複合作業機械
【課題】複数の加工機の間のメンテナンス用エリアを少なくして設置スペースを低減できる加工システムを提供する。
【解決手段】ベッド11の上面にX軸方向に一対のガイドレール12を互いに平行に敷設する。このガイドレール12に第1〜第4の加工機13〜16のX軸コラム17〜20をX軸方向の往復動可能に装設する。X軸コラム17〜20にはY軸サドル27をY軸方向の往復動可能に装着する。Y軸サドル27にはZ軸サドル32をZ軸方向の往復動可能に装着する。Z軸サドル32には、主軸台36及び主軸装置37を装着する。前記各加工機13〜16のメンテナンスを行う場合には、各加工機13〜16をX軸方向に互いに離間する方向に移動することによって、メンテナンス用エリアを確保でき、各加工機13〜16の間にメンテナンス専用のエリアを予め固定的に設ける必要がなく、各加工機のX軸方向の設置スペースを低減することができる。
【解決手段】ベッド11の上面にX軸方向に一対のガイドレール12を互いに平行に敷設する。このガイドレール12に第1〜第4の加工機13〜16のX軸コラム17〜20をX軸方向の往復動可能に装設する。X軸コラム17〜20にはY軸サドル27をY軸方向の往復動可能に装着する。Y軸サドル27にはZ軸サドル32をZ軸方向の往復動可能に装着する。Z軸サドル32には、主軸台36及び主軸装置37を装着する。前記各加工機13〜16のメンテナンスを行う場合には、各加工機13〜16をX軸方向に互いに離間する方向に移動することによって、メンテナンス用エリアを確保でき、各加工機13〜16の間にメンテナンス専用のエリアを予め固定的に設ける必要がなく、各加工機のX軸方向の設置スペースを低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械、組立機械、洗浄機械、計測機械或いは刻印機械等の複合作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複合加工システムは、複数の加工ステーションに配設された複数の工作機械によりワークに対し複数種の加工を順次行うようになっている。各工作機械は、それぞれ個別に配設されたベッドと、これらのベッドに対しX軸(水平)方向に往復動されるX軸コラムと、このX軸コラムにY軸(上下)方向に往復動可能に装着されたY軸サドルと、このY軸サドルに装置され、かつ前記X軸方向と直交するZ軸(水平)方向に往復動されるZ軸サドルと、このZ軸サドルに装着された主軸装置とにより構成されている。(特許文献1参照)
上記の複合加工システムでは、各工作機械の間に作業者がメンテナンスを行うためにX軸方向にメンテナンス用エリアを設けなければならないので、加工システムのX軸方向の全長寸法が長くなるという問題がある。これを解決するため、従来、特許文献2に示すように、二基の工作機械をそれぞれ背中合わせに配設する加工システムも提案されている。又、同じ課題を解決するために特許文献3には、二基の工作機械を組み合わせ、各組の工作機械の間にメンテナンス用エリアを設けた生産ラインも提案されている。さらに、特許文献4には一つの工作機械に二つの工具主軸ヘッドを設け、一つのワークに対し異なる加工作業を行うようにした構成のものも提案されている。
【特許文献1】特開平6−106445号公報
【特許文献2】特開2000−280129号公報
【特許文献3】特開2001−121386号公報
【特許文献4】特開2000−84712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献2〜4に開示された工作機械は、複数の加工ステーションに配設されたワークを加工するようにした加工システムに用いた場合には、工作機械ユニットの間又は工作機械の間に、主軸装置のX軸方向の作業に必要な往復動ストローク以外に、メンテナンス用エリアを専用に設けなければならないので、設置スペースを低減する上で限界があった。又、それぞれ個別にベッドを備えた複数台の工作機械を並べて生産ラインを構成する場合は、一層の設置スペースを要するとともに、設置に当たってはベッド数が多いから設置に伴う作業時間を多く必要としていた。
【0004】
上述した工作機械以外の組立機械、洗浄機械、計測機械或いは刻印機械等の複合作業機械においても、各機械の間に前述したメンテナンス用エリアを設けなければならないので、設置スペースを低減することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、工作機械等の複数の作業機の間のメンテナンス用エリアを少なくして設置スペースを低減することができるとともに、ベッドの設置作業の時間を短縮することができる複合作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、一基のベッドに対し共通の案内手段を介して複数の移動体を水平の一軸方向にそれぞれ独立して往復動可能に装着し、前記各移動体に作業機を装着し、前記各移動体をそれぞれ移動させるための複数の駆動手段及び前記各作業機をそれぞれについて独立して制御する制御手段を設けたことを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記各駆動手段はリニアモータであって、そのN極とS極の永久磁石を交互に直列に配設した固定子は前記ベッドに前記一軸方向に敷設されていることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記各駆動手段は前記ベッドの所定位置に前記一軸方向に配設された共通のボールねじと、各移動体にサーボモータにより回転可能に装着され、かつ前記ボールねじに螺合されたボールねじナットとにより構成されていることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1において、前記各駆動手段は前記ベッドの所定位置に前記一軸方向に配設された共通のラックと、各移動体にサーボモータにより回転可能に装着され、かつ前記ラックに噛み合わされたピニオンとにより構成されていることを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記制御手段は一つであることを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項において、前記ベッドには、前記各作業機と対応するように設けられた複数の作業台が置かれた領域と、前記各移動体が前記一軸方向に移動する領域との間を遮蔽するためのカバー装置が設けられ、このカバー装置は前記各作業機の間で少なくとも前記一軸方向の伸縮可能に設けられていることを要旨とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項において、前記作業機はワークを加工する加工機であって、前記ベッドの上方には各加工機に用いられる複数の工具を収納する工具マガジンが少なくとも前記一軸方向に工具が収納配列されるように装着されていることを要旨とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項7において、前記ベッドの前方に各加工機と対応するように設けられた複数のワークテーブルの下方には、ワークの加工中に生じるチップを排出するための共通のチップコンベアが設けられていることを要旨とする。
