説明

複合アンテナ

【課題】周波数帯の異なる第1と第2のアンテナ16、24を配設しても、第1の周波数帯用の第1のアンテナ18の利得低下がない複合アンテナを提供する。
【解決手段】第1のアンテナ18に接続する第1の同軸線路28の外部導体28aと第2のアンテナ24に接続する第2の同軸線路30の外部導体30aの絶縁外被に導電テープ32を巻いて容量結合し、容量結合した箇所から第1の同軸線路28の外部導体28aを第1のアンテナ18の第1のグランド板12に電気的接続した箇所までの経路長aと、容量結合した箇所から第2の同軸線路30の外部導体30aを第1のアンテナ24の第2のグランド板26に電気的接続した箇所までの経路長b、および第2のグランド板26の第2の同軸線路30の外部導体30aを電気的接続した箇所から第2のグランド板26で最も離れた箇所までの距離cを合計した総経路長を、第1の周波数帯の略1/2波長の実効長の長さとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1枚のグランド板の上に、周波数帯の異なる複数のアンテナが配設された複合アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用にあっては、周波数帯の異なる携帯電話用や衛星ラジオ放送用またGPS用など様々な無線通信手段に対応したアンテナが必要である。そこで、これらのアンテナが配設されるスペースをより小さくする等の目的で、携帯電話用のアンテナの1枚のグランド板の上に、携帯電話の周波数帯用のアンテナエレメントと衛星ラジオ放送用およびGPS用のそれぞれのアンテナを配設した複合アンテナがある。これらのアンテナは、それぞれに同軸線路により機器と電気的接続されている。ここで、例えば、携帯電話の周波数帯用のアンテナと同軸線路を接続して高いアンテナ利得で効率的に信号を伝送させるためには、同軸線路の外部導体から携帯電話の周波数帯の不要放射がなされないように、バランを必要とする。なお、不要放射がなされると、アンテナ利得が低下するとともに指向特性にも歪みを生ずる。このバランが必要性のために、グランド板に配設される回路基板が複雑となるという不具合がある。
【0003】
特開2007−195001号公報(特許文献1)には、かかるバランに代わる技術が示されている。この特許文献1に示された技術を以下に簡単に説明する。まず、アンテナの入出力端子に同軸線路の中心導体を電気的接続し、この同軸線路の外側導体をアンテナの入出力端子の近くでグランド板に電気的接続する。そして、同軸線路の外側導体をグランド板から導出する縁でグランド板に電気的接続する。さらに、同軸線路の外側導体がアンテナの入出力端子の近くとグランド板の縁でグランド板に電気的接続された間の長さを、アンテナが送受信する例えば携帯電話用の周波数帯の略1/4波長の実効長に設定する。すると、グランド板上の同軸線路の外側導体に、携帯電話用の周波数の漏洩電流が進行波として伝播するが、この進行波はグランド板の縁で反射され、反射された進行波は逆方向に外側導体を伝播する。この進行波と反射されて逆方向に伝播する進行波は、180度の位相差があり、アンテナの入出力端子の近くでグランド板に電気的接続された点で互いに打ち消される。もって、アンテナの入出力端子には、漏洩電流が生じることがなく、アンテナから出力される信号には、漏洩電流の影響による大きな歪みを生ずることがない。
【特許文献1】特開2007−195001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、1枚のグランド板の上に、携帯電話の周波数帯用と衛星ラジオ放送用およびGPS用のそれぞれのアンテナを配設した複合アンテナで、携帯電話の周波数帯用のアンテナに接続された同軸線路に特許文献1に示された技術を適用したものを製作すると、衛星ラジオ放送用およびGPS用のそれぞれのアンテナが配設されていないアンテナと比較して、携帯電話の周波数帯用のアンテナの利得が低下した。これは、携帯電話の周波数帯用のアンテナに接続される同軸線路の外部導体からの携帯電話の周波数帯の不要放射は抑制できるが、衛星ラジオ放送用およびGPS用のそれぞれのアンテナに接続される他の同軸線路の外部導体に携帯電話の周波数帯の漏洩電流が進行波として伝播し、この漏洩電流により不要放射がなされ、携帯電話のアンテナ利得が低下するためと考えられる。
【0005】
