説明

補機ギアボックスを駆動する手段を備えたガスタービンエンジン、および上記エンジンを取り付ける方法

【課題】2つのエンジンシャフトから動力を取り出す装置を開発する。
【解決手段】ツインスプール式ガスタービンエンジンであって、中間ケーシング(50)によって支持された軸受けに取り付けられた高圧ロータ(2)および低圧ロータ(1)と、少なくとも1つの補機ギアボックスと、補機ギアボックスに運動を伝達するための同軸のラジアルシャフト(11、12)を駆動する駆動手段とを備え、前記駆動手段は上記ラジアルシャフト(11、12)の一方を駆動する、高圧ロータ(2)に接続された高圧駆動ギア(9)と、高圧ロータ(2)の上流の低圧ロータ(1)に接続され、上記ラジアルシャフト(11、12)の他方を駆動する低圧駆動ギア(7)とを備えてなり、低圧駆動ギア(7)が、軸方向位置決め用軸受け(54)によって中間ケーシング(50)内に支持された、ツインスプール式ガスタービンエンジンに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助機械が取り付けられたギアボックスのギアを駆動する手段を備えたツインスプール式ガスタービンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
航空ガスタービンエンジンによって生成される動力の一部は、エンジンと航空機との両方の様々な補助機械に動力を供給するために使用されており、これらのものに、エンジンは推進力の一部を供給している。
【0003】
この動力の一部は現在、高圧(HP)コンプレッサから取り出されており、高圧コンプレッサからの圧縮空気は、特に航空機の機内に対して加圧および空気調整を行うために、あるいは氷結を防止するために使用されている。この動力の別の一部はエンジンの高圧段のシャフトから機械的に取り出されて、エンジンのケーシング上に位置決めされた補機ギアボックスの入力シャフトを駆動している。この入力シャフトは、中間ケーシングの構造アームを通って延びたラジアルトランスミッションシャフトによって回転可能に駆動され、自体は高圧段のシャフトに固定されたギアによって駆動される。
【0004】
英語の用語および略語「補機ギアボックス(AGB)」によって当業者によく知られている補機ギアボックスは、様々な機械、あるいは補助機械、例えば発電機、始動モータ、交流発電機、油圧ポンプ、燃料ポンプまたはオイルポンプなどを支持している。これらの様々な補助機械は、ラジアルトランスミッションシャフトを介して高圧段のシャフトによって機械的に駆動されている。
【0005】
現在、取り出される機械的動力の量を増大させる傾向があるが、これはより大きな汎用性を有するために保持されている電気手段によって、かつてない程の役割が果たされていることによる。
【0006】
しかし、過剰な量の機械的動力を取り出すことは、高圧スプールの動作に対して有害な影響を与える。これは、特にエンジンが低速で稼働しているとき、コンプレッサを乱調に陥らせる傾向があることによる。
【0007】
FR2882096は、低圧(LP)スプールから機械的動力の一部を取り出すことを開示している。図1を参照すると、FR2882096は、高圧駆動ギアと低圧駆動ギアとを高圧コンプレッサシャフトと低圧コンプレッサシャフトとにそれぞれ固定して備えたタービンエンジンについて記述しており、高圧駆動ギアと低圧駆動ギアとは、補機ギアボックスのラジアルトランスミッションシャフトを駆動している。
【0008】
駆動ギアを備えたラジアルトランスミッションシャフトを低圧コンプレッサシャフトと高圧コンプレッサシャフトとに取り付けることは、精確な調整を必要とする。低圧駆動ギアは、それが噛み合うラジアルトランスミッションシャフトの角度傾斜に相当する角度伝達装置をもって、低圧コンプレッサシャフトに固定して取り付けられている。この角度伝達装置の軸方向の位置は、調整用パッキングピースによってもたらされ、この調整用パッキングピースの寸法を、低圧シャフトとラジアルシャフトとの間の最適な動力の伝達を保障するために、極めて精確に画定する必要がある。様々な構成要素に対する製作公差を考えると、調整用パッキングピースの寸法の規定を得ることは困難である。
【0009】
