説明

複合化触媒担持体及びその製造方法

【課題】 様々な形状や環境下で効率よく機能を発現する複合化触媒担持体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 基体と、シランモノマーが表面に結合し、シランモノマーと基体の表面との化学結合により基体に固定される無機微粒子と、無機微粒子の表面に担持された少なくとも2種類の触媒微粒子とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や工場などの排ガス処理に用いられるフィルターや内装品や家電製品を基体として触媒を担持させることにより、VOCなどの有害ガスを効率よく分解することを可能とした複合化触媒担持体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境や人体に影響を及ぼす可能性がある有害ガスが問題視されるようになっている。例えば、自動車分野においては、特にディーゼル車などについて、排気ガスの規制が年々厳しくなっている。また、室内環境の分野においても、シックハウス症候群の原因となる、揮発性有機化合物(VOC)の使用が制限されている。
【0003】
このような有害ガスの除去方法としては、活性炭やゼオライトなどの吸着材を用いて有害ガスを吸着除去する方法(例えば、特許文献1)や、空気にオゾンを混合し、紫外線を照射することで発生する活性酸素によって有害ガスを分解する方法(例えば、特許文献2)、また、二酸化チタンなどの光触媒物質が持つ、強力な酸化分解作用を利用して、有害ガスや汚染物質などを分解除去する方法が検討されている(例えば、特許文献3)。さらに、遷移金属や貴金属の微粒子を酸化触媒体として利用する方法も検討されている(例えば、特許文献4)。
【特許文献1】特開昭58−133820号公報
【特許文献2】特開平6−385号公報
【特許文献3】特開平10−155887号公報
【特許文献4】特開平5−285386号公報
【特許文献5】特許第3932335号公報
【非特許文献1】Haruta, M., Yamada, N., Kobayashi, T., and Iijima, S., J.Catal.115,301(1989)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の有害ガスの除去方法には以下のような様々な問題がある。
【0005】
例えば、活性炭やゼオライトなどの吸着剤を用いて吸着除去する場合には、初期は高い吸着能を示しても、飽和状態になると性能が落ちるため、新しい吸着剤と交換したり、吸着剤を再生するためのシステムを併設するなどの必要がある。また、空気にオゾンを混合し、紫外線を照射することで発生する活性酸素によって有害ガスを分解する場合、大量の空気を処理する際の処理後の気体排出時に、微量のオゾンが同時に流出する可能性があり、不快なオゾン臭の発生や人体への影響が懸念される。
【0006】
さらに、遷移金属や貴金属の微粒子を酸化触媒体として利用すると、非常に高い効果が得られるが、表面エネルギーが大きく非常に凝固しやすいため、当該微粒子を多孔質の無機微粒子などに担持させる、などの方法を用いることが多い。しかしながら、これらの触媒粒子は無機物であり、焼結しか固定する方法がないため、基体の素材としては、焼結に耐えうるセラミックや金属などの素材で構成されるハニカム構造体や大きな粒状物に限定されてしまい、フィルターなどに応用する場合には用いる形状の制限がある、などの問題があった。
【0007】
また、触媒活性の高い遷移金属や貴金属触媒であっても、有害物質が原因で不活性化されることもある。例えば、白金触媒は一酸化炭素により被毒され、不活性化され易い。
【0008】
ここで、金は極めて安定であるために触媒的には不活性な金属であるとかつては考えられてきたが、近年、種々の触媒活性を示す金属であることが知られるようになっている。
【0009】
触媒を調製する方法としては、貴金属溶液に金属酸化物担体を浸漬する含浸法が一般的であり、この方法で触媒を調製すると、担体上に担持される金属粒子の平均粒径は、一般に60〜100nm程度となる。従来、酸化触媒のような触媒で用いられてきた貴金属、例えば白金などでは、このような粒径であっても充分な触媒活性を示すが、金を触媒として用いる場合には、充分な触媒活性を期待できる程度に金の粒径が小さい触媒を作製することは困難であった。そこで、金触媒を調整する方法としては、析出沈殿法が既に提案されている。この析出沈殿法では、触媒活性を示すほど小さい粒径の金を金属酸化物担体上に担持可能である(例えば、非特許文献1)。
【0010】
金触媒の特徴としては、室温などの低温でも触媒活性を示し、特に一酸化炭素には高い触媒活性を示す。このため、一酸化炭素により被毒されやすい白金触媒と組み合わせるなど、複数種類の触媒を組み合わせて用いることによって、より高性能の触媒の調製が可能である(例えば、特許文献5)。
【0011】
また、前述したように近年の環境への意識の高まりにより、有害ガスの浄化用や燃料電池用として貴金属触媒が用いられており、貴金属の価格が高騰している。そのため、少量で効率的に効果を発現する触媒が求められている。
【0012】
しかしながら、上記の触媒は粒状物質や活性炭や炭素繊維としては調製可能であるが、フィルター形状にするには強度が弱く、使用できないなどの問題があった。
【0013】
また、特許文献5に記載の触媒によれば、複数種類の触媒を組み合わせた触媒を得ることも可能となるが、触媒成分を担体に固定する方法が焼成のみであることから、担体は微細孔を持つ活性炭や炭素繊維等に限定され、スチールウールやSUSなど、表面がなめらかなものには充分な触媒活性を発現させるだけの微細な粒子径の触媒微粒子を強固に固定させるのが困難であった。
【0014】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、低温で、かつ、いかなる材質・形状の基体でも、表面に強固に固定できるため、基体に容易に触媒微粒子を固定でき、さらに、2種類以上の触媒を形成することにより、様々な形状や環境下で効率よく機能を発現する新規な複合化触媒担持体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、第1の発明は、基体と、シランモノマーが表面に結合し、シランモノマーと基体の表面との化学結合により基体に固定される無機微粒子と、無機微粒子の表面に担持された少なくとも2種類の触媒微粒子と、を有する複合化触媒担持体を提供するものである。
