複合シールド工法並びにそのための複合シールド機及びセグメント
【課題】シールド機の発進準備作業を大幅に省力化し得る複合シールド工法を提供する。
【解決手段】複合シールド機1の到達地点直前において、前記テールスキンプレートの外形状に沿った外形リング形状部6Aを持つとともに、発進予定のシールド機3A、3Bによって構築されるセグメント断面形状に合致した内部側リング形状部6B、6Bを併せ持つ断面変更部特殊セグメント6を組立て、発進予定のシールド機3A、3Bのスキンプレート切欠き部31を修繕するようにスキンプレート7を取付けた後、発進予定のシールド機3A、3B内部で、前記内部側リング形状部6Bに連続するようにセグメント8を組み立てると共に、前記内部リング形状部6B以外の部分を塞ぎ、発進予定部外のシールド機2内部を充填材53で埋めた後、シールド機3A、3Bを他から分離し発進させる。
【解決手段】複合シールド機1の到達地点直前において、前記テールスキンプレートの外形状に沿った外形リング形状部6Aを持つとともに、発進予定のシールド機3A、3Bによって構築されるセグメント断面形状に合致した内部側リング形状部6B、6Bを併せ持つ断面変更部特殊セグメント6を組立て、発進予定のシールド機3A、3Bのスキンプレート切欠き部31を修繕するようにスキンプレート7を取付けた後、発進予定のシールド機3A、3B内部で、前記内部側リング形状部6Bに連続するようにセグメント8を組み立てると共に、前記内部リング形状部6B以外の部分を塞ぎ、発進予定部外のシールド機2内部を充填材53で埋めた後、シールド機3A、3Bを他から分離し発進させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のシールド機を並列的に連結して、まゆ形、めがね形、ダルマ形等の複断面シールドトンネルや、楕円、小判、馬蹄形等の単一断面シールドトンネルを施工するとともに、これらシールドトンネルから分岐トンネルを連続的に施工するための複合シールド工法並びにそのための複合シールド機及びセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地下鉄などを建設する場合、先ず駅部を開削工法によって築造した後、駅部の一方側端部を発進基地としてシールド機を組み立て、次の駅部までの路線区間をシールド機によって掘削することが一般に行われているとともに、折り返しとなる駅等に上下線あるいは内外周り線に車両を入れ替えるための渡り線工事においても、開削工法によって築造した後、前記と同様に路線区間をシールド機によって掘削することが一般に行われていた。
【0003】
しかし、近年の都市の過密化によって開削工法を採用すること自体、困難な状況になりつつある。また、開削工法の場合には、道路面で大規模な覆工を必要とし道路交通上の制約が大きく、また地下埋設物に与える影響を抑制しながらの工事となるため、その完成までには多くの工程と時間を要し、当然に工費も嵩むことになっていた。
【0004】
また、前記渡り線工事は、開削工法に変えて複線断面以上の単円シールド又は矩形シールドで行われることがあるが、この場合は駅部までの路線区間もそのままの断面で施工される。しかし、前者の単円シールドの施工では、駅部の掘削工事の深度が大きくなることが問題となり、また、駅部の深度を浅くするためや埋設物を避けるために採用される後者の矩形シールドでの施工では、単円の単線シールド2本に比べ、掘削量が多い、セグメントが特殊であるために工事費が嵩むことになっていた。
【0005】
このような問題に応えるものとして、近年提案されているのが、複合シールド機である。
【0006】
前記複合シールド機は、複数のシールド機を並列的に連結し、所定断面の掘削を可能としたものであり、各シールド機の前胴部には、各々独立した掘削機構およびスキンプレートを有し、かつ後胴部は複合シールド機の外形と同形状の閉合断面としたテールスキンプレートを有する構造となっている。具体的に下記特許文献1には、図17に示されるように、所定間隔を隔てて並設された2個の小径シールド機50,50を有し、各小径シールド機50,50のシールドフレームはそのテール部が対向するように一部欠損(50a、50a)され、そこに薄肉部を介して連結シールドフレーム51が分離可能に溶接され、一体化された複合シールド機が記載されている(段落[0051]〜[0059]及び図13〜図16参照)。前記小径シールド機50,50を発進させる場合には、前記欠損部50aを修繕するようにスキンプレートを取付けた後、発進させるようにする。
【0007】
また、下記特許文献2では、図18に示されるように、複数のシールド機53〜55を並列的に連結した複合シールド機の後部に、該複合シールド機56の外形と略同形状を成すとともに、内部にシールドジャッキを備える閉合断面のテールスキンプレート57を一体的に連設し、かつテールスキンプレート57の内部にシールドジャッキおよびエレクターを備えた複合シールド機56が開示されている。
【特許文献1】特開2003−232185号公報
【特許文献2】特開2003−166393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に記載される複合シールド機の場合は、隣接配置された2個の小径シールド機50,50の上下面部を夫々覆うように連結シールドフレーム51を備える構造であるため、(1)前記小径シールド機50の発進に当たり、小径シールド機50の内部に構築される円形セグメントは、その外側半円部分は一体時に構築された楕円形セグメントに連続しているけれども、内側半円部分のセグメントはそのままでは反力点を確保することができず、別途反力壁等の支持部材を構築することにより、円形セグメントの全周に亘り均一の反力を確保できるようにしているため、前記反力壁等の構築に手間と時間が掛かっていた。(2)また、前記小径シールド機50が発進すると、新たに構築された円形セグメントと、前記連結シールドフレーム51との隙間から地下水や土砂がシールド空間内に流入することになるため、土留め壁の構築や止水等の地盤改良工事を必須としたため、これらの工事にも多大な時間と手間が掛かっていた。
【0009】
(3)さらに、連結シールドフレーム51内は大きなシールド空間となっており、前記小径シールド機50によって連結シールドフレーム51内に構築される円形セグメントは、地山側から土圧を受けることになるが、この土圧による円形セグメントの移動を押さえるための手段が別途必要となっていた。
【0010】
