説明

製剤

本発明は、物理的に安定な油分散体に関する。また、低極性有機系とともに使用することを目的とするベントンを活性化する方法に関する。また、前記活性化されたベントンを含む物理的に安定な油分散体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理的に安定な油分散体(oil dispersion)に関する。また、低極性の有機系とともに使用することを目的とするベントンを活性化する方法に関する。また、前記活性化されたベントンを含む物理的に安定な油分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の製剤種類が、農薬産業で使用されている。製剤種類は、有効成分自体の物理的特性を含む様々な要因に応じて選択される。油分散体は、油不溶性の有効成分を含む製剤に特に有益である。それらはまた、例えば所定の葉面浸透促進化合物(例えば、疎水性油及び界面活性剤)のような概して油性であるアジュバントを含むための有益な製剤である。
【0003】
沈降防止系の不存在下では、油分散体は沈降しがちである。有機系用の沈降防止系の一種は、懸濁及びレオロジー制御を与えるための添加剤として、ベントンのようなオルガノクレーを使用する。オルガノクレーは、天然のスメクタイト、ヘクトライト、またはモンモリロナイトクレーから作られる。オルガノクレーは、スメクタイト等の親水性クレーを第4級アンモニウム化合物と反応させることによって調製され、有機物親和性になりそれゆえに非水性媒体と混合可能になる。
【0004】
乾燥オルガノクレーは、凝集したプレートレット構造の形態をとる。良好なゲル強度を有する沈降防止系として機能するために、オルガノクレーを分散させること及び化学的活性化剤を添加することの両方が必要である。オルガノクレーが良好に分散しない場合、または良好に化学的に活性化されない場合、ゲル強度が低くなり、それゆえに生成物の物理的安定性が低くなる。オルガノクレーの活性化の割合は、クレーのゲル強度及び物理的安定性と密接に関連している。
【0005】
ベントンオルガノクレーの「活性化」のプロセスの分子スケールの詳細は、完全に解明されていない。しかしながら、ベントンの製造業者らは、ベントンの好適な活性化剤として、例えばプロピレンカーボネート、水性メタノール、エタノール、及びアセトン等の様々な極性化学種を推奨している。
【0006】
イギリス特許出願公開第2,067,407号は、有機的に変性されたクレー等の懸濁化剤を用いることによって安定化された油中に懸濁したベンジオカルブの液剤について記載している。欧州特許出願公開第149,459号は、除草用置換ウレアを含む流体懸濁物、及び所望により有機物親和性のベントナイトを組み合わせて、シリカを用いることによる懸濁液の安定化について記載している。イギリス特許出願公開第2,008,949号は、有機親和化クレー及び陽イオン脂肪族アミン界面活性剤とともに炭化水素媒体中に分散された殺菌剤について記載している。これらの各文献が、製剤中における乳化剤の使用について記載しているが、それらのいずれも、良好な物理的安定性の製剤を得るようにオルガノクレーを活性化する方法について記載していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の沈降防止系を改良する必要性があり、例えば、油分散体(oil dispersion)及び油懸濁液濃縮物の物理的安定性、貯蔵安定性、及び/またはチキソトロピー流動を改良するために用いられる沈降防止系を改良する必要性がある。油分散体という用語は、油懸濁液濃縮物及び前記濃縮物の希釈された形態を包含する。
【0008】
驚くべきことに、場合によって、低極性の有機系での使用に適したベントンクレーは、極性化学種の代わりに所定の乳化剤によって活性化され得ることが分かった。これらの場合において、乳化剤による活性化は、極性化学種を用いる活性化と比べて、より良好な物理的安定性及び/または拡大された貯蔵安定性を有する沈降防止系をもたらすことができる。
【0009】