【0013】
請求項9に記載の発明は、請求項8において、前記加工機の主軸装置は、前記一軸方向、該一軸方向と直交する上下方向及び前記一軸方向と直交する水平方向の計3軸方向に移動制御され、前記カバーは前記主軸装置の前記3軸方向の移動を可能にして構成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一基のベッドに対し共通の案内手段を介して複数の移動体を一軸方向にそれぞれ独立して往復動可能に装着し、制御手段により前記各移動体にそれぞれ設けた複数の駆動手段をそれぞれ独立して制御するようにした。このため、設置作業の際には、一基のベッドで複数の移動体を同時に設置でき、ベッド及び移動体の設置作業効率を向上することができる。又、前記作業機を備えた各移動体のメンテナンスを行う場合には、前記各移動体を一軸方向に互いに離間する方向に移動することによって、メンテナンス用エリアを確保することができる。従って、各移動体の作業に必要な一軸方向の往復動ストローク以外にメンテナンス用エリア専用のエリアを予め固定的に設ける必要がなく、前記作業機を備えた各移動体の一軸方向の設置スペースを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の複合作業機械をワークの加工を行う加工システムに具体化した一実施形態を図1〜図7にしたがって説明する。
図3及び図4に示すように、ベッド11の上面には、案内手段としての一対のガイドレール12が互いに平行に、かつ、X軸(水平)方向に指向するように敷設されている。前記ガイドレール12には、図1に示すように、第1〜第4の作業機としての加工機13〜16がX軸方向に移動可能に装設されている。前記ベッド11の上面には、前記両ガイドレール12の間に位置するようにリニアモータを構成するN極とS極の永久磁石が交互に直列に配設された帯板状の固定子21Aがガイドレール12の敷設長さとほぼ同じ長さに敷設されている。前記第1〜第4の加工機13〜16の移動体としてのX軸コラム17〜20の下面には、前記固定子21Aと対応するようにリニアモータを構成する可動子21Bがそれぞれ設けられ、固定子21Aと各可動子21Bにより第1〜第4のX軸リニアモータ22〜25が構成されている。この第1〜第4のX軸リニアモータ22〜25が各X軸コラム17〜20を移動させるための駆動手段となる。そして、第1〜第4のX軸リニアモータ22〜25の制御によって、X軸コラム17〜20が、それぞれ独立してX軸方向に往復動されるようにしている。
【0016】
第1〜第4の加工機13〜16はそれぞれほぼ同じ構成となっているので、それらを代表して第1の加工機13について説明する。この第1の加工機13の前記X軸コラム17の起立部の垂直面には、Y軸(上下)方向に互いに平行に一対のY軸ガイドレール26が敷設され、該Y軸ガイドレール26にはY軸サドル27がY軸方向の往復動可能に装着されている。そして、X軸コラム17の上端部に取り付けられた第1Y軸サーボモータ28A及び該第1Y軸サーボモータ28Aによって回転されるボールねじ29と、前記Y軸サドル27の裏面に取り付けられ、かつ前記ボールねじ29に螺合されたボールねじナット(図示略)によってY軸サドル27がY軸方向に往復動されるようになっている。前記Y軸サドル27の垂直面にはX軸と直交するZ軸(水平)方向に、かつY軸方向に所定間隔を置いて互いに平行にZ軸ガイドレール31が敷設され、このZ軸ガイドレール31には、Z軸サドル32が装着され、前記Y軸サドル27の下部に装着された第1Z軸サーボモータ33A、ボールねじ34及び前記Z軸サドル32に取り付けられ、かつ前記ボールねじ34に螺合されたボールねじナット35によってZ軸方向の往復動可能になっている。前記Z軸サドル32の側面には、主軸台36が取り付けられ、この主軸台36には、主軸装置37が装着され、この主軸装置37には主軸38が装着されている。前記主軸台36の後端部には、前記主軸38を回転するための第1主軸モータ39Aが装着されている。
【0017】
図3及び図4に示すように、第2〜第4の加工機14〜16において、第1の加工機13の第1Y軸サーボモータ28A、第1Z軸サーボモータ33A及び第1主軸モータ39Aと対応する部材については、第2〜第4Y軸サーボモータ28B〜28D、第2〜第4Z軸サーボモータ33B〜33D、第2〜第4主軸モータ39B〜39Dとしている。
【0018】
図7に示すように、前記第1X軸リニアモータ22、第1Y,Z軸サーボモータ28A,33A及び第1主軸モータ39Aは、制御手段としての一つの制御装置41に第1駆動回路42を介して接続されている。同様に、第2X軸リニアモータ23、第2Y,Z軸サーボモータ28B、33B及び第2主軸モータ39Bも、前記一つの制御装置41に第2駆動回路43を介して接続されている。さらに、第3X軸リニアモータ24、第3Y,Z軸サーボモータ28C,33C及び第3主軸モータ39Cと、第4Xリニアモータ25、第4Y,Z軸サーボモータ28D,33D及び第4主軸モータ39Dも前記一つの制御装置41に第3駆動回路44及び第4駆動回路45を介してそれぞれ接続されている。そして、制御装置41からの制御信号によって、各種のモータが回転制御され、主軸38に装着された工具によって、後述する作業台としてのワークテーブル52に支持されたワークWを加工するようになっている。
【0019】
図3及び図4に示すように、前記ベッド11の前側面には、複数のブラケット51を介して、前記第1〜第4の加工機13〜16の各主軸38と対応するように、ワークWを支持するワークテーブル52が装着されている。このワークテーブル52の前方には、ワークを各ワークテーブル52に搬入すると共に、加工されたワークを搬出するためのワーク搬入出機構53が装着されている。このワーク搬入出機構53は支持台54と、その上面に多数箇所に支持されたガイドローラ55と、各ガイドローラ55の上面に支持された複数のパレット56とによって構成されている。前記ブラケット51及びワークテーブル52の下方には、加工されたワークから排出される切屑を回収して除去するための第1〜第4の加工機13〜16共通のチップコンベヤ57が装設されている。
【0020】
次に、前記ベッド11の前端部上面、つまり前記ベッド11とワークテーブル52との間の部位の上面に装着され、かつ、前記ワークテーブル52が配置された領域と、前記X軸コラム17〜20が移動する領域との間を遮蔽してワークWの加工中にクーラントや切屑が第1〜第4の加工機13〜16側に飛散するの防止するためのカバー装置61について図4〜図6を中心に説明する。
【0021】
