製版装置
【課題】サーマルヘッドのオーバーラップ量を最小限にするとともにオーバーラップ部分の画像品質の低下を防止する製版装置を提供する。
【解決手段】主走査方向について隣接したサーマルヘッド13a,13bの各端部の発熱素子18が副走査方向について同一位置となるオーバーラップ部分21a,21bを設けるように配置された製版装置3であり、マスタ12の副走査方向への搬送に同期して、オーバーラップ部分21aの発熱素子18とオーバーラップ部分21bの発熱素子18とを択一的に選択して駆動し、マスタ12の主走査方向の各ラインの印字が各サーマルヘッド13a,13bの駆動により完成されるように制御する制御手段33を備えた製版装置3において、制御手段33が、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41bを他の部分の画素40a,40bと同等以下の熱量で印字するように制御する。
【解決手段】主走査方向について隣接したサーマルヘッド13a,13bの各端部の発熱素子18が副走査方向について同一位置となるオーバーラップ部分21a,21bを設けるように配置された製版装置3であり、マスタ12の副走査方向への搬送に同期して、オーバーラップ部分21aの発熱素子18とオーバーラップ部分21bの発熱素子18とを択一的に選択して駆動し、マスタ12の主走査方向の各ラインの印字が各サーマルヘッド13a,13bの駆動により完成されるように制御する制御手段33を備えた製版装置3において、制御手段33が、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41bを他の部分の画素40a,40bと同等以下の熱量で印字するように制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つ以上のサーマルヘッドを主走査方向に配置してなる長尺タイプの製版装置に係り、特に隣接したサーマルヘッドの各端部をオーバーラップさせるとともに、このオーバーラップ部分にある発熱素子の駆動を特別に制御することにより、オーバーラップ部分における画像品質の低下を防止することができる製版装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、孔版印刷などに用いられる製版装置としては、多数の発熱素子が配列されたライン型サーマルヘッド(以下、単にサーマルヘッドという)と感熱性孔版原紙(以下、これをマスタという)の熱可塑性樹脂フィルム側とを圧接させた状態でサーマルヘッドの各発熱素子に画像データに基づいて電力を供給して発熱素子を駆動するとともに、マスタを発熱素子の配列方向(主走査方向)と直交する方向(副走査方向)に移動させながらこのマスタにドット状に穿孔して画像を形成するものが知られている。
【0003】
製版装置の中には、例えば、A2サイズなどの大判の製版に対応するために、二つ以上のサーマルヘッドを主走査方向に沿って配置して、それぞれのサーマルヘッドごとに部分画像を印字して最終的に全体画像を形成するものがある。なお、現状では、サーマルヘッドのサイズはA3幅やB4幅のものが上限として一般的であるため、製版すべきマスターのサイズがこれらの一般的なサイズ以上に大きい場合には、このような用途に適した長尺のサーマルヘッドを新規に設計・製造する必要があるが、高額なコスト及び構造上の課題が多く、現実問題としては実際的とは言えないものである。
【0004】
上述した装置構成の一例として、図2に示すように、二つのサーマルヘッド13a,13bが、駆動モータの駆動により主走査方向に回転するプラテンローラ11を間に挟んで上下に対向配置されているものがある。図3に示すように、二つのサーマルヘッド13a,13bは、副走査方向にプラテンローラ11(図2参照)の半周分のズレ量を有している。また、二つのサーマルヘッド13a,13bは、それぞれのサーマルヘッド13a,13bの印字領域のつなぎ目となる部分にオーバーラップ部分を設けるために、隣接するそれぞれの端部を所定量だけ重ねて配置されている。
【0005】
図15に示すように、サーマルヘッド13a,13bに配列された発熱素子18(図3参照)を駆動するためのヘッド駆動部101a,101bは、一度に通電させることによる電力供給過多を防ぐために、複数のブロック(ブロック1〜4)に分割されている。これにより、ブロック1〜4に対応する領域(発熱領域)にある発熱素子18を発熱領域ごとに別々に駆動可能となり、ラインメモリ32a,32bから送信されてきた1ライン分の画像データをブロック1〜4に分割して印字する。なお、サーマルヘッド13a,13bの一つの発熱領域には250個程度の発熱素子がある。
【0006】
ところが、二つのサーマルヘッド13a,13bの印字領域におけるオーバーラップ部分では、両方のサーマルヘッド13a,13bの発熱素子18により画素を印字することになるため、図16(a)に示すように、オーバーラップ部分の画素が密となり、画像がつぶれることがあった。また、図16(b)に示すように、オーバーラップ部分の画素が疎となり、画像に白スジが発生することがあった。すなわち、従来技術では印字領域にオーバーラップ部分を設けるとその部分の画質が低下するという問題があった。
【0007】
なお、下記特許文献1には、二つのサーマルヘッドの印画領域の一部を重ね合わせることにより、隣接する左右の画像(部分画像)の色相の違いを目立たなくした画像形成装置が開示されている。これによれば、例えば、左の画像の重複領域の画像データを左側ほど密にするとともに右側ほど疎にし、右の画像の重複領域の画像データを右側ほど疎にするとともに左側ほど密にし、このように画像データを振り分けることにより、重複領域とその周囲との色相が滑らかとなり、全体として自然な色調が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−293144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に開示される画像形成装置などは、左右の画像の重複領域(二つのサーマルヘッドのオーバーラップ量)が多いほど効果的となるが、これでは、高価なサーマルヘッドを無駄にオーバーラップさせることから不経済となる。なお、画像形成装置(インクジェットプリンタなど)では画素の調整を容易に行うことができるが、感熱製版のように熱により穿孔するものでは画素の調整が困難であるため、製版装置は画像形成装置のように徐々に階調を変化させることができない。
【0010】
そこで本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、サーマルヘッドのオーバーラップ量を最小限にするとともに、印字領域のオーバーラップ部分の画像品質の低下を防止する製版装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明に係る請求項1記載の製版装置は、主走査方向に沿って所定間隔をあけて配列された複数の発熱素子18をそれぞれ備えた二つ以上のサーマルヘッド13(13a,13b)が、副走査方向の第一位置と第二位置に主走査方向に沿って交互に並べられるとともに、主走査方向について隣接した二つの前記サーマルヘッド13a,13bの各端部にある所定数の発熱素子18が副走査方向について同一位置となるオーバーラップ部分21a,21bを設けるように配置された製版装置3であって、
感熱孔版原紙12を前記各サーマルヘッド13a,13bに押し付けながら副走査方向に沿って搬送する搬送手段11と、
前記搬送手段11による前記感熱孔版原紙12の搬送に同期して、前記第一位置にあるサーマルヘッド13aの前記オーバーラップ部分21aの前記発熱素子18と前記第二位置にあるサーマルヘッド13bの前記オーバーラップ部分21bの前記発熱素子18とを択一的に選択して駆動し、前記感熱孔版原紙12の主走査方向に沿った各ラインの印字が、前記第一位置にあるサーマルヘッド13aと前記第二位置にあるサーマルヘッド13bの駆動により完成されるように制御する制御手段33と、を備えた製版装置3において、
前記制御手段33は、前記各ラインにて、前記各サーマルヘッド13a,13bのそれぞれの前記オーバーラップ部分21a,21bにおける画素41a,41bを、該各サーマルヘッド13a,13bのそれぞれの他の部分の画素40a,40bと同等以下の熱量で印字するように制御することを特徴としている。
【0012】
請求項2記載の製版装置は、前記サーマルヘッド13a,13bの前記発熱素子18を駆動するためのヘッド駆動部34a,34bは、複数のブロックに分割されており、
前記制御手段33は、前記サーマルヘッド13a,13bの前記発熱素子18を前記各ブロックに対応した所定の領域ごとに駆動制御するとともに、前記各ブロックの中から選択したブロックを前記オーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックとして設定することを特徴としている。
【0013】
請求項3記載の製版装置は、前記制御手段33は、前記ヘッド駆動部34a,34bにおける前記オーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックに対応した前記発熱素子18を一つのライン周期内で複数回駆動するように制御することを特徴としている。
【0014】
請求項4記載の製版装置は、前記制御手段33は、前記ヘッド駆動部34a,34bにおける前記オーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックに対応した前記発熱素子18の駆動タイミングを一つのライン周期内で可変制御することを特徴としている。
【0015】
