説明

製品納入計画立案方法

【課題】対策処置する製品が複数あっても適切な製品輸送の進捗管理を可能とする。
【解決手段】製品を生産ラインから輸送ルートを経て納入先に納入するまでの計画の立案方法において、管理ポイントを有する輸送ルート上に、出発時間間隔が所定値以上の管理ポイントを特別管理ポイントとして設定し、かつ優先期間を設定する(401,402)。対策処置され、生産ラインに戻される製品の輸送ルートが特別管理ポイントを含み、優先期間内である場合はその製品の優先順位を上位に設定する(403)。それ以外の製品は、特別管理ポイントまでのリードタイムにより余裕時間を算出し他の製品の余裕時間と比較して優先順位を設定する(403)。設定された優先順位により製品の輸送計画を再計算する(404)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品を生産ラインによって生産し輸送ルートを経て納入先に納入する計画を立案する製品納入計画立案方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては特許文献1に記載のものがあった。
これは、製品を生産ラインによって生産し輸送ルートを経て顧客に納入するまでの過程において、複数の管理ポイントを予め設定しておき、その管理ポイント毎の出発時間間隔やリードタイムから通過計画を立案し、その計画が立案通り進捗しているかを管理するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】2003−241819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製品の生産ラインにおいて、そのラインにより生産される製品に何らかの問題が生じた場合には、その製品は一旦生産ラインから外される。そして、その問題に対する手直し等の処置(対策処置)が施された後、生産ラインに戻される。
この生産ラインに戻される製品が1つだけの場合は、その製品の輸送先に関係なく速やかに対策処置を施して生産ラインに戻せばよい。しかし、対策処置を施す製品が複数あった場合、上記特許文献1に記載の技術では、各製品の輸送ルート上の管理ポイントにおける出発時間間隔の差異によっては、対策処置を施した製品を生産ラインに戻す適切な順位を設定できないことがあり、従来、このような問題を減少させ得る方法の開発が課題とされていた。
【0005】
本発明は、上記のような課題を達成するためになされたもので、対策処置を施す製品が複数あった場合に、各製品の輸送ルート上の管理ポイントにおける出発時間間隔の差異により、対策処置を施した製品を生産ラインに戻す適切な順位を設定できないことがあるという問題を減少させ、適切な製品輸送計画の進捗管理を可能とした製品納入計画立案方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、製品を生産ラインにより生産し輸送ルートを経て納入先に納入する計画を立案する製品納入計画立案方法において、前記輸送ルート上の複数の管理ポイント中、出発時間間隔が所定値以上の管理ポイントを特別管理ポイントとして設定すると共に該特別管理ポイントにおける優先期間を設定し、前記生産ラインから外された後に該生産ラインに戻される製品につき、その輸送ルートが前記特別管理ポイントを含み、かつ前記優先期間内であるとの条件を満たす場合は、優先順位を上位に設定し、前記条件を満たさない場合は、前記特別管理ポイントまでのリードタイムを考慮した余裕時間を算出し他の製品の余裕時間と比較して優先順位を設定し、各々設定された優先順位に基づき前記生産ラインに戻される製品の輸送計画を再計算するようにしたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の製品納入計画立案方法において、前記輸送計画の再計算時、該再計算をする製品と同じ輸送ルートで特別管理ポイントに向かう製品についてもその輸送計画を再計算するようにしたことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の製品納入計画立案方法において、前記輸送計画には、製品の輸送ルート上の各管理ポイントの通過予定日時及び納入先への到着予定日時を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、対策処置を施す製品が複数あった場合であって、各製品の輸送ルート上の管理ポイントにおける出発時間間隔に差異があるときも、特に、出発時間間隔が極端に長い管理ポイントがあるときにも、対策処置を施した製品を生産ラインに戻す適切な順位を設定でき、その製品の適切な輸送の進捗管理を可能とした製品納入計画立案方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】製品生産の一例を示す図である。
【図2】製品の輸送ルートの一例を示す図である。
【図3】製品の輸送計画表の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る製品納入計画立案方法のフローチャートを示す図である。
【図5】特別管理ポイント設定テーブルの一例を示す図である。
【図6】特別管理ポイント優先設定テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明するが、それに先立ち、まず本発明をするに至った経緯について述べる。
