説明

製鉄用焼結原料の造粒処理方法

【課題】製銑工程における高炉装入用原料となる焼結鉱の製造において粉鉄鉱石等の製鉄用焼結原料の造粒に有効であり、製鉄用焼結原料の造粒性が著しく向上した場合においても、粉コークス等の燃料に鉄鉱石微粉を付着させることなく、粉コークスへの着火性及び燃焼性を高く維持したまま充分な焼結鉱の生産性が実現でき、なおかつ排ガス中への油脂分の排出量も低減可能な製鉄用焼結原料の造粒処理方法を提供する。
【解決手段】製鉄用焼結原料を粉コークス及び/又は無煙炭の存在下で造粒処理する方法であって、上記製鉄用焼結原料の造粒処理方法は、粉コークス及び/又は無煙炭を含む燃料を疎水性物質の水系エマルションで疎水処理した後、上記疎水処理後の燃料を、残りの製鉄用焼結原料の一部又は全部と共に造粒処理する工程を含む製鉄用焼結原料の造粒処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄用焼結原料の造粒処理方法に関する。より詳しくは、製銑工程における高炉装入用原料となる焼結鉱の製造において、粉鉄鉱石等を造粒するために好適に適用可能な製鉄用焼結原料の造粒処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製銑工程は、一般に、鉄鉱石からなる焼結鉱、塊鉱石、ペレットをコークスと共に高炉へ装入することにより行われている。この焼結鉱は、鉄鉱石、副原料、燃料等を含む焼結原料を事前処理して、焼結機に特定の高さに充填し焼結部ベッドを形成した後、表層に点火して焼成することにより製造される。焼結機としては、通常では下方吸引式が採用されており、焼結原料の下方から吸引することによって焼結に必要な空気を流通させると共に、焼結原料の上方から下方へ向かって燃料を燃焼させることにより、焼結原料を焼結するようになっている。このため、焼結原料が微粉を多く含んでいると、見詰まりを起こす等して通気性が低下し、燃料である粉コークスの燃焼速度が遅くなるので、焼結鉱の生産効率が低下することとなる。
【0003】
焼結原料の微粉影響を抑制する手段として、高分子バインダーのような鉄鉱石造粒用バインダーを使用する方法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかしながら、これらの造粒用バインダーを用いた処理においては、燃料である粉コークスや無煙炭の表面にも鉄鉱石微粉が付着造粒し、これらの燃料の燃焼性が充分とはならないことがある。
そこで、このような燃料への鉄鉱石微粉の付着を防止する対策手段として、粉コークスや無煙炭を予め疎水性物質で処理する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。この方法は、燃料粒子の表面に流動パラフィン等の疎水性物質を事前に付着させておくことにより、その後の焼結原料の造粒工程において、水分を有する鉄鉱石微粉が付着しにくい状態とするものであり、粉コークスや無煙炭の燃焼性の改善に有効な技術となっている。しかしながら、焼結原料の造粒処理に更に好適に適用するための工夫の余地があった。
【特許文献1】特開昭59−50129号公報
【特許文献2】特許第3703769号公報
【特許文献3】特開2005−154823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、製銑工程における高炉装入用原料となる焼結鉱の製造において粉鉄鉱石等の製鉄用焼結原料の造粒に有効であり、製鉄用焼結原料の造粒性が著しく向上した場合においても、粉コークス等の燃料に鉄鉱石微粉を付着させることなく、粉コークスへの着火性及び燃焼性を高く維持したまま充分な焼結鉱の生産性が実現でき、なおかつ排ガス中への油脂分の排出量も低減可能な製鉄用焼結原料の造粒処理方法を提供することを目的とするものである。また併せて、このような造粒処理に好適に使用することができる、製鉄用粉コークス及び/又は無煙炭処理剤を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、製鉄用焼結原料を造粒処理する方法について種々検討するうち、製鉄用焼結原料を造粒処理する際に粉コークスや無煙炭等の燃料も造粒され、それらの表面に鉄鉱石微粉が付着してしまうことによって、着火性や燃焼性が充分とはならないことにまず着目し、燃料である粉コークス及び無煙炭の一部又は全部を疎水性物質で処理した後に、該燃料を鉄鉱石に添加して造粒すると、粉コークスや無煙炭の表面への鉱石付着が著しく低下する現象を見いだした。しかし、このような処理においては、粉コークスや無煙炭の燃焼性は改善されるものの、使用した疎水性物質は焼結機内で燃焼されず、焼結機排ガス中へ排出されることがあることに着目した。特に疎水性物質として流動パラフィン等の油脂分を使用した場合、排ガス中に当該油脂分が増加すると、排ガス処理用の電気集塵機内部に油脂分が蓄積することがあることから、充分に安全かつ円滑に作業を進めるために、通常の焼結機においては、油脂分の入量管理を行っており、疎水性物質の処理量は極力低減する必要がある。
【0006】
そこで本発明者らは、排ガス中への油脂分の排出量を低減しながらも疎水性物質を粉コークスや無煙炭等の燃料表面に効果的に付着させる手段として、疎水性物質をエマルション化して粉コークスや無煙炭を含む燃料と混練し、その後に当該燃料を乾燥処理する等、粉コークスや無煙炭を含む燃料を疎水処理する方法を見いだした。この方法により、燃料表面に疎水性物質を薄く均一に付着させることが可能となるため、従来の燃料と疎水性物質とを直接混練する方法に比べ、疎水性物質の使用量を約1/10に低減できることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。また、疎水性物質として特定の化合物を使用し、これをエマルション化したものを当該疎水処理に使用すると、焼結原料の造粒処理時に燃料表面への鉱石微粉の付着が更に効果的に抑制されることを見いだし、このような疎水性物質の水系エマルションにより構成される処理剤が、粉コークスや無煙炭を含む燃料を疎水処理するためのものとして特に有用なものであることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、製鉄用焼結原料を粉コークス及び/又は無煙炭の存在下で造粒処理する方法であって、上記製鉄用焼結原料の造粒処理方法は、粉コークス及び/又は無煙炭を含む燃料を疎水性物質の水系エマルションで疎水処理した後、上記疎水処理後の燃料を、残りの製鉄用焼結原料の一部又は全部と共に造粒処理する工程を含む製鉄用焼結原料の造粒処理方法である。
【0008】
本発明はまた、製鉄用粉コークス及び/又は無煙炭を含む燃料を疎水処理するための処理剤であって、上記処理剤は、疎水性物質の水系エマルションにより構成され、上記疎水性物質は、炭素数5以上のパラフィン鎖を有する化合物、ナフテン環を有する化合物及びシリコーンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である製鉄用粉コークス及び/又は無煙炭処理剤でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の造粒処理方法は、製鉄用焼結原料を造粒処理するものであるが、該造粒処理される製鉄用焼結原料とは、粉鉄鉱石を含むものであり、通常では、更に、その他の鉄鉱石、副原料及び燃料を含むことになる。なお、更に、通常の焼結原料に含まれる他の成分を含有するものであってもよい。
上記粉鉄鉱石とは、そのままでは高炉原料として使用できないおおよそ10mm以下の粒度が主となる鉄鉱石であり、その他の鉄鉱石とは、当該粉鉄鉱石以外の鉄鉱石であって、通常の焼結原料で使用される鉄鉱石であればよい。
上記副原料とは、鉄鉱石や燃料等と共に焼結されるものであり、石灰石、ドロマイト、蛇紋岩、珪石、スラグ、ダスト、返し鉱等である。ダストとは、製鉄所において製鉄のプロセスにおける各工程で発生する微粒子廃棄物の総称であり、例えば、焼結プロセスで発生する焼結ダスト、高炉プロセスで発生する高炉ダスト、転炉プロセスで発生する転炉ダストや転炉グラファイト、冷延工場で発生する酸洗ダスト、その他、コークス消化沈殿粉、圧延戻り水ダスト、ラグーンダスト等が挙げられる。また、製鉄以外のプロセスで発生するダストを含むものであってもよく、具体的には、火力発電所で発生するダスト、例えば、フライアッシュや重油灰、製銅プロセスで発生するカラミ鉄精鉱や銅スラグ等のスラッジ、アルミナ製造工程で排出される赤泥、その他、排煙脱硫石膏やアスベスト粉塵等であってもよい。