請求項5記載の製版装置は、前記制御手段33は、前記第一位置にあるサーマルヘッド13aの前記ヘッド駆動部34aにおける前記オーバーラップ部分21aの専用ブロックに対応した前記発熱素子18を、前記第二位置にあるサーマルヘッド13bの前記ヘッド駆動部34bにおける前記オーバーラップ部分21bの専用ブロックに対応した前記発熱素子18とは非同期で駆動するように制御することを特徴としている。
【0016】
請求項6記載の製版装置は、前記制御手段33は、前記ヘッド駆動部34a,34bにおける前記オーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックの駆動開始タイミング及び駆動時間を、隣接した前記サーマルヘッド13a,13bのオーバーラップ量に応じて調整することを特徴としている。
【0017】
請求項7記載の製版装置は、前記制御手段33は、前記オーバーラップ部分34a,34bにおける画素41a,41bを、前記オーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックと、該ブロックと隣り合う前記ブロックとを共用して印字するように制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る製版装置によれば、隣接したサーマルヘッドのそれぞれのオーバーラップ部分の画素を他の部分の画素と同等以下の熱量で印字することにより、オーバーラップ部分の画素を他の部分の画素と同等あるいはそれよりも小さいサイズにすることができる。したがって、オーバーラップ部分の画素を自在に調整可能となる。これにより、サーマルヘッドのオーバーラップ量を最小限に抑えながらオーバーラップ部分の画質低下を防止することができる。なお、正確な位置合わせにより、二つのサーマルヘッドの間に位相差が生じない場合には、二つのサーマルヘッドのそれぞれの発熱素子が同じ位置に画素を印字するため、オーバーラップ部分の画素を他の部分の画素と同等の熱量としても画質は低下しない。
【0019】
そして、ヘッド駆動部が複数のブロックに分割され、この中からオーバーラップ部分の専用ブロックを設定するため、この専用ブロックの駆動を制御することにより、オーバーラップ部分の画素の調整を実現することができる。
【0020】
また、オーバーラップ部分の専用ブロックを一つのライン周期内で複数回駆動することにより、オーバーラップ部分の画素を副走査方向に連続して印字することが可能となり、この部分の画素を更に自在に調整可能となる。なお、ライン周期とは、1ライン分の画像データを印字するためにヘッド駆動部の各ブロックが一巡する期間である。
【0021】
さらに、オーバーラップ部分の専用ブロックの駆動タイミングを一つのライン周期内で可変することにより、オーバーラップ部分の画素を散らして印字することが可能となる。これにより、オーバーラップ部分の画素を更に自在に調整可能となる。
【0022】
また、隣接したサーマルヘッドのうち、第一位置にあるサーマルヘッドのヘッド駆動部におけるオーバーラップ部分の専用ブロックを、第二位置にあるサーマルヘッドのヘッド駆動部におけるオーバーラップ部分の専用ブロックとは非同期で駆動することにより、オーバーラップ部分の画素を副走査方向にずらして印字することができる。これにより、オーバーラップ部分の画素を更に自在に調整可能となるとともに、視覚的効果が高まり、画質低下を防止することができる。
【0023】
さらに、オーバーラップ部分の専用ブロックの駆動開始タイミング及び駆動時間を隣接したサーマルヘッドのオーバーラップ量に応じて調整することにより、オーバーラップ部分の画素をこのオーバーラップ部分の面積に応じて調整可能となる。これにより、オーバーラップ部分の画素を更に自在に調整可能となるとともに、視覚的効果が高まり、画質低下を防止することができる。
【0024】
また、オーバーラップ部分の画素を、オーバーラップ部分の専用ブロックと、このブロックと隣り合うブロックとを共用して印字することにより、オーバーラップ部分とその他の部分の境目を目立たなくすることができる。これにより、視覚的効果が高まり、画質低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態(製版装置)が搭載される孔版印刷装置を示す正面図である。
【図2】同実施の形態を示す正面図である。
【図3】同実施の形態におけるサーマルヘッドの配置状態の説明図である。
【図4】(a),(b)同実施の形態において、サーマルヘッドの印字領域におけるオーバーラップ部分の説明図である。
【図5】同実施の形態が画像メモリから各サーマルヘッドまでに備える構成を示す機能ブロック図である。
【図6】同実施の形態におけるヘッド駆動部を示す機能ブロック図である。
【図7】同実施の形態において、サーマルヘッドの印字領域における画像印字の態様の一例を示す説明図である。
【図8】同実施の形態におけるヘッド駆動部の各ブロックの第一の駆動タイミング例を示すタイミングチャートである。
【図9】第一の駆動タイミング例にて印字された画素の態様を説明するための説明図である。
【図10】同実施の形態におけるヘッド駆動部の各ブロックの第二の駆動タイミング例を示すタイミングチャートである。
【図11】第二の駆動タイミング例にて印字された画素の態様を説明するための説明図である。
【図12】同実施の形態におけるヘッド駆動部の各ブロックの第三の駆動タイミング例を示すタイミングチャートである。
【図13】第三の駆動タイミング例にて印字された画素の態様を説明するための説明図である。
【図14】(a)基準のライン周期(基準周期)に対して画素印字のタイミングを速く設定したときの説明図である。 (b)基準のライン周期(基準周期)に対して画素印字のタイミングを遅く設定したときの説明図である。
【図15】従来の製版装置のサーマルヘッドを駆動するためのヘッド駆動部を示す機能ブロック図である。
【図16】(a),(b)従来の製版装置において、サーマルヘッドの印字領域におけるオーバーラップ部分の画素の態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
まず最初に、図1を参照してこの実施の形態(製版装置)が搭載される孔版印刷装置について説明する。孔版印刷装置1は、一般的な印刷用紙として使用されるサイズ(A3,A4サイズなど)の用紙よりも大判の用紙(A2サイズなど)が印刷可能なものである。
【0027】
図1に示すように、孔版印刷装置1は、原稿画像をスキャナで読み取る原稿読取部2、製版時に感熱孔版原紙(以下、マスタという)12がロール状に巻装されたマスターロール4から供給されるマスタ12に、原稿読取部2で読み取った原稿画像を製版する製版部(製版装置3)、用紙が積載された状態でセットされる給紙部5、インク供給部7を内部に有するとともに、外面に穿孔画像が形成されたマスタ12が巻装され、孔版印刷装置1の本体に着脱可能に実装されて回転駆動される円筒形状のドラム8を備え、給紙部5から供給された用紙を回転駆動されるドラム8に押圧することによりマスタ12の孔(画素)を通して用紙にインクを転写する印刷部6、印刷済みの用紙を排出する排紙部9などを備えている。なお、画像データをパソコンなどから送信して製版するだけの構成の場合は、原稿読取部2を搭載しないこともある。
【0028】
次に、本発明の実施の形態の構成について説明する。図1に示すように、製版装置3は、上述した孔版印刷装置1における製版部として機能する。また、製版対象であるマスタ12は、熱可塑性樹脂フィルムや、熱可塑性樹脂フィルムと薄葉紙、抄造紙、不織布、織布、スクリーン紗等の多孔性の支持体に貼り合わせてなるものである。
【0029】
図2に示すように、製版装置3は、駆動モータにより回転駆動するように軸支され、マスタ12を所定の搬送方向に搬送する搬送手段となるプラテンローラ11、マスタ12が掛け回されたプラテンローラ11を間に挟んで第一位置及び第二位置に配置された一対の挟持部材14,14に挟持されているライン型サーマルヘッド(以下、サーマルヘッドという)13(13a,13b)を備えている。したがって、この実施の形態では、二つのサーマルヘッド13a,13bは、プラテンローラ11を挟んで上下に対向配置されている。ここでは、上のサーマルヘッドが第一位置にあるサーマルヘッド13aであり、下のサーマルヘッド13bが第二位置にあるサーマルヘッド13bである。また、一対の挟持部材14,14は、加圧機構15(図1参照)によりプラテンローラ11側に向けて加圧されている。
【0030】
製版装置3では、マスターロール4からマスターガイドローラ16(図1参照)を介して供給されるマスタ12をプラテンローラ11とサーマルヘッド13a,13bとの間でニップしながら画像データに基づいて感熱製版し、製版済みのマスタ12を搬送ローラ対17,17によりドラム8に供給する。なお、マスタ12を搬送する際は、プラテンローラ11とサーマルヘッド13a,13bによる挟持部分に皺が発生しないように、マスタ12に搬送方向と逆向きのテンションを付与している。
【0031】
また、製版装置3では、サーマルヘッド13a,13bごとにマスタ12に部分画像を印字して最終的に全体画像を形成する。図3に示すように、サーマルヘッド13a,13bは、それぞれ第一位置と第二位置にて主走査方向に沿って交互に千鳥状に並んでいる。サーマルヘッド13a,13bのプラテンローラ11側の面(印字面)には多数の発熱素子18が主走査方向に沿って所定間隔をあけてライン状に配列されている。サーマルヘッド13a,13bは、マスタ12の搬送方向となる副走査方向にプラテンローラ11の半周分のズレ量を有している。また、主走査方向について隣接したサーマルヘッド13a,13bは、それぞれのサーマルヘッド13a,13bの印字領域のつなぎ目となる部分に、所定数の発熱素子18が副走査方向について同一位置となるオーバーラップ部分を設けるように配置されている。各サーマルヘッド13a,13bのオーバーラップ量は発熱素子18の数個分程度である。
