説明

補修治具及びそれを用いた補修方法

【課題】継手部材で接続した管継手部分において内部流体が漏れた場合、あるいは漏れる可能性がある場合、管継手部分を取り外すことなく、また内部流体を停止することなく、当該接続部を応急補修する補修金具及びそれを使用した補修方法を提供することを目的とする。
【解決手段】補修治具は、複数の押付部材9の隣り合う押付部材9同士が回動可能に連結されたクランプ部材6と、該クランプ部材6を締付可能な締付部材7と、クランプ部材6の内周に各押付部材9に対応してそれぞれ保持され、クランプ部材6を締め付けることで管継手部分をシール可能な複数のシール部材8と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補修治具及びそれを用いた補修方法に関し、特に、管継手部分の間隙から流体が漏洩する流体漏洩部を補修するための補修治具及びそれを用いた補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建造物内の各種配管には、直径、材質が異なる配管が使用されている。これらの配管は継手部材を介することで、種々の方向、長さに接続される。継手部材としては、フランジ継手やスウェージロック継手(登録商標)などがある。特許文献1では、フランジ継手を用いて配管を接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−264476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子力発電プラントにおいて、計装配管やベントドレイン管の端部には、着脱性に優れた機械式のスウェージロック継手が使用されている。スウェージロック継手は、導配管の外面に断面くさび状の封止用の金輪(フェルール)を嵌めて袋ナットで締め付けて接続した管継手である。
【0005】
スウェージロック継手は扱いが簡便であるものの、取り扱いによっては滲みなどの漏洩を発生させる場合がある。例えば、鋼管部材の表面についた傷、長期使用による材料の老朽化、接合部への異物噛み込みなどの原因によって、継手部材と鋼管部材のネジ接合部から内部流体が漏れる場合がある。
【0006】
漏洩があった場合、漏洩を止めるために各配管部材の接続を外し、再施工して補修を行う。その場合、配管内での流体の流れを止めるために、プラントを停止しなければならないという問題がある。そのため、配管部材を取り外すことなく、可能ならば内部流体を止めることもなく、プラントを稼動した状態で流体の漏洩を止める応急補修技術のニーズが高い。
【0007】
特許文献1では、フランジ継手により結合された配管系の結合部分をシールするためのシール金具が記載されている。しかしながら、フランジ継手とスウェージロック継手とは、異なる機構によって配管を接続しているため、特許文献1に記載のシール金具をスウェージロック継手で接続された継手部分にそのまま転用することができない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、継手部材で接続した管継手部分において内部流体が漏れた場合、あるいは漏れる可能性がある場合、管継手部分を取り外すことなく、また内部流体を停止することなく、当該接続部を応急補修する補修金具及びそれを使用した補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、管状部材の一端部に被嵌された袋ナットの雌ねじと、継手部材の一端部側に設けられた雄ねじと、を螺合させて管を継手した管継手部分の間隙からの内部流体の漏洩を補修する補修治具であって、複数の押付部材が1列に並べられ、隣り合う押付部材同士が連結部材によって回動可能に連結されたクランプ部材と、該クランプ部材の一端部と他端部とを接続して締付可能な締付部材と、前記クランプ部材の一端部と他端部とを接続してリング形状としたときに、前記クランプ部材の内周に沿って配置されるよう各押付部材に対応してそれぞれ保持され、前記クランプ部材を締め付けて前記押付部材で押付けることで前記管継手部分の間隙をシール可能な複数のシール部材と、を備える補修治具を提供する。
【0010】
上記発明によれば、クランプ部材を複数の押付部材が回動可能に連結された分割構造とすることで、管継手部分の外周面に沿ってシール部材を押付けることができる。押付けられた複数のシール部材は、管継手部分の間隙を継手の外側からシールすることができる。複数のシール部材は、複数の押付部材とそれぞれ一体化されているため、簡単に管継手部分の間隙をシールすることができる。
