説明

補間フレーム作成方法および補間フレーム作成装置

【課題】より高品位な補間フレーム画像を作成する補間フレーム作成方法および補間フレーム作成装置を提供する。
【解決手段】前記入力フレーム画像間のブロックマッチング処理により、フレーム画像内の画像の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部12と、検出した動きベクトルを用いて補間フレームを作成して前記入力フレーム画像間に挿入する補間画像作成部13と、を備え、動きベクトル検出部12は、補間フレーム内の補間ブロックについて、対応する画素値どうしの差分絶対値の累積加算値であるSADを算出し、算出されたSADの極小点を検出して動きベクトル候補を検出する極小点判定手段と、極小点判定手段により、複数の動きベクトル候補が検出された場合に、複数の動きベクトル候補についてのSAD分布から、斜め線画像か否かを判断する斜め線検出部12Aと、を備える補間フレーム作成装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は補間フレーム作成方法および補間フレーム作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)に動画像を表示する場合、LCDは例えば60フレーム/秒のレートでフレーム画像(以下単にフレームと記載する)を表示する。このフレームは例えば60フィールド/秒のインターレースを処理して得られる順次走査信号である。つまりLCDは、1フレームを1/60秒間表示し続ける。
【0003】
LCDに表示されたこのような映像を視聴する場合、人の目には1フレーム前の画像が残像として残る。このため、映像中の動いている物体画像がボケて見えるか、物体画像の動きが不自然に見えることがある。このような現象は、大画面になるほど顕著に表れる。
【0004】
動画像のこのようなボケを防止するために、連続する2つのフレームの間に、補間フレームを挿入して動画像を表示する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。この方法では、注目画素を中心とした設定範囲内の画素のそれぞれの動きベクトルを検出し、設定範囲内において最も数の多い同一の検出値を求めて、表示画素の表示位置を補正することによって、ノイズ等による画質の劣化を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−254403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
動きベクトルを検出する方法として、例えば、前フレーム及び後フレームの2枚ないしそれ以上の入力フレーム間で、フレームを構成する画像ブロックのマッチングを行うことにより、各ブロックの動きベクトル(物体画像の動いた方向及び距離)を検出する方法がある。上記のように検出された各ブロックの動きベクトルを用いて、入力フレーム間に位置する新たな補間フレームが作成される。補間フレームを2枚の入力フレーム間に挿入することにより、フレーム数を増加して動画像を表示する。
【0007】
上記ブロックマッチングとは、あるフレームにおける所定サイズの画像ブロックが、後のフレーム中のどの画像ブロックに一致するかを検出する方法である。前フレーム中の画像ブロックと、後フレーム中のいずれかの画像ブロックとで、互いに対応する画素間の差分を計算し、これを累積した値(SAD:Sum of Absolute Difference)が最小となる後フレーム中画像ブロックが、前フレーム中画像ブロックに最も類似する画像ブロックとして検出される。前フレームと後フレームとで、前フレーム中画像ブロックと、それに最も類似する画像ブロックとの位置の差が、動きベクトルとして検出される。
【0008】
SADを用いたブロックマッチングに基づいて物体画像の動きを推定する時、入力フレーム内に斜め線が存在する場合、その斜め線が存在する画像ブロックについて、正確な動きベクトルを推定することが困難であった。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みて成されたものであって、斜め線画像である画像ブロックにおいて唯一の動きベクトルを選出し、より高品位な補間フレーム画像を作成する補間フレーム作成方法および補間フレーム作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様による補間フレーム作成方法は、入力されるフレーム画像を用いて、入力フレーム画像間に位置する新たな補間フレームを作成する補間フレーム作成方法であって、前記入力フレーム画像間での画像の動きベクトルを検出する工程と、前記検出した動きベクトルを用いて補間フレームを作成して前記入力フレーム画像間に挿入する工程と、を備え、前記動きベクトルを検出する工程は、補間フレーム内の補間ブロックについて、対応する画素値どうしの差分絶対値の累積加算値であるSADを算出し、算出された前記SADの極小点を検出して動きベクトル候補を検出する極小点判定工程と、前記極小値判定工程により、複数の動きベクトル候補が検出された場合に、前記複数の動きベクトル候補についてのSAD分布から、斜め線画像か否かを判断する斜め線検出工程と、を備える補間フレーム作成方法である。