【0016】
また、第2の発明は、上記第1の発明において、シランモノマーは不飽和結合部を有するとともに、不飽和結合部を外側に向けて無機微粒子に結合し、無機微粒子は、シランモノマーの不飽和結合部と基体の表面との化学結合により基体に固定される複合化触媒担持体を提供するものである。
【0017】
また、第3の発明は、上記第1又は2の発明において、少なくとも2種類の触媒微粒子は、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、及びAuからなる群から選ばれた相異なる金属元素を各々含む複合化触媒担持体を提供するものである。
【0018】
さらに、第4の発明は、上記第1又は2の発明において、少なくとも2種類の触媒微粒子は、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、及びPtからなる群から選ばれた相異なる金属元素と、Auとを各々含む複合化触媒担持体を提供するものである。
【0019】
さらに、第5の発明は、上記第1から第4のいずれかの発明において、基体の少なくとも表面が樹脂である複合化触媒担持体を提供するものである。
【0020】
さらに、第6の発明は、上記第1から第5のいずれかの発明において、化学結合は、グラフト重合である複合化触媒担持体を提供するものである。
【0021】
さらに、第7の発明は、上記第6の発明において、グラフト重合は、放射線グラフト重合である複合化触媒担持体を提供するものである。
【0022】
さらに、第8の発明は、上記第1から第7の発明の複合化触媒担持体を用いてなる繊維構造体を提供するものである。
【0023】
さらに、第9の発明は、第8の発明の繊維構造体を用いてなるフィルターを提供するものである。
【0024】
さらに、第10の発明は、第8の発明の繊維構造体を用いてなるマスクを提供するものである。
【0025】
さらに、第11の発明は、第8の発明の繊維構造体を用いてなる防虫網を提供するものである。
【0026】
さらに、第12の発明は、第8の発明の繊維構造体を用いてなる衣類を提供するものである。
【0027】
さらに、第13の発明は、第1から第7の発明の複合化担持体を用いてなる内装材を提供するものである。
【0028】
さらに、第14の発明は、シランモノマーが表面に結合し、シランモノマーと基体の表面との化学結合により基体に固定される無機微粒子と、無機微粒子の表面に担持された少なくとも2種類の触媒微粒子とを有する複合化触媒担持体を製造する方法であって、少なくとも2種類の触媒微粒子の前駆体となる金属化合物を水に溶解させて、pHをコントロールすることにより金属化合物水溶液を調整する工程と、金属化合物水溶液の中に、無機微粒子が固定された基体を浸漬させ、加熱処理する工程と、を有する複合化触媒担持体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、触媒微粒子が担持された無機微粒子がシランモノマーと基体表面との化学結合を介して基体に固定されるので、低温でしかも充分な耐久性を保持する状態で固定することができるため、金属やセラミックなどの無機基体はもちろん、従来は不可能であった有機系の素材からなる部材を基体とする触媒担持体も提供することができる。さらに少なくとも2種類以上の触媒微粒子を複合化させることで触媒機能を効率よく発現することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下に、本発明の第1実施形態の複合化触媒担持体及びその製造方法について詳述する。
【0031】
図1は、本発明の第1実施形態の複合化触媒担持体100の模式図である。本実施形態の複合化触媒担持体100は、酸化触媒微粒子2−Aおよび酸化触媒微粒子2−Bを担持した無機微粒子20−Aが基体1へ化学結合5にて多数固定され、無機微粒子群10−Aを形成しているものである。
【0032】
本実施形態の無機微粒子20−Aの表面には、不飽和結合部を有するシランモノマー3−Aが結合している。不飽和結合部を有するシランモノマー3−Aは、不飽和結合部を無機微粒子20−Aの外側に向けて配向して結合しやすい。これは、シランモノマー3−Aの片末端であるシラノール基は親水性であるため、親水性である無機微粒子20−Aの表面に引きつけられやすく、一方、逆末端の不飽和結合部は疎水性であるため、無機微粒子20−Aの表面から離れようとするからである。このため、シランモノマー3−Aのシラノール基は、無機微粒子20−Aの表面に縮合反応により結合し、シランモノマー3−Aは不飽和結合を外側に向けて配向しやすい。したがって、多くのシランモノマー3−Aについては、不飽和結合を外側に向けて無機微粒子20−Aと結合しており、また、一部のシランモノマー3−Aについては、シラノール基を外側に向けて無機微粒子20−Aと結合している。
【0033】
そして、無機微粒子20−A同士は、互いのシランモノマーの不飽和結合が化学結合することにより、無機微粒子群10−Aを形成するとともに、無機微粒子群10−A内の無機微粒子20−Aのシランモノマー3−Aの不飽和結合もしくはシラノール基と基体1の表面とが化学結合して、基体1と無機微粒子群10−Aとが固定されることにより、本実施形態の複合化触媒担持体100は構成される。
【0034】
具体的なシランモノマー3−Aが有する不飽和結合部としては、ビニル基や、エポキシ基や、スチリル基や、メタクリロ基や、アクリロキシ基や、イソシアネート基などが挙げられる。
【0035】
