説明

製品のマーキング法、それから得られたマーキングされた製品及びその識別法

固体または液体のバルク材料の真偽及び純正品の性質を識別するための方法及び手段であって、前記バルク材料に少なくとも一種の痕跡量のイオンを含有するマーキング組成物を配合し、それによって市販のバルク材料中の配合された痕跡量のイオンの全濃度を、標準的な海水中の同一イオンの対応する濃度よりも低くなるように選択する、前記方法及び手段。マーキングされたバルク材料の真偽及び純正品の性質または粗悪品レベルは、電気化学センサを使用して現場で試験し、及び原子吸光分光学、イオンクロマトグラフィーまたは質量分析法などの方法を使用して研究室で確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、市販のバルク製品の純正品の性質(genuine nature)と、それが希釈されていないこととが確認できるようにするための、市販のバルク製品(bulk product)のマーキングに関する。本発明は、目に見えない製品内マーキング方法、並びに特に実地調査に適した対応する認証手段を開示する。さらに、マーキングされた前記バルク製品の場外用(off-the-field)の正確な研究室検証法も提供する。
【0002】
発明の背景
国境を越えて商品の移動を円滑にする世界経済において、品物の純正品の性質の管理ができるようにする方法に関して、税務当局及びブランド所有者の側からより一層の要求がある。
【0003】
特に、蒸留アルコール飲料、香水、調合薬剤などのようなバルク製品の場合には、殆どの偽造では、実際には、もとのパッケージをリサイクルしつつ、元の含有量を代替品または粗悪品で置き換えることにより行われている。バルク製品またはバルク材料は、通常、容積または重量で取り扱われる分割された固体または液体物質である。
【0004】
インクに配合され、種々の印刷プロセスによって適用された物質ベースのセキュリティ対策(顕在的及び隠在的)によって、真正パッケージと偽造パッケージとは効率的に区別できる。しかしながら、真正パッケージだけでは、製品の内容物も本物であることに関し、それ自体によって正当な理由とはならない。
【0005】
この結果、製品の不純物混和(product adulteration)、すなわちグレードの低い偽造品で純正品の「価値を下げる行為(dilution)」は、特に重視されている。たとえば、税金が支払われたある蒸留アルコール飲料は、後で税金の範囲外で製造されたアルコール性「バックヤード製品(back-yard-product)」である特定量まで希釈されているかもしれない。そのような粗悪品は、合衆国に重大な損失をもたらし、品質の悪い「バックヤード」アルコールが多量のメタノール及び/または他の毒性汚染物質を含んでいる場合には、公衆衛生に対して大きな影響を与えることもある。
【0006】
従来の技術
バルク製品の製品内マーキング及び認証は、従来の技術での多く開示されている目的である。米国特許第5156653号は、マーキングした後に、着色化反応によって見えるようにできる、存在しているが見えない(latent)染料(百万分の1部レベルで添加)で石油製品をマーキングすることを開示する。米国特許第5980593号は、存在しているが見えない蛍光マーカーの使用を開示し、米国特許第5498808号は、フルオレセインエステルの使用を開示するが、これら全て同一目的に関するものである。マーカーとしてNIR吸収または放出性無色染料の使用については、さらに、米国特許第5525516号、同第5998211号、同第5804447号、同第5723338号及び同第5843783号に開示されてきた。
【0007】
引用した従来技術で提案された方法及び着色剤は、石油製品のマーキングに適しているが、以下の:
i) この製品は、ヒトに適用するための製品によって提供されるもののような、大きな水性環境に可溶性でなく、または化学的に耐性でもないこと;
ii) そのような製品が商品化されることが多い透明受器(ガラス瓶など)は、光劣化から有機マーカーを十分に保護しないこと;及び
iii) 食品、薬品または香料製品にマーカーを添加することは、公衆衛生及びFDA及び/またはATF事務局などの取締機関の規定に従わなければならないが、このことは従来技術の引用マーキング物質(marking material)の殆どにおいては当てはまらないこと、の幾つかの理由により、アルコール飲料、香水及び医薬製剤などのヒトに適用するための製品に配合するのには適していない。
【0008】
米国特許第5942444号及び同第5776713号の文献は、特異的なモノクローナル抗体で検出すべき、生物学的マーキング剤を開示する。しかしながら、この方法も幾らか限定されるという問題点がある:
a) 特異的なマーカー分子に対するモノクローナル抗体の調製には費用も時間もかかり、新規マーカー及び検出系に対して迅速な「コード変更」を阻害する;
b) 存在しなければならないマーカー量(例えば「オーデコロン」またはウイスキー中20ppm)は、GC-MS及びHPLCなどの近代的な分析ツールを利用して観測することができ、いずれの方法もマーカーとは別に類似薬品が生成物中に存在してはいけない、即ち「木を隠す森(forest to hide the tree)」がないことを推奨する;
c) しかしながら、提案された検出系は、定性的で、偽造品または粗悪品の存在を検出できるだけであり、粗悪品の程度を定量する能力はない。
【0009】
米国特許第20020048822号特許は、電気化学的に還元または酸化できるマーカー分子で製品をマーキングすることについて開示する。このマーカーの配合及び量は、電流滴定法またはクーロメーター電極を利用して電気化学的に測定する。提案された好ましい認証法は、電気化学的検出器に接続された液体クロマトグラフィー(HPLC)による分離であるが、これは野外携帯用の検査装置には適していない。この方法は、製品が他の電気活性化合物を含まないこと、即ち、「木を隠す森」がないことを同様に推奨する。
【0010】
米国特許第5981283号及び同第5474937号特許は、非放射性同位体化合物によって液体をマーキングすることを開示する。このマーカーは、マーキングすべき製品と同様の性質であるので、完全に隠すことができる。ppmよりも少ない量のマーカー、即ち、通常、10億分の1部(ppb)が必要である。この認証は、ガスクロマトグラフィー(GC)または電子噴霧質量分析法(MS)分離段階を含む近代的な分析ツール、続いて従来のフラグメント化-質量分析(MS)法段階によって実施する。しかしながら、このアプローチでさえも幾つかの制限がある。