【0011】
前記シール部材の各々が、シール部材の一端面と、該一端面の表面形状に対応する形状を有する隣接するシール部材の他端部とが嵌合可能に配置され、前記シール部材の両端部が、自身を保持する押付部材から突出する長さとされることが好ましい。
【0012】
シール部材は、押付部材の内周側端部に沿って延在して保持されており、両端が自身を保持する押付部材の円周方向に突出している。シール部材の端部は、隣り合う一方のシール部材の端面と他方のシール部材の端面とが嵌合される。そのようにすることで、クランプ部材を締め付けた状態において、十分なシール面圧を得ることができる。
【0013】
また、本発明は、管状部材の一端部に被嵌された袋ナットの雌ねじと、継手部材の一端部側に設けられた雄ねじと、を螺合させて管を継手した管継手部分の間隙から流体が漏洩する流体漏洩部を補修する補修方法であって、上記の補修治具の前記シール部材を、前記管継手部分のうち、前記袋ナットの袋底部と前記管状部材との第1境界部、または、前記第1境界部及び前記袋ナットの前記袋底部の逆端部と前記雄ねじが設けられた他の継手部材との第2境界部のいずれかの前記管継手部分の間隙を覆うよう配置し、前記クランプ部材を締付部材で締め付けることで前記シール材を前記間隙に圧接させて流体漏洩部を補修する補修方法を提供する。
【0014】
上記発明によれば、クランプ部材を複数の押付部材が回動可能に連結された分割構造とすることで、管継手部分の外周面に沿ってシール部材を押付けることができる。複数のシール部材を管継手部分の間隙に押付け、圧接することによって間隙を封止し、間隙からの流体漏洩を防止することができる。複数のシール部材は、複数の押付部材とそれぞれ一体化されているため、簡単に管継手部分の間隙を封止することができる。シール部材は、押付部材の内周側端部に沿って延在して保持されており、両端が自身を保持する押付部材の円周方向に飛び出すように突出している。シール部材の端部は、隣り合う一方のシール部材の端面と他方のシール部材の端面とが嵌合される。そのようにすることで、クランプ部材を締め付けた状態において、十分なシール面圧を得ることができる。これにより、管継手部分の間隙からの内部流体の漏洩を防止することができる。
【0015】
上記発明の一態様において、前記袋ナットと前記クランプ部材を嵌込み可能な間隔をあけた前記管状部材の外周上にずれ防止具を取付けた後、前記袋ナットと前記ずれ防止具との間に、前記クランプ部材を嵌込むと良い。
【0016】
ずれ防止具を設けることで、クランプ部材が袋ナットから離れる方向へとずれることを防止できる。これによって、より確実に管継手部分の間隙からの内部流体の漏洩を防止することができる。
【0017】
上記発明の一態様において、前記管継手部分のうち、前記袋ナットの袋底部と前記管状部材との境界部に配置される第1クランプ部材と、前記管継手部分のうち、前記袋ナットの前記袋底部の逆端部と前記雄ねじが設けられた他の継手部材との境界部に配置される第2クランプ部材と、を備え、第1クランプ部材と第2クランプ部材とが所定間隔をあけて対面配置され、前記第1クランプ部材の押付部材と、該押付部材に対面する前記第2クランプ部材の押付部材とが、連結具で連結固定されても良い。
【0018】
第1クランプ部材は、袋ナットの袋底部と管状部材との境界部にある間隙をシールすることができる。第2クランプ部材は、袋ナットの袋底部の逆端部と雄ねじが設けられた他の継手部材との境界部にある間隙をシールすることができる。第1クランプ部材と第2クランプ部材とは連結固定されているため、管継手部分の上記2箇所を迅速にシールすることが可能となる。第1クランプ部材と第2クランプ部材とは連結固定されているため、ずれ防止具を用いずとも、第1クランプ部材が袋ナットから離れる方向へとずれることを防止できる。これによって、施工時間を短くすることが可能となる。
【0019】
上記補修治具の前記シール部材を、前記袋ナットの袋底部と前記管状部材との第1境界部及び前記袋ナットの前記袋底部の逆端部と前記雄ねじが設けられた他の継手部材との第2境界部の前記管継手部分の間隙を覆うよう配置し、前記第1クランプ部材及び前記第2クランプ部材をそれぞれ締付部材で締め付けることで前記シール材を前記間隙に圧接させて流体漏洩部を補修すると良い。
