説明

複写防止用媒体、方法および装置

【課題】機密文書作成時の作業性、作成した機密文書の視認性、扱い安さなどを損なわず、また複写防止の対象としない他の一般文書の複写の作業性を損なわない、複写防止用媒体、複写防止方法および複写防止装置を提供することを目的とする。
【解決手段】全面または一部の面に、紫外光により難消色性となるフォトクロミック化合物を含む発色層を形成したことを特徴とする複写防止用媒体及び必要に応じて原稿全面に紫外光を照射することが可能な紫外光照射手段を備えたことを特徴とする複写装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の機密文書の複写を実質的に不可能にして情報の持ち出しを防止する、複写防止用媒体、複写防止方法および複写防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機密情報が記載された紙文書は、多くの場合持ち出しおよび複製禁止の条件下で、限定された範囲内において取り扱われるが、それでもなお不正な複製などによってそれらの情報がそのままの形で流出することも多く、機密文書の流出が企業や官公庁などにおいても問題視されている。例えば防衛庁においては、機密文書の外部への持ち出しを防ぐために、すでに広く普及している万引き防止システムを応用した方法の導入を進めるなどの対策がとられている。一方不正な複製に対する適切な措置はいまだとられていないが、複写防止に当たって要求される、以下に示すような条件を満たすことが難しいためである。
【0003】
(1) 文書側に施す処置によって、文書作成の作業性が損なわれないこと。
(2) 文書側に施す処置によって、作成した文書の視認性、扱い安さなどが損なわれないこと。
(3) 実質的に機密情報が複写されないこと。
(4) 複写装置に施す処置によって一般文書の複写の作業性が損なわれないこと。
(5) 文書側および複写装置に要する処置が簡単であり、大きなコスト増を伴わないこと。
【0004】
不正な複写行為を防止することに関する提案は、以下に各分類ごとに示すようにこれまでに数多くなされている。
(A)複写すると、原稿における背景色が変化したり、あるいは一様な濃度の背景がグラデーションがかけられたように変化して、複写物であることが明確に認識される。(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)
(B)複写すると、原稿においては目立たなかった潜像が顕像化してはっきりと現れ、複写物であることが明確に認識される。(特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11参照)
【0005】
(C)原稿作成において用いる色の選択等により、色相あるいは明度の差異から、視覚的には情報が認識できるが、複写機の出力においてはそれらの差異がなくなって情報が認識できなくなるようにする。(特許文献12、特許文献13参照)
(D)原稿作成用の用紙として、背景に予め特定の画像パターンを目立たない形態で入力した用紙を用いて原稿を作成し、複写装置側で前記画像パターンを検出した場合に複写動作を停止する。(特許文献14参照)
(E)原稿作成時に、背景あるいは画像中に特定の画像パターンを目立たない形態で併せて入力し、複写装置側で前記画像パターンを検出した場合に複写動作を停止する。(特許文献15、特許文献16、特許文献17参照)
【0006】
以上の提案を上述の(1)〜(5)の条件に照らして考えると、(A)および(B)は複写物に複写行為をしたことの証拠が残るものの機密情報が実質的に複写されてしまうので適切でない。(C)は機密情報の実質的な複写を防ぐために原稿となる機密文書の視認性や取り扱い性を著しく損なってしまうのでこれも適切でない。(D)および(E)は複写装置側に、文書における特定画像の有無の認識および動作停止の制御のための機構を設ける必要があり、コストの点で適切とは言いがたい。このように複写防止に関して先に述べた問題点に対して満足できる対策は得られていないのが実状である。
【0007】
本発明者らはこのような状況に鑑みて鋭意研究し、特願2004-136381において、機密文書の複写防止に関して、機密文書作成時の作業性、作成した機密文書の視認性、扱い安さなどを損なわず、また複写防止の対象としない他の一般文書の複写の作業性を損なわない、複写防止用媒体、複写防止方法および複写防止装置を提案したが、さらに機密保持性の向上に関する効果を高める検討から、本発明に到達したものである。
【0008】
【特許文献1】特開平9−20060号公報
【特許文献2】特開平9−267543号公報
【特許文献3】特開平11−34475号公報
【特許文献4】特開平6−236129号公報
【特許文献5】特開平7−76195号公報
【特許文献6】特開平9−109543号公報
【特許文献7】特開平10−119416号公報
【特許文献8】特開平10−278408号公報
【特許文献9】特開2001−18516号公報
【0009】
【特許文献10】特開2002−200835号公報
【特許文献11】特開2003−54106号公報
【特許文献12】実開平7−5749号公報
【特許文献13】実開平5−73662号公報
【特許文献14】特開平6−250568号公報
【特許文献15】特開平6−164914号公報
【特許文献16】特開平8−163357号公報
