説明

製糊装置

【課題】
コルゲートマシン用製糊装置において、高粘度のキャリアを扱うステインホール式製糊での糊粘度測定を持続して安定して作動できるようにするとともに、ステインホール式製糊とノーキャリア式製糊を同じ製糊装置で可能とする。
【解決手段】
製糊装置10に粘度検出器19を設けるとともに、その粘度検出器19を製糊装置10に供給されるもしくは供給された製糊用の温水や水で洗浄する洗浄手段を設けて常に清浄な状態に保ち正しい計測を可能にする。
粘度検出器19を製糊タンク11に取り付け、製糊タンク11内の糊の粘度を直接、タイムラグ無く測れるようにした場合、その洗浄手段としては、粘度検出器19の検出端部19aに向けて水又は温水を噴出する洗浄ノズル20aを設ける。
別の例として、製糊用温水供給装置からの水の落下流路中に粘度検出器19の検出端部19aを配置して洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は段ボールシートを製造するコルゲートマシンで、ライナと芯紙の貼合に用いられる澱粉糊の製糊装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ライナと芯紙を貼合して段ボールシートを製造するコルゲートマシンでは、接着剤として一般に澱粉糊が使われる。コルゲートマシンで使う澱粉糊の製糊方式としてステインホール式とノーキャリア式があることは例えば特開2001−162702号公報(特許文献1)に開示されている。また、特許文献1はそれぞれの方式で作る糊の粘度の管理システムも開示している。
【0003】
特許文献1に基いて、それぞれの製糊方法を簡単に説明する。図6はステインホール製糊方式の装置概略を示す図である。コルゲートマシンCで使用する糊は製糊装置Aの製糊タンク1内で製造され、貯留タンク2に流し込まれた後、貯留タンク2からコルゲートマシンCの糊付装置3の糊皿4に送り込まれる。糊皿4に溜まった糊は再び貯留タンク2に戻される。ステインホール方式では製糊タンク1内で先ず過剰な苛性ソーダで糊化されたキャリア澱粉を製造し、それに未膨潤のメイン澱粉を加えて所定粘度の糊が製造される。
【0004】
しかし、仕上がった糊の粘度は種々の条件により高くなったり、低くなったりばらつくので、貯留糊用粘度計5により粘度を常時監視し、その測定値が正常範囲を超えている場合は、製糊装置Aを製糊粘度が低くなるように、測定値が適性範囲を下回っている場合は、製糊装置Aを粘度が高くなるように制御する。即ち、製糊タンク1へ澱粉を投入する澱粉投入器6を制御し、キャリア澱粉の投入量を減少させて粘度を下げたり、増加させて粘度を上げる。
【0005】
図7はノーキャリア製糊方式の装置概略を示す図である。コルゲートマシンCで使用する糊は製糊装置Aの製糊タンク1内で製造され、貯留タンク2に流し込まれた後、貯留タンク2からコルゲートマシンCの糊付装置3の糊皿4に送り込まれる。糊皿4に溜まった糊は再び貯留タンク2に戻される。ノーキャリア式では全量の澱粉と適量の温水を混ぜた混合液に苛性ソーダを加え、徐々に膨潤させる。粘度を製糊タンク1内に設けた製糊用粘度計7で監視し、所定の粘度が発現した時点で硼酸を加えて苛性ソーダを中和し、増粘を停止させることにより所定粘度の糊が製造される。貯留糊用粘度計5により粘度を常時監視し、その測定値が正常範囲を超えている場合は、製糊粘度が低くなるように、また、測定値が適性範囲を下回っている場合は、粘度が高くなるようにそれぞれ製糊装置Aを制御する。即ち、製糊タンク1内の粘度計7により粘度を測定しつつ製糊し、粘度が設定値に達したとき硼酸を投入するが、その設定値を変えることにより製糊粘度を調整する。
【0006】