本発明は、上述のごとき事情に鑑みてなされたもので、第1の周波数帯用とこれと異なる第2の周波数帯用のアンテナを配設した複合アンテナであっても、第1の周波数帯用の第1のアンテナの利得低下がないようにした複合アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明の複合アンテナは、第1のグランド板の上に第1の周波数帯用の第1のアンテナエレメントを配設し、前記第1のアンテナエレメントに中心導体が電気的接続される第1の同軸線路の外側導体を前記第1のグランド板に電気的接続し、前記第1のグランド板と電気的に分離して、前記第1の周波数帯と異なる周波数帯の第2の周波数帯用の第2のアンテナエレメントと第2のグランド板を配設し、前記第2のアンテナエレメントに中心導体が電気的接続される第2の同軸線路の外側導体を前記第2のグランド板に電気的接続した複合アンテナにおいて、前記第1の同軸線路の外部導体と前記第2の同軸線路の外部導体を電気的結合し、この電気的結合した箇所から前記第1の同軸線路の外部導体を前記第1のグランド板に電気的接続した箇所までの経路長と前記電気的結合した箇所から前記第2の同軸線路の外部導体を前記第2のグランド板に電気的接続した箇所までの経路長および前記第2のグランド板の前記第2の同軸線路の外部導体を電気的接続した箇所から前記第2のグランド板で最も離れた箇所までの距離を合計した総経路長を、前記第1の周波数帯の略1/2波長の実効長となるように構成されている。
【0007】
そして、前記第1のグランド板の上に電気的に分離して、第2のグランド板を配設して構成しても良い。
【0008】
また、前記第1の同軸線路と前記第2の同軸線路を並べて、2つの同軸線路の絶縁外被を囲むように導電体を巻き付けて、前記第1の同軸線路の外部導体と前記第2の同軸線路の外部導体を容量結合するように構成することができる。
【0009】
さらに、前記同軸線路に巻き付ける前記導電体を、前記同軸線路の長さ方向に幅を有するように構成しても良い。
【0010】
そしてさらに、前記同軸線路に巻き付ける前記導電体を、前記同軸線路の長さ方向に幅を有する導電テープで構成することが可能である。
【0011】
そしてまた、前記導電体の前記第1のグランド板側の端部を経由する前記総経路長を、前記第1の周波数帯の高い周波数の略1/2波長の実効長またはそれより短くなるようにし、前記導電体の前記第1のグランド板側と反対側の端部を経由する前記総経路長を、前記第1の周波数帯の低い周波数の略1/2波長の実効長またはそれより長くなるように構成することができる。
【0012】
また、第1のグランド板の上に第1の周波数帯用の第1のアンテナエレメントを配設し、前記第1のアンテナエレメントに中心導体が電気的接続される第1の同軸線路の外側導体を前記第1のグランド板に電気的接続し、前記第1のグランド板と電気的に分離して、前記第1の周波数帯と異なる周波数帯の第2の周波数帯用の第2のアンテナエレメントと第2のグランド板を配設し、前記第2のアンテナエレメントに中心導体が電気的接続される第2の同軸線路の外側導体を前記第2のグランド板に電気的接続し、前記第1のグランド板と電気的に分離して、前記第1の周波数帯と異なる周波数帯の第3の周波数帯用の第3のアンテナエレメントと第3のグランド板を配設し、前記第3のアンテナエレメントに中心導体が電気的接続される第3の同軸線路の外側導体を前記第3のグランド板に電気的接続した複合アンテナにおいて、前記第1の同軸線路の外部導体と前記第2の同軸線路の外部導体を電気的結合し、この第1の電気的結合した箇所から前記第1の同軸線路の外部導体を前記第1のグランド板に電気的接続した箇所までの経路長と前記第1の電気的結合した箇所から前記第2の同軸線路の外部導体を前記第2のグランド板に電気的接続した箇所までの経路長および前記第2のグランド板の前記第2の同軸線路の外部導体を電気的接続した箇所から前記第2のグランド板で最も離れた箇所までの距離を合計した第1の総経路長を、前記第1の周波数帯の略1/2波長の実効長となるようにし、前記第1の同軸線路の外部導体と前記第3の同軸線路の外部導体を電気的結合し、この第2の電気的結合した箇所から前記第1の同軸線路の外部導体を前記第1のグランド板に電気的接続した箇所までの経路長と前記第2の電気的結合した箇所から前記第3の同軸線路の外部導体を前記第3のグランド板に電気的接続した箇所までの経路長および前記第3のグランド板の前記第3の同軸線路の外部導体を電気的接続した箇所から前記第3のグランド板で最も離れた箇所までの距離を合計した第2の総経路長を、前記第1の周波数帯の略1/2波長の実効長となるように構成されても良い。
【0013】