【0011】
本発明の第2態様による補間フレーム作成装置は、入力されるフレーム画像を用いて、入力フレーム画像間に位置する新たな補間フレームを作成する補間フレーム作成装置であって、前記入力フレーム画像間のブロックマッチング処理により、フレーム画像内の画像の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、前記検出した動きベクトルを用いて補間フレームを作成して前記入力フレーム画像間に挿入する補間画像作成部と、を備え、前記動きベクトル検出部は、補間フレーム内の補間ブロックについて、対応する画素値どうしの差分絶対値の累積加算値であるSADを算出し、算出された前記SADの極小点を検出して動きベクトル候補を検出する極小点判定手段と、前記極小点判定手段により、複数の動きベクトル候補が検出された場合に、前記複数の動きベクトル候補についてのSAD分布から、斜め線画像か否かを判断する斜め線検出部と、を備える補間フレーム作成装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、斜め線画像である画像ブロックにおいて唯一の動きベクトルを選出し、より高品位な補間フレーム画像を作成する補間フレーム作成方法および補間フレーム作成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る補間フレーム作成装置の一構成例を説明するための図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る補間フレーム作成方法および補間フレーム作成装置におけるブロックマッチング処理の一例を説明するための図である。
【図3】全領域隣接点比較により極小点判定を行い、動きベクトルの候補を抽出する処理の一例を説明するための図である。
【図4】極小点判定を行う際の全領域隣接点比較の一例について説明するための図。
【図5A】極小点判定とSAD値判定とにより動きベクトル候補を抽出する処理の一例を説明するための図である。
【図5B】極小点判定とSAD値判定とにより動きベクトル候補を抽出する処理の他の例を説明するための図。
【図6】動画像中に本来唯一の動きをもつ斜め線が存在する場合に、極小点判定とSAD値判定とによる動きベクトルの候補を抽出する処理の一例を説明するための図である。
【図7】斜め線画像である画像ブロックの動きベクトル候補を抽出する処理の一例を説明するための図である。
【図8】斜め線検出を適用して動きベクトルを抽出する全体処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図9】斜め線検出処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態にかかる補間フレーム作成方法および補間フレーム作成装置について図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係る補間フレーム作成装置10は、フレームメモリ部11、動きベクトル検出部12、補間画像作成部13を備える。動きベクトル検出部12は、入力画像信号における例えば連続する2フレームから、動きベクトルをブロックマッチング処理にて検出する。入力画像信号のフレームレートは例えば60フレーム/秒である。
【0015】
補間画像作成部13は、動きベクトル検出部12の検出結果に基づいて補間フレームを作成し、前記2フレームの間に挿入する。補間フレームが挿入された出力画像信号のフレームレートは例えば120フレーム/秒である。動きベクトル検出部12及び補間画像作成部13は、それぞれ個別電子回路を用いたハードウエア、あるいはCPU(図示されず)にて実行されるソフトウエアとして構成できる。
【0016】
図2は、ブロックマッチング処理の一例を説明するための図である。前フレーム20と後フレーム22とは、補間フレーム作成装置10に連続して入力されるフレームである。図2に示す方法では、動きベクトル検出部12は、補間フレーム21内の補間画像ブロック41の挿入位置を中心として、それを挟む前フレーム20上及び後フレーム22上で点対象の位置にある画像ブロックどうしを、同一位置にある画素毎に比較してSADを算出する。
【0017】
すなわち、動きベクトル検出部12は、算出されたSADに基づいて、最も類似している画像ブロックどうしを結ぶベクトルを動きベクトルと決定する。画像ブロックどうしが類似しているか否かは、注目画像ブロック内と各画像ブロック内で、互いに同一位置にある画素の画素値間の差分絶対値を、当該画像ブロック内の全画素について求め、その総和SAD(Sum of Absolute Difference)に基づいて判断される。例えば、このSADが最小となる画像ブロックが、注目画像ブロックに最も類似している画像ブロックと判断される。そして、注目画像ブロックから最も類似している画像ブロックまでのベクトルが、注目画像ブロックの動きベクトルとして決定される。
