説明

複合ジャック

【課題】二種類のジャックを、横方向の設置スペースの拡大を殆ど生じさせずに、かつ既存のジャック用のプラグをそのまま使用可能にすること。
【解決手段】ハウジング1と、固定ジャック2と、可動ジャック3とからなる。固定ジャック2は、ハウジング1の前部のAVプラグ挿入孔4と、これに挿入されAVプラグp1のスリーブ電極p11、p12、p13及びチップ電極p14に接触するスリーブ接片5a、5b、5c及びチップ接片5dとからなる。可動ジャック3は、ハウジング1内を移動自在な可動ハウジング7と、これをAVプラグ挿入孔4内に押し込むコイルバネ8と、可動ハウジング7をその状態で一時固定する一時固定手段9と、DCプラグ挿入孔10と、これに挿入されたDCプラグp2の外側電極p21に接触する外側接片11a及び内側電極p22に接触するプラグピン11bとで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の各種の小型電子機器に組み込まれる複合ジャックであって、DC電源の授受のために使用されるDCジャック及びAV信号の授受のために使用されるAVジャック等の二種類のジャックを一つのジャックに構成した複合ジャックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種信号類と電源電力の授受又はAC電源とDC電源の授受を一つのコネクタ装置で行おうとする複合コネクタ装置の提案はいくつか見受けられる。
【0003】
特許文献1は、複合プラグ、複合ケーブル、及びパーソナルコンピュータに関するものであり、そのうちの複合プラグは、データ伝送用プラグと電源供給用プラグとを並列に配して成るものであり、該データ伝送用プラグと該電源供給用プラグとは、それぞれのプラグ本体に構成した着脱手段で着脱自在に結合されているものである。
【0004】
従ってこの特許文献1の複合プラグによれば、データ伝送用プラグと電源供給用プラグとを対応するジャックに同時に接続し、同時にデータ及び電源の授受を行うことができる利点があるが、両プラグは並列に配されているものであり、それぞれを個別に用いる場合とそれほど異ならない横方向のスペースを必要とする。それ故、近時の各種の携帯機器のように、厳しく小型化を要求される機器類に組み込む場合には、それに必要とする充分な組み込みスペースが得られない場合もあり得る。
【0005】
特許文献2は、AC/DC複合プラグ、負荷機器及びテーブルタップに関するものであり、そのうち、AC/DC複合プラグは、交流電源を交流負荷に供給するためのACコンセント部と、情報信号が直流電圧に重畳される直流電源を直流負荷に供給するためのDCコンセント部とが所定の間隔を開けて設けられたコンセント装置に接続されるAC/DC複合プラグであって、前記コンセント装置と対向するプラグ本体の表面に、ACコンセント部に接続されるACプラグと、DCコンセント部に接続されるDCプラグとが前記所定の間隔を開けて配設されたAC/DC複合プラグである。
【0006】
従ってこの特許文献2のAC/DC複合プラグによれば、AC電源とDC電源に重畳されている情報信号を必要とする場合は、それらを複合配設されているACプラグとDCプラグを通じてその授受を行うことが可能である。もっとも情報信号は更にDC電源から別に用意する分離回路を介して取り出すことが必要ではある。またDC電源と情報信号とが必要な場合は、DCプラグのみで両者の授受を行い、別に用意する分離回路で両者を分離し、それぞれ必要な回路に供給することができる。
【0007】
しかしこの特許文献2のAC/DC複合プラグは、ACプラグとDCプラグとをプラグ本体の表面に所定の間隔を開けて配設したに過ぎないものであり、前記特許文献1の複合プラグと同様に、それぞれを個別に配して用いる場合とそれほど異ならない横方向のスペースを必要とする。従って各種の携帯機器等への組み込みのための小型化の要求に充分応えうるものとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−286733号公報
【特許文献2】特開2010−040204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、DC電源とAV信号等のように、それらの授受に用いられるプラグの径に一定以上の差があり、更に、多くの場合に、択一的に使用される信号等の授受に用いる二つのジャックを組み合わせた複合ジャックであって、横方向のスペースの拡大を殆ど生じさせずに、かつ対象となるDC電源又はAV信号等に用いられる既存のプラグをそのまま使用することが可能な複合ジャックを提供することを解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1は、絶縁性のハウジングと、該ハウジングの前部に構成した固定ジャックと、該ハウジング内を前後に移動自在に配した可動ジャックと、で構成した複合ジャックであって、
前記固定ジャックを、該ハウジングの前部に構成した先端開口のプラグ挿入孔と、該プラグ挿入孔に、対応するプラグが挿入された場合に、該プラグの電極に接触すべく配した対応する数及び位置の接片部材と、で構成し、
前記可動ジャックを、該ハウジングの後部及び前部の固定ジャックのプラグ挿入孔の間を往復移動自在に配した可動ハウジングと、該可動ハウジングをプラグ挿入孔内に押し込むべく作用するバネ部材と、該可動ハウジングの前記プラグ挿入孔への進入状態を一時固定する一時固定手段と、該可動ハウジングに構成した先端開口の第2プラグ挿入孔と、該第2プラグ挿入孔に、対応する第2プラグが挿入された場合に、該第2プラグの電極に接触すべく配した対応する数及び位置の接片部材と、で構成してなる複合ジャックである。
