説明

補助人工心臓の異常検出装置、補助人工心臓の異常検出方法、及び異常検出プログラム

【課題】早期に異常状態を検出することのできる、補助人工心臓の異常検出装置、補助人工心臓の異常検出方法、及び補助人工心臓の異常検出プログラムを提供する。
【解決手段】ユーザの体内に埋め込まれた補助人工心臓の運転状態を示す情報をユーザ情報として取得し、前記ユーザ情報を取得時刻と対応付けて履歴情報格納手段に格納する、ユーザ情報取得手段と、前記履歴情報格納手段を参照し、現在までの前記ユーザ情報の履歴に基づいて、異常状態であるか否かを判定する、異常判定手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助人工心臓の異常検出装置、補助人工心臓の異常検出方法、及び補助人工心臓の異常検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療機器の高度化が進んでいる。医療機器の高度化により、医療機器の小型化も進んでいる。補助人工心臓も小型化が進み、ユーザの体内に埋め込むことができるようになっている。補助人工心臓は、体内に埋め込まれることにより、患者に携帯される。
【0003】
患者によって携帯される補助人工心臓には、アラーム装置が欠かせない。アラーム装置は、通常、患者の生体情報や、装置自体の運転状態を示す情報を取得するように構成されている。アラーム装置は、生体情報や運転状態に異常が検出された場合に、ブザーやランプにより、アラームを患者に報知する。アラームが報知された場合、患者は、医師などに連絡する。連絡を受けた医師などは、患者の元へと向かい、適切な処置を行う。
【0004】
アラーム装置を有する医療機器に関する技術が、特許文献1(特開2004−211579)に記載されている。特許文献1には、血液などの医療用液体を送液するための液体ポンプ装置に関して、ポンプのハウジング内に液体が充填されているかどうかを判断する機能を備えることを課題とした技術が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−211579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
異常状態を早期に検出することができれば、異常状態に対する対処を早期に実行できる。その結果、患者に対する影響を低減できる。
【0007】
従って、本発明の目的は、早期に異常状態を検出することのできる、補助人工心臓の異常検出装置、補助人工心臓の異常検出方法、及び補助人工心臓の異常検出プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、発明を実施するための最良の形態で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための最良の形態の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
本発明に係る補助人工心臓の異常検出装置は、ユーザ情報として、ユーザの体内に埋め込まれた補助人工心臓(5)の運転状態又は補助人工心臓(5)により測定されたユーザの生体状態を、取得し、そのユーザ情報を取得時刻と対応付けて履歴情報格納手段(12)に格納する、ユーザ情報取得手段(11)と、履歴情報格納手段(12)を参照し、現在までのユーザ情報の履歴に基づいて、異常状態であるか否かを判定する、異常判定手段(13)とを具備する。
【0010】
本発明によれば、ユーザ情報の過去履歴に基づいて、異常状態の判定が行われる。過去履歴を参照することにより、現在の情報だけを用いた場合よりも、早期に異常状態の検出を行うことができる。
【0011】
上記の補助人工心臓の異常検出装置は、更に、異常判定手段(13)が異常状態であると判定したときに、遠隔地に設けられた連絡先装置(4)に対して、異常状態の発生を示すアラーム信号を無線により送信する、無線通信手段(14、15)を具備することが好ましい。この本発明によれば、異常状態が検出されたときに、その旨が自動的に連絡先装置(4)に通知される。ユーザが自身で連絡する必要がなくなり、異常状態に対する処置を早期に行うことが可能となる。また、ユーザ(3)が重篤な状況に陥り自力で連絡することができない場合でも、自動的に連絡が行われる。
【0012】
上記の補助人工心臓の異常検出装置は、更に、現在位置を所在地情報として取得する所在地情報取得手段(16)を具備し、無線通信手段(14、15)は、アラーム信号として、所在地情報を含む信号を送信することが好ましい。