【0020】
第1クランプ部材は、袋ナットの袋底部と管状部材との境界部にある間隙をシールすることができる。第2クランプ部材は、袋ナットの袋底部の逆端部と雌ねじが設けられた他の管状部材との境界部にある間隙をシールすることができる。第1クランプ部材と第2クランプ部材とは連結固定されているため、管継手部分の上記2箇所を迅速にシールすることが可能となる。第1クランプ部材と第2クランプ部材とは連結固定されているため、ずれ防止具を用いずとも、第2クランプ部材が袋ナットから離れる方向へとずれることを防止できる。これによって、施工時間を短くすることが可能となる。
【0021】
上記発明の一態様において、前記管継手部分に前記補修治具を取付けた後、少なくとも前記管状部材及び前記補修治具を被覆するよう接着剤を盛り、該接着剤を硬化させると良い。
【0022】
補修治具を取付けた後、その周辺に接着剤を盛って硬化させ、管継手部分と管状部材と補修治具とを結合させる。これによって、外部からの物理的な接触などによって補修治具がずれる、または、シール部材の劣化などによって流体が再漏洩するのを2次的に防止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、継手部材で接続した管継手部分において内部流体が漏れた場合、あるいは漏れる可能性がある場合、管継手部分を取り外すことなく、また内部流体を停止することなく、当該接続部を応急補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係る補修治具を管継手部分に取り付けた状態の側面図である。
【図2】図1のA−A断面から見た補修治具の図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】シール部材が保持された一の押付部材の斜視図である。
【図5】一のシール部材の側面図である。
【図6】接着剤タレ防止枠の設置例を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る補修治具を管継手部分に取り付けた状態の部分断面図である。
【図8】シール部材が保持された一対の押付部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る補修治具及びそれを用いた補修方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
図1に、本実施形態に係る補修治具を管継手部分に取り付けた状態の部分断面図を示す。同図では、管継手部分の説明のため、袋ナット部分及び補修治具を断面で表示する。図2に、図1のA−A断面から見た補修治具の図を示す。図3に、図1のB−B断面図を示す。
【0026】
本実施形態に係る補修治具は、1の管状部材の一端部に被嵌された袋ナットの雌ねじと、他の継手部材の一端部側に設けられた雄ねじと、を螺合させて管を継手した管継手部分の間隙からの内部流体の漏洩の補修に適用される。上記様式で管を継手する継手部材としては、スウェージロック継手などが挙げられる。
【0027】
本実施形態では、スウェージロック継手を用いたものとして説明する。図1に示すスウェージロック継手は、袋ナット1、ボディ2、フロントフェルール3、及びバックフェルール4を備えたアドバンス・バック・フェルール構造の継手である。袋ナット1とボディ2の雄ねじ2aと螺合させることで管を継手する。袋ナット1を締め付けるとフロントフェルール3がボディ2と配管5の間に押し込まれ、配管5とボディ2との間の第一シールを形成する。バックフェルール4はヒンジとなって内向きに曲がり、配管5を強力にグリップする。
【0028】
本実施形態に係る補修治具は、クランプ部材6と、締付部材7と、シール部材8を含む。クランプ部材6は、複数の押付部材9が1列に並べられ、隣り合う押付部材同士が連結部材10によって回動可能に連結された構成とされる。
押付部材9、連結部材10及び締付部材7は、配管の使用温度に対する耐熱性を備えた金属などからなる。
【0029】
隣り合う押付部材同士は、所定の間隔をあけて連結されている。また、本実施形態では、押付部材の両面にそれぞれ連結部材が設けられている。押付部材9の数、形状などは、特に、図2に限定されず、シール部材を管継手部の間隙に押付け可能であれば良い。例えば、押付部材9は、クランプ部材6を締め付けた状態で、クランプ部材6の内周が配管の形状に沿う曲端部を有すると良い。
