説明

装飾用壁パネルおよびかかるパネルの製造方法

1つ以上の層からなり、その少なくとも1層が少なくとも1つの顔料を含む感想常用塗料と、該乾燥常用塗料に塗布した放射線硬化性塗料組成物とを備える着色セメント接着パネル。常用塗料は、イソシアネート基と反応できる官能基を有する。放射線硬化性塗料組成物は、(i)少なくとも1つの放射線硬化性ポリマーAと、官能基と反応したイソシアネート基を有する少なくとも1つの化学的架橋性および放射線硬化性ポリマーBとを備え、(ii)DIN 67530に従って測定して入射角85°で20%以上の表面光沢を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾用壁パネル、特に繊維‐セメント強化板材およびセメント接着木材粒子板材のような着色被覆セメント系板材、以下着色セメント接着パネルおよびかかる着色セメント接着パネルの製造方法に関する。
【0002】
さらに具体的に言うと、本発明は、a)各パネルに塗布し、1つ以上の塗布層で形成した常用乾式塗料で、該常用塗料の少なくとも1層が少なくとも1つの顔料を含有する常用乾式塗料と、b)前記常用乾式塗料に塗布した放射線硬化塗料組成物とを備える着色セメント接着パネルに関する。
【背景技術】
【0003】
セメント系製品の不利な特性は、風解現象の発生であることが通常既知である。これは、その無機結合剤がアルカリ性環境において1価以上の価数のカチオン、例えばCa2+を含む事に起因する。従って、空気中の二酸化炭素との反応で、セメント接着製品の表面に水溶解性が低く、見苦しい炭酸カルシウムの白斑を発現させる可能性がある。
【0004】
セメント系製品の他の問題は、その製造中に顔料の添加による大量の着色によっても明色が得られず、見栄えの悪い灰色がかった色である。
【0005】
上記の不利な特性を回避するために、セメント接着製品は、しばしば塗料を備える。この目的のために、結合剤として水性ポリマー分散液を有する水性塗料系が一般に用いられる。通常の結合剤は、スチレン−アクリレート共重合体、酢酸ビニルのホモポリマーおよび共重合体、純粋なアクリレートなどを有する。しかし、これは以下の根本的な不利益をもたらす。すなわち、第1に、乳化剤を湿気暴露下で塗料から溶出させることができる。これは、次に塗料の弾性の低下を引き起こす。酸性基の存在は、ポリマーが環境水の吸収により膨潤し、その結果塗料の強度を低下させるという更なる不利益を有する。かかる塗料の強度は、セメント系製品の固化中にポリマーの膨潤によっても著しく低下する。一般に、熱可塑性塗料系の他の不都合は、その柔軟な表面であり、それ故その機械的磨耗に対する耐性が不十分である。さらに、熱可塑性塗料系の紫外線耐候性および耐化学薬品性が、一般に不十分であるようである。
【0006】
例えば、アクリル系分散液で呼び被覆したセメント系基板上に塗布した第2の塗料を使用することによりセメント接着製品の保護を改善することが可能であった。特許文献1には、2成分ポリウレタン仕上材の使用が開示されている。しかし、これら塗料系は、長い硬化時間に苦しみ、しばしば有害な溶剤を含み、さらに、スプレーしぶきの回収がほぼ不可能である。
【0007】
特許文献2には、繊維‐セメント板材に適した放射線硬化性塗料配合物が開示されているが、しかしかかる塗料の基板に対する接着が悪い。
【0008】
請求項1の序文に記述したような着色セメント接着パネルは、水性フリーラジカル乳化重合により得た常用塗料に塗布した放射線硬化性塗料の無機成形品への使用を開示した特許文献3から既知である。しかし、この方法で被覆した無機成形品は、常用塗料と放射線硬化性塗料との間の接着に欠ける。さらに、紫外線硬化は、影領域、すなわち無機成形品の端縁で効率が悪くなる。他の問題は、無機成形品の裏面を損う紫外線硬化性塗料がなお未硬化のままであることである。その結果、裏面および端縁はしばしば粘着性があり、取り扱いおよび保管上の問題になる。
【0009】
さらにまた、特許文献3だけでなく、特許文献1にも記載の塗料系は、その光沢があり、つやつやした表面外観による不所望な反射率で特徴付けられたパネルをもたらす。これは、特にトンネル用途で不利になる。塗料成分として非晶質シリカのような艶消剤を使用すると、多孔質表面、水の吸収および紫外線安定性の低下をもたらし、そのパネルを外部用途に対しより不適切なものとする。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0192627号明細書