【0018】
互いに最も類似している画像ブロックの組み合わせが、例えば画像ブロック43と画像ブロック44であった場合、画像ブロック43から画像ブロック44までのベクトルが、補間画像ブロック41の動きベクトルとして決定される。この動きベクトルと、互いに最も類似している画像ブロック43及び44の画像データに基づいて、補間フレーム21内の補間画像ブロック41が作成される。
【0019】
本実施形態では、動きベクトル検出部12は、所定の補間画像ブロック41、例えば、補間画像ブロック41について算出されたSADの極小点(SADの値が極小値となるもの)を検出している。
【0020】
すなわち、動きベクトル検出部12は、算出されたSADを動きベクトルのx成分(第1成分)とy成分(第2成分)とを軸とする二次元に分布させたSAD分布から、SADが極小点(ブロック)となる動きベクトルを検出している。図3では、動きベクトルのx成分(水平成分)のシフト量を横軸とし、動きベクトルのy成分(垂直成分)を縦軸として、SAD分布を示している。
【0021】
動きベクトル検出部12は、例えば、図3および図4に示すように、SAD分布からSADの極小点を検出する。すなわち、図3および図4に示すように、動きベクトル検出部12は、動きベクトルの全てに対して隣接5点(対象となる点(ブロック)を除けば4点)比較により極小点判定を行うというものである。この比較は、たとえば、前フレーム20中の所定探索範囲40及び後フレーム22内の対応する探索範囲42において行われる。
【0022】
まず、極小点判定の対象とする動きベクトルを選択する。次に、動きベクトル検出部12は選択した動きベクトル候補のSADと、その上下左右の4つ画素ブロックの動きベクトルのSADとを比較する。
【0023】
次に、動きベクトル検出部12は、選択した動きベクトルのSAD値が上下左右のSAD値よりも小さければ、SAD分布曲線のグラフ(画像ブロックのシフト量と、SAD値との関係を表すグラフ。図示せず。)における下に凸の点であると判定し、これを動きベクトル候補として抽出する。以上の処理は、動きベクトルの全てに対して実施される。
【0024】
図3では3つの極小値が選択されたことが示されている。図4に示すように、対象とする動きベクトルを中央の座標(a、b)の点とし、そのSADをSAD=Aとする。その周囲の4点(4つの画像ブロック)のSAD値をそれぞれB、C、D、Eとすると、A<BかつA<CかつA<DかつA<Eであれば、ベクトル(a、b)が動きベクトル候補として抽出される。
【0025】
このような処理により、複数の動きベクトルから極小点ではない候補が排除され、SADが極小点となる動きベクトル候補のみが残ることになる。図5A(a)乃至(c)に示すように、上記のようにして検出されたSADの極小点のうちの最小値から所定の閾値TH内に他の極小点が存在しない場合には、唯一の動きベクトル候補が、当該画像ブロックの動きベクトルとして採用される。
【0026】
このように、動きベクトルの全てに対し、隣接5点の比較により極小点判定を行う手法を適用することで、SAD分布曲線中、下に凸となる動きベクトルのみが動きベクトル候補として抽出されるため、より動きベクトル検出の精度を高めることができる。
【0027】
一方、例えば図5B(a)乃至(c)に示すように、上記のように検出されたSADの極小点のうちの最小値から所定の閾値TH内に、他の極小点が存在する場合がある。この場合、極小点判定により唯一の動きベクトルの候補を抽出することができない。
【0028】
また、例えば前フレーム20と後フレーム22に斜め線が含まれる場合、図6(a)に示すようにSADが分布する。図6(a)のようにSADが分布する場合に、上記のようにSADが極小点となる動きベクトル候補のみを検出すると、図6(b)に示すように7つのSADが検出される。図6(b)に示す場合では、検出された7つのSADのうちの最小値から所定の閾値TH内に、最小値のSADを除く他の6つのSADが全て含まれている。
【0029】
すなわち、動画像において斜め線が並行移動するとき、図6(a)に示すように、斜め方向にSADの小さな動きベクトルが分布することとなるため、図3および図4に示すような5点による極小点判定方法ではいずれも極小点として判定されてしまう。そのため、図6(c)に示すように、複数の動きベクトル候補が残ってしまい、動きを一意に特定できないことがある。
【0030】
上記のように、極小点判定を行ったとしても、動画像に斜め線が含まれていて例えそれが唯一の動きを持ったものであったとしても、複数の動きベクトル候補を抽出してしまうことがある。
【0031】