【0032】
ここで、図4を参照して二つのサーマルヘッド13a,13bにより形成される画像について説明する。図4(a)に示すように、製版装置3では、二つのサーマルヘッド13a,13bのそれぞれの印字領域20a,20bに応じた部分画像を形成する。印字領域20a,20bには、それぞれの隣接端部のつなぎ目となる部分をオーバーラップさせたオーバーラップ部分21a,21bが設けられている。オーバーラップ部分20a,20bには同一の画像が形成され、最終的に、図4(b)に示すように、それぞれの部分画像が組み合わされた全体画像を形成する。このとき、後述する制御手段33は、後述するヘッド駆動部34a,34bを介して、マスタ12の搬送に同期して、サーマルヘッド13aのオーバーラップ部分21aの発熱素子18と、サーマルヘッド13bのオーバーラップ部分21bの発熱素子18とを択一的に選択して駆動し、マスタ12の主走査方向に沿った各ラインの印字が、各サーマルヘッド13a,13bの駆動により完成されるように制御する。
【0033】
図5に示すように、製版装置3は、画像データを記憶している画像メモリ30からサーマルヘッド13a,13bまでの間に、ダイレクト・メモリ・アクセス・コントローラ(DMAC)31a,31b、ラインメモリ32a,32b、制御手段33(タイミング発生部33’)、ヘッド駆動部34a,34bを備えている。
【0034】
画像メモリ30は、マスタ12に印字する画像の画像データを記憶しており、画像データをサーマルヘッド13a,13bの印字領域20a,20bごとに分割してダイレクト・メモリ・アクセス・コントローラ(DMAC)31a,31bを介してラインメモリ32a,32bに送信する。
【0035】
ラインメモリ32aは、DMAC31aを介して送信されてきた分割画像データを前述した制御手段33のタイミング発生部33’からのタイミング信号に基づいて、主走査方向の1ラインごとに分割して前述したヘッド駆動部34aに送信する。同様に、ラインメモリ32bは、DMAC31bを介して送信されてきた分割画像データを制御手段33のタイミング発生部33’からのタイミング信号に基づいて、主走査方向の1ラインごとに分割してヘッド駆動部34bに送信する。
【0036】
また、サーマルヘッド13a,13bに配列された発熱素子18を駆動するためのヘッド駆動部34a,34bは、図6に示すように、一度に通電させることによる電力供給過多を防止するという理由から、複数のブロックに分割されている。具体的には、ヘッド駆動部34a,34bは、五つのブロックに分割されている。これにより、サーマルヘッド34a,34bの各ブロックに対応する領域(発熱領域)にある発熱素子18を発熱領域ごとに別々に駆動可能となる。さらに、制御手段33により、ヘッド駆動部34a,34bにおけるそれぞれの各ブロックから隣接端部のブロックを選択し、選択したブロックをオーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックとして設定することができる。したがって、ヘッド駆動部34a,34bのそれぞれの五つのブロックの内訳は、ブロック1〜4とオーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックとなる。これにより、制御手段33が、オーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックの駆動を特別に制御することにより、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41b(図9など参照)の調整を実現することができる。
【0037】
図5,6に示すように、ヘッド駆動部34aは、ラインメモリ32aから1ラインずつ送信されてきた分割画像データを印字するために、タイミング発生部33’からのタイミング信号に基づいて各ブロックごとに駆動信号をサーマルヘッド13aに送信する。これにより、サーマルヘッド13aの各ブロックに対応する発熱領域にある発熱素子18(図3参照)をこの発熱領域ごとに別々に駆動可能となる。同様に、ヘッド駆動部34bは、ラインメモリ32bから1ラインずつ送信されてきた分割画像データを印字するために、タイミング発生部33’からのタイミング信号に基づいて各ブロックごとに駆動信号をサーマルヘッド13bに送信する。これにより、サーマルヘッド13bの各ブロックに対応する発熱領域にある発熱素子18(図3参照)をこの発熱領域ごとに別々に駆動可能となる。なお、サーマルヘッド13a,13bにおいて、ブロック1〜4に対応する発熱領域には250個程度の発熱素子18があり、オーバーラップ部分の専用ブロックに対応する発熱領域には数個程度の発熱素子18がある。
【0038】
また、制御手段33により、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41b(図9など参照)を、オーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックと、この専用ブロックと隣り合うブロック(本実施の形態ではブロック4)とを共用して印字するように制御する構成とすることも可能である。このような構成により、オーバーラップ部分21a,21bとその他の部分の境目を目立たなくすることができる。
【0039】
なお、図7には、サーマルヘッド13a,13bのそれぞれの印字領域20a,20bにおける画像印字の態様を示している。また、図7において、主走査方向に所定タイミングだけ遅れて並んでいるのが1ラインごとの分割画像であり、1ラインの開始から次のラインが開始するまでの期間が一つのライン周期である。
【0040】
ここから、タイミング発生部33’からのタイミング信号に基づいて駆動するヘッド駆動部34a,34bの各ブロックの駆動タイミング及び各ブロックの駆動タイミングによるオーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41bの態様について説明する。
【0041】
製版装置3では、制御手段33により、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41bを他の部分の画素40a,40bと同等以下の熱量で印字するように制御する。具体的には、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41bを電圧一定で駆動時間を短くすることにより制御する。なお、画素41a,41bを時間一定で電圧を調整して制御するようにしてもよい。
【0042】
まず、図8,9を参照して第一の駆動タイミング例を説明する。図8に示すように、1ライン(Nライン)のライン周期内において、タイミング発生部33’(図5参照)からのタイミング信号によりサーマルヘッド13aのヘッド駆動部34aのブロック1が駆動を開始すると、ブロック1は、サーマルヘッド13aにおけるブロック1に対応する発熱領域の発熱素子18(図3参照)を駆動する。所定時間後にブロック1の駆動が終了すると、これと同時に、ブロック2が駆動を開始し、ブロック2に対応する発熱領域の発熱素子18を駆動する。この駆動動作をブロック4まで順次行い、ブロック4の駆動が終了すると、これと同時に、オーバーラップ部分21aの専用ブロックが駆動を開始する。専用ブロックの駆動は、ブロック1〜4の駆動時間よりも短い時間で終了する。専用ブロックの駆動が終了すると、1ライン(Nライン)のライン周期が終了したことになり、次のライン(N+1ライン)のライン周期に入る。
【0043】
図8に示すように、1ライン(Nライン)のライン周期内において、タイミング発生部33’(図5参照)からのタイミング信号によりサーマルヘッド13bのヘッド駆動部34bのブロック1が駆動を開始すると、ブロック1は、サーマルヘッド13bにおけるブロック1に対応する発熱領域の発熱素子18(図3参照)を駆動する。所定時間後にブロック1の駆動が終了すると、これと同時に、ブロック2が駆動を開始し、ブロック2に対応する発熱領域の発熱素子18を駆動する。この駆動動作をブロック4まで順次行い、ブロック4の駆動が終了すると、これと同時に、オーバーラップ部分21bにおける専用ブロックが駆動を開始する。専用ブロックの駆動は、ブロック1〜4の駆動時間よりも短い時間で終了する。専用ブロックの駆動が終了すると、1ライン(Nライン)のライン周期が終了したことになり、次のライン(N+1ライン)のライン周期に入る。
【0044】
すなわち、第一の駆動タイミング例によれば、図9(a),(b)に示すように、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41bをその他の部分の画素40a,40bよりも短い時間で印字するため、画素41a,41bはその他の部分の画素40a,40bよりも小径に印字されるようになる。これにより、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41bを自在に調整可能となるため、サーマルヘッド13a,13bのオーバーラップ量を最小限に抑えながら、オーバーラップ部分の画質低下を防止することができる。なお、サーマルヘッド13a,13bの位置合わせが正確であれば、サーマルヘッド13a,13bの間に位相差が生じないため、その場合は、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41bを他の部分の画素40a,40bと同等の時間で印字してよく、その場合は画質は低下しない。
【0045】
次に、図10,11を参照して第二の駆動タイミング例を説明する。図10に示すように、この駆動タイミング例では、サーマルヘッド13aのヘッド駆動部34aの各ブロックは、上述した第一の駆動タイミング例の場合と同等の駆動タイミングとなるため、その説明を省略する。
