説明

補償素子調整機構およびプロジェクタ

【課題】光学補償素子の取付姿勢の微調整が容易な補償素子調整機構、およびプロジェクタを提供すること。
【解決手段】補償素子調整機構は、液晶パネル25bと偏光板25fとの間に配置される光学補償素子10と、光学補償素子10を支持して一対の軸部材31b,31cを有する第1フレーム31と、軸部材31b,31cを回動自在に支持する第2フレーム32と、液晶パネル25b側に固定されて、第2フレーム32を回動自在に支持する支持ホルダ33と、軸部材31b,31cの回動による変位を弾性的な当接により制限する固定部と、第2フレーム32を支持ホルダ33と係合して第2フレーム32を回動自在にする係合部と、第2フレーム32を支持ホルダ33に支持して第2フレーム32の回動による変位を弾性的な当接により制限する支持部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの光学補償のための補償素子調整機構、および補償素子調整機構を組み込んだプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタに組み込まれる光学像形成用の光学装置では、特許文献1に開示されるように、液晶パネルの入射側や射出側に光学補償シートを配置している。そして、光学補償シートの取付姿勢を調整するため、光学補償シートを光軸のまわりに回動させたり、光軸に直交する回転軸のまわりに回動させたりすることができるホルダが用いられている。そして、例えば、光学補償シートを枠体と共に光軸に直交する回転軸のまわりに回動させる場合、枠体に設けた一対の軸部を固定部材に突設した一対の枢支部により枢支し、調整後は枠体を固定部材に対してビス止めしている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−78735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようなホルダでは、光学補償シート(光学補償素子)の取付姿勢の微調整が容易ではない。つまり、枠体の姿勢を調節した後にビス止めする作業が不可欠であり、枠体の調整後にビスで固定する際に、枠体の姿勢が再度変化し易く、光学補償シート(光学補償素子)の取付姿勢の精密な調整と、その後の固定が容易ではないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
(適用例1)本適用例に係る補償素子調整機構は、(a)液晶パネルと偏光板との間に配置される光学補償素子と、(b)光学補償素子を支持すると共に、光学補償素子の周囲の対向する位置に設けられる一対の軸部材を有する第1フレームと、(c)第1フレームの一対の軸部材を回動自在に支持する第2フレームと、(d)液晶パネル側に固定されると共に、第2フレームを回動自在に支持する支持ホルダと、(e)一対の軸部材の回動による変位を弾性的な当接により制限する固定部と、(f)第2フレームを支持ホルダと係合して第2フレームを回動自在にする係合部と、(g)第2フレームを支持ホルダに支持すると共に、第2フレームの回動による変位を弾性的な当接により制限する支持部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
上記補償素子調整機構では、光学補償素子を支持する第1フレームが、光学補償素子の周囲において対向する位置に設けられている一対の軸部材を有し、第2フレームが、一対の軸部材を回動自在に支持することで、液晶パネルに対して第1フレームすなわち光学補償素子の取付姿勢を調整することができる。従って、例えば液晶パネルに対して光軸が設定された場合に、光軸に直交する回転軸のまわりに回動させる場合の光学補償素子の取付姿勢を調整することができる。この際、固定部が、第2フレームに対する一対の軸部材の回動による変位を弾性的な当接により制限するため、光学補償素子の姿勢を第1フレームと共に所望な量だけ変化させてそのまま保持することができ、光学補償素子の取付姿勢の精密な調整と調整後の簡易な固定とが可能になる。また、係合部により、第2フレームを支持ホルダと係合して第2フレームを回動自在にすることで、液晶パネルに対して第2フレームすなわち光学補償素子の取付姿勢を調整することができる。従って、例えば液晶パネルに対して光軸が設定された場合に、光軸のまわりに回動させる場合の光学補償素子の取付姿勢を調整することができる。この際、支持部が、第2フレームを支持ホルダに支持すると共に、第2フレームの回動による変位を弾性的な当接により制限するため、光学補償素子の姿勢を第2フレームと共に所望な量だけ変化させてそのまま保持することができ、光学補償素子の取付姿勢の精密な調整と調整後の簡易な固定とが可能になる。従って、補償素子調整機構は、例えば光軸に直交する回転軸のまわりに回動させる場合の光学補償素子の取付姿勢を調整することができると共に、例えば光軸のまわりに回動させる場合の光学補償素子の取付姿勢も調整することができ、光学補償素子の取付姿勢の精密な調整と調整後の簡易な固定とが可能になる。
【0008】
(適用例2)上記の補償素子調整機構であって、係合部は、第2フレームに第1係合部と、支持ホルダに第2係合部と、を有し、第1係合部と第2係合部との係合により、第2フレームを支持ホルダに対して回動自在にすることが好ましい。この場合、第1係合部と第2係合部とが係合することにより、第2フレームを支持ホルダに対して回動させて第2フレームの姿勢調整を行なうことができる。例えば光軸のまわりに回動させる場合の光学補償素子の姿勢調整が可能になる。
【0009】
(適用例3)上記の補償素子調整機構であって、第1係合部および第2係合部のうち、一方の係合部は、突起部を有し、他方の係合部は、回動中心と略同心状に形成される凹部を有し、突起部は凹部と係合して摺動することが好ましい。この場合、突起部は回動中心と略同心状に形成される凹部と係合して摺動することにより、突起部は、回動中心と略同心状に摺動するため、第2フレームを支持ホルダに対して回動中心と略同心状に回動させて第2フレームの姿勢調整を行なうことができる。例えば回動中心を光軸と一致させた場合、光軸に対して略同心状に回動させて光学補償素子の姿勢調整を行なうことができる。
【0010】
(適用例4)上記の補償素子調整機構であって、支持部は、第2フレームまたは支持ホルダを摩擦力で係止することにより、支持ホルダに対する第2フレームの回動による変位量の微調整を許容することが好ましい。この場合、光学補償素子の姿勢を摩擦力に抗して微調整した状態で摩擦力により固定(支持)することができる。
【0011】
(適用例5)上記の補償素子調整機構であって、支持部は、第2フレームに第1支持部と、支持ホルダに第2支持部と、を有し、第1支持部と第2支持部とにより、第2フレームを支持ホルダに支持すると共に、第2フレームの回動に従動して摺動することが好ましい。この場合、支持ホルダに支持される第2フレームを安定して回動することや固定することができる。従って、光学補償素子の取付姿勢の調整および固定が安定して行なえる。