【0011】
本発明の2は、本発明の1の複合ジャックにおいて、前記可動ジャックの接片部材に前記可動ハウジングの周側外に弾力的に突出するスライド接点部を構成し、前記ハウジングの内部に、該可動ハウジングの前後方向の移動の際に、該スライド接点部が常時弾力的に接触する導電性帯状部材を配し、かつ該導電性帯状部材に該ハウジングの外部に延長する端子部を構成したものである。
【0012】
本発明の3は、本発明の1の複合ジャックにおいて、前記可動ジャックの接片部材に前記可動ハウジングの周側外に弾力的に突出する接点部を構成し、前記ハウジングの前部内側に、該可動ハウジングが前部のプラグ挿入孔内に移動した際に、該接点部が弾力的に接触する導電性接続片を配し、かつ該導電性接続片に該ハウジングの外部に延長する端子部を構成したものである。
【0013】
本発明の4は、本発明の1の複合ジャックにおいて、前記固定ジャックがオーディオ信号及びビデオ信号の授受を行うAVジャックであり、前記可動ジャックが直流電源の授受を行うDCジャックであって、
前記固定ジャックの接片部材が、プラグ挿入孔に挿入されるAVプラグの周側に構成された複数のスリーブ電極に接触する同数のスリーブ接片及びAVプラグ先端のチップ電極に接触するチップ接片で構成され、
前記可動ジャックの接片部材が、第2プラグ挿入孔に挿入されるDCプラグ先端の穴状の内側電極に挿入接触するピン状接片及び該DCプラグ周側の外側電極に接触する外側接片で構成されるものである。
【0014】
本発明の5は、本発明の1の複合ジャックにおいて、前記一時固定手段を、前記可動ハウジングの周側部に開口した係止孔と、該可動ハウジングが前記バネ部材の作用で前記ハウジングの前部のプラグ挿入孔まで移動した状態で、該ハウジングの、該係止孔に対応する部位に開口した固定片挿入穴と、該固定片挿入穴に該係止孔まで挿入係止可能に配したスライド固定片であって、その先端を該係止孔にスライド挿入係止又はスライド離脱させるべく操作する操作部を該ハウジングの前面の属する平面と同一の平面内に備えたスライド固定片とで構成したものである。
【0015】
本発明の6は、本発明の4の複合ジャックにおいて、前記可動ハウジングに、前記外側接片と対向状態に前記第2プラグ挿入孔に進出し、該第2プラグ挿入孔に挿入されたDCプラグを該外側接片とともに挟持状態に保持する導電性のプラグ保持バネを配し、かつ該プラグ保持バネを該可動ハウジングに固定する該プラグ保持バネと一体の板状基部を該可動ハウジングの側面に露出状態に配置し、他方、前記ハウジングに配した二つの位置検出用の導電性の検出接片バネであって、該可動ハウジングが前記固定ジャックのプラグ挿入孔に挿入されたAVプラグによって押されて後部に後退した際に前記板状基部に接触する位置に検出接片を突出させた二つの検出接片バネを配し、該二つの検出接片バネから延長する端子を各々該ハウジングの外部に延長したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の1の複合ジャックによれば、二種類のジャックが授受の対象とする電気信号乃至電力等の都合により、それらに用いられるプラグ又はプラグ挿入孔の径に一定以上の差があり、大径の方のジャックのプラグ挿入孔に小径の方のジャックのハウジングを挿入可能な径に構成できる場合には、大径のプラグを用いる側のジャックを固定ジャックに、小径のプラグを用いる側のジャックを可動ジャックに構成することにより、これを適用することが可能であり、かつその二つのジャックの対象とする電気信号乃至電力の授受が択一的に行われ得るものである場合には極めて有効に使用することができる。
【0017】
このような本発明の1の複合ジャックによれば、固定ジャックを使用する場合には、単に該固定ジャックに適合するプラグをハウジングの正面に開口するプラグ挿入孔に挿入すれば良い。このとき、前記バネ部材の作用により固定ジャックのプラグ挿入孔に進入状態になっていた可動ジャックは、該プラグの挿入に伴い、該プラグに押されてハウジングの後部に後退することとなるため、固定ジャックのプラグ挿入孔への対応するプラグの挿入には支障が生じることはない。
【0018】
また可動ジャックを使用する場合は、固定ジャックのプラグ挿入孔中に前記バネ部材の作用により進出状態となっている可動ジャックを前記一時固定手段でその位置に一時固定した上で、該可動ジャックに適合する第2プラグを第2プラグ挿入孔に挿入すればよい。なお、固定ジャックのプラグ挿入孔にプラグが挿入していない限り、可動ジャックは固定ジャックのプラグ挿入孔に進出状態となっている。
【0019】
従って本発明の1の複合ジャックによれば、固定ジャックと可動ジャックとは、横方向に並列に配置されるものではなく、一定の位置に、前者は固定状態に、後者は、前者のプラグ挿入孔の軸心に沿って移動自在に、それぞれ配するものであり、長さ方向のスペースは若干拡大するが、幅方向のスペースは拡大させない。そのため、横方向乃至幅方向のスペースには限りがあるが、若干深さ方向には余裕がある機器類に組み込むジャックには有効に適用することができる。
【0020】
本発明の2の複合ジャックによれば、可動ジャックはハウジング中を前後方向に移動自在であるが、その接片部材は、該可動ジャックがどの位置にあっても、必要であれば、前記スライド接点部及び導電性帯状部材を介して常時外部の回路と電気的な接続状態を維持することができる。
【0021】
本発明の3の複合ジャックによれば、可動ジャックはハウジングの前部に移動状態のときに本来の用途に使用可能であるが、その移動状態では、前記接片部材は、前記接点部及び導電性接続片を介して外部の回路と電気的な接続状態を確保することができる。
