説明

補助レール

【課題】搬送用移動体がレール上を走行するに際して、騒音、振動、及び車輪の滑りを抑制することができるとともに、設備の保守についての手間を軽減することができる補助レールを提供する。
【解決手段】補助レール23の基材24には、その上面を被覆する被覆材25が設けられている。この被覆材25は樹脂材料から構成されている。この補助レール23は、金属製の本体レール22に着脱可能に取着される。この本体レール22は、スタッカクレーンを走行させるべく設置され、被覆材25の走行部25a上をスタッカクレーンの車輪14が走行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスタッカクレーン等の搬送用移動体が走行するレールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送用移動体には金属製の車輪が設けられ、その車輪が金属製のレール上を走行することで、搬送用移動体が移動するように構成されている。そして、搬送用移動体の移動に際して、金属製の車輪が同じく金属製のレール上を走行するため、金属同士の接触音が発生する。こうした金属同士の接触音は、不快な騒音となるという問題があった。そこで、金属同士の接触音を防止するために、車輪の外周部を樹脂材料で構成する技術が提案されている(特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開平6−227616号公報
【特許文献2】実開平6−14111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1及び2の車輪のように、樹脂材料からなる外周部を有する車輪では、金属同士の接触による異音を防止することができる。さらに、樹脂材料の緩衝性によって搬送用移動体の振動を抑制することができるとともに、レールに対する車輪の摩擦力が高まることから車輪の滑りを抑制することができる。しかしながら、樹脂材料からなる外周部を有する車輪は、金属材料から構成された車輪よりも、外周部の剛性が十分に得られ難い。このため、車輪の耐久性が低下することになり、その結果、車輪の交換頻度が高まるという問題があった。そうした車輪の交換作業では、まず搬送用移動体をレールから離間させる。次いで、車輪を交換した後、搬送用移動体をレールに設置する。このように車輪の交換作業は、手間を要する作業であり、その作業中は搬送用移動体を停止することになる。すなわち、上記特許文献1及び2の車輪では、外周部を樹脂材料とした有利な効果は奏するものの、車輪の耐久性が低下することに伴って設備の保守に手間を要するという問題があった。
【0004】
本発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、搬送用移動体がレール上を走行するに際して、騒音、振動、及び車輪の滑りを抑制することができるとともに、設備の保守についての手間を軽減することができる補助レールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の補助レールは、搬送用移動体の有する金属製の車輪を走行させるべく設置される金属製の本体レールに着脱可能に取着される補助レールであって、前記車輪の走行する走行部を有してなり、該走行部を樹脂材料から構成したことを要旨とする。
【0006】
この構成によれば、樹脂材料から構成した走行部を金属製の車輪が走行するに際して、金属同士の接触による異音を防止することができる。さらに、樹脂材料の緩衝性によって搬送用移動体の振動を抑制することができるとともに、レールに対する車輪の摩擦力が高まることから車輪の滑りを抑制することができる。ここで、レール上の所定距離を走行する車輪には、その回転数に応じて繰り返しの荷重が加わる。一方、レールには、車輪が通過した回数に応じて繰り返しの荷重が加わる。すなわち、搬送用移動体の走行距離に対して、繰り返しの荷重を受ける頻度は、レールよりも車輪の方が高い。従って、車輪は樹脂材料よりも耐久性に優れる金属材料から構成することが好適である。この点、上述した異音を防止するに際して、車輪ではなく、走行部を樹脂材料から構成することで、車輪の耐久性は確保される。このため、車輪の交換頻度を低減することができる。一方、補助レールは、本体レールに着脱可能に取着されるため、走行部に不具合が発生した際には、補助レールを容易に交換することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の補助レールにおいて、前記走行部は、長尺状の基材の少なくとも一部を前記樹脂材料で被覆することにより構成され、前記基材は前記樹脂材料よりも硬い材料から構成されていることを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、補助レールの強度が確保され易いため、補助レールの取り扱い性が良好となる結果、本体レールへの取り付け作業を容易に行うことができる。