説明

製紙における充填剤含有量の増大方法

本発明は、より高い比率の鉱物性充填剤粒子を有する紙マットを製造する方法を提供し、本発明の方法以外では、この高い比率は紙の強度の期待損失なしには可能とはならない。本方法は、少なくとも一部の充填剤粒子を、充填剤物質が強度混和剤に付着することを防止する物質で被覆することにより、より多量の充填剤粒子の使用を可能とする。この強度混和剤はセルロース繊維を互いに強固に保持し、及び充填剤粒子上で浪費されることがない。本方法は、充填剤粒子がPCC−GCC混合物であり、及びGCC粒子が付着防止被覆により被覆されている場合に特に効果的である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
なし。
連邦政府により資金援助された研究又は開発の言明
適用されない。
【0002】
本発明は製紙プロセスにより製造される紙マット又は繊維の強度を増大させる方法に関する。紙マットは通常は4〜8%の水及び固体を含む。紙マットの固体部分は、繊維(典型的にはセルロースを主成分とする繊維)を含み、更に充填剤も含み得る。紙マットの強度を増大させることは、充填剤の含有量である固体比率を増大させることを可能とするであろう。このことは原料のコストを低下させ、製紙プロセスで必要とされるエネルギーを削減し、紙の光学的特性を改善するために望ましい。従来技術は、10%〜40%の充填剤を含む紙マットを開示している。しかしながら、従来技術は充填剤含有量の増大が、同時に生成される紙の強度低下を伴うことも開示している。
【0003】
充填剤は、生成される紙の不透明性及び光反射性を増進させるために、製紙プロセスの間に紙マットに添加される鉱物性粒子である。充填剤のいくつかの例は、特許文献1に記載されている。充填剤としては、不透明性又は輝度を増大させ、多孔性を減少させ、又は紙若しくは板紙のコストを低下させるために使用される無機及び有機粒子又は顔料が挙げられる。充填剤のいくつかの例としては、1つ以上の、カオリン粘土、タルク、二酸化チタン、アルミナ三水和物、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウムなどの顔料が挙げられる。紙の強度を低下させることなく、紙の中の充填剤含有量を増大させるための以前の試みが、特許文献2並びに特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、及び特許文献7に記載されている。
【0004】
炭酸カルシウム充填剤はGCC(粉末化された炭酸カルシウム)及びPCC(沈降された炭酸カルシウム)の2つの形態で供給される。GCCは天然の炭酸カルシウム岩石であり、及びPCCは合成的に製造される炭酸カルシウムである。PCCはより大きな比表面積を有するため、より大きな光散乱能を有し、及び生成される紙により良い光学的特性を与える。しかしながら、同じ理由によりPCC充填紙マットは、GCC充填紙よりも弱い紙を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,211,608号
【特許文献2】英国特許GB2016498号
【特許文献3】米国特許第4,710,270号
【特許文献4】米国特許第4,181,567号
【特許文献5】米国特許第2,037,525号
【特許文献6】米国特許第7,211,608号
【特許文献7】米国特許第6,190,663号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紙の強度は、紙マットの織り混ぜられた繊維の間に形成される結合の数と強度の関数である。より大きな表面積を有する充填剤粒子は、これらの繊維と係合する可能性がより高く、及びこれらの結合の数と強度を妨害する。より大きな表面積のために、PCC充填剤はGCCよりもこれらの結合を妨害する。
【0007】
