説明

複合セラミック基板及びその製造方法

【目的】 半導体素子との熱膨張係数のマッチング、熱放散性、高機械的強度が得られ、優れた電気的特性を有する基板として提供する。
【構成】 キャビティが形成されたセラミック枠体30と、前記セラミック枠体30とは異なる材質により形成され、該セラミック枠体30のキャビティ内に接合用金属34を介して接合されたコア材32とを備え、該コア材32の少なくとも一方の表面が前記セラミック枠体30の表面と同一平面の平坦面に形成されて露出していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は半導体装置等に使用される複合セラミック基板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】最近の大規模半導体集積回路の高速化、高密度化はそれらの実装用基板に対して従来以上に多種多様でかつ厳しい特性を要求している。具体的には高熱伝導性を有すること、基板に搭載する半導体素子との熱膨張係数をマッチングさせて熱ストレスの発生を抑えること、電気的特性を良好とするため低誘電率であること、高強度であること等である。また、これらに加えて高密度多層配線構造や高密度薄膜配線が可能であるといったことが要請される。
【0003】半導体デバイスを実装するためのセラミック材料としてはこれ迄にアルミナセラミック、ムライトセラミック、窒化アルミニウムセラミック、低温焼成セラミックが開発され実用化されてきた。しかしいずれのセラミックも単独では前記諸要求を満足することはできず、2種以上のセラミックの複合構造あるいは金属との複合構造とすることがなされてきた。例えば、ムライトセラミックと窒化アルミニウムセラミックの複合構造によれば低熱膨張係数、低誘電率に加え高熱放散性が同時に得られ、低温焼成セラミックの複合構造によれば更に低い配線抵抗が実現される。また、一方、製造コストを抑えるためアルミナセラミックと銅−タングステン板を複合化する方法も採用されているが、この場合は低誘電率が得られないという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のような複合化による場合は一般に製造プロセスが長くなり、構造が大型化し、最終的に高密度実装には不利になることが多い。また、高密度薄膜配線を得る上でもこの様な複合構造は有利に作用していない。なお、高密度薄膜配線を採用した例としては、SOS(シリコンオンシリコン)の実装形態がある。これは単結晶シリコン基板上に高密度薄膜配線が形成され、この基板上にワイアボンド、TABあるいはフリップチップボンドによって半導体チップが実装されたものである。この基板は従来と類似なキャビティを有するパッケージ内に実装される。この技術はMCM(マルチチップモジュール)の実装形態として最近多用されてきているものである。
【0005】しかしながら、この実装形態においては製造プロセスが長く、また高密度配線が形成されているシリコン基板の扱いが難しいという問題があった。また、SOS基板をパッケージに搭載した場合は、SOS基板とパッケージの導体パターンとの間をワイアボンド等で接続しなければならないから、半導体チップとパッケージの導体パターンとの間で端子間接続が2か所で行われることになる。このため製品コストが上がるだけでなく、インピーダンスの不連続やインダクタンスの増大といった電気的特性面で問題が生じていた。本発明は、これら問題点を解消すべくなされたものであり、高密度多層配線構造や高密度薄膜配線等が好適に可能であり、高機能を有する複合セラミック基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するため次の構成を備える。すなわち、複合セラミック基板において、キャビティが形成されたセラミック枠体と、前記セラミック枠体とは異なる材質により形成され、該セラミック枠体のキャビティ内に接合用金属を介して接合されたコア材とを備え、該コア材の少なくとも一方の表面が前記セラミック枠体の表面と同一平面の平坦面に形成されて露出していることを特徴とする。また、キャビティが形成されたセラミック枠体と、前記セラミック枠体とは異なる材質により形成され、該セラミック枠体のキャビティ内に接合用ガラスを介して接合されたコア材とを備え、該コア材の少なくとも一方の表面が前記セラミック枠体の表面と同一平面の平坦面に形成されて露出していることを特徴とする。また、コア材が一種以上の補助コア材を有することを特徴とする。また、セラミック枠体に表面配線および/または内部配線が形成されていることを特徴とする。また、コア材に表面配線または表面配線と内部配線が形成されていることを特徴とする。また、コア材にサーマルビアまたはサーマルシンクが形成されていることを特徴とする。また、セラミック枠体の一方の表面にコア材の一方の表面が露出し、前記コア材の他方の表面が接合用金属に被覆され、該接合用金属が前記セラミック枠体の他方の表面に露出していることを特徴とする。また、セラミック枠体の表面に露出する接合用金属の面積が、コア材の平面積より広く形成されていることを特徴とする。また、セラミック枠体の表面に露出する接合用金属の面積が、コア材の平面積より狭く形成されていることを特徴とする。また、セラミック枠体の表面に露出する接合用金属に放熱フィンが取り付けられたことを特徴とする。また、セラミック枠体に外部リードが取り付けられたことを特徴とする。また、接合用金属が銅、金、アルミニウム、銀、銀−銅系合金または銅−アルミニウム系合金であることを特徴とする。また、接合用ガラスが、ZnO・B2 3 ・SiO2 系ガラス、PbO・B23 ・SiO2 系ガラス、PbO・SiO2 系ガラス、PbO・B2 3 系ガラスまたはPbO・ZnO・SiO2 系ガラスであることを特徴とする。また、セラミック枠体が、アルミナセラミック、低温焼成セラミック、ムライトセラミックまたは窒化アルミニウムセラミックであることを特徴とする。また、コア材がアルミナセラミック、ムライトセラミック、窒化アルミニウムセラミック、サファイア、シリコン、タングステンまたはモリブデンであることを特徴とする。また、補助コア材が窒化アルミニウムセラミック、SiCセラミック、タングステンまたはモリブデンであることを特徴とする。