【0012】
(適用例6)上記の補償素子調整機構であって、第1支持部は、第2支持部を挟持して支持するバネ部を有していることが好ましい。この場合、簡易な機構で第2フレームの変位制限または固定が可能になる。
【0013】
(適用例7)上記の補償素子調整機構であって、第1フレームは、第2フレームに対して回動させる第1操作部を有していることが好ましい。この場合、この第1操作部を利用して光学補償素子を支持する第1フレームを第2フレームに対して回動させることで、光学補償素子の姿勢調整を簡易に行なうことが可能になる。
【0014】
(適用例8)上記の補償素子調整機構であって、第2フレームは、支持ホルダに対して回動させる第2操作部を有していることが好ましい。この場合、この第2操作部を利用して第1フレームを支持する第2フレームを支持ホルダに対して回動させることで、光学補償素子の姿勢調整を簡易に行なうことが可能になる。
【0015】
(適用例9)上記の補償素子調整機構であって、固定部は、第1フレームまたは第2フレームを摩擦力で係止することにより、第2フレームに対する第1フレームの回動による変位量の微調整を許容することが好ましい。この場合、光学補償素子の姿勢を摩擦力に抗して微調整した状態で摩擦力により固定することができる。
【0016】
(適用例10)上記の補償素子調整機構であって、固定部は、第1フレームに第1固定部と、第2フレームに第2固定部と、を有し、第1固定部と第2固定部との弾性的な係止により、第2フレームに対する第1フレームの変位を制限することが好ましい。この場合、第1固定部の介在により光学補償素子の取付姿勢の簡易な固定が可能になる。
【0017】
(適用例11)上記の補償素子調整機構であって、第1固定部または第2固定部は、弾性的な係止を行なうバネ部を有していることが好ましい。この場合、簡易な機構で第1フレームの変位制限または固定が可能になる。
【0018】
(適用例12)本適用例に係るプロジェクタは、(a)上述の補償素子調整機構と、(b)発光により光束を射出する光源装置と、(c)光源装置から射出された光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成する液晶パネルを有する光変調装置と、(d)光変調装置で形成された光学像を投写する投写光学装置と、を備えていることを特徴とする。
【0019】
上記プロジェクタでは、光源装置の発光により光束が射出され、液晶パネルを有する光変調装置とにより、光源装置から射出された光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成する。そして、投写光学装置により、光変調装置で形成された光学像を投写する。この際、上述のような簡単な構造の補償素子調整機構を用いているため、光学補償素子を簡易な構造で精密に配置することができ、投写される光学像(カラー画像など)のコントラストを容易に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るプロジェクタの光学系の構造を示す図である。図1を用いて、プロジェクタ100の光学系の構成および動作を説明する。
【0022】
本実施形態のプロジェクタ100は、発光により光束を射出する光源装置21と、光源装置21から射出された光束を複数の部分光束に分割し、液晶パネル25a,25b,25c上に重畳して結像させる照明光学装置22と、光源装置21から射出された光束を赤緑青の3色光に分離する色分離光学系23と、色分離光学系23から射出された各色光により照明され、画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調部25とを備える。また、プロジェクタ100は、光変調部25により形成された各色光の光学像を合成するクロスダイクロイックプリズム27と、クロスダイクロイックプリズム27から射出される合成された光学像(カラー画像など)をスクリーン(図示省略)などに投写するための投写光学装置としての投写レンズ29とを備える。
【0023】
また、光源装置21は、光源ランプ21aで構成され、本実施形態では、放電式の高圧水銀ランプを用いている。また、照明光学装置22は、凹レンズ22bと、一対のフライアイレンズ22d,22eと、偏光変換部材22gと、重畳レンズ22hとを備える。凹レンズ22bは、光源ランプ21aからの光束を平行化する役割を有するが、省略することもできる。一対のフライアイレンズ22d,22eは、マトリクス状に配置された複数の要素レンズからなり、これらの要素レンズにより凹レンズ22bを経た光源ランプ21aからの光束を部分光束に分割して個別に集光・発散させる。
【0024】
また、偏光変換部材22gは、フライアイレンズ22eから射出した光束を例えば図1の紙面に垂直なS偏光成分のみに変換して次段光学系に射出する。重畳レンズ22hは、偏光変換部材22gを経た光束を全体として適宜収束(結像)させることにより、光変調部25に設けた各色光用の光変調装置に対する重畳照明を可能にする。従って、両フライアイレンズ22d,22eと重畳レンズ22hとを経た光束は、以下に詳述する色分離光学系23を経て、光変調部25に設けられた各色光用の液晶パネル25a,25b,25cを均一に重畳照明する。
【0025】
色分離光学系23は、第1ダイクロイックミラー23aと、第2ダイクロイックミラー23bと、補正光学系である3つのフィールドレンズ23f,23g,23hと、反射ミラー23j,23m,23n,23oとを備えて構成される。ここで、光源装置21からの略白色の光束は、重畳レンズ22hを経て、反射ミラー23jで光路を折り曲げられて第1ダイクロイックミラー23aに入射する。そして、第1ダイクロイックミラー23aは、赤緑青の3色光のうち例えば赤色光および緑色光を反射し青色光を透過させる。また、第2ダイクロイックミラー23bは、入射した赤色光および緑色光のうち例えば緑色光を反射し赤色光を透過させる。
【0026】
第1ダイクロイックミラー23aを通過した青色光は、例えばS偏光のまま、反射ミラー23mを経てフィールドレンズ23fに入射する。また、第1ダイクロイックミラー23aで反射されて第2ダイクロイックミラー23bで更に反射された緑色光は、例えばS偏光のままフィールドレンズ23gに入射する。更に、第2ダイクロイックミラー23bを通過した赤色光は、例えばS偏光のまま、第1レンズLL1、第2レンズLL2、および反射ミラー23n,23oを経て、入射角度を調節するためのフィールドレンズ23hに入射する。第1レンズLL1、第2レンズLL2、およびフィールドレンズ23hは、リレー光学系を構成している。このリレー光学系は、第1レンズLL1の像を、第2レンズLL2を介して略そのままフィールドレンズ23hに伝達する機能を備えている。
【0027】
