説明

複合型変圧器

【課題】磁気エネルギーの損失を低減させ、かつ、更なる小型化を図ることができる複合型変圧器を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明は、トランス用磁脚部23を複数有するトランスコア20と、インダクタ用磁脚部37を有する複数のインダクタコア30と、トランス用磁脚部23とインダクタ用磁脚部37とに巻き回しされる複数の巻線10とを備えた複合型変圧器1aであり、トランスコア20は、一対のトランス用基部を備えることにより閉磁路を構成し、複数のインダクタコア30は、インダクタ用磁脚部と一対のインダクタ用基部とを備えることにより閉磁路が構成され、複数の巻線10がトランス用磁脚部23に生じる磁束の磁束方向がいずれの組み合わせをとっても、トランスコア20における閉磁路において互いに打ち消すように巻き回しされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合型変圧器であり、特に、磁気エネルギーの損失が少なく、かつ、小型化された複合型変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DC/DC(Direct Current/Direct Current)コンバータなどの電力変換回路の技術分野において、様々な発明が提案されている。
たとえば、下記特許文献1には、巻線から生じる磁束の磁束方向が互いに打ち消すように複数の巻線が配列された磁気相殺変圧器(以下、単に「トランス」ともいう。)を用いたDC/DCコンバータが開示されている。
また、下記特許文献2には、上記する磁気相殺変圧器を改良したものとして、トランス用の巻線と昇降圧用インダクタに用いられる巻線とを共用化して、トランスとインダクタとが構造的に一体化した複合型変圧器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−214058号公報
【特許文献2】特開2009−284647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術である複合型変圧器によれば、トランスコアの一部である中央磁脚部(特許文献2の図3及び図4の「中央磁脚部61a」を参照。)に対し、二つの巻線が互いに交互に重なるように巻き回すように構成されていた。
よって、中央磁脚部に巻き回しされる二つの巻線を、中央磁脚部の両側に設けられたインダクタコアに巻き回しする場合、従来技術のように、中央磁脚部を中心として、インダクタコアが設けられた両側に巻線が突出する構成となっていた。
そのため、中央磁脚部を中心に巻き回しされる巻線を2つ以上にしようとする場合、そのレイアウトには物理的制約が多く、巻線の多並列化が困難であるという課題があった。
さらに、二つの巻線が巻き回しされる中央磁脚部において、トランスコアの飽和磁束密度を超える磁束の過密化を招き、磁気エネルギーの損失が生じるという課題があった。
【0005】
また、従来技術である複合型変圧器によれば、インダクタ用コイルとトランス用コイルとを共用しているため、インダクタ用コイルとトランス用コイルとを別個に設けた場合に比べ小型化が図れているものの、複合型変圧器は小型化されればされるほど好ましく、更なる複合型変圧器の小型化が望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、前記背景に鑑みて創案された発明であって、複数の巻線が並列して配置される複合型変圧器であり、さらに、磁気エネルギーの損失を低減させ、かつ、更なる小型化を図ることができる複合型変圧器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本願発明に係る複合型変圧器は、複数の巻線と、前記巻線の軸線方向に延び、前記巻線が巻き回し可能なトランス用磁脚部を複数有するトランスコアと、前記巻線の軸線方向に延び、前記巻線が巻き回し可能なインダクタ用磁脚部を有するとともに、前記インダクタ用磁脚部が前記トランス用磁脚部に対して、前記巻線の軸線に直交する方向に隣り合うように配置される複数のインダクタコアとを備え、前記複数の巻線が、前記トランス用磁脚部と前記インダクタ用磁脚部とから構成される磁脚部に巻き回しされ、通電により前記トランス用磁脚部と前記インダクタ用磁脚部に磁束を生じ、単一のトランスと複数のインダクタとが構成される複合型変圧器であり、前記トランスコアは、前記巻線の軸線に直交する方向に配列される前記複数のトランス用磁脚部と、前記複数のトランス用磁脚部が配列する配列方向に延び、トランス用磁脚部の両端側に対向するように位置して、前記複数のトランス用磁脚部の両端同士を接続する一対のトランス用基部と、を備えることにより、前記複数のトランス用磁脚部に生じるそれぞれの磁束の閉磁路が構成され、前記インダクタコアは、前記インダクタ用磁脚部と、前記インダクタ用磁脚部と平行に前記巻線の軸線方向に延び、前記インダクタ用磁脚部に巻き回しされる巻線の外周面側に配置される外磁脚部と、前記インダクタ用磁脚部と前記外磁脚部との両端同士を接続する一対のインダクタ用基部と、を備えることにより、前記インダクタ用磁脚部に生じる磁束の閉磁路が構成され、前記複数の磁脚部に巻き回しされる複数の巻線は、前記複数のトランス用磁脚部に生じるそれぞれの磁束の磁束方向がいずれの組み合わせをとっても、前記トランスコアにおける閉磁路において互いに打ち消すように巻き回しされていることを特徴とする。
【0008】
前記する本願発明によれば、一つの巻線に電流を流して励磁させた場合、その巻線に巻きまわされる磁脚部内に磁束が生じる。
