらの添加剤及び水を含有することにより、塗膜のひび割れ防止、耐水性、耐汚れ性の更なる発揮、塗装の作業性向上に寄与する。
【0014】
また、建築用基材としては、所定形状に調製したポリスチレン発泡体、所定形状に調製したポリスチレン発泡体に、ラッカー系シンナーを吹付け、粗面化処理を施してなるもの、所定形状に調製したポリスチレン発泡体にアクリル酸エステル・スチレン共重合体を主成分とするシーラベース、ポルトランドセメント及び珪砂を含む水系塗材を塗装してなるものを用いることができる。
【0015】
ポリスチレン発泡体の表面に本発明の装飾建材用塗材の塗膜が形成されることによって、ポリスチレン発泡体の表面形状がそのまま活かされ、艶がなく、漆喰調のやわらかい表情のある装飾建材が出来上がる。
【0016】
また、ポリスチレン発泡体に、ラッカー系シンナーを吹付け、クレーター状の粗面化処理を施してなるものの表面に本発明の装飾建材用塗材の塗膜が形成されることによって、自然石のような風合いが生まれ、ローマ宮殿のような高級感ある装飾建材が出来上がる。更に、本発明の装飾建材用塗材によれば、基材に施された微細な造形を再現することができるので、シンナーで吹付けられて形成された通りの粗面を再現することが可能である。
【0017】
また、ポリスチレン発泡体に、アクリル酸エステル・スチレン共重合体を主成分とするシーラベース、ポルトランドセメント及び珪砂を含む水系塗材を塗装してなるものの表面に本発明の装飾建材用塗材の塗膜が形成されることによって、塗膜の厚みを抑え薄くて軽量かつ、強固で、きめ細やかな断面形状の造形が施された装飾建材を作成することが出来る。
【発明の効果】
【0018】
本発明の装飾建材用塗材によれば、装飾建材用塗材がアクリル系共重合体中空微粉体を含むことにより、塗材の軽量化・ダレ防止が図られるので、基材に塗装した後の乾きが早く、塗装の作業性が向上する。また、基材に形成される塗膜が約0.3mmと、薄くてすむので、基材に施された造形を精密に再現することができる。
【0019】
更に、アクリル系共重合体中空微粉体を含むことにより、光を反射しシルキー調(漆喰調の滑らかさ、光の反射性による透けるような透明感)の風合いを出すことができるので、アールデコ調の高級感溢れる装飾建材が出来上がる。また、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液を含むことにより、耐水性、耐汚れ性に優れ、汚れが付着しても落としやすい装飾建材が出来上がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の装飾建材用塗材は、アクリル系共重合体中空微粉体と、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液を含むことを特徴とする。この装飾建材用塗材を建築用基材の表面に、コテ、ヘラ、ハケを使用する方法、ガン等による吹付け方法を適宜採用して塗装し、装飾建材用塗材の塗膜が形成された装飾建材が、建造物に用いられる。
【0021】
使用するアクリル系共重合体中空微粉体としては、平均粒子径40μm(光学的測定)、密度0.3g/cm、粒子形状が球体のものが用いられるのが望ましい。また、中空微粉体の粒子は、空気の泡であってもよい。
【0022】
アクリル系共重合体中空微粉体は、本発明の装飾建材用塗材の主成分とも言えるものであり、中空ゆえ軽量であるから、これにより、塗材の軽量化、ダレ防止が図られ、基材に塗装した後の乾きが早くなり、塗装の作業性が向上する。尚、塗材の軽量性は、常温0〜50℃程度で最も発揮されるので、塗装は通常通り行なえば問題なく、この点でも作業性は向上する。
【0023】
また、軽量なアクリル系共重合体中空微粉体を含むことにより、基材に形成される塗膜が約0.3mmと、薄くてすむので、基材に施された微細な造形を精密に再現することができる。
【0024】
また、アクリル系共重合体中空微粉体が、光を反射しシルキー調(漆喰調の滑らかさ、光の反射性による透けるような透明感)の風合いを出すことができるので、アールデコ調の高級感溢れる装飾建材が出来上がる。
【0025】
