補強を施した柱の仕上げ方法、補強を施した柱の仕上げ材の取付構造
【課題】柱の外周の補強パネルを設置し、補強パネル内にグラウトを充填する方法により耐震補強し、耐震補強した柱の仕上げ行う際に、補強を行った柱の径を抑える。
【解決手段】上下方向複数段に亘って、複数の補強パネル10を補強対象の柱1を取り囲むように環状に水平方向に連結し、かつ、上下に位置する補強パネル10を連結し、連結した補強パネル10と柱1の隙間にグラウトを注入することにより補強を施す方法において、補強パネル10に取付部材30を取り付けておき、この取付部材30に仕上げ材50を取り付ける
【解決手段】上下方向複数段に亘って、複数の補強パネル10を補強対象の柱1を取り囲むように環状に水平方向に連結し、かつ、上下に位置する補強パネル10を連結し、連結した補強パネル10と柱1の隙間にグラウトを注入することにより補強を施す方法において、補強パネル10に取付部材30を取り付けておき、この取付部材30に仕上げ材50を取り付ける
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周に水平方向に複数に分割した補強パネルを配置し、この補強パネル内にグラウトを充填することにより補強を行った柱の仕上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、柱を耐震補強する方法として、筒状に形成された鋼板が複数に分割されてなる補強パネルを、耐震補強の対象となる柱の外周に上下方向複数段に亘って配置し、これら補強パネルを接続した後、補強パネル内にグラウトを充填して鋼板パネルを柱と一体化させる方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006―183318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の方法により耐震補強を施した柱の外周に例えば、石材を取り付けるなどの仕上げを施す場合には、鋼材パネルに直接仕上げを施すことができないため、耐震補強を施した柱を取り囲むように軟鉄製の部材などを用いて下地壁を設け、この下地壁に仕上げを施していた。このような下地壁は自立する必要があるため、下地壁を構成する部材に径の大きな部材を用いる必要があり、このため、補強を行った柱の径が大きくなってしまい、その分、室内空間が狭くなってしまうという問題があった。
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、柱の外周の補強パネルを設置し、補強パネル内にグラウトを充填する方法により耐震補強し、耐震補強した柱の仕上げ行う際に、補強を行った柱の径を抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の補強を施した柱の仕上げ方法は、上下方向複数段に亘って、複数の補強パネルを補強対象の柱を取り囲むように環状に水平方向に連結し、かつ、上下に位置する前記補強パネルを連結し、前記連結した補強パネルと前記柱の隙間にグラウト材を注入することにより補強を施した柱の仕上げ方法であって、仕上げ材を取り付けるための取付部材を、少なくとも一部の前記補強パネルの外周面に取り付けておき、前記取付部材に仕上げ材を取り付けることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の補強を施した柱の仕上げ材の取付構造は、上下方向複数段に亘って、複数の補強パネルを補強対象の柱を取り囲むように環状に水平方向に連結し、かつ、上下に位置する前記補強パネルを連結し、前記連結した補強パネルと前記柱の隙間にグラウト材を注入することにより補強を施した柱に仕上げ材を取り付ける構造であって、少なくとも一部の前記補強パネルの外周面に取り付けられた取付部材を備え、前記取付部材に前記仕上げ材が取り付けられていることを特徴とする。
【0007】
上記の構造において、前記取付部材は、板材を挟み込み可能な取付部を備え、前記取付部により前記補強パネルの上方の縁を挟みこむことで前記補強パネルに取り付けられていてもよい。また、前記取付部材は、前記補強パネルにビス止めされていてもよい。また、前記取付部材は、前記補強パネルに接着剤により取り付けられていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