そして、その磁束が生じる磁脚部を構成するトランス用磁脚部は、他のすべての巻線が巻き回しされるトランス用磁脚部と閉磁路を構成するため、他の巻線が電磁誘導される。
ここで、複数の巻線のそれぞれは、巻線から生じる磁束の磁束方向がいずれの組み合わせをとっても互いに打ち消すように巻き回しされているため、他の巻線は、電圧が昇圧するように電磁誘導されることとなり、各巻線の電圧を変圧することが可能となる。
また、併せて、トランスコアに対し、複数の巻線が、巻線から生じる磁束の磁束方向がいずれの組み合わせをとっても互いに打ち消すように巻き回しされているため、残留磁束の低減化を図れることができる。
一方で、磁脚部を構成するインダクタ用磁脚部内にも磁束が生じ、閉磁路を構成するインダクタコア内で磁気エネルギーを蓄積することが可能となる。
以上より、本発明によれば、トランスとインダクタとが一体化された複合型変圧器を提供することが可能となる。
【0009】
そして、前記する本願発明によれば、複数の巻線のそれぞれに対応するように、トランス用磁脚部が設けられているため、トランス用磁脚部における磁束の過密化を回避することができる。よって、本発明によれば、巻線から生じる磁束が、トランスコアの飽和磁束密度を超え、磁気エネルギーが損失するとおそれがない。
【0010】
さらに、前記する本願発明によれば、トランスコアの閉磁路の構成において、巻線の軸方向に延び磁路は、巻線が巻き回されるトランス用磁脚部であり、その他の磁路を必要としない。
よって、従来技術の複合型変圧器のように、巻線内部を通過しない磁脚部(特許文献2の図3及び図4の「外側磁脚部61b」)が不要となり、複合型変圧器の小型化を図ることが可能となる。
【0011】
また、本願発明に係る複合型変圧器は、前記巻線が、外部電気回路に接続する両極の接続端子が同一方向に引き出すように形成されており、前記複数の巻線のそれぞれは、前記両極の接続端子が同一方向を向くように配置されていることが好ましい。
【0012】
前記する構成によれば、複数の巻線の接続端子は、複合型変圧器のある一方側にまとめて引き出されることとなる。よって、複合型変圧器に接続する配線を複合型変圧器の一方側にまとめることができ、複合型変圧器を用いたDC/DCコンバータの小型化を図ることが可能となる。
【0013】
また、本願発明に係る複合型変圧器は、前記トランスコアと前記インダクタコアとの間に介在する磁気絶縁シートをさらに備えることが好ましい。
【0014】
前記する構成によれば、トランスコアとインダクタコアとのそれぞれに生じる磁界の影響を受けることを防止できるからである。
【0015】
また、本願発明に係る複合型変圧器は、トランスコアが、前記一対のトランス用基部において上部側に位置する上部トランス用基部と、前記複数のトランス用磁脚部を軸線方向に対して直交する方向で切った場合の上部側に位置する前記上部トランス用基部に接続する上部トランス用磁脚部と、が一体的に形成されてなる上部トランスコア部と、前記一対のトランス用基部において下部側に位置する下部トランス用基部と、前記複数のトランス用磁脚部を軸線方向に対して直交する方向で切った場合の下部側に位置する前記下部トランス用基部に接続する下部トランス用磁脚部と、が一体的に形成されてなる下部トランスコア部と、から構成されてなることが好ましい。
【0016】
前記する構成によれば、トランスコアは、上部トランスコア部と、下部トランスコア部との二つの部材から構成されるため、トランス用磁脚部に巻き回しされる巻線が増加したとしても、二つの部材から構成されるため、巻線の増加に伴う部品点数の増加を回避できる。
【0017】
また、本願発明に係る複合型変圧器は、前記複数の巻線は、同心円状に巻き回してなる円筒形状の第1の巻線と第2の巻線とから構成され、前記複数のインダクタコアは、前記第1の巻線が巻き回しされる第1インダクタコアと、前記第2の巻線が巻き回しされる第2インダクタコアとから構成され、前記トランスコアにおける前記複数のトランス用磁脚部は、前記第1の巻線が巻き回しされる半円柱状の第1トランス用磁脚部と、前記第2の巻線が巻き回しされ、前記第1トランス用磁脚部と平行に延びる半円柱状の第2トランス用磁脚部と、から構成され、前記第1インダクタコアと前記第2インダクタコアとにおける前記インダクタ用磁脚部は、半円柱状に形成されており、前記第1の巻線は、前記トランスコアの第1トランス用磁脚部に対して、前記第1インダクタコアが前記巻線の軸線に直交する方向に隣り合うように配置され、前記インダクタ用磁脚部と前記第1トランス用磁脚部とから構成される円柱状の第1磁脚部に巻き回しされ、前記第2の巻線は、前記トランスコアの第2トランス用磁脚部に対して、前記第2インダクタコアが前記巻線の軸線に直交する方向に隣り合うように配置され、前記インダクタ用磁脚部と前記第2トランス用磁脚部とから構成される円柱状の第2磁脚部に巻き回しされており、前記第1磁脚部に巻き回しされる第1の巻線と前記第2磁脚部に巻き回しされる第2の巻線とは、前記第1トランス用磁脚部に生じる磁束と、前記第2トランス用磁脚部に生じる磁束とが、前記トランスコアにおける閉磁路において互いに打ち消すように巻き回しされていることが好ましい。
【0018】
前記する構成によれば、例えば、一対のトランス用基部が軸線方向から見て矩形状に形成されている場合、一対のトランス用基部の一辺側にまとめて、第1トランス用磁脚部と第2トランス用磁脚部とを設けた場合、トランスコアに対して、一対のトランス用基部の一辺側に二つのインダクタコアをまとめて配置することができる。
また、一対のトランス用基部における対向する一対の辺であって、一方の辺側に第1トランス用磁脚部を設け、他方の辺側に第2トランス用磁脚部を設けた場合、トランスコアの両側にインダクタコアを配置することができる。