【0022】
本発明の4の複合ジャックによれば、これは、DCジャックとAVジャックとを複合させたものであり、両者を並列配置させずに、横方向の省スペースを図りながら、共存させているものである。DCジャックは、この複合ジャックの組み込み対象である携帯機器類では、通常、内蔵バッテリの充電のために使用されるものであり、AVジャックと同時に使用される可能性は低い。またAVジャックのプラグとDCジャックのプラグとの径の差は充分に大きいため、DCジャックのハウジングをAVジャックのプラグ挿入孔内に挿入可能な径に構成することは可能である。それ故、DCジャックとAVジャックの本発明の4への適用は適切に行い得られる。
【0023】
本発明の5の複合ジャックによれば、可動ジャックを使用する場合には、ハウジングの前部のプラグ挿入孔内に位置する該可動ジャックをスライド固定片でその位置に一時固定することで、安定して使用できるようにすることができる。スライド固定片は、その操作部をスライド操作することで、その先端を可動ハウジングの係止孔にスライド挿入係止又はスライド離脱させることが可能であり、そのような簡単な操作で、可動ジャックをハウジングの前部のプラグ挿入孔内に一時固定し又はその一時固定を解除することができる。
【0024】
本発明の6の複合ジャックによれば、可動ジャックの第2プラグ挿入孔に第2プラグが挿入された場合に、該第2プラグを前記外側接片とプラグ保持バネが挟持し、無用な抜けが生じないように保持することができる。また可動ジャックがハウジングの後部に移動した際に、該可動ジャックに配した上記プラグ保持バネの板状基部に前記二つの検出接片バネが接触し、両検出接片バネ間が短絡することになる。この短絡は、それぞれの端子で検出可能であり、この短絡を検出することで、可動ジャックがハウジングの後部に移動したこと及びこれを通じて固定ジャックのプラグ挿入孔にプラグが挿入されたことを検出することができる。それ故、その検出の必要がある場合は、これを利用してその検出を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)実施例の複合ジャックの正面図、(b)は背面図、(c)は平面図、(d)は底面図、(e)は右側面図、(f)は左側面図。
【図2】実施例の複合ジャックの後部カバーを外した状態の背面図。
【図3】(a)は図1(a)の可動ジャックの前部への進出状態のA−A線断面図、(b)は図1(a)の可動ジャックの前部への進出状態のB−B線断面図。
【図4】(a)は図3(b)のC−C線断面図、(b)は図3(b)のD−D線断面図。
【図5】(a)は図1(a)の可動ジャックの後部への後退状態のA−A線断面図、(b)は図1(a)の可動ジャックの後部への後退状態のB−B線断面図。、
【図6】実施例の複合ジャックの後部カバーを取り外した状態の左側面図。
【図7】(a)は実施例の複合ジャックの可動ジャックに挿入可能なDCプラグの側面図、(b)は実施例の複合ジャックの固定ジャックに挿入可能なAVプラグの側面図。
【図8】(a)携帯機器に組み込んだ複合ジャックの可動ジャックが前部へ進出した状態の正面図、(b)は(a)のE−E線断面図。
【図9】(a)携帯機器に組み込んだ複合ジャックの可動ジャックが後部に後退した状態の正面図、(b)は(a)のF−F線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施するための形態を実施例に基づき図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
この実施例の複合ジャックは、DCジャックとAVジャックに本発明を適用した例であり、図1〜図9に示すように、基本的に、絶縁性のプラスチックで成形したハウジング1と、該ハウジング1の前部に構成したAVジャックである固定ジャック2と、該ハウジング1内を前後に移動自在に配したDCジャックである可動ジャック3とで構成したものである。
【0028】
前記固定ジャック2は、図3(a)、(b)、図4(b)、図5(a)、(b)、図7(b)、図8(b)及び図9(b)に示すように、基本的に、前記ハウジング1の前部に構成した先端開口のAVプラグ挿入孔(プラグ挿入孔)4と、該AVプラグ挿入孔4に、対応するAVプラグp1が挿入された場合に、該AVプラグp1の三個のスリーブ電極p11、p12、p13に接触すべく配した対応する位置の三個のスリーブ接片(接片部材)5a、5b、5c及び該AVプラグp1のチップ電極p14に接触すべく配したチップ接片5dと、で構成したものである。
【0029】
また前記可動ジャック3は、図3(a)、(b)、図4(b)、図5(a)、(b)、図7(a)、図8(b)及び図9(b)に示すように、基本的に、前記ハウジング1の後部の待避空間6及び前部の固定ジャック2のAVプラグ挿入孔4の間を往復移動自在に配した可動ハウジング7と、該可動ハウジング7を該AVプラグ挿入孔4内に押し込むべく作用するコイルバネ(バネ部材)8と、該可動ハウジング7の前記AVプラグ挿入孔4内への進入状態を一時固定する一時固定手段9と、該可動ハウジング7に構成した先端開口のDCプラグ挿入孔(第2プラグ挿入孔)10と、該DCプラグ挿入孔10に、対応するDCプラグ(第2プラグ)p2が挿入された場合に、該DCプラグp2の外側電極p21に接触すべく配した対応する外側接片(接片部材)11a及び内側電極p22に接触すべく配したプラグピン(ピン状接片、接片部材)11bとで構成したものである。
【0030】
以下、更に各部を詳細に説明する。