また更に、アクリル系共重合体中空微粉体は、中空(空気の泡)ゆえ、断熱機能の物理的主役を担っており、本発明の装飾建材用塗材の塗膜が基材の表面に形成された建材は、断熱材としても機能するものである。
【0026】
アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液は、乾燥後、水をはじく性質を有しているので、耐水性、耐汚れ性に優れ、本発明の装飾建材用塗材を基材に塗装した建材は、同様に耐水性、耐汚れ性に優れ、汚れが付着しても落ちやすいという特徴を有する。また、本実施例では、更に、仕上げ材として、防汚材をコーティングすることで、より汚れの付着を防止することが出来る。
【0027】
また、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液は、付着性・接着性に優れるので、アクリル系共重合体中空微粉体を混合しやすく、また、建築用基材への塗装がしやすくなり、作業性が向上する。
【0028】
本発明の装飾建材用塗材には、先に述べたように、アクリル系共重合体中空微粉体と、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液の他、必要に応じて、体質顔料、成膜助剤、粘性調整料、可塑剤等の添加剤と水が混合されてもよい。
【0029】
体質顔料は、塗膜のひび割れ防止に寄与し、また、塗材に含まれる樹脂系材料とその他の材料との接着仲介役として機能するものである。
【0030】
成膜助剤は、アクリル酸系共重合体水の連続被膜を形成する機能を有し、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液の持つ耐水性、耐汚れ性をより効果的に発揮させるものである。
【0031】
粘性調整剤は、塗装の作業性を、対象基材に応じて調製することを目的として添加される。
【0032】
可塑剤は、装飾建材用塗材に含まれる樹脂系材料に柔軟性を持たせ、基材及び体質顔料への付着性を向上させることを目的として添加される。
【0033】
水は、塗装の作業性の向上、装飾建材用塗材の安定性のために、加えられる。
【0034】
アクリル系共重合体中空微粉体及びアクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液に、添加剤及び水が混合される場合、アクリル系共重合体中空微粉体の使用量は、約34.1重量%、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液の使用量は、約27.5重量%、添加剤の使用量は、約6.0重量%、水の使用量は、約32.4重量%であることが望ましい。
【0035】
ここで、装飾建材用塗材の材料配合において、アクリル系共重合体中空微粉体の量が多すぎると、塗膜の基材への付着性が弱くなる。
【0036】
逆に、アクリル系共重合体中空微粉体の量が少なすぎると、付着材が多くなり、本発明の特徴である塗膜の風合いや軽量さが損なわれる。
【0037】
また、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液の量が多すぎると、混合した装飾建材用塗材全体の粘度が低くなる。また、塗材の付着力が低下し、建築用基材、例えばポリスチレン発泡体上に塗装した際、ポリスチレン発泡体より流れ落ち、必要な厚みを塗装することができない。そして、全体的に柔らかくなり、塗材の乾燥に時間がかかり硬化が遅くなる。
【0038】
逆に、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液の量が少なすぎると、塗材全体の粘度が高くなり、建築用基材への均一な塗装ができなくなる。また塗材の成分間の付着力が低下し、塗材がまとまらなかったり、弾力性が低下し、ひび割れ・剥離が生じやすくなる。
【0039】
本発明の装飾建材用塗材の塗膜が形成される建築用基材としては、所定形状に形成されたポリスチレン発泡体、所定形状に形成されたポリスチレン発泡体にラッカー系シンナーを吹付け粗面化処理を施してなるもの、所定形状に形成されたポリスチレン発泡体にアクリル酸エステル・スチレン共重合体を主成分とするシーラベース、ポルトランドセメント及び珪砂を含む水系塗材を塗装してなるものを用いるのが好適である。