【0046】
図10に示すように、1ライン(Nライン)のライン周期内において、タイミング発生部33’(図5参照)からのタイミング信号によりサーマルヘッド13bのヘッド駆動部34bのブロック1が駆動を開始すると、ブロック1は、サーマルヘッド13bにおけるブロック1に対応する発熱領域の発熱素子18(図3参照)を駆動する。所定時間後にブロック1の駆動が終了すると、これと同時に、ブロック2が駆動を開始する。ブロック2が駆動を開始する直前に、オーバーラップ部分21bの専用ブロックが一回目の駆動を開始する。専用ブロックの一回目の駆動は、ブロック1〜4の駆動時間よりも短い時間で終了する。この例では、専用ブロックの一回目の駆動は、ブロック2が駆動を開始した直後に終了する。ブロック2の駆動が終了すると、これと同時に、ブロック3が駆動を開始する。ブロック3が駆動を開始する直前に、オーバーラップ部分21bの専用ブロックが二回目の駆動を開始する。二回目の駆動は、一回目の駆動と同様に、ブロック3が駆動を開始した直後に終了する。ブロック3の駆動が終了すると、これと同時に、ブロック4が駆動を開始する。所定時間後、ブロック4の駆動が終了すると、1ライン(Nライン)のライン周期が終了したことになり、次のライン(N+1ライン)のライン周期に入る。
【0047】
すなわち、第二の駆動タイミング例によれば、オーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックを他のブロックよりも短い時間で駆動し、専用ブロックを一つのライン周期内で二回駆動し、さらに、専用ブロックの駆動タイミングを一つのライン周期内で可変するため、図11に示すように、オーバーラップ部分21a,21bにおいて、画素41aはその他の部分の画素40aよりも小径に印字され、画素41bはその他の部分の画素40a,40b及び画素41aよりも更に小径に印字されるとともに、副走査方向に二つの画素41b,41bが印字されるようになる。これにより、オーバーラップ部分21a,21bの画素を更に自在に調整可能となるとともに、サーマルヘッド13a,13bの解像度が相違するようになり、オーバーラップ部分21a,21bが目立たなくなる。また、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41bを散らして印字することが可能となり、解像度以上の高精細な画像が得られるようになる。
【0048】
次に、図12,13を参照して第三の駆動タイミング例を説明する。図12に示すように、1ライン(Nライン)のライン周期内において、タイミング発生部33’(図5参照)からのタイミング信号によりサーマルヘッド13aのヘッド駆動部34aのブロック1が駆動を開始すると、ブロック1は、サーマルヘッド13aにおけるブロック1に対応する発熱領域の発熱素子18(図3参照)を駆動する。所定時間後にブロック1の駆動が終了すると、これと同時に、ブロック2が駆動を開始する。ブロック2が駆動を開始すると、これと同時に、オーバーラップ部分21aの専用ブロックが駆動を開始する。このとき、専用ブロックの駆動は、ブロック1〜4の駆動時間よりも短い時間で終了する。ブロック2の駆動が所定時間後に終了すると、これと同時に、ブロック3が駆動を開始する。ブロック3が駆動を終了すると、これと同時に、ブロック4が駆動を開始する。所定時間後にブロック4の駆動が終了すると、1ライン(Nライン)のライン周期が終了したことになり、次のライン(N+1ライン)のライン周期に入る。
【0049】
図12に示すように、1ライン(Nライン)のライン周期内において、タイミング発生部33’(図5参照)からのタイミング信号によりサーマルヘッド13bのヘッド駆動部34bのブロック1が駆動を開始すると、ブロック1は、サーマルヘッド13bにおけるブロック1に対応する発熱領域の発熱素子18(図3参照)を駆動する。所定時間後にブロック1の駆動が終了すると、これと同時に、ブロック2が駆動を開始する。所定時間後にブロック2の駆動が終了すると、これと同時に、ブロック3が駆動を開始する。ブロック3が駆動を開始すると、これと同時に、オーバーラップ部分21bの専用ブロックが駆動を開始する。このとき、専用ブロックの駆動は、ブロック1〜4の駆動時間よりも短い時間で終了する。ブロック3の駆動が所定時間後に終了すると、これと同時に、ブロック4が駆動を開始する。所定時間後にブロック4の駆動が終了すると、1ライン(Nライン)のライン周期が終了したことになり、次のライン(N+1ライン)のライン周期に入る。
【0050】
すなわち、第三の駆動タイミング例によれば、第一位置にあるヘッド駆動部34aのオーバーラップ部分21aの専用ブロックに対応する発熱素子18の駆動タイミングに対して、第二位置にあるヘッド駆動部34bのオーバーラップ部分21bの専用ブロックに対応する発熱素子18を非同期で駆動し、また、オーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックの駆動開始タイミング及び駆動時間を、サーマルヘッド13a,13bのオーバーラップ量に応じて調整しており、図13に示すように、例えば画素41aは画素41bに対して副走査方向にずれて印字されるようになる。これにより、オーバーラップ部分の視覚的効果が高まるようになる。
【0051】
なお、サーマルヘッド13a,13bを組み付けたときにサーマルヘッド13a,13bの副走査方向の組付けズレなどの物理的なズレによる画素と画素の位置ズレ(副走査方向の位置ズレ)がある場合、例えばサーマルヘッド13aのヘッド駆動部34aの各ブロックの駆動タイミングを基準のライン周期(基準周期)に対してサーマルヘッド13bにおける基準周期の開始位置の位相を可変させることにより、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41bを一致させることができる。これにより、解像度以上の高詳細な調整が可能となる。具体的には、図14(a)に示すように、サーマルヘッド13aの基準周期よりもサーマルヘッド13bの基準周期を速く設定するか、または、図14(b)に示すように、サーマルヘッド13aの基準周期をサーマルヘッド13bの基準周期よりも遅く設定することにより、サーマルヘッド13,13bのそれぞれの基準周期の開始位置の位相を可変させて画素41a,41bを一致させることができる。
【符号の説明】
【0052】
3…製版装置
11…搬送手段としてのプラテンローラ
12…感熱孔版原紙
13(13a,13b)…サーマルヘッド
18…発熱素子
21a,21b…オーバーラップ部分
33…制御手段
34a,34b…ヘッド駆動部
40a,40b…他の部分の画素
41a,41b…オーバーラップ部分の画素
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つ以上のサーマルヘッドを主走査方向に配置してなる長尺タイプの製版装置に係り、特に隣接したサーマルヘッドの各端部をオーバーラップさせるとともに、このオーバーラップ部分にある発熱素子の駆動を特別に制御することにより、オーバーラップ部分における画像品質の低下を防止することができる製版装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、孔版印刷などに用いられる製版装置としては、多数の発熱素子が配列されたライン型サーマルヘッド(以下、単にサーマルヘッドという)と感熱性孔版原紙(以下、これをマスタという)の熱可塑性樹脂フィルム側とを圧接させた状態でサーマルヘッドの各発熱素子に画像データに基づいて電力を供給して発熱素子を駆動するとともに、マスタを発熱素子の配列方向(主走査方向)と直交する方向(副走査方向)に移動させながらこのマスタにドット状に穿孔して画像を形成するものが知られている。
【0003】
製版装置の中には、例えば、A2サイズなどの大判の製版に対応するために、二つ以上のサーマルヘッドを主走査方向に沿って配置して、それぞれのサーマルヘッドごとに部分画像を印字して最終的に全体画像を形成するものがある。なお、現状では、サーマルヘッドのサイズはA3幅やB4幅のものが上限として一般的であるため、製版すべきマスターのサイズがこれらの一般的なサイズ以上に大きい場合には、このような用途に適した長尺のサーマルヘッドを新規に設計・製造する必要があるが、高額なコスト及び構造上の課題が多く、現実問題としては実際的とは言えないものである。
【0004】
上述した装置構成の一例として、図2に示すように、二つのサーマルヘッド13a,13bが、駆動モータの駆動により主走査方向に回転するプラテンローラ11を間に挟んで上下に対向配置されているものがある。図3に示すように、二つのサーマルヘッド13a,13bは、副走査方向にプラテンローラ11(図2参照)の半周分のズレ量を有している。また、二つのサーマルヘッド13a,13bは、それぞれのサーマルヘッド13a,13bの印字領域のつなぎ目となる部分にオーバーラップ部分を設けるために、隣接するそれぞれの端部を所定量だけ重ねて配置されている。
【0005】
図15に示すように、サーマルヘッド13a,13bに配列された発熱素子18(図3参照)を駆動するためのヘッド駆動部101a,101bは、一度に通電させることによる電力供給過多を防ぐために、複数のブロック(ブロック1〜4)に分割されている。これにより、ブロック1〜4に対応する領域(発熱領域)にある発熱素子18を発熱領域ごとに別々に駆動可能となり、ラインメモリ32a,32bから送信されてきた1ライン分の画像データをブロック1〜4に分割して印字する。なお、サーマルヘッド13a,13bの一つの発熱領域には250個程度の発熱素子がある。
【0006】