前記ハウジング1は、前記し、かつ特に図3(a)、(b)、図5(a)、(b)、図8(b)及び図9(b)に示すように、その前部に、正面に円形に開口する固定ジャック2のAVプラグ挿入孔4を形成し、更に該AVプラグ挿入孔4の後端から後方にこれを延長する状態に前記待避空間6を形成したものである。該待避空間6は、特に図5(a)、(b)及び図9(b)から理解できるように、前記可動ジャック3のハウジングである可動ハウジング7がその中にちょうど納まる寸法形状とする。
【0031】
図1(a)、(c)〜(f)、図3(a)、(b)、図4(a)、(b)、図5(a)、(b)、図6、図8(b)及び図9(a)、(b)に示すように、前記固定ジャック2は、前記ハウジング1の前部に前記AVプラグ挿入孔4を形成してなるものであり、該AVプラグ挿入孔4は、前記のように、基本的に、前記AVプラグp1をスムーズに挿入可能な円筒状を基本とする孔空間であるが、該AVプラグ挿入孔4は、その長さ方向の中間部付近以降については、正面から見て右側には、その長さ方向に沿って、後述する断面四角形のスライド溝63が形成してあり、上側には、やはり、その長さ方向中間部付近以降に、その長さ方向に沿って、後述する断面四角形の移動溝62が形成してある。また正面から見て左側には、AVプラグ挿入孔4の正面の一部を除いては、前記可動ジャック3の可動ハウジング7の断面形状に対応させる趣旨で、断面四角形の大溝が形成してある。なお、前記待避空間6は、前記したように、該AVプラグ挿入孔4の後端から、ほぼそれと同一断面空間形状で、後方にそれを延長する状態に形成したものである。
【0032】
該AVプラグ挿入孔4は、また、図7(b)に示す前記AVプラグp1を挿入した場合のその三個のスリーブ電極p11、p12、p13の配置に対応する位置関係で三個のスリーブ接片5a、5b、5cを配置し、かつその場合の該AVプラグp1のチップ電極p14の配置に対応する位置関係でチップ接片5dを配してある。
【0033】
該スリーブ接片5a、5b、5cの各々は、前記ハウジング1への取り付け位置が異なるのみで全く同一の構成であり、特に図4(b)から理解できるように、ハウジング1の取付用スリットに配される帯状基部5a1、5b1、5c1と、その先端側から折り返し、その更に先端部直前に接触突部を突出させた接片部5a2、5b2、5c2と、該帯状基部5a1、5b1、5c1の後端から延長してハウジング1の下側部に突出させた端子部5a3、5b3、5c3とで構成したものである。
【0034】
また、これらのスリーブ接片5a、5b、5cは、 図3(b)、図4(b)、図5(b)、図8(b)及び図9(b)から理解できるように、ハウジング1に、AVプラグ挿入孔4の軸方向に直交する向きに配し、それらの接片部5a2、5b2、5c2を、特に図4(b)にスリーブ接片5cで代表して示すように、ほぼAVプラグ挿入孔4の周側に沿った部分円弧状に構成し、それらの接触突部を該AVプラグ挿入孔4の内部に突出させる。また前記帯状基部5a1、5b1、5c1は、図3(b)及び図5(b)に示すように、その両側部を取付用スリットの両側部に差し込むことで、該当位置に固定したものである。該スリーブ接片5a、5b、5cは、以上のようにして、ハウジング1に固定され、前記したように配置される。そして、各々の端子部5a3、5b3、5c3は、前記し、図1(a)〜(e)、図2、図3(a)、図4(b)、図5(a)、図8(b)及び図9(b)に示すように、ハウジング1の下側部に突出状態となる。
【0035】
前記チップ接片5dは、特に図4(a)に示すように、ハウジング1の取付用スリットに配される帯状基部5d1と、その先端側から折り返し、その更に先端部直前に接触突部を突出させた接片部5d2と、該帯状基部5d1の後端から延長してハウジング1の下側部に突出させた端子部5d3とで構成したものである。
【0036】
また、このチップ接片5dは、 図3(b)、図4(a)、図5(b)、図8(b)及び図9(b)から理解できるように、スリーブ接片5a、5b、5cと同様に、ハウジング1に、AVプラグ挿入孔4の軸方向に直交する向きに配し、その接片部5d2を、特に図4(a)に示すように、ほぼAVプラグ挿入孔4のチップ電極p14の対応する部分付近の周側に沿った部分円弧状に構成し、その接触突部を該AVプラグ挿入孔4の内側に突出させる。また前記帯状基部5d1は、図3(b)及び図5(b)に示すように、その両側部を取付用スリットの両側部に差し込むことで、該当位置に固定するものである。該チップ接片5dは、以上のようにして、ハウジング1に固定され、前記したように配置される。そして、前記端子部5d3は、前記し、かつ図1(c)〜(e)、図3(a)、図4(a)、図5(a)、図8(b)及び図9(b)に示すように、ハウジング1の下側部に突出状態となる。
【0037】
前記可動ジャック3の可動ハウジング7は、前記し、図3(a)、(b)、図4(b)、図5(a)、(b)、図8(b)及び図9(b)に示すように、前記AVプラグ挿入孔4にスムーズに挿入可能な断面形状、すなわち、基本的に、円柱状を基本とし、正面から見て、左側には、長さ方向に沿って、断面四角形の突部を有する形状としたものである。また該可動ハウジング7は、図1(a)、図2、図4(b)及び図8(a)に示すように、正面から見て右斜め下方に、前記AVプラグ挿入孔4中に進入する際に、前記AVプラグ挿入孔4から突出するスリーブ接片5a、5b、5bの接片部5a2、5b2、5c2及びチップ接片5dの接片部5d2との干渉を回避する趣旨の凹部を形成しておくものとする。
【0038】