図4に示すように、前記ベッド11の前端部上面には、横長四角枠状のフレーム62が取り付けられ、このフレーム62の内側には、前記第1〜第4の加工機13〜16の各主軸装置37と対応して設けられた可動枠63がフレーム62の上下に取り付けたチャンネル状のガイド樋64(図6参照)によってX軸方向の往復動可能に装着されている。前記可動枠63の内部には図5に示すように前記主軸装置37の外周面と可動枠63の内周面を遮蔽するためのスライドカバー65が装着されている。このスライドカバー65は図6に示すように前記主軸装置37の外周面に嵌合されたプレート66と、このプレート66の上下両端縁に連結された複数枚のカバー片67とによって構成されている。
【0022】
図5に示すように前記フレーム62の両端の縦枠62A,62Bと両端の二つの可動枠63の間及び各可動枠63の間には、巻き取り方式のカバー71がそれぞれ装着されている。このカバー71は前記フレーム62と両端の二つの可動枠63との間及び各可動枠63の間においてそれぞれ一方側の縦枠62A,63Bに取り付けられたケース72と、このケース72にロール状に収容され、かつ、先端を他方側の縦枠63A,62Bに連結した遮蔽布73とによって構成されている。
【0023】
従って、前記主軸装置37が図5においてX軸方向に往復動されると、前記カバー71の遮蔽布73がケース72の内部から巻き戻されたり、巻き上げられたりしてX軸方向に伸縮しつつフレーム62と可動枠63の間及び各可動枠63の間の空間を遮蔽布73によって遮蔽するようになっている。又、図6において主軸装置37がY軸方向に往復動されると、スライドカバー65のカバー片67〜67が伸縮されて主軸装置37と可動枠63の間の空間が常に遮蔽されるようになっている。
【0024】
図4及び図6に示すように前記カバー装置61を構成するフレーム62の上部横枠62Cの上面には、工具マガジン75が装着されている。この工具マガジン75は、前記上部横枠62Cの上面に敷設されたX軸方向に指向するホルダ76と、このホルダ76の前端面に下向きに取り付けられ、かつ工具を把持する複数の把持具77とによって構成されている。この把持具77は工具がX軸方向に収納配列されるようにX軸方向に等ピッチで多数箇所に設けられている。
【0025】
次に、前記のように構成された加工システムの動作について説明する。
この加工システムによって、ワークWに複数種類の加工を行う場合には、図4に示すワーク搬入出機構53のパレット56にワークWを支持し、第1の加工機13と対応するワークテーブル52にワークWを搬入する。このワークWを図示しないクランプ機構により所定位置にクランプした状態で、図7に示す制御装置41から、第1駆動回路42に制御信号を出力し、第1X軸リニアモータ22、第1Y軸サーボモータ28A、第1Z軸サーボモータ33A及び第1主軸モータ39Aをそれぞれ回転制御することによって、主軸装置37を3軸方向に移動し、主軸38に装着された工具によってワークWを加工する。
【0026】
この第1の加工機13によるワークの加工が終了した後に、ワークを第2の加工機14と対応するワークテーブル52に移し替えて、主軸38に装着された工具によってワークを再び加工する。以下、同様にして、第3の加工機15及び第4の加工機16の主軸38に装着された工具によって順次ワークを加工する。加工が終了したワークは、ワーク搬入出機構53のパレット56に移し替えられ、搬出用のガイドローラ55によって搬出される。
【0027】
前記各加工機13〜16のメンテナンスを行う場合には、前記各加工機13〜16をX軸方向に互いに離間する方向に移動することによって、メンテナンス用エリアを確保する。例えば、第1の加工機13と第2の加工機14の間にメンテナンス用エリアを確保する場合には、図1において第1の加工機13をX軸右方へ移動し、第2〜第4の加工機14〜16を全てX軸左方へ移動することにより大きなメンテナンス用エリアを確保することができる。
【0028】
上記実施形態の加工システムによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、一基の前記ベッド11の上面に第1〜第4の加工機13〜16共通のガイドレール12をX軸方向に敷設し、ガイドレール12に第1〜第4の加工機13〜16のX軸コラム17〜20をそれぞれ往復動可能に装着した。このため、メンテナンスを行う際に、第1〜第4の加工機13〜16をX軸方向に互いに離隔するように移動して、メンテナンス用エリアを確保することができる。従って、第1〜第4の加工機13〜16の加工作業に必要なX軸方向の往復動ストローク以外にメンテナンス用エリア専用のエリアを予め固定的に設ける必要がなく、前記第1〜第4の加工機13〜16のX軸方向の設置スペースを低減することができる。又、ベッドが一基のため、その設置作業の時間を短縮することができる。
【0029】
(2)上記実施形態では、四つのワークテーブル52〜52と対応する四つの加工ステーションの第1〜第4の加工機13〜16のいずれか二つの加工機を、一つの加工ステーションのワークに移動して加工することができ、加工作業の多様化を図ることができる。
【0030】
(3)上記実施形態では、前記ベッド11の上面に固定子21Aを敷設し、第1〜第4の加工機13〜16のX軸コラム17〜20に前記固定子21Aに対応する可動子21Bを装着して第1〜第4のX軸リニアモータ22〜25を構成した。このため、第1〜第4の加工機13〜16のそれぞれのX軸方向の長さ寸法を短くすることができ、この点からも加工システムの小型化を図ることができる。
【0031】
(4)上記実施形態では、前記ベッド11の上面にカバー装置61を装着し、該カバー装置61を構成するフレーム62と、X,Y,Z軸の3軸方向に移動される主軸装置37の外周面との間を遮蔽するようにしたので、ワークの加工中に第1〜第4の加工機13〜16側にクーラントや切屑が飛散するのを防止することができる。又、カバー装置61のフレーム62は、第1〜第4の加工機13〜16の共通の部材として機能するので、部品点数を低減して、製造及び組み付け作業を容易に行いコストの低減を図ることができる。
【0032】
(5)上記実施形態では、カバー装置61のフレーム62の上端面に工具マガジン75を装着し、そのホルダ76に多数の把持具77をX軸方向に所定のピッチで配列したので、使用済みの工具と新しい工具の交換を容易に行うことができる。特に、前記第1〜第4の加工機13〜16の主軸装置37がガイドレール12に沿って、X軸方向に往復動されるので、各主軸装置37をX軸方向に極限まで移動することにより工具交換領域が拡大されて、交換工具を共有化できるので、工具マガジン75に収容する工具の種類や本数を低減することができる。
【0033】
(6)上記実施形態では、前記第1〜第4の加工機13〜16と対応する複数のワークテーブル52の下方に共通のチップコンベヤ57を設けたので、チップコンベヤ57の構成を簡素化して、部品点数を低減し、製造を容易に行いコストの低減を図ることができる。
【0034】
(7)上記実施形態では、図3に示すように前記ベッド11の上面とX軸コラム17〜20の下面との間に駆動手段としての第1〜第4のX軸リニアモータ22〜25を設けたので、駆動手段の設置スペースを容易に確保することができる。
【0035】