また、こうした補助レールは、走行部よりも硬質な基材を利用して本体レールに対して堅固に取着することができるため、本体レールから補助レールが脱離するといった不具合が抑制される。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の補助レールにおいて、前記走行部を、エラストマーから構成したことを要旨とする。
この構成によれば、走行部はゴム弾性を有しているため、例えば、合成樹脂製の走行部よりも、静音性、制振性、グリップ性等の性能が発揮され易い。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の補助レールにおいて、前記搬送用移動体は、棚に荷を搬入するとともに棚から荷を搬出するスタッカクレーンであることを要旨とする。
【0011】
近年、スタッカクレーンの車輪に加わる負荷は、搬送の高速化、重量物の搬送、棚の高層化によるスタッカクレーンの大型化等に伴って増大する傾向にある。こうした車輪の外周部を樹脂材料から構成した場合、車輪に不具合が発生し易くなる結果、車輪の交換頻度が高まることになる。こうした設備の保守によって、スタッカクレーンを停止する頻度が高まることで、搬送効率の低下を招いてしまう。また、スタッカクレーンにおいて、車輪を交換するには、スタッカクレーンのジャッキアップが必要になる。例えば棚の高層化等に伴って大型化したスタッカクレーンにおいては、そのジャッキアップは大掛かりな作業であり、容易ではない。従って、車輪の交換頻度を低めるべく、剛性の高い車輪が要求されている。また一方、スタッカクレーンでは、車輪に加わる負荷が増大することに伴って、走行時の騒音も増大される。こうしたスタッカクレーンは、屋内に設置されるため、騒音が大きくなると、音が反響して作業者の不快感が増すことになる。こうした実情の下、スタッカクレーンが走行する本体レールに対して、上述した補助レールを適用すれば、車輪の剛性を確保することができるとともに、金属同士の接触音を防止することができるといった有利な作用を十分に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、搬送用移動体がレール上を走行するに際して、騒音、振動、及び車輪の滑りを抑制することができるとともに、設備の保守についての手間を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を自動倉庫におけるスタッカクレーンの走行する補助レールに具体化した一実施形態を図1及び図2を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、自動倉庫は、荷11を収納する棚12とその棚12に荷11を搬送するためのスタッカクレーン13とが備えられている。搬送用移動体としてのスタッカクレーン13は、台車13aと、同台車13aに立設されるマスト13bと、同マスト13bに昇降可能に支持される昇降台13cと、同昇降台13cに進退可能に設けられるフォーク13dとを備えている。スタッカクレーン13は、棚12に隣接して設けられたレール21上を移動可能に構成されている。このスタッカクレーン13は、台車13aの移動、昇降台13cの昇降、及びフォーク13dの進退を通じて、荷11を棚12の所定箇所に搬入するとともに棚12の所定箇所に載置されている荷11を搬出する。こうしたスタッカクレーン13による荷11の搬送は、図示しない制御装置によって自動制御されている。なお、マスト13bの上部には、図示しないローラが回動可能に軸支され、同ローラが図示しない案内レールに支持されて走行するように構成されている。また、台車13a、昇降台13c及びフォーク13dは、図示しないモータ等の駆動手段により駆動されるように構成されている。
【0014】
台車13aには、金属製の車輪が回動可能に軸支されている(図示省略)。同車輪が、レール21上を走行することで、スタッカクレーン13は移動する。こうした車輪は、金属材料から構成されることで、その剛性が確保されている。車輪を構成する金属材料としては、例えば鉄、アルミニウム、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0015】