【0030】
締付部材7は、クランプ部材6の一端部と他端部とを接続してリング状とした後、配管の内周方向に向けて締め付け可能に、クランプ部材6の両端の押付部材に取り付けられる。例えば、クランプ部材6の両端部の押付部材に雌ねじを設け、この雌ねじにボルトを螺合させて締め付けるようにする。
【0031】
シール部材8は、クランプ部材6の一端部と他端部とを接続してリング形状としたときに、クランプ部材6の内周に沿うよう配置される。図4に、シール部材が保持された一の押付部材の斜視図を示す。シール部材8は複数あり、押付部材9の数に対応している。図4では、一のシール部材は、一の押付部材の内周側端部に保持され、一体化されている。例えば、押付部材9の内周側端部に周方向に沿ってシール部材を嵌合可能な凹部を形成し、その溝にシール部材を接着・保持させる。シール部材8は、自身を保持する押付部材9の内周側端部の長さよりも長いことが好ましい。
【0032】
図5に、一のシール部材の側面図を示す。シール部材8は、端面が隣接するシール部材の端面の表面形状に対応する形状を有すると良い。例えば、図5に示すようにシール部材8は、一端面に凸部11を有するとともに、他端面に上記凸部11に対応する凹部12を有する。複数のシール部材8は、1のシール部材の凸部11と隣接するシール部材の凹部12が嵌合可能に並べられている。
【0033】
シール部材8の材料は、補修対象の配管及び継手の使用環境温度によって適宜選択される。使用環境温度が200℃までは、ゴムまたはプラスチックの耐熱性樹脂等を用いる。ゴムとしては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、またはアクリロニトリルブタジエンゴム(商品名:クレシール)などが挙げられる。プラスチックとしては、エポキシ等の熱硬化樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリエステル、またはフッ素樹脂等が挙げられる。
使用環境温度が200℃以上であれば、グラファイト材(成型圧5MPa、シール圧:60〜90MPa)や軟質金属(銀:σy200MPa、金:σy100MPa、アルミ:σy100MPa)等を用いる。
【0034】
シール部材8の材料としてゴムを用いた場合、クランプ部材6を締め付けることでゴムを押圧して弾性変形させることでシールラインを形成し、管継手部分の間隙をシールすることができる。
シール部材8の材料としてプラスチックを用いた場合、クランプ部材6を締め付けることでプラスチックを押圧して塑性変形させることでシールラインを形成し、管継手部分の間隙をシールすることができる。
使用環境温度が200℃以上であれば、シール部材8の材料としてグラファイト材や軟質金属等を用いて、クランプ部材6を締め付けることでグラファイト材や軟質金属等を圧接してシールラインを形成し、管継手部分の間隙をシールすることができる。
【0035】
次に、本実施形態に係る補修治具を用いた補修方法について説明する。
(1)漏洩部養生
まず、流体が漏洩している流体漏洩部の所定領域の表面粗さを調整する。表面粗さの調整は、フリップホイール等の自動研磨機を用いると良い。所定領域は、少なくとも補修治具のシール部材が接触する部分を含む。後の工程でずれ防止具を取付ける場合、所定領域は、ずれ防止具が配管に接触する部分を含む。後の工程で接着剤を塗布する場合、所定領域は、接着剤塗布予定部位を含む。表面荒さ調整後、適宜研磨粉をエアで飛ばす。
次に、上記所定領域の表面を洗浄、脱脂する。例えば、有機溶媒、水等をつけたウエスなどにより汚れを拭き取る。
【0036】
(2)補修治具の取付け
補修治具は、袋ナットの袋底部と管状部材との第1境界部(B部:袋ナット−配管間)、または、第1境界部及び袋ナットの袋底部の逆端部と雄ねじが設けられた他の継手部材との第2境界部(A部:ボディ−ナット間)の少なくともいずれかに取り付ける。本実施形態では、A部及びB部に補修治具を取付ける。
【0037】
<A部:ボディ−袋ナット間>
流体漏洩部、すなわち、ボディと袋ナットとの間隙にシール部材8をあてるよう補修治具を配置する。次に、クランプ部材6を締付部材7で締め付ける。シール部材8は自身を保持する押付部材9から周方向に突出するように保持されているため、クランプ部材6を締め付けた状態において、シール材の空隙がつぶれ、十分なシール面圧が得られる。