【特許文献1】特開2001−162702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ステインホール式で作った糊とノーキャリア式で作った糊では糊の性質に違いがあり、貼合する紙質や貼合条件により使い分けるのが望ましい。ステインホール式で作られた糊は保水性が良くシートへ水が浸透しにくいので低速貼合や高坪量紙の貼合に適している。一方ノーキャリア式で作られた糊はシートへの水の浸透性がよいので高速貼合や低坪量紙の貼合に有利である。従って、同じコルゲートマシンでも、貼り合わせる紙質や貼合条件により、ステインホール式の糊とノーキャリア式の糊の両方を製造して使い分けたいという要求がある。更に同じ製糊装置でステインホール式糊もノーキャリア式糊も製造したいという要求がある。
【0008】
ところが、ステインホール式で糊を製糊する場合、次のような問題がある。図8はステインホール式で糊を作る場合の製造過程と、その過程での製糊タンク内における糊の粘度を示した図である。ステインホール式では、先ず製糊タンク1に所定のキャリアを作るに必要な量の温水を入れ、それにキャリア澱粉を投入する。その時の粘度は図示のC1ごとく低い。次いで苛性ソーダを投入すると澱粉が糊化し、粘度が一気にC2と上昇する(以下これをキャリア部、キャリア糊と呼ぶことがある)。それを攪拌していると糊化した澱粉分子の鎖が切れて徐々に粘度が低下する。次いで、温水とメイン澱粉を投入して攪拌を続け、最後に硼砂を投入し(以下これをメイン部と呼ぶことがある)、糊の製造は完了する。図8ではこの仕上がり粘度をC3としている。ステインホール式での製糊上の一つの特徴は苛性ソーダ投入後のキャリアの粘度C2が、仕上がり粘度C3に比べて著しく高くなることである。
【0009】
図9はノーキャリア式で糊を作る場合の製糊過程と、その過程での製糊タンク内における糊の粘度を示した図である。ノーキャリア式は製糊タンク1に最初から全量の糊を作るに必要な温水を入れ、それに全量の糊を作るに必要な澱粉を投入する。これに苛性ソーダを加えて攪拌すると糊化が徐々に進み所定の粘度C4に達したら硼酸を加えて中和し糊化を停止させる。これで糊の製造は完了する。図9ではこの仕上がり粘度をC5としている。このノーキャリア式糊の仕上がり粘度C5はステインホール式糊の仕上がり粘度C3とほぼ同じである。ノーキャリア式製糊では製糊タンク1内の糊粘度は最大でも仕上がり粘度とほぼ同じであり、ステインホール式製糊の場合のように製糊過程における粘度が仕上がり粘度を大幅に超えて高くなることはない。
【0010】
ステインホール式の場合、糊の仕上がり粘度は主として使用する澱粉の性質とキャリア澱粉の量により変わる。しかも澱粉は、澱粉メーカや同じ澱粉メーカのものであっても生産ロットによって、澱粉の熱感度やアルカリ感度等の性質が異なり、量的に同じ調合をしても同じ仕上がり粘度になるとは限らない。言い換えると、所定の仕上がり粘度を得るためのキャリア澱粉の量を予め知ることが極めて難しい。そこで一般には先ず一回標準的な配合で製糊してみてその仕上がり粘度を測り、その結果を見て次のバッチでキャリア澱粉の量を調整するという試行錯誤的な粘度調整方法がとられる。その為、特許文献1のように製糊タンク1から離れ、また、コルゲートマシンを循環して粘度の変化した糊の混入した貯留タンク2での糊の粘度を測る方式ではなく、直接製糊タンク1で、そのバッチの仕上がり粘度を即座にタイムラグ無く測る方式の粘度測定を採用するのが望ましい。
【0011】
ところがステインホール方式で製糊タンク1に定置したインライン式粘度計を設けると、先に説明したように、この粘度計は非常に高い粘度C2のキャリアに浸かることになる。また、製糊タンクではバッチ毎に仕上がった糊が貯留タンクに送られて空になるから、次のバッチの製糊を開始する間、粘度計は空気に曝されることになり付着した糊が乾燥しやすい。従って、何度も製糊を繰り返している間に粘度計の周りに糊が固着し遂には粘度計の作動を阻害することになる。