【0010】
本発明の造粒処理方法では、粉コークス及び/又は無煙炭を含む燃料を疎水性物質の水系エマルションで疎水処理した後、該疎水処理後の燃料を、残りの製鉄用焼結原料の一部又は全部と共に造粒処理することになる。
すなわち、造粒処理に使用される燃料としては、少なくとも疎水処理に供された燃料(疎水処理後の燃料)を含むものであればよく、疎水処理後に新たに燃料を添加してもよい。中でも、造粒処理に使用される燃料の総量100質量%に対し、疎水処理に供された燃料が50質量%以上であることが好適である。より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%である。なお、疎水処理後に新たに添加してもよい燃料としては、粉コークスや無煙炭の他、後述するその他の燃料成分等が挙げられる。
【0011】
上記疎水処理に供される燃料としては、少なくとも粉コークス又は無煙炭のいずれかを含むものであればよいが、その他の燃料成分として、例えば、製鉄所内及び/又は製鉄所外から発生する燃焼可能な炭素含有量が5質量%以上のダスト、石炭や木炭の微粉等を含むものであってもよい。燃焼可能な炭素含有量が5質量%以上のダストに関しては、炭素含有量が様々であるため、本発明において燃料として質量を計算する場合、燃焼可能な炭素換算の質量を使用するものとする。燃焼可能な炭素換算の質量は、例えば、後述する実施例の「擬似粒子中の炭素含有量の定量化」方法において、擬似粒子の1mm以下の篩い分け部分の代わりに、所望のダストを当てはめることにより測定できる。
なお、本発明でいう燃焼可能な炭素換算とは、全炭素含有量から、石灰石に含まれる炭素等の燃料として使用できない炭素含有量を差し引いた炭素含有量を意味する。したがって、燃焼可能な炭素含有量が5質量%以上のダストに関して、本発明の疎水性物質で処理した場合、燃料としてその質量を計算するときは、該ダストに含まれる燃焼可能な炭素換算の質量と使用した疎水性物質の質量との合計を使用することとなる。
【0012】
本発明においては、上記疎水処理に供される燃料として、その総量100質量%中に、粉コークス及び/又は無煙炭を50質量%以上含むものを用いることが好適である。より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。なお、ここでいう「粉コークス及び/又は無煙炭」の質量割合は、粉コークス及び無煙炭の両方を含む場合には、その合計質量としての質量割合を意味し、また、粉コークス又は無煙炭のいずれかを含む場合には、その粉コークス又は無煙炭単独の量としての質量割合を意味する。
【0013】
上記疎水処理工程において、使用される水系エマルションとは、水中油型エマルションをいうが、水の一部が水溶性有機溶媒等の水に可溶な物質で置換されているエマルションを含むものとする。安全面及び性能面から、水溶性有機溶媒は極力低減することが好ましく、全く含まないことが最も好ましい。
上記疎水性物質の水系エマルション(疎水性物質と水との水系エマルション)としては、疎水性物質をエマルション化したものであればよい。その製造方法としても特に限定されず、水と、疎水性物質と、必要に応じて他成分とを、適当なせん断力を付与して混合する方法が挙げられる。好ましくは、水と疎水性物質とを、界面活性剤の存在下で、適当なせん断力の下で混合する方法である。
【0014】
上記製造方法で使用される混合装置としては、高速回転する羽根を有する装置を用いることが好ましく、ホモミキサー、TKホモミキサー(機種名;特殊機化工業社製、撹拌羽根の形状はタービン型)、高速ディスパー、ホモディスパー、TKラボディスパー(機種名;特殊機化工業社製、撹拌羽根の形状はタービン型)、エバラマイルザー(機種名;荏原製作所社製、撹拌羽根の形状はスット型タービン)、撹拌駆動部を有するラインミキサー、BIO MIXER(機種名;日本精機製作所社製)等が好適である。
【0015】
上記製造方法において、水と疎水性物質との混合は、一段階又は二段階以上で行うことができ、二段階以上で行う場合には、同種の及び/又は異種の二種以上の上記混合装置を使用することができる。
上記適当なせん断力を付与する装置としては、上述した高速回転する羽根を有する装置が挙げられ、その高速回転する羽根の先端周速度を2〜100m/sとすることが好適である。より好ましくは5〜30m/sである。
なお、先端周速度は、下記式;
先端周速度(m/s)=羽根直径(m)×π×撹拌回転数(rpm)/60
により求めることができる。
【0016】
上記界面活性剤としては、分散する疎水性物質の種類により適宜選択すればよいが、好適な界面活性剤として、ノニオン系界面活性剤を必須成分とするものであることが好ましい。
上記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンソルビタンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル等のソルビタンエステル系化合物;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル;ポリオキシエチレンアルキルエステル;ポリグリセリンアルキルエステル;脂肪酸エステル;脂肪酸石鹸;アルキルアミンエチレンオキサイド付加体;コレステロール等のステロール類が好適であり、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
これらの中でも、ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド付加モル数20以上)アルキル(総炭素数15以上)エーテルや、ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド付加モル数20以上)ソルビタンアルキル(総炭素数15以上)エステルを必須成分としてなるものであることが好ましい。このような必須成分において、エチレンオキサイドの付加モル数は20以上が適当であるが、好ましくは100以下、より好ましくは50以下であり、また、アルキル基の総炭素数は15以上が適当であるが、好ましくは40以下、より好ましくは30以下である。なお、ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド付加モル数20以上)ソルビタンアルキル(総炭素数15以上)エステルの場合、モノアルキルエステル体がより好ましい。
【0017】
上記界面活性剤としてはまた、両性界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン−アニオン系界面活性剤及びカチオン系界面活性剤を適宜使用してもよい。これら界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸及びその塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル塩;テトラデセンスルホン酸ナトリウム等のα−オレフィンスルホン酸塩;スルホコハク酸塩;エーテルスルホン酸塩;エーテルカルボン酸及びその塩;ラウリン酸アミドプロピルベタイン等のベタイン類;ジアルキルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム等が好適である。
【0018】
更に上記界面活性剤と共に、又は、上記界面活性剤に代えて、分散剤として、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルスルホン、マレイン酸共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリジアリルアミン、ポリエチレンイミン、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、可溶性デンプン、デキストリン、アラビアゴム、キトサン、寒天、ゼラチン、大豆カゼイン、ポリビニルスルホン酸、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体等を用いることもできる。