【0013】
ユーザ情報取得手段(11)、履歴情報格納手段(12)、及び異常判定手段(13)は、補助人工心臓(5)と有線により接続されたコントローラ装置(1)に搭載されており、無線通信手段(14、15)は、コントローラ装置(1)に搭載された第1無線通信手段(14)と、携帯端末(2)に搭載された第2無線通信手段(15)とを備え、第1無線通信手段(14)は、第2無線通信手段(15)を介して、アラーム信号を連絡先装置(4)に送信することが好ましい。
【0014】
上記の補助人工心臓の異常検出装置は、更に、異常判定手段(13)が異常状態であると判定したときに、応急処置の内容を示す応急処置情報を生成し、応急処置情報を前記ユーザの周囲に報知する、応急処置報知手段(17)を具備することが好ましい。
【0015】
応急処置報知手段(17)は、音声を出力する音声出力手段(18−1)によって、応急処置情報を報知し、音声出力手段(18−1)は、携帯端末(2)及びコントローラ装置(1)の少なくとも一方に備えられていることが好ましい。
【0016】
異常判定手段(13)は、異常状態であると判定した場合に、異常状態の種類を識別し、無線通信手段(14、15)は、アラーム信号として、異常状態の種類を含む信号を送信することが好ましい。
【0017】
無線通信手段(14、15)は、異常状態の種類に基づいて、複数の連絡先装置の候補の中から連絡先装置(4)を選択し、選択された連絡先装置(4)にアラーム信号を送信することが好ましい。
【0018】
異常判定手段(13)は、異常状態であると判定した場合に、異常状態のアラームレベルを決定し、そのアラームレベルに基づいて、アラームの通知先が決定されることが好ましい。
【0019】
補助人工心臓(5)は、電力によって、回転数が所望の回転数となるように制御される液体ポンプを含んでいる場合、ユーザ情報取得手段(11)は、ユーザ情報として、前記液体ポンプの消費電力を取得し、異常判定手段(13)は、液体ポンプの消費電力の履歴に基づいて、血液の流路に異常が発生していないかを判定することが好ましい。
【0020】
本発明に係る補助人工心臓システムは、上記の補助人工心臓の異常検出装置と、ユーザの体内に埋め込まれ、前記補助人工心臓の異常検出装置によって異常が検出される、補助人工心臓(5)とを具備する。
【0021】
本発明にかかる補助人工心臓の異常検出方法は、ユーザの体内に埋め込まれた補助人工心臓の運転状態を示す運転情報をユーザ情報として取得し、前記ユーザ情報を取得時刻と対応付けて記憶するステップと、履歴情報格納手段を参照し、現在までの前記ユーザ情報の履歴に基づいて、異常状態であるか否かを判定するステップとを具備する。
【0022】
本発明に係る補助人工心臓の異常検出プログラムは、上記の補助人工心臓の異常検出方法を、コンピュータにより実現するためのプログラムである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、早期に異常状態を検出することのできる、補助人工心臓の異常検出装置、補助人工心臓の異常検出方法、及び補助人工心臓の異常検出プログラムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る補助人工心臓システム7を示す概略構成図である。補助人工心臓システム7は、補助人工心臓5と、異常検出装置10とを備えている。
【0025】
補助人工心臓5は、ユーザ3(患者)の体内に埋め込まれている。補助人工心臓5は、液体ポンプを備えている。その液体ポンプは、ユーザ3の血液を吸い込んで送出する。液体ポンプは、電力によって動作する。また、補助人工心臓5は、自身の運転状態を、運転情報として異常検出装置10に通知する。その運転状態としては、例えば、液体ポンプに供給される電圧値、電流値、消費電力、液体ポンプの回転数、及び血流量が挙げられる。
【0026】
また、補助人工心臓5には、センサが搭載されている。このセンサは、ユーザ3の生体状態を測定する。測定された生体状態も、生体情報として、異常検出装置10に通知される。その生体状態としては、例えば、血圧、血糖値、血中酸素量、心拍数、及び体温が挙げられる。
【0027】
異常検出装置10は、補助人工心臓5の運転状態又はユーザ3の生体状態に異常があるか否かを検出する。異常検出装置10は、異常状態であった場合には、遠隔地に設けられた連絡先装置4に対して、アラーム信号を送信する。異常検出装置10は、外付けコントローラ装置1と、携帯端末2とを備えている。異常検出装置10は、ユーザ3により、携帯される。