前述したように、対策処置が施された後、生産ラインに戻される製品が複数あった場合、各製品の輸送ルート上の管理ポイントにおける出発時間間隔の差異によっては、対策処置を施した製品を生産ラインに戻す適切な順位を設定できないことがあった。
すなわち、輸出等で船便により輸送する製品は、その出発までの時間間隔(出発時間間隔)が長く、このような製品が対策処置の対象となった場合には、対策処置が施された後の同製品の生産ラインへの復帰(戻すこと:再投入)は次の便に間に合うように行えばよいことになる。しかし、直後の管理ポイントのみを対象にして再計算を行っていると、真の余裕時間に対して格段に早い時間で処置してしまうことになる。このため、本来、早く顧客に届けるべき製品が遅く再投入される等、製品を生産ラインに戻す優先順位付けに問題が生じていた。
【0010】
具体例を述べると、製品、例えば車両の生産ラインでは、輸出向け・国内向けの生産割合等は月度割合で計画することが多い。この場合、平準化生産の観点から、図1に例示するように、輸出車両は輸出の船便出発間際に集中して生産するのではなく、日々生産をしている。また、日々の生産においても平準化生産をしている。
このような平準化生産において、いま、図2に示すように、生産ラインから下車した車両、つまり、何らかの問題が生じて手直し等の対策処置を施した車両を生産ラインに戻すために一旦生産ラインから外された車両がA、B、Cの3台あったとする。このような場合、従来技術では、図3に示すように、生産ライン(工場)の直後の管理ポイントである配車ヤードAにおける出発日時の早い順で戻す優先順位を決定していた。
【0011】
しかし、その次の管理ポイントである出荷ヤードAをみると、図2、図3から、車両A、車両Bについては、その管理ポイントからの輸送は船便になるため、そこからの出発時間間隔が長く、余裕時間は車両Cより長い。したがって、この場合は車両A、車両Bの対策処置を優先するよりも、車両Cの対策処置を優先して生産ラインに戻すことが適切である。にも拘わらず、従来技術においては、車両A、車両Bの対策処置が優先されてしまうという問題が生じていた。
発明者等は、このような問題は直後の管理ポイントのみではなく、それ以降の管理ポイントをも、特に出発時間間隔が極端に長い管理ポイントをも対象にして再計算を行うことにより解消できることを見い出し、本発明をするに至った。
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1〜図6は、本発明の一実施形態に係る製品納入計画立案方法を説明するための図である。本実施形態において、製品とは車両を指し、生産ラインは車両の生産ラインを指す。
図1は、車両生産の一例を示す。1回/月(1箇月に1回)船便で輸送する輸出車両の生産計画の例を示す。車両は平準化生産の観点から月の稼働日に分散して生産される。
図2は、生産ラインによって生産された車両の輸送ルートの一例を示す。
図3は、車両の輸送計画表の一例を示す。輸送計画は、輸送ルートにより出荷ヤード、配車ヤードが決定される。決定された各ヤードの出発時間がリードタイム等により求められる。出荷ヤード、配車ヤードは管理ポイントとして設定されている。
図4は、本発明の一実施形態に係る製品納入計画立案方法のフローチャートを示す。
図5は、特別管理ポイント設定テーブルを示す。出発時間間隔が長い輸送ルートがある管理ポイントを特別管理ポイントとして設定する。
図6は、特別管理ポイント優先設定テーブルを示す。出発時間間隔が長い輸送ルートに対して、車両を乗り遅れさせないために優先管理を行うためのテーブルである。優先期間中は、下車した車両を最優先で生産ラインに戻す(再投入する)ために用いられる。
【0013】
以下の説明に用いる重要語の意味は次の通りである。
特別管理ポイントとは、特別に設定される管理ポイントを指す。出発時間間隔が長い輸送ルートがある管理ポイントが特別管理ポイントとして設定される。この特別管理ポイントを含む輸送ルートを通る車両については、生産ラインから下車した車両を生産ラインに再投入させる優先順位付けの際、特別な処理が行われる。
優先順位とは、生産ラインから下車した車両が複数台ある場合、対策処置後の車両中、どの車両から生産ラインに戻すかを示すものである。
優先期間とは、特別管理ポイントにおいて出発時間間隔が長い輸送ルートについて、同時間間隔が長いほど長く設定される期間であって、車両の輸送先への到着の大幅な遅れをなくすために設定される。優先期間が例えば3日間に設定されている場合、設定された特別管理ポイントにおける輸送ルートについて、到来する最初の出発便の出発日から同出発日を除いて3日前まで遡った日までに生産ラインを下車した車両については、その対策処置を優先して施す。例えば、上記の最初の出発便の出発日が1月31日のときには、1月28日から1月30日までに生産ラインを下車した車両については、その対策処置を優先して施す。そして、上記の到来する最初の出発便での輸送に間に合わせることになる。
特別順位とは、優先順位の決定に際して特別に与えられる順位であって、上記の出発時間間隔が長い輸送ルートについて同出発時間間隔が長いほど上位に設定される
リードタイムとは、輸送ルート上の管理ポイントから管理ポイントへ移動する時、実際にかかる時間(待ち時間は含まない)である。
余裕時間とは、優先順位付けを行う際の基になる時間であって、輸送計画時間とリードタイムから計算される。
【0014】
以下、図4に示すフローチャートに従って本実施形態に係る製品納入計画立案方法の具体例を説明する。
まず、ステップ401では、輸送ルート上の複数の管理ポイント中、出発時間間隔が長い所望の管理ポイント、本実施形態では出発時間間隔が1回/月(1箇月に1回)及び1回/週(1週間に1回)となっている管理ポイントを特別管理ポイントとして設定する。