【0040】
特に、本発明の装飾建材用塗材は、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液の有する付着性能により、ポリスチレン発泡体への付着力に優れ、このことが、塗材をより乾きやすくしている要因となる。
【0041】
ポリスチレン発泡体の表面に本発明の装飾建材用塗材の塗膜が形成されることによって、ポリスチレン発泡体の表面形状がそのまま活かされ、艶がなく、漆喰調のやわらかい表情のある装飾建材が出来上がる。
【0042】
また、ポリスチレン発泡体に、ラッカー系シンナーを吹付け、クレーター状の粗面化処理を施してなるものの表面に本発明の装飾建材用塗材の塗膜が形成されることによって、自然石の風合いが生まれ、ローマ宮殿のような高級感ある装飾建材が出来上がる。更に、本発明の装飾建材用塗材によれば、基材に施された微細な造形を再現することができるので、シンナーで吹付けられて形成された通りの粗面を再現することが可能である。
【0043】
アクリル酸エステル・スチレン共重合体を主成分とするシーラベース、ポルトランドセメント及び珪砂を含む水系塗材は、必要に応じて、消泡剤、成膜助剤、粘度調節剤等の添加剤を加えられてもよい。
【0044】
該水系塗材の各成分は、シーラベースの使用量が18〜40重量%、ポルトランドセメントの使用量が2〜10重量%、珪砂の使用量が80〜50重量%であることが好ましい。また、添加剤の使用量は、0.1〜10重量%であることが好ましい
【0045】
該水系塗材は、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液の有する付着性能により、ポリスチレン発泡体への付着力に優れ、もろいポリスチレン発泡体の表面を強固なものにすることが出来、より一層、建築用基材としての実用上の価値が高まる。
【0046】
従って、ポリスチレン発泡体に、アクリル酸エステル・スチレン共重合体を主成分とするシーラベース、ポルトランドセメント及び珪砂を含む水系塗材を塗装してなるものの表面に本発明の装飾建材用塗材の塗膜が形成されることによって、アクリル系塗材の重ね塗りが行なわれるにもかかわらず塗膜の厚みを抑えることが出来、薄くて軽量かつ、強固で、きめ細やかな断面形状の造形が施された装飾建材を作成することが出来る。
【0047】
尚、本発明の装飾建材用塗材の塗膜が形成される建築用基材は、必ずしも、上述した3種類の建築用基材のように、ポリスチレン発泡体からなるものでなくてもよい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の装飾建材用塗材を建築用基材の表面に塗装して、装飾建材用塗材の塗膜が形成された装飾建材を作製する場合の一実施例について説明する。
【0049】
本実施例では、建築用基材を3種類用意する。いずれの場合も、まずは、ポリスチレン発泡体を切削して、所定の形状に形成する。ポリスチレン発泡体を所定の形状に形成するには、熱線を使用するのが便利である。熱線は、ニクロム線、ステンレス・タングステン線等の抵抗の大きい線に通電して得られる。
【0050】
ポリスチレン発泡体は、この熱線により簡単に切断され、形状を整えることができる。形状の仕上げに当たっては、カッターややすりを使用してもよい。
【0051】
1つめの建築用基材は、所定形状に形成されたポリスチレン発泡体がそのまま、建築用基材となる。
【0052】
2つめの建築用基材は、所定形状に形成されたポリスチレン発泡体の表面に、ラッカー系シンナーを吹付け、粗面化処理を施して得られる。つまり、シンナーが吹付けられた部分のポリスチレン発泡体は溶解し、ランダムな虫食い穴開き状、クレーター状の表面に仕上がる。尚、本実施例で使用したシンナーは、大伸化学(株)のHT−2500 ラッカーシンナーであり、1mにつき、6.0〜7.0ccを吹付けた。
【0053】
3つめの建築用基材は、所定形状に形成されたポリスチレン発泡体に、アクリル酸エステル・スチレン共重合体を主成分とするシーラベース、ポルトランドセメント及び珪砂を含む水系塗材を塗装して、該水系塗材の塗膜が表面に形成されてなる。
【0054】