【0011】
a) 同位体でマーキングされた化合物を意図的に食品または飲料製品に添加すると、行政当局によってますます認可されにくい;
b) 同位体マーキング化合物の価格はかなり高いとはいえ、そのような化合物の選択は、殆ど無限である;
c) ppb量のマーカーのGC-MSまたはMS-MSによる認証には時間がかかり、高価な実験装置と、高度に訓練されたオペレータとが必要であり、これは迅速な実地調査には適していない。
【0012】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服し、ヒトへの適用に適した商標の付いた商品または課税品用の製品中にマーキングする方法及び手段を提供することである。
【0013】
特に、本発明の目的は、アルコール飲料、香水、及び医薬製剤の真偽及び純正品の性質を識別するための目に見えないマーキング法及び手段であって、ここで前記マーキング手段は、前記バルク製品中に(混合または溶解によって)容易に配合することができ、水性環境に対して耐性があり、且つ光はマーキングされた製品の特性(即ち味及び匂い)を変えず、消費者の健康に全く悪影響を与えず、且つ粗悪品のレベルの定量的及び定性的測定ができる、前記方法及び手段を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、同様にマーキングされた製品を識別し、及びおおよその評価をする方法であって、現地でスクリーニングするのに特に適しており且つより正確な研究室分析によってバックアップすることができる、前記方法を提供する。
【0015】
これらの目的は、独立クレームの特徴によって解決される。
【0016】
発明の概要
本発明の真偽及び純正品の性質を識別するためのマーキング方法及び手段は、バルク製品に適用し、これは、容積当たりまたは重量ベースで取り扱われる液体または分割された固体を意味する。本方法は、食品及び飲料、医薬製剤または化粧品などのヒトへの適用を予定しているバルク製品に特に適している。
【0017】
本方法は、マーキングすべき製品にマーカーとして少なくとも一種のイオンを配合することにある。前記用途用のこの単数または複数種類のマーカーイオンは、安価であり、耐性であり、食品用であり、規定面での問題を発生させないためには自然物であり、自然にある同様のイオンによって隠れ、且つ種々のキーまたはキーの組み合わせで変化可能(declinable)でなければならない。
【0018】
マーキングすべき製品(バルク製品)は、蒸留したアルコール飲料若しくはオーデコロン等の液体、または医薬製剤若しくは化粧品などの固体であってもよい。マーカー(または痕跡量の)イオンは、好適な塩の形態で、これらを含有するマーキング組成物によって、前記バルク製品に配合するのが好ましい。
【0019】
本発明は、化合物、特に製品のマーキングに使用されるイオン化合物が、既に自然物質、例えば海水の組成に従って選択されるのが好ましいという考えをベースとする。これは、このマーキングに関しては規制問題がないということを保証する。というのも、海水は、既に何百万年もの間、ヒト及び動物の健康と共存できる環境だからである。それでも、そのような化合物を添加または配合すること、及び得られた濃度は、たとえば飲料水に関する法律及び規制のような食品、薬品、化粧品などに関する種々及び多くの現在実施中の法的必要条件と適合しなければならない。マーキング組成物、特に、マーキングされた物質または製品中に配合されたイオンのそれぞれの濃度は、そのマーキングされた物質または製品がヒトまたは動物での使用を目的とする場合に、非毒性レベルで容易に維持することができる。
【0020】
本発明との関連において、標準的な海水は、以下の表1に列記される平均組成値をもつものとして定義する。表1は、北太平洋から採取し、塩分濃度3.5%を有する海水サンプルを示し、Yoshiyuki Nozakiのthe Encyclopedia of Ocean Science、第6巻(S.A.Thorpe;J.H.Steele;K.K.Turekian編、Akademic Press、2001年)の論文から引用した。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
物質、好ましくは液体のマーキング方法は、
a) マーキングされていない状態で、50ppm未満の濃度レベルで前記物質中に含まれる少なくとも一種のイオンを識別する;
b) 段階a)で識別した少なくとも一種のイオンを含むマーキング組成物を選択する、好ましくは、標準的な海水中に含まれているイオン群から前記イオンを選択する;
c) 段階b)のマーキング組成物をマーキングされていない前記物質に配合する、各段階を含み、ここでマーキング物質中の少なくとも一種の前記イオンの濃度レベルは、マーキングされていない物質中に存在するイオンの濃度レベルと比較して、少なくとも3、好ましくは5、より好ましくは8の因子だけ段階c)で増大している。
【0025】
マーキングされていない物質に添加されるマーキング組成物またはイオンの量は、それぞれマーキングされた製品中の少なくとも一種のイオンの変化(altered)濃度レベルを定義する。この濃度レベルを測定または計算し、マーキングの基準値を規定し、マーキングされた物質または製品を後で認証できるようにする。
【0026】
物質、好ましくは水性液体または非水性液体のマーキング及びその真偽を識別するための方法は、上記マーキング段階に加えて、
d) マーキングされた物質中で、センサによって少なくとも一種の前記イオンのそれぞれの濃度を測定する;及び
e) 前記測定値と少なくとも一つの基準値とを比較し、比較の結果を表示する、各段階を含む。
【0027】
マーキングするための好適なイオンの識別は、消費者の依頼に応じて第三者によって実施される研究室分析または成分若しくはイオン含有量の一種のリストとしてその物質の供給業者などによって提供される情報をベースとすることができる。
【0028】
マーキングしていないバルク製品中の具体的なイオン及びその濃度の評価は、好適な分析法、好ましくはイオンクロマトグラフィー、原子吸光、イオン選択的電極(Ion Selective Electrode)または質量分析法によっても実施することができる。これらの結果を元にして、イオン及びイオン性化合物の選択を後に実施する。