ところが、二つのサーマルヘッド13a,13bの印字領域におけるオーバーラップ部分では、両方のサーマルヘッド13a,13bの発熱素子18により画素を印字することになるため、図16(a)に示すように、オーバーラップ部分の画素が密となり、画像がつぶれることがあった。また、図16(b)に示すように、オーバーラップ部分の画素が疎となり、画像に白スジが発生することがあった。すなわち、従来技術では印字領域にオーバーラップ部分を設けるとその部分の画質が低下するという問題があった。
【0007】
なお、下記特許文献1には、二つのサーマルヘッドの印画領域の一部を重ね合わせることにより、隣接する左右の画像(部分画像)の色相の違いを目立たなくした画像形成装置が開示されている。これによれば、例えば、左の画像の重複領域の画像データを左側ほど密にするとともに右側ほど疎にし、右の画像の重複領域の画像データを右側ほど疎にするとともに左側ほど密にし、このように画像データを振り分けることにより、重複領域とその周囲との色相が滑らかとなり、全体として自然な色調が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−293144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に開示される画像形成装置などは、左右の画像の重複領域(二つのサーマルヘッドのオーバーラップ量)が多いほど効果的となるが、これでは、高価なサーマルヘッドを無駄にオーバーラップさせることから不経済となる。なお、画像形成装置(インクジェットプリンタなど)では画素の調整を容易に行うことができるが、感熱製版のように熱により穿孔するものでは画素の調整が困難であるため、製版装置は画像形成装置のように徐々に階調を変化させることができない。
【0010】
そこで本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、サーマルヘッドのオーバーラップ量を最小限にするとともに、印字領域のオーバーラップ部分の画像品質の低下を防止する製版装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明に係る請求項1記載の製版装置は、主走査方向に沿って所定間隔をあけて配列された複数の発熱素子18をそれぞれ備えた二つ以上のサーマルヘッド13(13a,13b)が、副走査方向の第一位置と第二位置に主走査方向に沿って交互に並べられるとともに、主走査方向について隣接した二つの前記サーマルヘッド13a,13bの各端部にある所定数の発熱素子18が副走査方向について同一位置となるオーバーラップ部分21a,21bを設けるように配置された製版装置3であって、
感熱孔版原紙12を前記各サーマルヘッド13a,13bに押し付けながら副走査方向に沿って搬送する搬送手段11と、
前記搬送手段11による前記感熱孔版原紙12の搬送に同期して、前記第一位置にあるサーマルヘッド13aの前記オーバーラップ部分21aの前記発熱素子18と前記第二位置にあるサーマルヘッド13bの前記オーバーラップ部分21bの前記発熱素子18とを択一的に選択して駆動し、前記感熱孔版原紙12の主走査方向に沿った各ラインの印字が、前記第一位置にあるサーマルヘッド13aと前記第二位置にあるサーマルヘッド13bの駆動により完成されるように制御する制御手段33と、を備えた製版装置3において、
前記制御手段33は、前記各ラインにて、前記各サーマルヘッド13a,13bのそれぞれの前記オーバーラップ部分21a,21bにおける画素41a,41bを、該各サーマルヘッド13a,13bのそれぞれの他の部分の画素40a,40bと同等以下の熱量で印字するように制御することを特徴としている。
【0012】
請求項2記載の製版装置は、前記サーマルヘッド13a,13bの前記発熱素子18を駆動するためのヘッド駆動部34a,34bは、複数のブロックに分割されており、
前記制御手段33は、前記サーマルヘッド13a,13bの前記発熱素子18を前記各ブロックに対応した所定の領域ごとに駆動制御するとともに、前記各ブロックの中から選択したブロックを前記オーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックとして設定することを特徴としている。
【0013】
請求項3記載の製版装置は、前記制御手段33は、前記ヘッド駆動部34a,34bにおける前記オーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックに対応した前記発熱素子18を一つのライン周期内で複数回駆動するように制御することを特徴としている。
【0014】
請求項4記載の製版装置は、前記制御手段33は、前記ヘッド駆動部34a,34bにおける前記オーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックに対応した前記発熱素子18の駆動タイミングを一つのライン周期内で可変制御することを特徴としている。
【0015】
請求項5記載の製版装置は、前記制御手段33は、前記第一位置にあるサーマルヘッド13aの前記ヘッド駆動部34aにおける前記オーバーラップ部分21aの専用ブロックに対応した前記発熱素子18を、前記第二位置にあるサーマルヘッド13bの前記ヘッド駆動部34bにおける前記オーバーラップ部分21bの専用ブロックに対応した前記発熱素子18とは非同期で駆動するように制御することを特徴としている。
【0016】
請求項6記載の製版装置は、前記制御手段33は、前記ヘッド駆動部34a,34bにおける前記オーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックの駆動開始タイミング及び駆動時間を、隣接した前記サーマルヘッド13a,13bのオーバーラップ量に応じて調整することを特徴としている。
【0017】
請求項7記載の製版装置は、前記制御手段33は、前記オーバーラップ部分34a,34bにおける画素41a,41bを、前記オーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックと、該ブロックと隣り合う前記ブロックとを共用して印字するように制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る製版装置によれば、隣接したサーマルヘッドのそれぞれのオーバーラップ部分の画素を他の部分の画素と同等以下の熱量で印字することにより、オーバーラップ部分の画素を他の部分の画素と同等あるいはそれよりも小さいサイズにすることができる。したがって、オーバーラップ部分の画素を自在に調整可能となる。これにより、サーマルヘッドのオーバーラップ量を最小限に抑えながらオーバーラップ部分の画質低下を防止することができる。なお、正確な位置合わせにより、二つのサーマルヘッドの間に位相差が生じない場合には、二つのサーマルヘッドのそれぞれの発熱素子が同じ位置に画素を印字するため、オーバーラップ部分の画素を他の部分の画素と同等の熱量としても画質は低下しない。
【0019】
そして、ヘッド駆動部が複数のブロックに分割され、この中からオーバーラップ部分の専用ブロックを設定するため、この専用ブロックの駆動を制御することにより、オーバーラップ部分の画素の調整を実現することができる。
【0020】
また、オーバーラップ部分の専用ブロックを一つのライン周期内で複数回駆動することにより、オーバーラップ部分の画素を副走査方向に連続して印字することが可能となり、この部分の画素を更に自在に調整可能となる。なお、ライン周期とは、1ライン分の画像データを印字するためにヘッド駆動部の各ブロックが一巡する期間である。
【0021】
さらに、オーバーラップ部分の専用ブロックの駆動タイミングを一つのライン周期内で可変することにより、オーバーラップ部分の画素を散らして印字することが可能となる。これにより、オーバーラップ部分の画素を更に自在に調整可能となる。
【0022】
また、隣接したサーマルヘッドのうち、第一位置にあるサーマルヘッドのヘッド駆動部におけるオーバーラップ部分の専用ブロックを、第二位置にあるサーマルヘッドのヘッド駆動部におけるオーバーラップ部分の専用ブロックとは非同期で駆動することにより、オーバーラップ部分の画素を副走査方向にずらして印字することができる。これにより、オーバーラップ部分の画素を更に自在に調整可能となるとともに、視覚的効果が高まり、画質低下を防止することができる。
【0023】
さらに、オーバーラップ部分の専用ブロックの駆動開始タイミング及び駆動時間を隣接したサーマルヘッドのオーバーラップ量に応じて調整することにより、オーバーラップ部分の画素をこのオーバーラップ部分の面積に応じて調整可能となる。これにより、オーバーラップ部分の画素を更に自在に調整可能となるとともに、視覚的効果が高まり、画質低下を防止することができる。
【0024】
また、オーバーラップ部分の画素を、オーバーラップ部分の専用ブロックと、このブロックと隣り合うブロックとを共用して印字することにより、オーバーラップ部分とその他の部分の境目を目立たなくすることができる。これにより、視覚的効果が高まり、画質低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態(製版装置)が搭載される孔版印刷装置を示す正面図である。
【図2】同実施の形態を示す正面図である。
【図3】同実施の形態におけるサーマルヘッドの配置状態の説明図である。
【図4】(a),(b)同実施の形態において、サーマルヘッドの印字領域におけるオーバーラップ部分の説明図である。
【図5】同実施の形態が画像メモリから各サーマルヘッドまでに備える構成を示す機能ブロック図である。
【図6】同実施の形態におけるヘッド駆動部を示す機能ブロック図である。