本実施例の水系塗材は、まず、アクリル酸エステル・スチレン共重合体の水系エマルジョンを95重量%にシリコーン系消泡剤を0.95重量%、セルロース系の粘度調節剤を0.25重量%、テキサノールの成膜助剤を3.8重量%混合したシーラベースを作製する。
【0055】
更に、このシーラベースを27.4重量%に、ポルトランドセメントを4.1重量%、珪砂を68.5重量%混合して、本実施例の水系塗材を得る。尚、この際、水を添加して、所望の粘度に調整した。
【0056】
こうして作製された水系塗材をリシンガンに投入し、先のポリスチレン発泡体の表面に、塗膜が0.7〜1.0mm程度になるまで塗装した。
【0057】
リシンガンを用いて吹付け塗装を行なう場合は、被塗装面から50〜60cm程度の距離をおいて、ほぼ直角に吹付けるのがよい。リシンガンで塗装が困難な部分或いは、コテ、ヘラ、ハケで塗装したほうが容易な場合は、コテ、ヘラ、ハケを使用して塗装する。その後、上塗りを行なって仕上げ処理をする。
【0058】
尚、添加する水の量は、この水系塗材の塗装方法によって異なる。すなわち、本実施例のように、リシンガンを使用して当該水系塗材を塗装する場合には、粘度が低いことが望ましいので、添加する水の量は多くなる。一方、コテ、ヘラ、ハケを使用して塗装する場合には、粘度は幾分高くてもよいので、添加する水の量は少なくてもよい。粘度を調節するための増粘剤等の粘度調節剤は適宜、使用されればよい。
【0059】
これらの材料の混合割合は、塗装方法がリシンガンか、コテ・ヘラ・ハケかの相違によるものの他に、温度や湿度、ポリスチレン発泡体の形状、大きさや、装飾建材の取付け場所等を勘案して微調整するのがよい。
【0060】
塗材の成分配合量は先に述べた通りであるが、シーラベースの量が多すぎると、混合した塗材全体の粘度が低くなり、水っぽくなる。また、塗材の付着力が低くなり、ポリスチレン発泡体上に塗装した際、ポリスチレン発泡体より流れ落ち、必要な厚み(0.7〜1.0mm)をポリスチレン発泡体上に塗装することが出来ない。そして、全体的に柔らかくなり、塗材の乾燥に時間がかかり硬化が遅くなる。
【0061】
逆に、シーラベースの量が少なすぎると、混合した塗材全体の粘度が高くなり、ポリスチレン発泡体への均一な塗装が出来なくなる。また、塗材の成分間の付着力が低下し、塗材がまとまらなくなったり、弾性力が弱まり、ひび割れ、剥離が生じやすくなる。
【0062】
また、セメントの量が多すぎると、塗材の乾燥が早まり、塗装中に硬化が始まり、均一な塗装が出来なくなる。また、乾燥後のひび割れの原因になる。
【0063】
逆にセメントの量が少なすぎると、硬化力が弱く、塗材の乾燥に時間がかかり、十分な硬さを得られなくなる。
【0064】
また、珪砂の量が多いと、塗材の全体がぼそぼそし、ポリスチレン発泡体への均一な塗装が出来なくなる。更に、表面に凹凸が激しく出来、表面の均一な仕上がりが出来ない。
【0065】
逆に珪砂の量が少ないと、十分な硬さを得られなくなり、耐久性が低下する。
【0066】
以上のように、アクリル酸エステル・スチレン共重合体を主成分とするシーラベース、ポルトランドセメント及び珪砂を含む水系塗材をポリスチレン発泡体上に塗装することで、もろいポリスチレン発泡体の表面がより強固となる建築用基材が作成され、より一層、建築用基材としての実用上の価値が高まる。
【0067】
このように、3種類の建築用基材が揃ったところで、装飾建材用塗材を、それぞれの建築用基材の表面に塗装する。
【0068】
本実施例の装飾建材用塗材は、アクリル系共重合体中空微粉体として、平均粒子(泡)径40μm、密度0.3g/cm、粒子形状が球体(空気の泡)のものを、体質顔料として、タンカルタルククレー(日東粉化工業(株))を、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液として、Aシーラー(栗岡商事(有))を、粘性調整剤(増粘剤)としてコテグラード(アサヒ電化工業(株))を、可塑剤としてBASFジャパン社製のものをそれぞれ用いた。
【0069】
これらの材料を、アクリル系共重合体中空微粉体と体質顔料が34.1重量%、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液と成膜助剤が27.%重量%、粘性調整剤と可塑剤が6.0重量%、そして水を32.4重量%、の各重量比率で混合して、装飾建材用塗材を得る。
