説明

補助装置

【課題】スタンドの自立姿勢の安定化を図ることができる補助装置を提供すること。
【解決手段】スタンド10は、三本のスタンド脚部11を備えており、スタンド脚部11に補助装置15が取り付けられる。補助装置15は、スタンド脚部11に着脱自在に設けられた装着部16と、この装着部16に連設された一対の補助脚17,17とを備えている。補助装置15は、装着部16を介してスタンド脚部11に取り付けたときに、平面視で各補助脚17,17の間にスタンド脚部11が位置するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助装置に係り、更に詳しくは、スタンドを安定して自立させることができる補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、打楽器等を所定の高さ位置にセットするため、打楽器を保持する支持体の下部に複数本の脚部を備えたスタンドが利用されている。このようなスタンドでは、脚部の本数を四〜五本としたタイプのものがあるが、セットする床面がフラットでない場合、ぐらついたり不安定な自立姿勢になり易くなる、という問題を生じる。これは、三本の脚部が床面に乗るものの、それ以外の脚部が床面から離れることとなり、一部の脚部が床面に触れたり離れたりすることに起因する。また、打楽器にあっては、演奏時に複数並べて配置するものの設置スペースが狭く、隣り合うスタンドの脚部同士が重なるようになる等の制約を受ける場合が多い。従って、脚部の本数をできるだけ少なくしつつ自立姿勢の安定を図るべく、脚部を三本とする、いわゆる三脚タイプのスタンドを利用する傾向がある。
【0003】
また、スタンドにあっては、打楽器を打撃する演奏操作等により転倒する方向のモーメントが付与される場合があり、この点においても自立姿勢の安定化が望まれる。そこで、特許文献1の第2A図に開示されているように、三本の脚部にそれぞれ副脚を設けた構成が知られている。
【特許文献1】実開昭55−24558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の第2A図の構成では、各脚部にそれぞれ単一の副脚を装着したものとなる。つまり、各脚部は、装着された副脚により一方向だけから支持されるので、副脚による脚部の支持が不十分となり易くなる、という不都合がある。特に、打楽器の演奏のように複数の方向から転倒モーメントが生じる場合、これに応じて脚部を支持する力が発揮され難くなる、という不都合を招来する。
【0005】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、スタンドの自立姿勢の安定化を図ることができ、スタンドが不用意に転倒することを防止することができる補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、三本のスタンド脚部を有するスタンドの自立姿勢を安定させるための補助装置であって、
前記スタンド脚部に着脱自在に設けられた装着部と、この装着部に連設された一対の補助脚とを備え、前記装着部を介してスタンド脚部に取り付けたときに、平面視で各補助脚の間に前記スタンド脚部が位置するように設けられる、という構成が採用されている。
【0007】
本発明において、前記各補助脚は、平面視したときに、それらの間のなす角度が90°〜150°となる向きに設定されているとともに、各補助脚の略中央に装着部を取り付けたスタンド脚部が延びる、という構成が好ましくは採用される。
【0008】
また、前記各補助脚は、平面視したときに、補助装置が非装着の何れかのスタンド脚部に略平行となる向きに設定される、という構成を採ることが好ましい。
【0009】
更に、前記各補助脚は、平面視したときに、装着部を取り付けたスタンド脚部の接地点と、それ以外のスタンド脚部の接地点とを結ぶ仮想線に交差する位置に設けられる、という構成も採ることができる。
【0010】
また、前記各補助脚は、平面視したときに、それら補助脚の接地点を結ぶ仮想線が装着部を取り付けたスタンド脚部に交差しない位置に設けられる、という構成も好ましくは採用される。
【0011】
更に、前記装着部は、スタンド脚部に取り付けた状態で当該スタンド脚部の延出方向にスライド可能に設けられる、という構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各補助脚により、装着部が取り付けられたスタンド脚部を挟む二方向から支持する力を発揮することができ、スタンド脚部をバランス良くサポートしてスタンドの自立安定性を高めることが可能となる。また、スタンドを設置した後、装着部を介してスタンド脚部に後付け可能となるので、TPOに応じた補助装置のセットを容易に行うことができる。
【0013】
また、各補助脚の平面視の向きを前述したように設定した場合、補助装置が非装着の二本のスタンド脚部と略平行な転倒モーメント、すなわち、スタンドが倒れ易い方向の転倒モーメントに対する支持力をより良く発揮することができる。これにより、打楽器の演奏時に多様な方向から転倒モーメントが発生した場合でも、これに応じた支持力を補助脚から付与し易くなり、スタンドの転倒をより良く回避することが可能となる。