図2(a)に示すようにレール21は、金属製の本体レール22を備え、同本体レール22は床面上に敷設されている。この本体レール22を構成する金属材料としては、例えば鉄、アルミニウム、ステンレス鋼等が挙げられる。なお、本体レール22は、図示しないアンカーボルト、ねじくぎ等の固定部材により床に固定されている。
【0016】
本体レール22の上部には、本体レール22の長さ方向に沿って延びる補助レール23が着脱可能に取着されている。図2(a)及び図2(b)に示すように補助レール23は、長尺状をなす基材24と、その上面を被覆する被覆材25とから構成されている。基材24は金属材料から形成され、被覆材25は樹脂材料から形成されている。
【0017】
基材24は、本体レール22の上面に当接される上壁部24aと、本体レール22の上部両側面に当接される一対の側壁部24bとから構成され、一対の側壁部24bには、それぞれ取付孔が貫設されている。そして側壁部24bは、ねじ部品である締結部材26を取付孔に挿入して本体レール22のねじ穴に螺入して締め付けることで、本体レール22に固定されている。このように側壁部24bは、補助レール23を本体レール22へ着脱可能に取着するための取着部として機能する。なお、補助レール23は、所定の長さに分割して本体レール22に取着されることで、部分的に交換可能となっている。
【0018】
基材24は、被覆材25を構成する樹脂材料よりも硬い材料から構成されることで、被覆材25を補強している。基材24を構成する材料としては、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料以外にポリアミド、ABS樹脂等を用いることもできる。
【0019】
被覆材25は、基材24の長さ方向に沿って延びるように設けられている。この被覆材25は平板状をなし、幅方向における中央部分は図2(b)に二点鎖線で示す車輪14が走行する走行部25aを構成している。この走行部25aは、被覆材25のうち、車輪14の外周面が接触する部位である。そして、この被覆材25が樹脂材料から形成されることで、樹脂材料の走行部25aが構成されている。被覆材25、すなわち走行部25aを構成する樹脂材料としては、例えばエラストマー、合成樹脂等が挙げられる。エラストマーとしては、ウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルゴム、天然ゴム等が挙げられる。合成樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂材料の中でも、被覆材25の静音性、グリップ性、緩衝性等の性能が発揮され易いという観点から、エラストマーが好ましく、ウレタン系エラストマーがより好ましい。なお、この被覆材25は、図2(b)に拡大して示すように接着層27を介して基材24に接合されている。
【0020】
こうした補助レール23は、基材24を金型のキャビティ内に配置して、そのキャビティ内で被覆材25を成型することで製造することができる。本実施形態の補助レール23の製造方法は、まず、アルミニウム製の基材24の上面をブラスト処理することで粗面化した後、その上面に接着剤を塗布する。次に、その接着剤を乾燥した後、基材24を金型のキャビティ内に配置する。次いで、そのキャビティ内にて熱硬化性のウレタン原料を注入して、そのウレタン原料を硬化させて行う注型成形によって、被覆材25を形成するとともに基材24と一体化している。なお、基材24を配置したキャビティ内に熱可塑性樹脂材料を射出する射出成形によって、補助レール23を製造してもよい。また、予め成形した被覆材25を基材24に接着させることによって、補助レール23を製造してもよい。
【0021】
次に、補助レール23の使用方法及び使用状態について説明する。
まず、本体レール22の全長に応じて、所定の長さの補助レール23を複数準備する。そして、これらの補助レール23を本体レール22の上部に基材24を嵌め込むようにして配置する。次に、締結部材26により側壁部24bを本体レール22の両側部に締結する。このようにして、本体レール22には、補助レール23が装着される。
【0022】
そして、図1に示されるスタッカクレーン13がレール21上を移動するに際して、図2(b)に示される車輪14は、走行部25aを走行する。このとき、走行部25aは樹脂材料から形成されているため、金属同士の接触による異音が防止される。一方、車輪14は金属製であるため、その剛性は確保され、その剛性に基づいた耐久性が発揮される。
【0023】