【0012】
従って、従来ステインホール式製糊の場合、製糊タンク1内の粘度はフォドカップ等手動式の粘度計を用いて行われており製糊装置の自動化が難しかった。
因みに、特許文献1でもノーキャリア式製糊では、製糊タンク1に製糊用粘度計7を設けた例を開示しているが、ノーキャリア式の場合は前述のごとく糊の粘度は仕上がり粘度以上には上がらない。従って製糊用粘度計7は低い粘度の糊にしか浸からないので、糊が粘度計の周りに固着するような問題の発生は少ない。
【0013】
そこで本発明は以上のような背景に鑑みなされたもので、ステインホール式のように高粘度のキャリアを扱う製糊方式であっても、持続して安定して作動し、所定粘度の糊を製造することができる製糊装置を提供することを課題とする。
更に、ステインホール式糊もノーキャリア式糊も同じ製糊装置で製糊可能な製糊装置を提供することを課題とする。
更に、澱粉の性質が変わっても、糊の粘度を早く目標値に近づけ、その目標値の粘度を確実に保てる制御ができる製糊装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)そこで本発明では、製糊装置に粘度検出器を設けるとともに、その粘度検出器を製糊装置に供給されるもしくは供給された製糊用の水または温水で洗浄する手段を設け、適宜のタイミングで粘度検出器を洗浄することにより粘度検出器を常に清浄な状態に維持でき、正しい計測が持続できるようにした(請求項1)。
【0015】
(2)前記(1)における前記粘度検出器を製糊タンク本体に取り付け、製糊タンク内の糊の粘度を直接、タイムラグ無く測れるようにした(請求項2)。
【0016】
(3)前記(2)における前記洗浄手段として、前記粘度検出器に向けて水又は温水を噴出するノズルをその粘度検出器の近傍に設けることにより、確実に粘度検出器の洗浄ができるようにした(請求項3)。
【0017】
(4)また、前記(2)における洗浄手段として製糊用の温水供給装置を使用し、温水供給装置からの水の落下流路中に粘度検出器を配置するなどにより、特別の洗浄装置を設けなくても粘度検出器の洗浄が確実にできるようにした(請求項4)。
【0018】
(5)また、前記(2)における洗浄手段として、前記製糊タンク本体内の水または温水を攪拌しその水流で前記粘度検出器を洗浄する攪拌プロペラを採用し、キャリアを製造するときに投入された温水に該攪拌プロペラで旋回流を起こし、この旋回流により粘度検出器を洗浄できるようにした。これにより特別の洗浄装置を設けなくても粘度検出器の洗浄が確実にできる(請求項5)。
【0019】
(6)前記(1)における洗浄手段として、粘度検出器を製糊タンクから貯留タンクへ通じる管路の途中に設けるとともに、粘度検出器の後流側に製糊タンクへ戻る循環回路を設け、糊製造時に、この循環回路に糊を流して粘度を測定する。そして次のバッチにおけるキャリア製造時に投入された温水を、その循環回路を経て循環させることにより粘度検出器を洗浄するようにした。このように粘度検出器を配置することにより、粘度検出器は直接高粘度のキャリアに触れても堆積することがないから、糊の固着が少ない。糊粘度も製糊直後にタイムラグ無く測れる(請求項6)。
【0020】
(7)前記(1)の製糊装置にステインホール式製糊に必要な澱粉投入装置と苛性ソーダ投入装置と硼砂投入装置と温水投入装置などの原料投入器を設けステインホール式製糊ができるようにした(請求項7)。
【0021】
(8)前記(1)の製糊装置に、ステインホール式製糊とノーキャリア式製糊に必要な澱粉投入装置と苛性ソーダ投入装置と硼酸投入装置と硼砂投入装置と温水投入装置などの原料投入器を設け、同一の製糊装置でステインホール式糊とノーキャリア式糊を切替えて製糊可能とした(請求項8)。
【0022】
