説明

補強盛土の壁面構造及びその施工法

【課題】補強盛土表面を保護する壁面構造の施工を容易化し、盛土沈下による壁面構造とのズレを吸収し、盛土内に生じる水を良好に排水する。
【解決手段】鋼製枠1の背後に補強シート2を敷き、その上に盛土3する。その手順を繰り返して補強盛土Aを構築する。盛土A壁面に沿って、複数本のヘチマ構造状の目地材5複数本を縦横に配するとともに、各目地材5を互いに連続させて壁面を複数に分割する。目地材5を含む壁面表面に硬化材8を吹付けて壁面構造Bを構築する。ヘチマ構造状の目地材5が盛土Aの沈下量を吸収し、水を良好に排水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は補強盛土の壁面の構造に関するものであり、また、その施工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
補強盛土は鋼製枠、内壁シート、補強シート、土嚢などから構成される。
これら補強盛土の材料である補強シートや土嚢、内壁シートは、紫外線劣化を生じる可能性がある。
この紫外線劣化を避けるために、例えば特開平10−98044号公報に記載された発明のように、壁面材としてコンクリートブロックを用いて、この壁面材によって補強土の表面を覆うことなどが採用されている。
一般的に、壁面材としてコンクリートブロックを用いた施工では、補強盛土とブロックの間に砕石を間詰めし、盛土の中に敷設したベルトによって補強盛土とブロックを連結していた。
このような施工法は、手間と材料費が高価となる。
また、施工管理と盛土材が不適切な場合に、壁面材の前倒れなどの問題が生じていた。
【0003】
切土のり面では、吹付けコンクリート、モルタルを用いて切土表面を覆う工法も採用されている。
しかしながら、吹付け工法における課題として、のり面の溶脱によって吹付け面との間にズレが生じ、吹付け面にクラックが生ずる問題があった。
また盛土のり面では従来、盛土の沈下と、切土のり面と同様な、盛土の溶脱が予想され、吹付け工法は使用されてこなかった。
本発明は、盛土を構築する際に、排水目地を設けることで盛土の沈下によるひび割れと、また内壁シートや土嚢を用いることで溶脱を防ぐ事ができる。
このような、盛土の沈下による吹付け面との間のズレを吸収し、盛土側の水を排水するために、吹付け面の所要箇所に排水目地を設けて、盛土の沈下量の吸収と、背面からの排水を行うことが考えられる。
しかしながら従来の目地材には、瀝青繊維室板やゴム発砲体などが使用されていたが、いずれも難透水性材料であるため盛土内の排水のため、コンクリート擁壁などでは壁面に別途に排水パイプを設置することが必要となる。
またコンクリート構造物の変位に必ずしも追従できずに、目地に空隙が生じたり、壁面から飛び出したり、高温化では流動化し壁面から飛び出したりなどの不具合が生じている。
また平方メートル単位の販売が一般的であって、使用する寸法に合わせカットする作業が現場で必要となっていた。
【特許文献1】特開平10−98044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、盛土表面を保護する壁面構造の施工を容易化することであり、盛土沈下による壁面構造とのズレの吸収であり、盛土内に生じる水の排水である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる補強盛土の壁面構造は、
補強盛土の壁面に硬化材を吹付けて構築する壁面構造であって、
壁面に沿って、複数本のヘチマ構造状の目地材を縦横に配するとともに、各目地材を互いに連続させて壁面を複数に分割し、
目地材を含む壁面表面に硬化材を吹付け、
盛土の変形を目地材の収縮によって吸収する、
本発明にかかる他の補強盛土の壁面構造は、
補強盛土は、鋼製枠の背後に補強シートを敷設し、その上に盛土するという手順を繰り返して構築するものである。
本発明にかかる他の補強盛土の壁面構造は、
少なくとも目地材の硬化材表面と連続する側面は、透水性材料によって覆うものである。
本発明にかかる他の補強盛土の壁面構造は、
目地材として、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオレフィンなどの合成樹脂材料を使用するものである。
更に、本発明にかかる補強盛土壁面の施工法は、
構築した補強盛土の壁面に沿って、複数本のヘチマ構造状の目地材を縦横に配するとともに、
各目地材の端部同士を接触させて壁面を複数に分割し、
目地材を含む壁面表面に硬化材を吹付け、
盛土の変形を目地材の収縮によって吸収するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は以上のような構成より成り、以下の効果のうちの少なくともいずれか一つを達成できる。
<a>硬化材の吹付け工法で補強盛土表面を施工するため、コンクリートブロックを使用したときのような施工の複雑さはなく、施工が簡易で施工期間を短くでき、また材料費も安価となる。
<b>補強盛土は、また、内壁シートや土嚢を用い構築するものであるため、盛土材の溶出を袋体によって防ぐことが可能である。
<c>複数本のヘチマ構造状の目地材を壁面に縦横に配するため、補強盛土が沈下したとき、その目地材が収縮して沈下量を吸収し、壁面とのズレが生じず、クラックの発生が抑えられる。
また、目地に空隙が生じたり、壁面から飛び出すなどの不具合も発生しない。
<d>複数本のヘチマ構造状の目地材を使用するため、透水性が良好で、盛土側の水を良好に通す排水性能を確保できる。
その結果、壁面に別途排水パイプを設けるなどの必要が生じない。
<e>樹脂製線材は軽量で、取扱いが容易であるとともに、予め工場で成形しておくことで、現場でのカット作業などが著しく省力化できる。
<f>樹脂製線材の少なくとも硬化材表面と連続する表面を、不織布などの透水性材料によって覆うことによって、線材がバラバラになることがなく、盛土から浸み出る水を透すための透水性も損なわない。