【0029】
マーキング組成物中でマーキング化合物として使用するのに適しているイオンの濃度レベルの上限を定義すると都合がよい。というのも、これによって、マーキングしていない物質または製品に添加されたマーキング組成物の量を大きく変化させることができるからである。さらに、マーキングに関して使用したイオンが元々高濃度レベルであるので、大量のマーキング組成物が必要な場合でも、法律も規制も犯す危険性が小さい。上限イオン濃度50ppmは、一般に好適であることが知見された。マーキングすべき物質または製品に依存して、この上限は、150ppm若しくは100ppmまたはそれ未満の値、20ppmまたは10ppmのような高い値にシフトすることができる。電気化学センサの検出限界は約10億分の1部(ppb;マイクログラム/kg)であるので、マーキング組成物中で使用するのに好適なイオンの上限濃度は、変更されていない物質中のイオン濃度を確実に検出できるようにするのに十分に高い。
【0030】
好ましくは、標準的な海水中で約1ppbまたはそれ以上の濃度を有するそのような全てのイオンは、本発明との関連において潜在的なマーカーとして適している。市販の電極は、通常、サンプルの前濃度(pre-concentration)を必要とすることなく、そのような低濃度を検出することができる(これは、もちろん、当業者に公知の蒸発-または集積/ストリッピング法の一つを使用して、困難な場合で実行できる任意選択である)。
【0031】
本マーキング組成物は、無機または有機塩を含む群の少なくとも一種の塩を含むことができる。選択されたイオンは、無機または有機のアニオンまたはカチオンであってもよい。液体製品の場合には、このマーキング組成物は、製品中に完全に溶解性であるように選択するのが好ましい。
【0032】
特に、前記イオンは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、ホウ酸塩、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩及びセレン酸塩を含む群から選択されるアニオン、または式:[MxOy(OH)z]n−(式中、Mは周期律系の任意の化学元素であり、x、y、z及びnは正の整数であり、xは1以上である)のアニオンを含むアニオンの群から選択されるアニオンであってもよい。好適なイオンは、炭酸RCO2及びスルホンRSO3-酸アニオン(ここでRは有機残基または水素である)でもある。
【0033】
このイオンは、アンモニウム(+)、リチウム(+)、ナトリウム(+)、カリウム(+)、ルビジウム(+)、セシウム(+)、マグネシウム(2+)、カルシウム(2+)、ストロンチウム(2+)、バリウム(2+)、鉄(2+/3+)、コバルト(2+)、ニッケル(2+)、銅(2+)及び亜鉛(2+)を含む群から選択されるカチオンであるか、または式:[MxOy(OH)z]n+(式中、Mは周期律系の任意の化学元素であり、x、y、z及びnは正の整数であり、xは1以上である)のカチオンを含む群から選択されるカチオンであってもよい。他の好適なカチオンは錯カチオンであり、例えば、アンモニウム(+)、有機アンモニウム誘導体NR4+(式中、Rは有機残基又は水素である)等が挙げられる。
【0034】
典型的なマーキング組成物は、十分に定義された割合で3〜4種のイオンを含むことができる。種々のイオン比を使用することによって、存在する組み合わせの数は多くのマーキングキーを提供することができるほど十分に多い。
【0035】
マーキングされていない製品または物質中の濃度と比較して、マーキングされた製品中の添加されたイオンが最小で3倍過剰濃度であると、その差は、使用した測定法の標準偏差の値を超えるのに十分に高いことを保証する。このイオン濃度の過剰は、マーキングされていない製品または物質中のイオン濃度の少なくとも5倍〜少なくとも8倍であるのが好ましい。
【0036】
マーキングされていない製品にそれぞれ添加される、マーキング組成物の濃度またはマーキング組成物中に含まれるイオンは、測定によって、または添加量をベースとして計算によって決定し、データベース、生産高報告書などのような好適な場所で貯蔵する。この基準値は製品ラベルに認証目的に関して読み取り可能なコードとして直接加えることができる。
【0037】
本発明のマーキング法は、ヒトまたは動物への用途若しくは利用を予定したバルク製品、特に、アルコール飲料、香水、化粧品及び医薬製剤を含む製品の群から選択される製品をマーキングするのに特に適している。
【0038】
物質、特に上記方法に従ってマーキングした物質の真偽を識別する方法は、
a) 物質に添加されたマーキング組成物中に含まれる少なくとも一種のイオンの基準値を提供する;
b) 識別すべき物質中の少なくとも一種のイオンのそれぞれの濃度をセンサによって測定する、前記センサはイオン性化合物のそれぞれの濃度値を測定することができる;及び
c) 前記測定値と少なくとも一つの基準値とを比較し、その比較結果を表示する、各段階を含む。
【0039】
この基準値は、マーキングした製品の製造業者によって認定者に提供されるか、またはこの基準値は、たとえばマーキングされた物質の容器上に適用されたコードの形状で既に利用可能である。これらの方法に加えて、当業者には基準値を提供するさらなる他の方法は公知である。
【0040】
マーキングされた前記物質における測定は、電気化学的センサ、好ましくはイオン選択的電極、またはマルチイオン選択的電極、またはイオン選択的電界効果トランジスタを使用して、実地調査として現場で実施するのが好ましい。そのような実地調査では、どこにでも持ち運び可能な小さな、携帯用の電池式装置を使用して、液体商品を迅速に調査することができる。使用したセンサは、組成物中に含まれるイオン成分のそれぞれの濃度値を測定することができ、マーキングされた製品の純正品の性質及び真偽の識別が、当業界で公知の如く電気化学法を利用して好ましくは実施されるという最初の事例を与える。対応する装置は小さく、野外携帯用であり、且つ対応するセンサを利用して、選択したイオンの濃度の読み出しを殆ど迅速に供給する。有用なセンサは、イオン選択的電極、マルチイオン選択的電極、イオン選択的電界効果トランジスタ等が含まれ、これらは市販されている。
【0041】