【特許文献2】米国特許第6162511号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0894780号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、光沢がありつやつやした表面の不所望な反射率の問題を解決しながら、常用塗料と放射線硬化性塗料との間の接着を改善した着色セメント接着パネルを設けることにより、上述し欠点の少なくともいくつかを解決することである。従って、このタイプのパネルを内外の外装用パネルとして使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、本発明は、請求項1の序文に記載の着色セメント接着パネルを提供するもので、前記常用塗料の少なくとも最後に塗布した層がイソシアネート基と反応性である官能基を備え、前記放射線硬化性塗料組成物が、(i)少なくとも1つの放射線硬化性ポリマーAと、前記官能基と反応、また任意に周囲水分と反応すべきイソシアネート基を有する少なくとも1つの化学的に架橋性で、放射線硬化性のポリマーBを備え、(ii)DIN 67530に従って測定して入射角85°で20%以下の表面光沢を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
官能基と反応したイソシアネート基の存在は、放射線硬化性塗料と常用塗料との間優れた接着をもたらす。
【0013】
本発明に係る着色セメント接着パネルの他の実施形態が添付した請求項に示される。
【0014】
本発明はまた、着色した塗料耐久性のセメント系パネルの製造方法、特に、制御された表面光沢と優れた接着性および耐候性とを有する繊維‐セメント強化板材およびセメント接着木質パーティクル板材のような着色した塗料セメント系板材の製造方法に関する。
【0015】
本発明に係る着色塗料セメント接着パネルの製造方法は、以下の工程、すなわち、
a)先ずセメント接着パネルに1つ以上の層よりなり、少なくとも1層が少なくとも1つの顔料を含む常用塗料を塗布し、
b)前記常用塗料をフィルムに成形し、乾燥し、
c)次いで乾燥した常用塗料に放射線硬化性塗料組成物を塗布する工程を備え、前記常用塗料の少なくとも最後に塗布した層がイソシアネート基と反応性の官能基を有し、前記放射線硬化性塗料組成物がエチレン系不飽和二重結合を有する少なくとも1つの放射線硬化性ポリマーAと、エチレン系不飽和二重結合だけでなく所定の遊離イソシアネート基を有する少なくとも1つの化学的架橋性および放射線架橋性ポリマーBとを有することを特徴とし、前記方法はさらに以下の工程、すなわち、
d)前記常用塗料内に前記放射線硬化性塗料を化学的に固定し、
e)前記放射線硬化性塗料組成物で被覆したセメント接着パネルを所定の表面仕上げを有する放射線透過性フィルムにより覆い、
f)前記放射線硬化性塗料組成物を前記放射線透過性フィルムを通る放射線により硬化し、
g)硬化した放射線硬化性塗料組成物で被覆したセメント接着パネルから前記放射線透過性フィルムを除去する工程を備える。
【0016】
放射線硬化性塗料組成物のイソシアネート基と、常用塗料に存在する官能基との反応は、両方の塗料間の接触から始まる。これは、放射線硬化性塗料組成物と常用塗料との間の接着を増大する化学的固定をもたらす。
【0017】
放射線硬化性塗料の硬化中放射線透過性フィルムを使用すると、遊離イソシアネート基が周囲媒体(水分、酸素)と反応するのを防止することができ、着色セメント接着パネルの表面光沢を制御することができ、エチレン系不飽和を酸素の連鎖破壊反応から保護する。
【0018】
本方法は、さらに周囲水分と遊離イソシアネート基との反応を備えるのが有利である。
【0019】
放射線硬化性塗料を塗布する場合、放射線硬化性塗料が、被覆および硬化すべきセメント接着パネルにおけるセメント接着パネル表面の硬化すべき領域からあふれ出ることが時々現れる。これは、パネルを裏面領域および端縁領域で粘着性にする。その理由は、これら領域が放射線に暴露されないか、又は十分に暴露されず、上述したパネルの保管および取り扱い問題になるからである。周囲水分の水分子と遊離イソシアネート基との反応は、非粘着性のパネルをもたらす反応を付与することにより着色セメント接着パネルの保管の問題を解決するのに協力するので、塗料を損なうことなく容易に取り扱い、保管することができる。さらに、この反応は、パネル表面の空洞に残留する放射線未硬化塗料の悪臭を回避する。
【0020】
本発明に係る方法の他の実施形態が添付した請求項に示される。
【0021】
本発明の方法で被覆した繊維強化セメント板材の最も広く使用される製造方法は、変性されたシーブ・シリンダー抄紙機であるハチェック(Hatschek)法である。他の製造方法は、マニャーニ(Magnani)法、射出、押出成形、フローオンなどである。本発明方法に係わる着色被覆繊維強化セメント板材は、ハチェック法により製造するのが好ましい。未加工、すなわち未硬化のシートを、通常22〜30MPaの範囲の圧力で任意に後圧縮して所望の密度を得、続いて、好適には80℃以下の温度のオーブン中で約5時間自然硬化する。これらのシートは、必ずしも必要でないが、一般に自然硬化後1週間以内に、160℃〜190℃の範囲の温度で、通常約0.7MPa〜1.3MPaの範囲の圧力をかけながら、好ましくは約6〜24時間オートクレーブ処理することができる。