本実施形態の複合化触媒担持体100で用いられるシランモノマー3−Aの例としては、ビニルトリメトキシシランや、ビニルトリエトキシシランや、ビニルトリアセトキシシランや、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランや、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩や、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランや、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランや、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランや、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランや、p−スチリルトリメトキシシランや、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランや、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランや、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランや、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランや、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランや、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0036】
シランモノマー3−Aは、一種もしくは二種以上混合して用いられる。シランモノマー3−Aの使用形態としては、必要量のシランモノマー3−Aを溶剤に溶解することにより用いられる。また、分散性を改善するために塩酸や、硝酸などの鉱酸が加えられる。
【0037】
シランモノマー3−Aの溶剤としては、エタノールやメタノールやプロパノールやブタノールなどの低級アルコール類や、蟻酸やプロピオン酸などの低級アルキルカルボン酸類や、トルエンやキシレンなどの芳香族化合物や、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類や、メチルセルソルブやエチルセルソルブなどのセルソルブ類や水を単独または複数組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本実施形態の複合化触媒担持体100に用いられる無機微粒子20−Aは、前述したシランモノマー3−Aの溶液に分散した状態で製造に用いられる。無機微粒子20−Aの分散は、ホモミキサーやマグネットスターラーなどを用いた撹拌分散や、ボールミルやサンドミルや高速回転ミルやジェットミルなどを用いた粉砕・分散、超音波を用いた分散などにより行われる。
【0039】
シランモノマー3−Aは、その量が多いほど無機微粒子20−Aは強固な層を形成可能であり、耐久性も向上する。しかしながら、シランモノマー3−Aの量が多くなると、酸化触媒微粒子2‐Aおよび酸化触媒微粒子2‐Bや無機微粒子20−Aの表面を被覆してしまう割合が大きくなるため、酸化触媒としての機能が低下してしまう。また、シランモノマー3−Aも不飽和結合を持った状態で配向できなくなる上に、微粒子同士が凝集しやすくなるため、均一に分散できなくなる。特に、シランモノマー3−Aの質量が無機微粒子20−Aの質量に対して40質量%より多くなると、酸化触媒としての機能の低下と無機微粒子20−Aの分散性低下が顕著になる。したがって、耐久性の向上と無機微粒子20−Aの分散が均一にできる範囲としては、0.01質量%以上40質量%以下、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは5質量%以上20質量%以下となる。
【0040】
また、無機微粒子20−Aからなる無機微粒子群10−Aが厚くなると、無機微粒子群10−Aの応力や使用環境によっては凝集破壊により無機微粒子群10−Aが劣化することもある。そのため、シランモノマー3−Aの質量と合計した場合の質量が、無機微粒子20−Aの質量に対して40質量%以内であれば、必要に応じて次の化合物を配合してもよい。例えば、不飽和結合を有するシランカップリング剤や、Si(OR1)4(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示す)で示されるアルコキシシラン化合物、一例として、テトラメトキシシランや、テトラエトキシシランなどや、R2Si(OR3)4-n(式中、R2は炭素数1〜6の炭化水素基、R3は炭素数1〜4のアルキル基、nは1〜3の整数を示す)で示されるアルコキシシラン化合物、一例として、メチルトリメトキシシランや、メチルトリエトキシシランや、ジメチルジエトキシシランや、フェニルトリエトキシシランや、ヘキサメチルジシラザンや、ヘキシルトリメトキシシランなど、他にアルコキシオリゴマーなどが挙げられる。
【0041】
さらにまた、シランモノマー3−Aの質量と合計した場合の質量が、無機微粒子20−Aの質量に対して40質量%以内であれば無機微粒子群10−Aの強度向上のために、無機微粒子20−Aを被覆しているシランモノマー3−Aの反応性基と化学的に結合しうる反応サイト、例えば、ビニル基や、エポキシ基や、スチリル基や、メタクリロ基や、アクリロキシ基や、イソシアネート基、チオール基等の不飽和基やアルコキシル基を分子の構成要素として保有しているモノマーやオリゴマーを添加しても良い。
【0042】
本実施形態の複合化触媒担持体100に用いられる、酸化触媒微粒子2−Aおよび酸化触媒微粒子2−Bを担持する無機微粒子20−Aとしては、無機酸化物であれば特に限定されるものではないが、例えば、チタニアや、ジルコニアや、アルミナや、セリアや、ゼオライトや、シリカや、活性炭や、アパタイトや、珪藻土などが挙げられる。
【0043】
ここで、図2に示すように無機微粒子20−Aを積層させ、無機微粒子群10−Aを形成してもよい。この場合、基材1表面への無機微粒子20−Aの担持量が増えるため、酸化触媒微粒子3−A並びに3−Bの担持量も増え、その結果、より優れた触媒微粒子触媒活性を得ることができる。
【0044】
また、図3に示す無機微粒子20−Bのように、無機微粒子群10−Bを構成するすべての無機微粒子が、その表面にシランモノマー3−Aを結合した無機微粒子20−Aでなくてもよい。この構成により、シランモノマー3−Aが存在することにより、反応させたい物質が触媒と接触する確率が低下するため、無機微粒子20−Bを必要な耐久性が得られる割合で混合することで、より優れた触媒活性が得ることが可能となる。