(8)上記実施形態では、一つの制御装置41により前記第1〜第4の加工機13〜16の各種の動作を制御するようにしたので、制御装置41の配置数を低減して、コストダウンを図ることができる。
【0036】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・図8に示すように、ベッド11の上面に第1〜第4の加工機13〜16共通の一本のボールねじ95を軸受96によってX軸方向に指向するように、かつ所定位置に回転不能に支持し、前記ボールねじ95に第1〜第4の加工機13〜16のX軸コラム17〜20の下部に前記ボールねじ95に螺合されるボールねじナット97を回転可能に支持する。さらに、ボールねじナット97に連結した歯車98を第1〜第4の加工機13〜16に装着されたX軸サーボモータ99A〜99D及び駆動歯車(図示略)によってそれぞれ往復回動可能に構成してもよい。
【0037】
この実施形態では、駆動手段を構成するボールねじ95が各加工機に共通化されているので、駆動手段の構造を簡素化して、部品点数を低減し、製造及び組付け作業を容易に行いコストの低減を図ることができる。
【0038】
・図9に示すように、ベッド11の上面に第1〜第4の加工機13〜16共通のラック100をX軸方向に敷設するとともに、前記第1〜第4の加工機13〜16のX軸コラム17〜20に前記ラック100に噛み合わされるピニオン101を設け、各ピニオン101をX軸サーボモータ99A〜99Dによって往復回動可能にしてもよい。
【0039】
この実施形態では、駆動手段を構成するラック100が各加工機に共通化されているので、駆動手段の構造を簡素化して、部品点数を低減し、製造及び組付け作業を容易に行いコストの低減を図ることができる。
【0040】
・図10に示すように、ベッド11の上面に4本のボールねじ95を軸受96によって所定位置に回転可能に設けるとともに、第1〜第4の加工機13〜16のX軸コラム17〜20に取り付けたボールねじナット97を前記ボールねじ95に螺合する。そして、前記ボールねじ95をサーボモータ99A〜99dによってそれぞれ往復回動可能に構成してもよい。
【0041】
・図11に示すように、前記ベッド11の上面に立設されたカバー装置61のフレーム62を用いて一方のガイドレール12を装着し、このガイドレール12とベッド11の上面の他方のガイドレール12とにX軸コラム17〜20をX軸方向の往復動可能に装着するようにしてもよい。
【0042】
・前記実施形態では、ワークテーブル52にワークを搬入搬出する機構としてパレット方式のものを用いたが、これに代えてロボット方式、ガントリー方式又はトランスファーバー方式を用いてもよい。
【0043】
・前記実施形態の第1〜第4Y軸サーボモータ28A〜28Dを省略してもよい。この場合には可動枠63、ガイド樋64及びカバー片67を省略することができる。又、回転工具を必要としない場合には、第1〜第4主軸モータ39A〜39Dを省略してもよい。
【0044】
・前記工具マガジン75の把持具77をY軸方向に複数段に装着してもよい。
・前記工具マガジン75の把持具77をホルダ76の両端に掛装されたベルトコンベア又はチェーンコンベア等により旋回移動する方式にしてもよい。
【0045】
・前記二条のガイドレール12,12の外側に駆動手段としての例えば第1〜第4のX軸リニアモータ22〜25を設けてもよい。この場合には、例えば図11に示すベッド11の上面のガイドレール12の右側にX軸コラム17〜20の駆動手段を
配設することが考えられる。
【0046】
・作業機としての複数の加工機を備えた加工システム以外に、各種の工作機械、組立機械、洗浄機械、計測機械或いは刻印機械等の複合作業機械に具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の複合作業機械を加工システムに具体化した一実施形態を示す平面図。
【図2】加工システムの正面図。
【図3】加工システムの右側面図。
【図4】加工システムの斜視図。
【図5】カバー装置の平断面図。
【図6】カバー装置の縦断面図。
【図7】加工システムの制御システムを示すブロック回路図。
【図8】この発明の別の実施形態を示す断面図。
【図9】この発明の別の実施形態を示す略体正面図。
【図10】この発明の別の実施形態を示す略体正面図。
【図11】この発明の別の実施形態を示す略体右側面図。
【符号の説明】
【0048】
W…ワーク、11…ベッド、12…案内手段としてのガイドレール、13〜16…第1〜第4の作業機としての加工機、17〜20…移動体としてのX軸コラム、21A…固定子、21B…可動子、29,34,95…ボールねじ、35,97…ボールねじナット、37…主軸装置、52…作業台としてのワークテーブル、61…カバー装置、75…工具マガジン、99A〜99d…サーボモータ、100…ラック、101…ピニオン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械、組立機械、洗浄機械、計測機械或いは刻印機械等の複合作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複合加工システムは、複数の加工ステーションに配設された複数の工作機械によりワークに対し複数種の加工を順次行うようになっている。各工作機械は、それぞれ個別に配設されたベッドと、これらのベッドに対しX軸(水平)方向に往復動されるX軸コラムと、このX軸コラムにY軸(上下)方向に往復動可能に装着されたY軸サドルと、このY軸サドルに装置され、かつ前記X軸方向と直交するZ軸(水平)方向に往復動されるZ軸サドルと、このZ軸サドルに装着された主軸装置とにより構成されている。(特許文献1参照)
上記の複合加工システムでは、各工作機械の間に作業者がメンテナンスを行うためにX軸方向にメンテナンス用エリアを設けなければならないので、加工システムのX軸方向の全長寸法が長くなるという問題がある。これを解決するため、従来、特許文献2に示すように、二基の工作機械をそれぞれ背中合わせに配設する加工システムも提案されている。又、同じ課題を解決するために特許文献3には、二基の工作機械を組み合わせ、各組の工作機械の間にメンテナンス用エリアを設けた生産ラインも提案されている。さらに、特許文献4には一つの工作機械に二つの工具主軸ヘッドを設け、一つのワークに対し異なる加工作業を行うようにした構成のものも提案されている。
【特許文献1】特開平6−106445号公報
【特許文献2】特開2000−280129号公報
【特許文献3】特開2001−121386号公報
【特許文献4】特開2000−84712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献2〜4に開示された工作機械は、複数の加工ステーションに配設されたワークを加工するようにした加工システムに用いた場合には、工作機械ユニットの間又は工作機械の間に、主軸装置のX軸方向の作業に必要な往復動ストローク以外に、メンテナンス用エリアを専用に設けなければならないので、設置スペースを低減する上で限界があった。又、それぞれ個別にベッドを備えた複数台の工作機械を並べて生産ラインを構成する場合は、一層の設置スペースを要するとともに、設置に当たってはベッド数が多いから設置に伴う作業時間を多く必要としていた。
