説明

複合トラス桁橋の腹材、及びこれを用いた複合トラス桁橋の節点連結構造

【解決手段】複合トラス桁橋の腹材は、鋼管、及び鋼管の内部に配置された追加の構造用鋼材を含む。上記鋼管と上記構造用鋼材とが腹材の端部で構造的に互いに一体となることで、設計者の意図した大きさで腹材に作用する断面力を分担することになる。腹材に加えられる軸力及び曲げモーメントに対する腹材の抵抗性を高めるために、鋼管内部をコンクリートで充填する。この結果、一つの規格の既成鋼管を全体橋梁の腹材として用いることができることから、鋼管の購入コストが節減でき、節点部の連結構造を単純化することができて製作コストが節減でき、鋼管のサイズを一定にすることで美観を大きく改善できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造用鋼管を腹材として用いている複合トラス桁橋(girder)の腹材(web member)、及びこれを用いた複合トラス桁橋の節点(node)部連結構造に関するものであって、腹材として用いられる鋼管の外径を、対象とする橋梁の全スパン(span)にわたって単一値に維持できるようにすることに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年4月20日出願の韓国特許出願第10‐2009‐0034087号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書および図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【0003】
複合トラス桁橋の腹材は、桁の自重、上載荷重、そして車両荷重のような移動荷重によって生じる重力方向の鉛直力を、節点部区間で軸力に変換して橋梁支承に伝達する構造的役割をする。
【0004】
移動荷重によって腹材に生じる軸力の大きさは橋梁の全スパンにわたって殆ど一定の大きさを示すが、桁の自重、そして縁石や舗装などの上載荷重によって腹材に生じる軸力の大きさは腹材と橋梁支承との距離が短くなるほど増加する。
【0005】
このような理由で、複合トラス桁橋の腹材として用いられる鋼管の寸法(例えば、外径及び厚さ)を橋梁の全スパンにわたって3〜5種類に異ならせて設計及び施工することが一般的である。
【0006】
複合トラス桁橋を構成している弦材(上弦材と下弦材)は節点部を通じて腹材と互いに結合される。弦材がすべてコンクリートであり腹材のみが鋼材から構成される複合トラス桁橋の場合には、腹材をコンクリート弦材中に直接埋め立てする剛結の節点構造が主に使用される。
【0007】
腹材と弦材とが剛結処理された節点構造においては、弦材に発生する曲げモーメントの一部が腹材に伝達され、腹材として用いられる鋼管の直径が大きくなるほど腹材に伝達される曲げモーメントの大きさも増加する。
【0008】
このとき、鋼管は軸力と曲げモーメントとに対して同時に抵抗するように設計されなければならない。ところが、鋼管の直径が大きくなるほど曲げモーメントによって生じるストレスが増加することから、さらに大きい直径を持つ鋼管の使用が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許出願第10‐2009‐0034087号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
複合トラス桁橋の腹材に用いられる鋼管は、圧延コイルを利用して工場で大量生産される既成鋼管が主に用いられるが、場合によっては、構造用鋼板を直接巻いて製作する製作鋼管が用いられる。
【0011】
製作鋼管は鋼管を構成する鋼板の強度、厚さ、及び直径などを設計者が任意に選択することができるという長所があるが、既成鋼管に比べて製作コストが非常に高く、均等な品質確保が難しいという短所がある。
【0012】
既成鋼管は製作鋼管に比べて安価であるが、決められた規格(強度、直径、及び厚さ)以外には用いることができないことから、設計者が選択可能な鋼管の規格が制限される。また、腹材及び連結構造に使われる鋼材量を最適化するためには、対象とする橋梁の全スパンを3ないし5個の区間に区分し、各区間ごとに相違なる規格を持つ鋼管を使うことが必要である。
【0013】
対象とする橋梁の全スパンにわたって腹材に使われる鋼管の規格が変われば、腹材と弦材とが会うトラス節点区間における連結構造も変わらなければならない。従って、使われる鋼管の種類が多くなるほど、腹材と連結構造の製作及び組立てに所要されるコストが増加する。
【0014】
さらに、径間の中央部に位置する鋼管の直径と、橋梁支承付近に位置する鋼管の直径とは、各鋼管に働く断面力に適するように設計される場合には互いに顕著な差を示すので、美観上良くない。美観を向上させるために位置ごとの鋼管の直径差を小さくする場合には、ストレス上求められる量よりも多量の鋼管が使われて経済性が低下する。