そして、前記第1の同軸線路と前記第2の同軸線路を並べて、前記第1の同軸線路の外部導体と前記第2の同軸線路の外部導体をそれぞれ絶縁外被を除いて直接電気的結合するように構成することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の複合アンテナにあっては、第1の同軸線路の外部導体と第2の同軸線路の外部導体を電気的結合し、この電気的結合した箇所から第1の同軸線路の外部導体を第1のグランド板に電気的接続した箇所までの経路長と電気的結合した箇所から第2の同軸線路の外部導体を第2のグランド板に電気的接続した箇所までの経路長および第2のグランド板の第2の同軸線路の外部導体を電気的接続した箇所から第2のグランド板で最も離れた箇所までの距離を合計した総経路長を、第1の周波数帯の略1/2波長の実効長となるようにしたので、第1の同軸線路および第2の同軸線路の外部導体等に流れる第1の周波数帯の漏洩電流に対して、第2のグランド板の第2の同軸線路の外部導体を電気的接続した箇所から第2のグランド板で最も離れた箇所で、インピーダンスが無限大となり、漏洩電流の流れを遮断できる。その結果、第1の周波数帯の漏洩電流による不要放射がなく、第1の周波数帯用の第1のアンテナの利得低下や指向特性の歪みがなくなる。
【0015】
そして、請求項2記載の複合アンテナにあっては、第1のグランド板の上に、第2のグランド板を電気的に分離して配設するので、平面から見て複合アンテナの設置面積が小さなものとすることができる。
【0016】
そして、請求項3記載の複合アンテナにあっては、第1の同軸線路と第2の同軸線路を並べて、2つの同軸線路の絶縁外被を囲むように導電体を巻き付けて、第1の同軸線路の外部導体と第2の同軸線路の外部導体を容量結合するようにしたので、同軸線路の外部導体を覆う絶縁外被の部材を剥がす必要がなく、電気的結合させる作業が容易である。
【0017】
さらに、請求項4記載の複合アンテナにあっては、同軸線路に巻き付ける導電体を、同軸線路の長さ方向に幅を有するようにしているので、導電体の第1のグランド板側の端部を経由する総経路長と反対側の端部を経由する総経路長が相違し、総経路長の幅に応じて周波数幅のある漏洩電流の流れを遮断でき、それらの周波数幅の漏洩電流による不要放射がなくなる。
【0018】
そしてさらに、請求項5記載の複合アンテナにあっては、同軸線路に巻き付ける導電体を、同軸線路の長さ方向に幅を有する導電テープで構成するので、総経路長に幅を設たせるための構造が簡単である。
【0019】
そしてまた、請求項6記載の複合アンテナにあっては、導電体の第1のグランド板側の端部を経由する総経路長を、第1の周波数帯の高い周波数の略1/2波長の実効長またはそれより短くなるようにし、導電体の第1のグランド板側と反対側の端部を経由する総経路長を、第1の周波数帯の低い周波数の略1/2波長の実効長またはそれより長くなるようにしたので、第1の周波数帯の帯域内の漏洩電流の流れを全て遮断することができ、第1の周波数帯用の第1のアンテナの利得低下や指向特性の歪みがなくなる。
【0020】
また、請求項8記載の複合アンテナにあっては、3つのアンテナからなる複合アンテナであって、第1の同軸線路の外部導体と第2の同軸線路の外部導体を第1の電気的結合し、第1の同軸線路の外部導体を第1のグランド板に電気的接続した箇所から第1の電気的結合した箇所を経由して第2の同軸線路の外部導体を第2のグランド板に電気的接続した箇所をさらに経由して第2のグランド板の第2の同軸線路の外部導体を電気的接続した箇所から第2のグランド板で最も離れた箇所までの距離を合計した第1の総経路長を、第1の周波数帯の略1/2波長の実効長となるようにし、第1の同軸線路の外部導体と第3の同軸線路の外部導体を第2の電気的結合し、第1の同軸線路の外部導体を第1のグランド板に電気的接続した箇所から第2の電気的結合した箇所を経由して第3の同軸線路の外部導体を第3のグランド板に電気的接続した箇所をさらに経由して第3のグランド板の第3の同軸線路の外部導体を電気的接続した箇所から第3のグランド板で最も離れた箇所までの距離を合計した第2の総経路長を、第1の周波数帯の略1/2波長の実効長となるようにしたので、第1の同軸線路および第2の同軸線路の外部導体等に流れる第1の周波数帯の漏洩電流に対して、第2のグランド板の第2の同軸線路の外部導体を電気的接続した箇所から第2のグランド板で最も離れた箇所で、インピーダンスが無限大となり、漏洩電流の流れを遮断でき、また第1の同軸線路および第3の同軸線路の外部導体等に流れる第1の周波数帯の漏洩電流に対して、第3のグランド板の第3の同軸線路の外部導体を電気的接続した箇所から第3のグランド板で最も離れた箇所で、インピーダンスが無限大となり、漏洩電流の流れを遮断できる。その結果、第1の周波数帯の漏洩電流による不要放射がなく、第1の周波数帯用の第1のアンテナの利得低下や指向特性の歪みがなくなる。