したがって、低圧駆動ギアが軸方向に正確に位置決めされていない場合、ラジアルトランスミッションシャフトを取り外して、角度伝達装置を修正してその寸法を再加工し、ラジアルトランスミッションシャフトを再度位置決めする必要がある。したがって、タービンエンジンの取り付けには、駆動ギアを位置決めし、駆動ギアの寸法を再加工するステップを繰り返すことが必要であり、このようにしてタービンエンジンの取り付けに掛かる時間が増大する。
【特許文献1】仏国特許出願公開第2882096号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような取り付けは、ラジアルトランスミッションシャフトが無い状態で駆動ギアが位置決めされる場合、駆動ギアを心合わせすることがより困難となるため、より一層複雑になる。
【0011】
こうした理由から、本出願人は、これらの欠点を緩和することを目的として、2つのエンジンシャフトから動力を取り出す新たな装置を開発することを試みた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、ツインスプール式ガスタービンエンジンであって、中間ケーシングによって支持された軸受けに取り付けられた高圧ロータおよび低圧ロータと、少なくとも1つの補機ギアボックスと、補機ギアボックスに運動を伝達するための同軸のラジアルシャフトを駆動する駆動手段とを備え、前記駆動手段は上記ラジアルシャフトの一方を駆動する、高圧ロータに接続された高圧駆動ギアと、高圧ロータの上流の低圧ロータに接続され、上記ラジアルシャフトの他方を駆動する低圧駆動ギアとを備えてなり、低圧駆動ギアが、軸方向位置決め用軸受けによって中間ケーシング内に支持された、ツインスプール式ガスタービンエンジンに関する。
【0013】
本発明によって、低圧(LP)駆動ギアは、製作公差を回避するようなやり方で、ラジアルトランスミッションシャフトに対して軸方向に位置決めされる。
【0014】
低圧ロータが取り付けられる前に低圧ギアが取り付けられるが、ラジアルトランスミッションシャフトは既に定位置にあり、軽量の構成要素だけを取り扱えばよい状態にある。
【0015】
好ましくは、駆動手段はラジアルシャフトを駆動する2つのギアを備え、これらが、中間ケーシングに固定された保護ボックス内に取り付けられる取り出しモジュールを形成している。
【0016】
低圧駆動ギアは有利に、その軸方向位置を、ラジアルトランスミッションシャフトに固定された取り出しギアに対して調節する設定手段を備える。
【0017】
動力伝達スプラインが、低圧駆動ギアの内部面上に、また低圧ロータのシャフトの外部面上に形成されている。これらのスプラインは互いと協働して、低圧ロータの動きを低圧ギアに伝達する。
【0018】
さらに好ましくは、軸方向位置決め用軸受けは、ボール軸受けの形態にあり、そのボールは、低圧駆動ギアに接続された内部保持リングと、保護ボックスに接続された外部保持リングとの間に保持されている。
【0019】
有利に、ロック手段が低圧駆動ギアの軸方向位置を取り出しギアに対して固定し、ロックナットが、低圧駆動ギアの外部面に形成されたネジ山上にネジ締めされている。
【0020】
好ましくは、低圧駆動ギアは、歯セット(toothset)を支持する放射状の上流部と、軸方向位置決め用軸受けが外部から取り付けられた円筒状の下流部とを有する。
【0021】
さらに好ましくは、低圧駆動ギアの歯セットは、下流方向に面している。
【0022】
本発明はまた、エンジンを取り付ける方法であって、
高圧ロータを取り付けるステップと、
ラジアルトランスミッションシャフトを備えた取り出しモジュールを、エンジンの中間ケーシングに固定され、軸方向位置決め用軸受けが固定された保護ボックスの中に取り付けるステップと、
低圧駆動ギアを、軸方向位置決め用軸受けと同軸に、その内側に位置決めするステップと、
低圧駆動ギアの軸方向位置を取り出しギアに対して設定するステップと、
低圧駆動ギアの位置を、前記ギアを支持する軸方向位置決め用軸受けに対してロックするステップと、
低圧駆動ギアの動力伝達スプラインにシャフトの動力伝達スプラインと協働させながら、低圧ロータのシャフトを挿入するステップとを含む方法にも関する。
【0023】
