説明

補強インナー付き防水グロメット

【課題】パネル孔に補強インナーのロック部を簡単且つ確実に嵌合させる。
【解決手段】弾性のグロメット本体2の端部5に一対の膨出部10を設け、端部の内側に装着される補強インナー3に一対のロックアーム20を設け、ロックアームの自由端側に操作部21を延長形成し、操作部を膨出部内に進入させ、操作部の先端21aを膨出部の押圧用の壁部10aに近接して配置し、操作部の先端を押圧用の壁部の外側から取付側のパネル13に向けて押圧して、ロックアームをパネル孔13aに嵌合させる構成の補強インナー付き防水グロメット1を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等のパネル孔にワイヤハーネスを挿通させる際に、防水用の弾性のグロメット本体の端部の内側に硬質の補強インナーを装着した状態で、パネル孔に嵌合させる補強インナー付き防水グロメットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、合成ゴム製の弾性のグロメット本体の内側に合成樹脂製の硬質の補強インナーを嵌合して、自動車のパネル孔へのグロメット本体の密着性や固定性を高めるために、種々の補強インナー付き防水グロメットが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、図5に示す如く、弾性のグロメット本体52の大径環状の端部53内に樹脂インナー54を嵌合し、樹脂インナー54の鍔部55の径方向内側の孔部56内に端部53の突起57を係止させ、孔部56に樹脂インナー54のロックアーム58の先端58aを対向させ、ロックアーム58の爪部59をパネル60の孔部60aに係止させると共に、端部53のリップ61をパネル面60に密着させる補強インナー付き防水グロメット51が記載されている。
【0004】
特許文献1には、従来技術として(図示せず)、上記孔部56や突起57を設けることなく、樹脂インナー(54)の鍔部(55)をグロメット本体(52)の大径環状の端部(53)内に直接嵌合させた構成の補強インナー付き防水グロメットが記載されている。上記孔部56と突起57との係合によって、グロメット本体52への樹脂インナー54の固定力が高められている。
【0005】
また、特許文献2(図示せず)には、合成樹脂製のインナー部材に、パネル孔への係止用ロックの他に目印用ロックを設けて、グロメット本体であるアウター部材をパネル面に密着させると同時に目印用ロックを目視して、パネルへの嵌合確認を行わせる補強インナー付き防水グロメットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−111251号公報(図4,図7)
【特許文献2】特開2004−215334号公報(図1,図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の特許文献1(図5)の補強インナー付き防水グロメット51にあっては、ロックアーム58の先端(自由端)58aがグロメット本体52の端部53の押圧面53aよりも寸法H1だけ低い位置にあるために、作業者が手指62でロックアーム58を押すことができず、ロックアーム58の爪部59がパネル孔60aの周縁に完全に嵌合(係止)したか否かを作業者が音等で確認し難いという懸念があった。
【0008】
特許文献1の従来技術に記載された補強インナー付き防水グロメットにあっては、グロメット本体(52)の端部(53)の外側からインナー部材(54)の鍔部(55)を押すことができるが、この場合もロックアーム58が鍔部(55)から略J字ないしU字状に屈曲した外側に形成されているので、ロックアーム(58)を直接押すことができず、上記同様にロックアーム(58)の爪部(59)がパネル孔(60a)の周縁に完全に嵌合(係止)したか否かを作業者が確認し難いという懸念があった。
【0009】
また、特許文献1の上記各補強インナー付き防水グロメット51にあっては、ロックアーム58がグロメット本体52の端部53とインナー部材54の鍔部55との内側に位置するために、パネル孔60aへのロックアーム58の係止を外部から解除する作業が面倒であるという懸念があった。
【0010】
また、特許文献2の補強インナー付き防水グロメットにあっては、作業者が目視で目印用ロックを確認しなければならず、目視作業の手間がかかると共に、自動車等の狭いスペース内では目視確認が難しいという懸念があった。
【0011】