そこで、本実施形態に係る補間フレーム作成装置10では、動きベクトル検出部12は、上記のように、SAD分布から極小点を検出しても、唯一の動きベクトルの候補を抽出することができない場合に、画像が斜め1本線であるか否かを検出する斜め線検出部12Aを備えている。
【0032】
本実施形態に係る補間フレーム作成方法および補間フレーム作成装置では、動画像中に斜め1本線があることを検出し、斜め1本線が存在すると判定した場合に、極小点判定で絞り込めなかった複数の動きベクトルを除外することで本来存在する唯一の動きベクトル候補だけを抽出できるようにする。
【0033】
なお、以下の説明において、例えば図6(c)に示すように極小点判定後のSAD分布が得られた場合、x成分(第1成分)が最小かつy成分(第2成分)が最小の動きベクトル候補を(left, top)、x成分(第1成分)が最大値かつy成分(第2成分)が最大値の動きベクトル候補を(right, bottom)、x成分(第1成分)が最大かつy成分(第2成分)が最小の動きベクトル候補を(right, top)、x成分(第1成分)が最小かつy成分(第2成分)が最大の動きベクトル候補を(left, bottom)と呼ぶことにする。
【0034】
本実施形態に係る補間フレーム作成装置は、動きベクトル検出部12が斜め線検出部12Aを備えている。斜め線検出部12Aは、極小点判定後の複数の動きベクトル候補の中に、(left, top)の動きベクトル候補と(right, bottom)の動きベクトル候補との両者、あるいは、(right, top)の動きベクトル候補と(left, bottom)の動きベクトル候補との両者が存在するか否かを検出する手段(図示せず)を備えている。このとき、存在する2者の動きベクトル候補で定義される矩形領域内に、他の全ての動きベクトル候補が含まれるか否かを判断する。
【0035】
例えば、図7(a)に示す場合、(left, top)の動きベクトル候補のSAD分布上の位置を(x1、y1)とし、(right, bottom)の動きベクトル候補のSAD分布上の位置を(x2、y2)とすると、この2者で定義される矩形領域とは、(x1、y1)、(x1y2)、(x2、y2)および(x2、y1)の座標を頂点(4角に位置するブロック)とする矩形領域である。
【0036】
動画像中に画面の左上から右下方向にのびる斜め線が存在する場合には、(left, top)の動きベクトル候補と(right, bottom)の動きベクトル候補との両者が存在し、かつ、この2者で定義される矩形領域内に全ての動きベクトル候補が含まれることとなる。
【0037】
同様に、例えば、動画像に画面の右上から左下方向にのびる斜め線が存在する場合、(right, top)の動きベクトル候補と(left, bottom)の動きベクトル候補との両者が存在し、かつ、この2者で定義される矩形領域内に全ての動きベクトル候補が含まれることとなる。
【0038】
また、斜め線検出部12Aは、極小点判定後の全動きベクトル候補のx成分(第1成分)およびy成分(第2成分)が、他のいずれかの動きベクトル候補のx成分(第1成分)およびy成分(第2成分)と一致するか否かを判断するする判断手段(図示せず)をさらに備えている。
【0039】
例えば、図7(a)に示すように、動画像中に画面の左上から右下方向にのびる斜め線が存在する場合、極小点判定後の全動きベクトル候補のx成分(第1成分)およびy成分(第2成分)が、(left, top)の動きベクトル候補と(right, bottom)の動きベクトル候補とで定義される矩形領域内の他のいずれの動きベクトル候補のx成分、y成分とも一致しないことになる。
【0040】
したがって、(left, top)と(right, bottom)の両者が存在する、または(right, top)と(left, bottom)の両者が存在すること、かつ、各動きベクトルのx成分、y成分が他のいずれの動きベクトルのx成分、y成分とも一致しないこと、の条件を満たす場合に斜め1本線が存在すると判定することができる。
【0041】
本実施形態では、上記条件により斜め1本線であると判定した場合、斜め線検出部12Aは、図7(b)に示すように、SADが最小である動きベクトル候補のみを残して他の動きベクトル候補を除外することで、唯一の動きベクトル候補を抽出する。
【0042】
以下に、本実施形態に係る補間フレーム作成方法について説明する。図8は斜め1本線検出を適用して動きベクトルを抽出する全体処理を示すフローチャートである。図8に示すように、まず、入力フレーム画像間のブロックマッチング処理により、フレーム画像内の物体画像の動きベクトルを検出する。次に、ブロックマッチング処理により得られたSAD分布に対し、極小点判定を行う(ステップSTA1)。この段階で、動きベクトル候補が1つであるか否かを判断し(ステップSTA2)、動きベクトル候補が1であれば、その動きベクトル候補を動きベクトルとして採用する(ステップSTA3)。