【0038】
<B部:袋ナット−配管間>
まず、袋ナット1に対して、クランプ部材6を嵌込み可能な間隔をあけて、配管の外周上にずれ防止具13を取付ける。ずれ防止具13は、B部に取り付けた補修治具が袋ナットから離れる方向へとずれることを防止する役割を果たす。よって、上記間隔は、クランプ部材6が嵌込まれた後に袋ナット1とクランプ部材6とずれ防止具13との間に極力あそびがないような距離とする。ずれ防止具13は、例えば、ドーナツ状の金具を2分割した部材をねじなどの締付具で締め付ける構造とされる。
次に、ずれ防止具13と袋ナット1との間にクランプ部材6を嵌込んだ後、締付部材7で締め付ける。シール部材8は自身を保持する押付部材9から周方向に突出するように保持されているため、クランプ部材6を締め付けた状態において、シール材の空隙がつぶれ、十分なシール面圧が得られる。
【0039】
(3)接着剤塗布
補修治具を取付けた後、流体漏洩の有無を確認する。例えば、蒸気漏洩の場合、鏡を近づけて表面が曇るか否かを確認する。例えば、液滴漏洩の場合、吸い取り紙を流体漏洩部に接触させ水が付くか否かを確認する。目視などで流体が漏洩していないことが確認された後、接着剤を準備する。接着剤は、エポキシ系接着剤またはセラミック系接着剤などを用いることができる。2液混合タイプ及び紛体+液体混合タイプなどは,メーカの推奨する混合比で混合する。
次に、少なくとも配管及び補修治具を包み込むように接着剤を盛る。接着剤の盛り量は、接着強度と安全率を考慮して、目標とする期間、接着剤で漏洩を防止できるのに十分な量とする。
【0040】
上記接着剤を盛った後、必要に応じて盛った接着剤の周囲に接着剤タレ防止枠を設置しても良い。図6に、接着剤タレ防止枠の設置例を示す。図6では、スウェージロック継手、補修治具14、ずれ防止具13、及び補修治具が取り付けられた周辺の配管部分を覆うよう接着剤15が盛られている。接着剤タレ防止枠17は、盛られた接着剤15を囲うよう配置された後、接着剤タレ防止枠17の上からバンド18などを用いて固定する。接着剤タレ防止枠17は、接着剤15の硬化が完了後、不要であれば取り外す。
【0041】
接着剤タレ防止枠17を設ける場合、予め接着剤15を充填した枠を少なくとも配管及び補修治具を覆うように枠を取り付け、素早く枠をバンド18などで固定する方法を用いても良い。
【0042】
接着剤を塗布することで、補修治具が外部からの物理的接触によってずれ、流体が再漏洩することを防止できる。また、補修治具で漏洩を防止できなくなった場合に流体が再漏洩することを防止できる。
【0043】
(4)漏れ検査
接着剤塗布前と同様に目視などで流体漏洩の有無を確認する。
【0044】
〔第2実施形態〕
図7に、本実施形態に係る補修治具を管継手部分に取り付けた状態の部分断面図を示す。同図では、管継手部分の説明のため、袋ナット部分及び補修治具を断面で表示する。図8に、シール部材が保持された一対の押付部材の斜視図を示す。
【0045】
本実施形態に係る補修治具において、第1実施形態のA部及びB部に配置された各クランプ部材が連結された一体構造とされる以外の構成は、第1実施形態と同様とされる。
本実施形態に係る補修治具は、第1クランプ部材16と第2クランプ部材26とが所定間隔をあけて対面配置されている。所定間隔とは、流体が漏洩している部分の袋ナット1を挟み込み可能な距離であり、袋ナット1の厚さと実質的に等しいことが好ましい。
第1クランプ部材16及び第2クランプ部材26の各押付部材19,29は、それぞれ対向配置されている。対面する押付部材同士は、それぞれ連結具21で連結固定されている。
【0046】
第1クランプ部材16は、複数の押付部材19が1列に並べられ、隣り合う押付部材同士が連結部材20によって回動可能に連結された構成とされる。連結部材20は、押付部材19の第2クランプ部材26と反対側の面に設けられる。第1クランプ部材16は、袋ナット1の袋底部と配管5との境界部に配置される。
【0047】
第2クランプ部材26は、複数の押付部材29が1列に並べられ、隣り合う押付部材同士が連結部材30によって回動可能に連結された構成とされる。連結部材30は、押付部材29の第1クランプ部材16と反対側の面に設けられる。第2クランプ部材26は、袋ナット1の袋底部の逆端部とボディとの境界部に配置される。