前記コイルバネ8は、前記のように、可動ジャック3を前記ハウジング1の待避空間6から前部のAVプラグ挿入孔4まで押し込むバネ部材であり、その後端は、該待避空間6の後端を閉じる後部カバー61のほぼ中央に突設した係止突起611に係止し、その前端は可動ジャック3の可動ハウジング7の後端に係止したものである。
【0039】
このコイルバネ8のバネ荷重は、該可動ジャック3をAVプラグ挿入孔4に押し込むことが可能でありながら、使用者が、固定ジャック2のAVプラグ挿入孔4にAVプラグp1を挿入する際に、違和感を感じない程度の大きさとする。すなわち、AVプラグp1をAVプラグ挿入孔4に挿入する際には、該AVプラグp1で該AVプラグ挿入孔4に進入状態の可動ジャック3を待避空間6まで押し込むことになるが、その押し込みのために無用に大きな力を必要としないようにするべきである。
【0040】
前記DCプラグ挿入孔10は、図1(a)、図3(a)、(b)、図4(b)、図5(a)、(b)、図8(a)、(b)及び図9(b)に示すように、基本的に、前記可動ハウジング7に先端開口状態にに形成した円柱状の空間であり、その一側部には、前記外側接片11aのスリーブ接片部11a1を突出させるための切欠が形成され、その反対側側部には、該外側接片11aのスリーブ接片部11a1とともに、該DCプラグ挿入孔10に挿入されたDCプラグp2を保持するプラグ保持バネ11cの保持片11c2を突出させるための切欠が形成されている。
【0041】
前記一時固定手段9は、可動ジャック3のDCプラグ挿入孔10にDCプラグp2を挿入するために、該可動ジャック3を前記AVプラグ挿入孔4内に一時固定する手段であり、この一時固定を適切に行うことができれば、その構成は自由である。この実施例では、図1(e)、図3(a)、図5(a)、図8(a)、(b)及び図9(a)、(b)に示すように、前記可動ハウジング7の側部に開口した係止孔91と、該可動ハウジング7が前記コイルバネ8の作用で前部のAVプラグ挿入孔4内まで移動した状態で該係止孔91に対応することとなる前記ハウジング1の部位に開口した固定片挿入穴92と、該固定片挿入穴92に、該係止孔91まで挿脱自在に配したスライド固定片93とで構成したものである。
【0042】
前記固定片挿入穴92は、特に、図1(e)、図3(a)、図5(a)、図8(b)及び図9(b)に示すように、ハウジング1の側部の内外、すなわち、前記AVプラグ挿入孔4内と外部とを貫通すべく該AVプラグ挿入孔4と直交する向きに形成した穴である。該固定片挿入穴92は、前記のように、可動ジャック3がコイルバネ8の作用でAVプラグ挿入孔4内に押し込まれている場合に、前記係止孔91と一致する位置に位置し、前記のように、該固定片挿入穴92に配したスライド固定片93を該係止片91内にスライド挿入することにより、該可動ジャック3をAVプラグ挿入孔4内に一時固定することができるようにしたものである。
【0043】
前記スライド固定片93は、図8(b)及び図9(b)に示すように、棒状の部材であるが、その外端をクランク状に屈曲し、その最外端の外面側(該AVプラグ挿入孔4の正面開口部側と一致する側の面)を該AVプラグ挿入孔4の正面開口部の周囲の面が属する面内に位置するように位置決めし、その外面側の部位に浅い多数の溝を連設形成して操作部931に構成し、この操作部931を利用して、前記のように、該スライド固定片93をスライド操作し、その先端の前記係止孔91への挿脱操作をできるようにしたものである。
【0044】
前記外側接片11aは、図3(a)、図4(b)、図5(a)、図8(b)及び図9(b)に示すように、可動ジャック3の可動ハウジング7の一側部に配置され、その先端側であるDCプラグ挿入孔10内に進出するスリーブ接片部11a1と、該スリーブ接片部11a1の基部側を折り返して、該可動ハウジング7の側部外に進出すべく構成したスライド接点部11a2とで構成したものである。該スリーブ接片部11a1は、可動ハウジング7の後方から前方に向かってDCプラグ挿入孔10内に徐々に進出するように構成し、その先端直前に膨出した接点部が、該DCプラグ挿入孔10内に挿入されるDCプラグp2の外側電極p21に圧接し、電気的に接続状態となる。なお、該スリーブ接片部11a1は、該可動ハウジング7に形成した切欠を通じてDCプラグ挿入孔10内に進出する。前記スライド接点部11a2には、その先端直前が膨出部となっており、この膨出部が後述する導電性帯状部材12と接触するようになっている。なお、云うまでもなく、この外側接片11aは、導電性のバネ材で構成してある。
【0045】
以上の外側接片11aには、そのスリーブ接片部11a1と反対側の位置に前記プラグ保持バネ11cが配置してある。図3(a)、図4(b)、図5(a)、図8(b)及び図9(b)に示すように、該プラグ保持バネ11cは、可動ハウジング7の側部(該スリーブ接片部11a1と反対側側部)に配置し、該可動ハウジング7に形成した切欠からDCプラグ挿入孔10内に進出状態になっている。該プラグ保持バネ11cは、同図に示すように、板状基部11c1と、該板状基部11c1の内側にU字状に切り込みを入れ、その内側の舌片状の部分を引き起こしてなる保持片11c2とで構成する。この保持片11c2は、その先端部直前を膨出部とする。この保持片11c2は、可動ハウジング7に形成された切欠を通じてDCプラグ挿入孔10内に進出する訳であるが、前記外側接片11aのスリーブ接片部11a1とは逆にDCプラグ挿入孔10の先端側から後端側に向かって該DCプラグ挿入孔10内に進出するように配置する。なお、前記板状基部11c1は、可動ハウジング7の後側部外面の平坦な部分(断面四角形の突部となっている外面)に配し、後述する二つの検出接片13a1、13b1と共に可動ジャック3が後部に移動したことを検出する検出手段を構成するようになっている。