結果として、製紙業者は望ましくない二律背反を行うことを余儀なくされる。彼らは、より優れた強度であるが光学的特性の劣った紙か、より優れた光学的特性を有するが強度の劣った紙のいずれかを選択しなければならない。したがって、紙の中により多量の充填剤を入れること、高い不透明性を有する紙、及び高い程度の強度を有する充填紙を容易にする製紙方法に対する明確な要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも1実施形態は、生成される紙の強度が同時に損なわれない、増大された充填剤含有量を有する紙の製造方法を対象とする。本方法は:充填剤粒子、少なくとも1つの強度混和剤、及びセルロース繊維ストックを提供する工程;充填剤粒子をマット化剤(matter)の組成物で処理する工程;充填剤粒子をセルロース繊維ストックと混合する工程;並びにこの組み合わせから水の一部分を除去することにより紙マットを生成する工程を含む。少なくとも10%の充填剤粒子が沈降型の炭酸カルシウム(PCC)であり、及び少なくとも10%の充填剤粒子が粉末化された炭酸カルシウム(GCC)である。セルロース繊維ストックは複数のセルロース繊維及び水を含む。マット化剤の組成物は強度混和剤が充填剤粒子に付着することを阻害する。少なくとも1実施形態では、このセルロース繊維ストック及び充填剤粒子は紙料(furnish)を形成するために組み合わされ、及びその後に充填剤粒子がマット化剤の組成物により処理される。
【0009】
本発明の少なくとも1実施形態は、充填剤粒子の混合物が、炭酸カルシウム、有機顔料、無機顔料、粘土、タルク、二酸化チタン、アルミナ三水和物、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、及びこれらの任意の組み合わせよりなるリストから選ばれる1品目を更に含む方法を対象とする。
【0010】
本発明の少なくとも1実施形態は、マット化剤の組成物がAcAm/DADMAC共重合体である方法を対象とする。本発明の少なくとも1実施形態は、強度混和剤がグリオキシル化されたアクリルアミド/DADMAC共重合体である方法を対象とする。本発明の少なくとも1実施形態は、強度混和剤及びマット化剤の組成物が同じ電荷を有する方法を対象とする。
【0011】
本発明の少なくとも1実施形態は、炭酸カルシウムが、乾燥炭酸カルシウム、炭酸カルシウム分散スラリー、チョーク及びこれらの任意の組み合わせよりなるリストから選ばれる1つの形態である方法を対象とする。少なくとも炭酸カルシウムの一部分は、ポリアクリル酸重合体分散剤、ポリリン酸ナトリウム分散剤、カオリン粘土スラリー、及びこれらの任意の組み合わせよりなるリストから選ばれる少なくとも1品目を更に含む、分散された炭酸カルシウムスラリーの形態であることができる。充填剤粒子の混合物は50%がGCC及び50%がPCCであることができる。マット化剤の組成物は凝固剤であることができ、及び無機凝固剤、有機凝固剤、縮合重合凝固剤、及びこれらの任意の組み合わせよりなるリストから選ばれることができる。この凝固剤は、200〜1,000,000の範囲の分子量を有してよい。
【0012】
本発明の少なくとも1実施形態は、マット化剤の組成物が、ミョウバン、アルミン酸ナトリウム、ポリ塩化アルミニウム、アルミニウムクロロヒドロキシド、硫酸化ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、エピクロルヒドリン―ジメチルアミン(EPI−DMA)、EPI−DMAアンモニア架橋重合体、二塩化エチレン及びアンモニアの重合体、多官能性ジエチレントリアミンの縮合重合体、多官能性テトラエチレンペンタミンの縮合重合体、多官能性ヘキサメチレンジアミン縮合重合体、多官能性二塩化エチレンの縮合重合体、メラミン重合体、ホルムアルデヒド樹脂重合体、正に荷電したビニル付加重合体、及びこれらの任意の組み合わせから選ばれる凝固剤である方法を対象とする。
【0013】
本発明の少なくとも1実施形態は、紙マットの固体成分に対する強度混和剤の比率が、1トンの紙マット当たり0.3〜5kgの混和剤である方法を対象とする。少なくとも一部分のGCC粒子がマット化剤の組成物により処理され得る。本発明の少なくとも1実施形態は、PCC粒子がマット化剤の組成物により処理されない方法を対照とする。強度混和剤はカチオン性でんぷんであってよい。充填剤粒子は紙マットの固体部分の合計質量の最大50%までの質量を有し得る。強度混和剤及びマット化剤の組成物は同じ電荷を有することができる。
【0014】
少なくとも本発明の1実施形態では、製紙プロセスにおいて用いられるマット化剤の組成物を対象とする。このマット化剤の組成物は、セルロース、充填剤粒子、強度混和剤、及び少なくとも一部の充填剤粒子を取り囲む被覆を含む。この被覆は、強度混和剤が充填剤粒子に付着することを防止するために構築され、配置される。少なくとも1実施形態では、少なくとも一部分の充填剤粒子は炭酸カルシウムである。少なくとも1実施形態では、充填剤粒子はGCC、PCC、又はこの二つの組み合わせである。少なくとも1実施形態では、充填剤粒子は少なくとも10%のPCC及び10%のGCCを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】
