説明

裏張りミクロ吸盤表示物

【課題】シート表示物を店舗等の透明窓ガラス、車の透明窓ガラス、透明樹脂板等の裏面に貼って、その裏側から蛍光灯で照らし、表側より表示物を見る裏貼り表示物で、インクがこれ等被着体に転移せず、且つ、繰り返し貼って剥がせる裏貼りミクロ吸盤表示物を提供する。
【解決手段】透明な支持体2の一方の面に形成されたミクロ吸盤1に、紫外線硬化型インクジェットプリンターにて紫外線硬化インク7を出力印刷して、少なくとも出力印刷されない残留部分をミクロ吸盤1に残存させた電飾用ミクロ吸盤表示物を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート表示物を店舗等の透明窓ガラス、車の透明窓ガラス、透明樹脂板等の裏面に貼って、その裏側から蛍光灯で照らし、表側より表示物を見る、いわゆる裏貼り表示物の作成において、ミクロ吸盤に紫外線硬化型インクジェットプリンターで画像を出力印刷し、少なくとも出力印刷されない残留部分を残すことにより、繰り返し貼って剥がせる裏貼りミクロ吸盤表示物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、広告ポスター等の表示物は被着体の表面に貼って使う、いわゆる表貼り表示物がほとんどであるが、雨風を避けるため、あるいは故意に剥がされるのを防止するため、透明な窓ガラスの内側に粘着剤で裏貼りして表示物を窓ガラスの外から見る表示物が多い。この場合、表示物は出来るだけガラスに密着する様に貼るのであるが、どうしてもガラスと表示物との間に隙間ができ、窓ガラスの外側から見ると美観を損ねた裏張り表示物になってしまう。
【0003】
窓ガラスに裏張りされた表示物はその裏側から蛍光灯を当てて見せる裏貼り粘着表示物が多く使われている。しかし、この最大の欠点は窓ガラスに貼り付けた時、表示物が大面積になると気泡の混入、しわの発生によりきれいに貼れなく、裏側から蛍光灯を当てるとその気泡の混入、しわが光で浮き出され電飾用裏貼り表示物として使えない難しさがある。粘着剤を使った裏貼り表示物は剥がせるなら剥がして、位置替えや、再使用したい場合がよくあるが、粘着剤はべとつき、糊は残り、ゴミの付着も多く、たとえ剥がせても再使用、保管は出来ないのが現状である。この様に表示物の印刷面に粘着剤を塗布した裏貼り粘着表示物の欠点は窓ガラスに貼り付けたとき、窓ガラスと粘着剤面との間に多数の気泡が混入し、表面に多数の凸状膨れとなって現れ、素人が綺麗に貼れない難点がある。また、一旦貼ったポスターを剥がすとガラス面に粘着剤が残り、その除去にはトルエン、シンナー、ガソリン等を使って除去するしかなく、その除去作業は大変な苦労を要す。
【0004】
本発明は裏貼り表示物の支持体の一方の面に泡沫状アクリル酸エステル共重合体エマルジョンを塗工しミクロ吸盤を成膜させ、ミクロ吸盤の上に紫外線硬化型インクジェットプリンターで出力印刷し、少なくとも出力印刷されない残留部分を残すことにより貼って剥がせて、貼り付け時に抱き込んだ気泡を容易に脱気できる裏貼りミクロ吸盤表示物に関する。これらの欠点を解決する方法として特許文献1には泡沫状アクリル酸エステル重合体エマルジョンを塗工・乾燥して形成されたミクロ吸盤に局部的に水性インクジェット受理層を形成させ、この部分にのみ水性インクジェットプリンターにて水性インクを着弾させ、水性インク受理層が塗布されてない他の部分のミクロ吸盤の吸着力によって窓ガラス等に裏貼りする方法を開示している。この方法は水性インク受理層の設けられた部分しか印刷できない不便性がある。また特許文献1には電子複写機によって画像を一旦転写紙に形成し、その画像をミクロ吸盤層の面上に熱転写して、画像の転写されてない部分のミクロ吸盤の吸着力によって裏貼りを可能にする方法も開示されている。しかしながら電子複写機で出力されたトナー画像面は当然、裏貼りされガラス面に密着させられるのであるが、密着して3か月するとトナーはガラス面にべっとり転移して、その除去には、溶剤を使って除去するしかなく困難な作業となる。本考案は支持体上に泡沫状アクリル酸エステル重合体エマルジョンを塗工・乾燥して形成されたミクロ吸盤に紫外線硬化型インクジェットプリンターにて出力印刷して、出力印刷面を窓ガラスあるいは透明樹脂板に繰り返し貼って剥がせて、貼り付け施工時に気泡を抱き込むことのない裏張りミクロ吸盤表示物に関する。