本発明は、オルガノクレーの製造業者らによって推奨される従来の化学的活性化剤(プロピレンカーボネート等の極性化学種)の必要がない。乳化剤はしばしば製剤に添加されるため(例えばイギリス特許出願公開第2,067,407号を参照)、本発明は従来の製剤成分を用いることによるオルガノクレーの活性化を提供する。したがって、本発明は油分散体の製造についてのコスト低減及び簡単化のさらなる利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、低極性液体での使用に適したオルガノクレー安定剤を、低極性液体の存在下における高せん断条件下で、アルキルエトキシレート、アルキルエトキシレートホスフェートエステル、アルキルサルフェート、アルキルアンモニウム塩、及びキャスターオイルエトシキレートからなる群から選択される乳化剤と混合することを含む、オルガノクレー安定剤を活性化する方法が提供される。低極性液体での使用に適したオルガノクレーの詳細は、「Rheological additives products and applications」というタイトルで、1997年3月にRheoxによって発行された技術告示にみることができる。乳化剤のアルキル鎖は、任意の鎖長、直鎖状、または分枝鎖状であることができ、置換または非置換のものであることができる。好適には非置換のものである。
【0011】
「活性化(activation)」及び「活性化する(activating)」という用語は、クレー内のゲル構造の形成を意味する。
【0012】
低極性液体での使用に適したオルガノクレー安定剤は、有機的に変性されたヘクトライト、スメクタイト、またはモンモリロナイトクレーである。クレーは、有機的に変性されて有機物親和性になり、有機媒体用に好適である必要がある。さらに、オルガノクレー安定剤は、化学的活性化を必要として、良好なゲル強度を達成するものである必要がある。
【0013】
任意の低極性液体が本発明で用いられ得る。例えば、液体はパラフィンオイルまたはミネラルオイルであることができる。好適な有機媒体には、ミネラルスピリット、ミネラルオイル、脂肪族化合物、ヘキサン、ヘプタン、及びホワイトスピリットが含まれる。好適には、液体は、例えばSunspray(商標)11Nのようなミネラルオイルである。本発明の関連において、液体は、その特性が上述の液体の特性と類似する場合は、低極性を有する。反対に、液体は、その特性が、例えば、メチル化菜種油、オレイン酸、ジプロピレングリコールジベンゾエート、またはSolvesso 200の特性に類似する場合、低極性を有するとは言われない。好適には、低極性油は、2.5未満の誘電率を有するものである。
【0014】
オルガノクレー安定剤は、必要なゲル効果を得るように、有機液体全体に好適に分散されることが必要である。好適に分散されるとは、粘度粒子の初期の凝集体が粉々になることを意味する。これは通常、Silverson製のL4Rモデル等の回転子/固定子型のミキサーによって生じるもののような強力な混合を使用することによって達成される。極力な混合は、高せん断と関係がある。所望のスケールで好適な分散を達成するための好適な装置及び方法が、当業者によく知られている。概して、本発明については、研究室で、またはより大きな量を製造するために適切にスケールアップして、約2.5m/sよりも大きい先端速度にて適切な高強度のミキサーを用いて、低極性油中でオルガノクレー安定剤を混合することによって、高せん断が達成されるだろう。本発明の一実施態様において、オルガノクレー安定剤は、少なくとも2.5m/sの先端速度にて、Silverson L4Rによって生じるものと同等の高せん断条件下で乳化剤と混合される。
【0015】
様々な異なる分類の乳化剤が、本発明にしたがってベントンクレーを活性化することが分かった。
【0016】
本発明で用いられ得るアルキルエトキシレートは、4〜30の炭素鎖長、及び1〜20のエチレンオキシド単位を有する。好適には、アルキルエトキシレートは10〜20の炭素鎖長、及び2〜10のエチレンオキシド単位を有する。さらに好適には、アルキルエトキシレートは、16〜18の炭素鎖長、及び5〜6のエチレンオキシド単位を有する(例えば、Clariant製のEmulsogen M(商標))。当業者は、低極性液体に溶解性の好適なアルキルエトキシレート分子を容易に選択することができるだろう。
【0017】
本発明で用いられ得るアルキルエトキシレートホスフェートエステルは、4〜30の炭素鎖長、及び1〜20のエチレンオキシド単位を有する。好適には、アルキルエトキシレートホスフェートエステルは8〜20の炭素鎖長、及び2〜10のエチレンオキシド単位を有する。さらに好適には、アルキルエトキシレートホスフェートエステルは10〜15の炭素鎖長、及び5〜7のエチレンオキシド単位を有する。最も好適には、アルキルエトキシレートホスフェートエステルは13の炭素鎖長、及び6のエチレンオキシド単位を有する(例えば、Rhodia製のRhodafac RD610(商標))。アルキルエトキシレートホスフェートエステルは、モノ−及びジ−エステル化ホスフェートの混合物であることができる。
【0018】
本発明で用いられ得るアルキルサルフェートは、4〜30の炭素鎖長を有する。好適には、アルキルサルフェートは8〜20、さらに好適には10〜15、最も好適には12の炭素鎖長を有する(例えばEmpicol LZ(商標))。