よって、トランスコアに対する二つのインダクタコアの配置の自由度が高い複合型変圧器を提供することができる。
【0019】
また、本願発明に係る複合型変圧器は、前記複数の巻線は、軸線方向から見て矩形状に巻き回してなる第1の巻線と第2の巻線と第3の巻線とから構成され、前記複数のインダクタコアは、前記第1の巻線が巻き回しされる第1インダクタコアと、前記第2の巻線が巻き回しされる第2インダクタコアと、前記第3の巻線が巻き回しされる第3インダクタコアとから構成され、前記トランスコアにおける前記複数のトランス用磁脚部は、前記第1の巻線が巻き回しされる矩形状の第1トランス用磁脚部と、前記第2の巻線が巻き回しされ、前記第2トランス用磁脚部と平行に延びる矩形状の第2トランス用磁脚部と、前記第2の巻線が巻き回しされ、前記第1トランス用磁脚部と平行に延びる矩形状の第2トランス用磁脚部と、前記第3の巻線が巻き回しされ、前記第1トランス用磁脚部と平行に延びる矩形状の第3トランス用磁脚部と、から構成され、前記第1の巻線は、前記トランスコアにおける前記第1トランス用磁脚部に対して、前記第1インダクタコアが前記巻線の軸線に直交する方向に隣り合うように配置されて、前記インダクタ用磁脚部と前記第1トランス用磁脚部とから構成される角柱状の第1の磁脚部に巻き回しされ、前記第2の巻線は、前記トランスコアにおける第2トランス用磁脚部に対して、前記第2インダクタコアが前記巻線の軸線に直交する方向に隣り合うように配置されて、前記インダクタ用磁脚部と前記第2トランス用磁脚部とから構成される角柱状の第2の磁脚部に巻き回しされており、前記第3の巻線は、前記トランスコアにおける第3トランス用磁脚部に対して、前記第3インダクタコアが前記巻線の軸線に直交する方向に隣り合うように配置されて、前記インダクタ用磁脚部と前記第3トランス用磁脚部とから構成される角柱状の第3の磁脚部に巻き回しされており、前記第1の磁脚部に巻き回しされる第1の巻線と、前記第2の磁脚部に巻き回しされる前記第2の巻線と、前記第3の磁脚部に巻き回しされる前記第3の巻線とは、前記第1トランス用磁脚部に生じる磁束と、前記第2トランス用磁脚部に生じる磁束と、前記第3トランス用磁脚部に生じる磁束とが、前記トランスコアにおける閉磁路においてそれぞれ互いに打ち消す方向となるように巻き回しされていることが好ましい。
【0020】
前記する構成によれば、例えば、一対のトランス用基部が軸線方向から見て矩形状に形成されている場合、一対のトランス用基部の一辺側にまとめて、第1トランス用磁脚部と第2トランス用磁脚部と第3トランス用磁脚部を設けた場合、トランスコアに対して、一対のトランス用基部の一辺側に3つのインダクタコアをまとめて配置することができる。
よって、トランスコアの一辺側に、三つのインダクタコアをまとめて配列することができ、小型化するとともに複数の巻線を並列した複合型変圧器を提供することができる
【発明の効果】
【0021】
以上、本発明によれば、複数の巻線が並列して配置することができるとともに、磁気エネルギーの損失を低減させ、かつ、更なる小型化を図ることができる複合型変圧器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る複合型変圧器の外観を示す外観図である。図1(a)は、前方側であって左上部側から見た斜視図であり、図1(b)は、後方側であって右上部側から見た斜視図である。
【図2】図1に示す複合型変圧器の構成を分解した場合における分解斜視図である。
【図3】第1実施形態の複合型変圧器において、上部側に配置されるトランスコア部材とインダクタコア部材を外した場合の平面図である。
【図4】図1に示す複合型変圧器をA−A線で切った場合における複合型変圧器の断面を示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る複合型変圧器の外観を示す外観図である。
【図6】図5に示す複合型変圧器の一部を分解した場合を斜視した一部分解斜視図である。
【図7】図5に示す複合型変圧器の一部を分解した場合を斜視した一部分解斜視図である。
【図8】第2実施形態の複合型変圧器において、上部側に配置されるトランスコア部材とインダクタコア部材を外した場合の平面図である。
【図9】図5に示す複合型変圧器をB−B線で切った場合における複合型変圧器の断面を示す断面図である。
【図10】図5に示す複合型変圧器をC−C線で切った場合における複合型変圧器の断面を示す断面図である。
【図11】実施例1及び実施例2において用いられた比較例の外観を示す外観図である。
【図12】巻線の巻数を変化させた場合における実施例1と比較例1〜3との体積及び磁気エネルギーの損失量を測定した測定結果を示す図である。
【図13】巻線の巻数を変化させた場合における実施例1と比較例1、3、4との体積及び磁気エネルギーの損失量を測定した測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下において、本発明の実施形態に係る複合型変圧器について、図面を適宜参照しながら説明する。なお、実施形態の複合型変圧器の説明において、技術的に同一要素であるものについては同一の符号を付している。
【0024】
(複合型変圧器1a)
第1実施形態にかかる複合型変圧器1aは、図1(a)及び(b)に示すように、二つの巻線10を備えており、トランスとインダクタとが一体に構成された二相複合型変圧器である。
なお、本実施形態の複合型変圧器1aにおいては、巻線10を二つ用いているが、説明の便宜上、二つの巻線10を区別して説明する場合において、二つの巻線10のうち、複合型変圧器1aを正面側から見て左側に配置される巻線10を第1の巻線11とし、右側に配置される巻線10を第2の巻線12と称して説明する。