【0043】
動きベクトル候補が複数ある場合には、各動きベクトルに対し、最小のSAD値を算出し、最小SAD値からある閾値内にある動きSAD値の動きベクトルのみを残し、残りのSAD値を持つ動きベクトルを候補から除外する(ステップSTA4)。この時点で候補数が1つに絞られれば(ステップSTA5)、残った唯一の動きベクトル候補を動きベクトルとして採用する(ステップSTA3)。
【0044】
次に、候補として残った各動きベクトルに対し、斜め1本線検出を行う(ステップSTA6)。斜め1本線検出処理については図9を参照して後述する。
【0045】
斜め1本線検出処理で、画像ブロックに斜め1本線が含まれる判定された場合(ステップSTA7)、現時点で残っている複数の動きベクトル候補の中で、SAD値が最小である動きベクトル候補を唯一動きベクトルとして採用する(ステップSTA8)。斜め1本線処理で、斜め1本線でないと判定された場合(ステップSTA7)、画像ブロックの大きさを変更して動きベクトル候補を検出する等、複数候補が存在する場合の所定の処理を行い動きベクトル検出を行う(ステップSTA9)。
【0046】
図9は、斜め1本線検出処理を示すフローチャートである。図9に示すように、まず、図8に示すステップSTA4で得られた動きベクトル(の群であるSAD分布)に対し、(left, top)と(right, bottom)の両者が存在するか、もしくは(right, top)と(left, bottom)の両者が存在するかを検出する(ステップSTB1)。
【0047】
(left, top)と(right, bottom)との両者、および、(right, top)と(left, bottom)との両者のいずれもが検出されなかった場合(ステップSTB2)、画像ブロックは斜め1本線ではないと判断される(ステップSTB3)。
【0048】
例えば、図5Bに示す場合では、極小点判定後の動きベクトル候補について、最小のSADから所定の閾値の範囲に3つのSADに対応する動きベクトル候補がある。この3つのSADの中で、(left, top)となるSADは存在するが(right, bottom)となるSADが存在しないため、この場合には斜め1本線ではないと判断される。従って、この場合には、図8に示すステップSTA9において、複数の動きベクトル候補がある場合の所定の処理がなされる。
【0049】
一方、図6に示す場合では、極小点判定後の動きベクトル候補について、最小のSAD値から所定の閾値の範囲にあるSADの中に、(left, top)となるSADと(right, bottom)となるSADとの両者が存在している。
【0050】
(left, top)と(right, bottom)との両者、および、(right, top)と(left, bottom)との両者のいずれかが検出された場合には、全動きベクトル候補に対しそれぞれのベクトル候補のx成分と他の動きベクトル候補のx成分、それぞれのベクトル候補のy成分と他の動きベクトルy成分、のいずれかが一致するものがあるいか否かを確認し(ステップSTB4)、一致するものがあった場合は画像ブロックは斜め1本線ではないと判定する(ステップSTB3)。
【0051】
全動きベクトルのx成分、y成分が他のいずれの動きベクトルのx成分、y成分とも一致しない場合には(ステップSTB4)、画像ブロックは斜め1本線であると判定される(ステップSTB6)。例えば図6に示す場合では、最小のSAD値から所定の閾値の範囲にある複数のSADのいずれのx成分が一致せず、いずれのy成分も一致していないため、斜め1本線であると判定される。したがって、この場合には、図8に示すステップSTA8において、SADが最も小さい動きベクトル候補を唯一の動きベクトル候補として採用することとなる。
【0052】
すなわち、検出されたSAD分布の極小点検出を行うのみでは、動画像に斜め1本線が含まれた場合に、例えそれが唯一の動きをもっていたとしても、それらを正しく検出できず複数の動きベクトル候補を選出されることがあった。
【0053】
これに対し、本実施形態に係る補間フレーム作成方法および補間フレーム作成装置によれば、斜め1本線検出を行い斜め1本線であると判定した場合に最も確からしい唯一の動きベクトルだけを動きベクトル候補として選出することができ、その結果より高品位な補間フレーム画像生成が可能となる。
【0054】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、上記の実施形態では、画像ブロックが斜め1本線画像であると判断された場合に、複数の動きベクトル候補からSADが最も小さいものを唯一の動きベクトル候補としているが、斜め1本線が線が延びる方向に移動している場合には、他のいずれの動きベクトル候補を唯一の動きベクトル候補としても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0055】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…補間フレーム作成装置、12…動きベクトル検出部、12A…斜め線検出部、13…補間画像作成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されるフレーム画像を用いて、入力フレーム画像間に位置する新たな補間フレームを作成する補間フレーム作成方法であって、