光変調部25は、3つの液晶パネル25a,25b,25cと、各液晶パネル25a,25b,25cを挟むように配置される3組の偏光板25e,25f,25gとを備える。ここで、第1光路OP1に配置された青色光用の液晶パネル25aと、これを挟む一対の偏光板25e,25eとは、輝度変調後の光学像のうち青色光を画像情報に基づいて2次元的に輝度変調するための青色光用の液晶ライトバルブを構成する。
【0028】
このうち、液晶パネル25aは、例えば垂直配向型の動作を行なう液晶セルを備えるが、TN型の動作を行なう液晶セルを含むものとすることもできる。液晶パネル25aは、一対の基板間に液晶層を挟んだ一般的な構造を有し、入射側すなわち表の基板側に配向膜、透明共通電極層、ブラックマトリクス等を備え、射出側すなわち裏の基板側に配向膜、透明画素電極、回路層等を備える。青色光用の液晶ライトバルブは、コントラスト向上用の光学補償素子10を、例えば射出側の偏光板25eと液晶パネル25aとの間に組み込んでいる。
【0029】
同様に、第2光路OP2に配置された緑色光用の液晶パネル25bと、対応する偏光板25f,25fも、緑色光用の液晶ライトバルブを構成し、第3光路OP3に配置された赤色光用の液晶パネル25cと、偏光板25g,25gも、赤色光用の液晶ライトバルブを構成する。そして、これら緑色光および赤色光用の液晶ライトバルブも、コントラスト向上用の光学補償素子10を、例えば射出側の偏光板25f,25gと液晶パネル25b,25cとの間に組み込んでいる。
【0030】
青色光用の液晶パネル25aには、色分離光学系23の第1ダイクロイックミラー23aを透過することにより分岐された青色光が、フィールドレンズ23fを介して入射する。緑色光用の液晶パネル25bには、色分離光学系23の第2ダイクロイックミラー23bで反射されることにより分岐された緑色光が、フィールドレンズ23gを介して入射する。赤色光用の液晶パネル25cは、第2ダイクロイックミラー23bを透過することにより分岐された赤色光が、フィールドレンズ23hを介して入射する。
【0031】
各液晶パネル25a〜25cは、入射した各色光の空間的強度分布を変調する非発光型の光変調装置であり、各液晶パネル25a〜25cにそれぞれ入射した3色の色光は、各液晶パネル25a〜25cに電気的信号として入力された駆動信号或いは画像信号に応じて変調される。その際、偏光板25e,25f,25gにより、各液晶パネル25a〜25cに入射する各色光の偏光方向が調整されると共に、各液晶パネル25a〜25cから射出される変調光から所定の偏光方向の成分光が光学像として取り出される。更に、光学補償素子10により、液晶パネル25a〜25cによる位相変調が適正になるように調整が行なわれ、これらの光学的補償が可能になる。
【0032】
クロスダイクロイックプリズム27は、光合成部材であり、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、X字状に交差する一対の誘電体多層膜27a,27bが形成されている。一方の誘電体多層膜27aは青色光を反射し、他方の誘電体多層膜27bは赤色光を反射する。
【0033】
このクロスダイクロイックプリズム27は、液晶パネル25aからの青色光を誘電体多層膜27aで反射して進行方向右側に射出させ、液晶パネル25bからの緑色光を2つの誘電体多層膜27a,27bを介して直進・射出させ、液晶パネル25cからの赤色光を誘電体多層膜27bで反射して進行方向左側に射出させる。
【0034】
投写レンズ29は、クロスダイクロイックプリズム27で合成されたカラーの光学像を、所望の倍率で、プロジェクタ100の外部に設置されるスクリーン(図示省略)上に投写する。つまり、各液晶パネル25a〜25cに入力された駆動信号或いは画像信号に対応する所望の倍率のカラー動画やカラー静止画が、スクリーン上に投写される。
【0035】
以上のプロジェクタ100において、光変調部25に組み込まれた光学補償素子10は、上述したように、例えば液晶パネル25a〜25cにより正確に調整できなかった位相変調量を微調整する目的で使用される。このような光学補償素子10を液晶ライトバルブ内の適所に配置することで、光変調部25による光変調のコントラストを高めることができ、高品位の画像の投写が可能になる。この際、光学補償素子10の厚みや光軸に対する回動状態や傾斜状態は、液晶パネル25a〜25cにより与えられる複屈折位相差に対して必要な調整量に対応するものとなっている。このような厚みや回動量や傾斜量は、個々の液晶パネル25a〜25c毎に設定することが望ましい。
【0036】
図2は、プロジェクタの一部を構成する光学ユニットの構造を示す斜視図である。図2を用いて、光学ユニット30の構成および動作を説明する。
【0037】
光学ユニット30は、クロスダイクロイックプリズム27と、液晶パネル25a,25b,25cと、射出フィルタユニット125a,125b,125cとを備えている。クロスダイクロイックプリズム27の3つの入射側面には、3つの射出フィルタユニット125a,125b,125cがそれぞれアライメントされて貼り付けられており、更に、射出フィルタユニット125a,125b,125cに対向して液晶パネル25a,25b,25cがそれぞれアライメントされた状態で固定されている。つまり、液晶パネル25a,25b,25cの射出側に、射出フィルタユニット125a,125b,125cが配置されている。
【0038】
各射出フィルタユニット125a,125b,125cは、図1に示す射出側の偏光板25e,25f,25gと、これに対向して配置される各色光用の光学補償素子10とをそれぞれ内蔵しており、光学補償素子10の回動および傾斜姿勢を個別に調整するための補償素子調整機構として機能する。なお、各液晶パネル25a,25b,25cからは、フラット型の配線ケーブルCAがそれぞれ延びている。
【0039】
図3は、補償素子調整機構を有する射出フィルタユニットと液晶パネルとの構成を示す図であり、図3(a)は、平面図であり、図3(b)は、透視した正面図である。図4は、図3における射出フィルタユニットの構造を示す図であり、図4(a)は、透視した正面図であり、図4(b)は、右側面図である。図5は、射出フィルタユニットの斜視図であり、図5(a)は、調整前の状態を示す斜視図であり、図5(b)は、調整後の状態を示す斜視図である。図6は、射出フィルタユニットなどの分解斜視図である。図7は、第2フレームの構造を示す図であり、図7(a)は、正面図であり、図7(b)は、右側面図である。
【0040】
また、図3は、詳細には、光学ユニット30のうち、緑色光用の液晶パネル25bおよび緑色光用の補償素子調整機構を有する射出フィルタユニット125bの構造を示している。そして、補償素子調整機構により、光学補償素子10を光軸OAのまわりに回動させ、また、光軸OAと略垂直となる回転軸RAに対しても回動させた状態を示している。また、図4は、詳細には、図3と同様の状態を示し、液晶パネル25bを除いた補償素子調整機構を有する射出フィルタユニット125bの状態を示している。図5(a)は、射出フィルタユニット125bの光学補償素子10の調整前の状態を示している。また、図5(b)は、図3に示す光学補償素子10の調整後の状態での射出フィルタユニット125bを示している。図3〜図7を用いて、射出フィルタユニット125bの構成および動作に関して説明する。
