説明

補強メンバー等の溶接部材

【課題】溶接部材本体の強度・剛性を十分確保すると共に、当該溶接部の溶接面積を広く形成できるようにした。
【解決手段】スポット溶接により溶接対象部材であるフロア材2に接合されるプレス成形品である溶接部材である補強メンバー1において、補強メンバー1における溶接部3を補強メンバー1の一般板厚よりプレス成形により薄肉形状に形成するとともに、溶接部3には、薄肉形状にする際に補強メンバー1の外郭線より張出して形成した張出し部3aを有するようにして、フロア材2への溶接面積を十分確保して溶接強度を高めることができ、張出し部3aの存在によりフランジ部1bの外郭線より張出した分、フランジ部1bのフランジ幅Hを狭くすることが可能であり、レインフォース材等を用いなくても、フロア材2の所望の強度・剛性を得ることができ、レインフォース材等のためのプレス成形金型の製作費や部品コスト或いは部品管理費等を節約できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のフロア材あるいはダッシュロア材のような板材からなる溶接対象部材の剛性を高めるために剛性強化部材としてスポット溶接される補強メンバー等の溶接部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の溶接部材として、たとえば自動車のフロアにおける補強メンバーが知られており、図5に示すように、当該補強メンバーのような溶接部材aは、通常断面ハット状にプレス成形され、この成形によって形成された両側端のフランジ部b、bを溶接部となして、フロア材或いはダッシュロア材等の板材からなる溶接対象部材cにスポット溶接することにより、閉断面dを形成して溶接対象部材cの剛性を確保している。
【0003】
そして、溶接対象部材cの強度・剛性をより高めるために、溶接部材aの板厚はできる限り肉厚に設定することが好ましいが、スポット溶接により溶接部材aを溶接対象部材cに溶接する場合、溶接対象部材cの板厚に対して、溶接部材aの板厚が約3倍を超えるような場合には、スポット溶接が困難となってしまう。
【0004】
つまり、スポット溶接を可能にするために、板厚の厚い溶接部材aに適合するスポット溶接条件を選択してしまうと、肉薄側の溶接対象部材c側が溶け過ぎてしまうことになって、溶接部材aの板厚はある程度の板厚のものを選択することになる(通常、フロア部材やダッシュロア材のような溶接対象部材aの板厚が、0.8mm程度であると、フロアメンバー等の溶接部材cの板厚は2.4mm位までが限度である)。
【0005】
この結果、溶接対象部材cにおける所望の強度・剛性を得るために、図6に示すように、溶接部材aに予め添設するようなレインフォース材eを取付ける対策を採ることになる。
【0006】
しかし、このようなレインフォース材eを使用する場合には、当該レインフォース材eをプレス成形する金型製作費や部品コスト或いは部品管理費等が嵩むことになってしまう。
【0007】
そこで、従来知られている方法として、溶接部材の板厚は厚肉のものを使用することによって、溶接対象部材の強度・剛性をアップさせるようにすると共に、溶接部材の溶接部を薄肉形状に形成して、溶接対象部材へのスポット溶接を可能にした技術が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−206143号公報。
【0008】
すなわち、特許文献1によれば、溶接部材としては取付けブラケットであり、溶接対象部材としては車体フレームの場合を例として開示しており、スポット溶接により溶接対象部材へ接合される取付けブラケットに、厚肉部と薄肉部とを鍛造により形成し、当該薄肉部を溶接対象部材に溶接される溶接部としている。
【0009】
かかる従来の技術においては、溶接部を薄肉部としたために、溶接対象部材へのスポット溶接を可能とすると共に、厚肉部の存在により、取付けブラケットの強度・剛性を高めようとしたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の技術における取付けブラケットに形成された薄肉部である溶接部は、取付けブラケットの外郭線内に形成されていることから、溶接面積を確保するためには、本体部側を広く薄肉状に形成しなければならないことになり、本体部側を広く薄肉にしたのでは、折角高めようとした取付けブラケットの強度・剛性が低くなってしまう。
【0011】
したがって、このように構成した取付けブラケットの技術を上記したフロアメンバー等の溶接部材に適用した場合、強度・剛性不足が生じることがあり、レインフォース材の廃止にまで至らないことになってしまう。
【0012】
そこで、本発明は、かかる点に鑑み、溶接部材本体の強度・剛性を十分確保すると共に、当該溶接部の溶接面積を広く形成できるようにした補強メンバー等の溶接部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の補強メンバー等の溶接部材は、スポット溶接により溶接対象部材に接合される補強メンバー等の溶接部材であって、該溶接部材における溶接部を前記溶接部材の一般板厚よりプレス成形により薄肉形状に形成するとともに、当該溶接部には、前記薄肉形状にする際に前記溶接部材の外郭線より張出して形成された張出し部を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成する本発明における補強メンバー等の溶接部材は、その溶接部が当該溶接部材の外郭線より張出して形成した張出し部を有することから、溶接対象部材への溶接面積を十分確保して溶接強度を高めることができると共に、張出し部の存在により外郭線より張出した分、溶接部(例えばフランジ部)の幅を狭くすることが可能であり、レインフォース材等を用いなくても、溶接対象部材の所望の強度・剛性を得ることができ、レインフォース材等のためのプレス成形金型の製作費や部品コスト或いは部品管理費等を節約することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図を用いて、本発明を実施するための最良の実施の形態について説明する。