【特許文献17】特開2002−354239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、機密文書の複写防止に関して、機密文書作成時の作業性、作成した機密文書の視認性、扱い安さなどを損なわず、また複写防止の対象としない他の一般文書の複写の作業性を損なわない、複写防止用媒体、複写防止方法および複写防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は下記の構成よりなる。
(1)全面または一部の面に、紫外光により難消色性となるフォトクロミック化合物を含む発色層を形成したことを特徴とする複写防止用媒体。
(2)前記(1)に記載の媒体を用いる複写装置であって、原稿全面に紫外光を照射することが可能な紫外光照射手段を備えたことを特徴とする複写装置。
(3)前記(2)において、原稿台に原稿を密着させるための圧板として、紫外光に対して遮光性を有する部材からなる圧板を用い、前記圧板が原稿台に密着していない状態では動作しない機構を設けたことを特徴とする複写装置。
(4)前記(1)に記載の媒体に対し、原稿読み取り工程の前に原稿全面に紫外光を照射する工程を実施することを特徴とする複写防止方法。
【0012】
すなわち、本発明の特徴の一つは、機密文書を形成する媒体の全面または機密情報記載部分に、難消色性のフォトクロミック化合物を含む発色層を形成することである。前記発色層は、前記難消色性のフォトクロミック化合物を、必要に応じてバインダーや溶媒などを用いて溶液の状態にするなどして前記媒体上に塗布することにより形成される。前記塗布の方法に特別な制約はなく、噴霧的方法でもキャスト的方法でもよい。例えば塗布液が封入された容器の一端に設けられたフェルト状の塗布部材に、塗布液を少量ずつ供給し、文書を形成する媒体に前記塗布部材を当接させながら移動させて塗布する塗布器具などを用いてもよく、前記塗布部材のサイズにより全面塗布に好適なもの、あるいは部分塗布に好適なものというように使い分けてもよい。文書を形成する媒体としては、通常の文書作成に好適に用いられる紙およびコート紙などのほかにプラスティックベースのシート類なども用いることができる。
【0013】
このような発色層を形成した機密文書は、通常の状態では発色層が無色透明なため、図1(a)に示すように発色層を形成していない一般文書と全く同様の視認性を有するが、紫外光の照射処理によって発色層が着色した状態においては図1(b)に示すように記載された情報が目視によって認識できなくなり、従って複写装置によって複写を試みた場合にも、情報が認識できない状態がそのまま複写されることになる。複写防止の仕組みとしては、対象とするエリアで使用し得る複写装置に対し、複写を行なう直前に文書に前記紫外光を照射処理する機構を設けることにより、前記発色層形成処理を行なっていない一般文書については通常通りに複写が行なわれるが、前記発色層形成処理が行われた機密文書については情報が認識できない状態で複写が行なわれることになる。
【0014】
光照射処理により発色層が着色状態に変化し記載情報が認識できなくなった文書は、発色層が再び無色透明に戻る条件で処理することによって、記載情報が問題なく認識できる元の状態に戻すことができる。難消色性のフォトクロミック化合物は、紫外光の照射により発色して着色状態となり、その状態に可視光を照射しても消色しないが、100℃程度以上の比較的高温で加熱処理すると消色して無色透明状態に戻り、これら両状態間の変化を何度も繰り返すことができる。従って複写を試みて紫外光が照射され、着色状態に変化してしまった機密文書の発色層は、特別に加熱処理を施さなければ元の無色透明状態には戻らないので、不正に複写を試みたことを証拠として残すことができる。そのような状態の機密文書を、文書管理者などが元の状態に戻す場合には適当な方法で加熱処理すればよい。
【0015】
本発明において用いることができるフォトクロミック化合物の例としては、たとえば以下のものが挙げられる。
2−[1−(2−メトキシ−5−メチル−3−チエニル)エチリデン]−3−(1、1−ジメトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(5−エチル−2−メトキシ−3−チエニル)エチリデン]−3−(1、1−ジメトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2−エトキシ−5−メチル−3−チエニル)エチリデン]−3−(1、1−ジメトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2−エトキシ−5−エチル−3−チエニル)エチリデン]−3−(1、1−ジメトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(5−エトキシ−2−メトキシ−3−チエニル)エチリデン]−3−(1、1−ジメトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2−エトキシ−5−メトキシ−3−チエニル)エチリデン]−3−(1、1−ジメトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2、5−ジメトキシ−3−チエニル)エチリデン]−3−(1、1−ジメトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2、5−ジエトキシ−3−チエニル)エチリデン]−3−(1、1−ジメトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2−メトキシ−5−メチル−3−チエニル)エチリデン]−3−(1、1−ジエトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(5−エチル−2−メトキシ−3−チエニル)エチリデン]−3−(1、1−ジエトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2−エトキシ−5−メチル−3−チエニル)エチリデン]−3−(1、1−ジエトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2−エトキシ−5−エチル−3−チエニル)エチリデン]−3−(1、1−ジエトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(5−エトキシ−2−メトキシ−3−チエニル)エチリデン]−3−(1、1−ジエトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2−エトキシ−5−メトキシ−3−チエニル)エチリデン]−3−(1、1−ジエトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2、5−ジメトキシ−3−チエニル)エチリデン]−3−(1、1−ジエトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2、5−ジエトキシ−3−チエニル)エチリデン]−3−(1、1−ジエトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(5−メトキシ−2−メチル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−(1、1−ジメトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2−エチル−5−メトキシ−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−(1、1−ジメトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(5−エトキシ−2−メチル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−(1、1−ジメトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(5−エトキシ−2−エチル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−(1、1−ジメトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2−エトキシ−5−メトキシ−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−(1、1−ジメトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(5−エトキシ−2−メトキシ−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−(1、1−ジメトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2、5−ジメトキシ−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−(1、1−ジメトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2、5−ジエトキシ−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−(1、1−ジメトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(5−メトキシ−2−メチル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−(1、1−ジエトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2−エチル−5−メトキシ−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−(1、1−ジエトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(5−エトキシ−2−メチル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−(1、1−ジエトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(5−エトキシ−2−エチル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−(1、1−ジエトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2−エトキシ−5−メトキシ−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−(1、1−ジエトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(5−エトキシ−2−メトキシ−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−(1、1−ジエトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2、5−ジメトキシ−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−(1、1−ジエトキシエチリデン)コハク酸無水物、 2−[1−(2、5−ジエトキシ−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−(1、1−ジエトキシエチリデン)コハク酸無水物。
フォトクロミック化合物は1種類のみを用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。
【0016】
発色層の形成に際してバインダー材料を用いる場合には、前記フォトクロミック化合物のフォトクロミズム機能に悪影響を与えることがなく、また該フォトクロミック化合物と相溶性が良く、硬化後の透明性に優れる樹脂材料などを用いることが好ましい。このような材料として、例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリメタクリル酸メチル、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、フェノキシ樹脂などが挙げられる。
【0017】
本発明のもう一つの特徴は、複写装置について原稿全面に紫外光を照射することが可能な紫外光照射手段を備えることである。紫外光の光源としては、UVランプ、高圧水銀ランプ、ブラックライト、UV−LEDなどを、必要に応じて各種光学フィルターにより不要な波長領域の光をカットして用いることができる。原稿全面に紫外光を照射するための方法としては、光源素子を並べて配置したりあるいは必要に応じてミラーやレンズなどの光学系を介することにより、原稿全面を同時に照射するような構成にしてもよいし、または図2に示すように原稿の一部分に対する照射を、照射位置を連続的にあるいは不連続的に変えながら行なうことによって全面を照射するような構成にしてもよい。
【0018】
本発明のもう一つの特徴は、原稿台に原稿を密着させるための圧板として、紫外光に対して遮光性を有する部材からなる圧板を用い、前記圧板が原稿台に密着していない状態では動作しない機構を設けたことである。図3に圧板の構成例を示す。前記圧板は通常、原稿台に原稿を密着させるとともに原稿読み取りのための照射光の装置外への漏れを防ぐ機能も兼ねている。前述の紫外光に対しても同様に装置外への漏れを防ぐことが必要になるが、前記圧板を紫外光に対しても遮光性を有する部材で構成し、さらに圧板が原稿台に密着していない状態では動作しない機構を設けることで、前記圧板を適性に用いないで複写装置を動作させてしまうことによる、不意の紫外光漏れを防ぐことが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
(請求項1について)
複写防止の処理を行なっても通常の状態においては文書の視認性を損なうことがなく、見やすい文書が得られる。また、複写を防止したい情報記載部分のみに発色層を形成すればよく、発色層の形成も簡単に行なえ、コスト低減および省資源にもつながる。
(請求項2について)
複写防止の対象としない一般文書に対して、複写の作業性を損なうことがない。
【0020】
(請求項3について)
不意な紫外光漏れを防ぐことが可能になり安全を確保することができる。
(請求項4について)
複写防止の処理を行なっても通常の状態においては文書の視認性を損なうことがなく、見やすい文書が得られる。また、複写を防止したい情報記載部分のみに発色層を形成すればよく、発色層の形成も簡単に行なえ、コスト低減および省資源にもつながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施例に基いて詳細に説明する。
実施例1
リコー製モノクロ複写機imagio Neo 350をベースとして、原稿台の内側に、ブラックライトが水平方向に移動する機構を設け、原稿全面に紫外光を照射することが可能な複写防止機能付き複写装置を作製した。この装置においてはさらに、原稿を原稿台に密着させる圧板を、可視光に対しても紫外光に対しても遮光性を有する樹脂を用いて作製し、この圧板を原稿台に密着させないと装置が動作しない機構を設けた。さらに複写するためのスイッチを押すとまず原稿全面に紫外光が照射される工程が行なわれるように作製した。
【0022】
実施例2
リコー製カラー複写機imagio Color 5105をベースとして、実施例1と同様の処理を施して複写防止機能付き複写装置を作製した。
実施例3