【0070】
作製した装飾建材用塗材を、リシンガンに投入し、先の3種類の建築用基材の表面(装着面を除く)に吹付け塗装する。リシンガンは、この被塗装面から50〜60cm程度の距離をおいて、ほぼ直角に吹付けるのがよい。
【0071】
そして、被塗装面に、塗膜が0.3mm程度になるまで、2回の吹付けを行なう。尚、ポリスチレン発泡体上にアクリル酸エステル・スチレン共重合体を主成分とするシーラベース、ポルトランドセメント及び珪砂を含む水系塗材を塗装した建築用基材の塗膜の厚さは、合計すると1.0〜1.3mmとなる。
【0072】
尚、リシンガンによる吹付け塗装が困難な部分や、コテ、ヘラ、ハケで塗装したほうが容易な場合には、コテ、ヘラ、ハケを使用して塗装する。
【0073】
その後、表面を乾燥させると、建築用基材の表面に装飾建材用塗材の塗膜が形成される。更に、その塗膜上に、防汚材(玄玄科学工業(株)製のユートン)をコーティングして仕上げ処理を行なう。防汚材をコーティングすることにより、更に、表面に汚れが付着しにくくなり、また、汚れが付着しても落としやすくなる。
【0074】
本実施例の装飾建材用塗材と、従来のセメントと珪砂とアクリル酸エステル・スチレン共重合体を含む水系塗材とを、0.5mの表面積を有する基材(ここではポリスチレン発泡体を使用)にそれぞれ塗装し、本実施例の装飾建材用塗材については1.0〜1.3mmの塗膜を形成し、従来の水系塗材については1.5〜2.0mmの塗膜を、2回塗りにより形成するようにし、塗材が乾いて塗膜が形成されるまでの時間を計測したところ、本実施例の装飾建材用塗材は、5.0時間で、従来の水系塗材は、10.0時間であった。このことからも、本実施例の装飾建材用塗材により、塗装の作業性が向上することが分かる。
【0075】
このようにして作製された装飾建材1a〜1cの斜視図及び側面図を図1〜図3に示す。図1は、建築用基材としてポリスチレン発泡体2aを用い、これに装飾建材用塗材3aを塗装して塗膜が形成された場合、図2は、建築用基材としてポリスチレン発泡体2bの表面に、ラッカー系シンナーを吹付け、粗面化処理を施したものを用い、これに装飾建材用塗材3bを塗装して塗膜が形成された場合、図3は、建築用基材としてポリスチレン発泡体2c上にアクリル酸エステル・スチレン共重合体を主成分とするシーラベース、ポルトランドセメント及び珪砂を含む水系塗材5を塗装し、当該水系塗材5の塗膜が形成されたものを用い、この塗膜上に更に装飾建材用塗材3cを塗装して塗膜が形成された場合である。
【0076】
図1(a)の装飾建材1aは、ポリスチレン発泡体2aの表面形状がそのまま活かされ、艶がなく、漆喰調のやわらかい表情を有したものとなる。
【0077】
また、図1(b)の装飾建材1bは、ラッカー系シンナーを吹付けたことにより形成されたクレーター状の粗面がそのまま活かされ、自然石の風合いが生まれ、ローマ宮殿のような高級感を有したものとなる。
【0078】
また、図1(c)の装飾建材1cは、異なる種類のアクリル系塗材を重ね塗りしているということになるが、本実施例の装飾建材用塗材3cによれば、約0.3mmという薄さの塗膜が形成されるので、水系塗材5の上に重ね塗りを行なっても塗膜の合計厚みは、1.0〜1.3mmに抑えられる。従って、薄くて軽量かつ、強固で実用的であり、きめ細やかな断面形状の造形が施された装飾建材1cとなる。また、水系塗材5の塗膜上に、装飾建材用塗材3cを塗装することで、装飾建材用塗材3cが仕上げ剤の役割を果たし、高級感ある装飾建材となる。
【0079】
また、これらの装飾建材1a〜1cは、シルキー調(漆喰調の滑らかさ、光の反射性による透けるような透明感)の風合いのある高級感漂う建材となるだけでなく、軽量で、耐水性、耐汚れ性に優れ、汚れが付着しても落としやすい建材となる。
【0080】