(9)更に、前記(1)の製糊装置において、同製糊装置による糊の仕上がり粘度を制御する制御装置を設け、同制御装置により、製糊タンクでの仕上がり粘度に基づき次のバッチの仕上がり粘度を目標値に近づける制御をする構成とすることにより、早期に目標粘度に達する製糊ができるようにした(請求項9)。
【0023】
(10)更に、前記(1)の製糊装置において、同製糊装置による糊の仕上がり粘度を制御する制御装置を設け、同制御装置により、貯留タンクでの糊粘度に基づき次のバッチの仕上がり粘度を目標値に近づける制御をすることにより、コルゲートマシンにとって適切な粘度の糊を供給することができるようにした(請求項10)。
【0024】
(11)また、前記(1)の製糊装置において、同製糊装置による糊の仕上がり粘度を制御する制御装置を設け、澱粉の粘度特性が把握できず仕上がり粘度の予測が難しい製糊開始初期のバッチでは、製糊装置での仕上がり粘度が目標値に近づくように前記制御装置で仕上がり粘度を制御し、その間に粘度特性を把握し、澱粉の粘度特性を把握した後は貯留タンクの粘度を目標粘度に近づくように制御することにより、コルゲートマシンで使用する適正粘度を早期に実現し、且つ安定して維持できるようにした(請求項11)。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、ステインホール式製糊過程での粘度の高いキャリア澱粉に、粘度検出器を触れさせても、粘度検出器に糊が堆積することが無く、製糊装置の自動化ができる。また、それが可能になったことにより、ステインホール式糊でもノーキャリア式の糊でも同じ製糊装置で自動的に作ることできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明にかかる製糊装置を図面に基づき説明する。図1は本発明の製糊装置10を説明する図である。製糊タンク11の上部には、澱粉投入装置12、苛性ソーダ投入装置13、硼砂投入装置14、硼酸投入装置15が設けられている。更に温水供給装置16が設けられている。製糊タンク11の底部には攪拌プロペラ17がモータ18で回転するよう設けられている。製糊タンク11の下部には粘度検出器19が設けられている。この粘度検出器19は種々のものが適用可能であるが、好ましくは粘度検知の検出端部を糊液に漬けておくだけで、連続的に粘度が測れるインライン式のプロセス粘度計(例えば超音波等による振動式粘度計)が良い。
【0027】
図2は粘度検出器19および洗浄ノズル20aの詳細を示す図である。粘度検出器19の近傍には、粘度検出器19の検出端部19aに向けて給水管20から供給される水又は温水の噴流21を吹き付ける洗浄ノズル20aが設けられている。
【0028】
製糊装置10で作られた糊は送出しポンプ22により糊輸送管23を経て貯留タンク25、26に送られ貯留される。シングルフェーサ用の糊とダブルフェーサ用糊では必要とする性状が異なるので別々の処方で製糊され、それぞれ別の貯留タンク25、26に貯留される。切替バルブ24は糊輸送管23の送り先を切替えるものである。貯留タンク25、26に蓄えられた糊は送出しポンプ27によりシングルフェーサの糊付装置28、グルーマシンの糊付装置29に送られ、余った糊は回収ポンプ30でそれぞれの貯留タンク25、26に戻される。
貯留タンク25、26には、それぞれの貯留タンク25、26内の糊の粘度を検出する粘度検出器31が設けられ、その検出信号で制御盤32に送られるように構成されている。
【0029】
本発明の装置でステインホール式の糊を作る場合を説明すると、例えば一日の最初の製糊は、従来通り先ず製糊タンク11に温水供給装置16で温水を、キャリア糊を作るに必要な量だけ投入し、次いで澱粉投入装置12でキャリア澱粉を投入して攪拌プロペラ17で攪拌する。次いで苛性ソーダ投入装置13で苛性ソーダを投入して攪拌しキャリア糊を製造する。