【0022】
繊維強化セメントパネルは、1つ以上のセメント系結合剤、加工繊維、ならびに任意の強化繊維、加工助剤、添加剤および/または充填剤を備える水硬性の水性懸濁液から出発して製造される。通常2〜10%の範囲の固形分を有するこの水性懸濁液を混合して、成分のほぼ均一な分散を得る。次いで、懸濁液を脱水し、新鮮な製品(未加工品)を平面シートの形に成形し、任意に後圧縮して緻密化し、続いて大気条件(自然硬化)または特定の圧力、温度および湿度条件(オートクレーブ処理)下で放置して硬化する。
【0023】
本発明の方法により被覆した繊維強化セメント板材の製造に用いる水硬性組成物は、水硬性結合剤としてセメントを有する。適切なセメントは、ポルトランドセメント、高アルミナセメント、高炉ポルトランドセメント、トラスセメント、スラグセメントなどである。ポルトランドセメントが好適である。
【0024】
本発明の方法により被覆した繊維強化セメント板材の製造に用いる水硬性組成物は、補強有機および/または無機繊維を備えることができる。補強無機繊維を例示すると、ガラス繊維、セラミック繊維、ウォラストナイト繊維およびそれらの混合物がある。補強有機繊維を例示すると、セルロース繊維、ポリエチレンまたはポリプロピレンのようなポリオレフィン類の繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、炭素繊維およびそれらの混合物がある。補強繊維の含有量は、乾燥状態の水硬性組成物の初期総重量に対して10重量%以下であるのが好ましい。
【0025】
本発明に係る繊維強化セメント板材の製造に用いる水硬性組成物は、加工繊維、凝集剤、消泡剤のような加工助剤を備える。適当な加工繊維は、セルロース繊維、ポリオレフィン繊維など、およびそれらの混合物である。加工繊維の量は、乾燥状態の水硬性組成物の初期総重量に対して10重量%以下であるのが好ましい。
【0026】
本発明に係る繊維強化セメント板材の製造に用いる水硬性組成物は、さらにフライアッシュ、非晶質シリカ、石英粉末、岩石粉末、粘土、高炉スラグ、炭酸塩、ポゾランなどのような充填剤および/または添加剤を備えることができる。充填剤および/または添加剤の総量は、乾燥状態の水硬性組成物の初期総重量に対して50重量%以下であるのが好ましい。
【0027】
セメント接着木質パーティクルパネルは、一般に、50〜80%の範囲の固形分を通常有する水硬性組成物を高速回転する針状ローラにより支持テンプレートに射出する半乾燥法により製造される。この水硬性組成物は、基本的に1つ以上のセメント系結合剤および木質チップを有する。木質チップとセメントの比率および木質チップの粒径は、所望の表面粗度により変わる。テンプレートをゆるく分散した材料で覆い、相互に積み重ね、続いて積み重ねた充填テンプレートを所望の板密度に達するまで圧縮し、最終的に板材を硬化工程に出す。多くの場合、これらセメント接着木質パーティクル板材が中心層および2つの表面層からなり、その中心層はセメント含量を減じ、一般に対向する外側表面層に対しより粗い木質チップを備える。
【0028】
本発明に係る方法の工程(a)は、常用着色塗料の塗布である。好適には、本発明に係る方法に用いる常用塗料は、放射線又は化学的架橋により硬化しないものである。適当な塗料は、水性遊離基またはイオン乳化重合により得た結合剤を有するものである。アクリル系および/またはメタクリル系(共)重合体が、特に常用塗料の結合剤として好適である。
【0029】
これらアクリル系および/またはメタクリル系(共)重合体は、通常アクリル酸および/またはメタクリル酸のC1‐C12アルカノールとのエステル並びに単量体として少量のアクリル酸および/またはメタクリル酸の水性ラジカル乳化重合により調製される。特に、アクリル酸および/またはメタクリル酸のC1‐C8アルカノールとのエステルが好適で、エチルアクリレート、n‐ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレートおよびメチルメタクリレートがとくに好ましい。乳化重合は、安定化剤として界面活性剤の使用を必要とする。非イオン界面活性剤が好適である。アルコールエトキシレートが特に好適である。少なくとも1のヒドロキシル価(ISO 4629に従って測定した)を有する常用塗料が好適である。少なくとも1.5のヒドロキシル価が特に好適である。
【0030】
常用塗料の乾燥中の最低膜形成温度は60℃以下であるのが好ましい。
【0031】