一方、前記特許文献2に記載される複合シールド機56の場合は、特許文献1に記載される複合シールド機と対比すると、中央のシールド機は、側面部分に略鼓形の側面スキンプレートを有するため、これらが支持壁となって構築された円形セグメントの移動を防止することができるが、上記(1)及び(2)の問題点を解決するに至っていない。また、後部側にテールスキンプレート55を別途追加する構造であり、シールド機の機長が長くなるとともに、発進に必要な立坑の断面寸法が大きくなってしまう問題もあった。
【0011】
そこで本発明の主たる課題は、発進シールド機によって構築されるセグメントのための反力点構築作業を省力化するとともに、土砂や地下水の浸入を防止するための土留め壁等の構築作業を省力化する等、シールド機の発進準備作業を大幅に省力化し得る複合シールド工法並びにシールド機及びセグメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、複数のシールド機を並列的に連結するとともに、後胴部側においてシールド機のテールスキンプレート部分に切欠きを設け、テールスキンプレート内の空間を連通させた複合シールド機を用い、所定断面の掘削を行った後、前記複合シールド機を構成する一部又は全部のシールド機を地中発進させる複合シールド工法において、
前記複合シールド機のテールスキンプレート内で、該テールスキンプレートの外形状に沿った閉合形状のセグメントを組立てながら順次掘進した後、到達地点の直前位置において、前記テールスキンプレートの外形状に沿った外形リング形状部を持つとともに、発進予定のシールド機によって構築されるセグメント断面形状に合致した内部側リング形状部を併せ持つ断面変更部特殊セグメントを組立て、シールドジャッキにより1ストローク分だけ前進したならば、発進予定のシールド機のスキンプレート切欠き部を修繕するようにスキンプレートを取付けた後、発進予定のシールド機内部で、前記断面変更部特殊セグメントの内部側リング形状部に連続するように、周方向に閉合するセグメントを組み立てると共に、発進予定部外となる前記内部リング形状部以外の部分を塞ぎ、発進予定部外のシールド機内部を充填材で埋めた後、発進予定のシールド機を他から分離し発進させることを特徴とする複合シールド工法が提供される。
【0013】
上記請求項1記載の本発明においては、シールド機を発進させる断面変更部のセグメントとして、複合シールド機に係るテールスキンプレートの外形状に沿った外形リング形状部を持つとともに、発進予定のシールド機によって構築されるセグメント断面形状に合致した内部側リング形状部を併せ持つ断面変更部特殊セグメントを使用する。そして、この断面変更部特殊セグメントを到達地点で組み立てることにより、発進するシールド機内部で、前記断面変更部特殊セグメントの内部側リング形状部に連続するように、周方向に閉合するセグメントを組み立てるようにする。
【0014】
従って、発進シールド機内部で構築されるセグメントの反力は、その全周に亘り前記断面変更部特殊セグメントの内部側リング形状部によって取ることが可能となるため、従来のように、別途に反力壁等の支持部材を構築する必要が無くなる。また、発進予定部外となる前記内部リング形状部以外の部分を塞ぎ、発進予定部外のシールド機内部を充填材で埋めるようにするため、土留め壁の構築や地盤改良工事を最小化若しくは省略できるため、シールド機の発進準備作業を大幅に簡略化及び省力化し得るようになる。
【0015】
請求項2に係る本発明として、前記発進予定のシールド機は、他のシールド機に対して取り外し可能なボルト及び/又はピンによって連結されている請求項1記載の複合シールド工法が提供される。
【0016】
請求項3に係る本発明として、前記発進予定のシールド機は、スキンプレートの切欠き部を修繕するためのスキンプレートをボルト及び/又はピンによって取付け可能としてある請求項1、2いずれかに記載の複合シールド工法が提供される。
【0017】
上記請求項2及び請求項3に記載の発明は、シールド機の発進準備作業を大幅に簡略化及び省力化を更に進めたものであり、発進予定のシールド機は、他のシールド機に対して取り外し可能なボルト及び/又はピンによって連結すること、及びスキンプレートの切欠き部を修繕するためのスキンプレートをボルト及び/又はピンによって取付け可能とすることにより、特許文献2記載の複合シールド機のように、テールスキンプレートを追加しなくても、シールド機の発進準備作業を大幅に簡略化及び省力化することができ、またシールド機の機長が長くなることによる発進に必要な立坑の断面寸法が大きくなる等の問題も同時に解決することができる。
【0018】
請求項4に係る本発明として、前記請求項1〜3いずれかに記載される複合シールド工法に用いられる複合シールド機は、複数のシールド機を並列的に連結するとともに、シールド機のテールスキンプレート部分に切欠きを設け、テールスキンプレート内の空間を連通させるとともに、発進予定のシールド機は、他のシールド機に対して取り外し可能なボルト及び/又はピンによって連結され、かつテールスキンプレートの切欠き部を修繕するためのスキンプレートをボルト及び/又はピンによって取付け可能としてあることを特徴とする複合シールド機が提供される。
【0019】
請求項5に係る本発明として、鼓形のシールド機の両側に夫々、2基の円形シールド機を配設して相互に連結を図り、全体として断面略楕円形のシールド機としてある請求項4記載の複合シールド機が提供される。
【0020】
請求項6に係る本発明として、前記請求項1〜3いずれかに記載される複合シールド工法において、シールド機発進部に配設されるセグメントであって、該セグメントは、複合シールド機のテールスキンプレートの外形状に沿った外形リング形状部を持つとともに、発進予定のシールド機によって構築されるセグメント断面形状に合致した内部側リング形状部を併せ持つことを特徴とするセグメントが提供される。
【発明の効果】
【0021】
以上詳説のとおり本発明によれば、発進シールド機によって構築されるセグメントのための反力点構築作業を省力化するとともに、土砂や地下水の浸入を防止するための土留め壁等の構築作業を省力化する等、シールド機の発進準備作業を大幅に簡略化及び省力化し得るようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
図1は本発明に係る複合シールド機1の組み立て要領図、図2は複合シールド機1の正面図、図3はその半断面平面図、図4はその縦断面図である。
【0023】
図1に示される複合シールド機1は、中央部に位置する略鼓形断面形状の特殊断面シールド機2と、この特殊断面シールド機2の両側に夫々配設される円形シールド機3A、3Bとが相互に連結され、全体として略楕円形を成すシールド機である。
【0024】