【0019】
上記界面活性剤の使用量としては、疎水性物質100質量部に対して、0.1質量部以上、20質量部以下とすることが好ましい。20質量部を超えると、燃料への鉄鉱石微粉の付着抑制効果が充分とはならないことがある。一方、0.1質量部未満であれば、エマルション化が困難となったり、得られたエマルションの安定性が充分とはならないことがあり、また、燃料への鉄鉱石微粉の付着抑制効果が充分なものとはならないこともある。より好ましくは、0.5質量部以上、10質量部以下であり、更に好ましくは1質量部以上、5質量部以下である。
【0020】
上記疎水性物質の水系エマルションを得るために使用される疎水性物質としては、粉コークス及び/又は無煙炭と比べて疎水性の強い物質であることが好適であるが、粉コークス及び/又は無煙炭よりも疎水性の低い物質であっても、造粒に寄与できるものであれば、好適に使用することができる。
上記疎水性物質としては、中でも、炭素数5以上のパラフィン鎖を有する化合物、ナフテン環を有する化合物及びシリコーンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含むものであることが好ましい。特に、上記疎水性物質が、炭素数5以上のパラフィン鎖を有する化合物、ナフテン環を有する化合物及びシリコーンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である形態は、本発明の好適な形態の1つである。より好ましくは、炭素数5以上のパラフィン鎖を有する化合物を含むことである。
【0021】
上記炭素数5以上のパラフィン鎖を有する化合物としては、パラフィン類、イソパラフィン類が好適であり、例えば、n−デカン、n−ドデカン、イソドデカン、n−ヘキサデカン等及びこれらの構造を有する化合物が好ましい。なお、炭素数5以上のパラフィン鎖を有しておれば、他の官能基、例えば、ビニル基、水酸基、カルボン酸エステル基、エーテル基、アミド基、イミド基、スルホン酸エステル基、アミノ基、アルデヒド基、イソシアネート基等を含んでいてもよい。例えば、オクタデセン、オクタデシルアルコール、オクタデシルイソシアネート、オクタデシルアルデヒド、オクタデシルビニルエーテル、オクタデシルメルカプタン等が好適である。
上記炭素数5以上のパラフィン鎖を有する化合物としてはまた、安全面から、また、粉コークスの内装を抑制し、着火性及び燃焼性を改善する性能面から、引火点が50℃以上である化合物であることが好ましい。引火点としては、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上である。なお、引火点が好ましい範囲未満にあっても、本発明の効果を充分に発揮することができるものであれば好適に用いることができる。
【0022】
上記ナフテン環を有する化合物としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等及びこれらの構造を有する化合物が好ましい。また、安全性の面から、引火点が50℃以上である化合物が好適である。引火点としては、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上である。なお、引火点が好ましい範囲未満にあっても、本発明の効果を充分に発揮することができるものであれば好適に用いることができる。
【0023】
上記パラフィン鎖を有する化合物及びナフテン環を有する化合物は、それぞれ単独で用いても構わないが、数種類の混合物として使用することが経済的に好ましい。例えば、パラフィン油、流動パラフィン、パラフィンロウ、アスファルト、重油、石油系潤滑油として、例えば、スピンドル油、冷凍機油、コンプレッサー油、ダイナモ油、タービン油、マシン油、エンジン油、シリンダー油、マリンエンジン油、ギアー油、航空潤滑油;動物油脂、植物油等が好適である。また、食品工業、外食産業、一般家庭等で排出された食用油の廃油、及び、これらを不純物除去又は精製する等して得られたリサイクル油が好ましい。リサイクル油としては、大豆油系、菜種油系、コーン油系、パーム油系、牛脂のリサイクル油の他、これらの混合物が挙げられる。また、粉コークスの内装を抑制し、着火性及び燃焼性を改善する性能面から、流動パラフィン、引火点が65℃以上の原油粒分、上記石油系潤滑油、動物油脂、植物油、食用油の廃油、上記リサイクル油が好ましく、流動パラフィン、食用油の廃油、上記リサイクル油が最も好ましい。
【0024】
上記シリコーンとしては、オルガノポリシロキサン構造を有する化合物であれは特に限定されるものではないが、コークス処理の効率がよいことから、シリコーン油と分類される化合物が好適である。なお、シリコーン油とは、比較的低重合度の直鎖状ジメチルポリシロキサンが主体となった種々の分子量のものの混合物である。
【0025】
上記疎水性物質の水系エマルションにおいて、疎水性物質と水との使用割合としては、疎水性物質と水との合計量100質量%に対して、疎水性物質が20質量%以上、80質量%以下であることが好ましい。80質量%を超えると、エマルション化が困難となったり、得られたエマルションの安定性が充分とはならないことがある。一方、20質量%未満であれば、エマルションの製造効率が充分とはならなかったり、燃料への鉄鉱石微粉の付着抑制効果を高めることができないことがある。より好ましくは、30質量%以上、70質量%以下であり、更に好ましくは、40質量%以上、60質量%以下である。
本発明で使用する疎水性物質の水系エマルションとしては、疎水性物質と水との使用割合が上記範囲内になるように、これらを適当なせん断力の下で混合する方法により製造することが好適である。なお、上記疎水性物質の水系エマルションは、粉コークスや無煙炭と混合する前に、適当な疎水性物質濃度となるように濃縮又は希釈して使用してもよい。
【0026】
上記疎水性物質の使用量としては、燃料の総量100質量部に対し、0.05〜0.5質量部であることが好適である。0.05質量部未満であると、燃料の造粒性を選択的に低下させ、燃料への着火性及び燃焼性を改善するという効果が得られにくく、また、0.5質量部を超えると、排ガス中への油脂分の排出量が過多となり、排ガス処理用の電気集塵機の設備トラブルを引き起こす懸念が増大する。より好ましくは、0.1〜0.4質量部である。
なお、ここでいう「燃料の総量」とは、本発明において用いられる燃料の全質量を意味する。すなわち、上記疎水処理工程から上記造粒処理工程を通して用いられる燃料の全質量(乾燥基準の質量)を意味し、具体的には、疎水性物質と同時添加される燃料の質量と、該疎水性物質が添加される前に配合(添加)される燃料の質量と、該疎水性物質が添加された後で添加される燃料の質量とを全てあわせた乾燥基準の質量である。
【0027】
このような疎水性物質の水系エマルションにより構成される、製鉄用粉コークス及び/又は無煙炭を疎水処理するための処理剤(製鉄用粉コークス及び/又は無煙炭処理剤;以下では、「製鉄用粉コークス処理剤」ともいう。)もまた、本発明の1つである。
上記製鉄用粉コークス処理剤は、製鉄用焼結原料を焼結する際に使用する燃料である粉コークスや無煙炭等を疎水処理するため等に用いられる。当該処理を行うことにより、焼結原料の造粒処理時に粉コークスや無煙炭の表面に鉱石微粉等が付着することを抑制することが可能となるため、燃料の燃焼効率が向上し、所望する状態で焼結を行うことが可能になる。すなわち、焼結時の熱バランスの制御が容易となり、焼結層における局所的な焼結時の熱過多、熱不足が抑制され、生産性が向上し、得られた焼結鉱強度が向上することになる。
【0028】
上記製鉄用粉コークス処理剤としては、上記製造方法により得られる疎水性物質の水系エマルションであることが好適である。このような製鉄用粉コークス処理剤は、水で希釈して使用することが好ましいが、そのままで又は濃縮して使用することも可能である。なお、疎水性物質の水系エマルションを構成する疎水性物質としては、炭素数5以上のパラフィン鎖を有する化合物、ナフテン環を有する化合物及びシリコーンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが適当である。