【0046】
前記プラグピン11bは、図3(a)、(b)、図4(b)、図5(a)、(b)、図8(b)及び図9(b)に示すように、可動ハウジング7の後端から前方に向かって突出させたピン状の電極である。このプラグピン11bは、DCプラグ挿入孔10の中央に配してあり、該DCプラグ挿入孔10に挿入されたDCプラグp2の内側電極p22に嵌合状態となって電気的に接続するものである。該プラグピン11bの後端は、図3(b)及び図5(b)に示すように、連結片14を結合し、該連結片14を上方に延長し、その後、後方に延長した上でU字形に屈曲し、その外側の片を更に前方に延長し、その先端直前の部分を外方に膨出して接点部141を構成したものである。この接点部141は、可動ジャック3が前方に移動してAVプラグ挿入孔4内に進入した場合に後述する導電性接続片15と接触するようになっている。
【0047】
上記導電性接続片15は、図1(f)、図3(b)、図4(b)、図5(b)及び図6に示すように、ハウジング1の上部内の板状の部位及び一方の側部外面に位置する同様に板状の部位で構成した板状基部151と、ハウジング1の上部内の板状の部位を帯状に切り出し、この帯状の部位の中央を下方に膨出させた接片部152と、板状基部151の側部側の下部から側方に突出させた端子部153とで構成したものである。なお、該ハウジング1の上記接片部152の後方は、AVプラグ挿入孔4及び待避空間6の内周面を切り欠いて前記した移動溝62が形成してあり、可動ジャック3の移動に伴って、前記連結片14の接点部141は該移動溝62を通じて支障なく移動し、該接片部152のいずれかの部位に接触できるようになっている。また板状基部151の上部側はその前後端がハウジング1に形成したスリット部に挿入係止状態となっている。板状基部151の側部側の両側上下部もハウジング1に形成した溝に係止状態となっている。
【0048】
前記プラグ保持バネ11cの板状基部11c1のうち、前記可動ハウジング7の外側面に位置する部位は、前記のように、可動ジャック3が後部の待避空間6に移動したことを検出する検出手段の一部をなすものであるが、この検出手段の他の要素は、前記のように、二つの検出接片13a1、13b1を含む要素である。
【0049】
この検出接片13a1、13b1は、図1(f)、図3(a)、図5(a)、図6、図8(b)及び図9(b)に示すように、ハウジング1の後側部にそれぞれ配置する。特に図1(f)及び図6に示すように、該ハウジング1の後側部外面にバネ基部13a2、13b2を配列固定し、前側のバネ基部13a2の高さを高く、後側のバネ基部13b2の高さをそれより低く構成し、それぞれの上端から前記検出接片13a1、13b1を後方に向かって延長状態に構成し、かつそれぞれのバネ基部13a2、13b2の下端から水平外方に伸びる端子部13a3、13b3を突出させて、検出接片バネ13a、13bを構成する。
【0050】
なお、上記検出接片13a1、13b1は、それぞれ図3(a)、図5(a)、図8(b)及び図9(b)に示すように、ハウジング1の該当する部位に形成した切欠を通じて、平面視で、斜めに待避空間6に進入するように構成する。しかして、図5(a)及び図9(b)に示すように、AVプラグp1に押されて可動ジャック3が待避空間6まで後退すると、その可動ハウジング7の側面に配した前記プラグ保持バネ11cの板状基部11c1の内、該可動ハウジング7の側面に位置する部位が該検出接片13a1、13b1に接触することになり、両検出接片13a1、13b1が短絡する。こうして両端子部13a3、13b3でその短絡が検出されることになり、可動ジャック3が待避空間6に後退したことを検知することができることになる。
【0051】
前記導電性帯状部材12は、図3(a)、図5(a)、図8(b)及び図9(b)に示すように、ハウジング1の一側部の、プラグピン11bに接続するスライド接点部11a2がスライド移動する部位に前記スライド溝63を形成し、その底部に沿って配した金属帯材である。該スライド溝63は、より詳細には、同図に示すように、ハウジング1の内部に形成したAVプラグ挿入孔4の後部側内周面及び待避空間6の内周面の内の該当部位を切り欠いて形成したものである。なお、該導電性帯状部材12は、ハウジング1の後部で外部に延長し、該ハウジング1の下部外側に突出する端子部121を構成してある。
【0052】
しかして可動ジャック3のハウジング1の前後方向の移動に伴って前記スライド接点部11a2も同様に移動するが、該スライド接点部11a2は、常時、前記導電性帯状部材12に接しているので、前記プラグピン11bは、該スライド接点部11a2、該導電性帯状部材12を介して外部の回路への電気的接続状態を維持することができる。
【0053】
この実施例の複合ジャックによれば、径に一定以上の差のあるAVプラグp1とDCプラグp2が嵌合対象であるAVジャックとDCジャックとを組み合わせ、前者のAVプラグ挿入孔4と後者のDCプラグ挿入孔10とが同軸となるように固定ジャック2と可動ジャック3とを配置することにより、横方向の設置スペースの拡大を回避したものである。
【0054】
またこの実施例の複合ジャックによれば、後者の可動ジャック3を、使用時には、前者の固定ジャック2のAVプラグ挿入孔4内に一時固定できるようにすることにより、その安定した使用を確保し、固定ジャック2を使用する場合は、そのプラグ挿入孔であるAVプラグ挿入孔4内にAVプラグp1を挿入すると、これにより、同時に、その内部に位置する可動ジャック3をハウジング1の後方に位置する待避空間6内に後退させ得るようにしたことにより、その安定した使用を確保したものである。