【0005】
インクジェットプリンターのここ10年の開発は著しく、水性インクを着弾する水性インクジェットプリンターに始まり、次いで溶剤インクを着弾する溶剤インクジェットプリンターが続き、そして3年前より紫外線硬化型インクジェットプリンターの登場をみる。それに並行してそれぞれに適用されるメディアの開発がその用途を更に拡大させている。ミクロ吸盤もそれぞれに適用されるメディアとして多くの特許が申請されている。紫外線硬化型インクジェットプリンターの特長は紫外線で即座に乾燥する紫外線硬化インクを用いていることで水性インク、溶剤インクでは必要とした熱乾燥は一切不要となり、印刷から加工までの作業時間が大幅に短縮できる。またメディアに着弾された紫外線硬化インクは有機溶剤を放出せず着弾されたインクは即座に100%硬化して、10μから15μの肉盛りのある出力印刷が可能となる。ミクロ吸盤に出力印刷した場合図4のようにミクロ吸盤の表面から10μから15μ盛り上がり、盛り上がった隙間より空気が入って出力印刷されたミクロ吸盤部分の吸着力は消失する。さらに盛り上がったインクは表面に出ているため水性インク、溶剤インクのように淡い印刷にはならず鮮やかな印刷物となる。紫外線硬化型インクジェットプリンターのメディアは、紙や樹脂フイルムの様に薄いシート状支持体だけでなく、厚み10mm程度の板状支持体にも出力印刷対応が出来る。
【0006】
支持体3とはミクロ吸盤4が接着される基材であって、電飾用表示物以外であれば必ずしも透明な樹脂フイルムでなくても半透明でも、不透明でも良い。目的によって選択すれば良い。樹脂フイルとしては本考案では厚さ500μ以下が良い。ポリエステルフイルム、塩ビフイルム、アクリルフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリエチレンフイルム、ウレタンフイルム、ポリカーボネートフイルムが良い。その中でもポリエステルフイルムにあってはミクロ吸盤との吸着力の高い厚き75〜200μの透明易接着性ポリエステルフイルム(東洋紡A4300)が良い。塩ビフイルムにあっては可塑剤が8部から35部入った厚さ80μから150μの軟質フイルム(バンドウー化学WY02018)が良い。紙類にあっては厚さ80μから150μのコート紙、あるいはクラフト紙、あるいは片面ポリラミされた上質紙、クラフト紙、不織布であっても良い。樹脂板としても電飾用表示物以外は透明、不透明を問わない。厚さは10mm以下の発泡ポリスチレン板、塩ビ板、ポリプロピレン板、ポリエチレン板、アクリル板が良い。
【0007】
ミクロ吸盤4とは、特許文献6に開示されているが、アクリル酸エステル共重合体エマルジョン液に、整泡剤、増粘剤、起泡剤、硬化剤、顔料、可塑剤を一定の割合に混合して、機械的発泡機「オークスミキサー」を通して、加圧空気を送り込み、発泡倍率1.2倍〜5倍(発泡前の単位容積当たりの重量を発泡後の単位容積あたりの重量で除した数値)にした無数の微細気泡を含む泡沫状アクリルエマルジョン液をコンマコーターにて支持体2に塗布、乾燥して形成される50μ〜1000μ厚の発泡シートをいう。ミクロ吸盤はその径より大きな径を持つ内部の気泡に連続し、該内部の気泡は他の気泡と細径管にて連続した構造を有する吸着性発泡シートである。塗布後のミクロ吸盤上には無数の微細凹状陥没穴を有するが必ずしも真円ではなく、凹状陥没穴19の長径は300ミクロン以下で、平均的には30μ〜100μの凹状陥没穴の個数で95%を占め、単位面積あたり1〜10万個/cmが形成されている。この微細で柔軟な凹状陥没穴19が陰圧吸着力を発揮し、特許文献6に開示されている如くアクリル酸エステル共重合体エマルジョン液に可塑剤を加えることにより、平滑面はもちろん一定の凹凸面にも良く吸着し繰り返し貼って剥がせる機能を付与するようになる。