【0007】また、複合セラミック基板の製造方法において、キャビティを形成して予め焼成して成るセラミック枠体の前記キャビティ内に接合用金属を介してコア材を配置し、該接合用金属の融点以上の温度で加熱処理して、前記セラミック枠体と前記コア材とを接合用金属を介して接合し、該セラミック枠体とコア材の表面を研磨して、該コア材の少なくとも一方の表面を前記セラミック枠体の表面と同一平面の平坦面に形成して露出することを特徴とする。また、キャビティを形成して予め焼成して成るセラミック枠体の前記キャビティ内に接合用ガラスを介してコア材を配置し、該接合用ガラスの軟化点以上の温度で加熱処理して、前記セラミック枠体と前記コア材とを接合用ガラスを介して接合し、該セラミック枠体とコア材の表面を研磨して、該コア材の少なくとも一方の表面を前記セラミック枠体の表面と同一平面の平坦面に形成して露出することを特徴とする。また、コア材を配置するキャビティを有するセラミックグリーンシートの積層体を形成し、該積層体の前記キャビティ内に接合用金属を介してコア材を配置し、前記コア材および接合用金属を封入すべく、前記キャビティ開口部を覆ってキャビティの形成されていないセラミックグリーンシートを積層して一体化した後、前記積層体を接合用金属の融点以上の温度で焼成することによりセラミック枠体を形成するとともに、前記接合用金属を溶融して前記セラミック枠体とコア材とを接合用金属を介して接合し、該セラミック枠体の表面を研磨して、該コア材の少なくとも一方の表面を前記セラミック枠体の表面と同一平面の平坦面に形成して露出することを特徴とする。また、コア材を配置するキャビティを有するセラミックグリーンシートの積層体を形成し、該積層体の前記キャビティ内に接合用ガラスを介してコア材を配置し、前記積層体を接合用ガラスの軟化点以上の温度で焼成することによりセラミック枠体を形成するとともに、前記接合用ガラスを溶融して前記セラミック枠体とコア材とを接合用ガラスを介して接合し、該セラミック枠体とコア材の表面を研磨して、該コア材の少なくとも一方の表面を前記セラミック枠体の表面と同一平面の平坦面に形成して露出することを特徴とする。また、コア材として一種以上の補助コア材を備えるものを使用することを特徴とする。また、キャビティ開口部を覆うセラミックグリーンシートに、接合用金属が溶融した際の余剰分を収容するためのスルーホールを設けることを特徴とする。
【0008】
【発明の概要】本発明に係る複合セラミック基板はセラミック枠体とこのセラミック枠体とは異種の材料によって形成したコア材とを接合用金属あるいは接合用ガラスを用いて一体に接合して成るものであり、前記接合用金属及び接合用ガラスとしてセラミック枠体の焼成温度よりも低温の融点または軟化点を有するものを使用することを特徴とする。
【0009】はじめに、接合用金属を用いた複合セラミック基板について説明する。複合セラミック基板に用いるセラミック枠体としては、アルミナ、低温焼成セラミック、ムライト、窒化アルミニウムが好適である。アルミナは低コスト、高強度、低温焼成セラミックは低誘電率、低熱膨張、低導体抵抗、ムライトは低誘電率、低熱膨張、低コスト、窒化アルミニウムは低熱膨張、高熱伝導、高強度といった特徴を有する。なお、コーディエライト、フォルステライト、ジルコニア等も使用可能であるが、これらのものは低強度であることや高熱膨張である等の不利がある。
【0010】また、セラミック枠体と一体に接合するコア材も用途に応じて種々の材料が使用できる。たとえば、アルミナセラミック、サファイア(単結晶)、AlNセラミック、ムライトセラミック、シリコン(単結晶)、タングステン、モリブデン等である。このようにコア材はセラミックに限るものではなく、金属を使用することも可能である。また、セラミック板と金属板といったように異種材料を複合化してコア材に使用することも可能である。コア材は焼成温度において溶融したりせず物理的に安定であること、また、化学的に安定で接合材その他の成分と化学反応等の相互作用をしないという条件を満たすものであることが必要である。また、気孔率がゼロに近い、熱伝導性が基板材より高い、熱膨張率が半導体素子の熱膨張率に近いといった要件も必要である。
【0011】また、コア材としてセラミック板を使用する等の場合には多層配線構造としたものを使用することも可能である。また、コア材には種々の加工を施すことが可能であり、貫通孔を設けたり、サーマルビアを設けるといった構成を採用することができる。そして、これらの構成を組み合わせることによってさらに広い用途に利用でき、多種機能を有する製品として提供することが可能になる。
【0012】接合用金属としては銅、金、アルミニウム、銀のうちから選ばれる一種あるいは二種以上の混合物、たとえば銀−銅系や銅−アルミニウム系の合金等が用いられる。接合用金属を選択する場合は、複合セラミック基板に用いるセラミック枠体の焼成温度よりも低融点のもの、あるいは焼成したセラミック枠体を使用して製造する場合は製造工程における加熱処理温度よりも低融点のものとすればよい。また、接合用金属はコア材および基板材との相互作用がなく、ヤング率がなるべく低く、熱伝導率がなるべく高いものが好適である。
【0013】本発明に係る複合セラミック基板は種々の用途に用いられるが、半導体素子搭載基板として使用する場合には、コア材部分を半導体素子の実装ステージとして使用する。コア材はセラミック枠体とは別個に形成するから、たとえば、コア材をシリコンにすれば、半導体素子との熱膨張係数のマッチングを完全に図ることができ、発熱量の大きな半導体チップを搭載した場合の信頼性を向上させることが可能になる。もちろん、コア材に高熱伝導路を形成することによって熱放散性を向上させるといったことも可能である。
【0014】この場合、コア材を支持するセラミック枠体は低熱伝導率のセラミックであってもよく、コア材に高密度配線パターンを形成する場合もセラミック枠体としてはある程度の気孔率を有するものを用いてもかまわない。また、コア材はセラミック枠体によって支持されているから、高強度が要求されないといった利点がある。このように本発明に係る複合セラミック基板はセラミック枠体とコア材で各々必要に応じた特性が得られるように形成すればよく、高機能を有する基板として製造コストを抑えた製品として得ることができるという利点がある。
【0015】複合セラミック基板の構成例として、セラミック枠体部分に低コストのアルミナセラミックを用いコア材に窒化アルミニウムセラミックを用いれば、安価でかつ半導体素子との熱膨張係数のマッチングと高放熱性をともに実現できる。また、コア材に低コストのムライトを用いれば熱膨張係数のマッチングを図ることができ、コア材にサーマルビアあるいは貫通孔を設けて接合用金属を充填することによって有効な熱放散性を得ることができる。また、セラミック枠体にムライトセラミックあるいは低温焼成セラミックを使用すると、これらの誘電率が低いことから半導体装置としての電気的特性を向上させることができる。なお、これらセラミックの熱伝導率が低いため熱放散性が問題になるが、コア材に熱伝導性に優れた窒化アルミニウムセラミックを使用することによって熱放散性を改善することができる。
【0016】コア材にシリコンやサファイア等の単結晶基板を用いると、高密度薄膜配線の形成に必要な無気孔面を得ることができる。とくに、シリコン基板を用いた場合は熱膨張係数が半導体素子と同一であることからMCM(マルチチップモジュール)として好適に使用できる。従来のシリコン基板を用いたSOS型のMCM−D(薄膜微細配線されるMCM)では薄膜配線したシリコン基板をセラミックパッケージ上に接着し、このシリコン基板上の電極とパッケージの端子間をワイアボンディング等で接続していたが、本発明の複合セラミック基板の場合は基板表面の金属の接合部上に電気的絶縁層を設けて電気的短絡が生じないようにしておけば、薄膜プロセスを利用してシリコン基板とセラミック枠体との間に連続した配線パターンを形成することができる。このように構成することによって、従来のSOS型のMCM−Dに比べてシリコン基板から外部端子までの配線長を短縮でき、インダクタンスを減少させ、配線パターンの不連続部をなくして信号の伝送特性を改善することができる。