これらの装飾建材1a〜1cは、接着剤によって容易に建造物に装着することができる。すなわち、装飾建材1a〜1cは、ポリスチレン発泡体を基材としているので、容易に接着剤によって十分な強度を保持して建造物に装着することができる。接着剤は、各種の接着剤を使用することができるが、特に、シリコン系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、エポキシ系樹脂接着剤を好適に使用することができる。
【0081】
尚、本実施例では、接着剤として、商品名「グリップ」(ハウスジャパン株式会社)の品番9670を使用した。
【0082】
作製された装飾建材は、建造物のアーチ、妻壁飾り、窓額縁、コーナーパネル、モールディング、デンティル、装飾柱、窓台、まく板、ブラケット等、建造物の内部、外部を問わず、使用できる。内装としては、天井の廻り縁、間接照明用モールディング、装飾柱、窓やドア枠廻り等の装飾に用いられる。また、外装としては、外壁のモールディング(まく板飾り)、窓やドア廻りの装飾、コーナー飾り等に用いられ、外構としては、土塀、ゲート、その他の装飾に用いられる。
【0083】
これらは、建造物の主要構造材ではなく、あくまで装飾用の建材であるが、建造物にアクセントを与え、美しく飾ることにより、華やかさや高級感、また陰影が増し、建造物にメリハリを与えることができるので、個人住宅、マンションに限らず、デパート、ホテル、店舗、結婚式場、遊園地・テーマパークのアトラクション施設等の、各種商業施設に好適である。
【0084】
また、軽量なポリスチレン発泡体を建材としているので、万一、建造物から装飾建材が落下することがあっても安全であり、再度、接着剤で装着すればよいので、補修も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の装飾建材用塗材を用いた装飾建材の一実施例を示す斜視図及び側面図である。
【図2】本発明の装飾建材用塗材を用いた装飾建材の一実施例を示す斜視図及び側面図である。
【図3】本発明の装飾建材用塗材を用いた装飾建材の一実施例を示す斜視図及び側面図である。
【符号の説明】
【0086】
1:装飾建材
2:ポリスチレン発泡体
3:装飾建材用塗材
5:水系塗材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築用基材に塗装される装飾建材用塗材において、
アクリル系共重合体中空微粉体と、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液を含むことを特徴とする装飾建材用塗材。
【請求項2】
前記装飾建材用塗材は、
アクリル系共重合体中空微粉体、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液に加え、体質顔料、成膜助剤、粘性調整剤、可塑剤等の添加剤と、水を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の装飾建材用塗材。
【請求項3】
建築用基材の表面に装飾建材用塗材の塗膜が形成された装飾建材において、
前記装飾建材用塗材は、アクリル系共重合体中空微粉体と、アクリル酸エステル・スチレン共重合体水分散液を含む
ことを特徴とする装飾建材。
【請求項4】
前記建築用基材は、
所定形状に形成されたポリスチレン発泡体である
ことを特徴とする請求項3に記載の装飾建材。
【請求項5】
前記建築用基材は、
所定形状に形成されたポリスチレン発泡体に、ラッカー系シンナーを吹付け、粗面化処理を施してなる
ことを特徴とする請求項3に記載の装飾建材。
【請求項6】
前記建築用基材は、
所定形状に調製したポリスチレン発泡体に、アクリル酸エステル・スチレン共重合体を主成分とするシーラベース、ポルトランドセメント及び珪砂を含む水系塗材を塗装してなる
ことを特徴とする請求項3に記載の装飾建材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−308663(P2007−308663A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141864(P2006−141864)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(500259038)株式会社インターデコム (2)
【Fターム(参考)】