既に述べたように、本発明は、選択的電極を利用してin-situでマーキングイオンの濃度[M]を測定する能力に依存する。そのような選択的電極は当業界で公知であり、数多くのイオン及び分子に関して種々の製造業者から販売されている。測定の間、電極は、参照電極(標準電位基準値を与える)、作用電極(選択的電極である)と、電解質(分析すべき液体である)を含む、電気化学装置の一部である。
【0042】
電気化学素子は、ネルンストの式に従い、この式は、当業者に公知の如く電解質中の測定した電位基準値△E対求められた濃度[M]に関係する:
【0043】
【数1】

【0044】
イオン選択的電極は、食品及び飲料業界、並びに生物医薬的及び製薬業界において、環境分析(現地及び研究室の両方)で水溶液の分析に関して広く使用される。そのような電極は、アニオンF、Cl、Br、I、及びカチオンH+、Na、Kに関して容易に利用可能である。Ca++及びCu++等の特定の価数のイオンに関して利用可能な選択的電極もある。
【0045】
その実用的原則は公知であり、理解されているので、イオン選択的電極は、検出されたイオン用の目的にも製造することができる。基本的に選択的電極には三つの種類:a)ガラス膜をベースとするもの(H+に関しては、pH電極);b)不溶性無機塩膜をベースとするもの(たとえば、ZnSは、Zn2+及びS2−イオンに対して選択的に感受性である);及びc)イオン交換または錯体形成樹脂をベースとするものがある。検出したイオンに関して無機塩または選択的錯体形成剤(selective complex former)を知っているので、選択的電極を得ることが常に可能である。選択的電極の実用的原則は十分に記載されており、“Electrochemical Methods”、A.Bard及びL.R.Faulkner編、Wiley and Sons、1980年に説明されている。
【0046】
水溶液中のこれらのイオン選択的電極を専用することを推奨するにもかかわらず、本出願人は、意外にも、測定の間及びその後に幾らか留意するならば、イオン選択的電極が50%ものエタノールを含有するアルコール飲料、並びに63%以下のエタノールを含有する香水で確実に操作し得ることを知見した。
【0047】
本発明に従った現場でマーキングされた製品の真偽及び純正品の性質を検出するためのもう一つの好適な電気化学的センサは、イオン感受性電界効果トランジスタ(ion-sensitive-field-effect-transistor:ISFET)である。このタイプの方法は、慣用の半導体技術によって製造したセンサを巧みに利用することによって、センサの高度な集積化及び微細化を可能にした。
【0048】
米国特許第4816118号及びその中の参照文献に記載されたISFETの実用的原理は、MOSFETトランジスタのゲート上のチャージ形成をベースとする。この目的のためには、標準的なCMOSプロセスで製造したMOSFETトランジスタは、電気的に「浮動性(free floating)」ゲートを有し、ターゲットイオンまたは分子と選択的に相互作用可能な樹脂または無機化合物でコーティングされて、これらをある程度まで吸収する。溶液から吸収されたイオンは、MOSFETのゲートで電界を生成し、MOSFETチャネルを通して電流の流れを変化させ、これは、その溶液中のターゲットイオンまたは分子濃度の尺度である。ISEの場合のように、標準参照電極に対して測定が得られる。SENTEK Ltd.(イギリス)などのISEの製造業者は、コンビネーションーISEセンサ(Combination-ISE sensor)を提案し、参照電極は既にセンサ内に組み込まれている。このタイプのデバイスは、携帯用野外調査での集積化に関し、以下の好都合な点:
・追加の参照電極は必要ない→コンパクトな系;
・熟練を要しない人には理想的;
・電極を満たす溶液は必要ない;
・実質的に破壊できない;
・長期にわたり乾燥させたままにしておくことができる;
・耐用年数が長い;
・比較的コストが低い、ことを提案する。
【0049】
組み合わせ電極は、Metrohm、Analytical Sensors Inc.またはJenwayを含む他の製造業者からも得ることができる。
【0050】
記載の理由により、前記タイプのイオンセンサが好ましい。しかしながら、参照電極も存在しているならば、標準ISE電極は、本発明を具象化することに使用することもできる。
【0051】
実地調査段階に加えて、本方法は、実地調査の間に集められた疑わしいサンプルの場外研究室の確認もさらに含むことができる。この場外研究室分析法は、電子吸光分光学(AAS)、イオンクロマトグラフィー(IC)、及び質量分析法(MS)及びこれらの組み合わせを含む方法の群から選択される精密度の高い分析法を使用することによって実施する。これらの全ての方法は分析化学の当業者に公知であり、本明細書中、詳細に記載する必要はない。
【0052】
フッ化物、塩化物、亜硝酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リチウム、ナトリウム、アンモニウム及びカリウムなどの一般的なイオン様の水性サンプル中のイオンクロマトグラフィー(IC)の感度限界は、カラム出口で導電率検出器を使用して、100万分の1部(ppm)範囲である。あるタイプのカラムでは、予備濃度法をさらに使用することができる。即ち、このサンプルを第一のセット条件下でカラム上に集積し(通常、溶液及び温度を選択する)、第二のセット条件下で移動し(分離し)、10億分の1部(ppb)レベルに感度を押し上げる。対応する装置は、Metrohm、Disnex他から入手可能である。今後の野外携帯用イオンクロマトグラフィー装置は、本明細書中で開示されたマーキング及び認証方法の可能性をさらに改善するものと予測される。
【0053】
本発明の第一の態様では、20〜60容積%のエチルアルコール濃度をもつ、蒸留アルコール飲料を、イオン性マーカーを含むマーキング組成物でマーキングする。この飲料の腫な構成成分は、水である。この場合の好ましいマーキング組成物は、無機塩または種々のイオンを含有する無機塩の組み合わせである。
【0054】
かくして、好ましいイオンは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム及びストロンチウムまたはこれらの混合物を含む群から選択される。これらのイオンは、鉱物中及び海水中に自然に生じている。添加したマーカー量に関して、現地の法律に準拠し、且つ飲料水中の前記イオンの最大許容レベルを超えないように留意しなければならない。
