説明

装飾部材および装飾部材の製造方法

【課題】樹脂の中に異材質である金属を封入した装飾部材、および、その製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】装飾部材の製造方法は、金属固体に親油基形成液を塗布し、当該金属固体を乾燥して、当該金属固体の表面に親油基を形成するステップと、光透過性を有する樹脂からなる樹脂板を過熱して軟化するステップと、前記樹脂固体に、前記金属固体を押し込むステップと、を有することを特徴とする。装飾部材は、表面に親油基が形成された金属板と、前記金属板を内包する、光透過性を有する樹脂からなる樹脂板と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、例えば家電等のハウジングに用いられる装飾部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄型テレビを始めとする家電製品の筐体には、合成樹脂が多く使用されている。代表的なものとしてはポリスチレンや耐衝撃性を向上させたハイインパクトポリスチレン(HIPS)、変性PPE、ポリプロピレン、ABS、PC/ABS等の熱可塑性樹脂がある。一方薄型テレビは、それが映像をデジタル処理しているため、画質による差別化はさほど大きくない。そこでメーカー各社は、その外観デザインで特徴を出すことに工夫を凝らしている。テレビに限らず、種々の商品で、デザイン性に優れた装飾部材のニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−273265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、樹脂の中に異材質である金属を封入した装飾部材は未だ提案されていない。また、そのような装飾部材の簡易な製造方法についても提案されていない。ここに開示された技術は、樹脂の中に異材質である金属を封入した装飾部材、および、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、装飾部材の製造方法は、
金属固体に親油基形成液を塗布し、当該金属固体を乾燥して、当該金属固体の表面に親油基を形成するステップと、
光透過性を有する樹脂からなる樹脂板を過熱して軟化するステップと、
前記樹脂固体に、前記金属固体を押し込むステップと、
を有する。
【0006】
また、上記課題を解決するため、装飾部材は、
表面に親油基が形成された金属板と、
前記金属板を内包する、光透過性を有する樹脂からなる樹脂板と、
を有する。
【発明の効果】
【0007】
ここに開示された技術によれば、樹脂の中に異材質である金属を封入した装飾部材、および、その製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態の製造プロセスの概略図
【図2】実施形態の製造プロセスの概略図
【図3】実施形態の製造プロセスの概略図
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
本実施形態の装飾部材は、金属固体に親油基形成液を塗布し、当該金属固体を乾燥して、当該金属固体の表面に親油基を形成するステップと、光透過性を有する樹脂からなる樹脂板を過熱して軟化するステップと、樹脂固体に、金属固体を押し込むステップと、
によって製造される。
【0010】
本実施形態では、金属固体として、金属製の板(金属板)を用いている。さらに、金属固体は、金属製の板を組み合わせたものであり、それぞれの板の厚み方向が、仮想面と平行である。
【0011】
本実施形態の装飾部材は、表面に親油基が形成された金属板と、金属板を内包する、光透過性を有する樹脂からなる樹脂板と、を有する。
【0012】
樹脂の中に異材質である金属を封入するということは容易ではない。例えば樹脂製の電子基板の製造においては、基本的に樹脂製の機材の表面に回路用の銅板を積層接着していた。しかしこの場合、まず樹脂がエポキシ等をはじめとする熱硬化型であること、並びに不透明であるため、接着剤も不透明で構わず、よって長期間の信頼性試験後も、外観からの評価だけで良く、目に触れない内部の接着が完全に保持されているかは重要ではない。また強度向上と樹脂の緯線膨張係数を金属に近づける目的で、種々の添加剤やガラス繊維を混ぜているが、これも不透明の用途の場合に限り可能な手法である。
【0013】