【0017】このように、複合セラミック基板をSOS型のMCM−D用として使用する場合は、半導体素子を複数個搭載するからコア材であるシリコン基板のサイズを大きくする必要がある。この場合、コア材自体の機械的強度と接合用金属とコア材との熱膨張係数の差に起因する熱ストレスが問題になることがある。このような場合には、コア材の下部に補助コア材として熱膨張係数がコア材に近く、かつ機械的強度も高い基板を配置することによって熱ストレスとコア材の機械的強度の問題を解決することができる。このようにして使用する補助コア材としてはAlNセラミック、タングステン、モリブデン、SiCセラミック等が好適であり、これら補助コア材を使用することで放熱性をも改善することが可能になる。
【0018】接合用金属を用いた複合セラミック基板を製造する方法には大別して2つの方法がある。第1の方法は、あらかじめキャビティを有するセラミック枠体を焼成して用意しておき、このセラミック枠体のキャビティ内に接合用金属とともに予め焼成等により形成しておいたコア材を配置し、接合用金属の融点以上の温度で加熱処理することによってセラミック枠体とコア材とを一体に接合し、接合した後の基板を平面研削及び研磨してコア材を表面に露出させる方法である。この方法の場合には、加熱処理の際にコア材と接合用金属との比重差によって、コア材が浮き上がることがあるから、コア材の浮き上がりを防止する治具を使用する。
【0019】第2の方法は、コア材の浮き上がりを防止できる方法であり、グリーンシートの焼成と同時にセラミック枠体とコア材とを接合用金属を用いて一体化する方法である。この場合は、キャビティ形成用の矩形孔を設けたグリーンシートを積層してコア材を収納するキャビティを有するグリーンシートの積層体を形成し、キャビティ内に接続用金属とともに予め焼成等により形成しておいたコア材を埋設し、コア材及び接合用金属が外部に露出しないようにキャビティ開口部をグリーンシートで覆って一体化し、これを焼成して、得られた基板を平面研削及び研磨することによってコア材を表面に露出させるようにする方法である。
【0020】上記第1及び第2の方法のいずれの場合も接合用金属は加熱処理およびグリーンシートの焼成の際に加熱されて溶融し、処理後に固化してセラミック枠体とコア材とを一体に接合する。このため、接合用金属にはセラミック枠体形成用のグリーンシート及びコア材と共融化したり化学反応等の有害な相互作用をしないものを使用する必要がある。
【0021】なお、接合用金属とセラミック枠体あるいはコア材との間で必要な相互作用を発現させる工夫も必要である。これは、前掲したセラミック枠体及びコア材に使用する材料と前述した接合用金属の場合は濡れ性が低く、接合用金属とセラミック枠体との間で緻密な接合部が形成され難い場合があるからである。そこで、上記第1、第2のいずれの方法の場合も、接合用金属に周期律表第4a族元素金属を混入させて接合性を向上させるようにする。たとえば、前掲の接合用金属に金属チタンを0.5重量パーセント以上10重量パーセント以下、好適には5重量パーセント前後混入させるのが効果的である。
【0022】また、上記の複合セラミック基板の製造方法のうち、セラミックグリーンシートのキャビティ内にコア材を配置して焼成する方法の場合には、焼成前後の各構成部分の体積変化を考慮する必要がある。コア材は焼成前後での体積変化が熱膨張分を除いてはない。接合用金属は焼成前は一般にペーストあるいは粉末充填体であり、焼成中に液化するのでおよそ焼成前の気孔率分の体積減少が起きる。セラミック枠体部分は(焼成後の相対密度)−(焼成前の相対密度)の体積減少があり、これに伴ってキャビティ体積の減少が起こる。焼成後のキャビティ容積に対する接合用金属の占有体積は、焼成前の金属の充填率とセラミックの焼成収縮率および各部の設計サイズにより調整されるが、多くの場合、焼成後の金属の体積は(焼成後のキャビティ容積)−(コア材の体積)よりも大きくなる。
【0023】この金属の過剰分の体積が特に大きい場合にはキャビティに連通させてグリーンシートにスルーホール等を設けて溶融金属の逃がしスペースを設けるようにする。この逃がしスペースは過剰分の金属を収容できるものであればよく、その配置位置やサイズ等はとくに限定されないが、キャビティの開口部を覆うグリーンシートに設けておけば、焼成後に研削して除去されるから製品に残らずに好適である。
【0024】焼成中に液化する金属とセラミックとの同時焼成に関して、本発明者らは既に銅、金、銀についてAlNセラミックとの同時焼成が可能であることを報告した(特開平2−197189号公報)。すなわち、上記製造方法において、グリーンシートの焼成とともにコア材を一体に接合する上述した第2の方法は、コア材をグリーンシート内に封入して焼成することによって焼成時における溶融金属の散逸を防止して一体に焼成することを可能にする。この方法は基本的に上記銅、金、銀についてAlNセラミックと同時焼成する方法と同じである。
【0025】セラミック枠体の焼成と同時にコア材を一体化する方法の場合は、コア材のフローティングを防ぐことができ、液体金属のはじきをある程度防止できるという長所がある反面、液体金属を高温にするため蒸発や化学反応に注意が必要であること、また、コア材や接合用金属の材料に制約が多くなるという短所がある。一方、予め焼成したセラミック枠体を使用する場合は液体金属の蒸発等の心配が少ないこと、保護層が無いことから研磨が容易であること、コア材や接合用金属の制約が少ないといった長所がある反面、コア材のフローティングがおきる、液体金属のはじきの問題がある、工程のステップが増えるといった短所がある。
【0026】なお、本発明の場合、接合用金属とセラミック枠体とコア材の組み合せによって製造方法が制約される。すなわち、コア材にシリコン基板を用いる場合にはAlNセラミック、アルミナセラミック、ムライトセラミックとの同時焼成によって一体接合できないから、この場合には同時焼成によらずあらかじめ焼成したセラミック枠体を使用する第1の方法が採用される。また、シリコン基板をコア材としセラミック枠体として低温焼成セラミックを用いる場合には、銀あるいは銀−銅系合金を接合用金属として用いる。低温焼成セラミック基板の焼成温度においては銅は液化せず、また上記焼成温度でアルミニウムとシリコン基板が反応するため、銅およびアルミニウムは不適である。
【0027】上記の第1あるいは第2の方法によって得られた基板を平面研削及び研磨することによってコア材を表面に露出させることができる。この表面研削及び研磨によってセラミック枠体にビアを設けておいた場合にはビア端部が露出して外部接続用等に使用することができるし、コア材を多層配線構造としておいた場合には、コア中のビア端部が露出して複合セラミック基板として得られる。基板の研削及び研磨は、製品によって基板の両面について行ってもよいし、基板の片面のみ行ってもよい。