【0021】
そして、請求項9記載の複合アンテナにあっては、第1の同軸線路と第2の同軸線路を並べて、第1の同軸線路の外部導体と第2の同軸線路の外部導体をそれぞれ絶縁外被を除いて直接電気的結合するので、確実な電気的接続が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の第1実施例を図1ないし図5を参照して説明する。図1は、本発明の複合アンテナの第1実施例の構造を示す縦断面図である。図2は、本発明の複合アンテナの第1実施例の構造を示す平面図である。図3は、本発明の複合アンテナの第1実施例の構造を示す斜視図である。図4は、第1実施例の水平面内の平均利得を示す図ある。図5は、導電体の幅を変えたVSWRである。
【0023】
図1ないし図3において、アンテナベースとしての基台10の上に1枚の第1のグランド板12が配設され、この第1のグランド板12の上に、第1の基板14と第1のアンテナエレメント16が配設され、携帯電話用の800MHz帯を送受信できる携帯電話の周波数帯用の第1のアンテナ18が構成されている。さらに、第1のグランド板12の上に、第1のアンテナ18(第1の基板14と第1のアンテナエレメント16)に対して横にずらしてしかも第1のグランド板12から絶縁された状態で第2の基板20と第2のアンテナエレメント22からなる衛星ラジオ放送用の第2のアンテナ24が配設されている。このようなアンテナが図示しない自動車のルーフ上に設置される。この設置において、第1のグランド板12は、導電性であるルーフに電気的接続される。第2の基板20には、第2のアンテナ24の第2のグランド板26が第2の基板20の上面全体に設けられている。第1のアンテナエレメント16に中心導体が電気的接続される第1の同軸線路28の外部導体28aは、第1のグランド板12に電気的接続される。なお、図3において、第1の同軸線路28は、第1の基板14の上面に設けられたパターンを介してその中心導体が第1のアンテナエレメント16に電気的接続されるため、外部導体28aが第1の基板14の上面に設けられたGND用パターンに電気的接続されるとともに、この接続部分がケーブルを介して第1のグランド板12に電気的接続されている。また、第2のアンテナエレメント22に中心導体が電気的接続される第2の同軸線路30の外部導体30aは、第2の基板20の下面に設けられたパターンを介してその中心導体が第2のアンテナエレメント22に電気的接続されるため、外部導体30aが第2の基板20の下面に設けられたGND用パターンに電気的接続されるとともに、この接続部分がケーブルを介して第2の基板20の上面の第2のグランド板26に電気的接続されている。この第2のグランド板26は平面形状が略正方形であり、その一辺の略中央に外部導体30aに電気的接続されたケーブルが電気的接続される。そして、第1の同軸線路の28と第2の同軸線路30が、孔を貫通して基台10の下方側に平行に並べて引き出され、第1の同軸線の28と第2の同軸線路30の絶縁外被を囲むように導電体からなる導電テープ32が巻き付けられている。この導電テープ32は、第1の同軸線路の28と第2の同軸線路30の長さ方向に幅を有する。第1の同軸線路28の外部導体28aと導電テープ32は、絶縁外被を挟んでコンデンサを構成しており、容量結合されている。また、第2の同軸線路30の外部導体30aと導電テープ32も、絶縁外被を挟んでコンデンサを構成しており、容量結合されている。よって、第1と第2の同軸線路28、30の外部導体28a、30aが、電気的結合として容量結合されたている。さらに、導電テープ32が巻き付けられた第1の同軸線路28と第2の同軸線路30の先には、同軸コネクタが適宜に接続されている。
【0024】
かかる構造において、導電テープ32を巻き付けた箇所から第1の同軸線路28の外部導体28aが第1のグランド板12に電気的接続されるまでの経路長aと、導電テープ32を巻き付けた箇所から第2の同軸線路30の外部導体30aが第2のグランド板26に電気的接続されるまでの経路長bおよび、第2の同軸線路30の外部導体30aが第2のグランド板26に電気的接続された箇所から第2のグランド板26で最も離れた箇所までの距離cを合計した総経路長が、第1の周波数帯である800MHz帯の携帯電話の周波数帯の略1/2波長の実効長に設定される。さらに詳細に説明すれば、導電テープ32は幅を有するので、導電テープ32の第1のグランド板12側の端部を経由する総経路長を、800MHz帯の携帯電話の周波数帯の高い周波数である894MHzの略1/2波長の実効長またはそれより短くなるようにし、導電テープ32の第1のグランド板12側と反対側の端部を経由する総経路長を、第1の周波数帯の低い周波数の824MHzの略1/2波長の実効長またはそれより長くなるように設定される。