【0030】
次にメイン部の温水を投入するのであるが、この時に先ず洗浄ノズル20aからの噴流21で高粘度のキャリア糊が付着した粘度検出器19の検出端部19aを洗浄する。次いで温水供給装置16で残りの必要量の温水を、更に澱分投入装置12でメイン澱粉を所定量投入し、最後に硼砂投入装置14で硼砂を投入することでステインホール式澱粉糊ができあがる。この製糊タンク11内の糊の粘度を粘度検出器19で検知しその信号が制御盤32に送られる。糊ができあがり、粘度の測定が済んだ糊は貯留タンク25または26に移され、コルゲートマシンに送られる。
【0031】
製糊が完了し仕上がった糊が貯留タンク25、26に送られた後、製糊タンク11では次のバッチの製糊を始めるのであるが、キャリア製造用の温水を供給するとき、先ず洗浄ノズル20aからの水又は温水の噴流21を粘度検出器19の検出端部19aに吹付け、粘度検出器19の検出端部19aに付着した糊を洗い落とす。先のメイン部製造開始時の洗浄で取りきれなかった高粘度のキャリア糊が残っていたとしても、未だ固まっていないから、噴流21で更に洗い落とすことができる。このようにステインホール式製糊時は、製糊タンク11に2度製糊用の温水を使う機会があり、それを供給する時に粘度検出器19を洗浄するのが最も望ましい。
【0032】
なお、前記説明において、洗浄ノズル20aからの水または温水としているが、製糊装置によっては製糊タンク11に蒸気噴出等の加熱手段(図示せず)を設け、水の供給を受けて製糊タンク11で加熱して温水を得るようにしている場合もある。従って、以下、水と温水は特に用語を区別せずに用いる。
【0033】
次のバッチのキャリアを製造するに際し、先の粘度の測定結果が目標の粘度より低かった場合は予め決められた分だけ多く、目標の粘度より高かった場合は少なくキャリアを作るように制御される。その後は、前述の工程を繰り返してこのバッチの糊が作られる。そして、できあがった糊の粘度を測り、更に次のバッチでのキャリア澱粉の投入量が決められる。このように調整を繰り返していくことにより、仕上がり粘度を予め予想し難いステインホール式澱粉糊も次第に目標の粘度に近づけていくことができる。また、この過程でどれだけキャリア糊を作れば仕上がり粘度がどうなるかの関係が把握でき、その結果に基いて粘度を制御することができる。
【0034】
糊は貯留タンク25、26からコルゲートマシンCの糊付装置28、29に供給され、再度貯留タンク25、26に戻される循環をしている。その間に、コルゲートマシンで受ける熱や、糊付装置や循環に伴う剪断作用等で糊の粘度が変化してくる。従って、ある程度時間が経過した後では、貯留タンク25、26に設けた粘度検出器31により、貯留タンク25、26内の糊の粘度を測定し、これが所定の範囲を超えたら、製糊タンク11での糊の仕上がり粘度を低く、所定の範囲より低ければ仕上がり粘度を高くするように制御盤32に送った信号で制御することもできる。
【0035】
前記では、粘度検出器19の洗浄は専用に設けた洗浄ノズル20aからの噴流により行う例を示したが、図3に示すように粘度検出器19を澱粉糊製造用の温水を供給する温水供給装置16のノズル16aからの温水の落下流路40内に設けることにより、この水流により洗浄するようにしてもよい。
【0036】
また、図4に示すように、特に洗浄ノズル20aやノズル16aの水流を用いず、キャリア部を製造する水または温水を製糊タンク11に供給したとき、キャリア澱粉を投入する前に、攪拌プロペラ17を所定時間、所定の回転速度で回転し、製糊タンク11の底部に起こした旋回流42により、粘度検出器19を洗浄するようにしてもよい。
【0037】
