説明

製麺装置

【課題】外部操作によって指定した腰の強さを再現可能に製麺し、麺の押し出し圧力をきめ細かく設定可能にする。
【解決手段】モータ22によってボールネジ軸23を駆動し、このボールネジ軸23の回転によりナット部材24を往復移動させ、このナット部材24にピストン27を取り付けて、ピストン27の下方に、該ピスト27が出入する前記シリンダ28が対向配置された構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捏ねた麺生地をノズルから押し出すことにより、そば、うどん、パスタなどの麺類を製造する製麺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の製麺装置として様々な構成が提案され、実用化されている。これらのうち、一般に広く用いられている製麺装置は、例えば駆動装置によって駆動される螺旋スクリューを筒状のケーシング内に回転自在に設け、螺旋スクリューの回転によってホッパ内に収納された麺生地をケーシング内に送り出し、さらに捏ねながらノズルから押し出すという構成である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記製麺装置では、麺生地を捏ねるときに螺旋スクリューのシャフトの基部からケーシング先端のノズルに麺生地がスムースに押し出されず、この押し出しの期間中に繰り返しこの捏ね動作が行われ、押し出された麺の腰が必要以上に強くなり過ぎるほか、食感が悪くなる場合があった。
【0004】
一方、前述のような螺旋スクリューを用いるのではなく、シリンダ内に投入した麺生地をピストンによってノズルから押し出す製麺装置が提供されている(例えば、引用文献2参照)。シリンダを用いたこの製麺装置は、ピストンをエアーシリンダによって駆動する構成である。これによれば、ピストンに対する大きな加圧力により麺生地がシリンダ内をスムースに移動するため、シリンダ内で過剰な捏ね回しが生じることがなく、ノズルから表面が滑らかな麺を迅速に押し出すことができる。
【特許文献1】実用新案登録第3084114号公報
【特許文献2】特開平8−294350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、引用文献1に記載の従来の製麺装置にあっては、前述のように過剰な混練によって食感を損うほどに腰が強くなりすぎることがあり、この腰の強さを調整するのに時間が掛かるという不都合があった。
【0006】
また、引用文献2に記載の従来の製麺装置にあっては、エアーシリンダに対する圧縮エアーの供給によってピストンを加圧する場合に、エアーの圧縮性のためにエアーの圧力とピストンの移動量との関係に直線性を持たせることが困難である。例えば麺の腰が必要以上に強い場合に、この腰を適正の強さに微調整することが難しい。従って、腰の強さをスイッチ指令等によって数値指定した場合でも、指定通りの腰の強さを得ることができず、また同一の腰の強さを繰り返し再現することが難しいという不都合があった。
【0007】
本発明は前記のような従来の問題点に着目してなされたものであり、コントロール盤上からの外部指令によって指定した腰の強さに再現可能に製麺することができ、麺の押し出しスピードをきめ細かく設定できると共に、1ストローク中にスピード変化をもたせる事で、指定した腰の強さ、波形形状を速やかに得ることができる製麺装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的達成のために、本発明に係る製麺装置は、原料穀類に水を混ぜて捏ねた麺生地をシリンダに投入し、前記麺生地をピストンによって前記シリンダの底部に設けられた多数のノズルから押し出すことによってひも状の麺を製造する製麺装置であって、モータと、該モータによって駆動されるボールネジ軸と、該ボールネジ軸に螺合され、該ボールネジ軸の回転により往復動するナット部材と、を有し、該ナット部材には前記ピストンが取り付けられ、該ピストンの下方に、該ピストンが出入する前記シリンダが対向配置されてなることを特徴とする。
【0009】
この構成により、モータによって駆動されるボールネジ軸は、これに螺合するナット部材を直線運動に変換する。このため、モータの回転力を極めて大きい直線運動トルクに変換でき、これをピストンに伝えられる。ピストンは大きな直線運動トルクを受けて、シリンダ内に投入された麺生地を強力な圧力にて底部側へ押し込む。このため、麺生地を速やかにシリンダ底部のノズルから所定の腰の強さや食感を持つひも状の麺として、押し出すこととなる。
【0010】