ここで、スタッカクレーン13がレール21上の所定距離を走行するに際して、車輪14には、その回転数に応じて繰り返しの荷重が加わる。一方、レール21には、車輪14が通過した回数に応じて繰り返しの荷重が加わる。すなわち、スタッカクレーン13の走行距離に対して、繰り返しの荷重を受ける回数は、レール21よりも車輪14の方が多くなる。この点について、外周1mの車輪が全長10mのレールを走行する場合を一例として説明する。樹脂材料の疲労寿命は、所定の荷重を繰り返し加えた際に、クラック等の不具合が生じた時点における荷重の回数で表すことができる。例えば、走行部25aを構成する樹脂材料の疲労寿命は、1000万回であると仮定する。この場合、走行部25aは、金属製の車輪14から受ける繰り返し荷重の回数が1000万回に達した時点で疲労寿命に至る。すなわち、車輪14が補助レール23を500万回往復した時点で、補助レール23の交換が必要になる。なお、台車の備える車輪14の個数が、1本のレール21に対して例えば2個であったとしても、補助レール23が疲労寿命に至るのは、台車13aが250万回往復した時点である。一方、同じく疲労寿命が1000万回の樹脂材料から車輪の外周部を構成した場合、その車輪は、回転数が1000万回に達した時点で疲労寿命に至る。車輪は上記レールを1回往復すると20回転するため、樹脂材料を設けた車輪では、全長10mのレールを50万回往復した時点で、車輪の交換が必要になる。このように、走行距離に対する車輪の負荷は大きい。このため、車輪は、樹脂材料よりも耐久性に優れる金属材料から構成することが好適である。この点、上述した異音を防止するに際して、車輪14ではなく、走行部25aを樹脂材料から構成することで、車輪14の耐久性は確保されている。このため、車輪14の交換頻度を低減することができる。
【0024】
そして補助レール23は、スタッカクレーン13の走行距離、走行部25aの状態等に応じて交換される。補助レール23の交換作業は、締結部材26を取り外して、補助レール23を本体レール22から脱離させた後、新たな補助レール23を装着する。こうした交換作業を通じて、レール21と車輪との接触による異音を防止するための保守は行われる。
【0025】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1) 補助レール23は、樹脂材料から構成した走行部25aを有し、その走行部25aを金属製の車輪14が走行する。この構成によれば、スタッカクレーン13がレール21上を走行するに際して、金属同士の接触による異音が防止される結果、スタッカクレーン13の走行に伴う騒音を抑制することができる。さらに、樹脂材料の緩衝性によってスタッカクレーン13の振動を抑制することができるとともに、レール21に対する車輪の14の摩擦係数が高まることから車輪14の滑りを抑制することができる。
【0026】
また、車輪14は金属製であるため、その耐久性は確保される。従って、車輪14の交換頻度を低減することができる。一方、補助レール23は、本体レール22に着脱可能に取着されるため、走行部25aに不具合が発生した際には、補助レール23を容易に交換することができる。従って、自動倉庫の保守についての手間を軽減することができる。よって、自動倉庫の停止時間を短縮することが可能であり、搬送効率を高めることが容易である。
【0027】
(2) 基材24は、走行部25aを構成する樹脂材料よりも硬い材料から構成されている。この基材24は、走行部25aを支持するとともに走行部25aを補強している。すなわち、基材24によって補助レール23の強度が確保され易いため、補助レール23の運搬時、取り付け時等において、補助レール23が変形したり、破損したりすることを抑制することができる。従って、こうした補助レール23では、本体レール22への取り付け作業を行うことが容易であるため、取り付け作業の効率を高めることができる。
【0028】
また、そうした基材24を利用して本体レール22に補助レール23を固定することができるため、補助レール23を堅固に取着することができる。このため、本体レール22から補助レール23が脱離するといった不具合を抑制することができる。
【0029】
(3) 走行部25aは、エラストマーから構成されることが好適である。こうした走行部25aは、ゴム弾性を有しているため、例えば、ポリオレフィン樹脂から構成するよりも、静音性、グリップ性、緩衝性等の性能が発揮され易い。特に、エラストマー製の走行部25aによれば、車輪14が走行する際の騒音を抑制する効果を顕著に得ることもできるようになる。また、エラストマーとしてウレタン系エラストマーを用いた場合には、静音性、グリップ性、緩衝性等の性能がさらに発揮され易くなる。
【0030】