【0055】
その製造プロセスの間、蒸留アルコール飲料は、通常、蒸留の後、または熟成段階の後で希釈される。これは、エチルアルコールの所望の割合(たとえば40%)とするために、飲用の(涌水)水を添加することによって実施する。従って、マーキングすべき最終アルコール飲料製品は、希釈水中に存在する幾らか一般的なイオンを既に含む。この理由から、最も好適なマーカーイオンまたはマーカーイオンの組合せを選択するために、製造前にアルコール製品の天然イオン含有量を分析することが重要である。マーキングすべき製品中の自然に存在するイオンは、最初の事例では、本発明に従ったマーキングを実施するのが困難であると見られる。しかしながら、全てそれとは反対に、既に存在するイオンは、マーキングの不可欠な部分を形成するものとして、またはそれをカモフラージュするものとして利用することができるので、マーキング系の信頼性を改善するために、注意深く選択したマーカーイオンまたはマーカーイオンのセットと組み合わせることができる。
【0056】
イオンマーキング組成物を、百万分の数百部(ppm)から百万分の0.1部の範囲の少量で添加する。この(単数または複数種類の)イオン塩は、最初に、しかし義務的にではないが、水溶液、即ち、10%以下の固体含有量を含み得る「濃縮された」またはストック溶液に製造することができる。続いて前記ストック溶液をマーキングすべき液体に導入して、好適な濃度レベルのイオンにする。アルコール飲料中に含まれる(単数または複数種類の)マーカーの量は、50〜0.01ppmの範囲であるのが好ましい。より好ましくは、マーカー量は、5〜0.5ppmである。
【0057】
マーキングされた製品は、ここで、製品の真偽及び純正品の性質に依存して、またはその潜在的な認証に関してチェックするために、現場で検査官によって調査することができる。これは、携帯用の電位差測定電気化学的イオン選択的電極(ISE)センサを使用して最もよく実施され、これによって、電解質に含まれる痕跡量のイオンの迅速且つ選択的な検出が可能になる。
【0058】
本発明の第一の態様に関して、バルク製品をマーキング及び/またはその真偽を識別する方法は:
・提案されたマーカーに関してアルコール飲料中の天然イオン含有量を検出する;
・ppmレベルで少なくとも一種の化合物でアルコール飲料を製品内でマーキングする;
・電気化学的センサなどの携帯用センサ装置、またはイオンクロマトグラフィーなどの携帯用クロマトグラフィー装置を使用して、商標付き製品の純正品の性質、または場合によってはその粗悪品レベルを測定するために現場で検査する;
・疑わしいサンプルにおける結果を確認するため及び、その粗悪品レベルを正確に定量するために、場外研究室で検査する、段階を含む。
【0059】
本発明の第二の態様は、香水のイオンマーキング化に関する。この態様における好ましいマーキング組成物は、塩または多くの異なるイオンを含有する塩の組み合わせである。香水は、摂取する予定ではない製品であるので、マーキング中の有用なイオンの量及び性質は、前記第一の態様よりも多く多様である。しかしながら、対応する規定に関しては留意しなければならない。
【0060】
イオンマーカーは、百万分の数百部(ppm)〜百万分の0.1部、好ましくは500〜0.1ppm、より好ましくは100〜0.5ppmの範囲の少量を添加する。前記マーカーの添加は、予め形成した、より濃度の高いストック溶液を使用して実施する。
【0061】
マーキングされた製品の純正品の性質の調査は、前記第一の態様に関して与えられたのと同一方法によって実施することができる。
【0062】
本発明の第三の態様において、マーキングすべきバルク製品は、特に錠剤または粉末の形状の、薬品または医薬成分である。この態様の好ましいマーキング組成物は、塩または多くの異なるイオンを含有する塩の組み合わせである。前記態様と同様に、典型的なマーキングは、十分に確定した割合で3〜4種類のイオンを含む。種々のイオン比を使用することによって、存在する組み合わせ数は、多くのマーキングキーを作り出すのに十分に多い。
【0063】
医薬製品は飲み込むので、薬剤中の主な活性成分の治療的効果を不安定にしたり阻害することなく、且つ健康を損なわないように、イオンの性質及び量を選択するのに留意しなければならない。
【0064】
このイオンマーキング組成物を、百万分の千部(ppm)〜百万分の0.1部、好ましくは1000〜0.1ppm、より好ましくは600〜1.0ppmの少量で添加する。前記マーキング組成物の添加は、イオン組成物を、数パーセントの濃度で医薬品と予備混合した、予備形成した適当に濃縮したストック配合物を使用して実施することができる。次いで、このストック溶液をその製造の間、またはコンディショニングプロセスの後で、必要な割合で最終医薬製剤に添加する。あるいは、マーキング組成物の希釈溶液を、パッケージング(ブリスタリング:blistering)の間に、錠剤などの医薬製品に混ぜることができる。
【0065】
調査は、第一の態様で開示された方法と同様に実施することができる。しかしながら、マーキングした製品は固体であるので、全ての電気化学的測定を実施する前に、好適に溶解または分散させなければならない。実地での測定装置、種々のマーキング及び識別段階を構成する種々の構成要素は、前記態様で記載のものと同様である。
【0066】
本発明を実施例及び図面を参照して詳細に記載する。
【0067】
実施例
バルク製品の真偽及び純正品の性質をマーキング及び検出する方法の概要を図1に示す。
【0068】
マーキングすべき製品に含まれるイオンの濃度レベルは、好適な方法により決定される。そのようにして得られたリストから、マーキングされていない製品で50ppm未満の濃度レベルのイオンを選択する。これらのイオンの好適な塩を混合し、予備形成したストック溶液または粉末10を製造する。
【0069】
予備形成したストック溶液または粉末10をバルク製品11とブレンドすると、マーキングされたバルク製品12が得られる。このバルク製品12はさらに処理し、分配される(示されていない)。
【0070】
後の時点で、分配されたバッチがその純正品の状態のままであるか、またはこれらが偽造されたか不純物を混ぜて品質が低下したかを試験する。分配バッチ20を選択し、実地調査分析21を、好適な装置を使用して実施する。結果22は、分配されたバッチの同一性、偽造物または粗悪品を示す。
【0071】