【0041】
図3、図6などに示すように、液晶パネル25bは、ビス51により射出フィルタユニット125bに固定されている。射出フィルタユニット125bは、補償素子調整機構を有しており、補償素子調整機構は、光学補償素子10および偏光板25fの他に、第1フレーム31と、第2フレーム32と、支持ホルダ33と、支持部材としての第3フレーム37とを備えている。
【0042】
図6に示すように、第1フレーム31は、金属材料(板金)の加工により形成されたものであり、略矩形板状をなし、光学補償素子10を支持する本体部31aを有している。そして、本体部31aは、中央で略矩形状に開口される開口部W1を有し、この開口部W1を塞ぐように液晶パネル25b側の面に光学補償素子10が貼り付けられている。また、第1フレーム31は、液晶パネル25bの画角に対して傾斜した一対の対角位置に設けられ外側に向かって延びる一対の軸部材31b,31cと、上部中央から上方に延びるレバー部材31eとを有している。
【0043】
第1フレーム31の本体部31aから延びる一対の軸部材31b,31cは、細長い板状の部材として後述する第2フレーム32に支持されており、図5で示すように、本体部31aが光軸OAに対して垂直で画角に対して傾いた回転軸RAのまわりに回動することを許容している。つまり、第1フレーム31すなわち光学補償素子10は、液晶パネル25bに対して一定範囲内で任意の角度だけ傾斜させることができるようになっている。レバー部材31eの先端に設けられたノブ31hは、図5(a)に矢印Aで示す方向(回転軸RAのまわり)に移動して第1フレーム31の傾斜角度を微調整する際に利用される。また、レバー部材31eの根元部分31jは、固定部としての第1固定部を構成している。
【0044】
なお、光学補償素子10は、ガラスまたはプラスチックなどのポリマー製の透明板上に、接着剤などにより、複屈折性を有する無機若しくは有機材料からなる板状部材、またはこれらを複合した板状部材、WV(Wide View)フィルムなどを取り付けたものである。光学補償素子10は、液晶パネル25bに封入されている液晶材料やその配向特性に応じて、その光学軸を、光軸OAに平行な方向や光軸OAに垂直な方向に配置することができる。そして、光学補償素子10の光学軸を光軸OAに平行な方向とする場合、その方位を光軸OAに対して適切な角度に設定することができる。更に、光学補償素子10の光学軸を光軸OAに垂直な方向とする場合、その方位を回転軸RAに対して適切な角度に設定することができる。なお、光学補償素子10の材料としては、サファイア、水晶、TAC(トリアセチルセルロース)などの各種材料を用いることができる。
【0045】
図6、図7に示すように、第2フレーム32は、金属材料(板金)の加工により形成されたものであり、略矩形板状をなす本体部32aを有している。本体部32aの中央には、略矩形状に開口される開口部W2を有している。また、第2フレーム32は、本体部32aの左右の端部を略垂直に正面側(液晶パネル25b方向)に折り曲げて形成された側壁部32e,32fを有している。
【0046】
また、本体部32aの上側には、正面側に折り曲げて形成された一対の突起部32bを有している。この一対の突起部32bは、固定部としての第2固定部を構成している。また、本体部32aの上側には、一対の突起部32bの左右側で、背面側に折り返して形成される一対のバネ部32cを有している。この一対のバネ部32cは、支持部としての第1支持部を構成している。また、本体部32aの開口部W2の上方には、背面側に半球面形状に突出して形成される一対の突起部32dを有している。この一対の突起部32dは、係合部としての第1係合部を構成している。
【0047】
両側壁部32e,32fには、下側に挿入孔53a,53bが形成され、上側端部にスリット状の溝である支持溝53c,53dが形成されており、挿入孔53a,53bの下端には、スリット状の溝である支持溝54c,54dが更に形成されている。
【0048】
ここで、光学補償素子10を支持する第1フレーム31を第2フレーム32に取り付けた場合、第2フレーム32の一方の側壁部32eの支持溝53cには、図3〜図6などに示すように、第1フレーム31の正面左上に形成された軸部材31bが所定の緩みをもって嵌合し、他方の側壁部32fの挿入孔53bに設けた支持溝54dには、第1フレーム31の正面右下に形成された軸部材31cが同様の緩みをもって嵌合する。
【0049】
この際、軸部材31bの端部に形成された鉤部61aと、軸部材31cの端部に形成された鉤部61bとが協働して、光学補償素子10の主面に平行な横方向に関して第1フレーム31の動きを制限するので、第2フレーム32内での第1フレーム31のガタツキが低減される。つまり、第1フレーム31が第2フレーム32内で回転軸RAのまわりに滑らかに回動可能になる。
【0050】
第2フレーム32の突起部32b,32bは、弾性的な係止を行なうバネ部として機能しており、突起部32b,32bの下面US,USと、第1フレーム31のレバー部材31eに設けた根元部分31jの上端TE,TEとは、弾性的に当接している。具体的には、突起部32b,32bの下面US,USが、根元部分31jの上端TE,TEに弾性的に当接して下方に付勢する。これにより、根元部分31jすなわち第1フレーム31の変位が摩擦力により制限され、結果的に、第1フレーム31の回転軸RAのまわりの回動が制限される。
【0051】
ここで、第1フレーム31のレバー部材31eは第1固定部を構成し、また、第2フレーム32の突起部32bは第2固定部を構成しており、第2フレーム32に対する第1フレーム31の回動を制限する固定部として機能している。言い換えれば、この固定部は、一対の軸部材31b,31cの回動による変位を第1固定部と第2固定部による弾性的な当接により制限している。
【0052】
このとき、レバー部材31eの両側は、レールの役割を果たす一対の突起部32b,32bに挟まれている。これにより、第1フレーム31の姿勢が突起部32b,32bなどに案内され、安定的に保持されると共に、第1フレーム31や光学補償素子10の姿勢の微調整が可能になる。詳細には、図5(a)に示すように、レバー部材31eのノブ31hを前後方向(矢印Aで示す方向)に移動することにより、レバー部材31eの根元部分31jが突起部32b,32bの下面US,US上を摩擦力に抗して摺動する。例えば図5(a)に示すように、液晶パネル25bに対して平行な状態から、例えば図5(b)に示すように、液晶パネル25bに対して傾斜した状態に変化させて、そのような傾斜状態で固定することができる。なお、図5(b)に示す図は、光軸OAに対しても回動している。
【0053】
なお、図3〜図5に示すように、光学補償素子10の調整後、根元部分31jや突起部32b,32b間に接着剤を供給して固定すれば、第1フレーム31を確実に第2フレーム32に固定でき、液晶パネル25bと光学補償素子10との光軸OAに略垂直な回転軸RAに対する配置関係を恒久的に固定することができる。