【0055】
しかしてAV信号の授受のための固定ジャック2とDC電源の授受のための可動ジャック3とは同時に使用することはできないが、通常、DC電源は、組み込み対象の携帯機器のバッテリへの充電の際にのみ使用する関係上、可動ジャック3の使用を必要とするのは、AV信号の授受を行い得ないか又はしない場合であり、両者は、通常、その使用が択一的に必要となると考えることができる。それ故、このことによる不都合はないと判断することができる。
【0056】
この実施例の複合ジャックによれば、固定ジャック2を使用する場合は、前記したように、単に該固定ジャック2に適合するAVプラグp1をハウジング1の正面に開口するAVプラグ挿入孔4に挿入すれば良い。このとき、前記コイルバネ8の作用により該固定ジャック2のAVプラグ挿入孔4中には可動ジャック3が進入状態になっているが、前記一時固定手段9のスライド固定片93を特に操作せず、その先端を可動ジャック3の係止孔91に挿入しないでおけば(一時固定操作しなければ)、図5(a)、(b)及び図9(b)に示すように、該可動ジャック3は、該AVプラグp1の挿入に伴い、該AVプラグp1に押されてハウジング1の後部の待避空間6まで後退することとなる。そのため固定ジャック2のAVプラグ挿入孔4への対応するAVプラグp1の挿入には全く支障がない。前記スリーブ接片5a、5b、5cの接片部5a2、5b2、5c2、前記チップ接片5dの接片部5d2及び前記導電性接続片15の接片部152による保持力を適切に設定しておけば、AVプラグp1が前記コイルバネ8の作用で押し戻されてしまうようなこともない。
【0057】
また可動ジャック3を使用する場合は、固定ジャック2のAVプラグ挿入孔4中に前記コイルバネ8の作用により進出状態となっている可動ジャック3を前記一時固定手段9でその位置に一時固定した上で、該可動ジャック3に適合するDCプラグp2をDCプラグ挿入孔10に挿入すればよい。固定ジャック2のAVプラグ挿入孔4にAVプラグp1が挿入してあった場合は、これを抜いてから以上の操作を行うべきことは言うまでもない。
【0058】
なお、固定ジャック2のAVプラグ挿入孔4にAVプラグp1が挿入していない限り、可動ジャック3は前記コイルバネ8の作用で固定ジャック2のAVプラグ挿入孔4に進出挿入状態となっている。なおまた以上の一時固定手段9による一時固定は、その操作部931を、例えば、図8(a)中では左方向にスライド操作し、同図(b)に示すように、スライド固定片93を左方向にスライド移動させることにより、その先端を可動ジャック3の可動ハウジング7に開口した係止孔91に進入させて行うものであり、その操作は極めて簡単で、一時固定は確実である。また解除は、その逆の操作であり、これも簡単であり、その解除も確実である。またこの一時固定手段9の構成も簡明である。
【0059】
従ってこの実施例の複合ジャックによれば、前記したように、固定ジャック2と可動ジャック3とは、横方向に並列に配されるものではなく、前者のAVプラグ挿入孔4と後者のDCプラグ挿入孔10とが同軸上に並ぶようにしつつ、前者は固定状態に、後者は、該軸に沿って移動自在に、それぞれ配するものであり、長さ方向のスペースは若干拡大するが、幅方向のスペースは拡大させない。そのため、横方向乃至幅方向のスペースに限りがあるが、若干深さ方向に余裕がある場合には極めて有効に適用することができる。
【0060】
この実施例の複合ジャックによれば、可動ジャック3はハウジング1中を前後方向に移動自在に構成してあるが、そのDCプラグ挿入孔10に挿入されるDCプラグp2の外側電極p21に接触する外側接片11aは、そこから延長したスライド接点部11a2が可動ハウジング7の側部外に進出状態になり、かつ前記導電性帯状部材12に接触状態となっている。該導電性帯状部材12は、AVプラグ挿入孔4の後部側内周面及び待避空間6の内周面に連続して配してあるため、該可動ジャック3が前後方向に移動し、どの位置にあっても、該スライド接点部11a2は、常時、該導電性帯状部材12に接触しており、必要があれば、DCプラグp2の外側電極p21を該スライド接点部11a2及び導電性帯状部材12を介して常時外部の回路と電気的な接続状態を維持することができる。
【0061】
この複合ジャックによれば、更に該可動ジャック3は、ハウジング1の前部のAVプラグ挿入孔4中に移動状態のときに本来の用途、すなわち、DC電源の授受に使用可能であるが、その状態では、そのDCプラグ挿入孔10に挿入されるDCプラグp2の内側電極p22に接触するプラグピン11bは、連結片14、該連結片14の延長先の接点部141及びこれがこの状態で接触する導電性接続片15を介して外部の回路と電気的な接続状態を確保することができる。
【0062】
前記したように、この実施例の複合ジャックによれば、図5(a)及び図9(b)に示すように、AVプラグp1に押されて可動ジャック3が待避空間6まで後退すると、プラグ保持バネ11cの板状基部11c1の可動ハウジング7の側面に位置する部位が前記検出接片13a1、13b1に接触し、これらが短絡することになる。この短絡が両端子部13a3、13b3で検出され、可動ジャック3が待避空間6に後退したことを検知することができる。可動ジャック3の待避空間6への後退を検出する必要のある場合は、これを利用してその検出を確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
この発明は、電子機器、特に携帯機器に組み込むジャック類の製造、並びにその電子機器への組み込みの分野で利用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 ハウジング