前記複合シールド機1を構成する3基のシールド機2,3A、3Bはそれぞれ、スキンプレートによって周囲が囲まれた胴体を持ち、前面にカッターヘッド32,32を備える構造となっている。また、各シールド機2,3A、3Bは、テールスキンプレート部分に切欠き21,31を有し、合体した状態ではテールスキンプレート内の空間を連通させ、複合シールド機1の外形状を成す閉合断面のセグメント組立て用空間が形成されるようになっている。施工は、合体した状態で、駅部や渡り線部等の大断面トンネル部の掘削を行った後、大断面トンネル部の端部に到達したならば、後述する断面変更部特殊セグメント5を組立て、両側に位置する円形シールド機3A、3Bを中央の特殊断面シールド機2から分離され、そのまま地中発進し、前方側に連続する路線部等を掘進するようになっている。
【0025】
以下、前記複合シールド機1を各部分毎に具体的に詳述すると、
先ず、前記特殊断面シールド機2は、図5に示されるように、上面及び下面にそれぞれ浅い弧状のスキンプレート20a、20aを有し、両側部に半円形凹部20b、20bを有する略鼓形のスキンプレート20を有し、前記凹部20b、20bの後部にはそれぞれ切欠き部21、21を有する。前面には2個の揺動カッタヘッド22、22を備え、略鼓形断面を掘削するようになっている。前記揺動カッタヘッド22、22は、上下部分の略三角形状部分を掘削するために配置された略いちょう葉形の揺動カッタ体である。同揺動カッタヘッド22としては、本出願人が先に出願した特開2003-232191号公報に記載のものをそのまま使用することができる。具体的構造についての説明は同公報に譲るが、この揺動カッタは、シールドフレームの前端の隔壁にカッタフレームを揺動させるべく所定角度範囲内で揺動回転する伸縮ジャッキによって揺動回転される回転ドラムを設け、この回転ドラムにその回転中心から偏心して軸支され上記カッタフレームを支持するカッタ支持軸を設け、この単軸で設けられたカッタ支持軸の自転を防止しつつ公転を許容する自転拘束機構を上記隔壁の後方に設けた揺動カッタ装置である。
【0026】
掘削された土砂は、バルクヘッド23の上下端排出口に連続する排土スクリューコンベア24により外部に排出されるようになっている。後端部の上下部分にはシールドジャッキ26、26…が配設されているとともに、セグメントの組立のために片持ちエレクター(図示せず)が配設されている。
【0027】
なお、本例では鼓形の異形断面を掘削可能とするカッタ構造として、特開2003-232191号公報に記載されるカッタ構造を採用したが、別の態様としては、本出願人が先に出願した特開2003-232190記載の揺動カッタとすることでもよい。また、径の異なる回転カッタを複数配設したり、又は回転カッタと揺動カッタまたは偏心多軸式カッタとを組み合わせる等、各種カッタを単独でまたは組み合わせることによって、前記略鼓形状の特殊断面部分の掘削を行うようにしてもよい。
【0028】
一方、前記円形シールド機3A、3Bは、図6に示されるように、円筒形のスキンプレート30を有し、前記スキンプレート30の後部側において、前記特殊断面シールド機2接続側に、半円形状の切欠き部31が形成され、前面に6本のスポーク状のカッタヘッド32を備える泥土圧式シールド機である。前記カッタヘッド32によって掘削された土砂は、バルクヘッド33の下端排出口に連続する排土スクリューコンベア34によって排出されるようになっている。スキンプレート30の内部には、エレクター35が配設されるとともに、少なくとも外側半周部分にはシールドジャッキ36、36…が配置されている。なお、内側半周部分には将来の発進に備えて予めシールドジャッキ36,36…を設置しておいてもよい。
【0029】
図7に示されるように、前記特殊断面シールド機2と、両側に接続される円形シールド機3A、3Bとは、特殊断面シールド機2のスキンプレート20と、単円形シールド機3A、3Bのスキンプレート30の間を貫通して設けられる複数の連結ボルト4、4…によって相互に接続され、略楕円形に組み立てられる。また、後胴部側には、複合シールド機1の外形状を成す閉合断面の空間が形成され、この空間内でセグメントが組み立てられるようになっている。
【0030】
かかる複合シールド機1によって駅部や渡り線部から連続する路線部を掘削するには、先ずトンネル駅部や渡り線部の一方端側立坑において、前記複合シールド機1を組み立て、駅部や渡り線部の掘削を開始する。掘削に伴うセグメントの組立は、前記特殊断面シールド機2および前記円形シールド機3A、3Bの上記セグメント組立て用空間において、円形シールド機3A、3B内のそれぞれに配置されたエレクター35、35によって、図9(A)に示される外周部のセグメント5の組立を行い、これらエレクター35では組み立てが出来ない中央部分については、特殊断面シールド機2の片持ちエレクターで組み立てるようにする。複合シールド機1の推進は、特殊断面シールド機2のシールドジャッキ26、26…および単円形シールド機3のシールドジャッキ36、36…の反力を、設置したセグメントの端面に取り、複合シールド機1を1サイクル毎に前進させるようにする。
【0031】
その後、トンネル駅部や渡り線部の他方端部の到達地点の直前(詳細には到達点よりシールドジャッキによる1ストローク分だけ手前位置)に達したならば、、図9(B)に示されるように、前記テールスキンプレートの外形状に沿った外形リング形状部6Aを持つとともに、発進予定の円形シールド機3A、3Bによって構築されるセグメント断面形状に合致した内部側リング形状部6B、6Bを併せ持つ断面変更部特殊セグメント6(以下、単に特殊セグメントという。)を組立てるようにする。なお、前記外形リング形状部6Aと内部側リング形状部6Bは側部部分において重複している。前記特殊セグメント6としては、一般的なコンクリートセグメント、鋼製セグメント等を使用することができる。
【0032】
前記特殊セグメント6の組立てを終えたならば、複合シールド機1をシールドジャッキ26…、36…を伸長させることにより前進させたならば、円形シールド機3A、3Bを発進させる準備作業に入る。
【0033】