【0015】
一方、従来の複合トラス桁橋においては、腹材に働く断面力(すなわち、軸力とモーメント)を専ら鋼管を用いて抵抗するように設計されたことから、鋼管に働く断面力が増加するほど鋼管の直径も共に大きくなるという構造的な限界点を持つ。
【0016】
腹材に用いられる鋼管の直径が大きくなれば、腹材と弦材とが会う節点部の規模も大きくならなければならない。しかし、節点の規模が大きくなれば、弦材として使われるコンクリートの体積も増加し、節点区間で腹材を互いに連結させる鋼材からなった連結構造の規模も大きくなるので、所要される鋼材量も増加して経済性が低下する。
【0017】
上記のような理由から、複合トラス桁橋に用いられる腹材の直径は通常500mm以下になるように設計されている。場合によっては、腹材の直径を減らすために、上向き力を誘発させる外部アンボンドテンドン(unbonded tendon)を併用する方法も使われる。しかし、径間長が110メートルを超えれば、構造計算上求められる鋼管の直径が顕著に大きくなるので、複合トラス桁橋に適用し難くなる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、複合トラス桁橋の腹材に用いられる鋼管を、対象とする橋梁の全スパンにわたってただ一つの規格の既成鋼管を用いながらも、腹材に所用される鋼材量は構造計算上求められる値に最適化できる腹材の構造を開発することで、腹材及び連結構造の製作に所要されるコストを節減し、鋼管購入に所要される手続き及びコストを節減することを主な課題とする。
【0019】
また本発明は、複合トラス桁橋の径間長が110メートルを超えても、腹材に使われる鋼管の直径を500mm以内に制限しながらも、腹材に働く軸力とモーメントとに抵抗できる腹材の構造を開発することで、複合トラス桁橋の適用可能な径間長を200メートルまで拡張させることを他の課題とする。
【0020】
本発明の一態様において、複合トラス桁橋の腹材は、鋼管の内部に追加の構造用鋼材を配置し、上記追加の構造用鋼材と鋼管とが腹材の端部で構造的に互いに一体となるようにすることで、腹材に作用する断面力を、鋼管と、鋼管内部に配置された構造用鋼材とで、設計者の意図した大きさで分担するようにする。
【0021】
すなわち、対象とする複合トラス桁橋の全スパンにわたって鋼管が抵抗可能な断面力の大きさを設計者が調節できるようにすることで、同一の規格の鋼管を橋梁全体に使うことができる。さらに、鋼管の抵抗能力を超える断面力は鋼管内部に配置される構造用鋼材が抵抗するようにする。
【0022】
腹材の位置による断面力の変化は鋼管内部に配置される構造用鋼材の寸法を異ならせることで対応する。
【0023】
一方、各腹材に加えられる断面力は、腹材の端部に設けられる端部連結板を通じて、鋼管と内部鋼材とに決められた大きさで分配される。しかし、腹材が圧縮力を受ける場合には、鋼管内部に配置した鋼材が座屈に対して脆弱な構造挙動を示す。これを補うために鋼管内部をコンクリートで充填することで、鋼管と内部鋼材とが一体となって挙動するようにする。
【0024】
腹材が引張力を受ける場合には鋼管及び内部鋼材が座屈を起こす恐れはないが、鋼管を弦材に埋め立てすることで腹材に伝達される曲げモーメントに対する鋼管の抵抗性を高めるために鋼管内部をコンクリートで充填する。
【発明の効果】
【0025】
本発明による腹材及び節点部の連結構造を複合トラス桁橋に適用すれば、対象とする橋梁の全スパンにわたってただ一つの規格の既成鋼管を腹材として用いることができることから、下記のような効果を奏する。第一に、鋼管の購入コストが節減でき、第二に、節点部の連結構造を単純化することができて連結構造の製作によるコストが大きく節減でき、第三に、外部に露出する鋼管のサイズが一定になるので、橋梁の外観が大きく改善できる。
【0026】
また、腹材の位置による断面力の変化を鋼管内部に配置される構造用鋼材の寸法を異ならせて対応することで、橋梁全体にわたって各腹材に働くストレスレベルを殆ど同等に調節することが容易になるので、腹材として鋼管のみを用いる従来の複合トラス桁橋に比べて所要鋼材量を大きく節減できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による複合トラス桁橋の腹材構成図である。
【図2】本発明による複合トラス桁橋の節点構成図である。
【図3】本発明による節点連結構造における力の流れを示す図面である。
【図4】節点部において腹材軸線の不一致によって生じる追加モーメントを示す図面である。
【図5】本発明による腹材の製作順序を示す。
【図6】本発明による腹材を用いて複合トラス桁橋を施工する実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書に添付される図面は本発明の望ましい実施例を例示するものであって、発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割を果たすものであるため、本発明はそのような図面に記載された事項にのみ限定されて解釈されてはいけない。