常用塗料組成物の少なくとも1層は、少なくとも1つの顔料を有する。代表的な顔料は、二酸化チタン、酸化鉄、スピネル顔料、チタン酸塩およびその他の酸化物のような金属酸化物、またはフタロシアニン類およびアゾ化合物類のような耐アルカリ性有機顔料である。
【0032】
常用塗料の着色層における顔料の体積濃度は、0.01〜25%の範囲であるのが好ましい。0.05〜20%の範囲の顔料の体積濃度が特に好適である。常用塗料の着色層に対し0.1〜10%の顔料体積濃度で良好な結果が得られる。
【0033】
一般に、常用塗料組成物は、重合体結合剤および顔料の他に通常の助剤、例えば、充填剤、湿潤剤、粘度調整剤、分散剤、消泡剤、防腐剤および疎水化剤、殺生物剤、繊維および他の通常成分を備える。適当な充填剤を例示すると、アルミノケイ酸塩、ケイ酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、好ましくはカルサイトまたはライムの形状の炭酸カルシウム、ドロマイト、更にはケイ酸アルミニウムまたはタルクのようなケイ酸マグネシウムがある。
【0034】
適切な常用塗料の固形分は、一般に20〜60重量%の範囲である。
【0035】
常用塗料組成物は、液状成分として基本的には水、必要に応じて水と混和性の有機液体、例えばアルコールを有する。
【0036】
常用塗料組成物を、セメント接着板材上へ50〜500g/m、特に70〜300g/mの範囲の湿式坪量で、既知の方法、例えば噴霧、こて塗、ナイフ塗布、ブラッシング、ロール塗または注型、若しくは1つ以上の塗布の組合せにより塗布する。
【0037】
常用塗料をロール塗または流し塗により塗布するのが好ましい。本発明に係る方法の特に好適な実施態様においては、常用塗料の第1層をロール塗により塗布し、続いて第2層を流し塗により塗布する。常用塗料の第1層の塗料組成物は、常用塗料の第2層と同じかまたは異なってもよい。無着色の常用塗料の第1層の塗布、続いて同一であるが少なくとも1つの顔料を添加した常用塗料の第2層の塗布により良好な結果が得られた。
【0038】
放射線硬化性調合物を塗布する前に、第1の常用塗料を室温、若しくは好適には例えば40〜150℃のような高温で乾燥する(工程b)。
【0039】
第1の常用塗料の乾燥厚は、一般に20μm〜100μm、好ましくは50μm〜70μmである。
【0040】
本発明に係る方法の工程(c)で塗布する放射線硬化性組成物は、エチレン系不飽和二重結合を有し、放射線硬化性である少なくとも1つのポリマーAを備える。
【0041】
放射線硬化性組成物用に可能なポリマーAは、原則として、紫外線または電子ビーム放射線露光下でラジカル開始重合を受けることができるエチレン系不飽和二重結合を有するあらゆるポリマーである。ここで、ポリマー中のエチレン系不飽和二重結合の含有量が、有効な架橋を確保するに十分であることに注意しなければならない。A中のエチレン系不飽和二重結合の含有量は、一般にAの0.01〜1.0mol/100gの範囲、さらに好適にはAの0.05〜0.8mol/100gの範囲、最も好適にはAの0.1〜0.6mol/100gの範囲である。
【0042】
適当なポリマーAは、ポリウレタンアクリレートのようなエチレン系不飽和二重結合を含むポリウレタン誘導体である。
【0043】
本方法の工程(c)で塗布する放射線硬化性組成物は、少なくとも1つの化学的に架橋性で、放射線架橋性のポリマーBを備える。
【0044】
適当なポリマーBは、エチレン系不飽和二重結合を有する遊離イソシアネート含有ポリウレタン類である。遊離イソシアネート基を有するポリウレタンアクリレートが好適である。空気中の水分と遊離イソシアネート基との反応が、室温で、特に放射線に露光せず、それ故完全に硬化していない領域(裏面、端縁、放射線硬化性塗料に形成された空洞、...)で起こる。放射線硬化性組成物の遊離イソシアネート基は、常用塗料に存在するヒドロキシル基のような官能基とも反応し(工程d)、これによって放射線硬化性組成物の常用塗料内での化学的固定を付与する。DIN EN ISO 11 909に従って測定したBの遊離イソシアネート量は、通常5〜20重量%の範囲である。Bの遊離イソシアネート量は、好ましくは8〜20重量%であり、さらに好ましくは10〜18重量%である。
【0045】
B/Aの重量比は、0.03/0.2の範囲が好ましい。0.05/0.1の範囲のB/A重量比が特に好適である。
【0046】