添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態についての以下の説明を読めば、本発明はより充分に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図2を参照すると、本発明のエンジンは、ツインスプール式ガスタービンエンジンであって、エンジンの軸線3のまわりで回転できるように取り付けられた低圧(LP)ロータ1と高圧(HP)ロータ2とを備える。このタイプのエンジンは当業者によく知られている。これは、例えばターボジェットエンジンまたはターボプロップエンジンであることができる。これは実際には、低圧スプールと高圧スプールとを有した、ツインスプール式の、コンプレッサとタービンとを備えた任意のエンジンであることができる。本明細書では、内部/外部、内側/外側を、エンジンに対して相対的に、半径方向に、エンジンの軸線3に対して内部/外部、内側/外側を示すものとして使用する。
【0025】
より具体的に述べると、このエンジンは機能的に、上流方向からガスが流れる方向に下流にかけて、ファン、コンプレッサ、燃焼室、タービン、およびジェットパイプを備える。このエンジンはツインスプール式エンジンであるので、高圧コンプレッサの上流に低圧コンプレッサを、低圧タービンの上流に高圧タービンを備える。ファンロータは低圧コンプレッサのシャフト4に固定されており、低圧コンプレッサ自体は低圧タービンのシャフト5に固定されている。したがって低圧ロータ1は、これらの3つの構成要素を一緒に固定して備える。低圧タービンのシャフト5は、高圧コンプレッサと高圧タービンとを一緒に固定して形成した高圧ロータ2の内側に同軸に延びている。
【0026】
低圧コンプレッサのシャフト4の下流端部は、低圧タービンのシャフト5に固定されているが、この下流端部は、高圧ロータ2の上流端部のすぐ上流に位置している。低圧コンプレッサのシャフト4は、低圧タービンのシャフト5の外側に同軸に固定されている。低圧コンプレッサのシャフト4の下流端部と高圧ロータ2の上流端部との間にはシール6があり、これによって、外側に位置した潤滑油の霧を浴びる領域と、内側に位置した主に空気しか流れない領域との間で密閉を行う。
【0027】
ロータシャフト4、5は、エンジンの中間ケーシング50内の軸受けによって支持されている。
【0028】
低圧コンプレッサのシャフト4は、その下流端部付近に駆動ギア7を備える。以下ではこれを低圧駆動ギア7と呼ぶ。この低圧駆動ギア7は、低圧コンプレッサのシャフト4の下流軸受けの下流に位置している。高圧ロータ2は、その上流端部付近に駆動ギア9を備える。以下ではこれを高圧駆動ギア9と呼ぶ。この高圧駆動ギア9は、高圧ロータ2の上流軸受けの上流に位置している。
【0029】
図3を参照すると、低圧駆動ギア7は、低圧コンプレッサのシャフト4の外側に同軸に延びた環状体の形態にある。低圧駆動ギア7は、中間ケーシング50に固定して取り付けられた軸方向位置決め用軸受け54によって支持されている。この軸方向位置決め用軸受け54は、ここでは、低圧駆動ギア7の外側で同軸に延びたボール軸受け54の形態にある。ボール軸受け54は、図4に表している中間ケーシング50の2つの支持アーム51、52によってしっかりと保持されている。支持アーム51、52は実質的に放射状である。
【0030】
支持アーム51、52は、ここでは四角形の断面を有するが、いくつかの異なった断面形状のアームも適している場合がある。
【0031】
図3を参照すると、ボール軸受け54は、ボール541の集合を、内部保持リング542と外部保持リング543との間で保持して備える。外部保持リング543は、この事例ではネジを使用して支持アーム51、52のフランジに固定されており、内部保持リング542は、低圧駆動ギア7の外部面と表面接触している。低圧駆動ギア7は実質的に放射状の上流部分を備え、放射状の上流部分上には、後で詳しく述べる補助機械の駆動ギアの歯セットに一致することを目的とした歯セットが形成されてある。この低圧駆動ギア7は、ボール軸受け54の内部リングと接触した実質的に円筒状の下流部分をさらに備える。したがって、ボール軸受け54は、低圧駆動ギア7の歯セットの下流に、上記低圧駆動ギア7に対して外部に、同軸に取り付けられている。したがって駆動ギアを、エンジンの上流端部からボール軸受け54の中に挿入することができる。低圧駆動ギア7は、ボール軸受け54に対する低圧駆動ギア7の相対的な軸方向位置を調整するためのパッキングピースを備える。このパッキングピースは、長手方向の様々な厚みを有したパッキングリング60の形態にあり、その直径は、ボール軸受け54の直径と実質的に等しい。駆動ギア7、14の製作公差を補償するように、このようなパッキングリング60が、低圧駆動ギア7の円筒状下流部とボール軸受け54との間で軸方向に滑り込まされる。