発進準備作業は、先ず、特殊断面シールド機2のバルクヘッド23,スクリューコンベア24,シールドジャッキ26、26…、片持ちエレクター等の機械設備を撤去する。次いで、図8に示されるように、発進予定の円形シールド機3A、3Bのスキンプレート切欠き部21を修繕するようにスキンプレート7を取付けるとともに、スキンプレート30の後縁部を含む最小限の範囲Hに止水材を注入することにより地盤改良を行った後、円形シールド機3A、3Bの特殊セグメント6に跨るテール部分を切断し、円形シールド機3A、3Bの後端を揃えるとともに、全周に亘るようにテールシール(図示せず)を半周分追加して取り付ける。なお、前記テール部分の切断を行わずに、テールスキンプレートの後縁が周方向に段が付いたままとする、或いは前記テール部分を内側からのボルト接合とし内側から取り外し可能とした場合には前記地盤改良を省略することが可能となる。また、前記スキンプレート7の取付けは溶接等により行ってもよいが、作業の省力化のために、ボルト及び/又はピン60、60…によって取り付けるのが望ましい。
【0034】
次いで、発進予定の円形シールド機3A、3Bの内部で、図10に示されるように、前記断面変更部特殊セグメント6の内部側リング形状部6Bに連続するように、周方向に閉合するセグメント8を組み立てるとともに、特殊セグメント6の発進予定部外となる前記内部リング形状部6B、6B以外の部分を隔壁6Cによって塞いだならば、発進予定部外のシールド機2内部を充填材53で埋める。
【0035】
以上の準備作業が完了したならば、発進予定の円形シールド機3A、3Bと特殊断面シールド機2を接続している連結ボルト4、4…を円形シールド機3A、3B内部において全て取り外し、円形シールド機3A、3Bを分離させた後、図11、図12に示されるように、一方側の円形シールド機3Aが掘削とセグメント8の組み立てを行いながら路線部を掘進する。次いで、養生期間を確保して、シールド機3Bも同様に掘進する。これにより、図13のI−I断面、II−II断面、III−III断面がそれぞれ、図14(A)〜(C)に示されるような断面形状となるシールドトンネルを構築する。
【0036】
〔他の形態例〕
(1)ところで、上記形態例では複合シールド機1による掘削断面形状を略楕円形状としたが、まゆ形、めがね形、ダルマ形、円形、小判、馬蹄形等の断面であってもよい。さらに、図15に示されるように、特殊断面シールド機10と、単円形シールド機11A、11Bとを並列的に連結して馬蹄形を構成した馬蹄形複合シールド機や、図16に示されるように、4基の単円形シールド機13A〜13Dが特殊断面シールド機12の外形線に内接するように設けられた親子シールド機等に対しても適用が可能である。
【0037】
また、上記形態例では特殊断面シールド機1基と単円形シールド機2基の構成としたが、単円形シールド機を上下左右にさらに複数連結した構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る複合シールド機1の組み立て要領図である。
【図2】複合シールド機1の正面図である。
【図3】その半断面平面図である。
【図4】その縦断面図である。
【図5】特殊断面シールド機2を示す、(A)は正面図、(B)は縦断面図、(C)は背面図である。
【図6】円形シールド機3を示す、(A)は正面図、(B)は縦断面図、(C)は背面図である。
【図7】特殊断面シールド機2と単円形シールド機3の連結方法を示す、(A)は平面図、(B)はB-B矢視図である。
【図8】円形シールド機3A、3Bの発進要領図(その1)である。
【図9】(A)は駅部または渡り線部で構築されるセグメント5の斜視図、(B)は特殊セグメント6の斜視図である。
【図10】円形シールド機3A、3Bの発進要領図(その3)を示す平面図である。
【図11】単円形シールド機の発進要領図(その4)で、(A)は発進前の斜視図、(B)は発進後の斜視図である。
【図12】円形シールド機3A、3Bの発進要領図(その5)を示す平断面図である。
【図13】円形シールド機3A、3Bの路線部掘削後を示す平断面図である。
【図14】セグメントの断面形状を示す図で、(A)は図13のI-I断面、(B)は図13のII−II断面、(C)は図14のIII−III断面である。
【図15】本発明を適用し得るシールド機の例(その1)を示す正面図である。
【図16】本発明を適用し得るシールド機の例(その2)を示す正面図である。
【図17】従来の複合シールド機を示す発進要領図である。
【図18】従来の複合シールド機を示す組立て要領図である。
【符号の説明】
【0039】
1…複合シールド機、2…特殊断面シールド機、3A・3B…円形シールド機、4…連結ボルト、6…特殊セグメント、6A…外形リング形状部、6B…内側リング形状部、6C…隔壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のシールド機を並列的に連結して、まゆ形、めがね形、ダルマ形等の複断面シールドトンネルや、楕円、小判、馬蹄形等の単一断面シールドトンネルを施工するとともに、これらシールドトンネルから分岐トンネルを連続的に施工するための複合シールド工法並びにそのための複合シールド機及びセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地下鉄などを建設する場合、先ず駅部を開削工法によって築造した後、駅部の一方側端部を発進基地としてシールド機を組み立て、次の駅部までの路線区間をシールド機によって掘削することが一般に行われているとともに、折り返しとなる駅等に上下線あるいは内外周り線に車両を入れ替えるための渡り線工事においても、開削工法によって築造した後、前記と同様に路線区間をシールド機によって掘削することが一般に行われていた。
【0003】
しかし、近年の都市の過密化によって開削工法を採用すること自体、困難な状況になりつつある。また、開削工法の場合には、道路面で大規模な覆工を必要とし道路交通上の制約が大きく、また地下埋設物に与える影響を抑制しながらの工事となるため、その完成までには多くの工程と時間を要し、当然に工費も嵩むことになっていた。
【0004】
また、前記渡り線工事は、開削工法に変えて複線断面以上の単円シールド又は矩形シールドで行われることがあるが、この場合は駅部までの路線区間もそのままの断面で施工される。しかし、前者の単円シールドの施工では、駅部の掘削工事の深度が大きくなることが問題となり、また、駅部の深度を浅くするためや埋設物を避けるために採用される後者の矩形シールドでの施工では、単円の単線シールド2本に比べ、掘削量が多い、セグメントが特殊であるために工事費が嵩むことになっていた。
【0005】
このような問題に応えるものとして、近年提案されているのが、複合シールド機である。
【0006】