(4) 近年、スタッカクレーン13の車輪14に加わる負荷は、搬送の高速化、重量物の搬送、棚12の高層化によるマスト13bの大型化等に伴って増大する傾向にある。こうした車輪14の外周部を樹脂材料から構成した場合、車輪14に不具合が発生し易くなる結果、車輪14の交換頻度が高まることになる。また、大型化したスタッカクレーン13においては、そのジャッキアップは大掛かりな作業であり、容易ではない。そして一般に、車輪14は、台車13aの本体に覆われているため、車輪14の周囲のスペースは狭く、車輪14の交換作業は、容易ではない。こうしたことから、スタッカクレーン13の停止時間が増すことで、自動倉庫における搬送効率の低下を招いてしまう。この点、補助レール23であれば、樹脂材料の車輪14よりも交換頻度は低くなる。また、補助レール23の交換作業は、正常な補助レール23上にスタッカクレーン13を停止した後、交換の必要な補助レール23のみを交換するといった方法で行うことができる。このため、スタッカクレーン13のジャッキアップを省略することができる。また、レール21の周囲には、台車13aの走行可能なスペースが確保されているため、その交換作業は容易である。
【0031】
(5) スタッカクレーン13では、車輪14に加わる負荷が増大することに伴って、走行時の騒音も増大される。こうしたスタッカクレーン13は、屋内に設置されるため、騒音が大きくなると、音が反響して作業者の不快感が増すことになる。上述した補助レール23は、そうしたスタッカクレーン13用として好適に使用することができ、その結果作業者の作業環境を大きく改善することができる。
【0032】
(6) 基材24には、上壁部24a及び側壁部24bが具備され、同側壁部24bが本体レール22に締結部材26で固定されるように構成されている。例えば、基材24の上壁部24aを締結部材26にて固定する場合、基材24の上面に締結部材26が突出するため、そうした締結部材26が車輪14に干渉するおそれがある。従って、走行部25aの厚さをより厚く形成して、突出した締結部材26と車輪14との干渉を防止するといった対策が必要となる。これに対して、本実施形態の補助レール23では、側壁部24bに締結部材26が設けられているため、締結部材26は車輪14に干渉しない。従って、走行部25aの厚さをより薄く形成することも可能である。よって、例えば基材24に樹脂材料をスプレー等によって塗布するといった樹脂ライニングの技術により、走行部25aを容易に形成することも可能である。
【0033】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・ 前記走行部25aを複数層から構成してもよい。例えば図3(a)に示すように被覆材25を二層構造にすることで、走行部25aを複数層から構成することもできる。この場合、例えば被覆材25における上層は、耐摩耗性、緩衝性等を十分に発揮する樹脂材料から構成するとともに、下層は耐荷重性、耐久性等を十分に発揮する樹脂材料から構成することにより、走行部25aの性能を高めることができる。
【0034】
・ 図3(a)に示すように、被覆材25において、基材24の側壁部24bから突出する突出部25bを一体に形成してもよい。こうした突出部25bは、図3(a)に二点鎖線で示されるサイドローラ15が走行する部位として有効である。なお、こうしたサイドローラ15は、台車13aに回動可能に軸支され、レール21の長さ方向へ沿った台車13aの走行を案内する。
【0035】
・ 図3(b)に示すように、上壁部24aの幅方向における中央部分のみに被覆材25を設けることで、走行部25aを構成することもできる。このように、走行部25aの幅は、車輪14の外周部の幅よりも狭く設定することもできる。
【0036】
・ 図3(b)に示すように被覆材25の幅を、上壁部24aに近づくにしたがって広がるように形成することで、被覆材25の両側面をテーパ面25cとしてもよい。この場合、被覆材25の両側端部と上壁部24aとの界面における応力集中が緩和され、被覆材25の両側端部が、上壁部24aから剥離するという不具合を抑制することができる。
【0037】
・ 図4(a)に示すように、被覆材25を上壁部24aの幅方向において分割することで、走行部25aを複数から構成してもよい。
・ 図4(a)に示すように、上壁部24aに突条部31を形成し、その突条部31を包囲して被覆材25を設けてもよい。この場合、上壁部24aと被覆材25との接着面積をより広くすることができるため、上壁部24aに対する被覆材25の接着強度を高めることが容易である。
【0038】
・ 被覆材25を形成する樹脂材料として、接着性を有する樹脂材料を使用することで、図2(b)に示される接着層27を省略することもできる。