なお、経路長aには、第1の同軸線路28の外部導体28aが第1の基板14の上面に設けられたGND用パターンに電気的接続された箇所から第1のグランド板12に電気的接続されるまでのケーブルの経路長も含まれる。また、経路長bには、第2の同軸線路30の外部導体30aが第2の基板20の下面に設けられたGND用パターンに電気的接続された箇所から第2の基板20の上面の第2のグランド板26に電気的接続されまでのケーブルの経路長も含まれる。そしてまた、距離cにおける「最も離れた箇所」とは、第2のグランド板26上で外部導体30aの接続箇所までの電気的な最短経路上の距離が最も遠い箇所を示す。
【0025】
第1の実施例にあっては、導電テープ32を巻き付けた箇所の第1のグランド板12側の端から第1の同軸線路28の外部導体28aが第1のグランド板12に電気的接続されるまでの経路長aは51mmに設定され、導電テープ32を巻き付けた箇所の第1のグランド板12側の端から第2の同軸線路30の外部導体30aが第2のグランド板26に電気的接続されるまでの経路長bは75mmに設定され、第2の同軸線路30の外部導体30aが第2のグランド板26に電気的接続された箇所から第2のグランド板26で最も離れた箇所までの距離cは26mmであり、これらを合計した総経路長は152mmである。この長さは、第1の周波数帯である800MHz帯の高い周波数の894MHzの略1/2波長である167.8mmよりも短い。そして、導電テープ32は幅wが20mmに設定されているので、導電テープ32を巻き付けた箇所の第1のグランド板12側と反対側の端部を経由する総経路長は、導電テープ32の幅wを往復する経路長40mmを加えた192mmである。この長さは、第1の周波数帯である800MHz帯の低い周波数の824MHzの略1/2波長である182.0mmよりも長い。なお、総経路長が所定の値となれば良く、経路長aとbおよび距離cのそれぞれの長さは上記実施例と異なっても良いことは、容易に理解されるであろう。また、導電テープ32の幅も、周波数帯域の幅に応じて適宜に設定すれば良いことも、容易に理解されるであろう。
【0026】
上述の構成において、本発明の複合アンテナにあっては、第1のアンテナ18の水平面内の平均利得を測定したところ、図4(a)に示すのごときものであった。比較のために、上記構成から、導電テープ32を取り除いた複合アンテナの第1のアンテナ18の平均利得にあっては、(b)に示すごときものであり、本発明の構造によりアンテナ利得が改善されていることは明らかである。そして、複合アンテナでなく、携帯電話用の800MHz帯を送受信できる携帯電話の周波数帯用の第1のアンテナ18が単体で配設されたものにあっては、(c)に示すごとき利得であった。図4(c)に示される平均利得と図4(a)に示される平均利得は、ほぼ同様であり、本発明は複合アンテナでありながら、単体で配設した第1のアンテナ18とほぼ同じ平均利得が得られていることが示された。また、導電テープ32の幅wを約20mmに設定することで、導電テープ32の第1のグランド板12側の端部を経由する総経路長と第1のグランド板12側と反対側の端部を経由する総経路長を、それぞれに800MHz帯の携帯電話の周波数帯の高い周波数である894MHzと低い周波数である824MHzの略1/2波長の実効長となるようにすることで、図5の(a)に示すごとく、VSWRに歪みを生じない。これに対して、導電テープ32の幅wを約10mmと短くすると、導電テープ32の第1のグランド板12側の端部を経由する総経路長は、800MHz帯の携帯電話の周波数帯の高い周波数である894MHzとなるが、第1のグランド板12側と反対側の端部を経由する総経路長は、低い周波数である824MHzの略1/2波長の実効長よりも若干短く設定される。この結果、図5(b)に矢印で示すように、低い周波数側でVSWRに歪みが生じている。よって、導電テープ32を適宜な幅に設定することで、第2の同軸線路30等に重畳される第1の周波数帯の漏洩電流による不要放射がなくなり、第1の周波数帯用の第1のアンテナ18の利得低下や指向特性の歪みをなくすことができる。しかも、かかる作用が、携帯電話用の周波数帯域である第1の周波数帯の全帯域で得られる。
【0027】
次に、本発明の第2実施例を図6を参照して説明する。図6は、本発明の複合アンテナの第2実施例の構造を示す縦断面図である。図6において、図1ないし図3と同じまたは均等な部材には、同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0028】