【0032】
駆動ギアの円筒状下流部は、このように軸方向位置決め用軸受け54によって支持されており、そこには、低圧シャフトの挿入前にはギアを定位置に保持するものはない。軸受け54は、軸方向にギア7の円筒状下流部上に滑り込まされたパッキングリング60を介して、ギア7を支持し、軸方向に位置決めする。
【0033】
低圧駆動ギア7の内部面には動力伝達スプライン41が形成されている。スプライン41は、低圧ロータ1のシャフト4の外部面上に形成された軸方向の動力伝達スプライン42と協働するように、軸方向に導かれている。
【0034】
2セットのスプライン41、42は協働して、低圧駆動ギア7が低圧コンプレッサのシャフト4に対して軸方向にのみ動けるようにすることによって、軸方向の位置決めをより簡単にする。
【0035】
図3を参照すると、低圧コンプレッサの低圧駆動ギア7とシャフト4とは、低圧駆動ギア7の外部面上に形成されたネジ山にネジ締めされる軸方向のロックナット43によって固定されている。ナット43を締めると、低圧駆動ギア7、パッキングリング60、およびボール軸受け54がしっかりと定位置に保持される。
【0036】
図2を参照すると、エンジンは、低圧シャフトから運動を伝達するための、以下で低圧のラジアルトランスミッションシャフト11と呼ぶ、ラジアルシャフト11と、高圧シャフトから運動を伝達するための、以下で高圧のラジアルトランスミッションシャフト12と呼ぶ、ラジアルシャフト12とを備える。
【0037】
低圧のラジアルトランスミッションシャフト11と高圧のラジアルトランスミッションシャフト12とはそれぞれ駆動手段によって回転されて、低圧駆動ギア7上と高圧駆動ギア9上とでそれぞれ取り出しモジュール29を形成している。
【0038】
高圧のラジアルトランスミッションシャフト12は、その内部端部でモジュール29の取り出しギア13に接続され、固定されている。取り出しギア13を以下で高圧取り出しギア13と呼ぶが、これは、高圧駆動ギア9と噛み合うように設計されている。低圧のラジアルトランスミッションシャフト11は、その内部端部でモジュール29の取り出しギア14に接続され、固定されている。取り出しギア14を以下で低圧取り出しギア14と呼ぶが、これは低圧駆動ギア7と噛み合うように設計されている。低圧取り出しギア14は、それよりも直径の大きな高圧取り出しギア13と同軸であり、その外側に位置付けられている。
【0039】
ラジアルトランスミッションシャフト12と11との間に取り付けられているのは1セットの軸受けであって、これは、ラジアルシャフト12、11が互いに対して、高圧ロータ2と低圧ロータ1とがそれぞれ回転するやり方にしたがって同じ方向または反対方向に回転できるようにする。
【0040】
ラジアルトランスミッションシャフト12、11は、エンジンの取り出しモジュール29のボックス20に保持されている。ボックス20は中間ケーシング50に固定されている。以下でこれをボックス20と呼ぶ。このボックス20は筒形状であり、高圧のラジアルトランスミッションシャフト12と低圧のラジアルトランスミッションシャフト11とのそれぞれに対して同軸に延びている。
【0041】
低圧駆動ギア7が取り付けられ、位置決めされるやり方について、以下により詳しく説明する。
【0042】
エンジンの取り付けにおいては、高圧ロータ2が最初に取り付けられる。次いで取り出しモジュール29のボックス20が取り付けられる。言い換えると、取り出しモジュール29は予め組み立てられてから「そのまま」直接エンジンに取り付けられる。ボックス20は、エンジンの固定構造のフランジに固定される。したがって、このボックスは中間ケーシング50に固定されている。モジュール29が取り付けられると、高圧のラジアルトランスミッションシャフト12の高圧の取り出しギア13は、高圧ロータ2の高圧駆動ギア9と噛み合う。
【0043】
次いでラジアルトランスミッションシャフト11、12がエンジンのラジアルアームの中に配置される。ラジアルトランスミッションシャフト11、12は、構造ケーシングである中間ケーシングのアームを通って延びて、ターボジェットエンジンの固定された構造の一部を形成し、その外部包囲体はファンケーシングと連続したものとして延び、これには一般的に、動力供給の対象である航空機にターボジェットを固定するためのパイロンが取り付けられる。
【0044】