【0028】
外付けコントローラ装置1は、有線により、補助人工心臓5に接続されている。外付けコントローラ装置1は、補助人工心臓5の動作の制御、及び異常状態の検出を行う。外付けコントローラ装置1は、電力供給部19と、制御部20と、センサ21と、異常検出部分6と、履歴情報格納部12と、出力装置18とを備えている。このうち、制御部20及び異常検出部分6は、ROM(Read Only memory)などに格納されたプログラムにより実現される。特に、異常検出部分6は、異常検出プログラムにより、実現される。
【0029】
電力供給部19は、バッテリに例示され、補助人工心臓5及び外付けコントローラ装置1に対して電力を供給する。
【0030】
制御部20は、補助人工心臓5の動作を制御する。
【0031】
センサ21は、外付けコントローラ装置1の運転状態を測定する。外付けコントローラ装置1の運転状態も、補助人工心臓5の運転状態を示していると言える。従って、センサ21は、測定結果を、運転情報として、異常検出部分6に通知する。センサ21により通知される運転情報としては、例えば、外付けコントローラ装置1における電圧値、外付けコントローラ装置1における電流値、外付けコントローラ装置1に内蔵される基板の温度、外付けコントローラ装置1の連続運転時間、電力供給部19におけるバッテリ残量、及びウォッチドッグタイマー状況が挙げられる。
【0032】
履歴情報格納部12は、フラッシュメモリなどの記憶装置により実現される。履歴情報格納部12は、運転情報及び生体情報を、ユーザ情報として格納する。ユーザ情報は、時刻と対応付けられて格納されている。すなわち、履歴情報格納部12は、ユーザ情報の履歴を記憶している。
【0033】
出力装置18は、音声出力装置18−1(例えばスピーカ)を備えており、音声によってユーザ3の周囲の人間に緊急状態に陥っていることを報知する機能を実現する。
【0034】
異常検出部分6は、異常状態の検出を行う。異常検出部分6は、ユーザ情報取得部11と、異常状態判定部13と、第1無線通信部14と、応急処置報知部17とを備えている。
【0035】
携帯端末2は、第2無線通信部15と、所在地情報取得部16と、出力装置22とを備えている。このうち、第2無線通信部15及び所在地情報取得部16は、ROM(Read Only memory)などに格納された異常検出プログラムにより実現される。出力装置22は、例えば、ブザー、ランプ、バイブレーション機構、及びディスプレイなどを含んでいる。
【0036】
続いて、上述の補助人工心臓システム7の動作について説明する。図2は、補助人工心臓システム7の動作を示すフローチャートである。
【0037】
ステップS10;ユーザ情報の取得
ユーザ情報取得部11は、所定の時間間隔で、運転情報と、生体情報とを取得する。また、運転状態(液体ポンプの回転数)等の設定が変更されたときや、異常状態が検出されたときにも、その旨がユーザ情報取得部11によって取得される。ユーザ情報取得部11は、取得した情報を時刻と対応付け、ユーザ情報として履歴情報格納部12に格納する。
【0038】
ユーザ情報取得部11によって、履歴情報格納部12には、ユーザ情報の現在までの履歴が格納される。図3は、履歴情報格納部12に格納されたデータの一例を示す概念図である。図3に示されるように、ユーザ情報は、生体情報及び運転情報を含んでいる。図3に示される例では、生体情報に、血圧と血糖値とが含まれている。また、運転情報は、液体ポンプ電圧、液体ポンプ電流、液体ポンプ消費電力、外付けコントローラ装置1における基板温度、及びバッテリ残量を含んでいる。ユーザ情報は、時刻tと対応付けられて格納されている。
【0039】
ステップS20;異常状態の判定
異常状態判定部13は、履歴情報格納部12を参照し、ユーザ情報の履歴に基づいて、異常状態であるか否かの判定を行う。例えば、異常状態判定部13は、ユーザ情報に含まれる各情報について、現在の情報と、1ヶ月前の情報と、1週間前の情報と、3日前の情報とを取得する。そして、現在までの履歴パターンを求め、予めRAM(Random access memory)などに設定された異常基準値と比較する。異常状態判定部13は、現在のユーザ情報が異常基準値を超えている場合や、ユーザ情報が将来、異常基準値を超えそうである場合に、異常状態であると判定する。