補強パネルに固定された取付部材に仕上げ材を取り付ける構成としたことにより、取付部材に作用する荷重が補強を施した柱に伝達されるため、薄型の取付部材であっても、仕上げ材の重量を支持することができる。このため、補強パネルと仕上げ材の間の隙間を抑えることができ、室内を有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の補強された柱の仕上げ方法の一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の柱の補強方法に用いられる補強パネル10を示す斜視図である。同図に示すように、補強パネル10はL字型に成形された鋼板からなる。
【0010】
図2は、柱の補強に用いられる取付部材30を示す図である。同図に示すように、取付部材30は、鋼板が断面矩形状に折り曲げられてなる部材本体32と、部材本体32との間に隙間が形成されてなる取付部31とを備え、取付部31の隙間に補強パネル10を挟むことにより、取付部材30を補強パネル10に取り付けることができる。
【0011】
以下、上記説明した各部材を用いて柱を耐震補強し、この補強した柱の仕上げを行う方法を図3〜図11を参照しながら説明する。なお、図3及び図5において、(A)は正面図、(B)は斜視図であり、各図(B)において柱1は省略して示す。図4において、(A)は正面図、(B)は斜視図、(C)は取付部材を取り付けた様子を拡大して示す鉛直断面図である。また、図6及び図7は斜視図、図8は正面図である。また、図9及び図10は、夫々図8におけるA―A´断面図及びB−B´断面図である。また、図11は水平断面図である。
【0012】
まず、図3に示すように、耐震補強の対象となる柱1の外周に最下段の補強パネル10を配置する。すなわち、床上に4枚の補強パネル10を、内部に水平視において矩形状の空間を形成し、この空間内に柱1が収容されるように配置する。
【0013】
次に、図4に示すように、最下段の補強パネル10により柱1を取り囲むように形成された4面の夫々の両端部近傍の上辺の縁に取付部材30を取り付ける。この際、取付部材30は、その取付部31に補強パネル10の縁を挟みこむことにより取り付けることができる。
【0014】
次に、図5に示すように、柱1を取り囲むように2段目の補強パネル10を配置する。すなわち、1段目と同様に、補強パネル10を内部に水平視において矩形状の空間を形成し、この空間内に柱1が収容されるように配置する。
【0015】
このように、補強パネル10を配置する工程を繰り返しながら、複数段おきに取付部材30を補強パネル10に取り付けていく。これにより、図6に示すように、補強パネル10が柱を取り囲むように筒状に連結され、複数段おきに平面視において補強パネル10により形成される各辺の両端の近傍に取付部材30が取り付けられることとなる。
【0016】
次に、図7に示すように、水平方向に隣接する補強パネル10の接合部を跨ぐように、長尺な接続パネル20を補強パネル10の外側に接着剤により貼付する。これにより、水平方向に隣接する補強パネル10同士が接合されるとともに、上下方向に配置された補強パネル10同士も一体に連結されることとなる。
【0017】
次に、補強対象の柱と、柱を取り囲む補強パネル10との間にグラウトを充填する。この際、補強パネル10がグラウトの充填圧により変形などを起こさないように、グラウトの充填圧を支持する必要がある。
【0018】
そこで、図8〜図10に示すように、柱1を隔てて対向する側の補強パネル10の表面に鋼管40を水平方向に延びるように配置し、対向する面に配置された鋼管40を鋼棒43により離間しないように拘束する。なお、図8に示すように、鋼管40は上下方向に交互に異なる面に当接するように配置されている。
【0019】
そして、補強パネル10と柱1との間にグラウト51を充填する。この際、鋼棒43により鋼管40を介して補強パネル10が支持されることとなり、補強パネル10の内部にグラウトを充填しても、その充填圧を支持することができる。
【0020】
上記のようにして充填したグラウト51が硬化することで、補強パネル10が補強対象の柱1と一体となり、柱1の耐震補強が完了する。また、各補強パネル10に取り付けられた取付部材30は、その一部が埋設された状態でグラウト51が硬化することにより、これら補強パネル10及びグラウト51と一体となる。
【0021】
次に、耐震補強を行った柱の外周に仕上げを施す。図11は仕上げを施す方法を説明するための図である。まず、グラウトの充填圧を支持するために取り付けられていた鋼管40及び鋼棒43を取り外す。そして、補強パネル10の各面に取り付けられた取付部材30に当接するように、補強パネル10の外周に石膏ボード50を配置し、石膏ボード50を取付部材30の部材本体32に螺子止めする。また、石膏ボード50同士が付き合わされる角部には断面L字型の鉄板下地部材91を取り付ける。これにより、隣接する石膏ボード50同士が接続される。このようにして、補強パネル10を取り囲むように石膏ボード50を固定し、この石膏ボード50の表面に適宜壁紙などを貼付する。