2 固定ジャック
3 可動ジャック
4 AVプラグ挿入孔(プラグ挿入孔)
5a、5b、5c スリーブ接片(接片部材)
5a1、5b1、5c1 帯状基部
5a2、5b2、5c2 接片部
5a3、5b3、5c3 端子部
5d チップ接片
5d1 帯状基部
5d2 接片部
5d3 端子部
6 待避空間
61 後部カバー
611 係止突起
62 移動溝
63 スライド溝
7 可動ハウジング
8 コイルバネ(バネ部材)
9 一時固定手段
91 係止孔
92 固定片挿入穴
93 スライド固定片
931 操作部
10 DCプラグ挿入孔(第2プラグ挿入孔)
11a 外側接片(接片部材)
11a1 スリーブ接片部
11a2 スライド接点部
11b プラグピン(ピン状接片、接片部材)
11c プラグ保持バネ
11c1 板状基部
11c2 保持片
12 導電性帯状部材
121 端子部
13a、13b 検出接片バネ
13a1、13b1 検出接片
13a2、13b2 バネ基部
13a3、13b3 端子部
14 連結片
141 接点部
15 導電性接続片
151 板状基部
152 接片部
153 端子部
p1 AVプラグ
p11、p12、p13 スリーブ電極
p14 チップ電極
p2 DCプラグ(プラグ)
p21 外側電極
p22 内側電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性のハウジングと、該ハウジングの前部に構成した固定ジャックと、該ハウジング内を前後に移動自在に配した可動ジャックと、で構成した複合ジャックであって、
前記固定ジャックを、該ハウジングの前部に構成した先端開口のプラグ挿入孔と、該プラグ挿入孔に、対応するプラグが挿入された場合に、該プラグの電極に接触すべく配した対応する数及び位置の接片部材と、で構成し、
前記可動ジャックを、該ハウジングの後部及び前部の固定ジャックのプラグ挿入孔の間を往復移動自在に配した可動ハウジングと、該可動ハウジングをプラグ挿入孔内に押し込むべく作用するバネ部材と、該可動ハウジングの前記プラグ挿入孔への進入状態を一時固定する一時固定手段と、該可動ハウジングに構成した先端開口の第2プラグ挿入孔と、該第2プラグ挿入孔に、対応する第2プラグが挿入された場合に、該第2プラグの電極に接触すべく配した対応する数及び位置の接片部材と、で構成してなる複合ジャック。
【請求項2】
前記可動ジャックの接片部材に前記可動ハウジングの周側外に弾力的に突出するスライド接点部を構成し、前記ハウジングの内部に、該可動ハウジングの前後方向の移動の際に、該スライド接点部が常時弾力的に接触する導電性帯状部材を配し、かつ該導電性帯状部材に該ハウジングの外部に延長する端子部を構成した請求項1の複合ジャック。
【請求項3】
前記可動ジャックの接片部材に前記可動ハウジングの周側外に弾力的に突出する接点部を構成し、前記ハウジングの前部内側に、該可動ハウジングが前部のプラグ挿入孔内に移動した際に、該接点部が弾力的に接触する導電性接続片を配し、かつ該導電性接続片に該ハウジングの外部に延長する端子部を構成した請求項1の複合ジャック。
【請求項4】
前記固定ジャックがオーディオ信号及びビデオ信号の授受を行うAVジャックであり、前記可動ジャックが直流電源の授受を行うDCジャックであって、
前記固定ジャックの接片部材が、プラグ挿入孔に挿入されるAVプラグの周側に構成された複数のスリーブ電極に接触する同数のスリーブ接片及びAVプラグ先端のチップ電極に接触するチップ接片で構成され、
前記可動ジャックの接片部材が、第2プラグ挿入孔に挿入されるDCプラグ先端の穴状の内側電極に挿入接触するピン状接片及び該DCプラグ周側の外側電極に接触する外側接片で構成されるものである請求項1の複合ジャック。
【請求項5】
前記一時固定手段を、前記可動ハウジングの周側部に開口した係止孔と、該可動ハウジングが前記バネ部材の作用で前記ハウジングの前部のプラグ挿入孔まで移動した状態で、該ハウジングの、該係止孔に対応する部位に開口した固定片挿入穴と、該固定片挿入穴に該係止孔まで挿入係止可能に配したスライド固定片であって、その先端を該係止孔にスライド挿入係止又はスライド離脱させるべく操作する操作部を該ハウジングの前面の属する平面と同一の平面内に備えたスライド固定片とで構成したものである請求項1の複合ジャック。
【請求項6】
前記可動ハウジングに、前記外側接片と対向状態に前記第2プラグ挿入孔に進出し、該第2プラグ挿入孔に挿入されたDCプラグを該外側接片とともに挟持状態に保持する導電性のプラグ保持バネを配し、
かつ該プラグ保持バネを該可動ハウジングに固定する該プラグ保持バネと一体の板状基部を該可動ハウジングの側面に露出状態に配置し、
他方、前記ハウジングに配した二つの位置検出用の導電性の検出接片バネであって、該可動ハウジングが前記固定ジャックのプラグ挿入孔に挿入されたAVプラグによって押されて後部に後退した際に前記板状基部に接触する位置に検出接片を突出させた二つの検出接片バネを配し、該二つの検出接片バネから延長する端子を各々該ハウジングの外部に延長した請求項4の複合ジャック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−18853(P2012−18853A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156244(P2010−156244)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】