【0029】
上記製鉄用粉コークス処理剤としてはまた、界面活性剤を含有するものであることが好適であり、好ましい界面活性剤は上述の通りである。なお、上記製鉄用粉コークスの処理剤における疎水性物質と水との割合、疎水性物質と界面活性剤との割合は上述の通りである。
上記製鉄用粉コークス処理剤における疎水性物質と水と界面活性剤との合計量は、製鉄用粉コークス処理剤100質量%に対して、50質量%以上であることが好ましい。より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは100質量%である。
なお、上記製鉄用粉コークス処理剤は、通常の製鉄工程で使用する他原料を含んでもよい。
【0030】
上記疎水処理工程においては、粉コークス及び/又は無煙炭を含む燃料を、上記疎水性物質の水系エマルション(上記製鉄用粉コークス処理剤)で疎水処理することになる。ここでいう疎水処理とは、粉コークス及び/若しくは無煙炭を含む燃料の一部又は全部を疎水物質と接触させることを意味し、当該エマルション中の疎水性物質が、該燃料の表面に付着するように処理することが好適である。例えば、疎水性物質の水系エマルションを、粉コークス及び/又は無煙炭を含む燃料に添加して撹拌混合した後、これを乾燥処理させる工程であることがより好ましい。これにより、エマルション中の疎水性物質を粉コークス及び/又は無煙炭を含む燃料の表面に均等に薄く付着させることができる。以上の手順で、粉コークス及び/若しくは無煙炭を含む燃料の一部又は全部を疎水処理する。
なお、疎水性物質の水系エマルションで燃料を疎水処理するタイミングとしては、造粒開始前であればいつでも構わないが、焼結用粉コークスの粒度調整工程、例えば粉砕工程で添加する方法、運搬時にベルトコンベア上等で添加する方法が好ましい。
【0031】
上記疎水処理の好適な工程(添加・乾燥処理工程)において、撹拌方法(混合方法)としては、例えば、アイリッヒミキサー、レディゲミキサー、パグミル、ロッドミル、ボールミル、ローラーミル、ドラムミキサー、パンペレタイザー等で混合する方法が好適である。
また乾燥方法としては、ベルト式乾燥機、ロータリー式乾燥機、流動層式乾燥機、マイクロ波式乾燥機等、汎用的な工業用乾燥機で乾燥する方法が好適である。特に、ランニングコストと乾燥能力が高いという点では、流動層乾燥機や、ロータリー式乾燥機を使用する方法が最も好ましい。
上記燃料を乾燥する時期としては、疎水性物質の水系エマルションの添加処理が終わった後、残りの製鉄用焼結原料の一部又は全部と混合するまでの間に行うことが好適である。
【0032】
上記疎水処理工程においては、疎水性物質を粉コークス及び/又は無煙炭を含む燃料の表面に充分に付着させるために、疎水処理後の燃料100質量%中に水分が4質量%以下となるようにすることが好ましい。水分が4質量%を超えると、該燃料の表面への疎水性物質の付着性が弱くなるため、その後の焼結原料との造粒処理において、鉱石微粉の付着防止効果が充分に発揮されないことがある。このように、上記疎水処理が、疎水処理後の燃料100質量%中に、水分量が4質量%以下となるように行われる形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。より好ましくは、水分量が2質量%以下となる形態である。
なお、上記疎水処理工程が、上述した好適な形態(添加・乾燥処理工程)である場合には、乾燥後の燃料100質量%中に、水分が4質量%以下となるように乾燥することが好ましい。
【0033】
本発明の造粒処理方法においては次に、上記疎水処理後の燃料を、残りの製鉄用焼結原料の一部又は全部と共に造粒処理することになる。
ここで、疎水処理した上記燃料を残りの製鉄用焼結原料の一部又は全部と混合する時期としては、造粒処理を開始する前であってもよく、造粒処理の開始後から終了するまでの間であってもよい。上記燃料と残りの製鉄用焼結原料の一部又は全部とを混合するには、該残りの製鉄用焼結原料の一部又は全部に、上記燃料を添加等することにより行うことができる。また、製鉄用焼結原料中に上記燃料を一回で混合してもよく、複数回に分けて混合してもよい。
【0034】
上記燃料の使用量としては、原料の性状等により変動するが、製鉄用焼結原料100質量%に対し、1質量%以上であることが好ましく、また、10質量%以下であることが好ましい。1質量%未満であると、焼結原料層への着火を維持しにくくなるおそれがあり、10質量%を超えた場合、焼結ベッドにおいて、焼結時に熱量過多になり、融液が多くなることに起因して通気性が良好とはならないことがある。また、燃料のコストアップとなるおそれもある。より好ましくは、2質量%以上であり、また、6質量%以下である。
なお、ここでいう「燃料の使用量」とは、本発明の造粒処理方法において用いる全燃料の総量を意味し、上述したように、疎水性物質と同時添加される燃料の質量と、該疎水性物質が添加される前に配合(添加)される燃料の質量と、該疎水性物質が添加された後で添加される燃料の質量とを全てあわせた乾燥基準の質量である。なお、疎水性物質で疎水処理してなる燃料の質量には、疎水性物質の質量が含まれる。
【0035】
上記造粒処理工程としては、カルボキシル基、スルホン酸基及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する高分子化合物の存在下で行われることが好ましい。なお、カルボキシル基やスルホン酸基の塩とは、カルボキシル基やスルホン酸基における水素原子が金属原子等で置き換わった構造を有する基であり、塩の形態となった基を意味する。
上記高分子化合物の使用量としては、焼結原料の造粒性や、該高分子化合物の種類、使用する装置の種類等に応じて適宜設定すればよいが、製鉄用焼結原料100質量部に対して高分子化合物を0.001質量部以上とすることが好ましく、また、2質量部以下とすることが好ましい。0.001質量部未満であると、造粒性をより高めることができないことがあり、また、2質量部を超えると、製鉄用焼結原料に対する高分子化合物の添加量が多くなりすぎて製鉄用焼結原料の大きな固まりができ、焼結されにくくなることがある。より好ましくは、0.003質量部以上であり、また、1質量部以下である。
【0036】
上記造粒処理工程においてはまた、上記高分子化合物以外の造粒処理剤を、上記高分子化合物と併用又は上記高分子化合物に代えて用いてもよい。なお、造粒処理剤とは、製鉄用焼結原料を造粒する際に造粒性を向上させるために用いる化合物等を意味する。
上記高分子化合物以外の造粒処理剤としては、例えば、生石灰、ベントナイト、リグニン亜硫酸塩(パルプ廃液)、澱粉、砂糖、糖蜜、水ガラス、セメント、ゼラチン、コーンスターチ等を1種又は2種以上用いることができる。これら上記高分子化合物以外の造粒処理剤の使用量としては、製鉄用焼結原料100質量部に対して、0.05質量部以上とすることが好ましく、また、3質量部以下とすることが好ましい。
【0037】
上記高分子化合物及び/又はそれ以外の造粒処理剤を用いる形態としては特に限定されず、造粒処理の際に製鉄用焼結原料に一回で添加してもよいし、複数回に分けて添加してもよい。
上記造粒処理工程はまた、上述した燃料の疎水処理工程における混合方法と同じ装置を用いて行うことが好適である。
【0038】
本発明の製鉄用焼結原料の造粒処理方法においては、上記高分子化合物及び/又はそれ以外の造粒処理剤を用いて製鉄用焼結原料を充分に造粒処理する場合等に問題となり得る粉コークス粒子や無煙炭への鉱石微粉付着等の影響なく焼結できることとなる。すなわち例えば、焼結原料層への着火を充分に維持することが可能であり、例えば、造粒性としては、粒径0.25mm以下の造粒物(擬似粒子)のGI指数を80%以上とすることが焼結機の生産性が向上することから好ましい。より好ましくは、GI指数が85以上であり、更に好ましくは、90以上である。