【0014】
更に、平面視でのスタンド脚部に対する各補助脚の相対位置を前述のように設定した場合、各補助脚を介してスタンド脚部をより一層安定的にサポートすることができる。
【0015】
また、スタンド脚部の延出方向に装着部をスライド可能とした場合、装着部の取り付け位置を容易に調整することができる。これにより、スタンド脚部の高さや角度を変更しても、これに応じて装着部をスライドすることにより、各補助脚が床面等に乗るように簡単にセットすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1には、実施形態に係る補助装置が適用されたスタンドの概略斜視図が示されている。また、図2には、図1のA−A線に沿う断面図が示され、図3には、図2の右側面図が示されている。これらの図において、スタンド10は、三本のスタンド脚部11と、これらスタンド脚部11の基部から上下方向に延びる支持軸12と、この支持軸12の上部に設けられて打楽器Dを保持する保持体13とを備えて構成されている。
【0018】
前記スタンド脚部11は、支持軸12に沿ってスライド可能なヒンジ構造を介して連結され、支持軸12に対して折り畳み可能となっている。各スタンド脚部11は、二枚の板部材を重ね合わせるように設けられ、その先端側領域11Aには、前記板部材間に隙間を形成するように折り曲げた形状となっている。また、図2に示されるように、スタンド脚部11は、平面視したときに支持軸12から放射状に延び、当該支持軸12の周方向120°間隔毎に設けられている。ここで、何れか一本のスタンド脚部11(図2中手前側のスタンド脚部、符号11aで示す)の先端側領域11Aには、補助装置15が取り付けられている。
【0019】
前記補助装置15は、スタンド脚部11に着脱自在に設けられた装着部16と、この装着部16に連設された一対の補助脚17とを備えて構成されている。
【0020】
前記装着部16は、図4(A)及び(B)に示されるように、スタンド脚部11を挟み込み可能な第1及び第2の挟持部材19,20と、この第1及び第2の挟持部材19,20の挟持力を調整可能な調整部材21とを備えている。
【0021】
前記第1の挟持部材19は、断面視コ字状に設けられて前記先端側領域11Aを上方からカバー可能に設けられている。第2の挟持部材20は、先端側領域11Aの下部に当接する板状体からなる。調整部材21は、第1及び第2の挟持部材19,20を貫通する二本のボルト24と、当該ボルト24にそれぞれ螺合するナット25と、各ナット25と第1の挟持部材19との間に設けられたばねワッシャ26とからなる。
【0022】
前記各補助脚17は、長片状の部材を折り曲げることにより形成されており、先端にカバー28が設けられている。各補助脚17は、前記第1の挟持部材19の図2中左右両側に固定され、平面視で各補助脚17の略中央に、装着部16を取り付けたスタンド脚部11aが延びるようになっている。また、本実施形態では、各補助脚17は、平面視したときに、それらの間のなす角度θ1が120°に設定されている。これにより、図2に示されるように、同図中右側の補助脚17は、補助装置15が非装着の左側のスタンド脚部11(同図中符号11b)に略平行となる向きに設定され、左側の補助脚17は、補助装置15が非装着の右側のスタンド脚部11(同図中符号11c)に略平行となる向きに設定されている。なお、前記角度θ1は、図示例より小さくし、90°〜150°の範囲内で変更してもよい。
【0023】
更に、図2に示されるように、各補助脚17は、装着部16を取り付けたスタンド脚部11aの接地点11Pと、それ以外のスタンド脚部11b,11cの接地点11Pとをそれぞれ結ぶ仮想線S1,S2に交差する位置及び長さに設けられている。また、本実施形態では、各補助脚17は、平面視したときに、それらの接地点29を結ぶ仮想線S3が前記スタンド脚部11aに交差しないように設定されている。これにより、補助脚17とスタンド脚部11aの各先端の距離がある程度離れることとなり、各補助脚17及びスタンド脚部11aによってスタンド10の自立姿勢の安定化を図ることができる。
【0024】
以上の構成において、補助装置15をスタンド脚部11に取り付ける場合、スタンド脚部11の先端側領域11Aを第1及び第2の挟持部材19,20により挟み込んだ後、それらにボルト24、ナット25及びばねワッシャ26を装着して締め付ければよい。このとき、ボルト24及びナット25の締め付け力を弱めた状態とすることにより、装着部16をスタンド脚部11の延出方向にスライド移動させることができる。これにより、各補助脚17のカバー28が床面に接触するように前記スライド移動を行った後、ボルト24及びナット25を締め付けることで、各補助脚17の位置調整を容易に行えるようになる。なお、補助装置15をスタンド脚部11から取り外す場合、ボルト24からナット25を外して第1及び第2の挟持部材19,20による挟み込みを解除すればよい。
【0025】
スタンド脚部11aに補助装置15を取り付けた状態において、各補助脚17によりスタンド脚部11aが図2中左右両側からバランス良くサポートされ、スタンド脚部11aの支持姿勢を良好に維持することが可能となる。
【0026】