また、前記シリンダは、前記ピストンの中心線上およびこの中心線からオフセットした麺生地の投入位置へそれぞれ移動可能に配置されるため、前記シリンダへの麺生地の投入作業とピストンによるシリンダ内からの麺の押し出し作業とを、交互に繰り返しながら効率的に製麺することができる。
【0011】
また、前記モータは、コントロール盤からの変速指令の入力によって変速制御可能であるため、同一の麺生地を使いながらもピストンのシリンダ内への押圧力が調整可能になり、腰の強さ、形状(太さやちぢれ具合など)、食感等を任意に設定できる麺を自在に製造することができる。
【0012】
また、前記ノズルは、シリンダの底に着脱可能に装着されるノズル板に設ける構成とすることで、ノズルの形状やサイズが異なるノズル板を用意すれば、種々の形状、太さの麺を自動的かつ安価に打つことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外部操作によって指定した腰の強さにて再現可能に製麺することができると共に、麺の押し出し圧力をきめ細かく設定でき、指定した腰の強さ、形状、サイズの麺を速やかに得ることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態による製麺装置を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態による製麺装置を示す正面図、図2は、同じく製麺装置の側面図、図3は、図1におけるシリンダ付近を一部破断して示す斜視図である。
この製麺装置Aは、床上を自在に移動可能であり、また厨房等の所定箇所に据え付け(固定)可能である。このため、製麺装置Aは,ゆで釜11と共に給排水設備やガスバーナなどの熱源を収納する車輪12付きの作業台13に設置されている。
【0015】
作業台13は、底部の四隅に4本の脚部14を有し、この脚部14の下端に前記車輪12が取り付けられている。また、前記給排水設備は給水栓13aを通してゆで釜11内に湯または水を供給したり、ゆで釜11内の湯やゆで汁等を排出したりするように機能する。このため給水管および排水管にはそれぞれ給水バルブおよび排水バルブが接続される。
【0016】
給水栓13aはゆで釜11の中央部から外れた位置に設置され、ゆで上がった麺類の取り出し作業を妨げないようになっている。作業台13の正面には、必要に応じて給水量、熱源の温度、時間などの麺類のゆで上げに必要な情報を表示する各種の計器やボタン(いずれも図示しない)が配設されている。
【0017】
前記熱源は、ゆで釜11底部の下方に設置されて、ゆで釜11内の水を煮沸させるように、このゆで釜11の底部を加熱するように機能する。この熱源としては、前記のガスバーナのほか、電気抵抗線(電熱線)を用いるものや、誘導加熱装置を用いるものなどが任意に選択して用いられる。
【0018】
作業台13の左後方の隅部には、外筒15が垂直方向に設立され、この外筒15内には支柱16が収納されている。また、外筒15の上端から上方に突出する支柱16には、軸筒17が軸筒受けメタル18を介して回動自在に支持されている。この軸筒17には、パネル固定枠19を介して平面視でコ字状をなすパネル20が取り付けられている。従って、パネル20は所定角度の平面内で、支柱16を中心に回動自在となっている。パネル20の前面にはコントロール盤が設置されている。
【0019】
コ字状のパネル20を構成する一対の側板20a間には、上下一対のモータ取付板21が架設され、これらのモータ取付板21はパネル20を補強するとともに、モータ22を安定的に支持している。なお、これらの側板20aに対するモータ取付板21の取り付けは、螺子などの締め具を用いて行われるほか、溶接によっても行われる。
【0020】
モータ22は駆動軸が垂直となるように前記モータ取付板21に取り付けられている。このモータ22の駆動軸には所定長のボールネジ軸23が一体に、または連結具や変速機等を介して別体として取り付けられる。このボールネジ軸23には、軸方向への移動は可能であるがボールネジ軸23の周りには回転が規制されたブロック状のナット部材24が螺合されている。
【0021】
このナット部材24にはロッド受けブロック25が連接され、このロッド受けブロック25には垂直ロッド26が取り付けられている。また、この垂直ロッド26の下端にはピストン27が取り付けられている。このピストン27はこれの下方に配置されるシリンダ28内の上方開口部からシリンダ28内に摺動可能に出入される。
【0022】
前記コ字状のパネル20内には、側板20a、20bおよび前面板20cを補強するように補強板29、30、31が所定間隔をおいて水平方向に取り付けられている。この取り付けは溶接やネジ止めなどによって行われる。なお、補強板30には、垂直方向に延びる前記ボールネジ軸23および垂直ロッド26が貫通するための貫通孔32、33が設けられている。補強板31には前記ピストン27を出入可能とするための大径のピストン貫通孔34が設けられている。