本発明は、上記した点に鑑み、パネル孔に補強インナーのロック部を簡単且つ確実に嵌合させることができ、それに加えて、パネル孔へのロック部の嵌合を手間をかけずに簡単且つ確実に確認することができ、それに加えて、パネル孔へのロックアームの係止を外部から容易に解除することのできる補強インナー付き防水グロメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る補強インナー付き防水グロメットは、弾性のグロメット本体の端部に一対の膨出部が設けられ、該端部の内側に装着される補強インナーに一対のロックアームが設けられ、該ロックアームの自由端側に操作部が延長形成され、該操作部が該膨出部内に進入し、該操作部の先端が該膨出部の押圧用の壁部に近接して配置され、該操作部の先端が該押圧用の壁部の外側から取付側のパネルに向けて押圧されて、該ロックアームがパネル孔に嵌合することを特徴とする。
【0013】
上記構成により、補強インナーのロックアームの延長された操作部がグロメット本体の膨出部内に位置し、作業者が手指で膨出部の押圧用の壁部をパネルへのグロメットの取付方向に押圧することで、押圧用の壁部に近接した操作部の先端(自由端)が押圧用の壁部の壁部を介して手指で押圧され、操作部と一体のロックアームがパネル孔に確実に嵌合する。
【0014】
請求項2に係る補強インナー付き防水グロメットは、請求項1記載の補強インナー付き防水グロメットにおいて、前記ロックアームの係止用の爪部の係止面に続いて突起が設けられ、該爪部が前記パネル孔の周縁に係止される際に、該突起が前記パネル孔の内周面に該ロックアームの弾性力で衝接して嵌合音を発生することを特徴とする。
【0015】
上記構成により、ロックアームの爪部がパネル孔の内周面に乗り上げつつロックアームが内向きに撓み、爪部がパネル孔を貫通すると同時にロックアームが弾性的に外向きに復元し、その際、突起の突出高さの分だけロックアームが弾性力を維持した状態で、突起がパネル孔の内周面に衝接して嵌合音を発生する。作業者は嵌合音を耳で感知して及び/又は振動を手指で感知して、ロックアームの完全嵌合を確実に検知する。
【0016】
請求項3に係る補強インナー付き防水グロメットは、請求項2記載の補強インナー付き防水グロメットにおいて、前記突起における前記爪部の係止面とは離間する側の端部に傾斜面が形成され、該傾斜面が前記ロックアームの操作部寄りの外面に交差して続いたことを特徴とする。
【0017】
上記構成により、突起の端部が傾斜面の分だけ短くなり、突起がパネル孔の内周面に摺接する距離が短縮されて摺接に起因する摩擦抵抗が低減され、突起の端部とパネル孔の内周面との引っ掛かりが防止されて、ロックアームがパネル孔にスムーズに嵌合する。
【0018】
請求項4に係る補強インナー付き防水グロメットは、請求項1〜3の何れかに記載の補強インナー付き防水グロメットにおいて、前記操作部の外面が前記膨出部の外側壁に近接して配置され、該操作部の外面が該膨出部の外側壁の外側から内向きに押圧されて、前記パネル孔への前記ロックアームの嵌合が解除されることを特徴とする。
【0019】
上記構成により、パネルに補強インナー付き防水グロメットを嵌合させた状態から、作業者が手指でグロメット本体の膨出部の外側壁を径方向内向きに押圧することで、外側壁に近接したロックアームの操作部が内向きに押圧されて、ロックアームが内向きに撓み、爪部がパネル孔から内向きに離脱して、パネル孔へのロックアームの嵌合が解除される。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、補強インナーのロックアームの延長部分である操作部の先端をグロメット本体の膨出部の押圧用の壁部を介して作業者がパネル方向に押圧することができるから、ロックアームをパネル孔に簡単且つ確実に嵌合させることができる。これにより、パネル孔へのロックアームの嵌合不良が防止されて、嵌合不良に伴うグロメット内への水の浸入が防止される。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、パネル孔へのロックアームの嵌合と同時に、ロックアームの弾性力で突起をパネル孔の内周面に衝接させることで、その嵌合音ないし振動で作業者がロックアームの嵌合を簡単且つ確実に検知することができる。これにより、パネル孔へのロックアームの嵌合不良を一層確実に防止することができる。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、パネル孔にロックアームの突起を無用な引っ掛かり等なくスムーズに嵌合させることができる。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、グロメット本体の膨出部の外側壁を外部から内向きに押圧することで、ロックアームの操作部をロック解除方向に撓ませて、簡単且つ確実にパネル孔へのロックアームの嵌合係止を解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る補強インナー付き防水グロメットの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】補強インナー付き防水グロメットの要部を示す図1のA−A断面図(枠内は要部拡大図)である。