図6に示す第2実施例で、図1ないし図3に示す第1実施例と相違するところは、第1のグランド板12の上に、携帯電話用の800MHz帯を送受信できる携帯電話の周波数帯用の第1のアンテナ18が構成され、また衛星ラジオ放送用の第2のアンテナ24が配設されているのに加えて、第1のアンテナ18および第2のアンテナ24に対して横にずらしてしかも第1のグランド板12から絶縁された状態で第3の基板34と第3のアンテナエレメント36からなるGPS用の第3のアンテナ38が配設されている。第3の基板34には、第3のアンテナ38の第3のグランド板40が片面全面に設けられている。さらに、第3のアンテナエレメント36に中心導体が電気的接続される第3の同軸線路42の外部導体42aは、第3の基板34に設けられた第3のグランド板40に電気的接続されている。この第3のグランド板40は平面形状が略正方形であり、その一辺の略中央に外部導体42aが電気的接続される。そして、第1の同軸線路の28と第2の同軸線路30および第3の同軸線路が、孔を貫通して基台10の下方側に平行に並べて引き出され、第1の同軸線の28と第2の同軸線路30の絶縁外被を囲むように第1の導電テープとしての導電テープ32が巻き付けられ、さらに第1の同軸線路28と第3の同軸線路42の絶縁外被を囲むように導電体からなる第2の導電テープ44が巻き付けられている。導電テープ32と第2の導電テープ44は、電気的に分離されている。そして、第2の導電テープ44も、第1の同軸線路の28と第3の同軸線路42の長さ方向に幅を有する。
【0029】
かかる構造の第2実施例において、第2の導電テープ44を巻き付けた箇所から第1の同軸線路28の外部導体28aが第1のグランド板12に電気的接続されるまでの経路長dと、第2の導電テープ44を巻き付けた箇所から第3の同軸線路42の外部導体42aが第3のグランド板40に電気的接続されるまでの経路長eおよび、第3の同軸線路42の外部導体42aが第3のグランド板40に電気的接続された箇所から第3のグランド板40で最も離れた箇所までの距離fを合計した総経路長が、第1の周波数帯である800MHz帯の携帯電話の周波数帯の略1/2波長の実効長に設定される。さらに詳細に説明すれば、第2の導電テープ44が幅を有するので、第2の導電テープ44の第1のグランド板12側の端部を経由する総経路長を、800MHz帯の携帯電話の周波数帯の高い周波数である894MHzの略1/2波長の実効長またはそれより短くなるようにし、第2の導電テープ44の第1のグランド板12側と反対側の端部を経由する総経路長を、第1の周波数帯の低い周波数の824MHzの略1/2波長の実効長またはそれより長くなるように設定される。なお、第2のアンテナ24と第3のアンテナ38は、配設位置が相違することから、第1の導電テープとしての導電テープ32と第2の導電テープ44を巻き付ける第1の同軸線路28の位置が相違している。
【0030】
上述の構成からなる第2実施例において、第2の導電テープ44の幅を約20mmに設定することで、第2の導電テープ44の第1のグランド板12側の端部を経由する総経路長が、800MHz帯の携帯電話の周波数帯の高い周波数である894MHzの略1/2波長の実効長より短くなるとともに、第2の導電テープ44の第1のグランド板12側と反対側の端部を経由する総経路長を、第1の周波数帯の低い周波数の824MHzの略1/2波長の実効長より長くなるように設定される。そこで、第1実施例と同様に、第2の同軸線路30と第3の同軸線路42等に重畳される第1の周波数帯の漏洩電流による不要放射がなく、第1の周波数帯用の第1のアンテナ18の利得低下や指向特性の歪みをなくすことができる。しかも、かかる作用が、携帯電話用の周波数帯域である第1の周波数帯の全帯域で得られる。
【0031】
さらに、本発明の第3実施例を図7を参照して説明する。図7は、本発明の複合アンテナの第3施例の構造を示す縦断面図である。図7おいて、図1ないし図3および図6と同じまたは均等な部材には、同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0032】
図7に示す第3実施例で、図1ないし図3に示す第1実施例と相違するところは、第1の同軸線路28と第2の同軸線路30に導電テープを巻き付けて容量結合させるのに代えて、第1の同軸線路28と第2の同軸線路30の絶縁外被をそれぞれ除いて、半田付けなどにより第1の同軸線路28の外部導体28aと第2の同軸線路30の外部導体30aが電気的結合として直接電気的接続46されている、ことにある。