<g>目地部分を石積み壁面の目地のように擬し、吹付け面を石のように擬することで、趣のある石積み壁面などとして様々なデザインに仕上げることが可能となる。
【実施例1】
【0007】
以下、図に示す実施例に基づき、本発明を施工順に詳細に説明する。
<1> 盛土
図1〜図4に示す実施例では、L形に屈曲した鋼製枠1を使用して補強盛土Aを構築した場合である。
鋼製枠1を、構築すべき補強盛土Aの前面位置に設置し、その背後にジオテキスタイルやジオグリッドなどの補強シート2を敷設する。
鋼製枠1と補強シート2とは、結束などによって連結する。
補強シート2の上に盛土3をし、まず一段目の盛土3施工を行う。
【0008】
<2> 盛土の積み上げ
前記した一段目の鋼製枠1の上に、2段目の鋼製枠1を積み上げて、盛土3を行う。
以上の手順を繰り返し、複数段積み上げて、補強盛土Aを形成する。(図3)
【0009】
<3> 目地材の取付け
前記した鋼製枠1に沿って目地材5を配設する。(図4)
目地材5としては、図6及び図7に示すように、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオレフィンなどの合成樹脂材料によって形成した線材6を多数本集めた、言わば多数本の繊維が絡み合うように集められたヘチマ構造のような部材を使用するものである。
このような形状を、本発明ではヘチマ構造状と呼んでいる。
前記線材6を多数本束ね、その周囲を織布や不織布やメッシュ布などの透水性材料7で覆って、線材6がバラけるのを防いでいる。
このような目地材5を縦横に配して、各目地材5の端部を、他の目地材5に接触させて連続させ、目地材5によって囲んだ部分を複数形成し、壁面を複数に分割する。
目地材5は、鋼製枠1に結束するなどして取付ける。
目地材5は互いに連続するもので、目地材5が他の目地材5のいずれかと繋がって、地面まで連通している。
つまりは、盛土A側から目地材5へ流れ込んだ水は、繋がった目地材5を辿って、地面まで導かれるようになっている。
【0010】
<4> 吹付け
補強盛土Aの壁面に、モルタルやコンクリートなどの硬化材8を吹付ける。
吹付けは、目地材5によって囲まれた空間、及び目地材5表面に吹付ける。
このようにして補強盛土Aの表面に、壁面構造Bを構築する。
目地材5の表面は、コテなどによって仕上げ、目地材5によって囲まれた表面は、石表面を模して仕上げる。(図8)
【0011】
<5> 沈下吸収と排水
補強盛土Aが経年変化によって沈下した場合、合成樹脂製線材6を束ねた目地材5が柔軟に収縮し、その沈下量を吸収し、壁面構造Bにクラックが生じるのを防止する。
盛土A側に発生した水は、壁面構造Bの目地材5を通して、盛土Aの外へ排出される。
目地材5は互いに連続しているため、目地材5を辿って、地面まで誘導・排水されることになる。
【実施例2】
【0012】
図5に示すのは、土嚢状の袋体9を使用して補強盛土Aを構築した場合であって、袋体9は直方体形状である。
補強シート2を敷設した前面に、袋体9を設置して、その背後に盛土3する。
これを繰り返して、補強盛土Aを構築する。
袋体9の前面に沿って金網4を張り、この金網4に結びつけて目地材5を配する。
目地材5の間に硬化材8を吹き付けて、壁面構造Bを構築したものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】壁面構造の施工状態の斜視図
【図2】壁面構造の施工順序説明図
【図3】壁面構造の施工順序説明図
【図4】壁面構造の施工順序説明図
【図5】他の補強盛土への施工説明図
【図6】目地材の斜視図
【図7】目地材の平面図
【図8】壁面構造の施工状態の拡大斜視図
【符号の説明】
【0014】
A:補強盛土
B:壁面構造
1:鋼製枠
2:補強シート
3:盛土
4:金網
5:目地材
6:線材
7:透水性材料
8:硬化材
9:袋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強盛土の壁面に硬化材を吹付けて構築する壁面構造であって、
壁面に沿って、複数本のヘチマ構造状の目地材を縦横に配するとともに、各目地材を互いに連続させて壁面を複数に分割し、
目地材を含む壁面表面に硬化材を吹付け、
盛土の変形を目地材の収縮によって吸収する、
補強盛土の壁面構造。
【請求項2】
補強盛土は、鋼製枠の背後に補強シートを敷設し、その上に盛土するという手順を繰り返して構築してなる、
請求項1に記載の補強盛土の壁面構造。
【請求項3】
少なくとも目地材の硬化材表面と連続する側面は、透水性材料によって覆ったことを特徴とする、
請求項1又は2に記載の補強盛土の壁面構造。
【請求項4】
目地材として、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオレフィンなどの合成樹脂材料を使用したことを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の補強盛土の壁面構造。
【請求項5】
構築した補強盛土の壁面に沿って、複数本のヘチマ構造状の目地材を縦横に配するとともに、
各目地材の端部同士を接触させて壁面を複数に分割し、
目地材を含む壁面表面に硬化材を吹付け、
盛土の変形を目地材の収縮によって吸収する、
補強盛土壁面の施工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−101106(P2010−101106A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274938(P2008−274938)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000201490)前田工繊株式会社 (118)
【Fターム(参考)】