ポリマーAおよびBの他に、放射線硬化性調合物は、ポリマーAおよびBと異なり、800g/mol以下の分子量を有し、カチオンまたはフリーラジカル経路により重合できる化合物を含むこともできる。かかる化合物は、一般に少なくとも1つのエチレン系不飽和二重結合および/または1つのエポキシ基と、800g/mol以下の分子量とを有する。該化合物は、一般に放射線硬化性調合物の所望の加工コンシステンシーに調節する働きをする。これは、調合物が水および/または不活性有機溶媒のような他の希釈剤を含まないか、またはこれらを補助程度のみで含む場合に特に重要である。従って、かかる化合物を反応性希釈剤とも称する。放射線硬化性調合物における(A+B)および反応性希釈剤の総量に対する反応性希釈剤の比率は、好ましくは0〜90重量%の範囲、最も好ましくは5〜50重量%の範囲である。
【0047】
好適な反応性希釈剤は、2価または多価アルコールとアクリル酸および/またはメタクリル酸とのエステル化生成物である。かかる化合物は、一般にポリアクリレートまたはポリエーテルアクリレートと呼ばれる。ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートおよびトリメチロールプロパントリアクリレートが特に好適である。
【0048】
放射線硬化性組成物は、カチオン重合性基、特にエポキシ基を有するポリマーも有することができる。これらは、エチレン系不飽和モノマーの共重合体を含み、該共重合体は、コモノマーとしてエチレン系不飽和グリシジルエーテルおよび/またはエチレン系不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを含む。それらは、OH基含有ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタンおよびノボラックのようなOH基含有ポリマーのグリシジルエーテルも含む。それらは、さらにカルボン酸基を含有するポリマーのグリシジルエステルを含む。カチオン重合性成分を有するすることを望む場合、前記組成物は、カチオン重合性ポリマーの代わり、またはこれと共に、低分子量のカチオン重合性化合物、例えば、低分子量のジー又はポリオールのジーまたはポリグリシジルエーテル、もしくは低分子量のジーまたはポリカルボン酸のジーまたはポリエステルを備えることができる。
【0049】
放射線硬化性組成物は、増粘剤、流動調整剤、消泡剤、紫外線安定剤、乳化剤、表面張力減少剤および/または保護コロイドのような通常の助剤を有する。適切な助剤は、塗料技術の当業者にとって周知である。シリコーン類、特にポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン共重合体を表面添加剤として用いて、塗料の表面張力の低減により良好な基質のぬれおよび良好な抗クレーター性能を付与することができる。適切な安定剤は、オキザニリド、トリアジン、ベンゾトリアゾール(Ciba GeigyからTinuvinTMグレードとして入手できる)およびベンゾフェノンのような典型的な紫外線吸収剤を含む。これらは、通常のフリーラジカル捕捉剤、例えば2,2,6,6‐テトラメチルピペリジンおよび2,6‐ジ‐tert‐ブチルピペリジン(HALS化合物)のような立体障害性アミンと組み合わせて使用することができる。通常、安定剤は、調合物中に存在する重合性成分に対し0.1〜5.0重量%、好ましくは0.3〜2.5重量%の量で使用される。
【0050】
硬化を紫外線により実施する(工程f)場合、使用すべき調合物は少なくとの1つの光開始剤を有する。ここで、フリーラジカル硬化機構(エチレン系不飽和二重結合の重合)用の光開始剤とカチオン硬化機構(エチレン系不飽和二重結合のカチオン重合またはエポキシ基を含有する化合物の重合)用の光開始剤との間で区別すべきである。光開始剤は、電子ビーム硬化性組成物には必要ない。
【0051】
フリーラジカル光重合、すなわちエチレン系不飽和二重結合の重合用に適した光開始剤は、4‐フェニルベンゾフェノンおよび4‐クロロベンゾフェノンのようなベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体、ミヒラーケトン、アントロン、1‐ベンゾイルシクロヘキサン‐1‐オール,2‐ヒドロキシ‐2,2‐ジメチルアセトフェノンおよび2,2‐ジメトキシ‐2‐フェニルアセトフェノンのようなアセトフェノン誘導体、メチルベンゾインエーテル、エチルベンゾインエーテルおよびブチルベンゾインエーテルのようなベンゾインおよびベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタールのようなベンジルケタール類、2‐メチル‐1‐[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐モルフォリノプロパン‐1‐オン、β‐メチルアントラキノンおよびtert‐ブチルアントラキノンのようなアントラキノンおよびその誘導体、2,4,6‐トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、エチル‐2,4,6‐トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネートおよびビスアシルホスフィンオキサイドのようなアシルホスフィンオキサイド類である。