【0019】
本発明で用いられ得るアルキルアンモニウム塩は、4〜30の炭素鎖長を有する。好適には、アルキルアンモニウム塩は8〜20、さらに好適には13〜18、最も好適には16の炭素鎖長を有する(例えばAkzo Nobel製のArquad 16−50(商標))。アルキルアンモニウム塩は1または2の炭素鎖を有することができ、概してメチル基を含み窒素原子を四級化する。
【0020】
本発明で用いられ得るキャスターオイルエトキシレートは、1〜50のエチレンオキシド単位を有する。好適には、キャスターオイルエトキシレートは10〜45のエチレンオキシド単位を有する。さらに好適には20〜40のエチレンオキシド単位を有する。さらに好適には32〜38のエチレンオキシド単位を有する。最も好適には、キャスターオイルエトキシレートは34〜36のエチレンオキシド単位を有する(例えばUniqema製のSunaptol CA350(商標))。
【0021】
当業者に良く知られているように、上記のエチレンオキシドの値は平均値である。
【0022】
本発明はまた、オルガノクレー安定剤を活性化するための乳化剤の混合物を含む。好適には、乳化剤の少なくとも1つが上述のものから選択される。さらに好適には、1を超える乳化剤が上述のものから選択される。最も好適には、全ての乳化剤が上述のものから選択される。一実施態様において、本発明は、メチルチオファネートと組み合わせて用いるとき、6モルのエチレンオキシドでエトキシレート化された乳化剤のイソオクチルアルコールを除外する。
【0023】
得られる油分散体の活性化及び対応する物理的安定性の量は、オルガノクレー安定剤が存在する量に関連して用いられる乳化剤の量に関連する。乳化剤:オルガノクレーの質量比は概して約10:1〜約1:10である。好適には、乳化剤:オルガノクレー安定剤の質量比は概して約10:1〜約1:1である。乳化剤:オルガノクレー安定剤の最も好適な比率は、用いられる特定の乳化剤及びオルガノクレー安定剤に依存する。例えば、ミネラルオイル中のEmulsogen M(商標):Bentone 38(商標)についての好適な質量比は約7.5:1である。
【0024】
本発明はまた、オルガノクレー安定剤に極性活性化剤を添加することを含むことができる。本発明と併用する極性活性化剤の低水準の添加は、オルガノクレー安定剤の活性化及び物理的安定性の改良をもたらすことができる。極性活性化剤の量は好適には、オルガノクレーの製造業者によって推奨される量(例えば、プロピレンカーボネートは、乾燥Bentone(商標)の33質量%)よりも少ない。極性活性化剤の量は、オルガノクレー安定剤に対して最大20%w/wであることができる。例えば、極性活性化剤の量は、オルガノクレー安定剤に対して、好適には10%w/w未満であり、好適には5%w/w未満であり、さらに好適には2%w/w未満であり、さらに好適には1%w/w未満である。いくつかの乳化剤は、少量の、水などの極性化学種を含む。それゆえに、極性活性化剤が存在する合計量は、添加された極性活性化剤と、乳化剤中に存在する任意の極性化学種との合計である。
【0025】
極性活性化剤という用語は、ゲル構造を形成するようにオルガノクレー安定剤を活性化することができる分子を意味する。この関係において、例えば、メタノール、プロピレンカーボネート、及び水などの極性活性化剤の使用が、当業者に良く知られている。
【0026】
本発明は所望によりグリコールエーテルを添加することを含む。グリコールエーテルの存在は、油分散体の物理的安定性をさらに改良する。任意の好適なグリコールエーテルが用いられ得る。プロピレングリコールn−モノブチルエーテル(Arcosolv PnB(商標))が特に好適である。グリコールエーテル:オルガノクレー安定剤の質量比は100:1〜1:100の間である。好適には10:1〜1:10w/wである。さらに好適には約2:1w/wである。グリコールエーテルは、極性活性化剤に加えて、あるいは極性活性化剤の代わりに、添加され得る。
【0027】
オルガノクレー安定剤の活性化が起こる速度は、温度に依存する。活性化が15℃未満の温度にて行われる場合、混合物が約15℃以上に温められるまでゲル構造は形成されない。したがって、活性化は好適に約15℃以上で行われる。温度が高いほど、活性化は速く起こる。活性化の速度が速いほど、ゲル構造は良好に形成され、得られる油分散体の関連した物理的安定性も良好になる。それゆえに、活性化は好適に、ほぼ室温(すなわち18〜25℃)またはそれ以上で起こる。さらに好適には、活性化は約45℃以上で起こる。最も好適には、活性化は約60℃以上で起こる。好適には、活性化は約60℃〜約70℃で起こる。上昇した温度の使用が、製造上の利益をもたらし得る。