以上の工程により、柱1の耐震補強を行い、耐震補強した柱の仕上げを行うことができる。
【0022】
本実施形態によれば、補強パネル10に固定された取付部材30に石膏ボード50を取り付ける構成としたことにより、取付部材30に作用する荷重が補強を施した柱に伝達されるため、薄型の取付部材30であっても、仕上げ材(石膏ボード50など)の重量を支持することができる。このため、補強パネル10と石膏ボード50の間の隙間を抑えることができ、室内を有効利用することができる。
【0023】
なお、本実施形態では、取付部材を補強パネル10の各面の角部近傍のみに設ける構成としたが、これに限らず、図12に示すように、補強パネル10により補強した柱の水平方向に略全長に亘るような長さを有する取付部材60を用いることとしてもよい。なお、かかる取付部材60を用いる場合には、取付部材60を補強パネル10に取り付けた状態において、接続パネル20と取付部材60とが干渉しないように、取付部材60の形状を調整するとよい。
【0024】
また、本実施形態では、取付部材30の取付部31に補強パネル10の縁を収容することにより、取付部材30を補強パネル10に取り付けることとしたが、これに限らず、図13に示すように取付部材70を補強パネル10にビス71により固定する構成としてもよいし、図14に示すように、取付部材80を接着剤81により補強パネル10に取り付ける構成としてもよい。
【0025】
また、図15に示すように、長尺の取付部材90を上下方向に延びるように取り付ける構成としてもよい。なお、このような場合における取付部材90を補強パネルに固定する方法は、本実施形態と同様に取付部材に収容部を形成しておき、この収容部内に補強パネルの上方の縁を収容することにより、補強パネルに固定してもよいし、図14や図15を参照して説明したように、ビス止めや接着剤により補強パネル10の外周面に取り付ける構成としてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、取付部材30に取り付けた石膏ボード50を取り付け、この石膏ボード50の表面に仕上げを行うこととしたが、これに限らず、例えば、取付部材30に直接、壁面仕上げ材の石材を取り付けてもよい。
【0027】
また、本実施形態では、グラウトを充填する際に、補強パネル10を支持するために、対向する面に鋼管を当接させ、これら鋼管が離間しないように鋼棒によりこれら鋼管を結ぶものとしたが、これに限らず、補強パネル10が位置ズレや変形を生じなければその構成は問わない。
【0028】
また、本実施形態では、水平方向に隣接する補強パネル10の接合部を跨ぐように、長尺の接続パネル20を貼付することにより、水平方向に隣接する補強パネル10を水平方向に接合するとともに、上下方向に隣接する補強パネル10を接合するものとしたが、補強パネル10の接合方法はこれに限らず、溶接接続などの方法を用いてもよい。
【0029】
また、本実施形態では、L型に成形された4枚の補強パネル10を接続することにより、柱の外周を取り囲むこととしたが、これに限らず、コの字型に成形された2枚の補強パネルを接続することにより柱の外周を取り囲むこととしてもよく、複数の補強パネルを水平方向に接続することで、柱の外周を取り囲むことができれば、その形状は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】柱の補強に用いられる補強パネルを示す斜視図である。
【図2】柱の補強に用いられる取付部材を示す図である。
【図3】耐震補強の対象となる柱の外周に最下段の補強パネルを配置した状態を示す図であり、(A)は正面図、(B)は斜視図である。
【図4】最下段の補強パネルに取付部材を取り付けた状態を示す図であり、(A)は正面図、(B)は斜視図である。
【図5】2段目の補強パネルを取り付けた状態を示す図であり、(A)は正面図、(B)は斜視図である。
【図6】補強パネルの取付が完了した状態を示す斜視図である。
【図7】接続パネルの取付が完了した状態を示す斜視図である。
【図8】グラウトの充填圧を支持するための機構を設けた状態を示す正面図である。
【図9】図8におけるA−A´断面図である。
【図10】図8におけるB−B´断面図である。
【図11】石膏ボードを取り付けた状態を示す水平断面図である。