【0054】
支持ホルダ33は、図5、図6などに示すように、一方の側に液晶パネル25bに接合するための第1接合部33aを有し、他方の側に偏光板25fを取り付けるための第2接合部33b,33cを有し、第1接合部33aと第2接合部33b,33cとの間に、これらを連結する一対の側壁部33e,33fを設けている。
【0055】
支持ホルダ33は、金属材料(板金)の加工により形成されたものであり、接合部(第1接合部33aと第2接合部33b,33c)と側壁部33e,33fとが折り曲げにより立体的に形成されており、第1接合部33aと第2接合部33b,33cとの間に前述の第1フレーム31を支持した状態の第2フレーム32を収容するための隙間状の空間SP(図3(a)、図5、図6を参照)が形成されている。第1接合部33aは、中央で略矩形状に開口される開口部W3を有し、第1フレーム31に支持される光学補償素子10と、液晶パネル25bとが対面するようになっている。
【0056】
図3(a)、図6などに示すように、第1フレーム31および第2フレーム32を挟んで第1接合部33aの反対側となる第2接合部33b,33cには、外側つまり液晶パネル25bの反対側から偏光板25fが貼り付けられて固定されている。図6などに示すように、第2接合部33b,33cには、複数の取付孔62aが適所に形成されており、後述する第3フレーム37の取り付けおよび固定が可能になっている。
【0057】
また、第2接合部33b,33cの上側には、回動中心と略同心状に形成される凹部としての切り欠き部33g,33hがそれぞれ形成されている。なお、回動中心は、本実施形態では光軸OAと略一致するように設定している。なお、切り欠き部33g,33hは、係合部としての第2係合部を構成している。
【0058】
ここで、第1フレーム31を支持した状態の第2フレーム32を支持ホルダ33に取り付ける場合の手順を説明する。
最初に、支持ホルダ33の上方から隙間状の空間SPに挿入する。挿入する際には、第2フレーム32の一対のバネ部32c,32cを、第2接合部33b,33cの両面を挟持するように第2接合部33b,33cの上端部から挿入する。そして、挿入を継続し、第2フレーム32の突起部32d,32dを支持ホルダ33の切り欠き部33g,33hに係合させることで、取り付けが完了する。
【0059】
第1フレーム31を支持した状態で、支持ホルダ33に取り付けた第2フレーム32は、支持ホルダ33に対して回動自在となる。詳細には、第2フレーム32の突起部32d,32dが支持ホルダ33の切り欠き部33g,33hに係合しながら切り欠き部33g,33hに沿って摺動することにより回動自在となる。なお、切り欠き部33g,33hは、上述したように回動中心(光軸OA)と略同心状に形成されているため、第2フレーム32は光軸OAのまわりに回動自在となる。
【0060】
なお、バネ部32c,32cは、第2操作部として構成されており、支持ホルダ33に対する第2フレーム32(光学補償素子10)の回動角度を微調整する際に利用される。そして、微調整は、バネ部32c,32cを左右方向(図5(a)の矢印Bで示す方向)に移動させることにより、第2フレーム32を支持ホルダ33に対して回動させることで行なう。
【0061】
この際、第1支持部としての一対のバネ部32c,32cは、それぞれ第2支持部としての第2接合部33b,33cを挟持した状態で、第2フレーム32の回動に従動し、第2接合部33b,33cの面上を摩擦力に抗して摺動する。このように、支持部(第1支持部、第2支持部)は、支持ホルダ33を摩擦力で支持することにより、支持ホルダ33に対する第2フレーム32の摩擦力に抗する回動による光学補償素子10の変位量の微調整を許容している。また、回動による調整後は、第2フレーム32を支持ホルダ33に固定できるように支持部の摩擦力が設定されている。
【0062】
なお、図3〜図5に示すように、光学補償素子10の調整後、バネ部32c,32cや第2接合部33b,33c間に接着剤を供給して固定すれば、第2フレーム32を支持ホルダ33に確実に固定でき、液晶パネル25bと光学補償素子10との配置関係を恒久的に固定することができる。
【0063】
第3フレーム37は、支持ホルダ33と、偏光板25fの射出側に配設される光学部材としてのクロスダイクロイックプリズム27と、を支持して固定する支持部材として構成されている。第3フレーム37は、金属材料(板金)の加工により形成されたものであり、略矩形板状である本体部37aと、本体部37aの四隅に設けられ液晶パネル25b側に延びる爪部材37bとを有している。また、本体部37aは、中央で略矩形状に開口される開口部W4を有し、偏光板25fと図2に示すクロスダイクロイックプリズム27とが対面するようになっている。
【0064】
この第3フレーム37は、支持ホルダ33の射出側に固定され、偏光板25fとクロスダイクロイックプリズム27とを必要量だけ離間させた状態に保ちつつ、射出フィルタユニット125bなどをクロスダイクロイックプリズム27に固定する。また、第3フレーム37は、液晶パネル25bを固定した射出フィルタユニット125bの位置を、爪部材37bと複数の取付孔62aの固定位置とを調整することにより正確に位置決めすることができる。
【0065】
なお、光学補償素子10の取付姿勢の調整の手順に関し、本実施形態では、光学ユニット30(図2参照)の形態において、最初に、支持ホルダ33に対してバネ部32cを左右方向に操作して第2フレーム32を回動することで、光軸OAのまわりに光学補償素子10を回動させて取付姿勢を調整する。次に、第1フレーム31のノブ31hを前後方向に操作して第1フレーム31を回動することで、回転軸RAのまわりに光学補償素子10を回動させて取付姿勢の調整を行なっている。なお、この取付姿勢の調整の手順は、逆でもよい。
【0066】
以上は、緑色光用の液晶パネル25bおよび射出フィルタユニット125bの構造の説明であったが、他の青色光および赤色光用の液晶パネル25a,25cに付随する各色光の射出フィルタユニット125a,125cも上述した射出フィルタユニット125bと同様の構造を有しており、詳細な説明は省略する。
【0067】
図8は、2種類の液晶パネルに対応させた射出フィルタユニットおよび第1フレームを示す図であり、図8(a)、(b)は、2種類の液晶パネルおよび射出フィルタユニットを示す正面図であり、図8(c)、(d)は、(a)、(b)にそれぞれ対応する2種類の第1フレームを示す正面図である。図8を用いて、2種類の液晶パネル(25bと、25a,25c)、2種類の液晶パネルに対応させた射出フィルタユニット(125bと、125a,125c)、および第1フレーム31に関して説明する。
【0068】