【図2】
【図3】
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の少なくとも1実施形態は、強く、高い充填剤含有量を有し、高いPCC含有量を有し、及び優れた光学的特性を有する紙を製造する方法である。本発明の少なくとも1実施形態では、製紙方法は、質量により充填剤の少なくとも10%のPCC及び充填剤の少なくとも10%の質量のGCCを含むPCC及びGCC充填剤混合物を生成する工程、少なくとも一部分の充填剤粒子を強度混和剤と充填剤粒子の間の付着を減少させる被覆により前処理する工程、並びに充填剤混合物及び強度混和剤の両方を紙マットに加える工程を含む。
【0017】
ある場合には強度混和剤の紙マットへの添加が、生成される紙の強度を増大させることが知られている。強度混和剤のいくつかの例は、米国特許第4,605,702号に記載されている。強度混和剤のいくつかの例は、セルロース繊維に粘着して、それらを強固に結合させるカチオン性でんぷん類である。
【0018】
不運なことに、紙マット中の多量の充填剤の使用に起因する弱さを補償するために、多量の強度混和剤を添加することは実用的ではない。理由の1つは、強度混和剤が高価であり、多量の添加剤の使用は商業的に成り立たない生産コストをもたらす。加えて、多すぎる強度混和剤の添加は、製紙プロセスに否定的に影響し、及び各種の形態の製紙装置の操作性を阻害する。例としては、カチオン性でんぷん強度混和剤との関連で、このカチオン性でんぷんは排水及び脱水プロセスを妨害し、製紙プロセスを大幅に減速させる。
【0019】
更に、セルロース繊維は、限定された量の強度混和剤のみを吸着する。このことは、添加剤の量、したがってどの程度の充填剤の量が使用可能かに限界を課す。そのようになる理由の1つは、強度混和剤がアニオン性繊維/充填剤の電荷を中和する傾向があり、及びこれらの電荷が中和されすぎると、強度混和剤の更なる吸着が阻害されるからである。
【0020】
不運なことに、紙マットへの充填剤の添加は、強度混和剤の有効性をも減ずる。強度混和剤は、充填剤粒子を被覆する傾向を有する。より多くの充填剤粒子が存在すると、より多くの強度混和剤が充填剤粒子を被覆し、したがってセルロース繊維に結合可能な強度混和剤が少なくなる。添加される強度混和剤の最大量が存在するため、より多くの充填剤は、常に、有効性の少ない強度混和剤を意味する。この効果はPCCのほうがGCCよりも深刻である。なぜならば、GCCに比較してPCCのより大きな表面積が、強度混和剤により、より多く被覆されるからである。
【0021】
少なくとも本発明の1実施形態では、強度混和剤の充填剤粒子への粘着を少なくとも部分的に防止するために、少なくとも一部分の充填剤粒子がマット化剤の組成物により前処理される。この前処理は、1つ以上の充填剤粒子の一部分又は全体を、マット化剤の組成物で完全に被覆することを意図している。代替的には、この前処理はマット化剤の組成物を1つ以上の充填剤粒子の一部のみに塗布することを意図しているか、又は一部の充填剤粒子を完全に被覆することを意図しており、及び他のいくつかの粒子の一部分のみにマット化剤の組成物を塗布することを意図している。少なくとも1実施形態では、この前処理は米国特許第5,221,435号に記載されたマット化剤組成物の少なくとも一部分、特にその中に記載されたカチオン性電荷付勢種により遂行される。少なくとも1実施形態では、この前処理は米国特許第6,592,718号に記載された、ジアリル−N,N−二置換ハロゲン化アンモニウム−アクリルアミド共重合体により遂行される。
【0022】
充填剤粒子前処理が当技術分野で周知である一方、充填剤粒子前処理の従来技術の方法は、強度混和剤の充填剤粒子への粘着に影響を与えることを対象としていない。実際、多くの従来技術の前処理は、強度混和剤の充填剤粒子への粘着を増大させる。例えば、米国特許第7,211,608号は、疎水性重合体による充填剤粒子の前処理を記載している。しかしながら、この前処理は強度混和剤と充填剤粒子の粘着には何も行わず、及び強度混和剤により吸着された過剰の水の釣り合いを取るために、単に水を撥水するだけである。対照的に、本発明は強度混和剤及び充填剤粒子の相互作用を減少させ、及び予期されなかった紙の強度の巨大な増大をもたらした。このことは図1を参照することにより、最も良く理解され得る。
【0023】
