説明

複合体製造用熱可塑性エラストマー組成物及び複合体

【課題】 硫黄加硫ゴム組成物と熱可塑性エラストマー組成物が接触している複合体を製造するための熱可塑性エラストマーであって、硫黄加硫ゴム組成物の黄変を防止することができ、よって長期にわたって優れた外観を維持することができるという優れた特徴を有する複合体製造用熱可塑性エラストマー組成物、及び該熱可塑性エラストマー組成物を用いた複合体を提供する。
【解決手段】 下記(A)及び(B)を含有する複合体製造用熱可塑性エラストマー組成物。
(A):熱可塑性エラストマー
(B):下記式(1)で表されるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩
[Al2Li(OH)6]nXmH2O (1)
(式中、Xは無機叉は有機のアニオンであり、nは該アニオンの価数であり、mは3以下の自然数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体製造用熱可塑性エラストマー組成物及び複合体に関するものである。更に詳しくは、本発明は、硫黄加硫ゴム組成物と熱可塑性エラストマー組成物が接触している複合体を製造するための熱可塑性エラストマーであって、硫黄加硫ゴム組成物の黄変を防止することができ、よって長期にわたって優れた外観を維持することができるという優れた特徴を有する複合体製造用熱可塑性エラストマー組成物、及び該熱可塑性エラストマー組成物を用いた複合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硫黄加硫ゴム組成物と熱可塑性エラストマー組成物が接触している複合体は、着色性を付与し、多様な外観を有するエラストマー製品を製造することが可能であるという優れた特徴を有する。かかる特徴を生かして、該複合体は、ガラスラン、ウェザストリップをはじめとする自動車部品、スポーツシューズなどのスポーツ用品、建材用途、各種ガスケット等に用いられる(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、従来の技術においては、長期の使用に伴い、硫黄加硫ゴム組成物に黄変(黄色に変色すること。)を生じ、外観を損ねるという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2000−94582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる状況において、本発明が解決しようとする課題は、硫黄加硫ゴム組成物と熱可塑性エラストマー組成物が接触している複合体を製造するための熱可塑性エラストマーであって、硫黄加硫ゴム組成物の黄変を防止することができ、よって長期にわたって優れた外観を維持することができるという優れた特徴を有する複合体製造用熱可塑性エラストマー組成物、及び該熱可塑性エラストマー組成物を用いた複合体を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明のうち第一の発明は、硫黄加硫ゴム組成物と熱可塑性エラストマー組成物が接触している複合体を製造するための熱可塑性エラストマーであって、下記(A)及び(B)を含有する複合体製造用熱可塑性エラストマー組成物に係るものである。
(A):熱可塑性エラストマー
(B):下記式(1)で表されるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩
[Al2Li(OH)6]nXmH2O (1)
(式中、Xは無機叉は有機のアニオンであり、nは該アニオンの価数であり、mは3以下の自然数である。)
また、本発明のうち第二の発明は、硫黄加硫ゴム組成物と上記の熱可塑性エラストマー組成物が接触している複合体に係るものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、硫黄加硫ゴム組成物と熱可塑性エラストマー組成物が接触している複合体を製造するための熱可塑性エラストマーであって、硫黄加硫ゴム組成物の黄変を防止することができ、よって長期にわたって優れた外観を維持することができるという優れた特徴を有する複合体製造用熱可塑性エラストマー組成物、及び該熱可塑性エラストマー組成物を用いた複合体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の(A)である熱可塑性エラストマーとしては、たとえば、オレフィン系、水添スチレン系、スチレン系、エステル系、ウレタン系、ポリアミド系、塩化ビニル系等及びそれらの複合物をあげることができる。なかでも、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーが好ましい。
【0009】
本発明の(B)は、下記式(1)で表されるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩である。
[Al2Li(OH)6]nXmH2O (1)
【0010】
式中、Xは無機叉は有機のアニオンであり、炭酸、硫酸、塩素のオキシ酸(例えば過塩素酸)、リンのオキシ酸(リン酸、亜リン酸、メタリン酸)等の一種又は二種の以上の組み合わせが好ましいが、酢酸、プロピオン酸、アジピン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、P−オキシ安息香酸、サリチル酸、ピクリン酸等を例示することができる。これらの内でも炭酸アニオンが好適である。
【0011】
式中、nは該アニオンの価数であり、mは3以下の自然数である。
【0012】
(B)の具体例としては、[Al2Li(OH)62CO33H2O等を例示することができる。
【0013】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物中における(B)の含有量は0.1〜20重量部が好ましく、更に好ましくは0.5〜10重量部である。(B)が過少であると加硫ゴム組成物の黄変を防止する効果が不十分な場合があり、一方(B)が過多であると成型品の外観を損なう場合がある。