【0025】
複合型変圧器1aは、図1及び図2に示すように、二つの巻線10を備えるほかに、その二つの巻線10を内部に支持するトランスコア20と、そのトランスコア20の両側にそれぞれ配置される二つのインダクタコア30、30と、トランスコア20とインダクタコア30との間に配置される二つの磁気絶縁シート40、40とを備えて構成されている。
【0026】
(巻線10)
巻線10は、外部電気回路を接続するとともに、外部電気回路から流れる電流を磁気エネルギーに変換するための部材である。また、二つの巻線10を構成する第1の巻線11と第2の巻線12とは、図2に示すように、同一形状に形成されている。
より具体的に、第1の巻線11と第2の巻線12とは、銅線などの線材の中間部分を同心円状に巻き回してなる円筒形状のコイルであって、線材の両端部分が、接続端子11a、11b、12a、12bとして形成されている。
そして、図1(b)に示すように、第1の巻線11と第2の巻線12におけるコイル内部に、後記する磁脚部39が挿通されて、第1の巻線11と第2の巻線12がトランスコア20内部に支持されている。
【0027】
ここで、第1の巻線11における接続端子11a、11bの両端は、同一方向に引き出すように形成されている。同様に、第2の巻線12の接続端子12a、12bにおいても、両端が同一方向に引き出すように形成されている。
また、第1の巻線11の巻回数と第2の巻線12の巻回数は、同じ巻回数となるように巻き回されているが、その巻回数については特に限定されない。
以上、巻線10の形状等について説明したが、コイル内部に挿通される磁脚部39に対する第1の巻線11と第2の巻線12との巻き回し方向については、トランスコア20とインダクタコア30の構成を説明した後に説明する。
その他、以下において、巻線10を形成する際、線材を巻き回しする中心軸を、単に、「巻線の軸線方向」或いは「上下方向」として説明する。また、巻線の軸線に対する直交する方向であって、トランスコア20と二つのインダクタコア30が配列する方向を「左右方向」とし、その上下方向と左右方向の両方向に対して直交な方向を「前後方向」として、説明する。
【0028】
(トランスコア20)
トランスコア20は、二つの巻線10を支持するとともに、支持する二つの巻線10を磁気結合させる磁性部材である。
トランスコア20は、図1(b)に示すように、二つの巻線10それぞれが巻き回されるトランス用磁脚部23、23(一つは不図示。)と、トランス用磁脚部23、23の両端に接続しトランス用磁脚部23、23を支持する一対のトランス用基部21a、21aとを備える。
ここで、トランス用磁脚部23、23と一対のトランス用基部21a、21aとは、それぞれ接続しており、トランスコア20における閉磁路を構成するための要素である。
【0029】
また、トランスコア20は、図2に示すように、同一形状からなる一対のトランスコア部材21、21を組み合わせることにより構成されている。以下、トランスコア部材21について説明する。
【0030】
トランスコア部材21は、図2に示すように、板状に形成されたトランス用基部21aと、そのトランス用基部21aの平面部分に形成された二つの半円柱状のトランス用磁脚構成部21b、21bとから構成されており、かつ、これらの構成が一体的に形成されている。
【0031】
トランス用基部21aは、図2に示すように、板状であり、上下方向に平面部分を有するように形成されている。また、トランス用基部21aは、図3に示すように、その平面部分における前後方向の長さが、巻線10の外径における直径よりも長くなるように形成されており、左右方向の長さが、巻線10の外径における直径と略同じ長さに形成されている。
これによれば、二つの巻線10を左右方向に隣接するように並べて、その二つの巻線10の上下方向に、トランスコア部材21、21のそれぞれを対向配置すると、図3に示すように、トランスコア20の左右端から、二つの巻線10の半分がそれぞれ露出した状態にすることができる。
【0032】
トランス用磁脚構成部21b、21bは、図2及び図3に示すように、トランス用磁脚部23、23を構成するための要素であり、トランス用基部21aの平面部分の左右辺中央部のそれぞれから、断面視で半円状に延出されてなり、半円柱状をなすように形成されている。なお、トランス用磁脚構成部21bにおける断面視の半円の径について後記する。
また、トランス用磁脚構成部21bの上下方向における長さは、図4に示すように、巻線10における軸線方向の長さの略半分となるように形成されている。
【0033】
そして、トランス用磁脚構成部21b、21bが形成された面が対向するようにトランスコア部材21、21を上下方向に対向させ、トランス用磁脚構成部21b、21bの端面同士が当接させて接合することにより、トランスコア20を構成させる。
また、これにより、トランス用磁脚構成部21b、21bとから構成される半円柱状のトランス用磁脚部23、23が形成される。
そのほか、トランス用磁脚部23は、巻線10の軸線方向と略同じ長さを有するため、トランス用磁脚部23に巻き回しされた巻線10を、トランス用磁脚部23の上下方向に位置する上部側のトランス用基部21aと下部側のトランス用基部21aとで支持することが可能となる。
【0034】
その他、トランスコア20に用いられる磁性材料として、飽和磁束密度[T]が高く、かつ、鉄損[W/kg]が小さいものが望ましい。ただし、巻線10によりトランスコア20内に生じる磁束については後記するが、互いに打ち消す磁束方向であるため、残留磁束が低減される。よって、トランスコア20の材料としては、飽和磁束密度[T]が高いことより、鉄損[W/kg]が小さいことが優先され、例えば、Mn−Znフェライト、ナノ結晶合金、Fe系アモルファス、Co系アモルファスなどが挙げられる。