【図3】補強インナー付き防水グロメットをパネル孔に装着する状態を示す縦断面図である。
【図4】補強インナー付き防水グロメットをパネル孔から離脱させる状態を示す縦断面図である。
【図5】従来の補強インナー付き防水グロメットの一形態の要部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜図4は、本発明に係る補強インナー付き防水グロメットの一実施形態を示すものである。
【0026】
図1の如く、この補強インナー付き防水グロメット1は、合成ゴム製の弾性のグロメット本体2と、グロメット本体2の中間の可撓性の蛇腹部4に続く一端部(端部)5に嵌合した合成樹脂製の硬質の補強インナー3(図2)とで構成されている。
【0027】
グロメット本体2の一端部5は、平面視で長円形状の中空鍔状の嵌合部6と、嵌合部6の短手(幅)方向中央の中空の突壁8の上面に一体に突出形成された弾性(可撓性)の膨出部9と、膨出部9の幅方向(左右)両側に一体に連通形成された一対の低い弾性(可撓性)の膨出部10と、嵌合部6の下面から斜め下向きに突出形成された弾性環状のリップ部11とを備えている。
【0028】
嵌合部6は中央の突壁8と左右の一段低い鍔壁7とで成る。中央の膨出部(膨出壁)8は縦断面略半円状ないし略台形状に形成されて(図2参照)、突壁8の長手方向に沿って水平に延び、嵌合部6の後方において短い筒状部12となって蛇腹部4に一体に続いている。蛇腹部4に続く不図示の他端部は平面視で長円形状の中空鍔状の嵌合部で構成されている。
【0029】
図2にも示す如く、左右の膨出部10は中央の膨出部9よりも低く、縦断面略横L字状(略矩形状)に形成され、左右の膨出部10の水平な上壁部(押圧用の壁部)10aが中央の膨出部9の傾斜状の側壁部9aに交差し、垂直な側壁部(外側壁)10bが嵌合部6の鍔壁7に交差し、前後の壁部10c(図1)が鍔壁7と中央の突壁8とに交差して、それぞれ一体に続いている。鍔壁7の後部7aは短い筒状部12に交差して一体に続いている。嵌合部6の下面の外周寄りの環状のリップ部11が車両の水平なパネル13に密着して、防水グロメット1内及びパネル孔13a(図2)内への水の浸入を防いでいる。
【0030】
嵌合部6内に嵌合した補強インナー3の一部である周壁14の下半部がパネル孔13a(図2)から下向きに突出している。補強インナー3の周壁14の下端には不図示のワイヤハーネス(複数本の電線)をテープ巻きで固定する板部15(図1)が下向きに突設されている。
【0031】
本例の防水グロメット1は例えば自動車のドアとボディとの間に配置され、ドア又はボディのパネル孔13aに補強インナー3が嵌合してパネル孔13aをグロメット本体2の一端部5(図1)が塞ぐ。なお、明細書で上下前後左右の方向性は説明の便宜上のものであり、必ずしも防水グロメット1の取付方向と一致するとは限らない。
【0032】
図2(図1のA−A断面図)の如く、グロメット本体2の嵌合部6の鍔壁7は、水平な(パネル13と平行な)上側の壁部7aと、上側の壁部7aに直交した垂直な側部周壁7bと、側部周壁7bに直交した下側の壁部7cとで断面略コの字状に形成され、内側に補強インナー3の水平な鍔部16を嵌合させる環状の溝部空間17を有し、下側の壁部7cは補強インナー3の周壁14を下から上に挿通させる長円形の孔部18を有している。この形状は鍔壁7のみならず前部中央の突壁8(図1)等においても同様である。
【0033】
鍔壁7の上壁部7aに左右の低い膨出部10の側壁10bが直交して続き、左右の膨出部10の上壁10aの間に中央の高い膨出部9が一体に続いている。左右の低い膨出部10は中央の高い膨出部9で相互に連結されている。各上壁部10aに中央の膨出部9の左右の傾斜壁部9aが続き、左右の傾斜壁部9aの間に中央の膨出部9の水平な上壁部9bが左右の上壁部10aよりも一段高く位置している。
【0034】
補強インナー3すなわちグロメット本体2の一端部5を補強するためのインナー部材3は、一端部5の形状に合わせた横断面長円形の環状(筒状)の周壁14と、周壁14の上端において外向きに突出形成された水平な鍔部16と、周壁14の左右両側において縦(上下)方向の各一対のスリット19の間に切欠形成された一対の可撓性(弾性)のロックアーム20と、各ロックアーム20から一体に鍔部16よりも高く上向きに延長形成された各操作部21とを備えるものである。