図1は、所与の紙の伸張強度を、その所与の紙の製造に用いられた紙マットの固体部分に対する充填剤の百分率に対してプロットしたものである。図1に示されるように、増大する充填剤含有量と紙の強度の減少との関係は直線的関係である。強度混和剤の減少された有効性が、充填剤粒子に対して捕捉される強度混和剤の増大と、直接的に比例するからである。図1は更に、従来技術の充填剤の紙マットに対するいかなる所定の割合についても、充填剤が純粋なPCCの場合には部分的にGCCである場合に比較して、しばしばより低い強度を有することも示している。
【0024】
図1は、本発明の方法に従って製造された紙の予期されなかった高い強度も図示している。図1では、質量で32%の強度混和剤−反発性凝固剤により前処理された、50%のPCC及び50%のGCCの充填剤を含む紙マットのサンプルが、20%の純粋なGCC充填剤だけを有する紙マットにより製造されたものに比べ、より大きな強度を有する紙を生成させている。この結果は、a)PCC含有充填剤が、純粋なGCC充填剤よりも、より大きな強度の紙を生成させること、及びb)許容される充填剤における12%を超える増大は極度に大きいことから、二重に予期されないものであった。高い紙の強度は、GCCの含有がセルロース繊維結合の間の障害を低下させること、及び前処理が、強度混和剤が紙の最大強度を達成すること、又は最大強度に近づけることを可能にしている結果である。
【0025】
本発明に包含される少なくとも一部分の充填剤は、よく知られており商品として入手可能である。それらには、不透明性若しくは輝度を増大させ、多孔性を減少させるか、又は紙若しくは板紙のシートのコストを低下させるための任意の無機若しくは有機粒子若しくは顔料が含まれる。最も一般的な充填剤は、炭酸カルシウム及び粘土である。しかしながら、タルク、二酸化チタン、アルミナ三水和物、硫酸バリウム、及び水酸化マグネシウムも好適な充填剤である。炭酸カルシウムとしては、乾燥又は分散されたスラリー形態にある粉末化された炭酸カルシウム(GCC)、チョーク、任意の形態の沈降炭酸カルシウム(PCC)、及び分散されたスラリー形態にある沈降炭酸カルシウムが挙げられる。GCC又はPCCの分散されたスラリー形態は、典型的にはポリアクリル酸重合体分散剤又はポリリン酸ナトリウム分散剤を用いて生成される。これらの各分散剤は、炭酸カルシウム粒子に顕著なアニオン性電荷を付与する。カオリン粘土スラリーもポリアクリル酸重合体又はポリリン酸ナトリウムを用いて分散される。
【0026】
少なくとも1実施形態では、マット化剤の処理組成物は米国特許第6,592,718号に記載された組成物のいずれかであるか、それらの組み合わせであってよい。特に、その中で詳細に記載された任意のAcAm/DADMAC共重合体組成物がマット化処理組成物として好適である。AcAm/DADMAC共重合体組成物の例としては、ナルコ社(Nalco Company:イリノイ州ネーパービル)よりのNalco−7527製品群(以下、7527と呼ぶ)が挙げられる。
【0027】
マット化剤の処理組成物は凝固剤であってよい。本発明に包含されるこの凝固剤はよく知られており、及び商品として入手可能である。それらは無機物又は有機物であってよい。代表的な無機凝固剤としては、ミョウバン、アルミン酸ナトリウム、ポリ塩化アルミニウム又はPAC(アルミニウムクロロヒドロキシド、クロロヒドロキシアルミニウム及びポリクロロヒドロキシアルミニウムとしても知られる)、硫酸化ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
マット化剤の処理組成物に好適ないくつかの有機凝固剤は縮合重合化により形成される。この種の重合体の例としては、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン(EPI−DMA)、及びEPI−DMAアンモニア架橋重合体が挙げられる。
【0029】
マット化剤の処理組成物に好適な追加的な凝固剤としては、二塩化エチレン及びアンモニアの重合体、又はアンモニアを添加したか若しくは添加しない二塩化エチレン及びジメチルアミン重合体、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンなどの多官能性アミンと二塩化エチレンの縮合重合体、及びメラミンホルムアルデヒド樹脂などの縮合反応により生成される重合体が挙げられる。
【0030】