結果22が分配されたバッチ20における全ての種類の操作を示す場合、サンプルは、現地調査の結果22を確認するために、研究室での分析30を受ける。
【0072】
図2に従った携帯用実地調査装置は、以下の構成成分:
(1)キャリブレーション用のマーキングされた基準溶液標準キュベット;
(2)電極初期調整用の脱イオン水キュベット;
(3)調査すべきサンプルキュベット;
(4)(単数または複数種類の)センサ用スタンド;
(5)組み合わせISEセンサ;
(6)温度センサ;
(7)ADCコンバータを備えたミリボルトメーター及び
(8)専用分析ソフトウエアを備えたラップトップPCを含む。
【0073】
マーキングされた参照溶液1は、純正品のマーキングされたアルコールの基準サンプルである。これは30mlキュベットに含まれ、センサを正しくキャリブレーションすることができる。脱イオン水キュベット2は、初期測定の前にセンサをコンディショニングする目的に役立つ、30mlキュベット中にイオンマーカーを備えた脱イオン水である。サンプルキュベット3は、調査すべきサンプルを含有する30mlキュベットである。キュベット1、2及び3は同一であり、且つ測定の精度を高めるために、同一容積の液体を含むのが好ましい。
【0074】
センサ4のスタンドは、キュベット中のセンサを全く同一に再現可能に浸漬させるための目的を有する。電気化学センサ5は、たとえばSENTEK、Braintree、Essex(イギリス)製のFlooride direcIONタイプ用の組み合わせISE電気化学センサである。その技術仕様書は、以下の通りである:
イオン:フッ化物(F);
スロープ:−57mV/濃度1桁(decade in concentration);
範囲:0.2〜1900ppm。
【0075】
アナログ電極は、ヨウ化物(Iodide directION)、臭化物、塩化物、ナトリウム(+)、カリウム(+)、カルシウム(2+)、ストロンチウム(2+)、銅(2+)と同一供給業者から出ている。
【0076】
熱電対などの温度センサ6は、測定した電気化学電位からの濃度値の計算における温度の影響を補償するための分析ソフトウエアに情報を提供する。電気化学電位を測定するミリボルトメーター7は、ユーザーが慣用のポテンショメーターもpH-メーターも使用する必要なく、任意のタイプのラップトップPCに直接(単数または複数種類の)イオン特異的電極(Ion Specific Electrode)を接続することができる、MeterLess ELIT(商標)コンピューターインターフェースなどのアナログからデジタルへの変換器を含むのが好ましい。この携帯用ラップトップコンピューター8は、ネルンストの法則などの対応する生理化学式を使用して、(単数または複数種類の)測定した電位値から調査した製品中の(単数または複数種類の)マーカーの濃度を計算するための、好適な専用の分析ソフトウエアを含む。結果は、検査官の代わりに絶対値で、または“本物/偽造品/粗悪品”なる要約表示で表示することができる。
【0077】
あるいは、野外携帯用のイオンクロマトグラフィー装置も、好適な環境における実地調査で使用することができる。
【0078】
実施例1:フッ化物イオンで市販のブランデーをマーキングする
マーキングすべきブランデー中のフッ化物中の天然イオン含有量を、フッ化物イオン選択的電極を使用して測定すると、ISEセンサの検出限界(0.2ppm)未満であることが判明した。従って、フッ化物は、市販のブランデーのマーキングに好適であると判断した。
【0079】
マーキング組成物の濃縮水性ストック溶液は、高純度蒸留水中に0.1%w/wのフッ化ナトリウムを溶解することによって製造した。次いで上記ストック溶液0.5gを市販のブランデー999.5gに添加して、フッ化物濃度0.5ppmの基準のマーキングされたブランデーを製造した。
【0080】
続いて、違法である粗悪品を模倣するために、この基準のマーキングされたブランデーをマーキングされていないブランデーで種々の程度まで「希釈」して、表2に見られるようにブランデーA〜Eを製造した。
【0081】
認証測定を開始する前に、1ppmのフッ化ナトリウム水溶液に、30分間、フッ化物ISE電極(SENTEK)を浸漬することによって実地検出器を活性化した。組み合わせ電極も、ラップトップコンピューターにELIT AD変換器を介して接続する。この組み合わせ電極が数時間乾燥したまま放置される場合に限り、この活性化は必要である。次いでISEフッ化物検出器を、基準のマーキングされたブランデー20mlを使用してキャリブレーションした。基準サンプル中に組み合わせ電極を120秒間浸漬した後で、組み合わせISEフッ化物電極での電圧出力を、ELITインターフェースを介して測定した。この手順を三回繰り返して、その間、脱イオン水で注意深く洗浄し、乾燥した。三回のキャリブレーション測定が1%の偏差以内であれば、このキャリブレーションは有効であり、平均電位をマーキングされたアルコール用のキャリブレーション値として採用する。
【0082】
次いで、サンプルA〜Eのマーカー濃度を測定する。組み合わせ電極をサンプル20mlに浸漬し、120秒後に電圧出力を測定した。サンプルとサンプルの間では、電極を脱イオン水で注意深く洗浄し、乾燥しなければならない。測定した電位値を、対応する外挿及び算出した濃度レベル(ネルンストの法則及びキャリブレーション測定より)と共に表2に報告する。得られた結果を理論値と比較する。
【0083】
この結果から、サンプルAは本物のマーキングされたアルコールであり、サンプルBは、偽造アルコールであり、サンプルC、D、Eは、種々の程度まで不純物を混ぜて品質を低下させた本物のマーキングされた製品であるというのが結論である。この実地調査システムは、10%の粗悪品レベル(サンプルE)を検出するまで十分に正確である。
【0084】
【表4】

【0085】
実施例2:ヨウ化物イオンによる市販ウイスキーのマーキング
マーキングすべきウイスキー中のヨウ化物の天然のイオン含有量を、ヨウ化物イオン選択的電極を使用して測定すると、ISEセンサの検出限界(0.06ppm)未満であることが判明した。従って、ヨウ化物は、市販のブランデーのマーキングに好適であると判断した
マーキング組成物の濃縮水性ストック溶液は、高純度蒸留水中に0.1%w/wのヨウ化カリウムを溶解することによって製造した。上記ストック溶液1.0gを市販のブランデー999.0gに添加して、ヨウ化物濃度1.0ppmの基準のマーキングされたブランデーを製造した。