【0035】
(インダクタコア30)
インダクタコア30は、巻線10が巻き回しされて、巻線10から生じる磁束による磁気エネルギーを蓄積するための磁性部材である。
インダクタコア30は、図1(a)及び(b)に示すように、巻線10が巻き回しされるインダクタ用磁脚部37と、巻線10の外周側に配置される外磁脚部38と、インダクタ用磁脚部37と外磁脚部38との両端を接続する一対のインダクタ用基部34a、34aとを備えている。
ここで、インダクタ用磁脚部37と、外磁脚部38と、一対のインダクタ用基部34a、34aとは、図4に示すように、接続してインダクタコア30における閉磁路を構成するための要素である。
【0036】
また、本実施形態の複合型変圧器1aは、図1に示すように、二つのインダクタコア30、30を備えており、トランスコア20を中心に左側と右側に配置されている。
以下、インダクタコア30の構成について説明するが、説明の必要に応じて、トランスコア20を中心に左側に配置されるインダクタコア30を左部インダクタコア31と称し、右側に配置されるインダクタコア30を右部インダクタコア32と称して説明する。
また、二つのインダクタコア30のそれぞれは、同一形状からなるため、インダクタコア30の構成に説明に当たって、左部インダクタコア31の方を例にとって説明し、右部インダクタコア32の説明は省略する。
【0037】
左部インダクタコア31は、図2に示すように、一対のインダクタコア部材34、34から構成されている。
左部インダクタコア31は、図1及び図3に示すように、後記するインダクタ用磁脚構成部34bが形成された面が対向するように、一対のインダクタコア部材34、34を対向させて組み合わせることにより、上下方向に対称的に形成された左部インダクタコア31が構成される。
【0038】
インダクタコア部材34は、図2に示すように、板状に形成されたインダクタ用基部34aと、インダクタ用基部34aの一方面に形成されたインダクタ用磁脚構成部34bと外磁脚構成部34cとから構成されており、かつ、これらの構成が一体的に形成されている。
【0039】
インダクタ用基部34aは、上下方向側に平面部分を有し、板状となるように形成されている。また、インダクタ用基部34aは、その平面部分における前後方向の長さが、トランスコア用基部21cと同等な長さに形成されている。
また、インダクタ用基部34aは、その平面部分における左右方向の長さであって、外磁脚構成部34cを除いた部分の長さL1(図2参照)が、巻線10の外径における半径と等しくなるように形成されている。
これによれば、図3に示すように、トランスコア20の左右端から露出する巻線10の半分をインダクタコア30内部に収容することが可能となる。
【0040】
つぎに、インダクタ用磁脚構成部34bと外磁脚構成部34cについて説明する。
インダクタ用磁脚構成部34bは、図2に示すように、インダクタ用基部34aの平面部分の左右辺中央部のいずれか一方から、断面視で半円状に延出されてなり、半円柱状をなすように形成されている。なお、インダクタ用磁脚構成部34bにおける断面視の半円の径は後記する。
一方で、外磁脚構成部34cは、インダクタ用基部34aの平面部分の左右辺のいずれか他方から、断面視で矩形状に延出し、板状となるように形成されている。
【0041】
そして、左部インダクタコア31は、二つのインダクタコア部材34、34におけるインダクタ用磁脚構成部34bを右側に、外磁脚構成部34cを左側に位置するようにし、インダクタ用磁脚構成部34bと外磁脚構成部34cとが形成された面を対向させて、右側でインダクタ用磁脚構成部34b、34bの端面同士、左側で外磁脚構成部34c、34cの端面同士を接合することにより構成される。
これにより、左部インダクタコア31は、インダクタ用基部34a、34aとの間であって、右辺中央部に半円柱状のインダクタ用磁脚部37が形成され、左辺に板状の外磁脚部38が形成されることとなる。なお、インダクタ用磁脚部37とは、巻線10が巻き回しされる磁脚であり、一方、外磁脚部38とは、インダクタ用磁脚部37と平行に延びるのもの、巻線10が巻き回しされない磁脚である。
【0042】
また、左部インダクタコア31は、トランスコア20に対して、インダクタ用磁脚部37が形成された右端面をトランスコア20に向けて接合されている。
これによれば、インダクタコア30の右端辺の中央部に形成されているインダクタ用磁脚部37が、後記する磁気絶縁シート40を介して、トランスコア20の中央部に形成されているトランス用磁脚部23と隣り合って、円柱形の磁脚部39が形成される。
なお、磁脚部は、トランスコアの左側と右側のそれぞれに形成されるが、必要に応じて、左側の磁脚部39を第1磁脚部39aと称し、右側の磁脚部39を第2磁脚部39bと称して説明する。
【0043】
ここで、インダクタ用磁脚部37を構成するインダクタ用磁脚構成部34bと、トランス用磁脚部23を構成するトランス用磁脚構成部21bとは、図3に示すように、磁気絶縁シート40の厚みを考慮して、巻線10の内径と略同じ径を有するように形成されている。これによって、インダクタ用磁脚部37とトランス用磁脚部23から構成される磁脚部39においても、巻線10の内径と略同じ径を有し、巻線10を巻き回すことが可能となる。
【0044】
そして、インダクタ用磁脚構成部34bの上下方向における長さは、巻線10における軸線方向における長さの略半分となるように形成されている。