・ 上壁部24aの上面に加えて、上壁部24aの下面を被覆材25で被覆してもよい。また、基材24の全体を被覆材25で被覆してもよい。この場合、補助レール23を本体レール22に取着するに際して、基材24は本体レール22に当接されずに、本体レール22と基材24との間には、被覆材25が配置される。
【0039】
・ 前記基材24の側壁部24bは、上壁部24aの全長にわたって設けられているが、側壁部24bを上壁部24aの長さ方向において部分的に設けてもよい。例えば、上壁部24aの長さ方向において、締結部材26によって固定する部位のみに側壁部24bを設けることもできる。
【0040】
・ 基材24の側壁部24bを省略して、上壁部24aの両側端部を締結部材26によって本体レール22に固定するように構成することもできる。
・ 樹脂材料から形成した長尺状の板材を補助レール23として構成することで、基材24を省略することもできる。
【0041】
・ 図4(b)に示すように、補助レール23の長さ方向の端部に凹凸部32を形成し、長さ方向に隣接する補助レール23を凹凸部32の嵌合によって連結されるように構成してもよい。この場合、補助レール23を装着する際に、凹凸部32の嵌合により、補助レール23の位置決めを行うことができる。
【0042】
・ 補助レール23は、スタッカクレーン13以外の搬送用移動体に適用することもできる。例えば、移動台車、無人搬送車等の輸送用移動体に適用することもできる。また例えば、天井付近に架設されたレールを走行する搬送用移動体に適用することもできる。また例えば、立体駐車場において車を搬送する搬送用移動体に適用することもできる。特に、屋内に設置される搬送用移動体では、騒音が大きくなるに伴って、音が反響して作業者の不快感が増すことになるため、屋内用の輸送用移動体に対して補助レール23を適用すれば、屋内における作業環境を大きく改善する。
【0043】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記基材は、前記本体レールの上面を覆う上壁部と、前記本体レールの上部両側面を覆う一対の側壁部とを備え、前記一対の側壁部が前記本体レールに締結部材で固定される補助レール。
【0044】
・ 金属製車輪を有する搬送用移動体が走行するレールのレール構造であって、金属製の本体レールと、該本体レールに着脱可能に取着される補助レールとを備え、該補助レールは、前記金属製車輪の走行する走行部を有してなり、該走行部を樹脂材料から構成したレール構造。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態の自動倉庫を示す概略斜視図。
【図2】(a)は、レールの一部を示す斜視図、(b)は(a)の2b−2b線断面図。
【図3】(a)及び(b)は、補助レールの変形例を示す断面図。
【図4】(a)は、補助レールの変形例を示す断面図、(b)は補助レールの変形例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0046】
11…荷、12…棚、13…輸送用移動体としてのスタッカクレーン、14…車輪、22…本体レール、23…補助レール、24…基材、25a…走行部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送用移動体の有する金属製の車輪を走行させるべく設置される金属製の本体レールに着脱可能に取着される補助レールであって、前記車輪の走行する走行部を有してなり、該走行部を樹脂材料から構成したことを特徴とする補助レール。
【請求項2】
前記走行部は、長尺状の基材の少なくとも一部を前記樹脂材料で被覆することにより構成され、前記基材は前記樹脂材料よりも硬い材料から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の補助レール。
【請求項3】
前記走行部を、エラストマーから構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の補助レール。
【請求項4】
前記搬送用移動体は、棚に荷を搬入するとともに棚から荷を搬出するスタッカクレーンであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の補助レール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−132492(P2009−132492A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309652(P2007−309652)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【Fターム(参考)】