【0004】
上述した工作機械以外の組立機械、洗浄機械、計測機械或いは刻印機械等の複合作業機械においても、各機械の間に前述したメンテナンス用エリアを設けなければならないので、設置スペースを低減することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、工作機械等の複数の作業機の間のメンテナンス用エリアを少なくして設置スペースを低減することができるとともに、ベッドの設置作業の時間を短縮することができる複合作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、一基のベッドに対し共通の案内手段を介して複数の移動体を水平の一軸方向にそれぞれ独立して往復動可能に装着し、前記各移動体に作業機を装着し、前記各移動体をそれぞれ移動させるための複数の駆動手段及び前記各作業機をそれぞれについて独立して制御する制御手段を設けたことを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記各駆動手段はリニアモータであって、そのN極とS極の永久磁石を交互に直列に配設した固定子は前記ベッドに前記一軸方向に敷設されていることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記各駆動手段は前記ベッドの所定位置に前記一軸方向に配設された共通のボールねじと、各移動体にサーボモータにより回転可能に装着され、かつ前記ボールねじに螺合されたボールねじナットとにより構成されていることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1において、前記各駆動手段は前記ベッドの所定位置に前記一軸方向に配設された共通のラックと、各移動体にサーボモータにより回転可能に装着され、かつ前記ラックに噛み合わされたピニオンとにより構成されていることを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記制御手段は一つであることを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項において、前記ベッドには、前記各作業機と対応するように設けられた複数の作業台が置かれた領域と、前記各移動体が前記一軸方向に移動する領域との間を遮蔽するためのカバー装置が設けられ、このカバー装置は前記各作業機の間で少なくとも前記一軸方向の伸縮可能に設けられていることを要旨とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項において、前記作業機はワークを加工する加工機であって、前記ベッドの上方には各加工機に用いられる複数の工具を収納する工具マガジンが少なくとも前記一軸方向に工具が収納配列されるように装着されていることを要旨とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項7において、前記ベッドの前方に各加工機と対応するように設けられた複数のワークテーブルの下方には、ワークの加工中に生じるチップを排出するための共通のチップコンベアが設けられていることを要旨とする。
【0013】
請求項9に記載の発明は、請求項8において、前記加工機の主軸装置は、前記一軸方向、該一軸方向と直交する上下方向及び前記一軸方向と直交する水平方向の計3軸方向に移動制御され、前記カバーは前記主軸装置の前記3軸方向の移動を可能にして構成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一基のベッドに対し共通の案内手段を介して複数の移動体を一軸方向にそれぞれ独立して往復動可能に装着し、制御手段により前記各移動体にそれぞれ設けた複数の駆動手段をそれぞれ独立して制御するようにした。このため、設置作業の際には、一基のベッドで複数の移動体を同時に設置でき、ベッド及び移動体の設置作業効率を向上することができる。又、前記作業機を備えた各移動体のメンテナンスを行う場合には、前記各移動体を一軸方向に互いに離間する方向に移動することによって、メンテナンス用エリアを確保することができる。従って、各移動体の作業に必要な一軸方向の往復動ストローク以外にメンテナンス用エリア専用のエリアを予め固定的に設ける必要がなく、前記作業機を備えた各移動体の一軸方向の設置スペースを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の複合作業機械をワークの加工を行う加工システムに具体化した一実施形態を図1〜図7にしたがって説明する。
図3及び図4に示すように、ベッド11の上面には、案内手段としての一対のガイドレール12が互いに平行に、かつ、X軸(水平)方向に指向するように敷設されている。前記ガイドレール12には、図1に示すように、第1〜第4の作業機としての加工機13〜16がX軸方向に移動可能に装設されている。前記ベッド11の上面には、前記両ガイドレール12の間に位置するようにリニアモータを構成するN極とS極の永久磁石が交互に直列に配設された帯板状の固定子21Aがガイドレール12の敷設長さとほぼ同じ長さに敷設されている。前記第1〜第4の加工機13〜16の移動体としてのX軸コラム17〜20の下面には、前記固定子21Aと対応するようにリニアモータを構成する可動子21Bがそれぞれ設けられ、固定子21Aと各可動子21Bにより第1〜第4のX軸リニアモータ22〜25が構成されている。この第1〜第4のX軸リニアモータ22〜25が各X軸コラム17〜20を移動させるための駆動手段となる。そして、第1〜第4のX軸リニアモータ22〜25の制御によって、X軸コラム17〜20が、それぞれ独立してX軸方向に往復動されるようにしている。
【0016】
第1〜第4の加工機13〜16はそれぞれほぼ同じ構成となっているので、それらを代表して第1の加工機13について説明する。この第1の加工機13の前記X軸コラム17の起立部の垂直面には、Y軸(上下)方向に互いに平行に一対のY軸ガイドレール26が敷設され、該Y軸ガイドレール26にはY軸サドル27がY軸方向の往復動可能に装着されている。そして、X軸コラム17の上端部に取り付けられた第1Y軸サーボモータ28A及び該第1Y軸サーボモータ28Aによって回転されるボールねじ29と、前記Y軸サドル27の裏面に取り付けられ、かつ前記ボールねじ29に螺合されたボールねじナット(図示略)によってY軸サドル27がY軸方向に往復動されるようになっている。前記Y軸サドル27の垂直面にはX軸と直交するZ軸(水平)方向に、かつY軸方向に所定間隔を置いて互いに平行にZ軸ガイドレール31が敷設され、このZ軸ガイドレール31には、Z軸サドル32が装着され、前記Y軸サドル27の下部に装着された第1Z軸サーボモータ33A、ボールねじ34及び前記Z軸サドル32に取り付けられ、かつ前記ボールねじ34に螺合されたボールねじナット35によってZ軸方向の往復動可能になっている。前記Z軸サドル32の側面には、主軸台36が取り付けられ、この主軸台36には、主軸装置37が装着され、この主軸装置37には主軸38が装着されている。前記主軸台36の後端部には、前記主軸38を回転するための第1主軸モータ39Aが装着されている。