ユーザ情報が異常基準値が越えそうである場合としては、例えば、ユーザ情報が緩やかながら長期にわたってその異常基準値へ向かって動いている状態である場合や、ユーザ情報が急激に変化しており近いうちに異常基準値を超えそうな状態である場合、などが考えられる。
異常基準値は、一定値であってもよいが、過去の運転状態などに基づいて変動する動的な値であってもよい。例えば、詳細は後述するが、補助人工心臓5の液体ポンプの消費電力は、回転数が一定であれば、ユーザの血液流路の状態を反映していることがある。このような場合、消費電力に関する異常基準値を、現在までの消費電力の最大値に設定してもよい。このようにすれば、異常基準値が動的な値に設定される。
また、ユーザ情報の履歴に基づいて異常状態であるか否かを判定する場合には、ユーザ情報の変動がどの程度の時間スケールで発生しているかが重要である。例えば、消費電力が一瞬でステップ状に上昇した傾向を示した場合、補助人工心臓5の上流側で血液の流路に血栓が生じている可能性がある。一方、消費電力が数日をかけて徐々に上昇する場合には、ユーザ3の体内におけるどこかで血栓が形成されつつあり、流路の狭窄が起きている可能性がある。また、数十分から数時間程度で消費電力が上昇した場合には、脱水症状気味で血液の粘度が上がっている可能性がある。従って、ユーザ情報がどのように変動しているかを識別することにより、異常状態の種類を識別することが可能である。
また、将来に異常基準値を超えるか否かの判定を行うにあたり、ユーザ情報の履歴の一次近似を用いることが考えられる。この際、一次近似を求めるにあたって用いられるユーザ情報の値の数が多いほど、一次近似の信頼性が増す。一次近似を用いる場合の例を以下に示す。
(1)過去3分間のユーザ情報を用いて一次近似を求め、今後一分以内で異常基準値を突破する場合に異常状態であると判定する。
(2)過去一日分のユーザ情報を用いて一次近似を求め、今後八時間以内で異常基準値を突破する場合に異常状態であると判定する。
(3)過去一週間分のユーザ情報を用いて一次近似を求め、今後三日以内で異常基準値を突破する場合に異常状態であると判定する。
【0040】
上述のように、ユーザ情報の履歴に基づいて異常状態の判定を行うことにより、現在のユーザ情報だけを利用する場合よりも、早期に異常状態を検出できる。また、将来異常基準値を超えるか否か予想して異常状態であるか否かを判定することにより、異常基準値を超える数日前などに異常状態を検出することが可能となり、投薬や手術などの対応の選択肢を広げることが可能となる。
【0041】
ステップS30;種類の識別
また、異常状態判定部13は、異常状態であると判定した場合に、さらに、その異常状態の種類を識別する。具体的には、例えば、ユーザ情報のうちのバッテリ残量に異常が認められた場合であれば、異常状態の種類が装置の異常であるものと識別する。異常状態判定部13は、異常状態である旨と、異常状態の種類とを、判定結果として出力する。なお、異常状態の種類の識別を行うには、予め、ユーザ情報に含まれる各情報と異常状態の種類との対応関係を示すテーブルが用意されていればよい。
【0042】
ステップS40;連絡先装置の選択
異常状態判定部13による判定結果は、第1無線通信部14に通知される。第1無線通信部14は、異常状態の種類に基づいて、予め設定された複数の連絡先装置の候補の中から、適切な連絡先装置4を選択する。選択される連絡先装置4は、複数であってもよい。例えば、第1無線通信部14は、異常状態の種類が装置の異常であった場合に、連絡先装置4として、補助人工心臓システムの技術者により操作される装置を選択する。また、異常状態の種類がユーザの生体状態の異常であった場合には、連絡先装置4として、医者や看護師などにより操作される装置を選択する。このようにして連絡先装置を選択するためには、予め、異常状態の種類と選択される連絡先装置との対応関係が設定されていればよい。
【0043】
ステップS50;携帯端末に送信
その後、第1無線通信部14は、異常信号を生成し、携帯端末2に無線で送信する。その異常信号には、異常状態の種類、及び、選択された連絡先装置4を特定する情報が含まれる。
【0044】
ステップS60;所在地情報の取得
携帯端末2では、第2無線通信部15が、図示しないアンテナを介して異常信号を受信する。第2無線通信部15が異常信号を受信すると、所在地情報取得部16が、例えばGPS機能を利用して、現在位置を所在地情報として取得する。第2無線通信部15は、所在地情報取得部16から所在地情報を取得する。
【0045】
ステップS70;連絡先装置へ送信