マット化剤の処理組成物に好適な追加的な凝固剤としては、(メタ)アクリルアミド、ジアリル−N,N−二置換ハロゲン化アンモニウム、ジメチルアミノエチルメタクリレート及びその四級アンモニウム塩、ジメチルアミノエチルアクリレート及びその四級アンモニウム塩、塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、塩化ジアリルメチル(β−プロピオンアミド)アンモニウム、(β-メタクリロキシエチル)トリメチルアンモニウムメチル硫酸塩、四級化されたポリビニルラクタム、ビニルアミン、及びマンニッヒ(Mannich)又は四級マンニッヒ誘導体の製造のために反応されるアクリルアミド又はメタクリルアミドなどの重合体、共重合体、三元重合体などのカチオン性に荷電したビニル付加重合体が挙げられる。好適な四級アンモニウム塩は、塩化メチル、メチル硫酸又は塩化ベンジルを用いて生成され得る。三元重合体は、重合体の合計荷電がカチオン性である限りは、アクリル酸又は2−アクリルアミド2−メチプロパンスルホン酸などのアニオン性単量体を含み得る。これらのビニル付加及び縮合の両方の重合体の分子量は、数百の低さから数百万の高さまでの範囲にわたる。好適には、分子量は、約20,000〜約1,000,000の範囲にわたるべきである。少なくとも1実施形態では、前処理は、充填剤粒子の前処理のためのマット化剤の好適な組成物として記載されたマット化剤の任意の1つ、いくつか、又は全ての組み合わせにより遂行される。
【0031】
少なくとも1実施形態では、強度混和剤は充填剤粒子の処理に好適なマット化剤の組成物と同じ電荷を担う。この二つが同じ電荷を担う場合、充填剤添加剤がその表面に強度混和剤を吸着する可能性はより低くなる。少なくとも1実施形態では、強度混和剤はカチオン性でんぷんである。本発明に包含される強度混和剤としては、米国特許第4,605,702号、及び米国特許出願第2005/0161181Al号に記載された任意の組成物、並びに特にその中に記載されたさまざまなグリオキシル化されたアクリルアミド/DADMAC共重合体組成物が挙げられる。グリオキシル化されたアクリルアミド/DADMAC共重合体組成物の例は、製品番号Nalco64170(ナルコ社(Nalco Company)イリノイ州ネーパービルにより製造される)である。
【0032】
少なくとも1実施形態では、使用される充填剤はPCC、GCC、及び/又はカオリン粘土である。少なくとも1実施形態では、使用される充填剤はPCC、GCC、及び/又はポリアクリル酸重合体分散剤を有するカオリン粘土又はこれらの混合物である。固体の紙マットに対する強度混和剤の割合は、1トンの紙マットに対して3kgの添加剤であることができる。
【0033】
上記は、説明の目的で提示され、本発明の範囲を限定する意図を持たない以下の実施例を参照することにより、よりよく理解されることができる。
【実施例】
【0034】
実施例1
(i)充填剤の前処理:
充填剤粒子の混合物は製紙工場から得られた。この混合物は50%のPCC及び50%のGCCの混合物であった。このPCCは非分散のAlbacar HO(スペシャルティ・ミネラル・オブ・ベスレヘム(Specialty Mineral of Bethlehem)、ペンシルバニア州により製造された)、及びこのGCC(これもスペシャルティ・ミネラル・オブ・ベスレヘム(Specialty Mineral of Bethlehem)、ペンシルバニア州により製造された)は化学的に分散された。この適用の目的のためには、用語「非分散」の定義は、化学的分散剤の助けなしで流体中に分布することを意味する。この適用の目的のためには、用語「化学的分散」は、化学的分散剤の助けにより流体中に分布することを意味する。
【0035】
充填剤混合物は水道水により18%の固体含有量まで希釈された。200mLの希釈された充填剤混合物が500mLのガラス・ビーカーに入れられた。凝固剤の添加に先立ち、撹拌が少なくとも30秒間行われた。この撹拌機は、Rl342、50mmの4刃プロペラの付いたユーロスター・デジタル・オーバーヘッド・ミキサー(EUROSTAR Digital overhead mixer)(両方ともアイケーエー・ワークス社(IKA Works,Inc.,)ノースカロライナ州ウイルミントン製)であった。最初の30秒間の撹拌後に、800rpmの撹拌下に、凝固剤溶液がゆっくりと加えられた。この凝固剤溶液は7527であった。凝固剤の用量は乾燥充填剤重量に基づき1kg/トンであった。凝固剤が添加されるまで撹拌は800rpmで継続された。次いで、1分間、撹拌速度が1500rpmまで増大された。