【0086】
続いて、違法である粗悪品を模倣するために、この基準のマーキングされたブランデーをマーキングされていないブランデーで種々の程度まで「希釈」して、表3に見られるようにブランデーA〜Dを製造した。
【0087】
認証測定を開始する前に、組み合わせヨウ化物ISE電極(SENTEK Iodide direcION)は、10ppmヨウ化カリウム水溶液中にこれを30分間浸漬することによって活性化した。組み合わせ電極も、ラップトップコンピューターにELIT AD変換器を介して接続する。組み合わせ電極が数時間乾燥したまま放置される場合に限り、この活性化は必要である。
【0088】
ISEヨウ化物検出器を、基準のマーキングされたブランデー20mlを使用してキャリブレーションした。基準サンプル中に組み合わせ電極を浸漬し、数秒間撹拌し、60秒間静置させた後で、組み合わせISEヨウ化物電極での電圧出力を、ELITインターフェースを介して測定した。この手順を五回繰り返して、測定の間、脱イオン水で注意深く素早く洗浄し(4秒間)、乾燥した。最後の三回の電位測定が2%の偏差以内であれば、このキャリブレーションは有効であり、平均電位をマーキングされたアルコール用のキャリブレーション値として採用する。
【0089】
次いで、サンプルA〜Dのマーカー濃度を測定する。電圧出力を60秒後に測定した以外には、実施例1に関して記載したように測定手順を実施した。表3は、対応する外挿及び算出した濃度レベル(ネルンストの法則及びキャリブレーション測定より)と共に測定した電位値と、理論値との比較を列記する。
【0090】
【表5】

【0091】
上記結果から、サンプルAは本物のマーキングされたアルコールであり、サンプルBは、偽造アルコールであり、サンプルC及びDは、種々の程度まで不純物を混ぜて品質を低下させた本物のマーキングされた製品であるというのが結論である。
【0092】
実施例3:ヨウ化物イオンによる市販の香水(オーデコロン)のマーキング
マーキングすべき香水中の天然のヨウ化物イオン含有量を、ヨウ化物イオン選択的電極を使用して測定すると、ISEセンサの検出限界(0.06ppm)未満であることが判明した。従って、ヨウ化物は、市販の香水のマーキングに好適であると判断した。
【0093】
マーキング組成物の濃縮水性ストック溶液は、高純度蒸留水中に0.1%w/wのヨウ化カリウムを溶解することによって製造した。上記ストック溶液5.0gを市販の香水995.0gに添加して、ヨウ化物濃度5ppmの基準のマーキングされた香水を製造した。
【0094】
続いて、違法である粗悪品を模倣するために、この基準のマーキングされた香水をマーキングされていない香水で種々の程度まで「希釈」して、表4に見られるように香水A〜Dを製造した。
【0095】
認証測定を開始する前に、組み合わせヨウ化物ISE電極(SENTEK)は、10ppmヨウ化カリウム水溶液中にこれを30分間浸漬することによって活性化し、ラップトップコンピューターにELIT AD変換器を介して接続した。
【0096】
ISEヨウ化物検出器を、基準のマーキングされたオーデコロン20mlを使用した以外には、実施例2に関して記載のキャリブレーション手順に従ってキャリブレーションした。
【0097】
サンプルA〜D中のマーカー濃度を測定した。測定手順は、実施例2に関して記載のものと同一であった。表4は、対応する外挿及び算出した濃度レベル(ネルンストの法則及びキャリブレーション測定より)と共に測定した電位値と、理論値との比較を列記する。
【0098】
【表6】

【0099】
上記結果から、サンプルAは本物のマーキングされたアルコールであり、サンプルDは、偽造アルコールであり、サンプルB及びCは、種々の程度まで不純物を混ぜて品質を低下させた本物のマーキングされた製品であるというのが結論である。
【0100】
実施例4:ヨウ化物及びカリウムイオンによる市販の薬錠剤(パラセタモル、アセトアミノフェン)のマーキング
マーキングすべき薬錠剤中の天然のヨウ化物及びカリウムのイオン含有量を、(水に薬剤を10%に溶解することにより)ヨウ化物イオン選択的電極を使用して測定した。いずれのイオン含有量も、二つのISEセンサの検出限界未満であると検出された。即ち、ヨウ化物センサに関しては0.06ppmであり、カリウムセンサに関しては0.04ppmであった。従って、ヨウ化物及びカリウムは、市販の薬錠剤のマーキングに好適であると判断した。
【0101】
マーキング組成物の濃縮水性ストック溶液は、ピラーと乳鉢で予め微粉砕しておいた市販の薬錠剤と1%w/wのヨウ化カリウムとを混合することによって製造した。上記ストック粉末0.60gを市販のパラセタモル錠剤9.40gに添加して、600ppmK及びIの基準のマーキングされたパラセタモル粉末を製造した。
【0102】
続いて、違法である粗悪品を模倣するために、この基準のマーキングされた薬剤をマーキングされていないパラセタモル粉末製品で種々の程度まで「希釈」して、表5に見られるように薬剤A〜Cを製造した。
【0103】
認証測定を開始する前に、組み合わせヨウ化物及びカリウムISE電極(SENTEK)は、100ppmヨウ化カリウム水溶液中にこれを30分間浸漬することによって活性化し、ラップトップコンピューターにELIT AD変換器を介して接続した。
【0104】
ISEヨウ化物及びカリウム検出器を、脱イオン水18.0gに部分的に「溶解」した基準のマーキングされた薬粉末2.0gを使用してキャリブレーションした。詳細なキャリブレーション手順は、マーキングされた薬剤の溶液を使用した以外には、実施例2に記載の如く実施した。
【0105】
次いで、サンプルA〜Cのマーカー濃度を測定した。組み合わせ電極を粉砕した錠剤由来のパラセタモル粉末2.0gと、脱イオン水18.0gとで製造した溶液中に浸漬した。測定は上記の如く実施した。表5は、対応する外挿及び算出した濃度レベル(ネルンストの法則及びキャリブレーション測定より)と共に測定した電位値と、理論値との比較を列記する。
【0106】
【表7】

【0107】
上記結果から、サンプルAは本物のマーキングされた薬剤であり、サンプルCは、偽造薬剤であり、サンプルBは、50%でマーキングされていない製品を混ぜて品質を低下させた本物のマーキングされた製品であるというのが結論である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】図1は、マーキング及び識別方法の略図である。