【0045】
また、用途によっては、図4に示すように、表面にシランモノマー3−Aのみが結合した無機微粒子20−Cからなる無機微粒子群30上に新たな無機微粒子群10−Cを形成してもよい。触媒反応は担持体表面で起こるため、このように、表面にシランモノマー3−Aが結合されていない無機微粒子20−Bを配置することで、より効率よく触媒が機能することが可能となる。
【0046】
また、その際、結合力を向上させるために、図5に示すように、無機微粒子群10−Cの無機微粒子20−Bと無機微粒子群30の新たな無機微粒子20−Cとはシランモノマー3−Bを介して結合してあってもよい。
【0047】
また、無機微粒子20−Aは2種類以上の無機微粒子を複合させてもよい。例えば、バンドギャップ以上のエネルギーを有する波長の光を照射することにより、光触媒機能を発現する光触媒微粒子を複合化してもよい。光触媒微粒子としては、二酸化チタンや、酸化亜鉛や、酸化タングステンや、酸化鉄や、チタン酸ストロンチウムや、硫化カドミウムや、セレン化カドミウムなどの公知の金属化合物半導体が挙げられるが、透明性、耐久性に優れ、無害である二酸化チタンが、特に好ましい。当該光触媒微粒子を複合化することにより、複合化触媒担持体100は、酸化触媒微粒子2−Aおよび酸化触媒微粒子2−Bの作用する温度以下であっても、酸化触媒機能を発現し、さらに、複合化触媒の活性が低下してもその触媒性能を回復させることが可能である。
【0048】
また、放射性稀有元素を微量含有する天然放射性稀有元素鉱物を複合化してもよい。放射性稀有元素を微量含有する天然放射性稀有元素鉱物としては、例えば、デービト鉱や、センウラン鉱や、ブランネル石や、ニンギョウ石や、リンカイウラン石や、カルノー石や、ツャムン石や、メタチャムン石や、フランセビル石や、トール石や、コフィン石や、サマルスキー石や、トリウム石や、トロゴム石や、サマルスキー石や、トリウム石や、トロゴム石や、モナズ石や、タンタル石や、バデライトや、イルメナイトなどが挙げられる。さらに、天然放射性稀有元素鉱物の使用量を少なくするために、トルマリンなどの自発分極を有する材料などが含まれていてもよい。
【0049】
天然放射性稀有元素鉱物は、含有する微量の放射性稀有元素が放つα線の電離作用により、スーパーオキシドアニオンやヒドロキシラジカル、一重項酸素などの活性酸素を生成し、該活性酸素により酸化反応が行われるため、複合化触媒担持体100の触媒機能および耐久性を更に向上させる。
【0050】
本実施形態の複合化触媒担持体100に用いられる酸化触媒微粒子2−Aおよび酸化触媒微粒子2−Bは、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、Auなどの貴金属及びこれら貴金属の酸化物などである。本実施形態の複合化触媒担持体100には、少なくとも2種類の酸化触媒微粒子を担持させる必要がある。少なくとも2種類の酸化触媒微粒子の組み合わせは特に限定されるものではないが、Auと他の貴金属を組み合わせることで室温から高温まで広範囲の温度領域において、効率よく触媒性能を発現させることが可能である。
【0051】
ここで、酸化触媒微粒子2−Aおよび酸化触媒微粒子2−Bを作製する方法としては、触媒機能を有する金属(すなわち、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、又はAuなど)の水酸化物を誘導した後、加熱処理をすることにより酸化触媒微粒子2−Aおよび酸化触媒微粒子2−Bを生成させる方法、または、酸化触媒機能を有する金属の金属化合物水溶液に還元剤を滴下させることにより還元させる方法が好適である。
【0052】
上記方法で作製することにより触媒微粒子の粒子径が小さくなり、ナノメートルレベルの粒子径を有する2種類以上の触媒微粒子が散在する複合化効果が発現される。ナノメートルレベルの粒子径を有する触媒微粒子が形成されるメカニズムは、金属化合物を溶解させた水溶液のpHをコントロールすることで、金属化合物を溶解させた金属イオンと基材表面に固定した無機微粒子のゼータ電位を制御し、金属イオンを静電的な引力により無機微粒子表面に付着させる、というものである。この方法を用いると、電気的に金属イオンの散在状況をコントロールすることができるので、無機微粒子表面に付着した金属イオンをナノメートルレベルで制御することが可能となり、このナノメートルレベルの金属イオンを加熱し、金属及び金属酸化物にすることで、ナノメートルレベルの触媒微粒子が形成できる。
【0053】
具体的な例としては、2種類の酸化触媒微粒子2−Aおよび酸化触媒微粒子2−Bを、無機微粒子20−Aに固定する方法は、酸化触媒微粒子2−A及び酸化触媒微粒子2−Bの前駆体となる金属化合物を水に溶解させて調整された金属化合物水溶液を生成し、水酸化ナトリウムなどでpHを制御し、金属化合物水溶液の中に、無機微粒子20−Aをコーティングした基体1を浸漬させ、所定時間反応させた後、加熱することで無機微粒子20−Aに酸化触媒微粒子2−A及び酸化触媒微粒子2−Bが担持される。
【0054】
また、他の方法としては、酸化触媒機能を有する1種類の金属の金属化合物から調整された金属化合物水溶液から1つ目の酸化触媒微粒子2−Aを調製して無機微粒子20−Aをコーティングした基体1を浸漬させ、続いて酸化触媒機能を有する別の金属の金属化合物から調整された金属化合物水溶液から2つ目の酸化触媒微粒子2−Bを調製して無機微粒子20−Aをコーティングした基体1を浸漬させる方法なども挙げられる。
【0055】
酸化触媒微粒子2‐A及び酸化触媒微粒子2‐Bの前駆体となる金属化合物としては、例えば、(NH42PdCl4や、K2PdCl4や、K2PdBr4や、Na2PdBr4や、H2PtCl4・6H2Oや、K2PtCl4や、(NH42PtCl4や、Na2Pt(CN)4や、Na2PtCl4や、K2Pt(NO24や、(NH42PtCl6や、PtCl4・5H2Oや、K2PtBr4や、Na2PtBr4や、H2AuCl4・4H2Oや、NH4AuCl4や、KAuCl4・nH2Oや、KAu(CN)4や、Na2AuCl4や、KAuBr4・2H2Oや、NaAuBr4などが挙げられる。
【0056】