【0052】
カチオン光重合、すなわちビニル化合物またはエポキシ基を含有する化合物の重合用に適した光開始剤は、4‐メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートおよびトルエンジアゾニウムテトラフルオロアルセネートのようなアリールジアゾニウム塩、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネートのようなアリールヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゼンーおよびトルエンスルホニウムヘキサフルオロホスフェートおよびビス[4‐(ジフェニルスルホニオフェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェートのようなアリールスルホニウム塩、ジフェニルジスルホンおよびフェニル‐4‐トリルジスルホンのようなジスルホン類、ジアゾジスルホン、イミドトリフレート、ベンゾイントシレート、N‐エトキシイソキノリニウムヘキサフルオロホスフェートのようなイソキノリニウム塩、N‐エトキシ‐4‐フェニルピリジニウムヘキサフルオロホスフェートのようなフェニルピリジニウム塩、N‐エトキシ‐2‐ピコリニウムヘキサフルオロホスフェートのようなピコリニウム塩、フェロセニウム塩、チタノセンおよびチタノセニウム塩である。
【0053】
前記光開始剤を、放射線硬化性組成物の重合性成分に対し0.05〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、特に0.1〜5重量%の量で使用する。
【0054】
放射線硬化性組成物をセメント接着板材上へ既知の方法、例えば噴霧、こて塗、ナイフ塗布、ブラッシング、ロール塗または注型により塗布する。また、調合物をセメント板材にホットメルト法または粉体被覆法により塗布し得ることも考えられる。放射線硬化性組成物をロール塗により塗布するのが好ましい。放射線硬化性組成物を、通常10〜100μm、好ましくは50〜80μmの範囲の乾燥厚を得るように塗布する。塗布を、室温または高温のどちらか、しかし好適には100℃以下で行うことができる。
【0055】
本方法の工程(e)において、放射線を付与する前に、液体被覆面を放射線透過性フィルムでロールにより覆う。上部フィルムとパネルとの間に混入した気泡およびエアポケットをローラーにより除去するために、液体被覆パネルとフィルムの制御された表面層との間における緊密な接着を有するように注意すべきである。このフィルムは、酸素のラジカル連鎖破壊反応対する保護を付与し、電子ビーム硬化の場合に不活性ガス雰囲気の使用を回避する。さらに、この被覆フィルムは、液体被覆パネル面に接触する側に所定の表面仕上げに制御された光沢面を有する。適当な放射線透過性フィルムは、ポリエステルまたはポリオレフィンの薄いプラスチックフィルムである。放射線透過性フィルム上の制御された表面光沢を、エンボシング、印刷、被覆、エッチングのような様々な方法、または艶消添加剤の使用により得ることができる。なお、一様に分布した表面微小粗さを有する放射線透過性フィルムを表面模様付け、例えばラベル化することができる。
【0056】
本発明に係る方法の工程(f)において、仕上塗料を、一般に200〜600nmの波長の紫外線に露光することにより硬化することができる。紫外線源の適当な例は、高圧および中圧の水銀、鉄、ガリウムまたは鉛蒸気ランプである。中圧水銀蒸気ランプ、例えばIST社のCKまたはCK1源が特に好適である。通常架橋に十分な放射線量は、80〜3000mJ/cmの範囲である。硬化の前に存在するあらゆる溶剤、特に水を、硬化に先立つ別の乾燥工程で、例えば40〜80℃の範囲の温度に加熱するか、または赤外線に露光するにより完全に乾かす。
【0057】
電子ビーム硬化の場合、高エネルギー電子(通常100〜350keV、真空室内のタングステンフィラメントに高電圧を印加することによる)を照射し、実際の硬化工程を不活性な無酸素雰囲気において行う。
【0058】
本発明に係る方法の工程(g)は、放射線硬化性組成物の照射による硬化後の被覆保護フィルムの剥離による除去である。従って、放射線透過性フィルムは、この操作に耐えるに十分な機械的強度、引裂抵抗および低い延伸率を有するべきである。適当な放射線透過性フィルムは、配向性ポリエステルフィルムまたは配向性ポリオレフィンフィルムである。少なくとも1つの艶消面を有する未処理の配向性ポリプロピレンフィルムを用いて良好な結果が得られる。
【0059】