しかし透明樹脂の中に金属を埋め込むという構成の場合は、前記の手法をとることが困難であり、よってその後の環境試験において不具合が発生した場合もすべて目視で露見してしまう為、極めて難易度の高い構成になる。
【0014】
また、他の製造法としては、容器の中に金属を入れ、そこに硬化型の液状透明樹脂を、泡を噛み込まないようにゆっくり流し込み、数時間から数日静置するということが一部の用途で行われてきた。これは種々の材料の断面を拡大観察する際に、対象物を透明樹脂に埋め込んだ後、任意の断面で切断したうえ、その断面を研磨して観察する為の試料作りとして行われている。
【0015】
しかしこの手法は、大きなものを作り難いうえ、数時間から数日も硬化時間がかかることからその生産性が著しく悪いうえ、泡の噛み込みが発生し易く、大量生産向きの製法とは言い難い。これに対し、本実施形態では、比較的低コストで簡易なプロセスを提供している。
【0016】
実施形態をさらに具体的に説明する。金属板1として薄いアルミリボンもしくは鋼板を用いた。ただし金属の種類は全くこれらにこだわることなく、意匠性の観点などからどんな金属材料でできた金属材でも構わない。なおこれらの幅は、樹脂基板の厚みと同一以下にし、各々を接着や溶接や紐状のもので束ねるなどして複数のリボンの集まりにする。この固定方法も特にこだわるものではない。しかし、複数の金属リボンがその厚み方向に自立することができ、それぞれのリボンの長辺部分が、同一平面状にあるのが好ましい。例えばハニカムがその好例である。
【0017】
このようにして作製した金属板1を、バット6に入れた接着剤などの親油基形成剤5にディッピングし、金属板1の表面に親油基形成剤5を塗布する(図3)。その後乾燥により親油基形成剤5中の溶剤を蒸発させた。
【0018】
次に熱プレスの熱板の上に樹脂板2を乗せ、その材料の軟化点もしくはガラス転移点以上に加熱して軟化させる。樹脂はアクリルやPCが透明性が高く使用しやすいが、この他にもアイオノマーやABS、PLA,PSあるいはこれらの重合されたアロイでも構わず透明性が高く、熱可塑性の樹脂であれば特にこだわらない。
【0019】
次に前述の金属材1を軟化した樹脂板2の上に置き、上方からプレス機で圧力を掛けたのち、その圧力を保持した状態で、プレス機の温度を樹脂の軟化点以下まで下げ、そののち取り出す(図1)。以上により、優れた意匠性の装飾部材3を得ることができる(図2)。
【0020】
(実施例)
封入する金属板1としてアルミハニカム材を用いた。厚さ5mmのハニカムを広げると六角形の集合体を形成している。このハニカムは薄いアルミリボン同士を部分的に接着剤で接着して作製しているもので、接着後に開く事で、ハニカム構造となる。
【0021】
このアルミハニカム材を、図3に示すように、浅いバット状の容器に入れた親油基形成剤(接着剤)にディッピングする。その後引き上げ、バッチ加熱炉で、80℃で30min.乾燥させて溶剤を除去した。これによりハニカムの壁面に接着剤が均一の膜厚で形成された。具体的には、ウレタン系、アクリル系等の透明な接着剤を用いたが、これらは使用する金属材1と透明樹脂の組み合わせにより都度選択し得るもので、両者の接着を確保できるものなら、特にこだわらない。ただ金属の質感を表現する為には、接着剤は透明なものが必要であり、全く光を通さず下地の金属の質感を隠蔽するものは好ましくない。
【0022】
次に厚さ5mmの無色透明のアクリル板を加熱プレス機に乗せ、150〜180℃に加熱して軟化させる。プレス機の熱板の上には、離型の目的で予め厚さ0.1tのポリイミドフィルムを敷いておいた。なおプロセス時間を短縮させる為に、予め別の加熱炉でアクリル板を当該温度まで加熱した後、昇温してあるプレス機に乗せかえることも可能である。
【0023】
次に加熱されて軟化したアクリル板の上に、アルミハニカム材を静かに載せ、さらに同様のポリイミドフィルムを乗せた後、上方からこれも当該温度に加熱したプレスの熱板を降下させて5〜10MPaのプレス圧力を掛けた(図1)。
【0024】
次にその圧力を保持した状態で、プレス機温度を樹脂の軟化点以下まで下げ、そののち取り出すことで、所望の意匠性の装飾部材3を得ることができる。この冷却速度は装置能力に依存しており、強力な水冷の機能があれば、数秒から数十秒程度で目的温度まで下げることができる。
【0025】
これにより、アルミハニカムはアクリル板に埋め込まれ、かつアルミハニカムとアクリル板の厚みが同一の為、ハニカムがアクリルから突出することが無く、平滑な表面状態を得ることができる。