【0028】
低極性液体中で使用され得る限り、任意の好適なオルガノクレー安定剤が、本発明で使用され得る。オルガノクレーの製造業者等は、オルガノクレーが様々な媒体種類への使用に好適であることに関する手引書を提供している。本発明に使用されるオルガノクレー安定剤は、有機的に変性されたベントナイト、ヘクトライト、及びスメクタイトクレー、例えば、テトラアルキルアンモニウムベントナイト(例えばBentone(商標)34)、テトラアルキルアンモニウムヘクトライト(例えばBentone(商標)38)、テトラ(アルキル/アリール)アンモニウムベントナイト(例えばBentone SD(商標)−1、Bentone(商標)52、Bentone(商標)120、及びBentone(商標)1000)、アルキルアリールアンモニウムヘクトライト(例えばBentone SD(商標)−3)からなる群から選択され得る。好適には、オルガノクレー安定剤は、テトラアルキルアンモニウムベントナイト、テトラアルキルアンモニウムヘクトライト、及びテトラ(アルキル/アリール)アンモニウムベントナイトからなる群から選択される。好適には、オルガノクレー安定剤は、テトラアルキルアンモニウムベントナイトである。好適には、オルガノクレー安定剤は、テトラアルキルアンモニウムヘクトライトである。好適には、オルガノクレー安定剤は、テトラ(アルキル/アリール)アンモニウムベントナイトである。
【0029】
本発明によれば、低極性液体での使用に適したオルガノクレー安定剤を含む物理的に安定な油分散体; アルキルエトキシレート、アルキルエトキシレートホスフェートエステル、アルキルサルフェート、アルキルアンモニウム塩、及びキャスターオイルエトキシレートからなる群から選択される乳化剤; 低極性液体; 並びに低極性液体に実質的に不溶性である固体成分が提供され、オルガノクレー安定剤は、上に定義した方法によって活性化される。実質的に不溶性である固体成分は好適には、20℃の低極性液体中に約100mg/l以下の溶解度を有する。さらに好適には、本発明に有益な実質的に不溶性である固体成分は、20℃の低極性液体中に約25mg/l以下の溶解度を有する。
【0030】
本発明によれば、低極性液体での使用に適したオルガノクレー安定剤を含む物理的に安定な油分散体; アルキルエトキシレート、アルキルエトキシレートホスフェートエステル、アルキルサルフェート、アルキルアンモニウム塩、及びキャスターオイルエトキシレートからなる群から選択される乳化剤; 低極性液体; 並びに低極性液体に実質的に不溶性である固体成分が提供され、油分散体は、オルガノクレー安定剤に対して20%w/w未満の極性活性化剤を含む。
【0031】
本発明によれば、低極性液体での使用に適したオルガノクレー安定剤を含む物理的に安定な油分散体; アルキルエトキシレート、アルキルエトキシレートホスフェートエステル、アルキルサルフェート、アルキルアンモニウム塩、及びキャスターオイルエトキシレートからなる群から選択される乳化剤; 低極性液体; グリコールエーテル、並びに低極性液体に実質的に不溶性である固体成分が提供される。
【0032】
製剤成分のシネレシス(syneresis)または沈降が長期間観察されない場合、油分散体は物理的に安定であるとみなされる。シネレシスまたは沈降が起きるまで長くかかるほど、油分散体はより物理的に安定である。室温(すなわち18〜25℃)にて10日後に観察してシネレシスまたは沈降がほとんどない場合、油分散体は物理的に安定であるとみなされる。これは概して、貯蔵材料の表面における5体積%未満の視覚的に明らかな透明層の存在によって特徴付けられる。好適には、本発明の油分散体は、室温にて1ヶ月を超えて物理的に安定である。物理的安定性の同様の評価を、本発明による沈降防止系の可視性(visibility)に適用する。
【0033】
物理的に安定な油分散体はまた、上述の本発明の所望による実施態様のいくつかまたは全部を含むことができる。
【0034】
一実施態様において、本発明の物理的に安定な油分散体は、シリカを含まない。
【0035】
本発明は、例えば、塗料、農薬、調合薬、化粧品、工業用塗料、コーティング、及びインク等の、良好な物理的特性を有する油分散体が望まれる、任意の製品、用途、または産業に用いられ得る。油分散体は、特定の用途に好適な1以上の追加の成分を含んでもよい。概して油分散体が望ましい場合において、前記の追加の成分の少なくとも1種が20℃にて固体であり、油に実質的に不溶性である。
【0036】