これによれば、二つのインダクタ用磁脚構成部34b、34bから構成されるインダクタ用磁脚部37は、巻線10の軸線方向と略同じ長さを有するため、インダクタ用磁脚部37に巻き回しされた巻線10を、インダクタ用磁脚部37の上下方向に位置する上部側のインダクタ用基部34aと下部側のインダクタ用基部34aとで支持することが可能となる。
【0045】
また、インダクタコアに用いられる材料として、飽和磁束密度[T]が高く、かつ、鉄損[W/kg]が小さいものが望ましい。
ただし、インダクタコア内に生じる磁束は、漏れ磁束が主となる。よって、トランスコアの材料としては、鉄損[W/kg]が高いことより、飽和磁束密度[T]が小さいことが優先され、例えば、ダストパーマロイ、圧粉鉄心、圧粉珪素鋼、珪素鋼板などが挙げられる。
【0046】
(磁気絶縁シート40)
磁気絶縁シート40は、図2に示すように、トランスコア20及びインダクタコア30の一方で生じる磁気の影響が、トランスコア20及びインダクタコア30の他方に与えることを防止するための透磁率の低いシート部材である。
磁気絶縁シート40は、2枚の磁気絶縁シート部41から構成され、磁気絶縁シート部41は、正面視で凸状に形成されている。
また、2枚の磁気絶縁シート部41は、図2に示すように、上下方向において、トランスコア部材21とインダクタコア部材34との間に配置される。
これによれば、トランスコア部材21とインダクタコア部材34との間に介在させることにより、図4に示すように、トランスコア部材21とインダクタコア部材34とを磁気的に絶縁することが可能となる。
【0047】
つぎに、磁脚部39に対する巻線10の巻き回しについて説明する。
二つの巻線10である第1の巻線11と第2の巻線12は、図3に示すように、磁脚部39である第1磁脚部39aと第2磁脚部39bとに対して、第1の巻線11の接続端子11a、11bと第2の巻線12の接続端子12a、12bとが、複合型変圧器1aの前後方向における前側に向くように巻き回しされている。これによれば、複合型変圧器1aに対して、第1の巻線11と第2の巻線12の引き出し方向が同一となる。
【0048】
また、第1磁脚部39aに巻き回しされる第1の巻線11と、第2磁脚部39bに巻き回しされる第2の巻線12は、トランスコア20内の閉磁路において生じる磁束の磁束方向が、互いに打ち消すように巻き回しされている。
例えば、第1の巻線11の接続端子11aと第2の巻線12の接続端子12aとが正極に接続し、第1の巻線11の接続端子11bと第2の巻線12の接続端子12bとが負極に接続した場合、第1の巻線11と第2の巻線12は、図2及び図3に示すように、磁脚部39a、39bに対して、時計回りとなるように巻き回されている。
なお、以下において、第1の巻線11に電流が流れた場合、図4に示すように、第1の巻線11に巻き回しされる磁脚部39に磁束B1が発生するが、第1の巻線11から生じる磁束B1であって、トランスコア20内に生じる磁束を磁束B1Tと称し、インダクタコア30内に生じる磁束を磁束B1Lと称する。また、第2の巻線12から生じる磁束B2であって、トランスコア20内に生じる磁束を磁束B2Tと称し、インダクタコア30内に生じる磁束を磁束B2Lと称して、説明する。
【0049】
この場合、トランスコア20において、第1の巻線が生じる磁束B1Tは、図4に示すように、前後方向における前側から見て、トランスコア20内を時計回りで回るような磁束方向となる。一方で、第2の巻線から生じる磁束B2Tは、図4に示すように、前後方向における前側から見て、トランスコア20内を反時計回りで回るような磁束方向となり、第1の巻線から生じる磁束B1Tと第2の巻線から生じる磁束B2Tとのそれぞれの磁束が、互いに打ち消す向きとなるように構成することができる。
【0050】
つぎに、複合型変圧器1aの使用方法について説明する。
第1の巻線11の接続端子11aから接続端子11b側に向かって電流が流れた場合、図4に示すように、第1の巻線11に巻き回しされる磁脚部39に磁束B1が発生する。
【0051】
ここで、磁脚部36を構成するトランスコア20の左側のトランス用磁脚部23内に生じた磁束B1Tは、上方方向であり、上部側のトランス用基部21aを通過し、右側のトランス用磁脚部23に向かう。
そして、右側のトランス用磁脚部23における磁束B1Tの磁束方向は、下方方向であるため、下部側のトランス用基部21aを通過して、トランス用磁脚部23に戻り、トランスコア20を周回することとなる。
【0052】
その際に、磁束B1Tは、右側のトランス用磁脚部23の内部を通過しているため、右側のトランス用磁脚部23に巻き回されている第2の巻線12を電磁誘導される。
よって、第2の巻線12が昇圧されて電流が流れる。また、その電流は、正極と接続する第2の巻線12の接続端子12aから、負極と接続する第2の巻線12の接続端子12bに向かって電流が流れる電流である。
【0053】
次に、第1の巻線11に巻き回しされるインダクタ用磁脚部37に生じる磁束B1Lについて、説明する。
図4で示すように、インダクタ用磁脚部37に生じる磁束B1Lは、上方方向を向く磁束方向である。よって、インダクタ用磁脚部37に生じる磁束B1Lは、上部側のインダクタ用基部34aを通過して、外磁脚部38に向かう。
【0054】
そして、外磁脚部38に生じる磁束B1Lは、下方方向であるため、下部側のインダクタ用基部34aを通過して、インダクタ用磁脚部37に戻り、左部インダクタコア31を周回することとなる。
また、左部インダクタコア31に生じる磁界は第1の巻線11に電流が流れている限り、磁気エネルギーとして、左部インダクタコア31に蓄積することとなり、インダクタとして機能することとなる。
【0055】