陰圧吸着力とは凹状陥没穴が被着体表面に圧着されると、凹状陥没穴と被着体表面によって形成される密閉空間が減圧状態になることより発生する吸引力である。一方、窓ガラス17等の被着体に貼り施工するとどうしても被着体とミクロ吸盤の間に気泡を抱き込むのであるが、抱き込んだ気泡はミクロ吸盤4の凹状陥没穴19に吸収され消える。この現象を脱気というがミクロ吸盤のもつ特性である。ミクロ吸盤の表面はインクジェットプリンターの出力印刷において2〜3本のガイドロールに接触しながら搬送されるのであるが、ミクロ吸盤は粘着性に乏しいためにガイドロールに接着して巻き込まれることは無く円滑に搬送される特性をもつ。粘着剤であれば円滑な搬送は出来ないことは言うまでも無い。またミクロ吸盤は微細な凹状陥没穴が発揮する陰圧吸着力により発生する接着機構であり、粘着剤では困難とされる繰り返し貼って剥がせる機能を有する。
発泡倍率1.2倍〜5倍のミクロ吸盤は発泡シートであり、背面から光を当てると30μ〜100μの凹状陥没穴が光を乱反射してきらきら光った半透明となる。これが電飾表示物としの効果を出現させる。
【0008】
特許文献2、特許文献3、特許文献4には水性インキ用インクジェットプリンター、あるいは溶剤インキ用インクジェットプリンターを使って、ミクロ吸盤に直接出力印刷して作成される裏貼り表示物の作成方法が報告されている。しかし、この方法によって印刷された裏貼り表示物は特許文献3に明細されている如く、印刷インクはミクロ吸盤面の凹状陥没穴に着弾して吸い込まれるため表面にインクが残らず、その分淡い印刷になってしまう。またどうしても水性インク、溶剤インクは乾燥性が悪く出力印刷直後は流動性を保持していて、出力印刷後すぐにプリンター内の巻き取りロール21に巻かれると図1の如く未乾燥インクが支持体の他の面に転移汚染して不良品となる。また出力印刷物を何枚も積み重ねると、未乾燥インクが支持体の他の面に転移して不良品となる。その対策として特許文献3では印刷後に透明樹脂フイルムをミクロ吸盤面に被覆する方法を開示している。しかしこの方法ではミクロ吸盤の被覆は容易でなくコストも高くなる。
【0009】
また、特許文献3にあるごとくミクロ吸盤の凹状陥没穴19に着弾した水性インク、溶剤インクが未乾燥性であると、裏貼り施工した窓ガラス17、あるいは透明アクリル板17に水性インク、溶剤インクが一部転移汚染して、剥がしたあとの窓ガラスを汚す。特に透明アクリル板に裏貼りした場合は1週間で透明アクリル板に未乾燥インクが移転して繰り返し使えなくなる。さらに転移汚染したインクの除去が困難なのは言うまでも無い。特許文献2には昇華性インキで印刷したシートをミクロ吸盤に熱圧着して裏張り表示物を作成する方法が報告がされている。この方法は窓ガラス、あるいは透明アクリル板に昇華性インクが移転汚染しない良い点を持っているが、貼付3か月もするとミクロ吸盤面に出力印刷された画像は昇華性インキが昇華して画像の輪郭がぼけて商品にならない欠点を持つ。
【特許文献1】特願平7−1661033
【特許文献2】特願2001−309213、
【特許文献3】特願2002−225348
【特許文献4】特願2003−311970
【特許文献5】特許広報平5−81614号
【特許文献6】特願2005−93075
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の如く、▲1▼水性あるいは溶剤インクジェットプリンターでミクロ吸盤の凹状陥没穴に着弾された水性インク、溶剤インクは印刷濃度が淡く商品性に落ちる▲2▼ミクロ吸盤上に出力された印刷インクは裏張りすると窓ガラスや、透明アクリル板に転移汚染してその除去は困難となる▲3▼水性あるいは、溶剤インクジェットプリンターの出力印刷物は、すぐにプリンター内の巻き取りロール21に巻きれるのであるが、この工程において未乾燥インクが支持体2の他の面10に転移して支持体を汚す。以上3大欠点が明らかになっている。これらは全て水性、溶剤インクの乾燥性の悪さからくる欠点である。