前記複合シールド機は、複数のシールド機を並列的に連結し、所定断面の掘削を可能としたものであり、各シールド機の前胴部には、各々独立した掘削機構およびスキンプレートを有し、かつ後胴部は複合シールド機の外形と同形状の閉合断面としたテールスキンプレートを有する構造となっている。具体的に下記特許文献1には、図17に示されるように、所定間隔を隔てて並設された2個の小径シールド機50,50を有し、各小径シールド機50,50のシールドフレームはそのテール部が対向するように一部欠損(50a、50a)され、そこに薄肉部を介して連結シールドフレーム51が分離可能に溶接され、一体化された複合シールド機が記載されている(段落[0051]〜[0059]及び図13〜図16参照)。前記小径シールド機50,50を発進させる場合には、前記欠損部50aを修繕するようにスキンプレートを取付けた後、発進させるようにする。
【0007】
また、下記特許文献2では、図18に示されるように、複数のシールド機53〜55を並列的に連結した複合シールド機の後部に、該複合シールド機56の外形と略同形状を成すとともに、内部にシールドジャッキを備える閉合断面のテールスキンプレート57を一体的に連設し、かつテールスキンプレート57の内部にシールドジャッキおよびエレクターを備えた複合シールド機56が開示されている。
【特許文献1】特開2003−232185号公報
【特許文献2】特開2003−166393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に記載される複合シールド機の場合は、隣接配置された2個の小径シールド機50,50の上下面部を夫々覆うように連結シールドフレーム51を備える構造であるため、(1)前記小径シールド機50の発進に当たり、小径シールド機50の内部に構築される円形セグメントは、その外側半円部分は一体時に構築された楕円形セグメントに連続しているけれども、内側半円部分のセグメントはそのままでは反力点を確保することができず、別途反力壁等の支持部材を構築することにより、円形セグメントの全周に亘り均一の反力を確保できるようにしているため、前記反力壁等の構築に手間と時間が掛かっていた。(2)また、前記小径シールド機50が発進すると、新たに構築された円形セグメントと、前記連結シールドフレーム51との隙間から地下水や土砂がシールド空間内に流入することになるため、土留め壁の構築や止水等の地盤改良工事を必須としたため、これらの工事にも多大な時間と手間が掛かっていた。
【0009】
(3)さらに、連結シールドフレーム51内は大きなシールド空間となっており、前記小径シールド機50によって連結シールドフレーム51内に構築される円形セグメントは、地山側から土圧を受けることになるが、この土圧による円形セグメントの移動を押さえるための手段が別途必要となっていた。
【0010】
一方、前記特許文献2に記載される複合シールド機56の場合は、特許文献1に記載される複合シールド機と対比すると、中央のシールド機は、側面部分に略鼓形の側面スキンプレートを有するため、これらが支持壁となって構築された円形セグメントの移動を防止することができるが、上記(1)及び(2)の問題点を解決するに至っていない。また、後部側にテールスキンプレート55を別途追加する構造であり、シールド機の機長が長くなるとともに、発進に必要な立坑の断面寸法が大きくなってしまう問題もあった。
【0011】
そこで本発明の主たる課題は、発進シールド機によって構築されるセグメントのための反力点構築作業を省力化するとともに、土砂や地下水の浸入を防止するための土留め壁等の構築作業を省力化する等、シールド機の発進準備作業を大幅に省力化し得る複合シールド工法並びにシールド機及びセグメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、複数のシールド機を並列的に連結するとともに、後胴部側においてシールド機のテールスキンプレート部分に切欠きを設け、テールスキンプレート内の空間を連通させた複合シールド機を用い、所定断面の掘削を行った後、前記複合シールド機を構成する一部又は全部のシールド機を地中発進させる複合シールド工法において、
前記複合シールド機のテールスキンプレート内で、該テールスキンプレートの外形状に沿った閉合形状のセグメントを組立てながら順次掘進した後、到達地点の直前位置において、前記テールスキンプレートの外形状に沿った外形リング形状部を持つとともに、発進予定のシールド機によって構築されるセグメント断面形状に合致した内部側リング形状部を併せ持つ断面変更部特殊セグメントを組立て、シールドジャッキにより1ストローク分だけ前進したならば、発進予定のシールド機のスキンプレート切欠き部を修繕するようにスキンプレートを取付けた後、発進予定のシールド機内部で、前記断面変更部特殊セグメントの内部側リング形状部に連続するように、周方向に閉合するセグメントを組み立てると共に、発進予定部外となる前記内部リング形状部以外の部分を塞ぎ、発進予定部外のシールド機内部を充填材で埋めた後、発進予定のシールド機を他から分離し発進させることを特徴とする複合シールド工法が提供される。
【0013】
上記請求項1記載の本発明においては、シールド機を発進させる断面変更部のセグメントとして、複合シールド機に係るテールスキンプレートの外形状に沿った外形リング形状部を持つとともに、発進予定のシールド機によって構築されるセグメント断面形状に合致した内部側リング形状部を併せ持つ断面変更部特殊セグメントを使用する。そして、この断面変更部特殊セグメントを到達地点で組み立てることにより、発進するシールド機内部で、前記断面変更部特殊セグメントの内部側リング形状部に連続するように、周方向に閉合するセグメントを組み立てるようにする。
【0014】
従って、発進シールド機内部で構築されるセグメントの反力は、その全周に亘り前記断面変更部特殊セグメントの内部側リング形状部によって取ることが可能となるため、従来のように、別途に反力壁等の支持部材を構築する必要が無くなる。また、発進予定部外となる前記内部リング形状部以外の部分を塞ぎ、発進予定部外のシールド機内部を充填材で埋めるようにするため、土留め壁の構築や地盤改良工事を最小化若しくは省略できるため、シールド機の発進準備作業を大幅に簡略化及び省力化し得るようになる。
【0015】
請求項2に係る本発明として、前記発進予定のシールド機は、他のシールド機に対して取り外し可能なボルト及び/又はピンによって連結されている請求項1記載の複合シールド工法が提供される。
【0016】
請求項3に係る本発明として、前記発進予定のシールド機は、スキンプレートの切欠き部を修繕するためのスキンプレートをボルト及び/又はピンによって取付け可能としてある請求項1、2いずれかに記載の複合シールド工法が提供される。
【0017】