第2無線通信部15は、異常信号に所在地情報を付加し、アラーム信号として、選択された連絡先装置4へ送信する。アラーム信号は、図示しないアンテナを介して、無線により、送信される。
【0046】
連絡先装置4は、例えばコンピュータや、携帯電話端末により実現される。連絡先装置4は、アラーム信号を受信すると、アラーム信号に含まれる情報(異常状態の種類、所在地情報、など)を、ディスプレイなどの出力装置に出力する。連絡先装置4の操作者は、ユーザ3の補助人工心臓システム7の状態が異常であることと、ユーザ3の所在地とを認識でき、ユーザ3の元へ向かい適切な処置を行うことができる。
【0047】
ステップS80;応急処置情報の生成
一方、ステップS30の後には、異常状態判定部13の判定結果が、応急処置報知部17にも通知される。応急処置報知部17は、異常状態の種類に基づいて、応急処置の内容を示す応急処置情報を生成する。医者や看護師などにより操作される装置を選択する。例えば、応急処置報知部17は、異常状態の種類がユーザ3の生体状態であった場合に、「頭を高くして寝かせてください」等のメッセージを、応急処置情報として生成する。
【0048】
ステップS90;報知(外付けコントローラ装置)
応急処置報知部17は、生成した応急処置情報を、出力装置18により出力する。出力装置18では、音声出力装置18−1により、応急処置情報がユーザ3の周囲に報知される。これによって、ユーザ3の周囲に人間が存在していれば、周囲の人間が、ユーザ3が異常状態であることを識別することができる。そして、応急処置情報に従って、ユーザ3に対する応急処置を施すことができる。なお、出力装置18は、音声出力装置18−1に限らず、ブザー、ランプ、及びディスプレイなどの他の出力装置を備えていてもよく、これらの他の出力装置によって応急処置情報が周囲に報知されてもよい。
【0049】
ステップS100;報知(携帯端末)
また、携帯端末2では、ステップS50において第2無線通信部15が異常信号を受信すると、出力装置22によって、ユーザ3が異常状態であることが周囲に報知される。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、異常状態判定部13が、ユーザ情報の履歴に基づいて、異常状態の検出を行う。これにより、現在の情報だけを利用する場合よりも、早期に異常状態を検出できる。
【0051】
また、本実施形態によれば、アラーム信号が自動的に連絡先装置4へ送信される。例えば、アラームがユーザ3自身に報知され、ユーザ3が医者などに連絡する場合について考える。このような場合には、異常状態が検出されてから連絡が行われるまでに時間がかかることがある。また、騒音などの周囲環境及びユーザの状況(睡眠中)等により、ユーザ3がアラームに気づかない場合もある。さらには、ユーザ3が重篤な状況に陥った場合には、自力で連絡できないこともある。これに対して、本実施形態によれば、自動的にアラーム信号の送信が行われるため、早期に且つ確実に、連絡が行われる。
【0052】
また、本実施形態によれば、異常状態の種類に応じて連絡先装置4が選択され、選択された連絡先装置4に対してアラーム信号が送信される。例えば、異常状態の種類が装置の異常であった場合、異常状態であることを医者や看護師などに連絡しても、適切な処置を行うことができないことがある。これに対して、本実施形態によれば、異常状態であることを適切な連絡先に連絡することができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、応急処置報知部17により応急処置情報が生成され、出力される。これにより、ユーザ3や周囲の人間は、どのような応急処置を施すべきかを知ることができ、ユーザ3に対して早期に適切な処置を施すことができる。
【0054】
尚、本実施形態では、異常検出装置10が、外付けコントローラ装置1と携帯端末2とを含んでいる場合について説明した。しかし、異常検出装置10は、必ずしも外付けコントローラ装置1と携帯端末2とに分かれている必要はない。例えば、本実施形態で説明した携帯端末2の機能が外付けコントローラ装置1に内蔵されていてもよい。また、外付けコントローラ装置1に含まれる応急処置報知部17や音声出力装置18−1などの構成が、携帯端末2側に内蔵されていてもよい。
【0055】