本実施形態では、緑色光用の液晶パネル25bと、青色光および赤色光用の液晶パネル25a,25cとは、プレチルト角が逆方向のものを用いている。これは、クロスダイクロイックプリズム27を透過または反射させる際に、左右の反転を補償して視野角特性を一致させるためである。このため、光学補償素子10の光学軸や傾斜も、緑色光用の液晶パネル25bに付随するものと青色光および赤色光用の液晶パネル25a,25cに付随するものとでは左右反転させる必要がある。
【0069】
詳細には、図8(a)は、緑色光用の液晶パネル25bと射出フィルタユニット125bとを示している。また、図8(c)に示すのは、この射出フィルタユニット125bに組み込まれる第1フレーム31を示している。一方、図8(b)は、青色光および赤色光用の液晶パネル25a,25cと射出フィルタユニット125a,125cとを示している。また、図8(d)に示すのは、この射出フィルタユニット125a,125cに組み込まれる第1フレーム31を示している。
【0070】
図からも明らかなように、図8(c)の第1フレーム31と、図8(d)の第1フレーム31とは、左右反転した対称な形状を有している。つまり、図8(d)の第1フレーム31の場合、軸部材31bが本体部31aから正面右上に延び、軸部材31cが本体部31aから正面左下に延び、レバー部材31eが上部中央から上方に延びる。結果的に、図8(c)の第1フレーム31は、紙面に沿って左上がりに傾いた回転軸RAのまわりに回動可能になっており、図8(d)の第1フレーム31は、紙面に沿って右上がりに傾いた回転軸RA’のまわりに回動可能になっている。
【0071】
なお、以上の射出フィルタユニット125a,125b,125cにおいて、第2フレーム32、支持ホルダ33、および第3フレーム37は、共通の部品とすることができ、コストダウンを図っている。また、レバー部材31eの左右の突起部は左右で長さが異なっており、射出フィルタユニット125a,125b,125cの組立後も、レバー部材31eを目視確認することで、簡単に光学補償素子10の傾斜方向を確認することができる。
【0072】
上述した実施形態によれば以下の効果が得られる。
(1)本実施形態の補償素子調整機構によると、光学補償素子10を支持する第1フレーム31が、光学補償素子10の周囲において対向する位置に設けられている一対の軸部材31b,31cを有し、第2フレーム32が、一対の軸部材31b,31cを回動自在に支持することで、液晶パネル25bに対して第1フレーム31すなわち光学補償素子10の取付姿勢を調整することができる。従って、光軸OAに直交する回転軸RAのまわりに回動させる場合の光学補償素子10の取付姿勢を調整することができる。この際、固定部(第1固定部としての第1フレーム31に形成される根元部分31jの上端TE、第2固定部としての第2フレーム32に形成する突起部32b)が、第2フレーム32に対する一対の軸部材31b,31cの回動による変位を弾性的な当接により制限するため、光学補償素子10の姿勢を第1フレーム31と共に所望な量だけ変化させてそのまま保持することができる。よって、光学補償素子10の取付姿勢の精密な調整と調整後の簡易な固定とが可能になる。
また、係合部(第1係合部としての第2フレーム32に形成される突起部32d、第2係合部としての支持ホルダ33に形成する切り欠き部33g,33h)により、第2フレーム32を支持ホルダ33と係合して第2フレーム32を回動自在にすることで、液晶パネル25bに対して第2フレーム32すなわち光学補償素子10の取付姿勢を調整することができる。従って、光軸OAのまわりに回動させる場合の光学補償素子10の取付姿勢を調整することができる。この際、支持部(第1支持部としての第2フレーム32に形成されるバネ部32c、第2支持部としての第2接合部33b,33c)が、第2フレーム32を支持ホルダ33に支持すると共に、第2フレーム32の回動による変位を弾性的な当接により制限するため、光学補償素子10の姿勢を第2フレーム32と共に所望な量だけ変化させてそのまま保持することができる。よって、光学補償素子10の取付姿勢の精密な調整と調整後の簡易な固定とが可能になる。
従って、補償素子調整機構は、光軸OAに直交する回転軸RAのまわりに回動させる場合の光学補償素子10の取付姿勢を調整することができると共に、光軸OAのまわりに回動させる場合の光学補償素子10の取付姿勢も調整することができ、光学補償素子10の取付姿勢の精密な調整と調整後の簡易な固定とが可能になる。
【0073】
(2)本実施形態の補償素子調整機構によると、本実施形態の補償素子調整機構によると、係合部は、第2フレーム32に第1係合部としての突起部32dと、支持ホルダ33に第2係合部としての切り欠き部33g,33hと、を有している。そして、第2係合部としての切り欠き部33g,33hは、回動中心を光軸OAと略一致させて、光軸OAと略同心状に形成される凹部として形成され、第1係合部としての突起部32dを切り欠き部33g,33hと係合させて摺動させる。これにより、光学補償素子10を光軸OAに対して略同心状に回動させて姿勢調整を行なうことができる。
【0074】
(3)本実施形態の補償素子調整機構によると、第1支持部としての第2フレーム32に形成されるバネ部32cは、支持ホルダ33に形成される第2支持部としての第2接合部33b,33cを摩擦力で係止することにより、支持ホルダ33に対する第2フレーム32の回動による変位量の微調整を許容する。従って、光学補償素子10の姿勢を摩擦力に抗して微調整した状態で摩擦力により固定(支持)することができる。
【0075】
(4)本実施形態の補償素子調整機構によると、支持部は、第2フレーム32に第1支持部としてのバネ部32cと、支持ホルダ33に第2支持部としての第2接合部33b,33cと、を有し、第2フレーム32を支持ホルダ33に支持すると共に、第2フレーム32の回動に従動して摺動する。従って、支持ホルダ33に支持される第2フレーム32を安定して回動することや固定することができ、光学補償素子10の取付姿勢の調整および固定が安定して行なえる。
【0076】
(5)本実施形態の補償素子調整機構によると、第1支持部としてのバネ部32cは、第2支持部としての第2接合部33b,33cを挟持して支持するため、簡易な機構で第2フレーム32の変位制限または固定が可能になる。
【0077】
(6)本実施形態の補償素子調整機構によると、第1フレーム31は、第2フレーム32に対して回動させる第1操作部としてのレバー部材31eを有しているため、このレバー部材31eを利用して光学補償素子10を支持する第1フレーム31を第2フレーム32に対して回動させることで、光学補償素子10の姿勢調整を簡易に行なうことが可能になる。
【0078】
(7)本実施形態の補償素子調整機構によると、第2フレーム32は、支持ホルダ33に対して回動させる第2操作部としてのバネ部32cを有しているため、このバネ部32cを利用して第1フレーム31を支持する第2フレーム32を支持ホルダ33に対して回動させることで、光学補償素子10の姿勢調整を簡易に行なうことが可能になる。
【0079】