上記請求項2及び請求項3に記載の発明は、シールド機の発進準備作業を大幅に簡略化及び省力化を更に進めたものであり、発進予定のシールド機は、他のシールド機に対して取り外し可能なボルト及び/又はピンによって連結すること、及びスキンプレートの切欠き部を修繕するためのスキンプレートをボルト及び/又はピンによって取付け可能とすることにより、特許文献2記載の複合シールド機のように、テールスキンプレートを追加しなくても、シールド機の発進準備作業を大幅に簡略化及び省力化することができ、またシールド機の機長が長くなることによる発進に必要な立坑の断面寸法が大きくなる等の問題も同時に解決することができる。
【0018】
請求項4に係る本発明として、前記請求項1〜3いずれかに記載される複合シールド工法に用いられる複合シールド機は、複数のシールド機を並列的に連結するとともに、シールド機のテールスキンプレート部分に切欠きを設け、テールスキンプレート内の空間を連通させるとともに、発進予定のシールド機は、他のシールド機に対して取り外し可能なボルト及び/又はピンによって連結され、かつテールスキンプレートの切欠き部を修繕するためのスキンプレートをボルト及び/又はピンによって取付け可能としてあることを特徴とする複合シールド機が提供される。
【0019】
請求項5に係る本発明として、鼓形のシールド機の両側に夫々、2基の円形シールド機を配設して相互に連結を図り、全体として断面略楕円形のシールド機としてある請求項4記載の複合シールド機が提供される。
【0020】
請求項6に係る本発明として、前記請求項1〜3いずれかに記載される複合シールド工法において、シールド機発進部に配設されるセグメントであって、該セグメントは、複合シールド機のテールスキンプレートの外形状に沿った外形リング形状部を持つとともに、発進予定のシールド機によって構築されるセグメント断面形状に合致した内部側リング形状部を併せ持つことを特徴とするセグメントが提供される。
【発明の効果】
【0021】
以上詳説のとおり本発明によれば、発進シールド機によって構築されるセグメントのための反力点構築作業を省力化するとともに、土砂や地下水の浸入を防止するための土留め壁等の構築作業を省力化する等、シールド機の発進準備作業を大幅に簡略化及び省力化し得るようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
図1は本発明に係る複合シールド機1の組み立て要領図、図2は複合シールド機1の正面図、図3はその半断面平面図、図4はその縦断面図である。
【0023】
図1に示される複合シールド機1は、中央部に位置する略鼓形断面形状の特殊断面シールド機2と、この特殊断面シールド機2の両側に夫々配設される円形シールド機3A、3Bとが相互に連結され、全体として略楕円形を成すシールド機である。
【0024】
前記複合シールド機1を構成する3基のシールド機2,3A、3Bはそれぞれ、スキンプレートによって周囲が囲まれた胴体を持ち、前面にカッターヘッド32,32を備える構造となっている。また、各シールド機2,3A、3Bは、テールスキンプレート部分に切欠き21,31を有し、合体した状態ではテールスキンプレート内の空間を連通させ、複合シールド機1の外形状を成す閉合断面のセグメント組立て用空間が形成されるようになっている。施工は、合体した状態で、駅部や渡り線部等の大断面トンネル部の掘削を行った後、大断面トンネル部の端部に到達したならば、後述する断面変更部特殊セグメント5を組立て、両側に位置する円形シールド機3A、3Bを中央の特殊断面シールド機2から分離され、そのまま地中発進し、前方側に連続する路線部等を掘進するようになっている。
【0025】
以下、前記複合シールド機1を各部分毎に具体的に詳述すると、
先ず、前記特殊断面シールド機2は、図5に示されるように、上面及び下面にそれぞれ浅い弧状のスキンプレート20a、20aを有し、両側部に半円形凹部20b、20bを有する略鼓形のスキンプレート20を有し、前記凹部20b、20bの後部にはそれぞれ切欠き部21、21を有する。前面には2個の揺動カッタヘッド22、22を備え、略鼓形断面を掘削するようになっている。前記揺動カッタヘッド22、22は、上下部分の略三角形状部分を掘削するために配置された略いちょう葉形の揺動カッタ体である。同揺動カッタヘッド22としては、本出願人が先に出願した特開2003-232191号公報に記載のものをそのまま使用することができる。具体的構造についての説明は同公報に譲るが、この揺動カッタは、シールドフレームの前端の隔壁にカッタフレームを揺動させるべく所定角度範囲内で揺動回転する伸縮ジャッキによって揺動回転される回転ドラムを設け、この回転ドラムにその回転中心から偏心して軸支され上記カッタフレームを支持するカッタ支持軸を設け、この単軸で設けられたカッタ支持軸の自転を防止しつつ公転を許容する自転拘束機構を上記隔壁の後方に設けた揺動カッタ装置である。
【0026】
掘削された土砂は、バルクヘッド23の上下端排出口に連続する排土スクリューコンベア24により外部に排出されるようになっている。後端部の上下部分にはシールドジャッキ26、26…が配設されているとともに、セグメントの組立のために片持ちエレクター(図示せず)が配設されている。
【0027】
なお、本例では鼓形の異形断面を掘削可能とするカッタ構造として、特開2003-232191号公報に記載されるカッタ構造を採用したが、別の態様としては、本出願人が先に出願した特開2003-232190記載の揺動カッタとすることでもよい。また、径の異なる回転カッタを複数配設したり、又は回転カッタと揺動カッタまたは偏心多軸式カッタとを組み合わせる等、各種カッタを単独でまたは組み合わせることによって、前記略鼓形状の特殊断面部分の掘削を行うようにしてもよい。
【0028】
一方、前記円形シールド機3A、3Bは、図6に示されるように、円筒形のスキンプレート30を有し、前記スキンプレート30の後部側において、前記特殊断面シールド機2接続側に、半円形状の切欠き部31が形成され、前面に6本のスポーク状のカッタヘッド32を備える泥土圧式シールド機である。前記カッタヘッド32によって掘削された土砂は、バルクヘッド33の下端排出口に連続する排土スクリューコンベア34によって排出されるようになっている。スキンプレート30の内部には、エレクター35が配設されるとともに、少なくとも外側半周部分にはシールドジャッキ36、36…が配置されている。なお、内側半周部分には将来の発進に備えて予めシールドジャッキ36,36…を設置しておいてもよい。
【0029】
図7に示されるように、前記特殊断面シールド機2と、両側に接続される円形シールド機3A、3Bとは、特殊断面シールド機2のスキンプレート20と、単円形シールド機3A、3Bのスキンプレート30の間を貫通して設けられる複数の連結ボルト4、4…によって相互に接続され、略楕円形に組み立てられる。また、後胴部側には、複合シールド機1の外形状を成す閉合断面の空間が形成され、この空間内でセグメントが組み立てられるようになっている。