また裏貼り粘着表示物にあっては前述した様に窓ガラスと粘着剤面との間に多数の気泡が混入し、表面に多数の凸状膨れとなって現れ、裏側から蛍光灯を当てるとその気泡の混入が光で浮き出され電飾用表示物として使えない難点がある。
本考案はこれらの4つの欠点を全て解決する裏貼り表示物であるを提供することを目的とする。
【0011】
また特許文献1には電子写真複写機によるトナー画像を一旦転写紙に形成し、そのトナー画像をさらにミクロ吸盤4の面上に熱転写して、ミクロ吸盤の吸着力を使って窓ガラス、透明アクリル板に表示物を裏張りする方法が開示されている。しかしこの方法だと窓ガラス、透明アクリル板に裏張りされて3か月も太陽光線に晒されると、トナーがガラス、透明アクリル板に密着して、ガラス面に転移して、トナー除去が困難な作業になることが明らかになっている。
【00012】
また特許文献2には昇華性インクで印刷したシートをミクロ吸盤に熱圧着して裏張り表示物を作成する方法が報告がされているが、ミクロ吸盤面に印刷された画像は昇華性インキが昇華して画像の輪郭がぼけて商品にならない欠点がある。
本考案はこれらの問題点を一挙に解決できる裏張り表示物の提供を目的とする。
【発明が解決する手段】
【0013】
前記裏貼り用ミクロ吸盤表示物において前記の諸欠点を一挙に解決する方法として、本考案は紫外線硬化型インクジェットプリンターにて紫外線硬化インクをミクロ吸盤面に出力印刷する裏貼りミクロ吸盤表示物5に関する。
紫外線硬化型インクジェットプリンターから着弾された紫外線硬化インクは図8に示す如くミクロ吸盤面に形成された直径5〜300ミクロンの無数の微細な凹状陥没穴19に着弾し紫外線によって瞬時に硬化される。同時に凹状陥没穴19の周辺部に着弾した紫外線硬化インクも瞬時に硬化する。紫外線硬化インキは溶剤を含まないほぼ100%の紫外線硬化樹脂からなり、溶剤の気散はほとんどなく瞬時に完全硬化する。
【0014】
水性インク、溶剤インクと違って紫外線硬化インク7は凹状陥没穴19に着弾して吸着力を消失させるのはもちろん、凹状陥没穴の周辺部に着弾した紫外線硬化インクもミクロ吸盤の吸着力を消失させる。このミクロ吸盤の吸着力の消失にも拘らず裏貼り表示物の脱落を防止するには、出力印刷においてミクロ吸盤の印刷されない残留部分14を残すことである。ミクロ吸盤の出力印刷されない残留部分14の吸着力は何ら消失しないからである。例えば全面ベタ一色の出力印刷はミクロ吸盤の出力印刷されない残留部分14は残存しないことから吸着力は完全に消失していて裏貼りすると表示物は脱落する。一方、ベタ印刷の無い印刷物は、当然、ミクロ吸盤の出力印刷されない残留部分14が残存することからガラス板、透明樹脂版に裏貼りしてもこの残留部分14の吸着力に支えられ表示物は脱落しなくなる。
また窓ガラスへの裏貼り施工に当たって、印刷されない残留部分とガラスとの間に混入した多数の気泡はミクロ吸盤の凹状陥没穴に吸収されて消失し、表面に凸状膨れとなって現れることなく、裏から蛍光灯を当てるとその気泡が光で浮き出されることも無く欠点の無い電飾用表示物となる。
紫外線硬化型インクジェットプリンターから着弾される紫外線硬化インクの出力印刷について述べてきたが、スクリーン印刷、オフセット印刷においては紫外線硬化インクでミクロ吸盤を印刷し紫外線ランプで硬化させる乾燥炉を持つ装置もあるため本考案はスクリーン印刷、オフセット印刷にも通用するものである。
【0015】
以下にガラス板に裏貼りして脱落しない条件、つまり紫外線硬化インクで出力印刷された面積、と出力印刷されてない面積、つまり残留部分の比率との関係を鋭意研究した結果、ミクロ吸盤表示物の自重にもよるが、印刷されない面積がミクロ吸盤表示物面積の5%以下になると、ガラス板、透明アクリル板に裏張りされたミクロ吸盤表示物は、自重を支えることができず窓ガラス面から脱落することがわかった。表1は裏張りミクロ吸盤表示物(A4サイズ)が自重20gと自重50gの場合であって、出力印刷されない残留部分の残存面積の割合とミクロ吸盤表示物の脱落との有無関係を表示した。