次のステップは、ボール軸受け54を保護ボックス20に取り付けることである。したがって保護ボックス20は、エンジンの中間ケーシング50に固定される。軸受け54のボール541は、内部保持リング542と、支持アーム51、52を介して保護ボックス20に接続された外部保持リング543との間に保持される。
【0045】
低圧力駆動ギア7が、軸受け54と同軸に、その内側に位置決めされることによって、軸方向の並進運動が可能になる。
【0046】
遊びの概算ステップでは、低圧駆動ギア7とラジアルトランスミッションシャフト11の駆動ギア14との間のパッキングピースの寸法が概算される。
【0047】
低圧駆動ギア7が取り外され、適切な厚みのパッキングリング60が、軸方向にギア7の外側のまわりに滑り込まされて、低圧駆動ギア7が転がり軸受け54と同軸に、その内側に再度取り付けられる。
【0048】
低圧駆動ギア7の、転がり軸受け54に対する位置は、ロックナット43を、ここで転がり軸受け54によって支持されている低圧駆動ギア7の外側面に形成されたネジ山に締め付けることによってロックされる。
【0049】
低圧ロータのシャフト4がエンジンの後部を介して導入されると同時に、低圧駆動ギア7の動力伝達スプライン41が、低圧ロータ1の動力伝達スプライン42と協働するようになる。
【0050】
こうすることによって低圧駆動ギア7の位置決めおよび寸法決めを繰り返すステップが回避される。
【0051】
このようにして、取り出しモジュール29と、低圧ロータ1および高圧ロータ2それぞれと、低圧のラジアルトランスミッションシャフト11および高圧のラジアルトランスミッションシャフト12それぞれとが、ラジアルトランスミッションシャフト11、12を駆動する手段によって、互いに対して定位置に正しく取り付けられる。
【0052】
エンジンの動作中、低圧ロータ1および高圧ロータ2はそれぞれ、エンジンが回転するやり方にしたがって同じ方向または異なった方向に回転し、低圧ロータ1のシャフト4の動力伝達スプライン42は、低圧駆動ギア7の動力伝達スプライン41と協働する。低圧駆動ギア7は、低圧のラジアルトランスミッションシャフト11に固定された低圧取り出しギア14を回転させ、それと噛み合う。転がり軸受け54の内部保持リング542は回転し、外部保持リング543は静止したままとなる。
【0053】
低圧駆動ギア7と高圧駆動ギア9とはそれぞれ、取り出しモジュール29の低圧取り出しギア14と高圧取り出しギア13とを回転可能に駆動し、これらの取り出しギアはそれぞれ、低圧のラジアルトランスミッションシャフト11と高圧のラジアルトランスミッションシャフト12とを回転可能に駆動する。
【0054】
ラジアルトランスミッションシャフト11、12は、それらの外側端部で1つまたは複数の補機ギアボックスに接続されている。したがって、ラジアルトランスミッションシャフト11、12はそれぞれ異なった補機ギアボックスを駆動することができ、あるいは代替方法として、シャフト11、12は、それらが同一の補機ギアボックスを駆動するように接続される。これを行うために、シャフト11、12は、例えば差動歯車セットの入力を駆動することができ、差動歯車セットの出力は、当業者によく知られているやり方で補機ギアボックス駆動シャフトに接続される。
【0055】
なお、この図の実施形態では、ラジアルトランスミッションシャフト11、12の軸線30は、エンジンの軸線3と直角をなさないことに留意されたい。ロータ1、2の駆動ギア7、9と取り出しモジュール29の取り出しギア14、13とは、これに応じた構造設計がなされている。選択された特定の実施形態に応じて、これらのギアは直線切りのスパーギア、ベベルギア、または正確な取り出しを保障するために当業者によって設計された他の何らかの種類のギアであることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】低圧駆動ギアが低圧ロータのシャフトに固定された、従来技術のエンジンの断面図である。
【図2】低圧駆動ギアが軸方向位置決め用軸受けによって支持された、本発明のエンジンの断面図である。
【図3】図2のギアの拡大図である。
【図4】本発明の軸方向位置決め用軸受けを表す、2つの軸線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 低圧ロータ
2 高圧ロータ
3 エンジンの軸線
4 低圧コンプレッサのシャフト