【0036】
1(ii)充填剤の使用:
セルロース繊維の濃いストックは製紙工場から得られた。このストックは冷却され、次いで浄化された急流水(white water)により約0.7%の濃度まで希釈された。このセルロース繊維は60%広葉樹漂白クラフト・パルプ(HBKP)、20%針葉樹漂白クラフト・パルプ(SBKP)、及び20%漂白ケミサーモ・メカニカル・パルプ(BCTMP)であった。図1に示される、さまざまな組成の充填剤のサンプルが添加された。強度混和剤64170も添加された。次いで、各サンプルにより製造された紙の伸張強度が測定され、図1にプロットされた。
【0037】
これらのサンプルの強度解析は、純粋なPCCの、50%PCC及び50%GCCによる置換が、紙の強度をなんら損なわずに、一貫して充填剤含有量の約3%の増大を可能としたことを明らかにした。しかしながら、50%PCC及び50%GCC充填剤と、GCC粒子の強度混和剤64170及び撥水凝固剤7527による前処理との組み合わせは、紙の強度を全く失うことなく、驚異的な12%の充填剤含有量の増大の許容をもたらした。結果として、本発明の方法の工程は、製紙においてより多くの充填剤の使用を可能とし、より多くのPCCの製紙における使用を可能とする一方で、生成される紙の光学的特性を改善することが明らかである。
【0038】
実施例2
実施例1と同様にセルロース混合物及び充填剤が提供された。この充填剤は実施例1と同様に処理された。3kg/トンの強度混和剤64170が、1つは100%PCCを含み、1つは50%PCC−50%GCCを含み、及び1つは50%PCC−50%GCCであって、GCCが7527で前処理されている、3つのサンプルに加えられた。生成された紙のサンプルが分析され、結果が、図2に示されているが、図2では、所与の紙の伸張強度が、紙マットの合計固体成分に対する充填剤の百分率に対してプロットされている。
【0039】
3kg/トンの添加剤64170が100%PCCと共に添加された場合、強度の損失なしで、ただ3%の充填剤含有量だけが増大された。約34%の充填剤含有量で、強度は12%改善した。100%PCCが50%PCC−50%GCCに切り替えられると、強度は増大し及びシート強度を損なうことなく、3.5%の充填剤含有量の増大を可能とすることができた。3kg/トンの添加剤64170が添加された場合、シート強度を犠牲にすることなく、別の約2.5%の充填剤含有量が更に増大されることができた。35%の充填剤の含有量では、3kg/トンの64170の添加によりシート強度は14%改善した。50%PCC−50%GCCと比較して、7527により前処理された50%PCC−50%GCCは、強度を損なうことなく2%の充填剤を増大させ得た。3kg/トンのN−64170を前処理された50%PCC−50%GCCと共に紙料に添加した場合、シート強度を損なうことなく充填剤含有量は、前処理された50%PCC−50%GCCのみの場合と比較して、4%増大されることができた。36%の充填剤含有量では、3kg/トンのN−64170の添加は強度を19%増大させた。この実験は、同量の強度混和剤64170を使用する場合では、シート強度を改善する効率が充填剤の前処理により顕著に増大されることを実証した。
【0040】
実施例3
製紙機械により1360m/minの機械速度で、108gsmの被覆原紙を製造する機械試行が行われた。セルロース繊維が40%漂白ケミサーモ・メカニカル・パルプ(BCTMP)、40%HBKP40%、SBKP20%である組成物が提供された。紙料は、70%PCC及び30%GCCである充填剤混合物も含んでいた。試行の間、保持助剤、サイズ剤、及びカチオン性でんぷんを含む全てのウエットエンド添加剤は一定に保たれた。生成された紙の強度はスコット・ボンド・テスター(Scott Bond tester)を用いて測定された。
【0041】
図3は、さまざまな量の7527及び64170を有する8つの混合物を含む紙混合物のスコット・ボンド強度の結果を示している。7527及び64170が添加されない場合、その強度は0.92kg・cmであった。2.5kg/トンの64170が添加された場合、その強度は1.14kg・cmに増大し、24%の強度改善であった。更に0.5kg/トンの7527を加えると、しかしながら、その強度は1.14kg・cmから1.30kg・cmへと、更に14%改善した。この試行は、少量の凝固剤の添加により64170の効率が大きく改善されることを実証した。
【0042】