フォトクロミック化合物として、2−[1−(2−メトキシ−5−メチル−3−チエニル)エチリデン]−3−(1、1−ジメトキシエチリデン)コハク酸無水物(以下PC1と呼ぶ)を用いた。2重量部のPC1と8重量部のポリスチレンを100重量部のトルエンに溶解させて塗布液を調製した。コート紙上に文字および画像情報がプリントアウトされた文書の全面にこの塗布液をキャスト法で塗布して発色層を形成して複写防止処理を行なった。形成された発色層は無色透明であるため、文書の見た目は発色層の形成前と何ら変わるところはなかった。この文書について、実施例1で作製した複写装置を用いて複写を試みた。原稿台に前記文書を置いて圧板で密着させ、複写開始のスイッチを押したところ、出力された複写文書は全面が真っ黒であった。原稿台上の文書を取り出したところ、発色層が着色状態に変化しており、文書は全面が濃紺色を呈していた。この状態の文書を通常の照明下に数日間静置しておいたが変化はなかった。その後その文書をヒートローラーを用いて120℃に加熱処理したところ、発色層は無色透明状態に戻り、文書の見た目も元に戻った。
【0023】
実施例4
実施例3と同様にして複写防止処理を施した文書を作成した。この文書について、実施例2で作製した複写装置を用いて複写を試みた。原稿台に前記文書を置いて圧板で密着させ、複写開始のスイッチを押したところ、出力された複写文書は全面が濃紺色であった。原稿台上の文書を取り出したところ、発色層が着色状態に変化しており、文書は全面が濃紺色を呈していた。この状態の文書を通常の照明下に数日間静置しておいたが変化はなかった。その後その文書をヒートローラーを用いて120℃に加熱処理したところ、発色層は無色透明状態に戻り、文書の見た目も元に戻った。
【0024】
実施例5
フォトクロミック化合物としてPC1、および2−[1−(2、5−ジメトキシ−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−(1、1−ジメトキシエチリデン)コハク酸無水物(以下PC2と呼ぶ)
を用いた。それぞれ2重量部のPC1およびPC2と8重量部のポリスチレンを100重量部のトルエンに溶解させて塗布液を調製した。コート紙上に文字および画像情報がプリントアウトされた文書の全面にこの塗布液をキャスト法で塗布して発色層を形成して複写防止処理を行なった。形成された発色層は無色透明であるため、文書の見た目は発色層の形成前と何ら変わるところはなかった。この文書について、実施例1で作製した複写装置を用いて複写を試みた。原稿台に前記文書を置いて圧板で密着させ、複写開始のスイッチを押したところ、出力された複写文書は全面が真っ黒であった。原稿台上の文書を取り出したところ、発色層が着色状態に変化しており、文書は全面が濃褐色であった。
この状態の文書を通常の照明下に数日間静置しておいたが変化はなかった。その後その文書をヒートローラーを用いて120℃に加熱処理したところ、発色層は無色透明状態に戻り、文書の見た目も元に戻った。
【0025】
実施例6
実施例5と同様にしてPC1およびPC2を含む塗布液を調製した。コート紙上に文字および画像情報がプリントアウトされた文書の特定の箇所にのみこの塗布液をフェルトペン型の塗布器具を用いて塗布して発色層を形成した。形成された発色層は無色透明であるため、文書の見た目は発色層の形成前と何ら変わるところはなかった。この文書について、実施例2で作製した複写装置を用いて複写を試みた。原稿台に前記文書を置いて圧板で密着させ、複写開始のスイッチを押したところ、出力された複写文書は前記塗布駅を塗布した個所だけが濃褐色になっていた。原稿台上の文書を取り出したところ、発色層を形成した部分だけが着色状態に変化して濃褐色になっていた。この状態の文書を通常の照明下に数日間静置しておいたが変化はなかった。その後その文書をヒートローラーを用いて120℃に加熱処理したところ、発色層は無色透明状態に戻り、文書の見た目も元に戻った。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】複写防止の説明図である。
【図2】紫外光照射システムの一例の説明図である。
【図3】原稿台に原稿を密着させるための厚板機構の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全面または一部の面に、紫外光により難消色性となるフォトクロミック化合物を含む発色層を形成したことを特徴とする複写防止用媒体。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体を用いる複写装置であって、原稿全面に紫外光を照射することが可能な紫外光照射手段を備えたことを特徴とする複写装置。
【請求項3】
請求項2において、原稿台に原稿を密着させるための圧板として、紫外光に対して遮光性を有する部材からなる圧板を用い、前記圧板が原稿台に密着していない状態では動作しない機構を設けたことを特徴とする複写装置。
【請求項4】
請求項1に記載の媒体に対し、原稿読み取り工程の前に原稿全面に紫外光を照射する工程を実施することを特徴とする複写防止方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−243100(P2006−243100A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55449(P2005−55449)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】