本実施形態の複合化触媒担持体100に用いられる基体1を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、各種樹脂や、合成繊維や、天然繊維や、金属材料や、ガラスや、セラミックなどが挙げられる。
【0057】
ここで、基体1の表面を構成する樹脂の例としては、ポリエチレン樹脂や、ポリプロピレン樹脂や、ポリスチレン樹脂や、ABS樹脂や、AS樹脂や、EVA樹脂や、ポリメチルペンテン樹脂や、ポリ塩化ビニル樹脂や、ポリ塩化ビニリデン樹脂や、ポリアクリル酸メチル樹脂や、ポリ酢酸ビニル樹脂や、ポリアミド樹脂や、ポリイミド樹脂や、ポリカーボネート樹脂や、ポリエチレンテレフタレート樹脂や、ポリブチレンテレフタレート樹脂や、ポリアセタール樹脂や、ポリアリレート樹脂や、ポリスルホン樹脂や、ポリフッ化ビニリデン樹脂や、ETFEや、PTFEなどの熱可塑性樹脂や、ポリ乳酸樹脂や、ポリヒドロキシブチレート樹脂や、修飾でんぷん樹脂や、ポリカプロラクト樹脂や、ポリブチレンサクシネート樹脂や、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂や、ポリブチレンサクシネートテレフタレート樹脂や、ポリエチレンサクシネート樹脂などの生分解性樹脂や、フェノール樹脂や、ユリア樹脂や、メラミン樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂や、ジアリルフタレート樹脂や、エポキシ樹脂や、エポキシアクリレート樹脂や、ケイ素樹脂や、アクリルウレタン樹脂や、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂や、シリコーン樹脂や、ポリスチレンエラストマーや、ポリエチレンエラストマーや、ポリプロピレンエラストマーや、ポリウレタンエラストマーなどのエラストマーや、漆などの天然樹脂などが挙げられる。
【0058】
本実施形態では、これらの基体1の形態は、板状や、フィルム状や、繊維状や、布状や、メッシュ状や、ハニカム状、綿状など、使用目的に合った種々の形状及びサイズ等のものが適用でき、特に制限されるものではないことから、本実施形態の複合化触媒担持体100を、例えば自動車マフラーや排気ガス処理用のフィルター、火力発電所や各種工場などから排出される有害ガスフィルターなどに用いることができる。また、空気清浄機、温風器、ドライヤー、電気掃除機、扇風機、エアコン、換気扇などの各種電気製品用のフィルターや、インテリア材、壁紙、防虫網、裁断可能な多目的シートなどに用いることにより、VOCなどの室内ガスを分解除去できるため、室内環境の向上も図ることができる。また、本実施形態の複合化触媒担持体100を繊維構造体や内装材に用いることもでき、この繊維構造体をフィルター、マスク、防虫網及び衣類に用いることも可能である。
【0059】
つづいて、無機微粒子20−Aを基体1上に固定させる方法について説明する。まず、基体1の表面が有機材料の場合について説明する。本実施形態の複合化触媒担持体100の無機微粒子20−Aは、無機微粒子20−Aを被覆するシランモノマー3−Aの不飽和結合部と基体1との化学結合5により、基体1上に固定される。化学結合5の中でもグラフト重合により固定することで、より強固に無機微粒子20−Aを基体1上に固定することが可能である。なお、シランモノマー3−Aのグラフト重合を効率良く、かつ、均一に行わせるために、予め、コロナ放電処理や、プラズマ放電処理や、火炎処理や、クロム酸や過塩素酸などの酸化性酸水溶液や水酸化ナトリウムなどを含むアルカリ性水溶液による化学的な処理などにより、基体1の樹脂表面を親水化処理してもよい。
【0060】
次に、基体1の表面が無機材料の場合について説明する。本実施形態の複合化触媒担持体100の無機微粒子20−Aは、無機微粒子20−Aを被覆するシランモノマー3−Aのシラノール基と基体1との化学結合5により、基体1上に固定される。上記と同様に化学結合5の中でもグラフト重合により固定することで、より強固に無機微粒子20−Aを基体1上に固定することが可能である。
【0061】
本実施形態におけるグラフト重合としては、例えばパーオキサイド触媒を用いるグラフト重合や、熱や光エネルギーを用いるグラフト重合や、放射線によるグラフト重合などが挙げられる。このうち、重合プロセスの簡便性や、生産スピード等の観点より、放射線グラフト重合が特に適している。ここで、グラフト重合において用いられる放射線としては、α線や、β線や、γ線や、電子線や、紫外線などを挙げることができるが、本実施形態において用いるのには、γ線や、電子線や、紫外線が特に適している。
【0062】
最後に、無機微粒子20−Aが分散した溶液を、基体1の表面に、一般に行われているコーティング方法である、スピンコート法や、ディップコート法や、スプレーコート法や、キャストコート法や、バーコート法や、マイクログラビアコート法や、グラビアコート法や、または部分的に塗布する方法として、スクリーン印刷法や、パッド印刷法や、オフセット印刷法や、ドライオフセット印刷法や、フレキソ印刷法や、インクジェット印刷法などで塗布した後、放射線を照射し、無機微粒子20−Aをグラフト重合によって固定して製造する。
【0063】
(第2実施形態)
以下に、本発明の第2実施形態の複合化触媒担持体について図6を用いて詳述する。
【0064】
図6は、本発明の第2実施形態の複合化触媒担持体200の模式図である。本実施形態の複合化触媒担持体200は、無機微粒子20−Aに担持された酸化触媒微粒子2−Aの表面上に、酸化触媒微粒子2−Bが固定されている点が本発明の第1実施形態の複合化触媒担持体100と相違する。なお、図6では本発明の第2実施形態の一例を判りやすく模式的に示すため、無機微粒子20−Aや触媒微粒子群10−Aを単層で形成した図であらわしたが、第1実施形態と同様に様々な形態を形成することが可能である。
【0065】
ここで、酸化触媒微粒子2−Aの上に、酸化触媒微粒子2−Bを固定する方法としては、酸化触媒微粒子2−Aを形成する金属の水酸化物を誘導した後、加熱処理をすることにより酸化触媒微粒子2−Aを無機微粒子20−Aに担持する。その後、酸化触媒微粒子2−Bを形成する金属の金属化合物を水に溶解させ、金属化合物が溶解した水溶液に還元剤を滴下させることにより、酸化触媒微粒子2−Aの上に酸化触媒微粒子2−Bを溶液中で還元させる方法が挙げられる。