【0029】
以下、本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立って、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはいけず、発明者は自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念とに解釈されなければならない。従って、本明細書に記載された実施例は本発明の最も望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想の全てを代弁するものではないため、本出願時点においてこれらに代替できる多様な均等物と変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0030】
図1は、本発明による腹材の構成を示す図面である。本発明による腹材10は、外部鋼管11、内部鋼材12、及び端部連結板13から構成される。
【0031】
図1に示すように、本発明による腹材10は、端部連結板13を通じて伝達される軸力を外部鋼管11と内部鋼材12とにそれぞれ分配させることができる構造となっている。このような構造では、外部鋼管11は一定の寸法を維持しながら、鋼管内部に埋め込まれる内部鋼材12のサイズ及び厚さのみを変化させることで、各位置ごとの腹材10に働く断面力の変化に対応できる。
【0032】
また、断面形状を見れば分かるように、端部連結板13の一部は外部鋼管11の中に挿入するようになっていることから、外部鋼管11の両端部に端部連結板13を付着するためのスロットを形成する必要がなくなり、外部鋼管11の製作コストを節減できる。
【0033】
図2は、本発明による腹材10を互いに連結する節点部の詳細な構造を示す斜視図である。本発明による節点部の詳細な構造を見れば分かるように、互いに隣り合う腹材10の上部または下部の端部連結板13の両側面に所定厚さの側面連結板14を溶着し、上記側面連結板14の表側及び裏側に所定サイズの複数のホール15を形成している。
【0034】
図3は、本発明による節点部の詳細な構造を適用したとき生じる節点部における力の伝達過程を示す図面である。側面連結板14によって結合される両腹材10には構造特性上、一方の腹材には圧縮力(C)が作用し、他方の腹材には引張力(T)が作用することになる。以下、説明の便宜上、右側にある腹材に圧縮力(C)が加えられると仮定する。
【0035】
圧縮を受ける腹材を構成する外部鋼管11に働く軸力(C1)と、内部鋼材12に働く軸力(C2)とは、端部連結板13を通じて一つの力(C=C1+C2)になる。端部連結板13に加えられる力(C)は溶着面を通じて側面連結板14に伝達される。
【0036】
側面連結板14に伝達された力(C)は水平成分の力(Ch)と垂直成分の力(Cv)とにそれぞれ分解される。水平成分の力(Ch)は、端部連結板13の前面に位置したコンクリートの支圧力を通じてコンクリート弦材16、20に伝達される。
【0037】
一方、上記垂直成分の力(Cv)と、コンクリート弦材16、20を通じて伝達されるせん断力の一部(V)とが合わされ(Tv=Cv+V)、側面連結板14を通じて左側腹材10に設けられた端部連結板13に伝達される。この過程において、左側の端部連結板13には腹材の傾斜方向への引張力(T)が発生し、側面連結板14には水平成分の力(Th)が発生する。
【0038】
上記水平成分の力(Th)は端部連結板13の前面に位置したコンクリートの支圧力(R=Th+Ch)を通じてコンクリート弦材16、20に伝達され、左側端部連結板13に伝達された引張力(T)は左側腹材を構成している外部鋼管11に働く力と内部鋼材12に働く力とにそれぞれ分けられる。
【0039】
上述のように、本発明による節点部の詳細な構造においては、コンクリート弦材に有害な挙動を誘発させる垂直成分の力は鋼材からなった側面連結板が抵抗するようにし、節点部の水平成分の力は端部連結板の前面に位置したコンクリートの支圧力を通じて抵抗するようにした。こうすることで、節点区間に位置したコンクリート弦材の安全性を既存の節点構造に比べて大きく向上させた。
【0040】
一方、節点部両側に位置した腹材の軸線は弦材の軸線と互いに一点で交わるようにすることが構造挙動において最も有利である。しかし、実際の構造では、腹材に用いられる外部鋼管の直径や傾斜角、または弦材の断面形状などによってこれら三つの部材の軸線が一点で一致しない場合が頻繁に発生する。
【0041】
図4に示すように、上記三つの部材の軸線が一点で交わらない場合には、偏心(e)が発生する。この結果、両側の腹材に働く垂直成分の力によって節点区間には付加的な曲げモーメント(M)が発生する。