【図12】補強した柱の水平方向に略全長に亘るような長さを有する取付部材を用いた場合の柱を示し、(A)は正面図、(B)は鉛直断面図である。
【図13】取付部材を補強パネルにビスにより固定した場合の柱を示し、(A)は正面図、(B)は鉛直断面図である。
【図14】取付部材を接着剤により補強パネルに取り付けた場合の柱を示し、(A)は正面図、(B)は鉛直断面図である。
【図15】長尺の取付部材を上下方向に延びるように取り付けた場合の柱を示し、(A)は正面図、(B)は鉛直断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 柱
10 補強パネル
20 接続パネル
30、60、70、80、90 取付部材
31 取付部
50 石膏ボード
51 グラウト
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周に水平方向に複数に分割した補強パネルを配置し、この補強パネル内にグラウトを充填することにより補強を行った柱の仕上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、柱を耐震補強する方法として、筒状に形成された鋼板が複数に分割されてなる補強パネルを、耐震補強の対象となる柱の外周に上下方向複数段に亘って配置し、これら補強パネルを接続した後、補強パネル内にグラウトを充填して鋼板パネルを柱と一体化させる方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006―183318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の方法により耐震補強を施した柱の外周に例えば、石材を取り付けるなどの仕上げを施す場合には、鋼材パネルに直接仕上げを施すことができないため、耐震補強を施した柱を取り囲むように軟鉄製の部材などを用いて下地壁を設け、この下地壁に仕上げを施していた。このような下地壁は自立する必要があるため、下地壁を構成する部材に径の大きな部材を用いる必要があり、このため、補強を行った柱の径が大きくなってしまい、その分、室内空間が狭くなってしまうという問題があった。
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、柱の外周の補強パネルを設置し、補強パネル内にグラウトを充填する方法により耐震補強し、耐震補強した柱の仕上げ行う際に、補強を行った柱の径を抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の補強を施した柱の仕上げ方法は、上下方向複数段に亘って、複数の補強パネルを補強対象の柱を取り囲むように環状に水平方向に連結し、かつ、上下に位置する前記補強パネルを連結し、前記連結した補強パネルと前記柱の隙間にグラウト材を注入することにより補強を施した柱の仕上げ方法であって、仕上げ材を取り付けるための取付部材を、少なくとも一部の前記補強パネルの外周面に取り付けておき、前記取付部材に仕上げ材を取り付けることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の補強を施した柱の仕上げ材の取付構造は、上下方向複数段に亘って、複数の補強パネルを補強対象の柱を取り囲むように環状に水平方向に連結し、かつ、上下に位置する前記補強パネルを連結し、前記連結した補強パネルと前記柱の隙間にグラウト材を注入することにより補強を施した柱に仕上げ材を取り付ける構造であって、少なくとも一部の前記補強パネルの外周面に取り付けられた取付部材を備え、前記取付部材に前記仕上げ材が取り付けられていることを特徴とする。
【0007】
上記の構造において、前記取付部材は、板材を挟み込み可能な取付部を備え、前記取付部により前記補強パネルの上方の縁を挟みこむことで前記補強パネルに取り付けられていてもよい。また、前記取付部材は、前記補強パネルにビス止めされていてもよい。また、前記取付部材は、前記補強パネルに接着剤により取り付けられていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
補強パネルに固定された取付部材に仕上げ材を取り付ける構成としたことにより、取付部材に作用する荷重が補強を施した柱に伝達されるため、薄型の取付部材であっても、仕上げ材の重量を支持することができる。このため、補強パネルと仕上げ材の間の隙間を抑えることができ、室内を有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の補強された柱の仕上げ方法の一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の柱の補強方法に用いられる補強パネル10を示す斜視図である。同図に示すように、補強パネル10はL字型に成形された鋼板からなる。