【0014】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、(B)の他、タルク、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、難燃剤、鉱物油系軟化剤、可塑剤、帯電防止剤、耐熱・耐光安定剤、老化防止剤、離型剤などの添加剤、顔料等を含有してもよい。
【0015】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を得る方法として、たとえばバンバリーミキサーなどの密閉式混練機、押出し機、オープンロールなどによる溶融混練をあげることができる。
【0016】
本発明の複合体を形成する硫黄加硫ゴム組成物としては、架橋剤として硫黄又は含硫黄化合物により加硫可能なゴム組成物であって、ゴムの具体例としては、エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、ブチルゴムなどをあげることができる。上記のうち、耐熱性及び耐候性の観点から、エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムが好ましい。エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムの具体例としては、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体ゴムなどを例示することができる。なお、ゴム組成物には、通常配合されるカーボンブラック、無機フィラー、鉱物油系軟化剤、加硫助剤、加硫促進助剤、老化防止剤などを添加してもよい。
【0017】
本発明の複合体は、硫黄加硫ゴム組成物と熱可塑性エラストマー組成物とが接触しているものである。複合体を形成する方法としては、硫黄加硫ゴム組成物と熱可塑性エラストマー組成物を接触させて機械的に保持する方法、硫黄加硫ゴム組成物と熱可塑性エラストマー組成物を接着剤で接着する方法、硫黄加硫ゴム組成物と熱可塑性エラストマー組成物
の一方を他方に接触させてラミネート成形する方法等をあげることができる。
【0018】
本発明の複合体は、ガラスラン、ウェザストリップをはじめとする自動車部品、スポーツシューズなどのスポーツ用品、建材用途、各種ガスケット等に用いられる。
【実施例】
【0019】
次に本発明を実施例により説明する。
〔加硫ゴムシートの調整〕
エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン系共重合体ゴム(住友化学工業株式会社製「エスプレン512F」)100重量部、亜鉛華1号(堺化学工業株式会社製「酸化亜鉛2種」)5重量部、ステアリン酸(旭電化工業株式会社製「アデカ脂肪酸SA−400」)1重量部、FEFカーボン(旭カーボン株式会社製「旭60G」)120重量部およびパラフィン系プロセスオイル(出光興産社製「ダイアナPW380」)80重量部を、ミキサー内温度が70℃のバンバリーミキサーに投入し、5分間溶融混練した。最終ミキサー内温度は160℃であった。該混練物306重量部、加硫促進剤ZnBDC(川口化学工業株式会社製「アクセルBZ」)1.5重量部、加硫促進剤TMTD(川口化学工業株式会社製「アクセルTMT」)0.8重量部、加硫促進剤MBT(川口化学工業株式会社製「アクセルM」)1.5重量部および硫黄(細井化学工業株式会社製「硫黄200M」)1.5重量部をロールにて、温度40℃で10分間溶融混練し、未加硫ゴム組成物を作成した。次に、この未加硫ゴム組成物を、プレス成形機を用いて、160℃、20分間の条件で加熱処理することにより、厚み2mmの硫黄加硫ゴムシートを作成した。
【0020】
実施例1〜3及び比較例1
表1に示す配合を単軸押出機にて200℃でブレンド造粒を行い、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を得た。該熱可塑性エラストマー組成物について、下記の方法により変色性を評価した。結果を表1に示す。
【0021】
〔変色性の評価法〕
得られた熱可塑性エラストマー組成物を単軸押出機にて200℃で厚さ1mmのシートを得た。熱可塑性エラストマー組成物と加硫ゴムシートを厚さ3mmの金型にセットし、加圧プレスにて200℃、5分間加熱し、更に5分間室温にて冷却し、熱可塑性エラストマーと加硫ゴムの積層体を得た。該積層体をUVフェードメーター(ブラックパネル温度=83℃)により評価した。400時間後に変色の程度をJIS K 7105に準拠して評価し、色差(ΔE)及び黄変度(ΔYI)を求めた。
【0022】
【表1】

【0023】
熱可塑性エラストマー;住友化学工業株式会社製 住友TPE5280A
酸化チタン;石原産業株式会社製 タイペークR550
リチウムアルミニウム複合水酸化物;水澤化学株式会社製 ミズカラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄加硫ゴム組成物と熱可塑性エラストマー組成物が接触している複合体を製造するための熱可塑性エラストマーであって、下記(A)及び(B)を含有する複合体製造用熱可塑性エラストマー組成物。
(A):熱可塑性エラストマー
(B):下記式(1)で表されるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩
[Al2Li(OH)6]nXmH2O (1)
(式中、Xは無機叉は有機のアニオンであり、nは該アニオンの価数であり、mは3以下の自然数である。)
【請求項2】
(B)が、[Al2Li(OH)62CO33H2Oである請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
硫黄加硫ゴム組成物と請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物が接触している複合体。

【公開番号】特開2006−8922(P2006−8922A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190895(P2004−190895)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】