【0028】こうして得られた複合セラミック基板は通常、半導体素子等を搭載するため、その基板上にさらに配線パターンが形成される。配線パターンを形成する場合、接合用金属として銅等の1000℃以上の融点をもつものを使用した場合には900℃前後の処理を必要とする誘電体ペーストあるいは導体ペーストによる厚膜法による配線形成が可能であるが、一般には高密度配線を得るため薄膜法が採用される。薄膜法のうち銅層とポリイミド層を積層して構成する有機物を使用する方法には制約がなくそのまま適用できるが、従来のSOSの製造工程で用いられている方法、即ちシリコン基板からなるコア材上にウエファー工程で配線パターンを形成するためには幾つかの制約条件を考慮しなければならない。
【0029】その主たる理由はコア材となるシリコン基板上に酸化膜を形成しなければならないことに起因する。通常、この酸化膜は大気中でシリコンを700〜1000℃で熱酸化させて形成するが、この方法をそのまま適用するとセラミック枠体部分の基板中の導体配線も酸化してしまうからである。これを防ぐ方法として以下の2つの方法が採用できる。第1の方法は、セラミック枠体部分の基板中の配線材料として金を採用する方法である。金は高価であるが配線設計によっては配線の高密度が達成できることと、金を線材として用いるワイアボンディングを必要としなくなるという点からコスト的にも実用にかなう方法である。
【0030】第2の方法は基板の材質等については特別の制約を設けず、酸化膜を形成する方法に制約を加える方法である。すなわち、コア材となるシリコン基板上に酸化膜を形成する際に熱酸化に依らずCVD(化学蒸着)法によって選択的に形成する方法を採用する方法である。この方法の場合は、基板が高温に加熱されることがないから、熱酸化による問題を解消することができる。
【0031】また、複合セラミック基板には、必要に応じて外部リードや放熱フィンを取り付けることができ、これらの部品の取り付けに合わせてコア材の構造やコア材の材質を選択することができる。また、半導体素子を搭載する他、チップコンデンサや抵抗等の回路部品を取り付けることができる。これら搭載部品に合わせて配線パターン等を形成することは従来の回路基板製品と同様である。
【0032】上述した複合セラミック基板は接合用金属を用いてコア材とセラミック枠体とを接合したものであるが、接合用金属のかわりに接合用ガラスを用いることもできる。接合用ガラスを用いる場合も接合用金属を用いる場合と同様に、あらかじめ焼成したセラミック枠体に予め焼成等により形成したコア材を配置して接合する方法と、セラミック枠体となるセラミックグリーンシートの焼成と同時に予め焼成等により形成したコア材を一体接合する方法の両方法が適用できる。
【0033】接合用ガラスもセラミック枠体の焼成温度あるいは製造工程における加熱処理温度よりも低温の流動点を有するものを使用する。ガラスは一般に銀や銅等の金属にくらべて熱応力緩衝作用が小さいので、使用にあたっては熱膨張係数を整合させるよう注意する必要がある。とくに、セラミック枠体とコア材の熱膨張係数に大きな差がある場合には熱膨張係数の配慮が重要になる。一般に、接合用ガラスの熱膨張係数はセラミック枠体とコア材の熱膨張係数から算出されるサイズ変化の差がなるべく小さくなるように選ぶのがよい。たとえば、基板材よりもコア材の熱膨張係数が小さい場合には基板材よりも大きな熱膨張係数のガラスを使用する、基板材よりコア材の熱膨張係数が大きい場合には基板材より小さな熱膨張係数のガラスを用いるといったように選ぶ。
【0034】基板に生じるクラックはコア材の大きさやコア材とセラミック枠体との接合部分の間隙といった構造にもよるが、たとえばセラミック枠体としてアルミナセラミック(熱膨張係数約7×10-6/℃)、コア材としてシコリン基板(熱膨張係数約3×10-6/℃)を使用する場合には接合用ガラスは熱膨張係数約13×10-6/℃のものが好適に使用できる。したがって、この値よりも熱膨張係数が大幅にずれた接合用ガラスを使用するとセラミック枠体とコア材にクラックがはいって破壊が生じる。
【0035】接合用ガラスを用いてセラミック枠体とコア材とを一体化する場合は、前述した接合金属を使用する場合にくらべてガラスの濡れ性や接着性が良好であることから、接合用金属を使用する場合に活性金属を添加したり前メタライズ処理が必要であったのに対して、特別の配慮を要しないという利点がある。なお、セラミック枠体あるいはコア材に窒化物あるいは炭化物を使用する場合はガラスが濡れにくいという傾向があるが、この場合も簡単な熱酸化処理を施すことによって必要な濡れ性を得ることができる。
【0036】接合用ガラスを用いて複合セラミック基板を製造する場合、グリーンシートと同時焼成でコア材と接合させる場合は、セラミックを焼成する際に接合用ガラスとセラミックが反応するという問題があり、現状ではセラミック枠体に低温焼成セラミックを使用する場合のみ可能である。アルミナセラミック、ムライトセラミック及びAlNセラミックでは各々の焼成条件下で接合用ガラスと反応してしまうためである。なお、あらかじめ焼成したセラミック枠体を使用する場合は接合用ガラスとセラミック枠体が反応するといった問題は解消される。
【0037】また、接合用ガラスを用いた場合はガラスの熱伝導率が低いため基板の熱伝導性が阻害されるといった問題が起こり得るが、基板の両面にコア材の両表面を露出させるように形成することで複合セラミック基板の熱放散性の問題を回避することが可能である。また、フリップチップ法による実装方法による場合は基板の放熱性はそれほど問題にならないから好適に使用できる。
【0038】また、接合用ガラスを用いた複合は接合用金属を用いた場合と異なり、セラミック枠体とコア材との接合部が電気的絶縁性を有するから、接合部分での電気的短絡を心配する必要がなく、コア材に形成した配線パターンとセラミック枠体に設けた配線パターンを接続する際に接合部に絶縁被覆を形成する必要がなく、薄膜プロセスによってコア材とセラミック枠体に連続して配線パターンを形成できて、基板の構造を単純化することができる。また、接合用ガラスと接合用金属との材料コストをくらべると、接合用ガラスの場合には接合用金属の2分の1以下と安価であり、製造コスト面で有利になるという利点がある。
【0039】
【実施例】以下、複合セラミック基板の製造方法について実施例とともに説明する。実施例1〜5は接合用金属を用いて複合セラミック基板を製造する方法、実施例6〜9は接合用ガラスを用いて複合セラミック基板を製造する方法に関するものである。
【0040】〔実施例1〕低温焼成セラミックのグリーンシートとして、平均粒径約2μmの酸化アルミニウム粉末とホウケイ酸ガラス粉末を体積比約50%−50%となる様にボールミル混合してグリーンシートを作製し、このグリーンシートに25mm角の穴を設け、また、穴の周囲に0.24mm径のスルーホールを設けた。そして、スルーホール内に銅ペーストを充填したグリーンシートを複数枚積層し、深さが1.61mmのキャビティを有する積層体を形成した。