【0017】
図3及び図4に示すように、第2〜第4の加工機14〜16において、第1の加工機13の第1Y軸サーボモータ28A、第1Z軸サーボモータ33A及び第1主軸モータ39Aと対応する部材については、第2〜第4Y軸サーボモータ28B〜28D、第2〜第4Z軸サーボモータ33B〜33D、第2〜第4主軸モータ39B〜39Dとしている。
【0018】
図7に示すように、前記第1X軸リニアモータ22、第1Y,Z軸サーボモータ28A,33A及び第1主軸モータ39Aは、制御手段としての一つの制御装置41に第1駆動回路42を介して接続されている。同様に、第2X軸リニアモータ23、第2Y,Z軸サーボモータ28B、33B及び第2主軸モータ39Bも、前記一つの制御装置41に第2駆動回路43を介して接続されている。さらに、第3X軸リニアモータ24、第3Y,Z軸サーボモータ28C,33C及び第3主軸モータ39Cと、第4Xリニアモータ25、第4Y,Z軸サーボモータ28D,33D及び第4主軸モータ39Dも前記一つの制御装置41に第3駆動回路44及び第4駆動回路45を介してそれぞれ接続されている。そして、制御装置41からの制御信号によって、各種のモータが回転制御され、主軸38に装着された工具によって、後述する作業台としてのワークテーブル52に支持されたワークWを加工するようになっている。
【0019】
図3及び図4に示すように、前記ベッド11の前側面には、複数のブラケット51を介して、前記第1〜第4の加工機13〜16の各主軸38と対応するように、ワークWを支持するワークテーブル52が装着されている。このワークテーブル52の前方には、ワークを各ワークテーブル52に搬入すると共に、加工されたワークを搬出するためのワーク搬入出機構53が装着されている。このワーク搬入出機構53は支持台54と、その上面に多数箇所に支持されたガイドローラ55と、各ガイドローラ55の上面に支持された複数のパレット56とによって構成されている。前記ブラケット51及びワークテーブル52の下方には、加工されたワークから排出される切屑を回収して除去するための第1〜第4の加工機13〜16共通のチップコンベヤ57が装設されている。
【0020】
次に、前記ベッド11の前端部上面、つまり前記ベッド11とワークテーブル52との間の部位の上面に装着され、かつ、前記ワークテーブル52が配置された領域と、前記X軸コラム17〜20が移動する領域との間を遮蔽してワークWの加工中にクーラントや切屑が第1〜第4の加工機13〜16側に飛散するの防止するためのカバー装置61について図4〜図6を中心に説明する。
【0021】
図4に示すように、前記ベッド11の前端部上面には、横長四角枠状のフレーム62が取り付けられ、このフレーム62の内側には、前記第1〜第4の加工機13〜16の各主軸装置37と対応して設けられた可動枠63がフレーム62の上下に取り付けたチャンネル状のガイド樋64(図6参照)によってX軸方向の往復動可能に装着されている。前記可動枠63の内部には図5に示すように前記主軸装置37の外周面と可動枠63の内周面を遮蔽するためのスライドカバー65が装着されている。このスライドカバー65は図6に示すように前記主軸装置37の外周面に嵌合されたプレート66と、このプレート66の上下両端縁に連結された複数枚のカバー片67とによって構成されている。
【0022】
図5に示すように前記フレーム62の両端の縦枠62A,62Bと両端の二つの可動枠63の間及び各可動枠63の間には、巻き取り方式のカバー71がそれぞれ装着されている。このカバー71は前記フレーム62と両端の二つの可動枠63との間及び各可動枠63の間においてそれぞれ一方側の縦枠62A,63Bに取り付けられたケース72と、このケース72にロール状に収容され、かつ、先端を他方側の縦枠63A,62Bに連結した遮蔽布73とによって構成されている。
【0023】
従って、前記主軸装置37が図5においてX軸方向に往復動されると、前記カバー71の遮蔽布73がケース72の内部から巻き戻されたり、巻き上げられたりしてX軸方向に伸縮しつつフレーム62と可動枠63の間及び各可動枠63の間の空間を遮蔽布73によって遮蔽するようになっている。又、図6において主軸装置37がY軸方向に往復動されると、スライドカバー65のカバー片67〜67が伸縮されて主軸装置37と可動枠63の間の空間が常に遮蔽されるようになっている。
【0024】
図4及び図6に示すように前記カバー装置61を構成するフレーム62の上部横枠62Cの上面には、工具マガジン75が装着されている。この工具マガジン75は、前記上部横枠62Cの上面に敷設されたX軸方向に指向するホルダ76と、このホルダ76の前端面に下向きに取り付けられ、かつ工具を把持する複数の把持具77とによって構成されている。この把持具77は工具がX軸方向に収納配列されるようにX軸方向に等ピッチで多数箇所に設けられている。
【0025】
次に、前記のように構成された加工システムの動作について説明する。
この加工システムによって、ワークWに複数種類の加工を行う場合には、図4に示すワーク搬入出機構53のパレット56にワークWを支持し、第1の加工機13と対応するワークテーブル52にワークWを搬入する。このワークWを図示しないクランプ機構により所定位置にクランプした状態で、図7に示す制御装置41から、第1駆動回路42に制御信号を出力し、第1X軸リニアモータ22、第1Y軸サーボモータ28A、第1Z軸サーボモータ33A及び第1主軸モータ39Aをそれぞれ回転制御することによって、主軸装置37を3軸方向に移動し、主軸38に装着された工具によってワークWを加工する。
【0026】
この第1の加工機13によるワークの加工が終了した後に、ワークを第2の加工機14と対応するワークテーブル52に移し替えて、主軸38に装着された工具によってワークを再び加工する。以下、同様にして、第3の加工機15及び第4の加工機16の主軸38に装着された工具によって順次ワークを加工する。加工が終了したワークは、ワーク搬入出機構53のパレット56に移し替えられ、搬出用のガイドローラ55によって搬出される。
【0027】
前記各加工機13〜16のメンテナンスを行う場合には、前記各加工機13〜16をX軸方向に互いに離間する方向に移動することによって、メンテナンス用エリアを確保する。例えば、第1の加工機13と第2の加工機14の間にメンテナンス用エリアを確保する場合には、図1において第1の加工機13をX軸右方へ移動し、第2〜第4の加工機14〜16を全てX軸左方へ移動することにより大きなメンテナンス用エリアを確保することができる。
【0028】