【0035】
鍔部16は上側の幅広部16aと下側の幅狭部16bとで段差状に形成され、鍔部16の左右両側に各ロックアーム20を上向きに通過させる切欠部(切欠面)16cが形成されている。鍔部16はグロメット本体2の嵌合部6の周溝17内に嵌合し、上側の幅広部16aが鍔壁7の上壁部7aに接し、下側の幅狭部16bが鍔壁7の下壁部7cに接する。
【0036】
各ロックアーム20は長手(上下)方向中間部に外向きの爪部22を有し、爪部22は下向きの傾斜面22a(図2の拡大図)と上向きの水平な係止面22bとを有して断面略三角形状に形成されている。各ロックアーム20の付根(基端ないし下端)20aは爪部22よりも下方に位置し(爪部22と周壁14の下端との略中間に位置し)、各ロックアーム20の自由端(上端)は操作部21の上端21aとなっている。操作部21はロックアーム20を上向きに一体に延長させた部分である。爪部22を境に操作部21を含むロックアーム20の上半部は周壁14よりも少し径方向外側に位置している。図2でロックアーム20の上半部の径方向内側に周壁14の内面14aが位置している。
【0037】
各ロックアーム20の操作部21はグロメット本体2内において鍔壁7の上面7a’から寸法Hだけ上側に突出している。各操作部21はグロメット本体2の低い各膨出部10内に進入し、各操作部21の上端(先端)21aが各膨出部10の上壁10aの下面(内面)10a’に近接して位置し、各操作部21の外面21bが各膨出部10の側壁10bの内面10b’に近接して位置している。
【0038】
一対の操作部21の内側にはグロメット本体2の左右の膨出部10の空間23とそれに続く中央の膨出部9の空間24が位置している。中央の膨出部9の内側空間24を通って不図示のワイヤハーネスが直交方向に屈曲されつつ水平な蛇腹部4と垂直な周壁14との内側空間25に挿通される。一対の操作部21は左右の低い膨出部10の空間23内でロックアーム20と一体に内向きに撓み可能である。
【0039】
ロックアーム20の爪部22の上側すなわち爪部22の係止面22b(拡大図)に交差ないし直交してロック時嵌合音発生用の突起26が一体に設けられている。ロックアーム20は爪部22と、爪部22の係止面22b側に続く突起26とを一体に有している。
【0040】
突起16の水平方向への突出高さh(拡大図)は爪部22の突出高さよりも低く、爪部22の突出先端22cから水平方向への係止面22bの長さは同じく傾斜面22aの長さの半分程度の位置で終端し、係止面22bに直交して突起26の垂直な外面26aが続き、突起26は上端部において外面26aの上側に続く上向きの傾斜面26bを有し、傾斜面26bはロックアーム20の上半部の外面20bに交差して続いている。
【0041】
傾斜面26bの少し上側においてグロメット本体2の嵌合部6の水平な下壁部7cの孔部18の垂直な内周面(符号18で代用)が補強インナー3の垂直な周壁14の外面とロックアーム20の外面20bとに接触(密着)し、下壁部7cから斜め外側下向きに突出したリップ部11がパネル13の上面に弾性的に接触(密着)している。
【0042】
図2の拡大図に鎖線13a’と寸法Wで示す如く、ロックアーム20の爪部22がパネル孔13aの周縁に嵌合した際に、パネル孔13aの内周面があたかも突起26の内側に食い込むかのように位置し(実際には食い込まないが)、ロックアーム20の外向きの弾性力(復元力)で突起26の垂直な外面26aがパネル孔13aの内周面に強く衝接して嵌合音を発生する。
【0043】
これにより、作業者が音と振動で、補強インナー3がパネル孔13aに完全にロックされたことを容易に且つ確実に検知することができる。パネル13は爪部22とリップ部11とで上下方向(パネル板厚方向)に挟まれてしっかりと固定される。
【0044】
突起26の上側の傾斜面26bは、グロメット本体2の嵌合部5の鍔壁6の孔部18に接近して孔部18の少し下側に位置する。例えば、鍔壁6内の鍔部16の上下方向のガタ付き等で補強インナー3が上向きに位置ずれして、傾斜面26bが孔部18内に入り込んだとしても(その心配は殆どないが)、弾性の孔部18の径方向内向きの緊迫力で傾斜面26bが下向きに押し出されることで、パネル13に対するリップ部11の締め代(密着代)が適正に維持される。
【0045】
また、防水グロメット1の補強インナー3の周壁14を上から下向きにパネル孔13aに挿通させる際に、パネル孔13aに沿ってロックアーム20が内向きに撓みつつ爪部22が通過し、ロックアーム20の復元と同時に突起26がパネル孔13aに弾性的に嵌合するが、突起26の上端部に傾斜面26bを設けて突起26の外面26aを上下方向に短く形成したから、例えば補強インナー3を下向きに強く押圧し過ぎた場合に、パネル孔13aの内周面が突起26の端部に誤嵌合したり、突起26の端部に引っ掛かって嵌め難くなることが防止される。