油分散体を農薬産業に使用するとき、固体成分は、油不溶性の農薬、有効成分、肥料、またはアジュバントである。油に実質的に不溶性である任意の農薬を、本発明と併用して用いることができ、例えば、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、植物成長調整剤、ダニ駆除剤、殺線虫剤、軟体動物駆除剤等が挙げられる。油分散体は1を超える農薬であって、実質的に油不溶性であるもののうちの少なくとも1種を含むことができる。
【0037】
分散体用の粒径が、当業者によく知られている。好適には、固体成分は約0.5〜約50μmの粒径を有する。さらに好適には、固体成分は約1〜約10μmの粒径を有する。さらに好適には、固体成分は約2〜約5μmの粒径を有する。
【0038】
実質的に油不溶性の農薬は、ALS阻害剤、例えば、スルホニル尿素、スルファミル尿素、スルホンアミド、イミダゾリノン、ピリミジニルオキシピリジンカルボン酸誘導体、またはピリミジルオキシ安息香酸誘導体; HPPD阻害剤、例えば、トリケトン; ネオニコチノイド; カルバメート; アベルメクチン; ピレスロイド; ビスアマイド; トリアゾール; マンデルアミド; 及びストロビルリンからなる群から好適に選択される。室温にて実質的に油不溶性の固体材料のような、油分散体として配合するために好適である農薬の他の分類が、当業者に明確に理解されるだろう。
【0039】
スルホニル尿素類の除草剤が特に好適である。スルホニル尿素は、アミドスルフロン、ベンスルフロン−メチル、クロリムロン−エチル、クロルスルフロン、シノスルフロン、シクロスルファムロン、エタメトスルフロン−メチル(ethemetsulfuron−methyl)、エトキシスルフロン、フラザスルフロン、フルセトスルフロン、フルピルスルフロン、フォラムスルフロン、ハロスルフロン−メチル、イマゾスルフロン、ヨードスルフロン、イソスルフロン−メチル、メソスルフロン−メチル、メトスルフロン−メチル、ニコスルフロン、オキサスルフロン、プリミスルフロン−メチル、プロスルフロン、ピラゾスルフロン−エチル、リムスルフロン、スルホメツロン−メチル、スルホスルフロン、チフェンスルフロン−メチル、トリアスルフロン、トリベニュロン−メチル、トリフロキシスルフロン、トリフルスルフロン−メチル、及びトリトスルフロン、並びにそれらの任意の塩からなる群から好適に選択される。トリフロキシスルフロン、ニコスルフロン、及びそれらの塩が特に好適である。
【0040】
特に好適なネオニコチノイドは、チアメトキサム、イミダクロプリド、及びチアクロプリドである。特に好適なカルバメートはマンコゼブである。特に好適なピレスロイドはデルタメトリンである。特に好適なHPPD阻害剤は、メソトリオン、テンボトリオン、トプラメゾン、及び式Iの化合物である。
【化1】

【0041】
特に好適なトリアゾールは、ジフェノコナゾール、フェンブコナゾール、ペンコナゾール、プロピコナゾール、及びペノキススラムである。特に好適なストロビルリンはアゾキシストロビンである。
【0042】
本発明の組成物は概して、最低約0.5質量%から最高約95質量%以上の各有効成分を含むことができる。好適には、組成物は1%〜60%w/wの各有効成分を含む。スルホニル尿素の場合、組成物は好適には1〜10%w/wの各有効成分を含む。
【0043】
本発明によれば、物理的に安定な油分散体を作る方法であって、低極性液体での使用に適したオルガノクレー安定剤; 低極性液体; アルキルエトキシレート、アルキルエトキシレートホスフェートエステル、アルキルサルフェート、アルキルアンモニウム塩、及びキャスターオイルエトキシレートからなる群から選択される乳化剤; 並びに低極性液体に実質的に不溶性である固体成分を提供すること; 並びに高せん断条件下で前記成分を混合すること、を含む物理的に安定な油分散体を作る方法が提供される。上述の本発明の所望による実施態様は、この方法に同様に適用される。
【0044】
本発明は、アルキルエトキシレート、アルキルエトキシレートホスフェートエステル、アルキルサルフェート、アルキルアンモニウム塩、及びキャスターオイルエトキシレートからなる群から選択される乳化剤を使用して、低極性液体での使用に適したオルガノクレー安定剤を活性化することを、さらに提供する。
【0045】
本発明は、ある場所の不所望の雑草を抑制する方法であって、除草に効果的な量で除草剤を含む物理的に安定な油分散体またはその希釈物を、雑草または前記場所に適用することを含む、雑草の抑制方法をさらに提供する。
【0046】
希釈物は、油分散体を、油分散体の油が混和性のさらなる低極性油または他の低極性油に添加することによって調製され得る。油分散体の用途は、幅広い制限内で変化してよく、土壌の性質、適用方法(出芽前または出芽後;種子粉衣;作条への適用等)、作物、抑制すべき不所望の植物、主な気候条件、及び他の要因に依存する。