上記GI指数とは、製鉄研究第288号(1976)9頁に開示されている評価方法の一つであり、核粒子の周りに付着する微粉粒子の割合を示すものである。なお、GI指数の測定は、造粒操作を行って得られた擬似粒子を80℃で1時間乾燥後、篩を用いて分級することにより、その粒度(擬似粒度)を求め、製鉄研究第288号(1976)9頁に記載の方法に準じて行い、下記の式により計算することができる。
GI指数={(造粒前の0.25mm以下の原料の比率−造粒後の0.25mm以下の原料の比率)/(造粒前の0.25mm以下の原料の比率)}×100
【0039】
また本発明において得られた造粒物である擬似粒子としては、1mm以下の擬似粒子の炭素含有量(粉コークス含有量)が、当該擬似粒子の総量100質量%中に、3質量%以上であることが好ましく、3.5質量%以上であることがより好ましい。
上記1mm以下の擬似粒子の炭素含有量は、以下の方法により測定することが好ましい。まず、擬似粒子の1mm以下の篩い分け部分を混合し、ミル等の粉砕機で全量粉砕する。容器に、粉砕後の擬似粒子約1gを採取し、正確に質量を測定する(Agとする)。蒸留水10gを添加して軽くなじませ、石灰石に含まれる炭素分を二酸化炭素として系外に除去するために、リン酸1.2gから1.3gを添加して、発砲が見られる間、容器を手で振とうした後、135℃に設定した減圧乾燥機にて充分乾燥する。容器から内容物を取り出して乳鉢に移し、粉砕し、130℃のオーブンで乾燥する。この乾燥物の質量を測定する(Bgとする)。元素分析にて該乾燥物のC(炭素)量を定量する(C%とする)。1mm以下の擬似粒子に含有する炭素量(粉コークス量)を以下のように算出する。
1mm以下の擬似粒子に含有する粉コークス量(%)=B(g)×C(%)/A(g)
本発明でいう炭素含有量とは、含有する全炭素量から、石灰石に含まれる炭素等の燃料として使用できない(燃焼しない)炭素を差し引いた炭素含有量である。
【0040】
本発明の製鉄用焼結原料の造粒処理方法により得られる造粒物は、焼結機により焼結処理されて焼結鉱とすることができるものである。このような本発明の製鉄用焼結原料の造粒処理方法により得られる造粒物から製造されてなる焼結鉱は、本発明の好ましい実施形態の一つである。
上記焼結鉱は、本発明の製鉄用焼結原料の造粒処理方法において得られる造粒物、すなわち製鉄用焼結原料の造粒性を向上すると同時に、焼結原料層への着火を維持して充分な焼結鉱の生産性が実現できる造粒物から製造されてなる有用なものである。
【0041】
本発明における焼結鉱製造の生産性としては、焼結鉱の成品歩留、生産率により計測することが可能であり、例えば、成品歩留は、焼結鍋試験において、焼結後の焼結鉱(シンターケーキ)50kgを2mの高さから鉄板上に5回落下させたときの、粒径5mm以上の粒度を有する粒子の割合を測定することにより評価することができる。また、生産性は、以下の式により算出することができる。
生産率(t/day/m)=成品歩留まり評価後の粒径5mm以上の粒度を有する粒子の総質量(t)/焼結時間(day)/焼結機(鍋)の表面積(m
【0042】
以下では、本発明におけるカルボキシル基、スルホン酸基及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する高分子化合物について更に説明する。
上記高分子化合物としては、カルボキシル基及び/又はその塩を有する高分子化合物、(2)スルホン酸基及び/又はその塩を有する高分子化合物、カルボキシル基及び/又はその塩、並びに、スルホン酸基及び/又はその塩を有する高分子化合物のいずれか1種又は2種以上が挙げられる。このような高分子化合物としては、カルボキシル基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体及びこれらの塩を有する単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体を必須とする単量体成分で重合することにより得ることができるものが好ましい。なお、これら単量体は、それぞれ1種又は2種以上用いることができる。
【0043】
上記高分子化合物の好適な形態としては、全単量体成分100モル%に対し、(1)カルボキシル基を有する単量体及び/又はその塩を有する単量体、並びに、(2)スルホン酸基を有する単量体及び/又はその塩を有する単量体、の少なくとも一方を10モル%以上含有する単量体成分を重合してなるものである。(1)及び/又は(2)の単量体の含有量が10モル%未満であると、造粒処理工程において造粒効果をより充分に得られないことがある。より好ましくは30モル%以上であり、更に好ましくは50モル%以上である。
上記高分子化合物として、特に好適な形態は、カルボキシル基を有する単量体及び/又はその塩を有する単量体を必須とする単量体成分を重合してなるものである。すなわち上記高分子化合物は、全単量体成分100モル%に対し、カルボキシル基を有する単量体及び/又はその塩を有する単量体を10モル%以上含有する単量体成分を重合してなるものであることが特に好ましい。より好ましくは30モル%以上であり、更に好ましくは50モル%以上である。
【0044】
上記(1)のカルボキシル基を有する単量体やその塩を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、アクリルアミドグリコール酸等のカルボキシル基を有する単量体やその塩等が好適である。中でも、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩がより好ましい。すなわち本発明におけるカルボキシル基及び/又はその塩を有する高分子化合物としては、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩を主成分とする単量体成分を重合してなるであることが好ましい。より好ましくは、アクリル酸及び/又はその塩である。また、塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミシ塩が好適である。これらの中でも、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0045】
上記(2)のスルホン酸基を有する単量体やその塩を有する単量体としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有する単量体やその塩等が好適である。
【0046】
上記単量体成分には、カルボキシル基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体やこれらの塩を有する単量体の他に、これらの単量体と共重合可能な他の共重合性単量体の1種又は2種以上を含んでいてもよい。
上記他の共重合性単量体としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスフェート等の酸性リン酸エステル基を有する単量体;ビニルフェノール等の石炭酸系単量体等の酸基を有する単量体及びその塩等が好適である。
【0047】
上記他の共重合性単量体としてはまた、ポリエチレングリコールモノメタアクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコールモノアクリル酸エステル等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル;3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを付加してなるポリアルキレングリコールモノアルケニルエーテル単量体;アリルアルコールにエチレンオキサイドを付加してなるポリエチレングリコールモノエテニルエーテル単量体;無水マレイン酸にポリエチレングリコールを付加させたマレイン酸ポリエチレングリコールハーフエステル等のポリアルキレングリコール鎖を有する単量体等が好適である。これらのポリアルキレングリコール鎖を有する単量体の中でも、エチレンオキサイド換算で5モル以上、100モル以下の鎖長のポリアルキレングリコール鎖を有する単量体が、入手が容易であり、また、擬似粒化性の向上、重合性の点から好ましい。より好ましくは、エチレンオキサイド換算で10モル以上、また、100モル以下の鎖長のポリアルキレングリコール鎖を有する単量体である。
【0048】