ここで、図2に示されるように、演奏者Pが打楽器Dを演奏する際、各スタンド脚部11が平面視で前述した方向に延びる関係上、演奏者Pの左右両側におけるスタンド脚部11b,11cの先端から基部に向かう方向、すなわち、同図中矢印M1,M2で示す方向の転倒モーメントが生じたときに、スタンド10が最も転倒し易くなる。ところが、平面視で、前記矢印M1,M2の方向と略平行に各補助脚17が設けられるので、前記転倒モーメントに抗する力をより良く発揮することができ、スタンド10の自立姿勢をより一層安定させることが可能となる。
【0027】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施形態に対し、形状、位置若しくは方向、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0028】
例えば、装着部16は、スタンド脚部11に着脱自在な限りにおいて設計変更可能であり、クリップ等のばねの弾性力を介してスタンド脚部11を挟持したり、第2の挟持部材20にゴム等の弾性体を設けてスタンド脚部11へのグリップ性を高めてもよい。
また、平面視したときに、スタンド脚部11aと前記仮想線S3とが交差する位置に補助脚17の接地点29設けてもよいが、交差しないように設けた方がスタンド10の安定性が良好となり易い。特に、図3に示されるように、スタンド脚部11と支持軸12の側面視での角度θ2を小さくし、同図中二点鎖線で示されるような位置にスタンド脚部11をセット設定した場合、スタンド脚部11aと前記仮想線S3とが交差しない位置すなわち外側にすることがより好ましくなる。
更に、補助脚17は、側面視でスタンド脚部11を上方から覆うにように形成されるアングル状等としてもよく、このとき、補助脚17の接地点29がスタンド脚部11の接地点11Pより外側にすることが好ましい。
また、補助装置15を取り付けるスタンド脚部11は、演奏者Pの反対方向だけでなく種々の変更が可能である。例えば、複数のスタンド脚部11に補助装置15をそれぞれ取り付けたり、スタンド10が支持する打楽器D等の重さのバランスに応じて図2中左右何れかのスタンド脚部11に取り付けてもよい。
更に、スタンド10が支持する対象物は、種々の変更が可能であり、打楽器以外の楽器や譜面、カメラ等としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態に係る補助装置が適用されたスタンドの概略斜視図。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図。
【図3】図2の右側面図。
【図4】(A)は、図3のB部拡大図、(B)は、(A)のC−C線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0030】
10・・・スタンド、11・・・スタンド脚部、15・・・補助装置、16・・・装着部、17・・・補助脚、S1,S2,S3・・・仮想線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三本のスタンド脚部を有するスタンドの自立姿勢を安定させるための補助装置であって、
前記スタンド脚部に着脱自在に設けられた装着部と、この装着部に連設された一対の補助脚とを備え、前記装着部を介してスタンド脚部に取り付けたときに、平面視で各補助脚の間に前記スタンド脚部が位置するように設けられていることを特徴とする補助装置。
【請求項2】
前記各補助脚は、平面視したときに、それらの間のなす角度が90°〜150°となる向きに設定されているとともに、各補助脚の略中央に装着部を取り付けたスタンド脚部が延びることを特徴とする請求項1記載の補助装置。
【請求項3】
前記各補助脚は、平面視したときに、補助装置が非装着の何れかのスタンド脚部に略平行となる向きに設定されていることを特徴とする請求項1記載の補助装置。
【請求項4】
前記各補助脚は、平面視したときに、装着部を取り付けたスタンド脚部の接地点と、それ以外のスタンド脚部の接地点とを結ぶ仮想線に交差する位置に設けられることを特徴とする請求項1,2又は3記載の補助装置。
【請求項5】
前記各補助脚は、平面視したときに、それら補助脚の接地点を結ぶ仮想線が装着部を取り付けたスタンド脚部に交差しない位置に設けられることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の補助装置。
【請求項6】
前記装着部は、スタンド脚部に取り付けた状態で当該スタンド脚部の延出方向にスライド可能に設けられていることを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の補助装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−185174(P2008−185174A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20575(P2007−20575)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(595138753)ヤマハミュージックトレーディング株式会社 (4)
【Fターム(参考)】