(8)本実施形態の補償素子調整機構によると、第2固定部としての第2フレーム32に形成する突起部32bが、第1固定部としての第1フレーム31に形成される根元部分31jの上端TEを摩擦力で係止することにより、第2フレーム32に対する第1フレーム31の回動による変位量の微調整を許容する。これにより、光学補償素子10の姿勢を摩擦力に抗して微調整した状態で摩擦力により固定することができる。
【0080】
(9)本実施形態の補償素子調整機構によると、第2固定部としての第2フレーム32に形成する突起部32bが、第1固定部としての第1フレーム31に形成される根元部分31jの上端TEを弾性的な係止により、第2フレーム32に対する第1フレーム31の変位を制限する。これにより、光学補償素子10の取付姿勢の簡易な固定が可能になる。
【0081】
(10)本実施形態の補償素子調整機構によると、第2固定部としての第2フレーム32に形成する突起部32bは、板金バネとして形成されているため、簡易な機構で第1フレーム31の変位制限または固定が可能になる。
【0082】
(11)本実施形態の補償素子調整機構によると、一対の軸部材31b,31cは、液晶パネル25bの画面の縦方向および横方向に対して傾いた方向に配置されている。従って、光学補償素子10を画角に対して傾斜した軸(光軸OAに直交する回転軸RA)のまわりに回動・傾斜させることができる。
【0083】
(12)本実施形態の補償素子調整機構によると、一対の軸部材31b,31cは、第2フレーム32に形成されたスリット状の溝(支持溝53c,54d)にそれぞれ支持される細長い板状の部材であるため、第1フレーム31の滑らかな姿勢調整、すなわち光学補償素子10の滑らかな姿勢調整が可能になる。
【0084】
(13)本実施形態の補償素子調整機構によると、支持ホルダ33は、一方に液晶パネル25bに接合するための第1接合部33aを有し、他方に偏光板25fを取り付けるための第2接合部33b,33cを有すると共に、第1接合部33aおよび第2接合部33b,33cの間に第1フレーム31および第2フレーム32を収容する隙間状の空間SPを有する。このような支持ホルダ33により、隙間状の空間SPに第1フレーム31および第2フレーム32を収容し、併せて液晶パネル25bや偏光板25fを一体的に固定でき、これらの間で光学補償素子10の姿勢を調節することができる。
【0085】
(14)本実施形態の補償素子調整機構によると、液晶パネル25bの射出側に偏光板25fが配設され、支持ホルダ33と、偏光板25fの射出側に配設されるクロスダイクロイックプリズム27と、を支持して固定する第3フレーム37を有している。これにより、第3フレーム37を介し、射出フィルタユニット125bの固定位置を調整してクロスダイクロイックプリズム27に固定することができる。
【0086】
(15)本実施形態のプロジェクタ100によると、光源装置21(光源ランプ21a)の発光により光束が射出され、液晶パネル25bを有する光変調装置とにより、光源装置21から射出された光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成する。そして、投写光学装置(投写レンズ29)により、光変調装置で形成された光学像を投写する。この際、本実施形態の簡単な構造の補償素子調整機構を用いているため、光学補償素子10を簡易な構造で精密に配置することができ、投写される光学像(カラー画像など)のコントラストを容易に高めることができる。
【0087】
なお、上述した実施形態に限定されず、種々の変更や改良などを加えて実施することが可能である。変形例を以下に述べる。
【0088】
(変形例1)前記実施形態では、係合部は、第2フレーム32に第1係合部としての突起部32dと、支持ホルダ33に第2係合部としての凹部(切り欠き部33g,33h)と、を有している。しかし、これに限られず、係合部は、第2フレーム32に第1係合部として凹部を有し、支持ホルダ33に第2係合部として突起部を有することでもよい。
【0089】
(変形例2)前記実施形態では、第1支持部としての第2フレーム32に形成されるバネ部32cは、支持ホルダ33に形成される第2支持部としての第2接合部33b,33cを摩擦力で係止することにより、支持ホルダ33に対する第2フレーム32の回動による変位量の微調整を許容している。しかし、これに限られず、支持ホルダ33に第2支持部としてバネ部など形成して第2フレーム32を摩擦力で係止することにより、支持ホルダ33に対する第2フレーム32の回動による変位量の微調整を許容してもよい。
【0090】
(変形例3)本実施形態では、第2操作部として第2フレーム32のバネ部32cを用いている。しかし、これに限られず、第2操作部は、第2フレーム32の突起部32bとしてもよく、その場合、第1操作部としてのレバー部材31eを光軸OAに対して左右方向に回動することにより、レバー部材31eを挟んでいる突起部32bが従動して左右方向に回動して、光学補償素子10を光軸OAのまわりに回動させてもよい。
【0091】
(変形例4)前記実施形態では、一対の軸部材31b,31cは、細長い板状の部材であるが、これに限られず、棒状の部材であってもよい。
【0092】
(変形例5)前記実施形態では、光変調装置に3つの液晶パネル25a,25b,25cを用いたプロジェクタ100を説明したが、これに限られない。例えば、1つの液晶パネルのみを用いたプロジェクタ、2つの液晶パネルを用いたプロジェクタ、あるいは、4つ以上の液晶パネルを用いたプロジェクタにも適用可能である。
【0093】
(変形例6)前記実施形態では、コントラスト向上用の光学補償素子10を、例えば射出側の偏光板25e,25f,25gと液晶パネル25a,25b,25cとの間に組み込んでいるが、光学補償素子10を入射側の偏光板25e,25f,25gと液晶パネル25a,25b,25cとの間に組み込むこともできる。この場合、各液晶パネル25a,25b,25cの入射側に、図2などに示す射出フィルタユニット125a,125b,125cと同様の構造の入射フィルタユニットを設けることでもよい。
【0094】
(変形例7)前記実施形態では、第1フレーム31を回転させる回転軸RAを、液晶パネル25a,25b,25cの画面の縦方向及び横方向に対して略45度傾いた方向に配置している。しかし、これに限られず、回転軸RAの角度は光軸OAに垂直な面内で任意に設定することができる。
【0095】
(変形例8)前記実施形態では、透過型の液晶パネル25a,25b,25cを用いているが、反射型の液晶パネルなど、反射型の光変調装置を用いることも可能である。この場合、反射型の液晶パネルの片側にのみ単一の偏光板が配置されるので、例えば反射型の各液晶パネルと単一の偏光板との間に光学補償素子10を配置するタイプの射出フィルタユニットを反射型の各液晶パネルの正面側に配置することができる。
【0096】
(変形例9)前記実施形態では、光源装置21を構成する光源ランプ21aに放電式ランプを用いているが、これに限られず、光源装置として、LED(Light Emitting Diode)素子やLD(Laser Diode)素子などを用いることができる。