【0041】次に、この積層体のキャビティ内に接合用金属として5wt%金属チタニウムを含有する銀ペーストを使用して20mm角で厚さが0.8mm のシリコン基板を配置した。次いで、積層体内にシリコン基板を封入するように前記グリーンシートと同組成のグリーンシートを基板の両面に積層し、加圧して一体化した。前記シリコン基板は複合セラミック基板のコア材として用いるものである。
【0042】図1(a) にグリーンシートの積層体10内にシリコン基板のコア材14を配置した断面図を示す。コア材14はその外面とキャビティ内面との間に銀ペーストからなる接合用金属ぺースト12が充填されて収納される。なお、キャビティの直上を覆うグリーンシートにはキャビティに連通させてスルーホール16を設ける。このスルーホール16は、焼成によってグリーンシートが収縮した際に溶融した接合用金属ぺースト12の逃げスペースとするためのものである。17は銅ぺーストを充填したビアである。
【0043】次に、この積層体を湿潤N2 ガス中において700℃で脱バインダー処理した後、ドライN2 ガス中で980℃、2時間焼成して焼成基板を得た。図1(b) に焼成後の断面図を示す。グリーンシートの積層体は焼成によって収縮するのに対してコア材14は収縮しないから、焼成基板ではコア材14とキャビティ内面との間隔が狭くなる。なお、グリーンシートの積層体10は厚み方向よりも長さ方向に大きく収縮するから実施例ではコア材14の外周側面とキャビティ内壁面との間隔を厚さ方向にくらべて広くして焼成した。接合用金属ぺースト12は焼成時に溶融してコア材14の外面とキャビティ内壁面との間を満たすとともに、余分はスルーホール16内に入り込んで固化する。18は溶融して固化した銀からなる接合用金属を示す。20は焼成後のセラミック枠体である。
【0044】次に、上記セラミック枠体20の上面を研削及び研磨して、コア材14の上面と銀からなる接合用金属18の端面及びビア17の端面を露出させた。図1(c)に研削及び研磨後の複合セラミック基板の断面図を示す。こうして得られた複合セラミック基板はコア材14と枠体状のセラミック枠体20が接合用金属18である銀によって一体化したものとなる。複合セラミック基板を厚さ方向に切断してコア材14とセラミック枠体20との境界部分の接合用金属18を観察したところ、接合用金属18は厚さ約0.5mm でほぼ一定であり、境界部分に完全に接合用金属18が充填されていた。
【0045】〔実施例2〕実施例1と同様にして低温焼成セラミックグリーンシートを作製し、グリーンシートの積層体のキャビティ内に実施例1と同じ5wt%金属チタニウムを含有する接合用金属となる銀ペーストを用いて、シリコン基板のかわりにコア材としてAlNセラミック基板を配置し、キャビティ内に封入して一体化した。図2(a) はAlNセラミック基板のコア材22を配した焼成前の積層体の断面図を示す。なお、コア材22は既に焼成した後のものである。
【0046】次いで、上記積層体を大気中で脱バインダー処理した後、大気中において980℃で2時間焼成した。図2(b) は焼成後の基板の断面図を示す。銀ペーストからなる接合用金属ぺースト12が溶融銀となってスルーホール16内に入り込んで固化し、コア材22とセラミック枠体20とは接合用金属18によって一体化される。次いで、セラミック枠体20の上面および下面を研削及び研磨して、基板の両面にコア材22と接合用金属18を露出させ複合セラミック基板を得た(図2(c) )。この複合セラミック基板は接合用金属18によってセラミック枠体20の枠体内にコア材22が一体に接合されたものとなる。製品はコア材22と低温焼成セラミックのセラミック枠体20が良好に一体接合されたものとして得られた。
【0047】〔実施例3〕平均粒径約2μmの酸化アルミニウム粉末にMgO 、SiO2、CaCO3 を混合して得られた92重量%アルミナセラミックグリーンシートを実施例1と同様に加工してグリーンシートの積層体を形成し、コア材としてサファイア基板を使用し、5wt%金属チタニウムを含む接合用金属となる銅ペーストを用いてキャビティ内にサファイア基板のコア材を配置した。サファイア基板のコア材は積層体の両面にグリーンシートを積層して図2(a) と同様な形態で積層体中に封入した。
【0048】この積層体を湿潤中性ガス雰囲気中で脱バインダーした後、アンモニア分解ガスとN2 ガスの混合雰囲気中において1570℃で2時間焼成した。得られた基板を片面研削及び研磨してサファイア基板のコア材を露出させ複合セラミック基板を得た。得られた複合セラミック基板はアルミナセラミックのセラミック枠体とサファイア基板のコア材の接合辺縁部が灰色に着色していたが銅からなる接合用金属部分は銅本来の色相を呈し、サファイア基板のコア材との接合も良好であることが確かめられた。
【0049】〔実施例4〕21mm角で深さ1.5mm のキャビティを有するAlNセラミック基板からなるセラミック枠体をあらかじめ焼成して作成し、このセラミック枠体のキャビティ内に20mm角で厚さ0.8mm のシリコン基板からなるコア材を実施例1で使用したものと同じ銀ペーストからなる接合用金属ぺーストを用いて配置した。図3(a) はAlNセラミック基板からなるセラミック枠体24にシリコン基板からなるコア材14を接合用金属ぺースト12を用いて配置した状態を示す。次に、この基板をグラファイト治具にセットし、N2 ガス中において1000℃で20分間加熱処理を行った。この加熱処理後の基板の上面を片面研削及び研磨してコア材14の上面を露出させ複合セラミック基板を得た(図3(b) )。複合セラミック基板はAlNセラミック基板のセラミック枠体24とコア材14が銀からなる接合用金属18により良好に一体接合されたものとして得られた。
【0050】〔実施例5〕実施例3で使用したものと同じ92重量%アルミナセラミックグリーンシートを用いてグリーンシートの積層体を形成し、コア材としてサファイア基板の代わりにAlNセラミック基板を用いた他は実施例3と同様にして積層体を作製し、実施例3と同様の条件下で脱バインダーおよび焼成を行った。得られた基板の片面を研削及び研磨してAlNセラミック基板のコア材を露出させ複合セラミック基板を得た。得られた複合セラミック基板はAlNセラミック基板のコア材とアルミナセラミックのセラミック枠体が銅からなる接合用金属により良好に接合されたものとなっていた。
【0051】〔実施例6〕実施例1で用いたものと同じ組成の低温焼成セラミックのグリーンシートを用いて、コア材を収納するキャビティを有するグリーンシートの積層体を形成し、前記キャビティ内に接合用ガラスぺーストを用いて20mm角のシリコン基板からなるコア材を配置した。なお、接合用ガラスぺーストは熱膨張係数 5.2×10-6/℃、屈伏点 572℃、流動点 662℃の市販のガラスを用いて調製したものを使用した。図4(a) はグリーンシートの積層体10に接合用ガラスぺースト26を介してコア材14を配置した状態を示す。キャビティは上面が開放し接合用ガラスぺースト26がコア材14の上面に露出する。17は銅ぺーストを充填したビアである。