上記実施形態の加工システムによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、一基の前記ベッド11の上面に第1〜第4の加工機13〜16共通のガイドレール12をX軸方向に敷設し、ガイドレール12に第1〜第4の加工機13〜16のX軸コラム17〜20をそれぞれ往復動可能に装着した。このため、メンテナンスを行う際に、第1〜第4の加工機13〜16をX軸方向に互いに離隔するように移動して、メンテナンス用エリアを確保することができる。従って、第1〜第4の加工機13〜16の加工作業に必要なX軸方向の往復動ストローク以外にメンテナンス用エリア専用のエリアを予め固定的に設ける必要がなく、前記第1〜第4の加工機13〜16のX軸方向の設置スペースを低減することができる。又、ベッドが一基のため、その設置作業の時間を短縮することができる。
【0029】
(2)上記実施形態では、四つのワークテーブル52〜52と対応する四つの加工ステーションの第1〜第4の加工機13〜16のいずれか二つの加工機を、一つの加工ステーションのワークに移動して加工することができ、加工作業の多様化を図ることができる。
【0030】
(3)上記実施形態では、前記ベッド11の上面に固定子21Aを敷設し、第1〜第4の加工機13〜16のX軸コラム17〜20に前記固定子21Aに対応する可動子21Bを装着して第1〜第4のX軸リニアモータ22〜25を構成した。このため、第1〜第4の加工機13〜16のそれぞれのX軸方向の長さ寸法を短くすることができ、この点からも加工システムの小型化を図ることができる。
【0031】
(4)上記実施形態では、前記ベッド11の上面にカバー装置61を装着し、該カバー装置61を構成するフレーム62と、X,Y,Z軸の3軸方向に移動される主軸装置37の外周面との間を遮蔽するようにしたので、ワークの加工中に第1〜第4の加工機13〜16側にクーラントや切屑が飛散するのを防止することができる。又、カバー装置61のフレーム62は、第1〜第4の加工機13〜16の共通の部材として機能するので、部品点数を低減して、製造及び組み付け作業を容易に行いコストの低減を図ることができる。
【0032】
(5)上記実施形態では、カバー装置61のフレーム62の上端面に工具マガジン75を装着し、そのホルダ76に多数の把持具77をX軸方向に所定のピッチで配列したので、使用済みの工具と新しい工具の交換を容易に行うことができる。特に、前記第1〜第4の加工機13〜16の主軸装置37がガイドレール12に沿って、X軸方向に往復動されるので、各主軸装置37をX軸方向に極限まで移動することにより工具交換領域が拡大されて、交換工具を共有化できるので、工具マガジン75に収容する工具の種類や本数を低減することができる。
【0033】
(6)上記実施形態では、前記第1〜第4の加工機13〜16と対応する複数のワークテーブル52の下方に共通のチップコンベヤ57を設けたので、チップコンベヤ57の構成を簡素化して、部品点数を低減し、製造を容易に行いコストの低減を図ることができる。
【0034】
(7)上記実施形態では、図3に示すように前記ベッド11の上面とX軸コラム17〜20の下面との間に駆動手段としての第1〜第4のX軸リニアモータ22〜25を設けたので、駆動手段の設置スペースを容易に確保することができる。
【0035】
(8)上記実施形態では、一つの制御装置41により前記第1〜第4の加工機13〜16の各種の動作を制御するようにしたので、制御装置41の配置数を低減して、コストダウンを図ることができる。
【0036】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・図8に示すように、ベッド11の上面に第1〜第4の加工機13〜16共通の一本のボールねじ95を軸受96によってX軸方向に指向するように、かつ所定位置に回転不能に支持し、前記ボールねじ95に第1〜第4の加工機13〜16のX軸コラム17〜20の下部に前記ボールねじ95に螺合されるボールねじナット97を回転可能に支持する。さらに、ボールねじナット97に連結した歯車98を第1〜第4の加工機13〜16に装着されたX軸サーボモータ99A〜99D及び駆動歯車(図示略)によってそれぞれ往復回動可能に構成してもよい。
【0037】
この実施形態では、駆動手段を構成するボールねじ95が各加工機に共通化されているので、駆動手段の構造を簡素化して、部品点数を低減し、製造及び組付け作業を容易に行いコストの低減を図ることができる。
【0038】
・図9に示すように、ベッド11の上面に第1〜第4の加工機13〜16共通のラック100をX軸方向に敷設するとともに、前記第1〜第4の加工機13〜16のX軸コラム17〜20に前記ラック100に噛み合わされるピニオン101を設け、各ピニオン101をX軸サーボモータ99A〜99Dによって往復回動可能にしてもよい。
【0039】
この実施形態では、駆動手段を構成するラック100が各加工機に共通化されているので、駆動手段の構造を簡素化して、部品点数を低減し、製造及び組付け作業を容易に行いコストの低減を図ることができる。
【0040】
・図10に示すように、ベッド11の上面に4本のボールねじ95を軸受96によって所定位置に回転可能に設けるとともに、第1〜第4の加工機13〜16のX軸コラム17〜20に取り付けたボールねじナット97を前記ボールねじ95に螺合する。そして、前記ボールねじ95をサーボモータ99A〜99dによってそれぞれ往復回動可能に構成してもよい。
【0041】
・図11に示すように、前記ベッド11の上面に立設されたカバー装置61のフレーム62を用いて一方のガイドレール12を装着し、このガイドレール12とベッド11の上面の他方のガイドレール12とにX軸コラム17〜20をX軸方向の往復動可能に装着するようにしてもよい。
【0042】
・前記実施形態では、ワークテーブル52にワークを搬入搬出する機構としてパレット方式のものを用いたが、これに代えてロボット方式、ガントリー方式又はトランスファーバー方式を用いてもよい。
【0043】
・前記実施形態の第1〜第4Y軸サーボモータ28A〜28Dを省略してもよい。この場合には可動枠63、ガイド樋64及びカバー片67を省略することができる。又、回転工具を必要としない場合には、第1〜第4主軸モータ39A〜39Dを省略してもよい。
【0044】
・前記工具マガジン75の把持具77をY軸方向に複数段に装着してもよい。
・前記工具マガジン75の把持具77をホルダ76の両端に掛装されたベルトコンベア又はチェーンコンベア等により旋回移動する方式にしてもよい。
【0045】
・前記二条のガイドレール12,12の外側に駆動手段としての例えば第1〜第4のX軸リニアモータ22〜25を設けてもよい。この場合には、例えば図11に示すベッド11の上面のガイドレール12の右側にX軸コラム17〜20の駆動手段を
配設することが考えられる。
【0046】
・作業機としての複数の加工機を備えた加工システム以外に、各種の工作機械、組立機械、洗浄機械、計測機械或いは刻印機械等の複合作業機械に具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の複合作業機械を加工システムに具体化した一実施形態を示す平面図。
【図2】加工システムの正面図。
【図3】加工システムの右側面図。
【図4】加工システムの斜視図。
【図5】カバー装置の平断面図。
【図6】カバー装置の縦断面図。