また、上述の実施形態では、ステップS30において、異常状態の種類が識別され、その識別結果に基づいて連絡先装置が選択される(ステップS40)場合について説明した。ここで、ステップS30において、異常状態判定部13が、更に、異常状態の重篤度を識別して、アラームレベルを決定してもよい。そして、決定されたアラームレベルに基づいて、どこへ連絡が行われるかが決定されてもよい。例えば、バッテリ残量が2時間をきったときには、ステップS80、S90及びステップS100などの動作が実行され、使用者(ユーザ3)に対してのみアラームが報知される。バッテリ残量が1時間をきったときには、ステップS40において、連絡先装置4として補助人工心臓システムの技術者により操作される装置が選択され、その技術者に対してアラームが報知される。バッテリ残量が30分をきったときには、ステップS40において、連絡先装置として医師により操作される装置が選択され、医師に対してアラームが報知される。このように、アラームレベルに応じて連絡先が決定されることにより、より適切にアラームを通知することが可能となる。
【0056】
続いて、ユーザ情報について詳述する。
【0057】
本実施形態では、ユーザ情報として、生体情報及び運転情報の双方が用いられる場合について説明した。但し、ユーザ情報として、必ずしも、生体情報及び運転情報の両方が用いられる必要はなく、どちらか一方を用いていれば、本実施形態による作用効果を享受することは可能である。
【0058】
また、運転情報は、ユーザ3の生体状態を反映していることがある。従って、運転情報の履歴に基づいて、ユーザ3の生体状態に関して異常があるか否かを判定することも可能である。
【0059】
例えば、補助人工心臓5の液体ポンプの回転数が、制御部20により、所望の回転数に制御されている場合について考える。このような場合、液体ポンプの消費電力は、流路の状態を反映している。たとえば、ユーザ3の体内に血栓が生じた場合には、液体ポンプの回転数を所望の回転数に維持するために、液体ポンプにおける消費電力が大きくなる。
【0060】
このような点を利用し、消費電力の履歴に基づいて、血液の流路に異常が発生していないかを、判定するが可能である。すなわち、ユーザ情報取得部11が、ユーザ情報として液体ポンプの消費電力を取得する。異常状態判定部13が、消費電力の履歴に基づいて、流路に異常が発生していないかを判定する。血栓に関する異常状態の判定を行う。異常状態であると判定した場合、異常状態判定部13は、異常状態の種類として、「血栓」又は「生体状態」を出力する。これにより、連絡先装置4に対して、異常の種類をより具体的に通知することが可能となる。また、応急処置情報として、より適切な内容を報知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】異常検出装置を示す概略構成図である。
【図2】異常検出方法を示すフローチャートである。
【図3】ユーザ情報を示す概念図である。
【符号の説明】
【0062】
1 外付けコントローラ装置
2 携帯端末
3 ユーザ
4 連絡先装置
5 補助人工心臓
6 異常検出部分
7 補助人工心臓システム
10 異常検出装置
11 ユーザ情報取得部
12 履歴情報格納部
13 異常状態判定部
14 第1無線通信部
15 第2無線通信部
16 所在地情報取得部
17 応急処置報知部
18 出力装置
18−1 音声出力装置
19 電力供給部
20 制御部
21 センサ
22 出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの体内に埋め込まれた補助人工心臓の運転状態又は前記補助人工心臓により測定された前記ユーザの生体状態を、ユーザ情報として取得し、前記ユーザ情報を取得時刻と対応付けて履歴情報格納手段に格納する、ユーザ情報取得手段と、
前記履歴情報格納手段を参照し、現在までの前記ユーザ情報の履歴に基づいて、異常状態であるか否かを判定する、異常判定手段と、
を具備する
補助人工心臓の異常検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載された補助人工心臓の異常検出装置であって、
更に、
前記異常判定手段が異常状態であると判定したときに、遠隔地に設けられた連絡先装置に対して、異常状態の発生を示すアラーム信号を無線により送信する、無線通信手段、
を具備する
補助人工心臓の異常検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載された補助人工心臓の異常検出装置であって、
更に、
現在位置を所在地情報として取得する所在地情報取得手段、
を具備し、