【0052】次に、上記積層体を湿潤N2 ガス中において700℃で脱バインダー処理し、ドライN2 ガス中において980℃で2時間焼成した。図4(b) に焼成後の断面図を示す。26aは接合用ガラスぺースト26が溶融されて固化した接合用ガラスである。次に、基板の上面を研削及び研磨してコア材14の上面とビア17の端面を露出させ、複合セラミック基板を得た(図4(c) )。得られた複合セラミック基板はクラックや歪みの発生がなく、シリコン基板のコア材14と低温焼成セラミックのセラミック枠体20とが一体に良好に接合された製品として得られた。
【0053】〔実施例7〕実施例1で用いたものと同じ組成の低温焼成セラミックのグリーンシートを焼成してキャビティサイズ約21mm角の低温焼成セラミック基板(熱膨張係数約5×10-6/℃)のセラミック枠体を作成し、前記キャビティ内に接合用ガラスぺーストを用いて20mm角のAlNセラミック基板のコア材を配置した(図5(a) )。接合用ガラスぺーストは熱膨張係数 4.3×10-6/℃、屈伏点 584℃、流動点 676℃、転位点 547℃の市販ガラスを用いて調製したものを使用した。図で20がセラミック枠体、22がコア材である。
【0054】次いで、上記基板を大気中において800℃で1時間加熱処理し、この加熱処理後のセラミック基板の上面および下面を研削及び研磨してAlNセラミック基板のコア材22の上面および下面を露出させ複合セラミック基板を得た(図5(b) )。得られた複合セラミック基板は接合用ガラスぺースト28が溶融して固化した接合用ガラス28aによってコア材22とセラミック枠体20が一体に接合された製品となる。複合セラミック基板にクラックや歪みの発生はみられなかった。
【0055】〔比較例1〕実施例3で使用したものと同じ92重量%アルミナセラミックグリーンシートを用いて作成したキャビティサイズ約21mm角のアルミナセラミック基板のセラミック枠体のキャビティ内に、実施例7で使用したと同じ接合用ガラスぺーストを用いて20mm角のAlNセラミック基板のコア材を図5(a) に示すものと同様な方法で配置した。この基板を大気中において800℃で1時間加熱処理したところ、基板が破壊され、一体化した複合セラミック基板が得られなかった。
【0056】〔実施例8〕実施例3で使用したものと同じ92重量%アルミナセラミックグリーンシートを用いて作成したキャビティサイズ約21mm角のアルミナセラミック基板のセラミック枠体のキャビティ内に、熱膨張係数 7.2×10-6/℃、屈伏点 337℃、転位点 317℃の市販ガラスを用いて調製した接合用ガラスぺーストを用いて20mm角のAlNセラミック基板のコア材を図5(a) に示すものと同様な方法で配置した。この基板を大気中において500℃で1時間加熱処理したところ、クラックの発生や歪みが認められなかった。
【0057】〔実施例9〕実施例3で使用したものと同じ92重量%アルミナセラミックグリーンシートを用いて作成したキャビティサイズ約21mm角のアルミナセラミック基板のセラミック枠体のキャビティ内に、実施例8で用いたと同じ熱膨張係数 7.2×10-6/℃、屈伏点 337℃、転位点 317℃の市販ガラスを用いて調製した接合用ガラスぺーストを用いて20mm角のサファイア基板のコア材を図5(a) に示すものと同様な方法で配置した。この基板を大気中において500℃で1時間加熱処理し、基板の両面を研削及び研磨してサファイア基板のコア材の両面を露出させた。コア材とセラミック枠体とがガラスによって一体に接合され、クラックや歪みのない複合セラミック基板として得られた。
【0058】以上、本発明に係る複合セラミック基板の製造方法について説明したが、複合セラミック基板を構成するセラミック枠体とコア材は適宜材料を組み合わせて構成することができる。また、セラミック枠体とコア材とを組み合わせる構造についても上記実施例とは異なる種々の構造を採用することが可能である。以下、複合セラミック基板の構造例について説明する。
【0059】図6はセラミック枠体30とコア材32及び接合用金属34によって構成される複合セラミック基板の構造例を示す。これら実施例で示すものはいずれもコア材32が単一構造のものである。図6(a) は接合用金属34でコア材32とセラミック枠体30を一体化した一般的な複合セラミック基板の実施例を示す。コア材32の上面のみが基板の上面に露出し、基板の下面に接合用金属34が露出する例である。上述した製造例で示したように、単なる矩形穴状のキャビティ内にコア材32を配置して形成することができる。
【0060】図6(b) も上記実施例と同様に、基板の上面にコア材32に上面を露出させ、基板の下面に接合用金属34を露出させたものであるが、接合用金属34の露出面の面積をコア材32の平面積よりも広くした例である。この複合セラミック基板はコア材32を収納する角穴を形成したグリーンシートを積層する際に、下面側のグリーンシートの角穴を大きく設定して積層することによって得られる。基板の下面に露出する接合用金属34の露出面を広くすることによって基板の放熱性を向上させたものである。図7は図6(b) に示す複合セラミック基板に放熱フィン36と外部リード38を取り付ける場合の例を示す。放熱フィン36を接合用金属34の下面にじかに取り付けることによってさらに放熱性を向上させることができる。
【0061】図6(c) も基板の下面に接合用金属34を露出させた実施例であるが、コア材32の平面積よりも接合用金属34の面積を小さくしたことを特徴とする。この基板は図8に示すように接合用金属34の下面にじかに放熱フィン36を取り付けた際に基板の下面に回路部品等の追加部品40を取り付けることができるよう基板の下面のスペースを確保するようにしたものである。
【0062】図6(d) はコア材32を基板の上面のみに露出させるようにした実施例である。このような構造は、基板を研削及び研磨する際に基板の片面のみを研削及び研磨してコア材32の片面のみを露出させることによって得られる。もちろん、コア材32を露出させない側をコア材32を露出させない限りにおいて研削及び研磨してもかまわない。なお、この実施例の構造の場合は接合用金属34のかわりに接合用ガラスによってコア材32とセラミック枠体30とを一体化したものの場合も共通に適用できる。
【0063】図9は上記実施例の複合セラミック基板に外部リード38を取り付けた実施例を示す。この実施例では基板の下面の全面に外部リード38を取り付けることによって外部リード38の設置スペースを広く確保している。もちろん、複合セラミック基板のセラミック枠体30については通常の多層セラミック基板と同様に内部配線(平面配線パターン、ビア等)を設けて外部リード38と電気的に接続するよう構成することができる。