【図7】加工システムの制御システムを示すブロック回路図。
【図8】この発明の別の実施形態を示す断面図。
【図9】この発明の別の実施形態を示す略体正面図。
【図10】この発明の別の実施形態を示す略体正面図。
【図11】この発明の別の実施形態を示す略体右側面図。
【符号の説明】
【0048】
W…ワーク、11…ベッド、12…案内手段としてのガイドレール、13〜16…第1〜第4の作業機としての加工機、17〜20…移動体としてのX軸コラム、21A…固定子、21B…可動子、29,34,95…ボールねじ、35,97…ボールねじナット、37…主軸装置、52…作業台としてのワークテーブル、61…カバー装置、75…工具マガジン、99A〜99d…サーボモータ、100…ラック、101…ピニオン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一基のベッドに対し共通の案内手段を介して複数の移動体を水平の一軸方向にそれぞれ独立して往復動可能に装着し、前記各移動体に作業機を装着し、前記各移動体をそれぞれ移動させるための複数の駆動手段及び前記各作業機をそれぞれについて独立して制御する制御手段を設けたことを特徴とする複合作業機械。
【請求項2】
請求項1において、前記各駆動手段はリニアモータであって、そのN極とS極の永久磁石を交互に直列に配設した固定子は前記ベッドに前記一軸方向に敷設されていることを特徴とする複合作業機械。
【請求項3】
請求項1において、前記各駆動手段は前記ベッドの所定位置に前記一軸方向に配設された共通のボールねじと、各移動体にサーボモータにより回転可能に装着され、かつ前記ボールねじに螺合されたボールねじナットとにより構成されていることを特徴とする複合作業機械。
【請求項4】
請求項1において、前記各駆動手段は前記ベッドの所定位置に前記一軸方向に配設された共通のラックと、各移動体にサーボモータにより回転可能に装着され、かつ前記ラックに噛み合わされたピニオンとにより構成されていることを特徴とする複合作業機械。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、前記制御手段は一つであることを特徴とする複合作業機械。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、前記ベッドには、前記各作業機と対応するように設けられた複数の作業台が置かれた領域と、前記各移動体が前記一軸方向に移動する領域との間を遮蔽するためのカバー装置が設けられ、このカバー装置は前記各作業機の間で少なくとも前記一軸方向の伸縮可能に設けられていることを特徴とする複合作業機械。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、前記作業機はワークを加工する加工機であって、前記ベッドの上方には各加工機に用いられる複数の工具を収納する工具マガジンが少なくとも前記一軸方向に工具が収納配列されるように装着されていることを特徴とする複合作業機械。
【請求項8】
請求項7において、前記ベッドの前方に各加工機と対応するように設けられた複数のワークテーブルの下方には、ワークの加工中に生じるチップを排出するための共通のチップコンベアが設けられていることを特徴とする複合作業機械。
【請求項9】
請求項8において、前記加工機の主軸装置は、前記一軸方向、該一軸方向と直交する上下方向及び前記一軸方向と直交する水平方向の計3軸方向に移動制御され、前記カバーは前記主軸装置の前記3軸方向の移動を可能にして構成されていることを特徴とする複合作業機械。
【請求項1】
一基のベッドに対し共通の案内手段を介して複数の移動体を水平の一軸方向にそれぞれ独立して往復動可能に装着し、前記各移動体に作業機を装着し、前記各移動体をそれぞれ移動させるための複数の駆動手段及び前記各作業機をそれぞれについて独立して制御する制御手段を設けたことを特徴とする複合作業機械。
【請求項2】
請求項1において、前記各駆動手段はリニアモータであって、そのN極とS極の永久磁石を交互に直列に配設した固定子は前記ベッドに前記一軸方向に敷設されていることを特徴とする複合作業機械。
【請求項3】
請求項1において、前記各駆動手段は前記ベッドの所定位置に前記一軸方向に配設された共通のボールねじと、各移動体にサーボモータにより回転可能に装着され、かつ前記ボールねじに螺合されたボールねじナットとにより構成されていることを特徴とする複合作業機械。
【請求項4】
請求項1において、前記各駆動手段は前記ベッドの所定位置に前記一軸方向に配設された共通のラックと、各移動体にサーボモータにより回転可能に装着され、かつ前記ラックに噛み合わされたピニオンとにより構成されていることを特徴とする複合作業機械。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、前記制御手段は一つであることを特徴とする複合作業機械。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、前記ベッドには、前記各作業機と対応するように設けられた複数の作業台が置かれた領域と、前記各移動体が前記一軸方向に移動する領域との間を遮蔽するためのカバー装置が設けられ、このカバー装置は前記各作業機の間で少なくとも前記一軸方向の伸縮可能に設けられていることを特徴とする複合作業機械。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、前記作業機はワークを加工する加工機であって、前記ベッドの上方には各加工機に用いられる複数の工具を収納する工具マガジンが少なくとも前記一軸方向に工具が収納配列されるように装着されていることを特徴とする複合作業機械。
【請求項8】
請求項7において、前記ベッドの前方に各加工機と対応するように設けられた複数のワークテーブルの下方には、ワークの加工中に生じるチップを排出するための共通のチップコンベアが設けられていることを特徴とする複合作業機械。
【請求項9】
請求項8において、前記加工機の主軸装置は、前記一軸方向、該一軸方向と直交する上下方向及び前記一軸方向と直交する水平方向の計3軸方向に移動制御され、前記カバーは前記主軸装置の前記3軸方向の移動を可能にして構成されていることを特徴とする複合作業機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−218616(P2006−218616A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2963(P2006−2963)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000152675)株式会社日平トヤマ (218)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000152675)株式会社日平トヤマ (218)
【Fターム(参考)】
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