【0066】
以上説明したように、本発明の各実施形態の複合化触媒担持体によれば、触媒微粒子が担持された無機微粒子がシランモノマーと基体表面との化学結合を介して基体に固定されるので、低温でしかも充分な耐久性を保持する状態で固定することが可能となる。これにより、金属やセラミックなどの無機基体はもちろん、従来は不可能であった有機系の素材からなる部材を基体とする触媒担持体も提供することが可能となる。さらに少なくとも2種類以上の触媒微粒子を複合化させることで触媒機能を効率よく発現することが可能となる。
【0067】
また、本発明の各実施形態の複合化触媒担持体によれば、触媒微粒子が担持された無機微粒子がシランモノマーと基体表面との化学結合を介して基体に固定されるので、フィルター形状にした場合にも十分な強度を得ることが可能となり、基体に限定はなく、スチールウールやSUSなど、表面がなめらかなものには充分な触媒活性を発現させるだけの微細な粒子径の触媒微粒子を強固に固定させることが可能となる。
【実施例】
【0068】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0069】
下記実施例1〜実施例12の試料である複合化触媒担持体の製造にあたっては、岩崎電気株式会社製、エレクトロカーテン型電子線照射装置、CB250/15/180L、を用い、電子線グラフト重合により実施した。
【0070】
(実施例1)
無機微粒子として市販の二酸化チタン微粒子(テイカ株式会社製、MT−100HD)をメタノールに対して10.0質量%、シランモノマーとして3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503)を無機微粒子に対して5.0質量%加えてpHを3.0に塩酸で調製した後、ビーズミルにより平均粒子径18nmに粉砕分散した。その後、凍結乾燥機により固液分離して120℃で加熱し、シランモノマーを二酸化チタン微粒子の表面に脱水縮合反応により化学結合させて被覆を形成した。得られた表面処理された二酸化チタン微粒子をメタノールに10.0質量%に調製し、ビーズミルにより平均粒子径16nmに再度粉砕分散した。
【0071】
また、PET製不織布(東洋紡)を、上記粉砕分散溶液に浸漬させ、エアーブロアーで余剰分を除去した後、120℃、3分間乾燥した。次に、二酸化チタン微粒子分散液を塗布したPET製不織布に電子線を200kVの加速電圧で5Mrad照射することで、二酸化チタン微粒子をシランモノマーのグラフト重合によりPET製不織布に結合させた前駆体を得た。
【0072】
続いて、0.1mmolのH2AuCl4・4H2Oを100mlの水に溶解させ、70℃に加温してNaOH水溶液でpH7に調製し、上記前駆体を浸漬させ、1時間攪拌した。その後、水溶液からPET製不織布を取り出し、減圧乾燥して、窒素雰囲気下、100℃で4時間加熱し、Au担持PET製不織布を調製した。
【0073】
さらに、0.02mmolの(NH4)2PdCl4を500mlの水に溶解させ、70℃に加温してNaOH水溶液でpH8に調製し、上記調製したAu担持PET製不織布を浸漬させ、1時間攪拌した。その後、水溶液からPET製不織布を取り出し、減圧乾燥して、窒素雰囲気下、100℃で4時間加熱し、複合化触媒担持PET製不織布を調製した。
【0074】
(実施例2)
無機微粒子として市販のジルコニア微粒子(日本電工株式会社製、PCS)をメタノールに対して10.0質量%、シランモノマーとして3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503)を無機微粒子に対して5.0質量%加えてpHを3.0に塩酸で調製した後、ビーズミルにより平均粒子径20nmに粉砕分散した。その後、凍結乾燥機により固液分離して120℃で加熱し、シランモノマーをジルコニア微粒子の表面に脱水縮合反応により化学結合させて被覆を形成した。得られた表面処理されたジルコニア微粒子をメタノールに10.0質量%に調製し、ビーズミルにより平均粒子径17nmに再度粉砕分散した。
【0075】
また、PET製不織布(東洋紡)を、上記粉砕分散溶液に浸漬させ、エアーブロアーで余剰分を除去した後、120℃、3分間乾燥した。次に、ジルコニア微粒子分散液を塗布したPET製不織布に電子線を200kVの加速電圧で3Mrad照射することで、ジルコニア微粒子をシランモノマーのグラフト重合によりPET製不織布に結合させた前駆体を得た。
【0076】
続いて、0.05mmolの(NH42PdCl4を500mlの水に溶解させ、70℃に加温してNaOH水溶液でpH8に調製し、上記前駆体を浸漬させ、1時間攪拌した。その後、水溶液からPET製不織布を取り出し、減圧乾燥して、窒素雰囲気下、100℃で4時間加熱し、Pd担持PET製不織布を調製した。
【0077】
さらに、0.1mmolのH2AuCl4・4H2Oを100mlの水に溶解させ、70℃に加温してNaOH水溶液でpH7に調製し、Pd担持PET製不織布を浸漬させ、1時間攪拌した。その後、水溶液からPET製不織布を取り出し、減圧乾燥して、窒素雰囲気下、100℃で4時間加熱し、複合化触媒担持PET製不織布を調製した。
【0078】
(実施例3)
無機微粒子として市販のジルコニア微粒子(日本電工株式会社製、PCS)をメタノールに対して10.0質量%、シランモノマーとして3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503)を無機微粒子に対して10.0質量%加えてpHを3.0に塩酸で調製した後、ビーズミルにより平均粒子径19nmに粉砕分散した。その後、凍結乾燥機により固液分離して120℃で加熱し、シランモノマーをジルコニア微粒子の表面に脱水縮合反応により化学結合させて被覆を形成した。得られた表面処理されたジルコニア微粒子をメタノールに10.0質量%に調製し、ビーズミルにより平均粒子径18nmに再度粉砕分散した。
【0079】
上記再度粉砕分散した溶液と市販のジルコニアゾル(第一稀元素化学工業株式会社製、ZSL−10T)とを質量比で2:8で混合し、コーティング液を調製した。その後は実施例2と同様の手順でサンプルを作製した。
【0080】
(実施例4)