5 低圧タービンのシャフト
6 シール
7 低圧駆動ギア
9 高圧駆動ギア
11 低圧のラジアルトランスミッションシャフト
12 高圧のラジアルトランスミッションシャフト
13 高圧の取り出しギア
14 低圧取り出しギア
20 保護ボックス
29 取り出しモジュール
30 ラジアルトランスミッションシャフトの軸線
41、42 動力伝達スプライン
43 ロックナット
50 中間ケーシング
51、52 支持アーム
54 軸方向位置決め用軸受け
60 パッキングリング
541 ボール
542 内部保持リング
543 外部保持リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツインスプール式ガスタービンエンジンであって、中間ケーシングによって支持された軸受けに取り付けられた高圧ロータおよび低圧ロータと、少なくとも1つの補機ギアボックスと、補機ギアボックスに運動を伝達するための同軸のラジアルシャフトを駆動する駆動手段とを備え、前記駆動手段は前記ラジアルシャフトの一方を駆動する、高圧ロータに接続された高圧駆動ギアと、高圧ロータの上流の低圧ロータに接続され、前記ラジアルシャフトの他方を駆動する低圧駆動ギアとを備えてなり、低圧駆動ギアが、軸方向位置決め用軸受けによって中間ケーシング内に支持される、ツインスプール式ガスタービンエンジン。
【請求項2】
駆動手段が、ラジアルシャフトを駆動する2つのギアを備え、これらが、中間ケーシングに固定された保護ボックス内に取り付けられる取り出しモジュールを形成している、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
低圧駆動ギアが、低圧駆動ギアの軸方向位置をラジアルトランスミッションシャフトに固定された取り出しギアに対して調整することが可能なように、低圧駆動ギアを軸方向位置決め用軸受けに対して設定する設定手段を備える、請求項1または2に記載のエンジン。
【請求項4】
動力伝達スプラインが、低圧駆動ギアの内部面上に形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項5】
動力伝達スプラインが、低圧ロータのシャフトの外部面上に形成され、低圧駆動ギアの動力伝達スプラインと協働するように設計される、請求項4に記載のエンジン。
【請求項6】
軸方向位置決め用軸受けが、ボール軸受けの形態にあり、そのボールが、低圧駆動ギアに接続された内部保持リングと保護ボックスに接続された外部保持リングとの間に保持される、請求項2から5のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項7】
ロック手段が、低圧駆動ギアの取り出しギアに対する軸方向位置をロックする、請求項3から6のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項8】
ロック手段が、低圧駆動ギアの外部面上に形成されたロック用ネジ山にネジ締めされるロックナットである、請求項7に記載のエンジン。
【請求項9】
低圧駆動ギアが、歯セットを支持する放射状の上流部と、軸方向位置決め用軸受けが外部から取り付けられた円筒状の下流部とを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項10】
低圧駆動ギアの歯セットが下流方向に面する、請求項9に記載のエンジン。
【請求項11】
請求項2、5と請求項7から10のいずれか一項とに記載のエンジンを取り付ける方法であって、
高圧ロータを取り付けるステップと、
ラジアルトランスミッションシャフトを備えた取り出しモジュールを、エンジンの中間ケーシングに固定され、軸方向位置決め用軸受けが固定された保護ボックスの中に取り付けるステップと、
低圧駆動ギアを、軸方向位置決め用軸受けと同軸に、その内側に位置決めするステップと、
低圧駆動ギアの軸方向位置を取り出しギアに対して設定するステップと、
低圧駆動ギアの位置を、前記ギアを支持する軸方向位置決め用軸受けに対してロックするステップと、
低圧駆動ギアの動力伝達スプラインにシャフトの動力伝達スプラインと協働させながら、低圧ロータのシャフトを挿入するステップとを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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