次に、第2の巻線12に電流を流した場合を説明する。第2の巻線12の接続端子12aから接続端子12b側に向かって電流が流れた場合に、図4に示すように、第2の巻線12が巻き回しする第2磁脚部39bに磁束B2Tが発生する。
そして、右側のトランス用磁脚部23内に生じた磁束B2Tは、磁束方向が上方方向であり、上部側のトランス用基部21aを通過して、左側のトランス用磁脚部23に向かう。
磁束B2Tは、左側のトランス用磁脚部23において、磁束方向が下方方向であり、下部側のトランス用基部21aを通過して、右側のトランス用磁脚部23に戻り、トランスコア20を周回することとなる。
【0056】
その際に、磁束B2Tは、左側のトランス用磁脚部23の内部を通過しているため、左側のトランス用磁脚部23に巻き回されている第1の巻線11を電磁誘導される。
よって、第1の巻線11が昇圧されて電流が流れる。また、その電流は、正極と接続する第1の巻線11の接続端子11aから、負極と接続する第1の巻線11の接続端子11bに向かって電流が流れる電流である。
【0057】
次に、第2の巻線12に巻き回しされる右部インダクタコア32のインダクタ用磁脚部37に生じる磁束B2Lについて、説明する。
図4で示すように、インダクタ用磁脚部37に生じる磁束B2Lは、上方方向を向く磁束方向である。よって、インダクタ用磁脚部37に生じる磁束B2Lは、上部側のインダクタ用基部34aを通過して、外磁脚部38に向かう。
【0058】
そして、外磁脚部38に生じる磁束B2Lは、下方方向であるため、下部側のインダクタ用基部34aを通過して、インダクタ用磁脚部37に戻り、右部インダクタコア31を周回することとなる。
また、右部インダクタコア32に生じる磁界は第2の巻線12に電流が流れている限り、磁気エネルギーとして、右部インダクタコア32に蓄積することとなり、インダクタとして機能することとなる。
【0059】
以上、第1実施形態における複合型変圧器1aについて説明したが、複合型変圧器1aによれば、トランスコア20内に発生する、第1の巻線11から生じる磁束B1Tの向きと、第2の巻線12から生じる磁束B2Tの向きとが対向する。よって、トランスコア20内の残留磁束を低減することができ、トランスコア20における磁気飽和を防止させることが可能となり、特に、残留磁束(特に直流磁束)を低減することができる。
【0060】
また、複合型変圧器1aによれば、二つの巻線10のそれぞれに対応するように、トランス用磁脚部23、23が設けられているため、トランス用磁脚部23、23に生じる磁束の過密化を防止できる。よって、巻線10から生じた磁束B1T、B2Tがトランスコア20の飽和磁束密度を超えてしまい、磁気エネルギーが損失するということを回避できる。
【0061】
さらに、複合型変圧器1aによれば、トランスコア20の閉磁路の構成において、巻線10の軸方向の磁路は、巻線10が巻き回される二つのトランス用磁脚部23である。よって、トランスコア20において、巻線10が巻き回されるトランス用磁脚部23以外に、巻線10の軸方向に延びる磁路を必要せず、複合型変圧器1aの小型化を図ることが可能となる。
【0062】
また、複合型変圧器1aによれば、第1の巻線11の接続端子11a、11bと、第2の巻線12の接続端子12a、12bとが、同一方向に引きだされており、複合型変圧器1aのある前後方向における前側にまとめてられている。
よって、複合型変圧器1aに接続される接続する配線を複合型変圧器1aの一方側にまとめることができ、複合型変圧器1aを用いたDC/DCコンバータの小型化を図ることが可能となる。
【0063】
複合型変圧器1aによれば、トランスコア20が一対のトランスコア部材21、21の二つの部材から構成されるため、トランス用磁脚部23に巻き回しされる巻線10が増加したとしても、二つの部材から構成される。よって、巻線10の増加に伴う部品点数の増加を回避できる。
【0064】
以上、第1実施形態における複合型変圧器1aについて説明したが、本発明の複合型変圧器1aは、この実施形態で説明したものに限るものではない。次に、第2実施形態である巻線10を3つ備えた三相複合型変圧器について説明する。
【0065】
(複合型変圧器1b)
第2実施形態にかかる複合型変圧器1bは、三つの巻線50と、トランスコア60と、三つのインダクタコア70と、磁気絶縁シート80とから構成され、トランスとインダクタとが一体に構成された三相複合型変圧器であり、第1実施形態の複合型変圧器1aと比べて巻線50が増加している。
ここで、第2実施形態の複合型変圧器1bにおいても、巻線50は、第1実施形態の巻線10と同様に、トランス用磁脚部64とインダクタ用磁脚部73とからなる磁脚部75に巻き回しされている(図10参照。)。
しかし、第2実施形態における複合型変圧器1bは、図6及び図7に示すように、巻線50の増加に伴って、巻線50の巻き回しされる形状が、巻き回しされる軸線方向から見て、前後方向における長さが左右方向における幅に比べて長い矩形状のコイルである点が、第1実施形態の複合型変圧器1aと相違する。
つまり、複合型変圧器1bは、巻線50の増加に伴い、巻線50の形状、ひいては、巻線50が巻き回される磁脚部75の形状と、トランスコア60とインダクタコア70の配置位置との点を変更しており、第1実施形態の複合型変圧器1aと相違する。
以下、複合型変圧器1bの構成について、第1実施形態の複合型変圧器1aとの相違点を中心に説明する。
【0066】
(巻線50)
巻線50は、三つの巻線50を構成されており、図5に示すように、トランスコア60の内部において、左右方向の右側から左側に向かって、第1の巻線51と第2の巻線52と第3の巻線53と順に配列されている。