【0030】
かかる複合シールド機1によって駅部や渡り線部から連続する路線部を掘削するには、先ずトンネル駅部や渡り線部の一方端側立坑において、前記複合シールド機1を組み立て、駅部や渡り線部の掘削を開始する。掘削に伴うセグメントの組立は、前記特殊断面シールド機2および前記円形シールド機3A、3Bの上記セグメント組立て用空間において、円形シールド機3A、3B内のそれぞれに配置されたエレクター35、35によって、図9(A)に示される外周部のセグメント5の組立を行い、これらエレクター35では組み立てが出来ない中央部分については、特殊断面シールド機2の片持ちエレクターで組み立てるようにする。複合シールド機1の推進は、特殊断面シールド機2のシールドジャッキ26、26…および単円形シールド機3のシールドジャッキ36、36…の反力を、設置したセグメントの端面に取り、複合シールド機1を1サイクル毎に前進させるようにする。
【0031】
その後、トンネル駅部や渡り線部の他方端部の到達地点の直前(詳細には到達点よりシールドジャッキによる1ストローク分だけ手前位置)に達したならば、、図9(B)に示されるように、前記テールスキンプレートの外形状に沿った外形リング形状部6Aを持つとともに、発進予定の円形シールド機3A、3Bによって構築されるセグメント断面形状に合致した内部側リング形状部6B、6Bを併せ持つ断面変更部特殊セグメント6(以下、単に特殊セグメントという。)を組立てるようにする。なお、前記外形リング形状部6Aと内部側リング形状部6Bは側部部分において重複している。前記特殊セグメント6としては、一般的なコンクリートセグメント、鋼製セグメント等を使用することができる。
【0032】
前記特殊セグメント6の組立てを終えたならば、複合シールド機1をシールドジャッキ26…、36…を伸長させることにより前進させたならば、円形シールド機3A、3Bを発進させる準備作業に入る。
【0033】
発進準備作業は、先ず、特殊断面シールド機2のバルクヘッド23,スクリューコンベア24,シールドジャッキ26、26…、片持ちエレクター等の機械設備を撤去する。次いで、図8に示されるように、発進予定の円形シールド機3A、3Bのスキンプレート切欠き部21を修繕するようにスキンプレート7を取付けるとともに、スキンプレート30の後縁部を含む最小限の範囲Hに止水材を注入することにより地盤改良を行った後、円形シールド機3A、3Bの特殊セグメント6に跨るテール部分を切断し、円形シールド機3A、3Bの後端を揃えるとともに、全周に亘るようにテールシール(図示せず)を半周分追加して取り付ける。なお、前記テール部分の切断を行わずに、テールスキンプレートの後縁が周方向に段が付いたままとする、或いは前記テール部分を内側からのボルト接合とし内側から取り外し可能とした場合には前記地盤改良を省略することが可能となる。また、前記スキンプレート7の取付けは溶接等により行ってもよいが、作業の省力化のために、ボルト及び/又はピン60、60…によって取り付けるのが望ましい。
【0034】
次いで、発進予定の円形シールド機3A、3Bの内部で、図10に示されるように、前記断面変更部特殊セグメント6の内部側リング形状部6Bに連続するように、周方向に閉合するセグメント8を組み立てるとともに、特殊セグメント6の発進予定部外となる前記内部リング形状部6B、6B以外の部分を隔壁6Cによって塞いだならば、発進予定部外のシールド機2内部を充填材53で埋める。
【0035】
以上の準備作業が完了したならば、発進予定の円形シールド機3A、3Bと特殊断面シールド機2を接続している連結ボルト4、4…を円形シールド機3A、3B内部において全て取り外し、円形シールド機3A、3Bを分離させた後、図11、図12に示されるように、一方側の円形シールド機3Aが掘削とセグメント8の組み立てを行いながら路線部を掘進する。次いで、養生期間を確保して、シールド機3Bも同様に掘進する。これにより、図13のI−I断面、II−II断面、III−III断面がそれぞれ、図14(A)〜(C)に示されるような断面形状となるシールドトンネルを構築する。
【0036】
〔他の形態例〕
(1)ところで、上記形態例では複合シールド機1による掘削断面形状を略楕円形状としたが、まゆ形、めがね形、ダルマ形、円形、小判、馬蹄形等の断面であってもよい。さらに、図15に示されるように、特殊断面シールド機10と、単円形シールド機11A、11Bとを並列的に連結して馬蹄形を構成した馬蹄形複合シールド機や、図16に示されるように、4基の単円形シールド機13A〜13Dが特殊断面シールド機12の外形線に内接するように設けられた親子シールド機等に対しても適用が可能である。
【0037】
また、上記形態例では特殊断面シールド機1基と単円形シールド機2基の構成としたが、単円形シールド機を上下左右にさらに複数連結した構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る複合シールド機1の組み立て要領図である。
【図2】複合シールド機1の正面図である。
【図3】その半断面平面図である。
【図4】その縦断面図である。
【図5】特殊断面シールド機2を示す、(A)は正面図、(B)は縦断面図、(C)は背面図である。
【図6】円形シールド機3を示す、(A)は正面図、(B)は縦断面図、(C)は背面図である。
【図7】特殊断面シールド機2と単円形シールド機3の連結方法を示す、(A)は平面図、(B)はB-B矢視図である。
【図8】円形シールド機3A、3Bの発進要領図(その1)である。
【図9】(A)は駅部または渡り線部で構築されるセグメント5の斜視図、(B)は特殊セグメント6の斜視図である。
【図10】円形シールド機3A、3Bの発進要領図(その3)を示す平面図である。
【図11】単円形シールド機の発進要領図(その4)で、(A)は発進前の斜視図、(B)は発進後の斜視図である。
【図12】円形シールド機3A、3Bの発進要領図(その5)を示す平断面図である。
【図13】円形シールド機3A、3Bの路線部掘削後を示す平断面図である。
【図14】セグメントの断面形状を示す図で、(A)は図13のI-I断面、(B)は図13のII−II断面、(C)は図14のIII−III断面である。
【図15】本発明を適用し得るシールド機の例(その1)を示す正面図である。
【図16】本発明を適用し得るシールド機の例(その2)を示す正面図である。
【図17】従来の複合シールド機を示す発進要領図である。