【0033】
かかる構造の第3の実施例にあっても、第1の同軸線路28の外部導体28aと第2の同軸線路30の外部導体30aを直接電気的接続46する位置、および直接電気的接続46する同軸線路方向の長さを適宜に設定することで、図4(a)に示す第1の実施例と同様な平均利得が得られている。よって、第2の同軸線路30等に重畳される第1の周波数帯の漏洩電流による不要放射がなく、第1の周波数帯用の第1のアンテナ18の利得低下や指向特性の歪みをなくすことができ、しかもかかる作用が携帯電話用の周波数帯域の第1の周波数帯の全体域で得られる。
【0034】
なお、上記実施例にあっては、第1のアンテナ18が、携帯電話用の周波数帯の800MHz帯であるが、これに限られず、携帯電話用の他の周波数帯のアンテナであっても良い。また、第2と第3のアンテナ24、38は衛星ラジオ放送用およびGPS用のアンテナに限られず、他の通信手段用のアンテナであっても良い。さらに、第1と第3実施例において、第1の基板14で第1の同軸線路28の中心導体と第1のアンテナエレメント16の間にマッチング回路を介装し、また第2の基板20で第2の同軸線路30の中心導体と第2のアンテナエレメント22の間にマッチング回路を介装しても良い。さらに、第2実施例において、第1の基板14で第1の同軸線路28の中心導体と第1のアンテナエレメント16の間にマッチング回路を介装し、また第2の基板20で第2の同軸線路30の中心導体と第2のアンテナエレメント22の間にマッチング回路を介装して、さらに第3の基板34で第3の同軸線路42の中心導体と第3のアンテナエレメント36の間にマッチング回路を介装しても良い。第2実施例において、導電テープ32、44を巻き付けるのに代えて、絶縁外被をそれぞれに取り除いて半田付け等により外部導体を直接電気的接続46するようにしても良い。同軸線路28、30、42の外部導体28a、30a、42aの直接電気的接続46にあっては、半田付けに限られず導電テープを巻き付けるようなものであっても良いことは勿論である。なお、上記実施例において、第1のグランド板12の上に、第2のグランド板26、第3のグランド板40が配設されているが、かかる配設構造に限られず、、第1のグランド板12の上から第2のグランド板26、第3のグランド板40が、平面から見て、外れてまたはずれて配設されてもいても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の複合アンテナの第1実施例の構造を示す縦断面図である。
【図2】本発明の複合アンテナの第1実施例の構造を示す平面図である。
【図3】本発明の複合アンテナの第1実施例の構造を示す斜視図である。
【図4】第1実施例の水平面内の平均利得を示す図ある。
【図5】導電体の幅を変えたVSWRである。
【図6】本発明の複合アンテナの第2実施例の構造を示す縦断面図である。
【図7】本発明の複合アンテナの第3施例の構造を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 基台
12 第1のグランド板
14 第1の基板
16 第1のアンテナエレメント
18 第1のアンテナ
20 第2の基板
22 第2のアンテナエレメント
24 第2のアンテナ
26 第2のグランド板
28 第1の同軸線路
28a、30a、42a 外部導体
30 第2の同軸線路
32 導電テープ
34 第3の基板
36 第3のアンテナエレメント
38 第3のアンテナ
40 第3のグランド板
42 第3の同軸線路
44 第2の導電テープ
46 直接電気的接続

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のグランド板の上に第1の周波数帯用の第1のアンテナエレメントを配設し、前記第1のアンテナエレメントに中心導体が電気的接続される第1の同軸線路の外側導体を前記第1のグランド板に電気的接続し、前記第1のグランド板と電気的に分離して、前記第1の周波数帯と異なる周波数帯の第2の周波数帯用の第2のアンテナエレメントと第2のグランド板を配設し、前記第2のアンテナエレメントに中心導体が電気的接続される第2の同軸線路の外側導体を前記第2のグランド板に電気的接続した複合アンテナにおいて、前記第1の同軸線路の外部導体と前記第2の同軸線路の外部導体を電気的結合し、この電気的結合した箇所から前記第1の同軸線路の外部導体を前記第1のグランド板に電気的接続した箇所までの経路長と前記電気的結合した箇所から前記第2の同軸線路の外部導体を前記第2のグランド板に電気的接続した箇所までの経路長および前記第2のグランド板の前記第2の同軸線路の外部導体を電気的接続した箇所から前記第2のグランド板で最も離れた箇所までの距離を合計した総経路長を、前記第1の周波数帯の略1/2波長の実効長となるように構成したことを特徴とする複合アンテナ。