要するに、本発明に係る方法は、制御された光沢面、優れた接着性(下塗り‐基板接着性および中間層塗料接着性)および優れた耐機械磨耗性ならびに耐候性を有する耐久性の着色セメント接着パネルをもたらし、さらにこれらは耐化学薬品性を有する。かかるパネルおよびその内外の壁被覆加工への使用が、本発明のさらなる目的である。
【0060】
本発明に係る着色被覆セメント接着パネルは、被覆側に制御された光沢の艶消面が存在する。反射率値は、一般にDIN 67530で定義した入射角85°において20%以下である。好適には、この値は15%以下である。
【0061】
本発明に係る着色被覆セメント接着パネルは、さらに優れた接着性、すなわち基部塗料―板ならびに中間層塗料接着性を有する。接着性を塗料の塗布後少なくとも2週間、スコッチ8981テープを用いるASTM D 3359方法に従って測定する。本発明に係る着色セメント接着パネルは、少なくとも4B、好適には5Bの接着性値を有する。
【0062】
本発明の目的であるパネルは、さらに、屋外用途に特に適応した顕著な耐候性を有する。塗料の塗布後少なくとも2週間、本発明に係るパネルは、EN ISO 11341 Cyclus A‐1997による5000時間の露光によるキセノンランプ(波長297nm)テストに首尾よく耐え、DIN 67530により入射角85°で測定して4%以下の光沢度変化の絶対値を示す。3%食塩水溶液の存在下でEN12467(+40℃で6時間および−40℃で6時間の各々12時間)に従って50回の凍結解凍サイクルを受けた板材に実施した接着テープ試験(ASTM D 3359方法に匹敵の内部法に従うが、クロスカットをせず、Beiersdorf AG(ハンブルグ)により供給される接着テープn°4651を使用し、塗料の塗布後少なくとも2週間実施する)は、無傷の表面を示した。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下の方法を、商品名ETERPLANTM‐N(繊維強化セメント板材)に適用した。すなわち、
1)まず、Rohm and Haas社により販売されている商品名PrimalTM SS‐521(ヒドロキシル価=2)から主としてなる水系アクリル分散液を第一層はロール塗により、第二層は流し塗により塗布して60〜80℃の温度で少なくとも1分間乾燥した後50〜70μmの乾燥厚を得る。これら顔料の異なる2つの配合物、すなわち、無煙炭着色配合物および緑色に着色した配合物を用いて試験を行った。
2)次いで、生成した被覆表面に放射線硬化性組成物、例えばLanxessにより販売されているFWO 4342/5で、基本的に、
‐79.6重量%の商品名DesmoluxTM UA VP LS2308(A、放射線硬化性のポリウレタンアクリレート)
‐5重量%の商品名DesmoluxTM UA VP LS2337(B、化学的架橋性および放射線架橋性の遊離イソシアネート基含有ポリウレタンアクリレート)
‐10重量%のヘキサンジオールジアクリレート(反応性希釈剤)
‐2.9重量%の商品名IrgacureTM 184(Ciba Geigy社販売の光開始剤)
‐1重量%の商品名SanduvorTM 3206(Clariant社販売の紫外線吸収剤)
‐0.5重量%の商品名TinuvinTM 292(Ciba GEigy社販売のHALS)
‐1重量%の商品名BykTM 306(BYK‐Chemie社販売のぬれ改善用表面添加剤)
を備える組成物を70g/mの厚さでローラ塗による塗布する。
3)この液体被覆面を照射前に1つの艶消面および57μmの厚さを有する未処理のOPPフィルムTreofan ERAの艶消面で覆う。
4)塗布した組成物を、600〜1000mJ/cmの投与量を有する中圧水銀ランプを使用して紫外線で硬化する。
5)放射線透過性フィルムを被覆基板からフィルムの剥離により除去する。
6)未被覆塗料を周囲水分と接触させて硬化する。
【0064】
結果を表1に示す。
【0065】
比較例1
実施例1に記載したものと同一の方法を適用するが、FWO 3342/3(FWO 4342/5と同一の成分を有するが、DesmoluxTM VP LS2337なしの純粋な紫外線硬化性トップ塗料)を使用する。
【0066】
結果を表1に示す。
【0067】
3%食塩水溶液の存在下で50回の凍結解凍サイクル後のテープ試験を受けた表面の外観検査は、このトップ塗料とアクリル系下塗りとの間の弱い接着により紫外線硬化性トップ塗料が除去されるので、損傷領域において光沢面を示した。
結果を表1に示す。
【0068】
比較例2
実施例1に記載したものと同一の方法を用いるが、商品名PrimalTM E357EF(ヒドロキシル価=0.4)を第1塗料として使用する。
【0069】
結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