【0042】
側面連結板14と、これを囲んでいるコンクリート弦材16、20とが一体となって回転変形(rotational strain)を上記曲げモーメント(M)に対して起こすことができるように、側面連結板14の表側及び裏側に所定サイズの複数のホール15を形成する。このとき、形成されるホールのサイズ及び個数は上記曲げモーメント(M)によって生じる偶力(R)に抵抗できるように決定される。
【0043】
図5の(a)ないし(c)は、本発明による腹材の製作順序を示す。
【0044】
まず、外部鋼管11、内部鋼材12、及び端部連結板13を適切な形状で製作する。それから、参照符号18で示すように外部鋼管11と端部連結板13とを互いに溶着し、参照符号19で示すように外部鋼管11の中に挿入された内部鋼材12と端部連結板13とを溶着する。
【0045】
図6の(a)ないし(c)は、本発明による腹材を用いて複合トラス桁橋を施工する実施例を示す。
【0046】
まず、工場で製作された腹材10を橋梁架設現場に運んだ後、腹材の端部連結板13に側面連結板14を溶着させてトラスの腹部骨組みを形成する。
【0047】
次いで、コンクリートの下弦材16を施工してトラスの腹部骨組みと下弦材16とを一体化させる。
【0048】
それから、各腹材10の中をコンクリートで充填し、コンクリートの上弦材20を施工して複合トラス桁橋を完成する。
【0049】
以上のように、本発明による複合トラス桁橋の腹材及び節点部の連結構造、そしてこれを用いた複合トラス桁橋の施工方法について詳しく説明した。しかし、本発明は、たとえ限定された実施例と図面とによって説明されたが、本発明はこれによって限定されず、本発明が属する技術分野において通常の知識を持つ者により本発明の技術思想と特許請求範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能なのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
10:腹材
11:外部鋼管
12:内部鋼材
13:端部連結板
14:側面連結板
15:ホール
16:下弦材
20:上弦材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管、
上記鋼管の端部に溶着された端部連結板、及び
上記鋼管の長手方向に沿って上記鋼管の内部に挿入され、その端部が上記端部連結板に溶着された内部鋼材を備え、
作用する外力に対して上記鋼管と上記内部鋼材とが共に抵抗することを特徴とする複合トラス桁橋の腹材。
【請求項2】
上記鋼管と上記内部鋼材とが座屈及び曲げ作用に対して一体となって抵抗する構造挙動を示すことができるように、鋼管の内部がコンクリートで充填されたことを特徴とする請求項1に記載の複合トラス桁橋の腹材。
【請求項3】
鋼管、
上記鋼管の端部に溶着された端部連結板、
上記鋼管の長手方向に沿って上記鋼管の内部に挿入され、その端部が上記端部連結板に溶着された内部鋼材、及び
上記端部連結板の両側面に溶着された側面連結板を備え、
作用する外力に対して上記鋼管と上記内部鋼材とが共に抵抗し、
上記端部連結板と上記側面連結板とがコンクリート弦材に埋め立てられて剛結の節点を形成することを特徴とする複合トラス桁橋の節点連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−524193(P2012−524193A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507137(P2012−507137)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002133
【国際公開番号】WO2010/123211
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511254608)ガーダー イノベーション フォーエバー カンパニー,リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】GIRDER INNOVATION FOREVER CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】1004,1005 Anyang Construction Building,1112−1 Bisan−dong,Dongan−gu,Anyang−si,Gyeonggi−do 431−050(KR)
【出願人】(511254619)
【氏名又は名称原語表記】WON,Dae−Yon
【住所又は居所原語表記】103−1506 Chungmu Apt.,Wanggok−dong,Uiwang−si,Gyeonggi−do 437−742(KR)
【Fターム(参考)】