当業者は、上記に記載された全ての方法が、他の非セルロースを主成分とする繊維質物質を含む紙マット、並びにセルロースを主成分とする繊維質物質及び非セルロースを主成分とする繊維質物質の混合物を含む紙マット並びに/又は合成繊維質を主成分とする物質にも適用可能であることを理解するであろう。
【0043】
特許請求の範囲において定義される、本発明の概念及び範囲を逸脱することなく、本明細書に記載された本発明の方法の組成物、操作、及び配置において変更を行うことが可能である。本発明は多くの異なった形態において具体化されることができる一方、本発明の具体的な好適な実施形態が本明細書において詳細に記載されている。本開示は、本発明の原理の例示であり、及び説明された特定の実施形態に本発明を限定する意図を持たない。更に、本発明は本明細書において記載されたさまざまな実施形態の一部又は全てのいかなる可能な組み合わせも包含する。本願中の任意の部分に言及されているか、又は任意の引用特許中の、全ての特許、特許出願、及び他の引用された資料は、引用により、ここにその全体が本願に組み込まれる。
【0044】
上記の開示は、説明的であって包括的であることが意図されていない。この説明は、当業者に多くの変化及び代替手段を示唆するであろう。全てのこれらの代替手段及び変化は、原文における用語「comprising:含んでいる」が「including,but not limited to:含んでいるが〜に限定されない」を意味している、請求項の範囲内に包含されることが意図されている。当技術分野に通暁した者には、本明細書に記載された具体的な実施形態の他の等価物を認知することが可能であり、そのような等価物も請求項により包含されることが意図される。
【0045】
このことは、本発明の好適かつ代替的な実施形態の説明を完成する。当業者は本明細書に記載された具体的な実施形態についての他の等価物を認知し得るが、それらの等価物は、本明細書に添付される特許請求の範囲に包含されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増大された充填剤含有量を有する紙の製造方法であって:充填剤粒子、少なくとも1つの強度混和剤、及びセルロース繊維ストックの混合物を提供する工程、前記充填剤粒子をマット化剤の組成物で処理する工程、前記充填剤粒子をセルロース繊維ストックと混合する工程、前記混合物を少なくとも1つの前記強度混和剤で処理する工程、及び紙マットを前記混合物より製造する工程を含み、少なくとも10%の前記充填剤粒子は沈降炭酸カルシウムであり、及び少なくとも10%の前記充填剤粒子は粉末化炭酸カルシウムであり、前記セルロース繊維ストックが複数のセルロース繊維及び水を含み、並びに前記マット化剤の組成物が紙マット中の強度混和剤の性能を増進する方法。
【請求項2】
前記紙マットが、前記混合物より一部分の水を除去することにより形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭酸カルシウムの少なくとも一部分が、非分散炭酸カルシウム、炭酸カルシウム分散スラリー、チョーク、及びこれらの任意の組み合わせよりなるリストから選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炭酸カルシウムの少なくとも一部分が、分散スラリー形態の炭酸カルシウムであり、この分散スラリー炭酸カルシウムが、ポリアクリル酸重合体分散剤、ポリリン酸ナトリウム分散剤、カオリン粘土スラリー、及びこれらの任意の組み合わせから選ばれる少なくとも1つの品目を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記充填剤粒子混合物が、50%の粉末化炭酸カルシウム及び50%の沈降炭酸カルシウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記マット化剤の組成物が凝固剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記マット化剤の組成物が、無機凝固剤、有機凝固剤、縮合重合凝固剤、及びこれらの任意の組み合わせよりなるリストから選ばれる凝固剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記マット化剤の組成物が、200〜1,000,000の範囲の分子量を有する凝固剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記マット