上記他の共重合性単量体としては、上述したものの他にも、下記の化合物を用いることができる。
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸(N,N−ジメチルアミノエチル)、(メタ)アクリル酸(N,N−ジエチルアミノエチル)、(メタ)アクリル酸アミノエチル等の炭素数1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;酢酸ビニル;(メタ)アクリロニトリル;N−ビニル−2−ピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の塩基含有単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の架橋性を有する(メタ)アクリルアミド系単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン等の加水分解性を有する基がケイ素原子に直結しているシラン系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルエーテル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基を有する単量体;2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルアジリジン等のアジリジン基を有する単量体;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン基を有する単量体;(メタ)アクリル酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールとのエステル化物等の分子内に不飽和基を複数有する多官能(メタ)アクリル酸エステル;メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の分子内に不飽和基を複数有する多官能(メタ)アクリルアミド;ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート等の分子内に不飽和基を複数有する多官能アリル化合物;アリル(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン。
【0049】
上記単量体を(共)重合する際には、分子量の調節を目的として、連鎖移動剤を用いることもできる。連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプト基を有する化合物;四塩化炭素;イソプロピルアルコール;トルエン;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の連鎖移動係数の高い化合物等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の使用量としては、単量体1モルに対し、0.005〜0.15モルとすることが好ましい。
【0050】
上記単量体を(共)重合する方法としては、通常の重合法、例えば、水中油型乳化重合法、油中水型乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈澱重合法、溶液重合法、水溶液重合法、塊状重合法等を採用することができる。これらの中でも、重合コスト(生産コスト)の低減及び安全性等の観点から、水溶液重合法が好ましい。
【0051】
上記重合に用いられる重合開始剤としては、熱又は酸化還元反応によって分解し、ラジカル分子を発生させる化合物であればよい。また、水溶液重合法により重合を行う場合には、水溶性を備えた重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;2,2′−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4′−アゾビス−(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過酸化水素等の熱分解性開始剤;過酸化水素及びアスコルビン酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド及びロンガリット、過硫酸カリウム及び金属塩、過硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の組み合わせからなるレドックス系重合開始剤が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量としては、単量体の組成や重合条件等に応じて適宜設定すればよい。
【0052】
上記重合における反応温度や反応時間等の重合条件としては、単量体の組成や、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、反応温度としては、0〜150℃とすることが好ましく、40〜105℃とすることがより好ましい。また、反応時間としては、3〜15時間程度が好適である。水溶液重合法により重合を行う場合における単量体の反応系への供給方法としては、一括添加法、分割添加法、成分滴下法、パワーフィード法、多段滴下法により行うことができる。また、重合は常圧下、減圧下、加圧下の何れで行ってもよい。
【0053】
上記高分子化合物の製造において、水溶液重合法を採用した場合に得られる高分子化合物水溶液中に含まれる、高分子化合物を含む不揮発分の濃度としては、70質量%以下であることが好ましい。70質量%を超えると、粘度が高くなり過ぎるおそれがある。
【0054】
上記スルホン酸基及び/又はその塩を有する高分子化合物としては、β−ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、芳香族アミノスルホン酸ポリマー等も好適に使用可能である。
【0055】
本発明におけるカルボキシル基、スルホン酸基及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する高分子化合物としては、重量平均分子量が1000〜100万であることが好ましい。重量平均分子量が1000未満であると、分散剤としての作用をより充分に向上して造粒性を高めることができないおそれがあり、100万を超えると、高分子化合物の粘度が高くなり過ぎて分散剤としての作用が充分に発揮されるように添加しにくいものとなるおそれがある。より好ましくは、3000以上であり、また、10万以下である。
なお、本明細書中、重量平均分子量は、以下の測定条件で測定される値である。
【0056】
(重量平均分子量測定条件)
カラム:水系GPCカラム「GF−7MHQ」(商品名、昭和電工社製)1本
キャリア液:リン酸水素二ナトリウム十二水和物34.5g及びリン酸二水素ナトリウム二水和物46.2gに超純水を加えて全量を5000gとする。
水溶液流速:0.5ml/min
ポンプ:「L−7110」(商品名、日立製作所社製)
検出器:紫外線(UV)検出器「L−7400」(商品名、日立製作所社製)、波長214nm
分子量標準サンプル:ポリアクリル酸ナトリウム(創和科学社より入手可能な重量平均分子量1300〜1360000のポリアクリル酸ナトリウム)
分析サンプルは、高分子化合物が固形分で0.1質量%となるように上記キャリア液で希釈することにより調整する。
【0057】
但し、上記測定条件で測定ができない高分子化合物については、以下の測定条件を適用する。
機種:Waters LCM1
キャリア液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合液に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、更に30%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0に調節した水溶液
流速:0.8ml/min
カラム:水系GPCカラム「TSKgel GuardColumnSWXL+G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL」(東ソー社製)