【0047】
好適には、前記場所は、柑橘類、ブドウのつる(grapevine)、ナッツ、油やし、オリーブ、仁果類、核果、ゴム、芝草、大麦、小麦、綿、菜種、トウモロコシ、米、大豆、サトウダイコン、サトウキビ、ヒマワリ、観賞植物、及び野菜などの農作物を含む。好適には、農作物は芝草である。
【0048】
抑制すべき雑草は単子葉植物種及び双子葉植物種の両方であって、単子葉植物種は例えば、アグロスチス(Agrostis)、アロペキュラス(Alopecurus)、アベナ(Avena)、ブロムス(Bromus)、シペラス(Cyperus)、ディジタリア(Digitaria)、エキノクロア(Echinochloa)、ロリウム(Lolium)、メジカーゴ(Medicargo)、モノコリア(Monochoria)、ポア(Poa)、ロットボエリア(Rottboellia)、サギタリア(Sagittaria)、シルパス(Scirpus)、セタリア(Setaria)、シダ(Sida)、ソリバ(Soliva)及びソルガム(Sorghum)が挙げられ、並びに双子葉植物種は例えば、アブチロン(Abutilon)、アマランサス(Amaranthus)、ケノポジウム(Chenopodium)、クリサンセマム(Chrysanthemum)、ガリウム(Galium)、イポモエア(Ipomoea)、ナスタチウム(Nasturtium)、シナピス(Sinapis)、ソラナム(Solanum)、ステラリア(Stellaria)、トリフォリウム(Trifolium)、ベロニカ(Veronica)、ビオラ(Viola)、及びキサンチウム(Xanthium)が挙げられる。
【0049】
油分散体中の農薬がスルホニル尿素のとき、有効成分の適用速度は概して、5〜150g/ha、さらに好適には10〜100g/haであるだろう。
【実施例】
【0050】
例1:沈降防止系製剤の調製
低極性液体(57.4g)を室温にて温度を制御した容器に入れ、5000rpmで動作している回転子−固定子ミキサー(例えば、Silverson製のL4Rモデル)を使用して高せん断下で混合した。オルガノクレー(1.0g)を、高せん断を保っている間に添加し、その後、所望によるプロピレンカーボネート(使用する場合0.1g)、乳化剤(7.5g)、及び所望によるグリコールエーテル(使用する場合2.0g)を、その順番で添加した。分散体の温度を20〜25℃に保持して、高せん断混合を7500rpmまで増加させて、この温度において15分間この速度で保持した。沈降防止系の分離の割合は、室温にて約1ヶ月間の貯蔵後に視覚的に評価した。この方法で調製した沈降防止系製剤1A〜1AIを表1に列挙する。
【0051】
【表1】

【0052】
結果は、1ヶ月間の貯蔵後に得られた沈降防止系の低い割合の分離に示されるように、低極性液体での使用に適したオルガノクレーが、様々な乳化剤によって効果的に活性化され得ることを示している。
【0053】
例2:沈降防止系の濃縮物の調製
沈降防止系の濃縮物2A〜2Fを、表2に示すように、Bentone 38(商標)の最終濃縮物を得るようにミネラルオイルの減少した量を用いた以外は、沈降防止系製剤1Dと同じ方法で調製した。
【0054】
【表2】

【0055】
結果は、オルガノクレーの濃度を最大4.0%w/wまで増加させることが、沈降防止系の安定性に影響を与えないことを示している。
【0056】
例3:油分散体の製剤の調製
油分散体3.1
沈降防止系の製剤1Dを、温度制御した容器に入れ、良好なバルク混合を達成するための条件を用いて25℃にて攪拌した。攪拌を維持しながら、プロピレングリコールモノブチルエーテル(2.0g)を添加した。別途調製した、細かく粉砕した(約1〜約10μmの粒径まで)Sunspray(商標)11N中のトリフロキシスルフロン(ナトリウム塩として)の40%w/wの懸濁液を添加して、100g/lの最終濃度を得て、調製物が視覚的に均質になるまでバルク混合を維持した。この製剤は25℃にて1年間の貯蔵後、または40℃にて8週間後、または54℃にて2週間後に、5%未満の分離を示すことが分かった。これらの結果は、得られた油分散体が長期間の物理的安定性を有することを示している。
【0057】
油分散体3.2−3.6
例3.1と同様の油分散体を、沈降防止系濃縮物2A−2Fのそれぞれから調製した。それぞれの場合において、目標のトリフロキシスルフロン濃縮物を得るために必要とされる平衡化したミネラルオイルを容器に最初に入れて、その後に、沈降防止系濃縮物を入れ、その後に、混合物が視覚的に均質になるまでバルク混合を維持しながら、細かく粉砕した(約1〜約10μmの粒径まで)Sunspray(商標)11N中のトリフロキシスルフロン(ナトリウム塩として)の40%w/wの懸濁液を入れた(グリコールエーテルが沈降防止系濃縮物に既に含まれているので、この例には追加のグリコールエーテルは添加しなかった)。これらの製剤は全て、54℃にて2週間後に、5%未満の分離を示すことが分かった。これらの結果は、高濃度のオルガノクレー安定剤を用いて作られた油分散体を用いても、長期間の物理的安定性がまたみられることを示している。