【図7】同実施の形態において、サーマルヘッドの印字領域における画像印字の態様の一例を示す説明図である。
【図8】同実施の形態におけるヘッド駆動部の各ブロックの第一の駆動タイミング例を示すタイミングチャートである。
【図9】第一の駆動タイミング例にて印字された画素の態様を説明するための説明図である。
【図10】同実施の形態におけるヘッド駆動部の各ブロックの第二の駆動タイミング例を示すタイミングチャートである。
【図11】第二の駆動タイミング例にて印字された画素の態様を説明するための説明図である。
【図12】同実施の形態におけるヘッド駆動部の各ブロックの第三の駆動タイミング例を示すタイミングチャートである。
【図13】第三の駆動タイミング例にて印字された画素の態様を説明するための説明図である。
【図14】(a)基準のライン周期(基準周期)に対して画素印字のタイミングを速く設定したときの説明図である。 (b)基準のライン周期(基準周期)に対して画素印字のタイミングを遅く設定したときの説明図である。
【図15】従来の製版装置のサーマルヘッドを駆動するためのヘッド駆動部を示す機能ブロック図である。
【図16】(a),(b)従来の製版装置において、サーマルヘッドの印字領域におけるオーバーラップ部分の画素の態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
まず最初に、図1を参照してこの実施の形態(製版装置)が搭載される孔版印刷装置について説明する。孔版印刷装置1は、一般的な印刷用紙として使用されるサイズ(A3,A4サイズなど)の用紙よりも大判の用紙(A2サイズなど)が印刷可能なものである。
【0027】
図1に示すように、孔版印刷装置1は、原稿画像をスキャナで読み取る原稿読取部2、製版時に感熱孔版原紙(以下、マスタという)12がロール状に巻装されたマスターロール4から供給されるマスタ12に、原稿読取部2で読み取った原稿画像を製版する製版部(製版装置3)、用紙が積載された状態でセットされる給紙部5、インク供給部7を内部に有するとともに、外面に穿孔画像が形成されたマスタ12が巻装され、孔版印刷装置1の本体に着脱可能に実装されて回転駆動される円筒形状のドラム8を備え、給紙部5から供給された用紙を回転駆動されるドラム8に押圧することによりマスタ12の孔(画素)を通して用紙にインクを転写する印刷部6、印刷済みの用紙を排出する排紙部9などを備えている。なお、画像データをパソコンなどから送信して製版するだけの構成の場合は、原稿読取部2を搭載しないこともある。
【0028】
次に、本発明の実施の形態の構成について説明する。図1に示すように、製版装置3は、上述した孔版印刷装置1における製版部として機能する。また、製版対象であるマスタ12は、熱可塑性樹脂フィルムや、熱可塑性樹脂フィルムと薄葉紙、抄造紙、不織布、織布、スクリーン紗等の多孔性の支持体に貼り合わせてなるものである。
【0029】
図2に示すように、製版装置3は、駆動モータにより回転駆動するように軸支され、マスタ12を所定の搬送方向に搬送する搬送手段となるプラテンローラ11、マスタ12が掛け回されたプラテンローラ11を間に挟んで第一位置及び第二位置に配置された一対の挟持部材14,14に挟持されているライン型サーマルヘッド(以下、サーマルヘッドという)13(13a,13b)を備えている。したがって、この実施の形態では、二つのサーマルヘッド13a,13bは、プラテンローラ11を挟んで上下に対向配置されている。ここでは、上のサーマルヘッドが第一位置にあるサーマルヘッド13aであり、下のサーマルヘッド13bが第二位置にあるサーマルヘッド13bである。また、一対の挟持部材14,14は、加圧機構15(図1参照)によりプラテンローラ11側に向けて加圧されている。
【0030】
製版装置3では、マスターロール4からマスターガイドローラ16(図1参照)を介して供給されるマスタ12をプラテンローラ11とサーマルヘッド13a,13bとの間でニップしながら画像データに基づいて感熱製版し、製版済みのマスタ12を搬送ローラ対17,17によりドラム8に供給する。なお、マスタ12を搬送する際は、プラテンローラ11とサーマルヘッド13a,13bによる挟持部分に皺が発生しないように、マスタ12に搬送方向と逆向きのテンションを付与している。
【0031】
また、製版装置3では、サーマルヘッド13a,13bごとにマスタ12に部分画像を印字して最終的に全体画像を形成する。図3に示すように、サーマルヘッド13a,13bは、それぞれ第一位置と第二位置にて主走査方向に沿って交互に千鳥状に並んでいる。サーマルヘッド13a,13bのプラテンローラ11側の面(印字面)には多数の発熱素子18が主走査方向に沿って所定間隔をあけてライン状に配列されている。サーマルヘッド13a,13bは、マスタ12の搬送方向となる副走査方向にプラテンローラ11の半周分のズレ量を有している。また、主走査方向について隣接したサーマルヘッド13a,13bは、それぞれのサーマルヘッド13a,13bの印字領域のつなぎ目となる部分に、所定数の発熱素子18が副走査方向について同一位置となるオーバーラップ部分を設けるように配置されている。各サーマルヘッド13a,13bのオーバーラップ量は発熱素子18の数個分程度である。
【0032】
ここで、図4を参照して二つのサーマルヘッド13a,13bにより形成される画像について説明する。図4(a)に示すように、製版装置3では、二つのサーマルヘッド13a,13bのそれぞれの印字領域20a,20bに応じた部分画像を形成する。印字領域20a,20bには、それぞれの隣接端部のつなぎ目となる部分をオーバーラップさせたオーバーラップ部分21a,21bが設けられている。オーバーラップ部分20a,20bには同一の画像が形成され、最終的に、図4(b)に示すように、それぞれの部分画像が組み合わされた全体画像を形成する。このとき、後述する制御手段33は、後述するヘッド駆動部34a,34bを介して、マスタ12の搬送に同期して、サーマルヘッド13aのオーバーラップ部分21aの発熱素子18と、サーマルヘッド13bのオーバーラップ部分21bの発熱素子18とを択一的に選択して駆動し、マスタ12の主走査方向に沿った各ラインの印字が、各サーマルヘッド13a,13bの駆動により完成されるように制御する。
【0033】
図5に示すように、製版装置3は、画像データを記憶している画像メモリ30からサーマルヘッド13a,13bまでの間に、ダイレクト・メモリ・アクセス・コントローラ(DMAC)31a,31b、ラインメモリ32a,32b、制御手段33(タイミング発生部33’)、ヘッド駆動部34a,34bを備えている。
【0034】
画像メモリ30は、マスタ12に印字する画像の画像データを記憶しており、画像データをサーマルヘッド13a,13bの印字領域20a,20bごとに分割してダイレクト・メモリ・アクセス・コントローラ(DMAC)31a,31bを介してラインメモリ32a,32bに送信する。
【0035】
ラインメモリ32aは、DMAC31aを介して送信されてきた分割画像データを前述した制御手段33のタイミング発生部33’からのタイミング信号に基づいて、主走査方向の1ラインごとに分割して前述したヘッド駆動部34aに送信する。同様に、ラインメモリ32bは、DMAC31bを介して送信されてきた分割画像データを制御手段33のタイミング発生部33’からのタイミング信号に基づいて、主走査方向の1ラインごとに分割してヘッド駆動部34bに送信する。
【0036】
また、サーマルヘッド13a,13bに配列された発熱素子18を駆動するためのヘッド駆動部34a,34bは、図6に示すように、一度に通電させることによる電力供給過多を防止するという理由から、複数のブロックに分割されている。具体的には、ヘッド駆動部34a,34bは、五つのブロックに分割されている。これにより、サーマルヘッド34a,34bの各ブロックに対応する領域(発熱領域)にある発熱素子18を発熱領域ごとに別々に駆動可能となる。さらに、制御手段33により、ヘッド駆動部34a,34bにおけるそれぞれの各ブロックから隣接端部のブロックを選択し、選択したブロックをオーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックとして設定することができる。したがって、ヘッド駆動部34a,34bのそれぞれの五つのブロックの内訳は、ブロック1〜4とオーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックとなる。これにより、制御手段33が、オーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックの駆動を特別に制御することにより、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41b(図9など参照)の調整を実現することができる。
【0037】
図5,6に示すように、ヘッド駆動部34aは、ラインメモリ32aから1ラインずつ送信されてきた分割画像データを印字するために、タイミング発生部33’からのタイミング信号に基づいて各ブロックごとに駆動信号をサーマルヘッド13aに送信する。これにより、サーマルヘッド13aの各ブロックに対応する発熱領域にある発熱素子18(図3参照)をこの発熱領域ごとに別々に駆動可能となる。同様に、ヘッド駆動部34bは、ラインメモリ32bから1ラインずつ送信されてきた分割画像データを印字するために、タイミング発生部33’からのタイミング信号に基づいて各ブロックごとに駆動信号をサーマルヘッド13bに送信する。これにより、サーマルヘッド13bの各ブロックに対応する発熱領域にある発熱素子18(図3参照)をこの発熱領域ごとに別々に駆動可能となる。なお、サーマルヘッド13a,13bにおいて、ブロック1〜4に対応する発熱領域には250個程度の発熱素子18があり、オーバーラップ部分の専用ブロックに対応する発熱領域には数個程度の発熱素子18がある。