【0048】
第1クランプ部材16と第2クランプ部材26とは連結固定されているため、袋ナットの両端部を迅速にシールすることが可能となる。第1クランプ部材16と第2クランプ部材26とは接合されているため、ずれ防止具を用いずとも、第1クランプ部材16が袋ナット1から離れる方向へとずれることを防止できる。これによって、補修治具を取る付ける際の施工時間を短くすることが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
1 袋ナット
2 ボディ
2a 雄ねじ
3 フロントフェルール
4 バックフェルール
5 配管
6 クランプ部材
7 締付部材
8 シール部材
9,19,29 押付部材
10,20,30 連結部材
11 シール部材の凸部
12 シール部材の凹部
13 ずれ防止具
14 補修治具
15 接着剤
16 第1クランプ部材
17 接着剤タレ防止枠
18 バンド
21 連結具
26 第2クランプ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状部材の一端部に被嵌された袋ナットの雌ねじと、継手部材の一端部側に設けられた雄ねじと、を螺合させて管を継手した管継手部分の間隙からの内部流体の漏洩を補修する補修治具であって、
複数の押付部材が1列に並べられ、隣り合う押付部材同士が連結部材によって回動可能に連結されたクランプ部材と、
該クランプ部材の一端部と他端部とを接続して締付可能な締付部材と、
前記クランプ部材の一端部と他端部とを接続してリング形状としたときに、前記クランプ部材の内周に沿って配置されるよう各押付部材に対応してそれぞれ保持され、前記クランプ部材を締め付けて前記押付部材で押付けることで前記管継手部分の間隙をシール可能な複数のシール部材と、
を備える補修治具。
【請求項2】
前記シール部材の各々が、シール部材の一端面と、該一端面の表面形状に対応する形状を有する隣接するシール部材の他端部とが嵌合可能に配置され、
前記シール部材の両端部が、自身を保持する押付部材から突出する長さとされる請求項1に記載の補修治具。
【請求項3】
前記管継手部分のうち、前記袋ナットの袋底部と前記管状部材との境界部に配置される第1クランプ部材と、
前記管継手部分のうち、前記袋ナットの前記袋底部の逆端部と前記雄ねじが設けられた他の継手部材との境界部に配置される第2クランプ部材と、
を備え、
第1クランプ部材と第2クランプ部材とが所定間隔をあけて対面配置され、
前記第1クランプ部材の押付部材と、該押付部材に対面する前記第2クランプ部材の押付部材とが、連結具で連結固定される請求項1または請求項2に記載の補修治具。
【請求項4】
管状部材の一端部に被嵌された袋ナットの雌ねじと、継手部材の一端部側に設けられた雄ねじと、を螺合させて管を継手した管継手部分の間隙から流体が漏洩する流体漏洩部を補修する補修方法であって、
請求項1に記載の補修治具の前記シール部材を、前記管継手部分のうち、前記袋ナットの袋底部と前記管状部材との第1境界部、または、前記第1境界部及び前記袋ナットの前記袋底部の逆端部と前記雄ねじが設けられた他の継手部材との第2境界部のいずれかの前記管継手部分の間隙を覆うよう配置し、
前記クランプ部材を締付部材で締め付けることで前記シール材を前記間隙に圧接させて流体漏洩部を補修する補修方法。
【請求項5】
前記袋ナットと前記クランプ部材を嵌込み可能な間隔をあけた前記管状部材の外周上にずれ防止具を取付けた後、前記袋ナットと前記ずれ防止具との間に、前記クランプ部材を嵌込む請求項4に記載の補修方法。
【請求項6】
請求項3に記載の補修治具の前記シール部材を、前記袋ナットの袋底部と前記管状部材との第1境界部及び前記袋ナットの前記袋底部の逆端部と前記雄ねじが設けられた他の継手部材との第2境界部の前記管継手部分の間隙を覆うよう配置し、
前記第1クランプ部材及び前記第2クランプ部材をそれぞれ締付部材で締め付けることで前記シール材を前記間隙に圧接させて流体漏洩部を補修する補修方法。
【請求項7】
前記管継手部分に前記補修治具を取付けた後、少なくとも前記管状部材及び前記補修治具を被覆するよう接着剤を盛り、該接着剤を硬化させる請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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