更に粘度検出器19を洗浄する別の手段として、図5に示すごとく構成しても良い。即ち、粘度検出器19を製糊タンク11から貯留タンク25、26に送出す糊輸送管23に挿入し、粘度検出器19の後流側に循環回路44とバルブ45、46を糊輸送管23と製糊タンク11の間に設ける。製糊中はバルブ45を開きバルブ46を閉じて、糊が送出しポンプ22、粘度検出器19、循環回路44を経て循環できるようにする。粘度を測るときは循環回路44に糊を循環させて粘度検出器19で粘度を測る。製糊タンク11で製糊が完了した糊を貯留タンク25、26に送出すときはバルブ45を閉じ、バルブ46を開く。
【0038】
そして次のバッチのキャリア用温水を投入したとき、再びバルブ45を開きバルブ46を閉じて、循環回路44を経て水が循環するようにし、送出しポンプ22でキャリア部製造用の水を循環して粘度検出器19を洗浄する。
【0039】
本発明の製糊装置でノーキャリア式糊を作る場合は、製糊タンク11に温水供給装置16で全量の温水を、澱粉投入装置12で全量の澱粉を投入し攪拌プロペラ17で攪拌する。その後苛性ソーダ投入装置13で苛性ソーダを投入し粘度検知器19で粘度を監視し、所定の粘度になったら硼酸投入装置15で硼酸を投入しノーキャリア式の糊が仕上がる。仕上がった糊は送出しポンプ22で貯留タンク25、26に送られる。
【0040】
ノーキャリア式の場合は、このように製糊過程で粘度を管理ポイントに製糊を行うので、仕上がった糊の粘度はほぼ目標に近いものが得られる。しかし、澱粉の性質によっては、図9に示す硼酸投入時の粘度C4と仕上がり粘度C5の間の差が大きく、仕上がり粘度が目標粘度を外れる場合があるので、その時は次バッチでの硼酸投入の設定粘度を調整して目標の仕上がり粘度に近づけるよう制御する。
【0041】
貯留タンク25、26とコルゲートマシンの間を循環している糊の粘度は、経時変化するので貯留タンク25、26の粘度検出器31で粘度を監視し、規定範囲を超えれば製糊装置10での仕上がり粘度を低く、規定範囲を下回れば仕上がり粘度を高く制御するのが望ましい。
また、ノーキャリア式の場合も各バッチの最初に、ステインホール式製糊の場合のように粘度検出器19を洗浄する過程を入れるのが望ましいが、省略することもできる。
【0042】
以上の説明では、ステインホール式製糊とノーキャリア式製糊に本発明による製糊装置を使用する場合を中心に説明したが、本発明による製糊装置は、ステインホール式製糊及びノーキャリア式製糊以外に使用してよいことはいうまでもなく、その製法如何を問わず、粘度を的確に制御して所定粘度の糊を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例による製糊装置の構成を示す図である。
【図2】図1の製糊タンクに設けられた粘度検出器に対する洗浄手段の例を示す一部詳細図である
【図3】他の洗浄手段の構成を示す図1と同様の一部詳細図である。
【図4】更に他の洗浄手段の構成を示す図1と同様の一部詳細図である。
【図5】他の洗浄手段の構成を示す図1と同様の一部詳細図である。
【図6】従来のステインホール製糊方式の装置概略を示す説明図である。
【図7】従来のノーキャリア製糊方式の装置概略を示す説明図である。
【図8】ステインホール製糊方式の製糊過程における粘度変化を示す図である。
【図9】ノーキャリア製糊方式の製糊過程における粘度変化を示す図である
【符号の説明】
【0044】
1 製糊タンク
2 貯留タンク
3 糊付装置
4 糊皿
5 貯留糊用粘度計
6 澱粉投入器
7 製糊用粘度計
10 製糊装置
11 製糊タンク
12 澱粉投入装置
13 苛性ソーダ投入装置
14 硼砂投入装置
15 硼酸投入装置
16 温水供給装置
16a ノズル
17 攪拌プロペラ
18 モータ
19 粘度検出器(製糊タンク用)
19a 検出端部
20 給水管
20a 洗浄ノズル
21 噴流
22 送出しポンプ(製糊タンク)