【0038】
また、制御手段33により、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41b(図9など参照)を、オーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックと、この専用ブロックと隣り合うブロック(本実施の形態ではブロック4)とを共用して印字するように制御する構成とすることも可能である。このような構成により、オーバーラップ部分21a,21bとその他の部分の境目を目立たなくすることができる。
【0039】
なお、図7には、サーマルヘッド13a,13bのそれぞれの印字領域20a,20bにおける画像印字の態様を示している。また、図7において、主走査方向に所定タイミングだけ遅れて並んでいるのが1ラインごとの分割画像であり、1ラインの開始から次のラインが開始するまでの期間が一つのライン周期である。
【0040】
ここから、タイミング発生部33’からのタイミング信号に基づいて駆動するヘッド駆動部34a,34bの各ブロックの駆動タイミング及び各ブロックの駆動タイミングによるオーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41bの態様について説明する。
【0041】
製版装置3では、制御手段33により、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41bを他の部分の画素40a,40bと同等以下の熱量で印字するように制御する。具体的には、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41bを電圧一定で駆動時間を短くすることにより制御する。なお、画素41a,41bを時間一定で電圧を調整して制御するようにしてもよい。
【0042】
まず、図8,9を参照して第一の駆動タイミング例を説明する。図8に示すように、1ライン(Nライン)のライン周期内において、タイミング発生部33’(図5参照)からのタイミング信号によりサーマルヘッド13aのヘッド駆動部34aのブロック1が駆動を開始すると、ブロック1は、サーマルヘッド13aにおけるブロック1に対応する発熱領域の発熱素子18(図3参照)を駆動する。所定時間後にブロック1の駆動が終了すると、これと同時に、ブロック2が駆動を開始し、ブロック2に対応する発熱領域の発熱素子18を駆動する。この駆動動作をブロック4まで順次行い、ブロック4の駆動が終了すると、これと同時に、オーバーラップ部分21aの専用ブロックが駆動を開始する。専用ブロックの駆動は、ブロック1〜4の駆動時間よりも短い時間で終了する。専用ブロックの駆動が終了すると、1ライン(Nライン)のライン周期が終了したことになり、次のライン(N+1ライン)のライン周期に入る。
【0043】
図8に示すように、1ライン(Nライン)のライン周期内において、タイミング発生部33’(図5参照)からのタイミング信号によりサーマルヘッド13bのヘッド駆動部34bのブロック1が駆動を開始すると、ブロック1は、サーマルヘッド13bにおけるブロック1に対応する発熱領域の発熱素子18(図3参照)を駆動する。所定時間後にブロック1の駆動が終了すると、これと同時に、ブロック2が駆動を開始し、ブロック2に対応する発熱領域の発熱素子18を駆動する。この駆動動作をブロック4まで順次行い、ブロック4の駆動が終了すると、これと同時に、オーバーラップ部分21bにおける専用ブロックが駆動を開始する。専用ブロックの駆動は、ブロック1〜4の駆動時間よりも短い時間で終了する。専用ブロックの駆動が終了すると、1ライン(Nライン)のライン周期が終了したことになり、次のライン(N+1ライン)のライン周期に入る。
【0044】
すなわち、第一の駆動タイミング例によれば、図9(a),(b)に示すように、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41bをその他の部分の画素40a,40bよりも短い時間で印字するため、画素41a,41bはその他の部分の画素40a,40bよりも小径に印字されるようになる。これにより、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41bを自在に調整可能となるため、サーマルヘッド13a,13bのオーバーラップ量を最小限に抑えながら、オーバーラップ部分の画質低下を防止することができる。なお、サーマルヘッド13a,13bの位置合わせが正確であれば、サーマルヘッド13a,13bの間に位相差が生じないため、その場合は、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41bを他の部分の画素40a,40bと同等の時間で印字してよく、その場合は画質は低下しない。
【0045】
次に、図10,11を参照して第二の駆動タイミング例を説明する。図10に示すように、この駆動タイミング例では、サーマルヘッド13aのヘッド駆動部34aの各ブロックは、上述した第一の駆動タイミング例の場合と同等の駆動タイミングとなるため、その説明を省略する。
【0046】
図10に示すように、1ライン(Nライン)のライン周期内において、タイミング発生部33’(図5参照)からのタイミング信号によりサーマルヘッド13bのヘッド駆動部34bのブロック1が駆動を開始すると、ブロック1は、サーマルヘッド13bにおけるブロック1に対応する発熱領域の発熱素子18(図3参照)を駆動する。所定時間後にブロック1の駆動が終了すると、これと同時に、ブロック2が駆動を開始する。ブロック2が駆動を開始する直前に、オーバーラップ部分21bの専用ブロックが一回目の駆動を開始する。専用ブロックの一回目の駆動は、ブロック1〜4の駆動時間よりも短い時間で終了する。この例では、専用ブロックの一回目の駆動は、ブロック2が駆動を開始した直後に終了する。ブロック2の駆動が終了すると、これと同時に、ブロック3が駆動を開始する。ブロック3が駆動を開始する直前に、オーバーラップ部分21bの専用ブロックが二回目の駆動を開始する。二回目の駆動は、一回目の駆動と同様に、ブロック3が駆動を開始した直後に終了する。ブロック3の駆動が終了すると、これと同時に、ブロック4が駆動を開始する。所定時間後、ブロック4の駆動が終了すると、1ライン(Nライン)のライン周期が終了したことになり、次のライン(N+1ライン)のライン周期に入る。
【0047】
すなわち、第二の駆動タイミング例によれば、オーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックを他のブロックよりも短い時間で駆動し、専用ブロックを一つのライン周期内で二回駆動し、さらに、専用ブロックの駆動タイミングを一つのライン周期内で可変するため、図11に示すように、オーバーラップ部分21a,21bにおいて、画素41aはその他の部分の画素40aよりも小径に印字され、画素41bはその他の部分の画素40a,40b及び画素41aよりも更に小径に印字されるとともに、副走査方向に二つの画素41b,41bが印字されるようになる。これにより、オーバーラップ部分21a,21bの画素を更に自在に調整可能となるとともに、サーマルヘッド13a,13bの解像度が相違するようになり、オーバーラップ部分21a,21bが目立たなくなる。また、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41bを散らして印字することが可能となり、解像度以上の高精細な画像が得られるようになる。
【0048】
次に、図12,13を参照して第三の駆動タイミング例を説明する。図12に示すように、1ライン(Nライン)のライン周期内において、タイミング発生部33’(図5参照)からのタイミング信号によりサーマルヘッド13aのヘッド駆動部34aのブロック1が駆動を開始すると、ブロック1は、サーマルヘッド13aにおけるブロック1に対応する発熱領域の発熱素子18(図3参照)を駆動する。所定時間後にブロック1の駆動が終了すると、これと同時に、ブロック2が駆動を開始する。ブロック2が駆動を開始すると、これと同時に、オーバーラップ部分21aの専用ブロックが駆動を開始する。このとき、専用ブロックの駆動は、ブロック1〜4の駆動時間よりも短い時間で終了する。ブロック2の駆動が所定時間後に終了すると、これと同時に、ブロック3が駆動を開始する。ブロック3が駆動を終了すると、これと同時に、ブロック4が駆動を開始する。所定時間後にブロック4の駆動が終了すると、1ライン(Nライン)のライン周期が終了したことになり、次のライン(N+1ライン)のライン周期に入る。
【0049】
図12に示すように、1ライン(Nライン)のライン周期内において、タイミング発生部33’(図5参照)からのタイミング信号によりサーマルヘッド13bのヘッド駆動部34bのブロック1が駆動を開始すると、ブロック1は、サーマルヘッド13bにおけるブロック1に対応する発熱領域の発熱素子18(図3参照)を駆動する。所定時間後にブロック1の駆動が終了すると、これと同時に、ブロック2が駆動を開始する。所定時間後にブロック2の駆動が終了すると、これと同時に、ブロック3が駆動を開始する。ブロック3が駆動を開始すると、これと同時に、オーバーラップ部分21bの専用ブロックが駆動を開始する。このとき、専用ブロックの駆動は、ブロック1〜4の駆動時間よりも短い時間で終了する。ブロック3の駆動が所定時間後に終了すると、これと同時に、ブロック4が駆動を開始する。所定時間後にブロック4の駆動が終了すると、1ライン(Nライン)のライン周期が終了したことになり、次のライン(N+1ライン)のライン周期に入る。
【0050】