【0046】
パネル孔13aに突起26の傾斜面26bを係合させた場合は、パネル13に対するリップ部11の下向きの押圧力(弾性力)で補強インナー3が引き上げられて突起26の外面26aがパネル孔13aに自動的に正規嵌合する。
【0047】
図3の如く、補強インナー付き防水グロメット1をパネル孔13aに嵌合させる際には、作業者が二本の手指29でグロメット本体2の左右の膨出部10をパネル3に向けて下向きに押すことで、各膨出部10の下側に先端(上端)21aを接近させた補強インナー3の左右の操作部21が各膨出部10を介して下向きに押圧されるから、操作部21と一体のロックアーム20を確実に押してパネル孔3aに爪部22を確実に係止(ロック)させることができる。
【0048】
操作部21はロックアーム20の長手方向の延長上にあり、パネル孔13aへの補強インナー3の嵌合方向はロックアーム20の長手方向に一致しているので、手指29の押圧力が操作部21からロックアーム20に確実に伝播され、ロックアーム20の長手方向中間の爪部22がパネル孔13aに確実に係合(係止)される。
【0049】
図4の如く、パネル孔13aへのロックアーム20の係止を解除する場合は、作業者が二本の手指29でグロメット本体2の左右の膨出部10を径方向内向きにやや強めに摘むことで、膨出部10の側壁10bの内面10b’に近接した操作部21の外面21bが側壁10bの外側から内向きに押されて撓み、ロックアーム20が内向きに撓んで、爪部22がパネル孔13aから内側に外れて、係止解除される。このようにして補強インナー付きグロメット1をパネル13から容易に取り外すことができ、メンテナンス性等が高まる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る補強インナー付き防水グロメットは、例えば自動車のフロントドアやリヤドアあるいはバックドアのパネル孔や、車両ボディのパネル孔に補強インナーのロックアームを確実に係止させて、パネルへの防水グロメットの装着の信頼性を高めると共に、簡単な作業でロックアームの係止を解除させて、メンテナンス性や分解性を高めるために利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 補強インナー付き防水グロメット
2 グロメット本体
3 補強インナー
5 端部
10 膨出部
10a 上壁部(押圧用の壁部)
10b 外側壁
13 パネル
13a パネル孔
20 ロックアーム
20b 外面
21 操作部
21a 先端
21b 外面
22 爪部
22b 係止面
26 突起
26b 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性のグロメット本体の端部に一対の膨出部が設けられ、該端部の内側に装着される補強インナーに一対のロックアームが設けられ、該ロックアームの自由端側に操作部が延長形成され、該操作部が該膨出部内に進入し、該操作部の先端が該膨出部の押圧用の壁部に近接して配置され、該操作部の先端が該押圧用の壁部の外側から取付側のパネルに向けて押圧されて、該ロックアームがパネル孔に嵌合することを特徴とする補強インナー付き防水グロメット。
【請求項2】
前記ロックアームの係止用の爪部の係止面に続いて突起が設けられ、該爪部が前記パネル孔の周縁に係止される際に、該突起が前記パネル孔の内周面に該ロックアームの弾性力で衝接して嵌合音を発生することを特徴とする請求項1記載の補強インナー付き防水グロメット。
【請求項3】
前記突起における前記爪部の係止面とは離間する側の端部に傾斜面が形成され、該傾斜面が前記ロックアームの操作部寄りの外面に交差して続いたことを特徴とする請求項2記載の補強インナー付き防水グロメット。
【請求項4】
前記操作部の外面が前記膨出部の外側壁に近接して配置され、該操作部の外面が該膨出部の外側壁の外側から内向きに押圧されて、前記パネル孔への前記ロックアームの嵌合が解除されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の補強インナー付き防水グロメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−38899(P2013−38899A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172614(P2011−172614)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】