【図2】図2は、携帯用実地調査装置の例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質、好ましくは液体をマーキングする方法であって、
a) マーキングされていない状態で50ppm未満の濃度レベルで前記物質中に含まれる少なくとも一種のイオンを識別する;
b) 段階a)で識別された少なくとも一種のイオンを含むマーキング組成物を選択する、好ましくは標準的な海水中に含まれているイオン群から前記イオンを選択する;
c) マーキングされていない前記物質に段階b)のマーキング組成物を配合する、各段階を含み、ここでマーキングされた物質中の少なくとも一種の前記イオンの濃度レベルは、マーキングされていない物質中に存在するそのイオンの濃度レベルと比較して、少なくとも3、好ましくは5、より好ましくは8の因子だけ段階c)で増大している、前記方法。
【請求項2】
物質、好ましくは水性または非水性液体をマーキングし、及びその真偽を識別する方法であって、前記方法は、
a) マーキングされていない状態で50ppm未満の濃度レベルで前記物質中に含まれる少なくとも一種のイオンを識別する;
b) 段階a)で識別された少なくとも一種のイオンを含むマーキング組成物を選択する、好ましくは標準的な海水中に含まれているイオン群から前記イオンを選択する;
c) マーキングされていない前記物質に段階b)のマーキング組成物を配合する、少なくとも一種の前記イオンの別の濃度レベルは基準値として規定する;
d) センサによって少なくとも一種の前記イオンのそれぞれの濃度を前記マーキングされた物質中で測定する;及び
e) 前記測定値と少なくとも一つの基準値とを比較して、その比較の結果を表示する、各段階を含み、ここでマーキングされた物質中の少なくとも一種の前記イオンの濃度レベルは、マーキングされていない物質中に存在するそのイオンの濃度レベルと比較して、少なくとも3、好ましくは5、より好ましくは8の因子だけ段階c)で増加している、前記方法。
【請求項3】
段階a)の前に、マーキングされていない物質中の少なくとも一種のイオンの濃度レベルを測定する、請求項1または2の一項以上に記載の方法。
【請求項4】
前記マーキング組成物が、無機塩と有機塩とを含む群から選択される少なくとも一種の塩を含む、請求項1〜3の一項以上に記載の前記方法。
【請求項5】
前記イオンが無機アニオンである、請求項1または2の一項以上に記載の方法。
【請求項6】
前記イオンが、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、ホウ酸塩、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩及びセレン酸塩を含む群から選択されるアニオンである、請求項1〜5の一項以上に記載の方法。
【請求項7】
前記イオンが無機カチオンである、請求項1〜6の一項以上に記載の方法。
【請求項8】
前記イオンが、アンモニウム(+)、リチウム(+)、ナトリウム(+)、カリウム(+)、ルビジウム(+)、セシウム(+)、マグネシウム(2+)、カルシウム(2+)、ストロンチウム(2+)、バリウム(2+)、鉄(2+/3+)、コバルト(2+)、ニッケル(2+)、銅(2+)及び亜鉛(2+)を含む群から選択されるカチオンである、請求項7に記載の物質をマーキングする方法。
【請求項9】
前記物質が、アルコール飲料、香水、化粧品、薬剤または医薬成分であることを特徴とする、請求項1〜8の一項以上に記載の方法。
【請求項10】
請求項1または3〜9の一項以上に記載の方法に従ってマーキングされている物質の真偽を識別する方法であって、
a) 前記物質に加えておいたマーキング組成物中に含まれる少なくとも一種のイオンの基準値を提供する;
b)識別すべき物質中の少なくとも一種のイオンのそれぞれの濃度をセンサによって測定する、前記センサはイオン化合物のそれぞれの濃度値を測定することができる;及び
c) 測定した値と少なくとも一つの基準値とを比較し、その比較の結果を表示する、各段階を含む、前記方法。
【請求項11】
前記センサが、電気化学センサ、好ましくはイオン選択的電極であることを特徴とする、請求項2〜10の一項以上に記載の方法。
【請求項12】
前記イオン選択的電極が、マルチイオン選択的電極であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記センサがイオン選択的電界効果トランジスタであることを特徴とする、請求項2〜10の一項以上に記載の方法。
【請求項14】
前記測定段階を、実地調査分析として実施することを特徴とする、請求項2〜13の一項以上に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、実地調査分析を確認するための場外実験室分析の段階をさらに含む、請求項2〜14の一項以上に記載の方法。
【請求項16】
前記場外実験室分析が、原子吸光分光学(AAS)、イオンクロマトグラフィー(IC)、質量分析法(MS)、またはその組み合わせを含む分析法によって実施することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1または3〜10の一項以上に記載の方法に従って得られた、マーキングされた物質、好ましくはマーキングされた食品若しくは飲料、マーキングされた医薬品またはマーキングされた化粧品であって、前記マーキング組成物中に含まれている、前記マーキングされた物質中に含まれるイオンの濃度は、ヒトでの使用にも動物での使用に関しても非毒性であることを特徴とする、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−524840(P2007−524840A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517985(P2006−517985)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005391
【国際公開番号】WO2005/005933
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(500269417)シクパ・ホールディング・ソシエテ・アノニム (23)
【Fターム(参考)】