前記入力フレーム画像間での画像の動きベクトルを検出する工程と、前記検出した動きベクトルを用いて補間フレームを作成して前記入力フレーム画像間に挿入する工程と、を備え、
前記動きベクトルを検出する工程は、補間フレーム内の補間ブロックについて、対応する画素値どうしの差分絶対値の累積加算値であるSADを算出し、算出された前記SADの極小点を検出して動きベクトル候補を検出する極小点判定工程と、
前記極小値判定工程により、複数の動きベクトル候補が検出された場合に、前記複数の動きベクトル候補についてのSAD分布から、斜め線画像か否かを判断する斜め線検出工程と、を備える補間フレーム作成方法。
【請求項2】
前記斜め線検出工程は、前記複数の動きベクトル候補の中に、第1成分が最小かつ第2成分が最小の動きベクトル候補と、第1成分が最大かつ第2成分が最大の動きベクトル候補との両者、あるいは、第1成分が最大かつ第2成分が最小の動きベクトル候補と、第1成分が最小かつ第2成分が最大の動きベクトル候補との両者が存在するかを検出する第1検出工程と、
前記第1検出工程で、第1成分が最小かつ第2成分が最小の動きベクトル候補と、第1成分が最大かつ第2成分が最大の動きベクトル候補との両者、あるいは、第1成分が最大かつ第2成分が最小の動きベクトル候補と、第1成分が最小かつ第2成分が最大の動きベクトル候補との両者が存在すると検出された場合、全動きベクトル候補について、第1成分が他のいずれの動きベクトルの第1成分と一致せず、かつ、第2成分が他のいずれの動きベクトルの第2成分とも一致しないことを確認する第2検出工程と、を備える請求項1記載の補間フレーム作成方法。
【請求項3】
前記斜め線検出工程において斜め線画像であると判断された場合に、前記複数の動きベクトル候補のうちでSADの最も小さい動きベクトル候補を、唯一の動きベクトル候補とする請求項1または請求項2記載の補間フレーム作成方法。
【請求項4】
入力されるフレーム画像を用いて、入力フレーム画像間に位置する新たな補間フレームを作成する補間フレーム作成装置であって、
前記入力フレーム画像間のブロックマッチング処理により、フレーム画像内の画像の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、前記検出した動きベクトルを用いて補間フレームを作成して前記入力フレーム画像間に挿入する補間画像作成部と、を備え、
前記動きベクトル検出部は、補間フレーム内の補間ブロックについて、対応する画素値どうしの差分絶対値の累積加算値であるSADを算出し、算出された前記SADの極小点を検出して動きベクトル候補を検出する極小点判定手段と、
前記極小点判定手段により、複数の動きベクトル候補が検出された場合に、前記複数の動きベクトル候補についてのSAD分布から、斜め線画像か否かを判断する斜め線検出部と、を備える補間フレーム作成装置。
【請求項5】
前記斜め検出部は、前記複数の動きベクトル候補の中に、第1成分が最小かつ第2成分が最小の動きベクトル候補と、第1成分が最大かつ第2成分が最大の動きベクトル候補との両者、あるいは、第1成分が最大かつ第2成分が最小の動きベクトル候補と、第1成分が最小かつ第2成分が最大の動きベクトル候補との両者が存在するかを検出する検出手段と、
前記検出手段で、第1成分が最小かつ第2成分が最小の動きベクトル候補と、第1成分が最大かつ第2成分が最大の動きベクトル候補との両者、あるいは、第1成分が最大かつ第2成分が最小の動きベクトル候補と、第1成分が最小かつ第2成分が最大の動きベクトル候補との両者が存在すると検出された場合に、全動きベクトル候補について、第1成分が他のいずれかの動きベクトルの第1成分と一致するか否か、および第2成分が多のいずれかの動きベクトルの第2成分と一致するか否かを判断するする判断手段と、を備える請求項4記載の補間フレーム作成装置。
【請求項6】
前記動きベクトル検出部は、前記斜め線検出部によって斜め線画像が検出された場合に、前記複数の動きベクトル候補の中でSADの最も小さい動きベクトル候補を、唯一の動きベクトル候補とする請求項4または請求項5記載の補間フレーム作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−178208(P2010−178208A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20691(P2009−20691)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】