ミクロ吸盤表示物は塩ビフイルム100μ(厚さ)及び塩ビフイルム500μ(厚さ)/ミクロ吸盤(厚さ80μ)/剥離紙の構成であって、剥離紙を剥がしてミクロ吸盤に紫外線硬化インクで肉盛り厚さは12ミクロンで出力印刷した。発泡倍率2.0であった。
【表1】

○表面平滑なガラス板に裏貼りして脱落しない。×表面平滑なガラス板に裏貼りして脱落する。吸着力はJISZ0237による。
【0016】
表1のテストにおいて、印刷されてない残留部分8はミクロ吸盤の特定部分にある必要はなく、例えばA4サイズの場合図6の如く出力印刷された部分15がべた一色であっても、外周に出力印刷されない残留部分8が5%あれば脱落はない。また図6の如く印刷されない残留部分8があれば散在していてもその総面積が5%以上であれば脱落しない特長を持つ。しかし自重が50g以上で脱落しないためには残留部分8の面積割合が5%以上必要になることは容易に推察できるが90%以上になると出力印刷された部分15が余りに小面積になり表示物の役割を果たさなくなる。
【0017】
表2、表3は紫外線硬化インキ、水性インク、溶剤インクをミクロ吸盤面にインクジェットプリンターで出力印刷後、ガラス面あるいは透明アクリル板に裏貼り施工するまでの時間と裏貼り施工して3カ月後の被着体への転移汚染の状況を見た表である。◎はガラス面に3カ月後インクが転移汚染してない、×はガラス面にインクが3カ月転移汚染していることを示す
【表2】

【表3】

インクジェット水性インクはキヤノンiP4200にて出力印刷した。
溶剤インクジェットプリンターはセイコーインスツルメント(株)64Sにて出力印刷。
紫外線硬化型インクジェットプリンターはNURTempo(ヌールジャパン(株))にて出力印刷した。
カラーレーザープリンター出力はミクロ吸盤ラベルの剥離紙を剥がせばカラーレーザープリンターを通紙できるカシオ計算機N5300にてミクロ吸盤上に直接トナー出力印刷した。
【0018】
表4はミクロ吸盤に各種のインクジェットプリンターで出力印刷されない残留部分14が70%のミクロ吸盤表示物において、各種支持体 2へのインク転移汚染の発生の有無を確認した結果である。カラーレーザープリンターは出力印刷直後にA4サイズ出力印刷物10枚を積み重ねて、支持体にトナーの転移汚染有無を確認した結果である。
【表4】

◎は完全にインク移転なし、○は僅かの移転痕跡が見られる ×インク移転あり
平滑度は王研式測定による。吸着力はJIS0237による。吸着力の単位はN/25mm
以上の結果よりインクジェットプリンターで出力された裏張りミクロ吸盤表示物5は水性インクであれ、溶剤インキであれ支持体の表面平滑度が粗な上質紙、不織布は未乾燥インクのインク転移汚染が少ない。表面平滑度が高い支持体、例えばキャストコート紙、ポリラミ紙は未乾燥インキの転移汚染が発生する。一方、シリコーン樹脂を塗布して剥離処理された支持体剥離処理ポリエステルフイルムの場合、水性インクであれ、溶剤インクであれ表面平滑度が高いにもかかわらず未乾燥インクが支持体2の他の面10への転移汚染することはない。紫外線硬化インクは各種支持体に対して未乾燥インクの転移汚染は発生してない。本考案は以下に示す如く支持体の他の面が剥離処理された裏貼りミクロ吸盤表示物に関する。
ミクロ吸盤に紫外線硬化型インクジェットプリンターで出力印刷後、出力印刷された出力印刷物は図2如く巻き取りロール21に巻き取られるのであるが、この時巻き皺の発生もなくきれいに巻き取りロール21に巻かれるには、支持体の他の面と出力印刷されたミクロ吸盤4との間に一定の滑りが必要になってくる。表面平滑度が粗な支持体である上質紙、不織布の場合は良く滑り合うので絞まったロールが出来上がるのであるが、表面平滑度が高い支持体、例えばキャストコート紙、ポリラミ紙はポリエステルフイルムの場合は滑り合わないため巻き皺13が発生した巻取りロール21になる(図9)。表面平滑度が高いポリエステルフイルムにおいて巻き皺を無くす方法は、ポリエステルフイルムの表面に滑りやすい剥離処理剤11を施すことである。本考案はトーレシリコーン(株)の剥離剤SRX211を剥離処理剤として使うことにより巻き皺の無い、絞まった巻き取りロール21を得ることが出来た。剥離処理剤はシリコーン樹脂、フッ素樹脂が良い。