図2に例示する車両の輸送ルートにおいては、出荷ヤードAが特別管理ポイントとして設定されている(図2及び図5参照)。
【0015】
ステップ402では、特別管理ポイントにおける優先期間を設定する。
出発時間間隔の長い輸送ルートでは、当初計画した便に乗り遅れて次の便で輸送すると大幅な遅れが生じてしまう。この大幅な遅れを防ぐため出発便の直前に優先期間を設定する。
図6には、特別管理ポイント(出荷ヤードA)からの輸送便が船便アなら3日、船便イなら1日という優先期間の設定例が示されている。
【0016】
ステップ403では、生産ライン(図2参照)から下車した車両が複数台ある場合に、その対策処置後、どの車両から生産ラインに再投入するか(生産ラインに戻すか)の優先順位を決定する。
図2に示す例では、生産ラインから下車した3台の車両A、B、Cにつき、上記の優先順位を決定する。その手順は以下の通りである。
(1)図3に示す輸送計画表及び図5に示す特別管理ポイント設定テーブルから、車両A、B、Cが特別管理ポイントを通過するか否かを判定(第1判定)する。
この第1判定結果がYesであれば後掲(2)の処理を行い、Noであれば後掲(3)の処理を行う。
(2)第1判定結果がYesの車両、すなわち、特別管理ポイントを通過する車両(車両A、B)については、図6に示す特別管理ポイント優先設定テーブルによってその車両が優先期間内の車両かどうか判定(第2判定)する。
この第2判定結果がYesであれば、その車両に、特別管理ポイントからの出発時間間隔に応じて適宜決められた特別順位を設定する。図6に示す例では、特別管理ポイント(出荷ヤードA)からの輸送便が船便アなら1、船便イなら2の特別順位を設定する。
第2判定結果がNoであれば、その車両の余裕時間を、例えば生産ラインを出て最初の管理ポイント(第1番目管理ポイント:図2に示す例では配車ヤードA)から特別管理ポイントまでのリードタイムと、特別管理ポイントの通過予定日時、例えば到着日時又は出発日時とから算出する。
(3)第1判定結果がNoである場合には、つまり、特別順位、余裕時間が決まっていない車両(車両C)については、現在時刻と例えば上記第1番目管理ポイント(配車ヤードA)の通過予定時刻から余裕時間を算出する。
(4)生産ラインから下車した車両、つまり手直し等の対策処置を施す車両の台数分、以上の(1)〜(3)の処理を繰り返す。
(5)次に、特別順位が決まっている車両から優先順位を設定する。この後、各車両について、その余裕時間の小さいものから全車両の優先順位を決定する。
これにより、生産ラインから下車した車両が複数台あった場合において、対策処置を施した車両の適切な再投入順位が決定される。
【0017】
ステップ404では、優先順位が設定された全車両について、その生産ライン(図2参照)への再投入予定日時から輸送計画を再計算する。
再投入する車両(再投入車両)の上記優先順位と再投入にかかる時間(対策処置に要する時間)から、上記第1番目管理ポイント(配車ヤードA)以降の各管理ポイントの通過予定日時を算出する。この場合、
(1)再投入車両の工場出荷日時(生産ラインから輸送ルートに送る日時)は、製品納入計画立案当初の、あるいはその後に再計算された製品納入計画による同車両の工場出荷日時に、再投入にかかる時間を加えて設定する。
(2)再投入車両の工場出荷日時が配車ヤードAの当初の、あるいはその後の計画による通過予定日時を過ぎてしまう場合には、同じ輸送先に輸送、図2に示す例ではキャリアカーに積み込まれて陸送する再投入車両以外の車両の輸送計画についても修正のための再計算をする。
【符号の説明】
【0018】
401:特別管理ポイント設定ステップ、402:優先期間設定ステップ、403:再投入車両の優先順位設定ステップ、404:優先順位設定済み車両の輸送計画再計算ステップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を生産ラインにより生産し輸送ルートを経て納入先に納入する計画を立案する製品納入計画立案方法において、
前記輸送ルート上の複数の管理ポイント中、出発時間間隔が所定値以上の管理ポイントを特別管理ポイントとして設定すると共に該特別管理ポイントにおける優先期間を設定し、
前記生産ラインから外された後に該生産ラインに戻される製品につき、
その輸送ルートが前記特別管理ポイントを含み、かつ前記優先期間内であるとの条件を満たす場合は、優先順位を上位に設定し、
前記条件を満たさない場合は、前記特別管理ポイントまでのリードタイムを考慮した余裕時間を算出し他の製品の余裕時間と比較して優先順位を設定し、
各々設定された優先順位に基づき前記生産ラインに戻される製品の輸送計画を再計算するようにしたことを特徴とする製品納入計画立案方法。
【請求項2】
前記輸送計画の再計算時、該再計算をする製品と同じ輸送ルートで特別管理ポイントに向かう製品についてもその輸送計画を再計算するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の製品納入計画立案方法。
【請求項3】
前記輸送計画には、製品の輸送ルート上の各管理ポイントの通過予定日時及び納入先への到着予定日時を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の製品納入計画立案方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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