23 糊輸送管
24 切替バルブ
25 貯留タンク(シングルフェーサ用糊)
26 貯留タンク(ダブルフェーサ用糊)
27 送出しポンプ(貯留タンク)
28 糊付装置(シングルフェーサ用)
29 糊付装置(グルーマシン用)
30 回収ポンプ
31 粘度検出器(貯留タンク用)
32 制御盤
40 落下流路
42 旋回流
44 循環回路
45 バルブ
46 バルブ
A 製糊装置(従来)
C コルゲートマシン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボールシートを製造するコルゲートマシンでライナと芯紙の貼合に用いられる澱粉糊を製造する製糊装置において、前記製糊装置に粘度検出器を設けるとともに、前記粘度検出器を製糊用の水または温水で洗浄する洗浄手段を備えたことを特徴とする製糊装置。
【請求項2】
請求項1の製糊装置において、前記粘度検出器を製糊タンクに取り付けたことを特徴とする製糊装置。
【請求項3】
請求項2の製糊装置において、前記洗浄手段は前記粘度検出器の近傍に設けた洗浄専用の水または温水の噴出ノズルであることを特徴とする製糊装置。
【請求項4】
請求項2の製糊装置において、前記洗浄手段は製糊用の温水供給装置であることを特徴とする製糊装置。
【請求項5】
請求項2の製糊装置において、前記洗浄手段は前記製糊タンク内の水または温水を攪拌しその水流で前記粘度検出器を洗浄する攪拌プロペラであることを特徴とする製糊装置。
【請求項6】
請求項1の製糊装置において、前記粘度検知器を製糊タンクから貯留タンクへ通じる糊輸送管の途中に設けるとともに、前記粘度検知器の後流側の前記糊輸送管に前記製糊タンクへ戻る循環回路を設けたことを特徴とする製糊装置。
【請求項7】
請求項1の製糊装置において、前記製糊装置には澱粉投入装置と苛性ソーダ投入装置と硼砂投入装置と温水投入装置とを備え、製糊方式がステインホール式であることを特徴とする製糊装置。
【請求項8】
請求項1の製糊装置において、同製糊装置には澱粉投入装置と苛性ソーダ投入装置と硼酸投入装置と硼砂投入装置と温水投入装置とを備え、同一の製糊装置でステインホール式糊とノーキャリア式糊を切替えて製糊可能な構成としたことを特徴とする製糊装置。
【請求項9】
請求項1の製糊装置において、同製糊装置による糊の仕上がり粘度を制御する制御装置を設け、同制御装置により、製糊タンクでの仕上がり粘度に基づき次バッチの仕上がり粘度を目標値に近づける制御をするよう構成したことを特徴とする製糊装置。
【請求項10】
請求項1の製糊装置において、同製糊装置による糊の仕上がり粘度を制御する制御装置を設け、貯留タンクでの糊粘度に基づき、前記貯留タンク内の糊粘度を目標値に近づけるように、前記制御装置により前記製糊装置での仕上がり粘度を調整する制御をするよう構成したことを特徴とする製糊装置。
【請求項11】
請求項1の製糊装置において、同製糊装置による糊の仕上がり粘度を制御する制御装置を設け、製糊開始初期のバッチでは前記製糊装置での仕上がり粘度を目標値に近づくよう、および澱粉の粘度特性が把握できた後は貯留タンクでの糊粘度を目標値近づけるよう、前記制御装置により前記製糊装置の仕上がり粘度を調整する制御をするよう構成したことを特徴とする製糊装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−138035(P2007−138035A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334324(P2005−334324)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(591003460)三原菱重エンジニアリング株式会社 (12)
【Fターム(参考)】