出力印刷されない残留部分が70%以上になると吸着力70%以上残存していることになり、支持体2の他の面10とミクロ吸盤1との吸着力は高く滑りにくい。従って出力印刷されない残留部分8の割合が高まるほど巻き取りロール21内でのミクロ吸盤1と支持体2の他の面10との滑りが悪くなり巻き皺が発生し易くなる。この意味でポリエステルフイルムの表面に滑りやすい剥離処理を施すのが良い。ミクロ吸盤のポリエステルフイルム面に対する吸着力は0.45N/25mmに対して剥離処理したポリエステルフイルム面に対する吸着力は0.04N/25mmと1/10と小さくなる。このことは巻き取りロール21を展開してミクロ吸盤表示物を引っ張り出すに、ポリエステルフイルム支持体の他の面が剥離処理されていると抵抗がなく引っ張り出し易くなる。
【発明の効果】
【0019】
水性インク、溶剤インクを使ったインクジェットプリンターで出力印刷された裏貼りミクロ吸盤表示物6は、印刷色がどうしても淡く、プリンター内の巻き取りロールにおいて支持体の他の面に未乾燥インクが転移汚染する。さらに窓ガラス、透明アクリル板に裏貼り施工されたミクロ吸盤表示物は3ヶ月で窓ガラス、透明アクリル板にインクの転移汚染が発生する。また裏貼り粘着表示物にあっては貼り施工時に多数の気泡混入が発生する。これに対して本考案の紫外線硬化インキを使って紫外線硬化インクジェットプリンターで出力印刷された裏貼りミクロ吸盤表示物によれば、プリンター内においてもインクの転移汚染が発生せず、施工時に抱き込んだ気泡は凹状陥没穴19に吸収され消失する。さらにガラス面、透明樹脂板面に裏貼り施工されて2年後も被着体にインクの転移汚染がみられない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本考案は支持体4の一方の面10に形成されたミクロ吸盤1に紫外線硬化型インクジェットプリンターにて紫外線硬化インクで出力印刷し、少なくとも出力印刷されない残留部分8を残存させた、繰り返し貼って剥がせる裏貼りミクロ吸盤表示物5である。
【実施例1】
【0021】
図4はミクロ吸盤ラベル6(図3)の剥離紙3を剥がして紫外線硬化インク7で出力印刷した裏張りミクロ吸盤表示物5の断面図である。
まずミクロ吸盤ラベル6の製法はアクリル共重合体DICNAL MEP20 100kg,整泡剤
DICNAL M40 10kg増粘剤DICNAL MX 10kg架橋剤GX20kg(何れも大日本インキ化学工業製品)可塑剤 FBXP(大八化学)7kaを混合したアクリル共重合体エマルジョンを、機械的発泡機「オークスミキサー」を通して空気を混入させて調薬された発泡倍率2.0倍の泡沫状アクリルエマルション液を調薬する。これを1300mm幅のコンマコーターにて、平滑度10000、光沢度95%を有する透明75μポリエステル幅1270mm(東洋紡製品A4300)の裏面に160g/mを塗布140℃3分間乾燥しミクロ吸盤4を形成させた後、30μの伸縮性ポリエチレンフイルム(TDM−1玉ポリ(株))を剥離フイルム3としてミクロ吸盤4にラミネートしてミクロ吸盤ラベル6を600m生産し、3週間保管された。ミクロ吸盤には径5〜300μの微細な凹状陥没穴19が約10万個/m形成されていた。
【0022】