【0023】
前記補強板31の下面には、前記ピストン移動孔34を挟む位置に左右一対のガイドレール35が並行に配置されている。これらのガイドレール35には、シリンダ28の上端開口部を保持するシリンダ支持板36の左右両端部が、パネル20の前後方向に移動自在に支持されている。更にこのシリンダ支持板36の前縁にはコ字状のハンドル37が取り付けられている。
【0024】
従って、このハンドル37を矢印P方向に引き出すことにより、ガイドレール35に沿ってシリンダ支持板36がこれに支持されたシリンダ28と共に、パネル30の前方へ移動可能になる。また、ハンドル37を押しながら、シリンダ支持板36をパネル20の直下位置に復帰するようにガイドレール35に沿って移動させたときは、シリンダ28上方の開口部が前記ピストン27の直下に対向することとなる。つまり、シリンダ28およびピストン27の各中心線が合致する位置にくる。
【0025】
前記シリンダ28は、図3に示すように、底部に多数の細いノズル(貫通孔)38を持つ。ノズル38の数、配置、形状、サイズ等はうどん、そばなどの麺の種類(ここでは、原料穀類に水を混ぜて捏ねた麺生地)、シリンダ28の容積、サイズ、ピストン27の押圧力、押圧速度、押圧パターン等に応じて適正に設計され、通常は、実験データに基づいて決定される。
【0026】
また、麺の腰の強さや食感(柔らかさなど)、あるいはストレート麺にするか縮れ麺にするかは、シリンダ28内におけるピストン27の麺生地に対する押圧力の印加パターンによって微妙に変化する。本実施の形態では、モータ22の回転をボールネジ軸23を介して直線運動に変換するという構成を採用している。
【0027】
これにより、指定したモータ22の回転力を、大きなピストン27の直線移動トルクに変換でき、かつそのモータの回転量をピストン27の直線移動量に正確に変換することができる。従って、モータの回転速度や駆動トルクの微妙な調整が可能になり、これによって前記麺の腰の強さや食感を自由かつ再現性可能に調整できる。
【0028】
パネル20の前面板20cに取り付けられたコントロール盤39でのスイッチ等による外部指令によって、モータの回転数(回転速度)や回転パターン(ステップ回転等)を指定することが可能である。内部設置のコンピュータ(図示しない)はその外部指令に従ってモータ22の回転を制御する。これにより、ピストン27の運動パターンを自動的に設定して、シリンダ28内の麺生地をノズルを介して腰の強いストレート麺や縮れ麺などとして、スムースに打ち出すことができる。
【0029】
製麺時にはうどん、そばなどの麺の種類に応じた形態のノズルを持つシリンダ28を選択して前記シリンダ支持板36に着脱可能に装着する。この場合に、シリンダ28内の底部に、所定形態のノズルを持つノズル板を選択して(着脱自在に)装着するようにしてもよい。この場合には、シリンダ28のコストに比べてノズル板のコストが安いので、希望する腰の強さ、食感が得られる麺類を、より安価に製造することができる。
【0030】
前記構成の製麺装置では、ハンドル37を操作してシリンダ支持板36をガイドレール35に沿って矢印P方向に引き出すことにより、シリンダ支持板36に支持されたシリンダ28をパネル20の前方へ移動(オフセット)させることができる。ここで、この前方位置で原料穀類に水を混ぜて捏ねた表面生地をシリンダ28内に投入した後、シリンダ支持板36をガイドレール35に沿って、矢印P方向とは逆方向にパネル20の下部位置に戻す。
【0031】
このようにシリンダ支持板36が戻された位置では、シリンダ28の上部開口がロッド受けブロック25に支持されたピストン27の下部に臨む。この位置でシリンダ28は上部開口へのピストン27の挿入を待つ。
【0032】
ここで、前記パネル20前面のコントロール盤39上のボタンスイッチ等により製麺開始を指令すると、モータ22が駆動されてボールネジ軸23が回転する。このボールネジ軸23の回転によって、このボールネジ軸23に螺合しているナット部材24は強力な下降(軸方向)トルクを発生し、ロッド受けブロック25および垂直ロッド26と共にピストン27を下降させる。
【0033】
このピストン27はシリンダ28の上部開口から内部に進入する。このため、ピストン27はシリンダ28内の麺生地を底部に向かって圧迫しながら押し込んでいく。このため、このシリンダ28の底部に設けられた多数個のノズルから、ひも状の多数本の麺を同時に押し出していく。
【0034】