化剤の組成物が、ミョウバン、アルミン酸ナトリウム、ポリ塩化アルミニウム、アルミニウムクロロヒドロキシド、クロロヒドロキシアルミニウム、ポリクロロヒドロキシアルミニウム、硫酸化ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン(EPI−DMA)、EPI−DMAアンモニア架橋重合体、二塩化エチレン及びアンモニアの重合体、二塩化エチレン重合体、ジメチルアミン重合体、多官能性ジエチレントリアミンの縮合重合体、多官能性テトラエチレンペンタミンの縮合重合体、多官能性ヘキサメチレンジアミン縮合重合体、多官能性二塩化エチレンの縮合重合体、メラミン重合体、ホルムアルデヒド樹脂重合体、カチオン性に荷電したビニル付加重合体、及びこれらの任意の組み合わせよりなるリストから選ばれる凝固剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記マット化剤の組成物が、AcAm/DADMAC共重合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記強度混和剤がグリオキシル化されたアクリルアミド/DADMAC共重合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記強度混和剤の前記紙マットの固体成分に対する比率が、1トンの紙マット当たり0.3〜5kgの強度混和剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記GCC粒子の少なくとも一部分が前記マット化剤の組成物により処理されている、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記PCC粒子が前記マット化剤の組成物により全く処理されていない、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記強度混和剤がカチオン性でんぷんである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記紙マットが固体部分を有し、及び前記紙マット中の前記充填剤粒子が、前記紙マット中の全体の固体成分の質量の50%を超える、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記強度混和剤及び前記マット化剤の組成物が同じ電荷を担う、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記充填剤粒子の混合物が、有機顔料、粘土、タルク、二酸化チタン、アルミナ三水和物、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、及びこれらの任意の組み合わせよりなるリストから選ばれる1品目を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
製紙プロセスにおいて使用されるマット化剤の組成物であって、セルロース、少なくとも10%のPCC及び10%のGCCを有する充填剤粒子の混合物、強度混和剤、及び前記強度混和剤が前記充填剤粒子に付着することを防止するために構築及び配置された、少なくとも充填剤粒子の一部分を取り巻く被覆を含む組成物。
【請求項20】
強度混和剤及び充填剤粒子が混合されたセルロース繊維同士間の相互作用を増大させる方法であって:マット化剤の組成物により充填剤粒子を前処理する工程、前処理された充填剤粒子をセルロース繊維と混合する工程、及びこの混合物を少なくとも1つの強度混和剤で処理する工程を含み、前記充填剤粒子が、沈降炭酸カルシウム、粉末化された炭酸カルシウム、及びこれらの任意の組み合わせよりなるリストから選ばれ、並びに前記マット化剤の組成物が、前記強度混和剤が前期充填剤粒子に付着することを防止する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−510004(P2012−510004A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537737(P2011−537737)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/065894
【国際公開番号】WO2010/062943
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】