カラム温度:35℃
検出器:Waters 410 示差屈折検出器
分子量標準サンプル:ポリエチレングリコール
分析サンプルは、高分子化合物が固形分で0.1%となるように上記キャリア液で希釈することにより調製する。
【0058】
上記高分子化合物としてはまた、分散度が12以下であることが好ましい。分散度が12を超えると、粉鉄鉱石を分散する作用が小さくなることに起因して、擬似粒子化させる作用を更に充分に向上することができないおそれがある。より好ましくは、10以下である。
なお、分散度とは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)であり、分子量分布を表すものである。数平均分子量は、重量平均分子量と同様の方法で測定される。
これらの高分子化合物は、固形のまま添加しても構わないが、固形分濃度0.1〜70質量%の水溶液の形態で添加することが好ましい。
【発明の効果】
【0059】
本発明の製鉄用焼結原料の造粒処理方法は、上記の構成よりなり、製銑工程における高炉装入用原料となる焼結鉱の製造において粉鉄鉱石等の焼結原料の造粒に有効であり、製鉄用焼結原料の造粒性を向上すると同時に、粉コークスや無煙炭等の燃料への着火性及び燃焼性を向上させて、充分な焼結鉱の生産性が実現できることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0061】
実施例及び比較例における擬似粒子のGI指数、成品歩留、生産率、擬似粒子の炭素含有量(粉コークス含有量)は、下記方法により測定した。
(擬似粒子のGI指数)
造粒操作を行って得られた擬似粒子を80℃で1時間乾燥後、篩を用いて分級することにより、その粒度(擬似粒度)を求めた。造粒された擬似粒子のGI指数とは、製銑研究第288号9頁に開示されている評価方法の一つであり、核粒子の周りに付着する微粉粒子の割合を示す。なお、GI指数の測定は、製鉄研究第288号(1976)9頁の記載の方法に準じて行った。
以下の各実施例及び比較例の測定においては、いずれも、造粒後の粒径が0.25mm以下の擬似粒子のGI指数を求めた。また、0.25mm以下の擬似粒子のGI指数(擬似粒化指数)は以下の式により計算した。
GI指数={(造粒前の0.25mm以下の原料の比率−造粒後の0.25mm以下の原料の比率)/(造粒前の0.25mm以下の原料の比率)}×100
【0062】
(成品歩留、生産率)
成品歩留は、焼結鍋試験において、焼結後の焼結鉱(シンターケーキ)50kgを2mの高さから鉄板上に5回落下させたときの、粒径5mm以上の粒度を有する粒子の割合を測定することにより評価した。生産率は以下の式により算出した。
生産率(t/day/m)=成品歩留まり評価後の粒径5mm以上の粒度を有
する粒子の総質量(t)/焼結時間(day)/焼結機(鍋)の表面積(m
【0063】
以下に記載の実施例及び比較例における焼結原料並びにペレット原料は全て、絶乾状態のものを使用した。
(擬似粒子中の炭素含有量の定量化)
上記GI指数測定後の擬似粒子の1mm以下の篩い分け部分を混合し、ミル等の粉砕機で全量粉砕する。このとき、粉砕後の平均粒径が50μm以下になるようにする。篩い分け部分が多くて、一度に粉砕できない場合は、2回以上に分けて粉砕し、粉砕後に均一になるように混合する。
市販の容量120mlのPP(ポリプロピレン)容器に、粉砕後の擬似粒子約1gを採取し、正確に質量を測定する(Agとする)。蒸留水10gを添加し、軽くなじませる。石灰石に含まれる炭素分を二酸化炭素として系外に除去するために、リン酸1.2gから1.3gを添加して、発砲が見られる間、容器を手で振とうした後、135℃に設定した減圧乾燥機にて充分乾燥する。PP容器から内容物を取り出し、乳鉢に移し、粉砕し、130℃のオーブンで乾燥する。このとき、内容物が粉末状にならない場合、130℃のオーブンで乾燥後に再度粉砕、乾燥を行う。乾燥後の内容物の質量(組成物1とする)を測定する(Bgとする)。元素分析にて該組成物1のC量を定量する(C%とする)。1mm以下の擬似粒子に含有する炭素量を以下のように算出する。
1mm以下の擬似粒子に含有する粉コークス量(%)=B(g)×C(%)/A(g)
【0064】
実施例1
本発明における疎水性物質の水系エマルションとして、流動パラフィン(和光純薬工業社製)50質量部、蒸留水48.5質量部、界面活性剤としてポリオキシエチレン(エチレンオキサイド付加モル数20)ステアリルエーテル1.5質量部を、容器に投入した。羽根直径0.1mの高速攪拌機(T.K. AUTO HOMO MIXER DL−SL、特殊機化工業社(現プライミクス社)製)で、10分間かけて4000rpmまで攪拌回転数を増加し、そのままの回転数で更に10分間攪拌を続けることにより、疎水性物質の水系エマルション(粉コークス処理剤1)を製造した。表1に示す粒度分布を有する粉コークス10000部に対して、該エマルション40部と、蒸留水500部とを添加し、ミキサーで10分間撹拌した。更に、該処理を行った粉コークスを、ロータリー式乾燥機を用いて105℃の熱風で20分間乾燥した(粉コークス処理剤1で処理した粉コークスを処理粉コークス1とする)。
次に、表2に示す組成を有する焼結原料(製鉄用原料)を調整した。ここで粉コークスは処理粉コークス1を使用した。
【0065】
上記の焼結原料70000部をドラムミキサーに投入し、該組成物(焼結原料)に、分散剤として、予め不揮発分0.4%に調整した重量平均分子量6000のポリアクリル酸ナトリウム水溶液5250部を霧吹きを用いて約1.5分間かけて噴霧(添加)した。焼結原料に対するポリアクリル酸ナトリウムの割合は0.03%であった。噴霧後、分散剤が添加された上記の組成物(造粒処理用最終組成物)を更に同回転速度で3分間撹拌することにより、造粒処理(擬似粒化)を行った。
また、得られた擬似粒子から、均等に1kg程度サンプリングし、含まれる水分を測定すると共に、該擬似粒子を乾燥後、篩を用いて分級することにより、擬似粒子のGI指数を求めた。更に、GI指数測定後の擬似粒子の1mm以下の部分を再混合し、ハンマーミルを用い、平均粒径が50μm以下になるように、全量粉砕した。粉砕後の擬似粒子を上記方法により、1mm以下の擬似粒子に含まれる粉コークス量を測定した。これらの結果をまとめて表3に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
実施例2
本発明における疎水性物質の水系エマルションとして、流動パラフィン(和光純薬工業社製)50質量部、蒸留水48.5質量部、界面活性剤としてポリオキシエチレン(エチレンオキサイド付加モル数20)ステアリルエーテル1.5質量部を、容器に投入した。羽根直径0.1mの高速攪拌機(T.K. AUTO HOMO MIXER DL−SL、特殊機化工業社(現プライミクス社)製)で、10分間かけて4000rpmまで攪拌回転数を増加し、そのままの回転数で更に10分間攪拌を続けることにより、水系エマルション(粉コークス処理剤2)を製造した。表1に示す粒度分布を有する粉コークス10000部に対して、該エマルション80部と、蒸留水500部とを添加し、ミキサーで10分間撹拌した。更に、該処理を行った粉コークスを、ロータリー式乾燥機を用いて105℃の熱風で20分間乾燥した。(粉コークス処理剤2で処理した粉コークスを処理粉コークス2とする)。
次に、表2に示す組成を有する焼結原料(製鉄用原料)を調整した。ここで粉コークスは処理粉コークス2を使用した。
実施例1と同様にして、GI指数と1mm以下の擬似粒子に含まれる粉コークス量、生産性を測定した。結果を表3に示す。
【0070】
実施例3
実施例1で使用した処理粉コークス1を用いて、表2に示す組成を有する焼結原料(製鉄用原料)を調整した。
上記の焼結原料70000部、生石灰840部をドラムミキサーに投入し、該組成物(焼結原料)に、水5600部を霧吹きを用いて約1.5分間かけて噴霧(添加)した。噴霧後、分散剤が添加された上記の組成物(造粒処理用最終組成物)を更に同回転速度で3分間撹拌することにより、造粒処理(擬似粒化)を行った。
実施例1と同様にして、GI指数と1mm以下の擬似粒子に含まれる粉コークス量、生産率を測定した。結果を表3に示す。