前記無線通信手段は、前記アラーム信号として、前記所在地情報を含む信号を送信する
補助人工心臓の異常検出装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載された補助人工心臓の異常検出装置であって、
前記ユーザ情報取得手段、前記履歴情報格納手段、及び前記異常判定手段は、前記補助人工心臓と有線により接続されたコントローラ装置に搭載されており、
前記無線通信手段は、前記コントローラ装置に搭載された第1無線通信手段と、携帯端末に搭載された第2無線通信手段とを備え、
前記第1無線通信手段は、前記第2無線通信手段を介して、前記アラーム信号を前記連絡先装置に送信する
補助人工心臓の異常検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載された補助人工心臓の異常検出装置であって、
更に、
前記異常判定手段が異常状態であると判定したときに、応急処置の内容を示す応急処置情報を生成し、前記応急処置情報を前記ユーザの周囲に報知する、応急処置報知手段、
を具備する
補助人工心臓の異常検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載された補助人工心臓の異常検出装置であって、
更に、
前記応急処置報知手段は、音声を出力する音声出力手段によって、前記応急処置情報を報知し、
前記音声出力手段は、前記携帯端末及び前記コントローラ装置の少なくとも一方に備えられている
補助人工心臓の異常検出装置。
【請求項7】
請求項2乃至6のいずれかに記載された補助人工心臓の異常検出装置であって、
前記異常判定手段は、異常状態であると判定した場合に、異常状態の種類を識別し、
前記無線通信手段は、前記アラーム信号として、前記異常状態の種類を含む信号を送信する
補助人工心臓の異常検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載された補助人工心臓の異常検出装置であって、
前記無線通信手段は、前記異常状態の種類に基づいて、複数の連絡先装置の候補の中から前記連絡先装置を選択し、選択された前記連絡先装置に前記アラーム信号を送信する
補助人工心臓の異常検出装置。
【請求項9】
請求項2乃至8のいずれかに記載された補助人工心臓の異常検出装置であって、
前記異常判定手段は、異常状態であると判定した場合に、異常状態のアラームレベルを決定し、前記アラームレベルに基づいて、アラームの通知先が決定される
補助人工心臓の異常検出装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載された補助人工心臓の異常検出装置であって、
前記補助人工心臓は、電力によって、回転数が所望の回転数となるように制御される液体ポンプを含んでおり、
前記ユーザ情報取得手段は、前記ユーザ情報として、前記液体ポンプの消費電力を取得し、
前記異常判定手段は、前記液体ポンプの消費電力の履歴に基づいて、流路に異常が発生していないかを判定する
補助人工心臓の異常検出装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載された補助人工心臓の異常検出装置と、
前記ユーザの体内に埋め込まれ、前記補助人工心臓の異常検出装置によって異常が検出される、補助人工心臓と、
を具備する
補助人工心臓システム。
【請求項12】
ユーザの体内に埋め込まれた補助人工心臓の運転状態を示す運転情報をユーザ情報として取得し、前記ユーザ情報を取得時刻と対応付けて記憶するステップと、
前記履歴情報格納手段を参照し、現在までの前記ユーザ情報の履歴に基づいて、異常状態であるか否かを判定するステップと、
を具備する
補助人工心臓の異常検出方法。
【請求項13】
請求項12に記載された補助人工心臓の異常検出方法を、コンピュータにより実現するための、補助人工心臓の異常検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−104694(P2010−104694A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281803(P2008−281803)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人科学技術振興機構 革新技術開発研究事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】