【0010】
図2は、柱の補強に用いられる取付部材30を示す図である。同図に示すように、取付部材30は、鋼板が断面矩形状に折り曲げられてなる部材本体32と、部材本体32との間に隙間が形成されてなる取付部31とを備え、取付部31の隙間に補強パネル10を挟むことにより、取付部材30を補強パネル10に取り付けることができる。
【0011】
以下、上記説明した各部材を用いて柱を耐震補強し、この補強した柱の仕上げを行う方法を図3〜図11を参照しながら説明する。なお、図3及び図5において、(A)は正面図、(B)は斜視図であり、各図(B)において柱1は省略して示す。図4において、(A)は正面図、(B)は斜視図、(C)は取付部材を取り付けた様子を拡大して示す鉛直断面図である。また、図6及び図7は斜視図、図8は正面図である。また、図9及び図10は、夫々図8におけるA―A´断面図及びB−B´断面図である。また、図11は水平断面図である。
【0012】
まず、図3に示すように、耐震補強の対象となる柱1の外周に最下段の補強パネル10を配置する。すなわち、床上に4枚の補強パネル10を、内部に水平視において矩形状の空間を形成し、この空間内に柱1が収容されるように配置する。
【0013】
次に、図4に示すように、最下段の補強パネル10により柱1を取り囲むように形成された4面の夫々の両端部近傍の上辺の縁に取付部材30を取り付ける。この際、取付部材30は、その取付部31に補強パネル10の縁を挟みこむことにより取り付けることができる。
【0014】
次に、図5に示すように、柱1を取り囲むように2段目の補強パネル10を配置する。すなわち、1段目と同様に、補強パネル10を内部に水平視において矩形状の空間を形成し、この空間内に柱1が収容されるように配置する。
【0015】
このように、補強パネル10を配置する工程を繰り返しながら、複数段おきに取付部材30を補強パネル10に取り付けていく。これにより、図6に示すように、補強パネル10が柱を取り囲むように筒状に連結され、複数段おきに平面視において補強パネル10により形成される各辺の両端の近傍に取付部材30が取り付けられることとなる。
【0016】
次に、図7に示すように、水平方向に隣接する補強パネル10の接合部を跨ぐように、長尺な接続パネル20を補強パネル10の外側に接着剤により貼付する。これにより、水平方向に隣接する補強パネル10同士が接合されるとともに、上下方向に配置された補強パネル10同士も一体に連結されることとなる。
【0017】
次に、補強対象の柱と、柱を取り囲む補強パネル10との間にグラウトを充填する。この際、補強パネル10がグラウトの充填圧により変形などを起こさないように、グラウトの充填圧を支持する必要がある。
【0018】
そこで、図8〜図10に示すように、柱1を隔てて対向する側の補強パネル10の表面に鋼管40を水平方向に延びるように配置し、対向する面に配置された鋼管40を鋼棒43により離間しないように拘束する。なお、図8に示すように、鋼管40は上下方向に交互に異なる面に当接するように配置されている。
【0019】
そして、補強パネル10と柱1との間にグラウト51を充填する。この際、鋼棒43により鋼管40を介して補強パネル10が支持されることとなり、補強パネル10の内部にグラウトを充填しても、その充填圧を支持することができる。
【0020】
上記のようにして充填したグラウト51が硬化することで、補強パネル10が補強対象の柱1と一体となり、柱1の耐震補強が完了する。また、各補強パネル10に取り付けられた取付部材30は、その一部が埋設された状態でグラウト51が硬化することにより、これら補強パネル10及びグラウト51と一体となる。
【0021】
次に、耐震補強を行った柱の外周に仕上げを施す。図11は仕上げを施す方法を説明するための図である。まず、グラウトの充填圧を支持するために取り付けられていた鋼管40及び鋼棒43を取り外す。そして、補強パネル10の各面に取り付けられた取付部材30に当接するように、補強パネル10の外周に石膏ボード50を配置し、石膏ボード50を取付部材30の部材本体32に螺子止めする。また、石膏ボード50同士が付き合わされる角部には断面L字型の鉄板下地部材91を取り付ける。これにより、隣接する石膏ボード50同士が接続される。このようにして、補強パネル10を取り囲むように石膏ボード50を固定し、この石膏ボード50の表面に適宜壁紙などを貼付する。