【0058】
油分散体3.7−3.10
例3.1と同様の油分散体を、様々なグリコールエーテルを用いて調製した。得られた安定性のデータを表3に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
結果は、本発明と併用して様々な異なるグリコールエーテルを用いたとき、良好な物理的安定性を得ることができることを明示している。
【0061】
油分散体3.11−3.14
例3.1と同様の油分散体を、グリコールエーテル(プロピレングリコールモノブチルエーテル)及び乳化剤(Emulsogen M)の存在する量を変えて調製した。得られた安定性のデータを表4に示す。
【0062】
【表4】

【0063】
結果は、異なる量の乳化剤及びグリコールエーテルを用いて分散体を調製したとき、良好な物理的安定性が達成されるが、油分散体の優れた物理的安定性を得るために少なくともいくらかの乳化剤が必要であることを示している。
【0064】
油分散体3.15−3.17
例3.1と同様の油分散体を、沈降防止系1Dの代わりに、1B、1E、及び1Fを用いて調製した。それぞれの場合に、コーンプレート形状を備えたUDS200レオメーター(Paar Physica)を用いて、油分散体の低せん断のレオロジー挙動を測定した。これらの試料について測定された弾性率(G’)及び凝集エネルギー(Em)を表5にまとめた。
【0065】
【表5】

【0066】
例4:異なる温度における沈降防止系製剤の調製
オルガノクレーを分散させるように鋸歯状ミキサーを用いて、例1Dで使用したものと同様のレシピにしたがって一連の沈降防止系を調製した。一連の沈降防止系にわたって調製を行った温度を変化させた。分離データを表6に示す。
【0067】
【表6】

【0068】
結果は、製剤を調製する温度が高いほど、油分散体の物理的安定性が良好になることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低極性液体での使用に適したオルガノクレー安定剤を活性化する方法であって、低極性液体の存在下における高せん断条件下で、アルキルエトキシレート、アルキルエトキシレートホスフェートエステル、アルキルサルフェート、アルキルアンモニウム塩、及びキャスターオイルエトシキレートからなる群から選択される乳化剤と混合することを含む、オルガノクレー安定剤の活性化方法。
【請求項2】
該オルガノクレー安定剤に対して、最大20%w/wの量で極性活性化剤を添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
グリコールエーテルを添加することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該オルガノクレーの活性化が、15℃を超える温度にて起こる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
該オルガノクレー安定剤が、テトラアルキルアンモニウムベントナイト、テトラアルキルアンモニウムヘクトライト、及びテトラ(アルキル/アリール)アンモニウムベントナイトからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
該低極性液体が、パラフィンオイルまたはミネラルオイルである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
a)低極性液体での使用に適したオルガノクレー安定剤、
b)アルキルエトキシレート、アルキルエトキシレートホスフェートエステル、アルキルサルフェート、アルキルアンモニウム塩、及びキャスターオイルエトキシレートからなる群から選択される乳化剤、
c)低極性液体、並びに
d)該低極性液体に実質的に不溶性である固体成分、
を含む、物理的に安定な油分散体であって、
該オルガノクレー安定剤が請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって活性化されたものである、油分散体。
【請求項8】
該オルガノクレー安定剤に対して、最大20%w/wの量で存在する極性活性化剤をさらに含む、請求項7に記載の物理的に安定な油分散体。
【請求項9】
a)低極性液体での使用に適したオルガノクレー安定剤、