前記のミクロ吸盤ラベル6の剥離フイルム3であるポリエチレンフイルムを手剥がして、顔を出したミクロ吸盤4の面に紫外線硬化型インクジェットプリンター(NURTempoヌールジャパン(株)販売)にて紫外線硬化インク7を出力印刷させると同時に、紫外線照射ランプ16にてインクを硬化させた裏貼りミクロ吸盤表示物5を13m出力印刷しプリンター内の巻き取りロール21に巻き上げた。出力印刷は花柄の1色刷りであった。これは出力印刷されない残留部分8が約50%のデザイン柄であった。出力印刷された裏貼りミクロ吸盤表示物5は1分後に巻き取りロール21を展開して13m取り出し、支持体のインク転移汚染の有無を確認した。転移汚染はまったく見られなかった。ミクロ吸盤に着弾された紫外線硬化インク7は硬化して凹状陥没穴19を塞ぎ約12μの肉盛りがあり、出力印刷された部分15の吸着力は完全に消失していたが、出力印刷されない残留部分8の吸着力は完全に生きていた。
出力印刷後1日後に裏貼りミクロ吸盤表示物1mを窓ガラス17に接するようにスキージーで押し当て抱き込んだ空気を脱気すると、印刷されない残留部分8はガラス面に吸着してミクロ吸盤表示物5は脱落することなくきれいに裏貼りされた。位置合わせのため貼ったり剥がしたり繰り返したが、その都度よく吸着した。夜に窓の内側から蛍光灯を照らすとミクロ吸盤の光乱反射効果によりきれいな電飾用表示物となった。
窓ガラス17は西日が良く当たり、3か月後に裏貼り用ミクロ吸盤表示物5を手剥したが、容易に手剥がしができた。紫外線硬化インクの窓ガラス17への転移汚染もなかった。
【実施例2】
【0023】
支持体=透明75μポリエステル(東洋紡製品A4300)の他の面に剥離処理剤シリコーン樹脂(トーレシリコーンSRX211)を1g/mを塗布、140℃で乾燥した後、透明75μポリエステルの一方の面に発泡倍率3.0倍の泡沫状アクリルエマルション液を160g/m塗布140℃3分間均一に乾燥しミクロ吸盤4を形成させた後、30μの伸縮性ポリエチレンフイルム(TDM−1タマポリ(株))を剥離フイルムとしてミクロ吸盤にラミネートしてミクロ吸盤ラベル6を300m生産し、1週間保管された。ミクロ吸盤には径5〜300μの微細な凹状陥没穴19が約5万個/m形成されていた。
剥離フイルム3を剥がしながら紫外線硬化型インクジェットプリンター(MIMAKIエンジニア(株)UJV=160)にてミクロ吸盤に出力印刷をしながら巻き取りロール21に5mを皺の発生も無く硬く巻き取ることが出来た。出力印刷はハート模様の2色刷りであった(図7)。これは出力印刷されない残留部分が約70%のデザイン柄であった。巻き取りロール21に巻きあがったミクロ吸盤表示物5mは支持体に剥離処理剤シリコーン樹脂が塗布されているため、支持体がミクロ吸盤と良く滑りあい絞まった巻きになっていた。また巻き取りロールを展開してミクロ吸盤表示物を取り出すとミクロ吸盤の吸着抵抗も少なく、他の面10へのインク転移汚染も無く容易に取り出すことができた。出力印刷後1日後に裏貼りミクロ吸盤表示物1mを窓ガラス17に接するようにスキージーで押し当て抱き込んだ気泡を脱気すると、印刷されない残留部分8は窓ガラスに吸着してミクロ吸盤表示物5は脱落することなく裏貼りされた。位置合わせのため貼ったり剥がしたり繰り返したが、その都度よく吸着した。夜に窓の内側から蛍光灯を照らすとミクロ吸盤の光乱反射効果により気泡の膨れもない電飾用表示物となった。
【実施例3】
【0024】
支持体=透明75μポリエステル(東洋紡製品A4300)の他の面に剥離処理剤シリコーン樹脂(トーレシリコーンSRX211)を1g/mを塗布、140℃で乾燥した後、透明75μポリエステルの一方の面に発泡倍率3倍の泡沫状アクリルエマルション液を160g/m塗布140℃3分間均一に乾燥しミクロ吸盤4を形成させた後、30μの伸縮性ポリエチレンフイルム(TDM−1玉ポリ(株))を剥離フイルムとしてミクロ吸盤にラミネートしてミクロ吸盤ラベル6を1270mm×300m生産し、1週間保管された。ミクロ吸盤には径5〜300μの微細な凹状陥没穴19が約5万個/m形成されていた。1270mm×300mをA2サイズ(594×420mm)に裁断して、伸縮性ポリエチレンフイルムを除去した後、顔を出したミクロ吸盤面に、印刷されない残留部分8を30%になるようにデザイン化した花柄を、紫外線硬化インク(帝国インキ(株)製品)にて100メッシュ紗でスクリーン印刷をして30枚のA2サイズミクロ吸盤表示物5を完成した。