このひも状の麺は、そのままシリンダ28の下方に臨む作業台13内のゆで釜11に投入される。このゆで釜11内では、予めタイマ設定された所定時間、沸騰した湯中でゆで上げられる。麺が所定の腰の強さになったときは、ゆで釜11内から網などにより掬い上げて速やかに冷水で水洗いし、食卓に上ることとなる。または、調理加工が加えられた後に、食卓に上ることとなる。
【0035】
なお、かかる製麺工程において、パネル20を支柱16を中心として水平回動することで、ゆで釜11上の領域の内外への移動することができる。これにより、ゆで釜11内からのゆで上がった麺を取り出し易くすることができる。
【0036】
以上のように、本実施の形態による製麺装置は、モータ22によってボールネジ軸23を駆動し、このボールネジ軸23の回転によりナット部材24を往復動させ、このナット部材24にピストン27を取り付けて、このピストン27の直下に、このピストン27が進入するシリンダ28を対向配置した構成を持つ。
【0037】
従って、モータ22によって駆動されるボールネジ軸23は、これに螺合するナット部材24を直線運動に変換する。このため、モータ22の回転力(トルク)は極めて大きい直線運動トルクに変換されて、ピストン27に伝えられる。ピストン27は大きな直線運動トルクを受けてシリンダ28内に投入された麺生地を強力な圧迫力にて底部側へ押し込む。
【0038】
このため、麺生地は速やかにシリンダ28底部のノズル38からひも状に押し出される。このひも状の麺は、モータ22の回転速度やトルクの精細な制御によって、腰の強さや食感を微妙に調整でき、ストレート麺や縮れ麺を容易に製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、外部操作によって指定した腰の強さを再現可能に製麺することができると共に、麺の押し出し速度や圧力をきめ細かく設定でき、指定した腰の強さ、形状、サイズの麺を速やかに得ることができるという効果を有し、そば、うどん、パスタなどの麺類を製造する製麺装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態による製麺装置を示す正面図である。
【図2】図1に示す製麺装置の側面図である。
【図3】図1および図2におけるシリンダ付近を一部破断して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
11 ゆで釜
12 車輪
13 作業台
13a 給水栓
14 脚部
15 外筒
16 支柱
17 軸筒
18 軸筒受けメタル
19 パネル固定枠
20 パネル
21 モータ取付板
22 モータ
23 ボールネジ軸
24 ナット部材
25 ロッド受けブロック
26 垂直ロッド
27 ピストン
28 シリンダ
29、30、31 補強板
32、33 貫通孔
34 ピストン移動孔
35 ガイドレール
36 シリンダ支持板
37 ハンドル
38 ノズル
39 コントロール盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料穀類に水を混ぜて捏ねた麺生地をシリンダに投入し、前記麺生地をピストンによって前記シリンダの底部に設けられた多数のノズルから押し出すことによってひも状の麺を製造する製麺装置であって、
モータと、
該モータによって駆動されるボールネジ軸と、
該ボールネジ軸に螺合され、該ボールネジ軸の回転により往復動するナット部材と、を有し、
該ナット部材には前記ピストンが取り付けられ、
該ピストンの下方に、該ピストンが出入する前記シリンダが対向配置されてなることを特徴とする製麺装置。
【請求項2】
前記シリンダは、前記ピストンの中心線上およびこの中心線からオフセットした麺生地の投入位置へそれぞれ移動可能に配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の製麺装置。
【請求項3】
前記モータは、コントロール盤からの変速指令入力によって変速制御可能であることを特徴とする請求項1に記載の製麺装置。
【請求項4】
前記ノズルは、シリンダの底に着脱可能に装着されるノズル板に設けられてなることを特徴とする請求項1に記載の製麺装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−115147(P2010−115147A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290503(P2008−290503)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(508337536)
【出願人】(508337950)株式会社鈴喜 (1)
【Fターム(参考)】