【0016】
図1は本発明に係る一実施例を採用した溶接部材である補強メンバーを溶接対象部材である自動車のフロア材に装着した状態を描画した縦断面図、図2は図1における補強メンバーの一部を破断して描画した斜視図、図3は図2のA−A断面図である。
【0017】
先ず、図1において、溶接部材である補強メンバー1は、ほぼ平板状を呈する溶接対象部材であるフロア材2の下面側に装着されて、フロア材2の強度・剛性機能を果たしている。
【0018】
このために、補強メンバー1は、平板をプレス成形することによって、断面略ハット状に形成されており、略コ字状を呈する本体部1aの両側部にフランジ部1bが形成されて構成している。
【0019】
フランジ部1bには、複数箇所に渡って、溶接部3が形成され、溶接部3をスポット溶接することにより、フロア材2の下面に補強メンバー1が接合しており、この結果、フランジ部1bがフロア材2の下面に密着することになり、本体部1aとフロア材2とによって閉断面形状を形成して、フロア材2の強度・剛性を確保するようになっている。
【0020】
溶接部3は、フランジ部1bをプレス成形により例えば略円形状に圧潰形成することによって、補強メンバー1の一般板厚より薄肉状に形成されている。例えば、補強メンバー1の一般板厚が、3.0mmの場合には、溶接部3の板厚は、2.4mmとなっており、フロア材2の板厚は例えば0.8mmに設定している。
【0021】
しかも、溶接部3は、上記プレス成形時に、補強メンバー1の外郭線であるフランジ部1bの先端面より張出して形成された張出し部3aを有して構成している。
【0022】
かかる構成において、溶接部3が補強メンバー1の外郭線であるフランジ部1bの先端面より張出して形成した張出し部3aを有することから、補強メンバー1への溶接面積を十分確保して溶接強度を高めることができると共に、張出し部3aの存在によりフランジ部1bの外郭線より張出した分、フランジ部1bのフランジ幅Hを狭くすることが可能であり、従来のようなレインフォース材e等を用いなくても、フロア材2の所望の強度・剛性を得ることができ、レインフォース材e等のためのプレス成形金型の製作費や部品コスト或いは部品管理費等を節約することができる。
【0023】
また、補強メンバー1を略ハット状にプレス成形する際に、補強メンバー1の表裏両面に不均一な残留応力が残ることになるが、薄肉状の溶接部3を形成することにより、当該残留応力を均一化することができる。
【0024】
図4は本発明に係る他の実施例を採用した補強メンバー1の断面図である。
【0025】
上記の実施例における溶接部3が、フランジ部1bの一面側のみ圧潰することにより形成して、他面側を平面状に形成したのに対し、図4に示す他の実施例においては、フランジ部1bの一面側から他面側に突出するように圧潰形成されている点において相違する。
【0026】
この結果、図4に示す他の実施例においては、上記一の実施例を奏する効果と同様な効果を奏するものであると共に、フランジ部1bの圧潰が他面部まで突出するまで行われた結果、補強メンバーの表裏両面の残留応力を更に均一化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上説明したように、本発明における補強メンバー等の溶接部材は、その溶接部が当該溶接部材の外郭線より張出して形成した張出し部を有することから、溶接対象部材への溶接面積を十分確保して溶接強度を高めることができると共に、張出し部の存在により外郭線より張出した分、溶接部(例えばフランジ部)の幅を狭くすることが可能であり、レインフォース材等を用いなくても、溶接対象部材の所望の強度・剛性を得ることができ、レインフォース材等のためのプレス成形金型の製作費や部品コスト或いは部品管理費等を節約することができるために、例えば自動車のフロア材あるいはダッシュロア材のような板材からなる溶接部材の剛性を高めるために剛性強化部材としてスポット溶接される補強メンバー等の溶接部材等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る一実施例を採用した溶接部材である補強メンバーを溶接対象部材である自動車のフロア材に装着した状態を描画した縦断面図である。
【図2】図1における補強メンバーの一部を破断して描画した斜視図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】本発明の他の実施例を採用した溶接部材である補強メンバーの図2のA−A断面図である。
【図5】従来における溶接部材である補強メンバーを溶接対象部材である自動車のフロア材に装着した状態を描画した縦断面図である。
【図6】従来におけるレインフォースを使用した場合の溶接部材である補強メンバーを溶接対象部材である自動車のフロア材に装着した状態を描画した縦断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 補強メンバー(溶接部材)
1a 本体部
1b フランジ部
2 フロア材(溶接対象部材)
3 溶接部
3a 張出し部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポット溶接により溶接対象部材に接合される補強メンバー等の溶接部材であって、該溶接部材における溶接部を前記溶接部材の一般板厚よりプレス成形により薄肉形状に形成するとともに、当該溶接部には、前記薄肉形状にする際に前記溶接部材の外郭線より張出して形成した張出し部を有することを特徴とする溶接部材。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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