すなわち、第三の駆動タイミング例によれば、第一位置にあるヘッド駆動部34aのオーバーラップ部分21aの専用ブロックに対応する発熱素子18の駆動タイミングに対して、第二位置にあるヘッド駆動部34bのオーバーラップ部分21bの専用ブロックに対応する発熱素子18を非同期で駆動し、また、オーバーラップ部分21a,21bの専用ブロックの駆動開始タイミング及び駆動時間を、サーマルヘッド13a,13bのオーバーラップ量に応じて調整しており、図13に示すように、例えば画素41aは画素41bに対して副走査方向にずれて印字されるようになる。これにより、オーバーラップ部分の視覚的効果が高まるようになる。
【0051】
なお、サーマルヘッド13a,13bを組み付けたときにサーマルヘッド13a,13bの副走査方向の組付けズレなどの物理的なズレによる画素と画素の位置ズレ(副走査方向の位置ズレ)がある場合、例えばサーマルヘッド13aのヘッド駆動部34aの各ブロックの駆動タイミングを基準のライン周期(基準周期)に対してサーマルヘッド13bにおける基準周期の開始位置の位相を可変させることにより、オーバーラップ部分21a,21bの画素41a,41bを一致させることができる。これにより、解像度以上の高詳細な調整が可能となる。具体的には、図14(a)に示すように、サーマルヘッド13aの基準周期よりもサーマルヘッド13bの基準周期を速く設定するか、または、図14(b)に示すように、サーマルヘッド13aの基準周期をサーマルヘッド13bの基準周期よりも遅く設定することにより、サーマルヘッド13,13bのそれぞれの基準周期の開始位置の位相を可変させて画素41a,41bを一致させることができる。
【符号の説明】
【0052】
3…製版装置
11…搬送手段としてのプラテンローラ
12…感熱孔版原紙
13(13a,13b)…サーマルヘッド
18…発熱素子
21a,21b…オーバーラップ部分
33…制御手段
34a,34b…ヘッド駆動部
40a,40b…他の部分の画素
41a,41b…オーバーラップ部分の画素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に沿って所定間隔をあけて配列された複数の発熱素子をそれぞれ備えた二つ以上のサーマルヘッドが、副走査方向の第一位置と第二位置に主走査方向に沿って交互に並べられるとともに、主走査方向について隣接した二つの前記サーマルヘッドの各端部にある所定数の発熱素子が副走査方向について同一位置となるオーバーラップ部分を設けるように配置された製版装置であって、
感熱孔版原紙を前記各サーマルヘッドに押し付けながら副走査方向に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送手段による前記感熱孔版原紙の搬送に同期して、前記第一位置にあるサーマルヘッドの前記オーバーラップ部分の前記発熱素子と前記第二位置にあるサーマルヘッドの前記オーバーラップ部分の前記発熱素子とを択一的に選択して駆動し、前記感熱孔版原紙の主走査方向に沿った各ラインの印字が、前記第一位置にあるサーマルヘッドと前記第二位置にあるサーマルヘッドの駆動により完成されるように制御する制御手段と、を備えた製版装置において、
前記制御手段は、前記各ラインにて、前記各サーマルヘッドのそれぞれの前記オーバーラップ部分における画素を、該各サーマルヘッドのそれぞれの他の部分の画素と同等以下の熱量で印字するように制御することを特徴とする製版装置。
【請求項2】
前記サーマルヘッドの前記発熱素子を駆動するためのヘッド駆動部は、複数のブロックに分割されており、
前記制御手段は、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を前記各ブロックに対応した所定の領域ごとに駆動制御するとともに、前記各ブロックの中から選択したブロックを前記オーバーラップ部分の専用ブロックとして設定することを特徴とする請求項1記載の製版装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ヘッド駆動部における前記オーバーラップ部分の専用ブロックに対応した前記発熱素子を一つのライン周期内で複数回駆動するように制御することを特徴とする請求項2記載の製版装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ヘッド駆動部における前記オーバーラップ部分の専用ブロックに対応した前記発熱素子の駆動タイミングを一つのライン周期内で可変制御することを特徴とする請求項2又は3記載の製版装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第一位置にあるサーマルヘッドの前記ヘッド駆動部における前記オーバーラップ部分の専用ブロックに対応した前記発熱素子を、前記第二位置にあるサーマルヘッドの前記ヘッド駆動部における前記オーバーラップ部分の専用ブロックに対応した前記発熱素子とは非同期で駆動するように制御することを特徴とする請求項2又は3又は4記載の製版装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記ヘッド駆動部における前記オーバーラップ部分の専用ブロックの駆動開始タイミング及び駆動時間を、隣接した前記サーマルヘッドのオーバーラップ量に応じて調整することを特徴とする請求項2又は3又は4又は5記載の製版装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記オーバーラップ部分における画素を、前記オーバーラップ部分の専用ブロックと、該ブロックと隣り合う前記ブロックとを共用して印字するように制御することを特徴とする請求項2乃至6の何れか一つに記載の製版装置。
【請求項1】
主走査方向に沿って所定間隔をあけて配列された複数の発熱素子をそれぞれ備えた二つ以上のサーマルヘッドが、副走査方向の第一位置と第二位置に主走査方向に沿って交互に並べられるとともに、主走査方向について隣接した二つの前記サーマルヘッドの各端部にある所定数の発熱素子が副走査方向について同一位置となるオーバーラップ部分を設けるように配置された製版装置であって、
感熱孔版原紙を前記各サーマルヘッドに押し付けながら副走査方向に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送手段による前記感熱孔版原紙の搬送に同期して、前記第一位置にあるサーマルヘッドの前記オーバーラップ部分の前記発熱素子と前記第二位置にあるサーマルヘッドの前記オーバーラップ部分の前記発熱素子とを択一的に選択して駆動し、前記感熱孔版原紙の主走査方向に沿った各ラインの印字が、前記第一位置にあるサーマルヘッドと前記第二位置にあるサーマルヘッドの駆動により完成されるように制御する制御手段と、を備えた製版装置において、
前記制御手段は、前記各ラインにて、前記各サーマルヘッドのそれぞれの前記オーバーラップ部分における画素を、該各サーマルヘッドのそれぞれの他の部分の画素と同等以下の熱量で印字するように制御することを特徴とする製版装置。
【請求項2】
前記サーマルヘッドの前記発熱素子を駆動するためのヘッド駆動部は、複数のブロックに分割されており、
前記制御手段は、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を前記各ブロックに対応した所定の領域ごとに駆動制御するとともに、前記各ブロックの中から選択したブロックを前記オーバーラップ部分の専用ブロックとして設定することを特徴とする請求項1記載の製版装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ヘッド駆動部における前記オーバーラップ部分の専用ブロックに対応した前記発熱素子を一つのライン周期内で複数回駆動するように制御することを特徴とする請求項2記載の製版装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ヘッド駆動部における前記オーバーラップ部分の専用ブロックに対応した前記発熱素子の駆動タイミングを一つのライン周期内で可変制御することを特徴とする請求項2又は3記載の製版装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第一位置にあるサーマルヘッドの前記ヘッド駆動部における前記オーバーラップ部分の専用ブロックに対応した前記発熱素子を、前記第二位置にあるサーマルヘッドの前記ヘッド駆動部における前記オーバーラップ部分の専用ブロックに対応した前記発熱素子とは非同期で駆動するように制御することを特徴とする請求項2又は3又は4記載の製版装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記ヘッド駆動部における前記オーバーラップ部分の専用ブロックの駆動開始タイミング及び駆動時間を、隣接した前記サーマルヘッドのオーバーラップ量に応じて調整することを特徴とする請求項2又は3又は4又は5記載の製版装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記オーバーラップ部分における画素を、前記オーバーラップ部分の専用ブロックと、該ブロックと隣り合う前記ブロックとを共用して印字するように制御することを特徴とする請求項2乃至6の何れか一つに記載の製版装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−131060(P2012−131060A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283298(P2010−283298)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]