【0064】図6(e) はコア材32の上面と下面をともに基板の両面に露出した実施例で、コア材32とセラミック枠体30とを同厚で研削し基板の両面を平坦面に形成したものである。この実施例の場合も接合用金属34のかわりに接合用ガラスで一体化したものについても共通構造とすることができる。図6(f) もコア材32の両面を露出させた構造とした点は上記例と同様であるが、コア材32の外周面とセラミック枠体30のキャビティの内壁面に凹溝を設けてコア材32とセラミック枠体30との接合部分の接触面積を大きくし、コア材32とセラミック枠体30との一体性を向上させた実施例である。この場合も接合用ガラスを用いることができる。
【0065】図6(g) は接合用金属34によってコア材32の両面を被覆し、コア材32を基板内に埋設した実施例である。このようにコア材32を基板内に埋設する方法は、コア材にタングステンやSiCといった研削し難い材料を使用した場合に適用する。この場合は、銅や銀−銅合金といった接合用金属の研削、研磨に止めることによって面精度を出しやすくすることができ、また放熱性を良好にすることができるからである。この場合、表面金属(銅あるいは銀−銅合金)の熱膨張挙動はコア材のタングステンやSiCに従うものとなる。
【0066】図10はコア材を複合構造とした複合セラミック基板の実施例を示す。図10(a) に示す実施例はコア材32a、補助コア材32bを上下に2層構造とし、接合用金属34を介してコア材32aと補助コア材32bを接合するとともに、接合用金属34によりコア材32a及び補助コア材32bとセラミック枠体30とを一体に接合したものである。図10(b) に示す実施例は上記実施例と同様にコア材を複合構造としたものであるが、補助コア材32bの外面が基板の外部に露出しないように接合用金属34で被覆したものである。なお、図10に示す実施例では接合用金属34のかわりに接合用ガラスを用いて一体化したものも好適に使用できる。
【0067】これら実施例のようにコア材を複合構造とした場合は単一の材質のコア材を使用する場合にくらべてコア材の材質を適宜組み合わせることによって、単一のコア材による場合には得られない効果を得ることが可能になる。たとえば、半導体素子を搭載するため上側のコア材32aにシリコン基板を使用したような場合に、熱ストレスに対してシリコン基板の強度が不十分であるといったような場合には補助コア材32bとしてシリコン基板の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有し、かつ機械的強度も高い材料を選んで使用するといった使い方が可能である。また、補助コア材32bとして機械的強度とともに放熱性にも優れた材料を選ぶことによってコア材の補強と放熱性を改善するといったことが可能になる。このような複合コア材としては、たとえばAlNセラミック、タングステン、モリブデン、SiCセラミック等が好適である。これらは機械的強度が高く、高熱伝導率を有し、低熱膨張率を有する材料である。
【0068】上記実施例ではコア材32を2層構造としたが、さらに3層以上に形成することも可能である。コア材として熱膨張係数の大きく異なるもの、たとえばアルミナとAlNを組み合わせて使用したい場合、それらの熱膨張係数の中間の熱膨張係数を有する材質あるいはヤング率の小さい材質の層を介在させて傾斜構成とすることにより応力の問題を回避させるといった利用が可能である。
【0069】また、コア材32として多層セラミック回路基板と同様な多層配線を設けたものを使用することも可能である。図11は多層配線を形成したコア材32を用いた複合セラミック基板の例を示す。このような多層配線を形成したコア材32の例としては従来の多層セラミック基板を利用することができる。多層セラミック基板は配線パターンを設けたグリーンシートを積層して一体に焼成したものであり、あらかじめ焼成して形成した多層セラミック基板をコア材32に用いて複合セラミック基板を得ることができる。
【0070】図12および図13はコア材32における放熱性を改善した複合セラミック基板の実施例を示す。図12はコア材32にサーマルビア36を設けた例、図13はサーマルシンク38を設けた例である。図12に示すサーマルビア36はコア材32の厚み方向に多数個のスルーホールを設けておき、接合用金属34をスルーホール内に充填することによって形成する。図12(b) はコア材32に設けたサーマルビア36の平面配置を示す。図13(b) はコア材32に設けるサーマルシンク38の平面配置を示す。実施例ではサーマルシンク38を平面配置で4ブロックに分けて配置しているが、これは半導体素子の搭載位置に合わせてサーマルシンク38を設けることによって各素子からの熱放散性を向上させるようにしたものである。このように、サーマルビア36やサーマルシンク38の配置位置等は製品に応じて適宜配置および適宜サイズに設けることができる。
【0071】図14は図9に示した複合セラミック基板に半導体素子40a、40bを搭載した例を示す。複合セラミック基板の上面に薄膜法によって薄膜配線パターン42を設け、コア材32に半導体素子40a、40bを接合し、半導体素子40a、40bと薄膜配線パターン42とをワイヤボンディングすることによって半導体素子40a、40bと薄膜配線パターン42とを電気的に接続する。セラミック枠体30には内部配線パターンが形成され、半導体素子40a、40bは外部リード38に電気的に接続する。
【0072】
【発明の効果】本発明に係る複合セラミック基板は、上述したように、セラミック枠体とコア材との複合構造としたことにより、コア材の材質を選ぶことによって半導体素子と熱膨張係数をマッチングさせること、効果的な放熱路を確保すること、十分な機械的強度を確保すること等が容易に可能になり、優れた特性を有する複合基板として提供することができる。また、基板表面に配線パターンを形成することによって電気的特性の優れた複合基板として提供することが可能になる。また、本発明に係る複合セラミック基板の製造方法によれば、コア材とセラミック枠体とを一体化した複合セラミック基板を容易に得ることができる等の著効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】複合セラミック基板の実施例1の製造方法を示す説明図である。
【図2】複合セラミック基板の実施例2の製造方法を示す説明図である。
【図3】複合セラミック基板の実施例4の製造方法を示す説明図である。
【図4】複合セラミック基板の実施例6の製造方法を示す説明図である。
【図5】複合セラミック基板の実施例7の製造方法を示す説明図である。
【図6】複合セラミック基板のコア材等の構成の実施例を示す断面図である。
【図7】複合セラミック基板に放熱フィン等を取り付けた実施例を示す説明図である。
【図8】複合セラミック基板に放熱フィン等を取り付けた実施例を示す説明図である。
【図9】複合セラミック基板に外部リードを取り付けた実施例を示す説明図である。
【図10】コア材を複合構成とした複合セラミック基板の実施例を示す断面図である。
【図11】コア材を多層配線構造とした複合セラミック基板の実施例を示す断面図である。
【図12】コア材にサーマルビアを設けた複合セラミック基板の実施例を示す説明図である。
【図13】コア材にサーマルシンクを設けた複合セラミック基板の実施例を示す説明図である。