【図18】従来の複合シールド機を示す組立て要領図である。
【符号の説明】
【0039】
1…複合シールド機、2…特殊断面シールド機、3A・3B…円形シールド機、4…連結ボルト、6…特殊セグメント、6A…外形リング形状部、6B…内側リング形状部、6C…隔壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシールド機を並列的に連結するとともに、後胴部側においてシールド機のテールスキンプレート部分に切欠きを設け、テールスキンプレート内の空間を連通させた複合シールド機を用い、所定断面の掘削を行った後、前記複合シールド機を構成する一部又は全部のシールド機を地中発進させる複合シールド工法において、
前記複合シールド機のテールスキンプレート内で、該テールスキンプレートの外形状に沿った閉合形状のセグメントを組立てながら順次掘進した後、到達地点の直前位置において、前記テールスキンプレートの外形状に沿った外形リング形状部を持つとともに、発進予定のシールド機によって構築されるセグメント断面形状に合致した内部側リング形状部を併せ持つ断面変更部特殊セグメントを組立て、シールドジャッキにより1ストローク分だけ前進したならば、発進予定のシールド機のスキンプレート切欠き部を修繕するようにスキンプレートを取付けた後、発進予定のシールド機内部で、前記断面変更部特殊セグメントの内部側リング形状部に連続するように、周方向に閉合するセグメントを組み立てると共に、発進予定部外となる前記内部リング形状部以外の部分を塞ぎ、発進予定部外のシールド機内部を充填材で埋めた後、発進予定のシールド機を他から分離し発進させることを特徴とする複合シールド工法。
【請求項2】
前記発進予定のシールド機は、他のシールド機に対して取り外し可能なボルト及び/又はピンによって連結されている請求項1記載の複合シールド工法。
【請求項3】
前記発進予定のシールド機は、スキンプレートの切欠き部を修繕するためのスキンプレートをボルト及び/又はピンによって取付け可能としてある請求項1、2いずれかに記載の複合シールド工法。
【請求項4】
前記請求項1〜3いずれかに記載される複合シールド工法に用いられる複合シールド機は、複数のシールド機を並列的に連結するとともに、シールド機のテールスキンプレート部分に切欠きを設け、テールスキンプレート内の空間を連通させるとともに、発進予定のシールド機は、他のシールド機に対して取り外し可能なボルト及び/又はピンによって連結され、かつテールスキンプレートの切欠き部を修繕するためのスキンプレートをボルト及び/又はピンによって取付け可能としてあることを特徴とする複合シールド機。
【請求項5】
鼓形のシールド機の両側に夫々、2基の円形シールド機を配設して相互に連結を図り、全体として断面略楕円形のシールド機としてある請求項4記載の複合シールド機。
【請求項6】
前記請求項1〜3いずれかに記載される複合シールド工法において、シールド機発進部に配設されるセグメントであって、該セグメントは、複合シールド機のテールスキンプレートの外形状に沿った外形リング形状部を持つとともに、発進予定のシールド機によって構築されるセグメント断面形状に合致した内部側リング形状部を併せ持つことを特徴とするセグメント。
【請求項1】
複数のシールド機を並列的に連結するとともに、後胴部側においてシールド機のテールスキンプレート部分に切欠きを設け、テールスキンプレート内の空間を連通させた複合シールド機を用い、所定断面の掘削を行った後、前記複合シールド機を構成する一部又は全部のシールド機を地中発進させる複合シールド工法において、
前記複合シールド機のテールスキンプレート内で、該テールスキンプレートの外形状に沿った閉合形状のセグメントを組立てながら順次掘進した後、到達地点の直前位置において、前記テールスキンプレートの外形状に沿った外形リング形状部を持つとともに、発進予定のシールド機によって構築されるセグメント断面形状に合致した内部側リング形状部を併せ持つ断面変更部特殊セグメントを組立て、シールドジャッキにより1ストローク分だけ前進したならば、発進予定のシールド機のスキンプレート切欠き部を修繕するようにスキンプレートを取付けた後、発進予定のシールド機内部で、前記断面変更部特殊セグメントの内部側リング形状部に連続するように、周方向に閉合するセグメントを組み立てると共に、発進予定部外となる前記内部リング形状部以外の部分を塞ぎ、発進予定部外のシールド機内部を充填材で埋めた後、発進予定のシールド機を他から分離し発進させることを特徴とする複合シールド工法。
【請求項2】
前記発進予定のシールド機は、他のシールド機に対して取り外し可能なボルト及び/又はピンによって連結されている請求項1記載の複合シールド工法。
【請求項3】
前記発進予定のシールド機は、スキンプレートの切欠き部を修繕するためのスキンプレートをボルト及び/又はピンによって取付け可能としてある請求項1、2いずれかに記載の複合シールド工法。
【請求項4】
前記請求項1〜3いずれかに記載される複合シールド工法に用いられる複合シールド機は、複数のシールド機を並列的に連結するとともに、シールド機のテールスキンプレート部分に切欠きを設け、テールスキンプレート内の空間を連通させるとともに、発進予定のシールド機は、他のシールド機に対して取り外し可能なボルト及び/又はピンによって連結され、かつテールスキンプレートの切欠き部を修繕するためのスキンプレートをボルト及び/又はピンによって取付け可能としてあることを特徴とする複合シールド機。
【請求項5】
鼓形のシールド機の両側に夫々、2基の円形シールド機を配設して相互に連結を図り、全体として断面略楕円形のシールド機としてある請求項4記載の複合シールド機。
【請求項6】
前記請求項1〜3いずれかに記載される複合シールド工法において、シールド機発進部に配設されるセグメントであって、該セグメントは、複合シールド機のテールスキンプレートの外形状に沿った外形リング形状部を持つとともに、発進予定のシールド機によって構築されるセグメント断面形状に合致した内部側リング形状部を併せ持つことを特徴とするセグメント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−63753(P2007−63753A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247259(P2005−247259)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】
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