【0026】
次にこの樹脂板2の金属板1を埋め込んだ側と反対の面を、シルバー調の金属塗料で塗装した。これにより金属板1を埋め込んだ方の面から見たときには底が黒色の樹脂板として見え、樹脂板を透過して前方が透けて見えるということが無くなった。なおこの塗装色は、塗膜を通して前方が透けて見えなければ何色でもよく、またこの他に刷け塗りや印刷、転写、蒸着等、着色膜を形成できる手法であれば、特にこだわるものではない。
【0027】
また本実施例では、アクリル板を用いたが、この他にもPCやアイオノマー、ABS、PLA,PSあるいはこれらの重合されたアロイでも構わず、透明性が高くて熱可塑性の樹脂であれば特にこだわらない。さらに樹脂色も完全な無色である必要は無く、埋め込んだ金属板が見える最低限の透明性があれば、意匠性の観点からは何色でも構わない。
【0028】
<実施形態の特徴>
上記実施形態において特徴的な部分を以下に列記する。なお、上記実施形態に含まれる発明は、以下に限定されるものではない。なお、各構成の後ろに括弧で記載したものは、特徴の理解を助けるために記載した、各構成の具体例である。各構成はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0029】
[A1]
金属固体に親油基形成液を塗布し、当該金属固体を乾燥して、当該金属固体の表面に親油基を形成するステップと、
光透過性を有する樹脂からなる樹脂板を過熱して軟化するステップと、
前記樹脂固体に、前記金属固体を押し込むステップと、
を有する装飾部材の製造方法。
【0030】
[A2]
前記金属固体は、金属製の板である、
A1に記載の装飾部材の製造方法。
【0031】
[A3]
前記金属固体は、金属製の板を組み合わせたものであり、それぞれの板の厚み方向が、仮想面と平行である、
A1に記載の装飾部材の製造方法。
【0032】
[A4]
表面に親油基が形成された金属板と、
前記金属板を内包する、光透過性を有する樹脂からなる樹脂板と、
を有する装飾部材。
【0033】
[B1]
透明性のある樹脂基板と、前記基板の中に、基板の厚み方向に垂直ではない方向に金属板を埋め込んだことを特徴として、該金属板が基板表面から突出しないことを特徴とする装飾部材。
【0034】
[B2]金属板のみで平板上に安定して静置でき、該金属板が1枚から複数枚組み合わさっていることを特徴とするB1記載の装飾部材。
【0035】
[B3]基板の裏面に着色層、反射層等を設け基板の表面から見る時に基板を通して前方が見えることの無いことを特徴とするB1記載の装飾部材。
【0036】
[B4]親油基形成剤に浸漬後、乾燥させた前記金属板を、加熱して軟化状態にある樹脂基板に、プレスにより圧入するB1に記載の装飾部材の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0037】
ここに開示された技術は、例えば家電等のハウジングに用いられる装飾部材またはその製造方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 金属板
2 樹脂板
3 装飾部材
5 親油基形成剤
6 バット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属固体に親油基形成液を塗布し、当該金属固体を乾燥して、当該金属固体の表面に親油基を形成するステップと、
光透過性を有する樹脂からなる樹脂板を過熱して軟化するステップと、
前記樹脂固体に、前記金属固体を押し込むステップと、
を有する装飾部材の製造方法。
【請求項2】
前記金属固体は、金属製の板である、
請求項1に記載の装飾部材の製造方法。
【請求項3】
前記金属固体は、金属製の板を組み合わせたものであり、それぞれの板の厚み方向が、仮想面と平行である、
請求項1に記載の装飾部材の製造方法。
【請求項4】
表面に親油基が形成された金属板と、
前記金属板を内包する、光透過性を有する樹脂からなる樹脂板と、
を有する装飾部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−171616(P2011−171616A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35564(P2010−35564)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】