後工程の紫外線照射ランプで10秒照射するとインクは完全に硬化した。印刷後1日後に裏貼りミクロ吸盤表示物1枚を窓ガラス17に接するようにスキージーで押し当て抱き込んだ空気を脱気すると、印刷されない残留部分8はガラス面に吸着してミクロ吸盤表示物5は脱落することなくきれいに裏貼りされた。位置合わせのため貼ったり剥がしたり繰り返したが、その都度よく吸着した。夜に窓の内側から蛍光灯を照らすときれいな電飾用表示物となった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ミクロ吸盤ラベルに出力印刷する紫外線硬化型インクジェットプリンターの断面図
【図2】透明樹脂板に出力印刷する紫外線硬化型インクジェットプリンターの断面図
【図3】ミクロ吸盤ラベルの断面図
【図4】ミクロ吸盤ラベルの剥離紙を剥がして、顔を出したミクロ吸盤に紫外線硬化型インクジェットプリンターで出力印刷したミクロ吸盤表示物の断面図
【図5】ガラス窓に施工されたミクロ吸盤表示物の断面図
【図6】べた一色で出力印刷された部分15と、出力印刷されない残留部分8を外周に残したミクロ吸盤表示物の平面図
【図7】出力印刷された部分15と出力印刷されない残留部分8を残存させミクロ吸盤表示物の平面図
【図8】ミクロ吸盤表示物の鳥瞰図
【図9】巻取りロール21に発生する巻き皺13の断面図
【符号の説明】
【0026】
1ミクロ吸盤
2支持体
3剥離紙(剥離フイルム)
4ミクロ吸盤
5ミクロ吸盤表示物
6ミクロ吸盤ラベル
7紫外線硬化インク
8出力印刷されない残留部分
9一方の面
10他の面
11剥離処理剤
12透明樹脂版
13巻き皺
14ガイドロール
15出力印刷された部分
16紫外線ランプ
17窓ガラス(透明アクリル板)
18紫外線
19凹状陥没穴
20紫外線硬化型インクジェットプリンター
21巻き取りロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の一方の面に形成されたミクロ吸盤に紫外線硬化型インクジェットプリンターにて紫外線硬化インキで出力印刷された部分と、出力印刷されない残留部分を残存させた裏張りミクロ吸盤表示物。
【請求項2】
支持体の一方の面に形成されたミクロ吸盤に紫外線硬化型インクジェットプリンターにて紫外線硬化インキで出力印刷された部分と、出力印刷されない残留部分を残存させた裏張りミクロ吸盤表示物において、出力印刷されない残留部分がミクロ吸盤面積の5%以上、90%以下を有する裏張りミクロ吸盤表示物。
【請求項3】
支持体は透明な樹脂フイルム及び透明な樹脂板からなる請求項1記載、請求項2記載の裏張り電飾用ミクロ吸盤表示物
【請求項4】
支持体は不透明な樹脂フイルム及び不透明な樹脂板からなる請求項1記載、請求項1記載の裏張りミクロ吸盤表示物
【請求項5】
支持体の一方の面に形成されたミクロ吸盤を、支持体の他の面には剥離処理を施した請求項1記載、請求項2記載、請求項3記載、及び請求項4記載のいずれか1項に記載の裏張りミクロ吸盤表示物。
【請求項6】
支持体の一方の面に形成されたミクロ吸盤に紫外線硬化インキにて印刷した部分と、印刷されない残留部分を残存させた裏張りミクロ吸盤表示物。
【請求項7】
支持体の一方の面に形成されたミクロ吸盤に紫外線硬化インキにて印刷された部分と、印刷されない残留部分を残存させた裏張りミクロ吸盤表示物において、印刷されない残留部分がミクロ吸盤面積の5%以上、90%以下を有する裏張りミクロ吸盤表示物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−85959(P2010−85959A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274902(P2008−274902)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(501258964)
【Fターム(参考)】