b)アルキルエトキシレート、アルキルエトキシレートホスフェートエステル、アルキルサルフェート、アルキルアンモニウム塩、及びキャスターオイルエトキシレートからなる群から選択される乳化剤、
c)低極性液体、並びに
d)該低極性液体に実質的に不溶性である固体成分、
を含む、物理的に安定な油分散体であって、
該油分散体が、該オルガノクレー安定剤に対して、20%w/w未満の極性活性化剤を含む、油分散体。
【請求項10】
グリコールエーテルをさらに含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の物理的に安定な油分散体。
【請求項11】
該オルガノクレーが、テトラアルキルアンモニウムベントナイト、テトラアルキルアンモニウムヘクトライト、及びテトラ(アルキル/アリール)アンモニウムベントナイトからなる群から選択される、請求項7〜10のいずれか一項に記載の物理的に安定な油分散体。
【請求項12】
該低極性液体が、パラフィンオイルまたはミネラルオイルである、請求項7〜10のいずれか一項に記載の物理的に安定な油分散体。
【請求項13】
該固体成分が、油不溶性の農薬、肥料、またはアジュバントである、請求項7〜12のいずれか一項に記載の物理的に安定な油分散体。
【請求項14】
油不溶性の農薬が、ALS阻害剤、HPPD阻害剤、ネオニコチノイド、カルバメート、アベルメクチン、ピレスロイド、ビスアマイド、トリアゾール、マンデルアミド、及びストロビルリンからなる群から選択される、請求項13に記載の物理的に安定な油分散体。
【請求項15】
該油不溶性の農薬がスルホニル尿素である、請求項14に記載の物理的に安定な油分散体。
【請求項16】
該油不溶性の農薬がトリフロキシスルフロンである、請求項15に記載の物理的に安定な油分散体。
【請求項17】
a)低極性液体での使用に適したオルガノクレー安定剤、
b)低極性液体、
c)アルキルエトキシレート、アルキルエトキシレートホスフェートエステル、アルキルサルフェート、アルキルアンモニウム塩、及びキャスターオイルエトキシレートからなる群から選択される乳化剤、並びに
d)該低極性液体に実質的に不溶性である固体成分、
を準備すること、並びに
高せん断条件下において該成分を混合すること、
を含む、物理的に安定な油分散体の形成方法。
【請求項18】
該オルガノクレー安定剤に対して、最大20%w/wの量で極性活性化剤を添加することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
グリコールエーテルを添加することをさらに含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
該乳化剤を添加する前に、該オルガノクレー安定剤を該低極性液体に添加する、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
該方法が、15℃を超える温度にて行われる、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
該オルガノクレー安定剤が、テトラアルキルアンモニウムベントナイト、テトラアルキルアンモニウムヘクトライト、及びテトラ(アルキル/アリール)アンモニウムベントナイトからなる群から選択される、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
該低極性液体が、パラフィンオイルまたはミネラルオイルである、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
アルキルエトキシレート、アルキルエトキシレートホスフェートエステル、アルキルサルフェート、アルキルアンモニウム塩、及びキャスターオイルエトキシレートからなる群から選択される乳化剤を使用して、低極性液体での使用に適したオルガノクレー安定剤を活性化させる方法。
【請求項25】
ある場所の不所望の雑草を抑制する方法であって、請求項15または16に記載の物理的に安定な油分散体またはその希釈物の除草に効果的な量を、該雑草または該場所に適用することを含む、雑草の抑制方法。

【公表番号】特表2010−531864(P2010−531864A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514090(P2010−514090)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001983
【国際公開番号】WO2009/004281
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】