本発明の好適な実施態様を説明目的で開示したが、当業者は、添付した請求項において開示するように、本発明の趣旨および範囲内で、様々な修正、追加または代替が可能であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)各パネルに塗布し、1つ以上の塗布層からなる乾燥常用塗料で、該常用塗料の少なくとも1層が少なくとも1つの顔料を含む乾燥常用塗料と、
b)前記乾燥常用塗料に塗布した放射線硬化塗料組成物とを備える着色セメント接着パネルにおいて、
前記常用塗料の少なくとも最後に塗布した層がイソシアネート基と反応性である官能基を備え、前記放射線硬化性塗料組成物が、(i)少なくとも1つの放射線硬化性ポリマーAと、前記官能基と反応、また任意に周囲水分と反応すべきイソシアネート基を有する少なくとも1つの化学的に架橋性で、放射線硬化性のポリマーBを備え、(ii)DIN 67530に従って測定して入射角85°で20%以下の表面光沢を有することを特徴とする着色セメント接着パネル。
【請求項2】
前記ポリマーBに関してポリマーBの遊離イソシアネート量が、DIN EN ISO 11909に従って測定して、5〜20重量%、好適には8〜20重量%、さらに好適には10〜18重量%である請求項1に記載のパネル。
【請求項3】
以下の工程
a)先ずセメント接着パネルに1つ以上の層よりなり、少なくとも1層が少なくとも1つの顔料を含む常用塗料を塗布し、
b)前記常用塗料をフィルムに成形し、乾燥し、
c)次いで乾燥した常用塗料に放射線硬化性塗料組成物を塗布する工程を備え、前記常用塗料の少なくとも最後に塗布した層がイソシアネート基と反応性の官能基を有し、前記放射線硬化性塗料組成物がエチレン系不飽和二重結合を有する少なくとも1つの放射線硬化性ポリマーAと、エチレン系不飽和二重結合だけでなく所定の遊離イソシアネート基を有する少なくとも1つの化学的架橋性および放射線架橋性ポリマーBとを有することを特徴とし、さらに以下の工程、
d)前記常用塗料内に前記放射線硬化性塗料を化学的に固定し、
e)前記放射線硬化性塗料組成物で被覆したセメント接着パネルを所定の表面仕上げを有する放射線透過性フィルムにより覆い、
f)前記放射線硬化性塗料組成物を前記放射線透過性フィルムを通る放射線により硬化し、
g)硬化した放射線硬化性塗料組成物で被覆したセメント接着パネルから前記放射線透過性フィルムを除去する工程を備える着色セメント接着パネルの製造方法。
【請求項4】
さらに周囲水分と遊離イソシアネート基との反応を備える請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記常用塗料が放射線または化学的架橋により硬化性でない請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記常用塗料を水性フリーラジカルまたはイオン乳化重合により得る請求項3〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記常用塗料が、水性エマルジョン分散液、好適にはアクリルおよび/またはメタクリル(共)重合体を有する水性エマルジョン分散液である請求項3〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記常用塗料を塗布して20〜100μmの範囲の乾燥厚を付与し、前記放射線硬化性塗料組成物を10〜100μmの範囲の厚さに塗布する請求項3〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーAがポリウレタンアクリレートからなる請求項3〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
所定の表面仕上げを有する前記放射線透過性フィルムが配向艶消ポリプロピレンフィルムである請求項3〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項3〜10のいずれか一項に記載の方法に従って製造したパネルの内外の壁被覆への使用。

【公表番号】特表2010−507033(P2010−507033A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532782(P2009−532782)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060938
【国際公開番号】WO2008/046803
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(509107770)エターニット アクチエンゲゼルシャフト (1)
【出願人】(509107828)
【Fターム(参考)】