実施例1において、Au担持PET製不織布を調製するまでは同様の手順で作製する。次に、0.02mmolの(NH42PdCl4を500mlの水に溶解させ、0.2mmolの水素化ホウ素ナトリウムを100mlの水に溶解させた溶液を滴下する。その後、サンプルを減圧乾燥し、複合化触媒担持PET製不織布を調製した。
【0081】
(実施例5)
実施例2の(NH42PdCl4のかわりにH2PtCl4・6H2Oを用いた以外は実施例2と同様の手順でサンプルを作製した。
【0082】
(実施例6)
実施例4において、0.05mmolのH2PtCl4・6H2Oと0.1mmolのH2AuCl4・4H2Oを500mlの水に溶解させて調製した以外は実施例4と同様の手順でサンプルを作製した。
【0083】
(実施例7)
実施例2のPET製不織布のかわりにポリイミド製綿状物を用いた以外は実施例2と同様の手順でサンプルを作製した。
【0084】
(実施例8)
無機微粒子として市販の二酸化チタン微粒子(テイカ株式会社製、MT−100HD)をメタノールに対して10.0質量%、シランモノマーとして3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503)を無機微粒子に対して3.0質量%加えてpHを3.0に塩酸で調製した後、ビーズミルにより平均粒子径17nmに粉砕分散した。その後、凍結乾燥機により固液分離して120℃で加熱し、シランモノマーを二酸化チタン微粒子の表面に脱水縮合反応により化学結合させて被覆を形成した。得られた表面処理された二酸化チタン微粒子をメタノールに10.0質量%に調製し、ビーズミルにより平均粒子径14nmに再度粉砕分散した。
【0085】
また、ETFE製80メッシュを3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの濃度が1%であるメタノール溶液に浸漬させ、120℃、3分間乾燥をした。その後、上記粉砕分散溶液に浸漬させ、120℃、3分間乾燥した。次に、市販の二酸化チタンゾル(テイカ株式会社製、TKS−201)を1%に希釈した溶液に浸漬させ、120℃、30分間乾燥した。その後、電子線を200kVの加速電圧で5Mrad照射することで、二酸化チタン微粒子をETFE製80メッシュに結合させた前駆体を得た。
【0086】
その後、二酸化チタン微粒子が結合したETFE製80メッシュに触媒を担持する方法は、実施例2と同様の手順でサンプルを作製した。
【0087】
(実施例9)
実施例2のPET製不織布のかわりにガラスウール(株式会社大興製作所製)を用いた以外は実施例2と同様の手順でサンプルを作製した。
【0088】
(実施例10)
無機微粒子として市販のジルコニア微粒子(日本電工株式会社製、PCS)をメタノールに対して10.0質量%、シランモノマーとして3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503)を無機微粒子に対して3.0質量%加えてpHを3.0に塩酸で調製した後、ビーズミルにより平均粒子径18nmに粉砕分散した。その後、凍結乾燥機により固液分離して120℃で加熱し、シランモノマーをジルコニア微粒子の表面に脱水縮合反応により化学結合させて被覆を形成した。得られた表面処理されたジルコニア微粒子をメタノールに10.0質量%に調製し、ビーズミルにより平均粒子径16nmに再度粉砕分散した。
【0089】
また、スチールウール(日本スチールウール株式会社製、ボンスター)を、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−803)の濃度が1%であるメタノール溶液に浸漬させ、150℃、1時間加熱をした。その後、上記粉砕分散溶液に浸漬させ、120℃、3分間乾燥した。次に、ジルコニア微粒子分散液を塗布したスチールウールに電子線を200kVの加速電圧で5Mrad照射することで、ジルコニア微粒子をスチールウールに結合させた前駆体を得た。
【0090】
その後、ジルコニア微粒子が結合したスチールウールに触媒を担持する方法は、実施例2と同様の手順でサンプルを作製した。
【0091】
(実施例11)
実施例9のスチールウールのかわりに金属製500メッシュを用いた以外は実施例9と同様の手順でサンプルを作製した。
【0092】
(実施例12)
実施例6において、さらに0.1mmolのIrCl3を100mlの水に溶解させ、70℃に加温してNaOH水溶液でpH8に調製し、実施例2で調製したサンプルを浸漬させ、1時間攪拌した。その後、水溶液からPET製不織布を取り出し、減圧乾燥して、窒素雰囲気下、100℃で4時間加熱し、サンプルを調製した。
【0093】
(比較例1)
2PtCl4・6H2Oの1%水溶液にセラミックハニカムを浸漬させ、500℃で3時間焼結してサンプルを得た。
【0094】
(比較例2)
実施例2において、H2AuCl4・4H2Oのみを調製した以外は実施例2と同様の手順でサンプルを作製した。
【0095】
(比較例3)
実施例2において、(NH42PdCl4のみを調製した以外は実施例2と同様の手順でサンプルを作製した。
【0096】
<担持率>
複合化触媒担持サンプル質量に対する各触媒種の金属質量割合を誘導結合プラズマ発光分光分析装置により測定した。
【0097】
【表1】



【0098】
なお、表1中の沈殿は析出沈殿法を示し、還元は析出還元法を示し、含浸は含浸法を示す。
【0099】
<一酸化炭素の酸化反応率>
調製した試料3cm3をアルミ容器に入れた後、1000ppm程度の濃度の一酸化炭素を0.2L/minで通過するようにアルミ容器内を通過させる。アルミ容器内を通過した気体をテドラーパックに密封し、テドラーパック内の一酸化炭素濃度をガスクロマトグラフィー(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いて測定した。この時、触媒と一酸化炭素ガスとが接触する部分の温度を25℃及び100℃に保ち試験を行った。
【0100】
CO酸化反応率(%)={〔(接触前の一酸化炭素濃度)−(接触後の一酸化炭素濃度)〕/(接触前の一酸化炭素濃度)}×100
【0101】
【表2】



【0102】