【請求項2】
請求項1記載の複合アンテナにおいて、前記第1のグランド板の上に電気的に分離して、第2のグランド板を配設して構成したことを特徴とする複合アンテナ。
【請求項3】
請求項1記載の複合アンテナにおいて、前記第1の同軸線路と前記第2の同軸線路を並べて、2つの同軸線路の絶縁外被を囲むように導電体を巻き付けて、前記第1の同軸線路の外部導体と前記第2の同軸線路の外部導体を容量結合するように構成したことを特徴とする複合アンテナ。
【請求項4】
請求項3記載の複合アンテナにおいて、前記同軸線路に巻き付ける前記導電体を、前記同軸線路の長さ方向に幅を有するように構成したことを特徴とする複合アンテナ。
【請求項5】
請求項4記載の複合アンテナにおいて、前記同軸線路に巻き付ける前記導電体を、前記同軸線路の長さ方向に幅を有する導電テープで構成したことを特徴とする複合アンテナ。
【請求項6】
請求項4または5記載の複合アンテナにおいて、前記導電体の前記第1のグランド板側の端部を経由する前記総経路長を、前記第1の周波数帯の高い周波数の略1/2波長の実効長またはそれより短くなるようにし、前記導電体の前記第1のグランド板側と反対側の端部を経由する前記総経路長を、前記第1の周波数帯の低い周波数の略1/2波長の実効長またはそれより長くなるように構成したことを特徴とする複合アンテナ。
【請求項7】
請求項1記載の複合アンテナにおいて、前記第1の周波数帯を携帯電話用の周波数帯に設定し、前記第2の周波数帯を衛星ラジオ放送用の周波数帯に設定して構成したことを特徴とする複合アンテナ。
【請求項8】
第1のグランド板の上に第1の周波数帯用の第1のアンテナエレメントを配設し、前記第1のアンテナエレメントに中心導体が電気的接続される第1の同軸線路の外側導体を前記第1のグランド板に電気的接続し、前記第1のグランド板と電気的に分離して、前記第1の周波数帯と異なる周波数帯の第2の周波数帯用の第2のアンテナエレメントと第2のグランド板を配設し、前記第2のアンテナエレメントに中心導体が電気的接続される第2の同軸線路の外側導体を前記第2のグランド板に電気的接続し、前記第1のグランド板と電気的に分離して、前記第1の周波数帯と異なる周波数帯の第3の周波数帯用の第3のアンテナエレメントと第3のグランド板を配設し、前記第3のアンテナエレメントに中心導体が電気的接続される第3の同軸線路の外側導体を前記第3のグランド板に電気的接続した複合アンテナにおいて、前記第1の同軸線路の外部導体と前記第2の同軸線路の外部導体を電気的結合し、この第1の電気的結合した箇所から前記第1の同軸線路の外部導体を前記第1のグランド板に電気的接続した箇所までの経路長と前記第1の電気的結合した箇所から前記第2の同軸線路の外部導体を前記第2のグランド板に電気的接続した箇所までの経路長および前記第2のグランド板の前記第2の同軸線路の外部導体を電気的接続した箇所から前記第2のグランド板で最も離れた箇所までの距離を合計した第1の総経路長を、前記第1の周波数帯の略1/2波長の実効長となるようにし、前記第1の同軸線路の外部導体と前記第3の同軸線路の外部導体を電気的結合し、この第2の電気的結合した箇所から前記第1の同軸線路の外部導体を前記第1のグランド板に電気的接続した箇所までの経路長と前記第2の電気的結合した箇所から前記第3の同軸線路の外部導体を前記第3のグランド板に電気的接続した箇所までの経路長および前記第3のグランド板の前記第3の同軸線路の外部導体を電気的接続した箇所から前記第3のグランド板で最も離れた箇所までの距離を合計した第2の総経路長を、前記第1の周波数帯の略1/2波長の実効長となるように構成したことを特徴とする複合アンテナ。
【請求項9】
請求項1記載の複合アンテナにおいて、前記第1の同軸線路と前記第2の同軸線路を並べて、前記第1の同軸線路の外部導体と前記第2の同軸線路の外部導体をそれぞれに絶縁外被を除いて直接電気的結合するように構成したことを特徴とする複合アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−109296(P2011−109296A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260669(P2009−260669)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】