【図14】 複合セラミック基板に半導体素子を搭載した例を示す説明図である。
【符号の説明】
10 グリーンシートの積層体
12 接合用金属ぺースト
14 コア材
16 スルーホール
17 ビア
18 接合用金属
20 セラミック枠体
22 コア材
24 セラミック枠体
26、28 接合用ガラスぺースト
26a、28a 接合用ガラス
30 セラミック枠体
32、32a、 コア材
32b 補助コア材
34 接合用金属
36 サーマルビア
38 サーマルシンク
40a、40b 半導体素子
42 薄膜配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 キャビティが形成されたセラミック枠体と、前記セラミック枠体とは異なる材質により形成され、該セラミック枠体のキャビティ内に接合用金属を介して接合されたコア材とを備え、該コア材の少なくとも一方の表面が前記セラミック枠体の表面と同一平面の平坦面に形成されて露出していることを特徴とする複合セラミック基板。
【請求項2】 キャビティが形成されたセラミック枠体と、前記セラミック枠体とは異なる材質により形成され、該セラミック枠体のキャビティ内に接合用ガラスを介して接合されたコア材とを備え、該コア材の少なくとも一方の表面が前記セラミック枠体の表面と同一平面の平坦面に形成されて露出していることを特徴とする複合セラミック基板。
【請求項3】 コア材が一種以上の補助コア材を有することを特徴とする請求項1または2記載の複合セラミック基板。
【請求項4】 セラミック枠体に表面配線および/または内部配線が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の複合セラミック基板。
【請求項5】 コア材に表面配線または表面配線と内部配線が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の複合セラミック基板。
【請求項6】 コア材にサーマルビアまたはサーマルシンクが形成されていることを特徴とする請求項1、2、3または5記載の複合セラミック基板。
【請求項7】 セラミック枠体の一方の表面にコア材の一方の表面が露出し、前記コア材の他方の表面が接合用金属に被覆され、該接合用金属が前記セラミック枠体の他方の表面に露出していることを特徴とする請求項1記載の複合セラミック基板。
【請求項8】 セラミック枠体の表面に露出する接合用金属の面積が、コア材の平面積より広く形成されていることを特徴とする請求項7記載の複合セラミック基板。
【請求項9】 セラミック枠体の表面に露出する接合用金属の面積が、コア材の平面積より狭く形成されていることを特徴とする請求項7記載の複合セラミック基板。
【請求項10】 セラミック枠体の表面に露出する接合用金属に放熱フィンが取り付けられたことを特徴とする請求項7、8または9記載の複合セラミック基板。
【請求項11】 セラミック枠体に外部リードが取り付けられたことを特徴とする請求項1または2記載の複合セラミック基板。
【請求項12】 接合用金属が銅、金、アルミニウム、銀、銀−銅系合金または銅−アルミニウム系合金であることを特徴とする請求項1記載の複合セラミック基板。
【請求項13】 接合用ガラスが、ZnO・B2 3 ・SiO2 系ガラス、PbO・B2 3 ・SiO2 系ガラス、PbO・SiO2 系ガラス、PbO・B2 3 系ガラスまたはPbO・ZnO・SiO2 系ガラスであることを特徴とする請求項2記載の複合セラミック基板。
【請求項14】 セラミック枠体が、アルミナセラミック、低温焼成セラミック、ムライトセラミックまたは窒化アルミニウムセラミックであることを特徴とする請求項1または2記載の複合セラミック基板。
【請求項15】 コア材がアルミナセラミック、ムライトセラミック、窒化アルミニウムセラミック、サファイア、シリコン、タングステンまたはモリブデンであることを特徴とする請求項1または2記載の複合セラミック基板。
【請求項16】 補助コア材が窒化アルミニウムセラミック、SiCセラミック、タングステンまたはモリブデンであることを特徴とする請求項3記載の複合セラミック基板。
【請求項17】 キャビティを形成して予め焼成して成るセラミック枠体の前記キャビティ内に接合用金属を介してコア材を配置し、該接合用金属の融点以上の温度で加熱処理して、前記セラミック枠体と前記コア材とを接合用金属を介して接合し、該セラミック枠体とコア材の表面を研磨して、該コア材の少なくとも一方の表面を前記セラミック枠体の表面と同一平面の平坦面に形成して露出することを特徴とする複合セラミック基板の製造方法。
【請求項18】 キャビティを形成して予め焼成して成るセラミック枠体の前記キャビティ内に接合用ガラスを介してコア材を配置し、該接合用ガラスの軟化点以上の温度で加熱処理して、前記セラミック枠体と前記コア材とを接合用ガラスを介して接合し、該セラミック枠体とコア材の表面を研磨して、該コア材の少なくとも一方の表面を前記セラミック枠体の表面と同一平面の平坦面に形成して露出することを特徴とする複合セラミック基板の製造方法。
【請求項19】 コア材を配置するキャビティを有するセラミックグリーンシートの積層体を形成し、該積層体の前記キャビティ内に接合用金属を介してコア材を配置し、前記コア材および接合用金属を封入すべく、前記キャビティ開口部を覆ってキャビティの形成されていないセラミックグリーンシートを積層して一体化した後、前記積層体を接合用金属の融点以上の温度で焼成することによりセラミック枠体を形成するとともに、前記接合用金属を溶融して前記セラミック枠体とコア材とを接合用金属を介して接合し、該セラミック枠体の表面を研磨して、該コア材の少なくとも一方の表面を前記セラミック枠体の表面と同一平面の平坦面に形成して露出することを特徴とする複合セラミック基板の製造方法。
【請求項20】 コア材を配置するキャビティを有するセラミックグリーンシートの積層体を形成し、該積層体の前記キャビティ内に接合用ガラスを介してコア材を配置し、前記積層体を接合用ガラスの軟化点以上の温度で焼成することによりセラミック枠体を形成するとともに、前記接合用ガラスを溶融して前記セラミック枠体とコア材とを接合用ガラスを介して接合し、該セラミック枠体とコア材の表面を研磨して、該コア材の少なくとも一方の表面を前記セラミック枠体の表面と同一平面の平坦面に形成して露出することを特徴とする複合セラミック基板の製造方法。
【請求項21】 コア材として一種以上の補助コア材を備えるものを使用することを特徴とする請求項17、18、19または20記載の複合セラミック基板の製造方法。
【請求項22】 キャビティ開口部を覆うセラミックグリーンシートに、接合用金属が溶融した際の余剰分を収容するためのスルーホールを設けることを特徴とする請求項19記載の複合セラミック基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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