上記の結果より、本実施例で得られた複合化触媒担持体は、従来品であるセラミックハニカム及び1種類の金属から調製された触媒担持体と比べ、同程度の金属担持量でより高い触媒活性を有していることから、本実施例の触媒担持体はより触媒機能が優れていると言える。また、本実施例のようにAuを主触媒として構成する触媒担持体は、25℃という低温領域においても優れた触媒活性を有していることがわかる。
【0103】
<ホルムアルデヒドの分解率>
調製した試料3cm3をアルミ容器に入れた後、50ppm程度の濃度のホルムアルデヒドを0.2L/minで通過するようにアルミ容器内を通過させる。アルミ容器内を通過した気体をテドラーパックに密封し、テドラーパック内の一酸化炭素濃度をガスクロマトグラフィー(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いて測定した。この時、触媒と一酸化炭素ガスとが接触する部分の温度を25℃、50℃、75℃、100℃に保ち試験を行った。
【0104】
ホルムアルデヒド分解率(%)={〔(接触前のホルムアルデヒド濃度)−(接触後のホルムアルデヒド濃度)〕/(接触前のホルムアルデヒド濃度)}×100
【0105】
【表3】



【0106】
上記の結果より、VOCであるホルムアルデヒドの分解においても本発明の複合化触媒担持体は、1種類の金属から調製された比較例の触媒担持体と比べ、より低い温度から触媒活性が優れていることがわかり、VOCに対しても有効であると言える。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の第1実施形態の複合化触媒担持体の模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態の複合化触媒担持体の他の例の模式図である。
【図3】本発明の第1実施形態の複合化触媒担持体の他の例の模式図である。
【図4】本発明の第1実施形態の複合化触媒担持体の他の例の模式図である。
【図5】本発明の第1実施形態の複合化触媒担持体の他の例の模式図である。
【図6】本発明の第2実施形態の複合化触媒担持体の模式図である。
【符号の説明】
【0108】
100 :複合化触媒担持体
1 :基体
2−A :酸化触媒微粒子
2−B :酸化触媒微粒子
3−A :シランモノマー
3−B :シランモノマー
5 :化学結合
10−A:触媒微粒子群
10−B:触媒微粒子群
10−C:触媒微粒子群
20−A:シランモノマー、触媒微粒子群が結合した無機微粒子
20−B:触媒微粒子群が結合した無機微粒子
20−C:シランモノマーが結合した無機微粒子
30 :無機微粒子群
200 :複合化触媒担持体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
シランモノマーが表面に結合し、前記シランモノマーと前記基体の表面との化学結合により前記基体に固定される無機微粒子と、
前記無機微粒子の表面に担持された少なくとも2種類の触媒微粒子と、
を有することを特徴とする複合化触媒担持体。
【請求項2】
前記シランモノマーは不飽和結合部を有するとともに、該不飽和結合部を外側に向けて前記無機微粒子に結合し、
前記無機微粒子は、前記シランモノマーの不飽和結合部と前記基体の表面との化学結合により前記基体に固定されることを特徴とする請求項1に記載の複合化触媒担持体。
【請求項3】
前記少なくとも2種類の触媒微粒子は、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、及びAuからなる群から選ばれた相異なる金属元素を各々含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の複合化触媒担持体。
【請求項4】
前記少なくとも2種類の触媒微粒子は、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、及びPtからなる群から選ばれた相異なる金属元素と、Auとを各々含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の複合化触媒担持体。
【請求項5】
前記基体の少なくとも表面が樹脂であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の複合化触媒担持体。
【請求項6】
前記化学結合は、グラフト重合であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の複合化触媒担持体。
【請求項7】
前記グラフト重合は、放射線グラフト重合であることを特徴とする請求項6に記載の複合化触媒担持体。
【請求項8】
請求項1から7に記載の複合化触媒担持体を用いてなる繊維構造体。
【請求項9】
請求項8に記載の繊維構造体を用いてなるフィルター。
【請求項10】
請求項8に記載の繊維構造体を用いてなるマスク。
【請求項11】
請求項8に記載の繊維構造体を用いてなる防虫網。
【請求項12】
請求項8に記載の繊維構造体を用いてなる衣類。
【請求項13】
請求項1から7に記載の複合化触媒担持体を用いてなる内装材。
【請求項14】
基体と、シランモノマーが表面に結合し、前記シランモノマーと前記基体の表面との化学結合により前記基体に固定される無機微粒子と、前記無機微粒子の表面に担持された少なくとも2種類の触媒微粒子とを有する複合化触媒担持体を製造する方法であって、
前記少なくとも2種類の触媒微粒子の前駆体となる金属化合物を水に溶解させて、pHを制御することにより金属化合物水溶液を調整する工程と、
前記金属化合物水溶液の中に、前記無機微粒子が固定された前記基体を浸漬させ、加熱処理する工程と、
を有することを特徴とする複合化触媒担持体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−5568(P2010−5568A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169381(P2008−169381)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(391018341)株式会社NBCメッシュテック (59)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【Fターム(参考)】