以上の工程により、柱1の耐震補強を行い、耐震補強した柱の仕上げを行うことができる。
【0022】
本実施形態によれば、補強パネル10に固定された取付部材30に石膏ボード50を取り付ける構成としたことにより、取付部材30に作用する荷重が補強を施した柱に伝達されるため、薄型の取付部材30であっても、仕上げ材(石膏ボード50など)の重量を支持することができる。このため、補強パネル10と石膏ボード50の間の隙間を抑えることができ、室内を有効利用することができる。
【0023】
なお、本実施形態では、取付部材を補強パネル10の各面の角部近傍のみに設ける構成としたが、これに限らず、図12に示すように、補強パネル10により補強した柱の水平方向に略全長に亘るような長さを有する取付部材60を用いることとしてもよい。なお、かかる取付部材60を用いる場合には、取付部材60を補強パネル10に取り付けた状態において、接続パネル20と取付部材60とが干渉しないように、取付部材60の形状を調整するとよい。
【0024】
また、本実施形態では、取付部材30の取付部31に補強パネル10の縁を収容することにより、取付部材30を補強パネル10に取り付けることとしたが、これに限らず、図13に示すように取付部材70を補強パネル10にビス71により固定する構成としてもよいし、図14に示すように、取付部材80を接着剤81により補強パネル10に取り付ける構成としてもよい。
【0025】
また、図15に示すように、長尺の取付部材90を上下方向に延びるように取り付ける構成としてもよい。なお、このような場合における取付部材90を補強パネルに固定する方法は、本実施形態と同様に取付部材に収容部を形成しておき、この収容部内に補強パネルの上方の縁を収容することにより、補強パネルに固定してもよいし、図14や図15を参照して説明したように、ビス止めや接着剤により補強パネル10の外周面に取り付ける構成としてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、取付部材30に取り付けた石膏ボード50を取り付け、この石膏ボード50の表面に仕上げを行うこととしたが、これに限らず、例えば、取付部材30に直接、壁面仕上げ材の石材を取り付けてもよい。
【0027】
また、本実施形態では、グラウトを充填する際に、補強パネル10を支持するために、対向する面に鋼管を当接させ、これら鋼管が離間しないように鋼棒によりこれら鋼管を結ぶものとしたが、これに限らず、補強パネル10が位置ズレや変形を生じなければその構成は問わない。
【0028】
また、本実施形態では、水平方向に隣接する補強パネル10の接合部を跨ぐように、長尺の接続パネル20を貼付することにより、水平方向に隣接する補強パネル10を水平方向に接合するとともに、上下方向に隣接する補強パネル10を接合するものとしたが、補強パネル10の接合方法はこれに限らず、溶接接続などの方法を用いてもよい。
【0029】
また、本実施形態では、L型に成形された4枚の補強パネル10を接続することにより、柱の外周を取り囲むこととしたが、これに限らず、コの字型に成形された2枚の補強パネルを接続することにより柱の外周を取り囲むこととしてもよく、複数の補強パネルを水平方向に接続することで、柱の外周を取り囲むことができれば、その形状は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】柱の補強に用いられる補強パネルを示す斜視図である。
【図2】柱の補強に用いられる取付部材を示す図である。
【図3】耐震補強の対象となる柱の外周に最下段の補強パネルを配置した状態を示す図であり、(A)は正面図、(B)は斜視図である。
【図4】最下段の補強パネルに取付部材を取り付けた状態を示す図であり、(A)は正面図、(B)は斜視図である。
【図5】2段目の補強パネルを取り付けた状態を示す図であり、(A)は正面図、(B)は斜視図である。
【図6】補強パネルの取付が完了した状態を示す斜視図である。
【図7】接続パネルの取付が完了した状態を示す斜視図である。
【図8】グラウトの充填圧を支持するための機構を設けた状態を示す正面図である。
【図9】図8におけるA−A´断面図である。
【図10】図8におけるB−B´断面図である。
【図11】石膏ボードを取り付けた状態を示す水平断面図である。
【図12】補強した柱の水平方向に略全長に亘るような長さを有する取付部材を用いた場合の柱を示し、(A)は正面図、(B)は鉛直断面図である。
【図13】取付部材を補強パネルにビスにより固定した場合の柱を示し、(A)は正面図、(B)は鉛直断面図である。