【0071】
実施例4
実施例1に記載の処理粉コークス1の製造方法において、疎水性物質としての流動パラフィン100部に代えて、リサイクル油脂である植物混合油脂B規格(ハルオ社製)100部を使用する以外は、処理粉コークス1の製造方法と同様の方法で処理粉コークス3を得た。次に、表2に示す組成を有する焼結原料(製鉄用原料)を調整した。ここで粉コークスは処理粉コークス3を使用した。
実施例1において、予め不揮発分0.4%に調整した重量平均分子量6000のポリアクリル酸ナトリウム水溶液5250部にかえて、予め不揮発分0.27%に調整した重量平均分子量33000のアクリル酸ナトリウム/アクリル酸メチル共重合体(アクリル酸ナトリウムの組成比が78.7mol%)水溶液5250部を用い、処理粉コークス1に変えて、処理粉コークス3を使用する他は実施例1と同様にして、GI指数、1mm以下の擬似粒子に含まれる粉コークス量、生産率の評価を行った。結果を表3に示す。焼結原料に対する該共重合体の添加量は0.02%であった。
【0072】
実施例5
実施例1に記載の処理粉コークス1の製造方法において、ロータリー式乾燥機における乾燥処理時間を20分から10分に代える以外は処理粉コークス1の製造方法と同様の方法で処理粉コークス4を得た。次に、表2に示す組成を有する焼結原料(製鉄用原料)を調整した。ここで粉コークスは処理粉コークス4を使用した。
実施例1と同様にして、GI指数と1mm以下の擬似粒子に含まれる粉コークス量、生産率を測定した。結果を表3に示す。
【0073】
実施例6
実施例1に記載の処理粉コークス1の製造方法において、ロータリー式乾燥機における乾燥処理時間を20分から6分に代える以外は処理粉コークス1の製造方法と同様の方法で処理粉コークス5を得た。次に、表2に示す組成を有する焼結原料(製鉄用原料)を調整した。ここで粉コークスは処理粉コークス5を使用した。
実施例1と同様にして、GI指数と1mm以下の擬似粒子に含まれる粉コークス量、生産率を測定した。結果を表3に示す。
【0074】
実施例7
実施例1に記載の処理粉コークス1の製造方法において、ロータリー式乾燥機における乾燥処理時間を20分から3分に変える以外は処理粉コークス1の製造方法と同様の方法で処理粉コークス6を得た。次に、表2に示す組成を有する焼結原料(製鉄用原料)を調整した。ここで粉コークスは処理粉コークス6を使用した。
実施例1と同様にして、GI指数と1mm以下の擬似粒子に含まれる粉コークス量、生産率を測定した。結果を表3に示す。
【0075】
比較例1
表2に示す組成を有する焼結原料(製鉄用原料)を調製した。ここで粉コークスは未処理のもの(すなわち、疎水処理を行っていない粉コークス)を使用した。
実施例1と同様にして、GI指数と1mm以下の擬似粒子に含まれる粉コークス量、生産性を測定した。結果を表3に示す。
【0076】
比較例2
表1に示す粒度分布を有する粉コークス10000部に対して、流動パラフィン(和光純薬工業社製)20部を添加し、ミキサーで10分間撹拌することにより、処理粉コークス7を得た。次に、表2に示す組成を有する焼結原料(製鉄用原料)を調整した。ここで粉コークスは処理粉コークス7を使用した。
実施例1と同様にして、GI指数と1mm以下の擬似粒子に含まれる粉コークス量、生産率を測定した。結果を表3に示す。
【0077】
比較例3
表2に示す組成を有する焼結原料(製鉄用原料)を調製した。ここで粉コークスは処理粉コークス7を使用した。
実施例3と同様にして、上記の焼結原料70000部、生石灰840部をドラムミキサーに投入し、該組成物(焼結原料)に、水5600部を霧吹きを用いて約1.5分間かけて噴霧(添加)した。噴霧後、分散剤が添加された上記の組成物(造粒処理用最終組成物)を更に同回転速度で3分間撹拌することにより、造粒処理(擬似粒化)を行った。実施例1と同様にして、GI指数と1mm以下の擬似粒子に含まれる粉コークス量、生産率を測定した。結果を表3に示す。
【0078】
参考例1
実施例1に記載の処理粉コークス1の製造方法において、ロータリー式乾燥機における乾燥処理時間を20分から2分に代える以外は処理粉コークス1の製造方法と同様の方法で処理粉コークス8を得た。次に、表2に示す組成を有する焼結原料(製鉄用原料)を調整した。ここで粉コークスは処理粉コークス8を使用した。
実施例1と同様にして、GI指数と1mm以下の擬似粒子に含まれる粉コークス量、生産率を測定した。結果を表3に示す。
【0079】
表3より、以下のことが確認された。
造粒処理剤としてポリアクリル酸ナトリウムを使用して造粒処理を行った実施例1、2、5〜7と、比較例1とを比較すると、疎水処理されていない粉コークスを用いて造粒処理を行った比較例1では、GI指数が「92.5%」、生産率が「26.9t/day/m」となったのに対し、実施例1、2、5〜7では、GI指数が「93.1%」、生産率が「29.5〜31.9t/day/m」と、GI指数及び生産率のいずれの点でも著しく高い結果となったことが分かる。
【0080】
また実施例1、2、5〜7と同じくポリアクリル酸ナトリウムを造粒処理剤として使用し、同じ疎水性物質を使用した例であっても、疎水性物質をエマルション化していない比較例2では、GI指数が「92.1%」、生産率が「27.6t/day/m」となったことから、本発明のように疎水性物質の水系エマルションを用いて燃料を疎水処理することによって更に、造粒性や生産性を著しく向上するという効果が得られることが分かる。
同様に、造粒処理剤として生石灰を使用して造粒処理を行った実施例3と比較例3との結果からも、同様のことがいえる。
更に造粒処理剤としてポリアクリル酸ナトリウムとアクリル酸メチルとの共重合体を用いた実施例4と比較例1〜3との比較によっても、実施例4では生産性が著しく向上したことが分かる。
【0081】
また疎水処理後(乾燥処理後)の水分量を変化させて実施した実施例1(0.2質量%)、実施例5(1.0質量%)、実施例6(2.1質量%)、実施例7(3.8質量%)及び参考例1(5.2質量%)の結果から、水分量を低減させた方が、造粒性及び生産性の点で効果が顕著であることが分かる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鉄用焼結原料を粉コークス及び/又は無煙炭の存在下で造粒処理する方法であって、
該製鉄用焼結原料の造粒処理方法は、粉コークス及び/又は無煙炭を含む燃料を疎水性物質の水系エマルションで疎水処理した後、該疎水処理後の燃料を、残りの製鉄用焼結原料の一部又は全部と共に造粒処理する工程を含む
ことを特徴とする製鉄用焼結原料の造粒処理方法。
【請求項2】
前記疎水性物質の使用量は、燃料の総量100質量部に対し、0.05〜0.5質量部である
ことを特徴とする請求項1記載の製鉄用焼結原料の造粒処理方法。
【請求項3】
前記疎水性物質は、炭素数5以上のパラフィン鎖を有する化合物、ナフテン環を有する化合物及びシリコーンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の製鉄用焼結原料の造粒処理方法。
【請求項4】
前記疎水処理は、疎水処理後の燃料100質量%中に、水分量が4質量%以下となるように行われる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製鉄用焼結原料の造粒処理方法。
【請求項5】
製鉄用粉コークス及び/又は無煙炭を含む燃料を疎水処理するための処理剤であって、
該処理剤は、疎水性物質の水系エマルションにより構成され、
該疎水性物質は、炭素数5以上のパラフィン鎖を有する化合物、ナフテン環を有する化合物及びシリコーンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である
ことを特徴とする製鉄用粉コークス及び/又は無煙炭処理剤。

【公開番号】特開2009−275270(P2009−275270A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129413(P2008−129413)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】