【0097】
(変形例10)前記実施形態のプロジェクタ100は、フロントタイプのプロジェクタとして適用しているが、投写対象面としてのスクリーンを一体で有するリアタイプのプロジェクタにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本実施形態に係るプロジェクタの光学系の構造を示す図。
【図2】プロジェクタの一部を構成する光学ユニットの構造を示す斜視図。
【図3】補償素子調整機構を有する射出フィルタユニットと液晶パネルとの構成を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は透視した正面図。
【図4】図3における射出フィルタユニットの構造を示す図であり、(a)は透視した正面図であり、(b)は右側面図。
【図5】射出フィルタユニットの斜視図であり、(a)は調整前の状態を示す斜視図であり、(b)は調整後の状態を示す斜視図。
【図6】射出フィルタユニットなどの分解斜視図。
【図7】第2フレームの構造を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は右側面図。
【図8】2種類の液晶パネルに対応させた射出フィルタユニットおよび第1フレームを示す図であり、(a)、(b)は2種類の液晶パネルおよび射出フィルタユニットを示す正面図であり、(c)、(d)は(a)、(b)にそれぞれ対応する2種類の第1フレームを示す正面図。
【符号の説明】
【0099】
10…光学補償素子、25a,25b,25c…液晶パネル、25e,25f,25g…偏光板、30…光学ユニット、31…第1フレーム、31a…本体部、31b,31c…軸部材、31e…レバー部材、31h…ノブ、31j…根元部分、32…第2フレーム、32a…本体部、32b…突起部、32c…バネ部、32d…突起部、33…支持ホルダ、33a…第1接合部、33b,33c…第2接合部、33g,33h…切り欠き部、37…第3フレーム、53c,54d…支持溝、100…プロジェクタ、125a,125b,125c…射出フィルタユニット、OA…光軸、RA…回転軸、SP…空間、W1,W2,W3,W4…開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶パネルと偏光板との間に配置される光学補償素子と、
前記光学補償素子を支持すると共に、当該光学補償素子の周囲の対向する位置に設けられる一対の軸部材を有する第1フレームと、
前記第1フレームの前記一対の軸部材を回動自在に支持する第2フレームと、
前記液晶パネル側に固定されると共に、前記第2フレームを回動自在に支持する支持ホルダと、
前記一対の軸部材の回動による変位を弾性的な当接により制限する固定部と、
前記第2フレームを前記支持ホルダと係合して前記第2フレームを回動自在にする係合部と、
前記第2フレームを前記支持ホルダに支持すると共に、前記第2フレームの回動による変位を弾性的な当接により制限する支持部と、を備えていることを特徴とする補償素子調整機構。
【請求項2】
請求項1に記載の補償素子調整機構であって、
前記係合部は、前記第2フレームに第1係合部と、前記支持ホルダに第2係合部と、を有し、
前記第1係合部と前記第2係合部との係合により、前記第2フレームを前記支持ホルダに対して回動自在にすることを特徴とする補償素子調整機構。
【請求項3】
請求項2に記載の補償素子調整機構であって、
前記第1係合部および前記第2係合部のうち、一方の係合部は、突起部を有し、他方の係合部は、回動中心と略同心状に形成される凹部を有し、前記突起部は前記凹部と係合して摺動することを特徴とする補償素子調整機構。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の補償素子調整機構であって、
前記支持部は、前記第2フレームまたは前記支持ホルダを摩擦力で係止することにより、前記支持ホルダに対する前記第2フレームの回動による変位量の微調整を許容することを特徴とする補償素子調整機構。
【請求項5】
請求項4に記載の補償素子調整機構であって、
前記支持部は、前記第2フレームに第1支持部と、前記支持ホルダに第2支持部と、を有し、
前記第1支持部と前記第2支持部とにより、前記第2フレームを前記支持ホルダに支持すると共に、前記第2フレームの回動に従動して摺動することを特徴とする補償素子調整機構。
【請求項6】
請求項5に記載の補償素子調整機構であって、
前記第1支持部は、前記第2支持部を挟持して支持するバネ部を有していることを特徴とする補償素子調整機構。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の補償素子調整機構であって、
前記第1フレームは、前記第2フレームに対して回動させる第1操作部を有していることを特徴とする補償素子調整機構。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の補償素子調整機構であって、
前記第2フレームは、前記支持ホルダに対して回動させる第2操作部を有していることを特徴とする補償素子調整機構。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の補償素子調整機構であって、
前記固定部は、前記第1フレームまたは前記第2フレームを摩擦力で係止することにより、前記第2フレームに対する前記第1フレームの回動による変位量の微調整を許容することを特徴とする補償素子調整機構。
【請求項10】
請求項9に記載の補償素子調整機構であって、
前記固定部は、前記第1フレームに第1固定部と、前記第2フレームに第2固定部と、を有し、
前記第1固定部と前記第2固定部との弾性的な係止により、前記第2フレームに対する前記第1フレームの変位を制限することを特徴とする補償素子調整機構。
【請求項11】
請求項10に記載の補償素子調整機構であって、
前記第1固定部または前記第2固定部は、前記弾性的な係止を行なうバネ部を有していることを特徴とする補償素子調整機構。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の補償素子調整機構と、
発光により光束を射出する光源装置と、
前記光源装置から射出された前記光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成する前記液晶パネルを有する光変調装置と、
前記光変調装置で形成された前記光学像を投写する投写光学装置と、を備えていることを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−169046(P2009−169046A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6510(P2008−6510)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】