【図14】取付部材を接着剤により補強パネルに取り付けた場合の柱を示し、(A)は正面図、(B)は鉛直断面図である。
【図15】長尺の取付部材を上下方向に延びるように取り付けた場合の柱を示し、(A)は正面図、(B)は鉛直断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 柱
10 補強パネル
20 接続パネル
30、60、70、80、90 取付部材
31 取付部
50 石膏ボード
51 グラウト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向複数段に亘って、複数の補強パネルを補強対象の柱を取り囲むように環状に水平方向に連結し、かつ、上下に位置する前記補強パネルを連結し、前記連結した補強パネルと前記柱の隙間にグラウト材を注入することにより補強を施した柱の仕上げ方法であって、
仕上げ材を取り付けるための取付部材を、少なくとも一部の前記補強パネルの外周面に取り付けておき、
前記取付部材に仕上げ材を取り付けることを特徴とする補強を施した柱の仕上げ方法。
【請求項2】
上下方向複数段に亘って、複数の補強パネルを補強対象の柱を取り囲むように環状に水平方向に連結し、かつ、上下に位置する前記補強パネルを連結し、前記連結した補強パネルと前記柱の隙間にグラウト材を注入することにより補強を施した柱に仕上げ材を取り付ける構造であって、
少なくとも一部の前記補強パネルの外周面に取り付けられた取付部材を備え、
前記取付部材に前記仕上げ材が取り付けられていることを特徴とする補強を施した柱の仕上げ材の取付構造。
【請求項3】
請求項2記載の補強を施した柱の仕上げ材の取付構造であって、
前記取付部材は、板材を挟み込み可能な取付部を備え、
前記取付部により前記補強パネルの上方の縁を挟みこむことで前記補強パネルに取り付けられていることを特徴とする柱の仕上げ材の取付構造。
【請求項4】
請求項2記載の補強を施した柱の仕上げ材の取付構造であって、
前記取付部材は、前記補強パネルにビス止めされていることを特徴とする柱の仕上げ材の取付構造。
【請求項5】
請求項2記載の補強を施した柱の仕上げ材の取付構造であって、
前記取付部材は、前記補強パネルに接着剤により取り付けられていることを特徴とする柱の仕上げ材の取付構造。
【請求項1】
上下方向複数段に亘って、複数の補強パネルを補強対象の柱を取り囲むように環状に水平方向に連結し、かつ、上下に位置する前記補強パネルを連結し、前記連結した補強パネルと前記柱の隙間にグラウト材を注入することにより補強を施した柱の仕上げ方法であって、
仕上げ材を取り付けるための取付部材を、少なくとも一部の前記補強パネルの外周面に取り付けておき、
前記取付部材に仕上げ材を取り付けることを特徴とする補強を施した柱の仕上げ方法。
【請求項2】
上下方向複数段に亘って、複数の補強パネルを補強対象の柱を取り囲むように環状に水平方向に連結し、かつ、上下に位置する前記補強パネルを連結し、前記連結した補強パネルと前記柱の隙間にグラウト材を注入することにより補強を施した柱に仕上げ材を取り付ける構造であって、
少なくとも一部の前記補強パネルの外周面に取り付けられた取付部材を備え、
前記取付部材に前記仕上げ材が取り付けられていることを特徴とする補強を施した柱の仕上げ材の取付構造。
【請求項3】
請求項2記載の補強を施した柱の仕上げ材の取付構造であって、
前記取付部材は、板材を挟み込み可能な取付部を備え、
前記取付部により前記補強パネルの上方の縁を挟みこむことで前記補強パネルに取り付けられていることを特徴とする柱の仕上げ材の取付構造。
【請求項4】
請求項2記載の補強を施した柱の仕上げ材の取付構造であって、
前記取付部材は、前記補強パネルにビス止めされていることを特徴とする柱の仕上げ材の取付構造。
【請求項5】
請求項2記載の補強を施した柱の仕上げ材の取付構造であって、
前記取付部材は、前記補強パネルに接着剤により取り付けられていることを特徴とする柱の仕上げ材の取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−59675(P2010−59675A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226107(P2008−226107)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】
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