そして、巻線50の巻き回し形状は、図6乃至図8に示すように、巻線50の軸線方向から見て、前後方向における長さが左右方向における幅に比べて長い矩形状のコイルとなるように形成されている。
この矩形の筒形状のコイルである巻線50によれば、左右方向における幅が狭い。よって、複数の巻線50を左右方向に配列したとしても、左右方向における長さを抑えることができる。また、この巻線50によれば、前後方向における長さが長いため、巻線50の内部面積の縮小を回避できる。よって、巻線50から生じる磁束の減少を回避できる。
なお、第1の巻線51と第2の巻線52と第3の巻線53との巻き回し方向については、トランスコア60の構成を説明した後に説明する。
【0067】
(トランスコア60)
トランスコア60は、図9に示すように、閉磁路を構成する、三つのトランス用磁脚部64と一対のトランス用基部62とを備えている。
また、トランスコア60は、図6に示すように、第1実施形態のトランスコア20と同様に、同一形状からなる一対のトランスコア部材61、61を組み合わせることにより構成されている。
そして、トランスコア部材61は、図6に示すように、板状に形成されたトランス用基部62と、そのトランス用基部62の平面部分に形成された三つの四角柱状のトランス用磁脚構成部63a〜63cとから構成されており、かつ、これらの構成が一体的に形成されている。
【0068】
トランス用磁脚構成部63a〜63cは、トランス用磁脚部64の構成するための要素であって、図6に示すように、断面視で矩形状に延出されてなり、角柱をなすように形成されている。
また、トランス用磁脚構成部63a〜63cは、トランス用基部62の平面部分において、左側から右側に向かって、トランス用磁脚構成部63a、トランス用磁脚構成部63b、トランス用磁脚構成部63cの順に配置されている。トランス用磁脚構成部63a〜63cは、トランス用磁脚構成部63a〜63cのそれぞれに巻線50が巻き回し可能な間隔を有するように形成されている。
【0069】
トランス用磁脚構成部63a〜63cにおける左右方向における幅は、図8に示すように、巻線50の左右方向における幅と略同じ長さを有するように形成されている。
また、トランス用磁脚構成部63a〜63cにおける前後方向における長さは、図8に示すように、後記するインダクタ用磁脚構成部71b及び磁気絶縁シート80における前後方向における長さと合わせて、巻線50の内径における前後方向における長さと略同じになるように形成されている。
【0070】
そして、一対のトランスコア部材61、61を、トランス用磁脚構成部63a〜63cが形成された面が対向するように配置するとともに、トランス用磁脚構成部63a〜63cの端面同士が当接させて接合することにより、三つのトランス用磁脚部64を備えたトランスコア60が構成される。
なお、3つのトランス用磁脚部64において、必要に応じて、図9に示すように、左側に位置するトランス用磁脚部64を第1トランス用磁脚部64aと称し、中央に位置するトランス用磁脚部64を第2トランス用磁脚部64bと称し、右側に位置するトランス用磁脚部64を第3トランス用磁脚部64cと称して説明する。
【0071】
ここで、3つの巻線50は、第1の巻線51が第1トランス用磁脚部64aに巻き回しされ、第2の巻線52が第2トランス用磁脚部64bに巻き回しされ、第3の巻線53が第3トランス用磁脚部64cに巻き回しされている。
また、第1の巻線51と第2の巻線52と第3の巻線53との巻き回し方向は、トランスコア60の閉磁路において、第1の巻線51と第2の巻線52と第3の巻線53のそれぞれから生じる磁束の磁束方向が互いに打ち消すように巻き回しされている。
【0072】
(インダクタコア70)
第2実施形態の複合型変圧器1bは、三つのインダクタコア70、70、70を備えており、この三つのインダクタコア70、70、70のそれぞれは、三つの巻線50の各々に対応している。
【0073】
インダクタコア70は、図10に示すように、巻線50が巻き回されるインダクタ用磁脚部73と、外磁脚部74と、一対のインダクタ用基部71a、71aとを備えており、これらの構成によってインダクタコア70の閉磁路が形成されている。また、インダクタコア70は図7に示すように、一対のインダクタコア部材71、71から構成されている。以下、インダクタコア部材71の構成について説明する。
【0074】
インダクタコア部材71は、図7に示すように、板状に形成されたインダクタ用基部71aと、インダクタ用基部71aの前後方向における前側に形成されたインダクタ用磁脚構成部71b、インダクタ用基部71aの前後方向における後側に形成された外磁脚構成部71cとから構成されており、かつ、これらの構成が一体的に形成されている。
【0075】
インダクタ用磁脚構成部71bは、図8に示すように、断面視で矩形状に延出されてなり、角柱をなすように形成されている。
インダクタ用磁脚構成部71bは、図8に示すように、左右方向における幅が、巻線50における左右方向の幅と略同じ長さを有するように形成され、前後方向における長さが、トランス用磁脚構成部63a及び磁気絶縁シート80における前後方向における長さと合わせて、巻線50の内径における前後方向における長さと略同じになるように形成されている。
これにより、インダクタ用磁脚部73と磁気絶縁シート80とトランス用磁脚部64から構成される磁脚部75においても、巻線50の内径と略同じ径を有し、巻線50を巻きまわすことが可能となる。
【0076】
そして、二つのインダクタコア部材71、71を、インダクタ用磁脚構成部71bを前方側に、外磁脚構成部71cを後方側に位置するように配置し、インダクタ用磁脚構成部71bと外磁脚構成部71cとが形成された面を対向させる。
そして、前方側でインダクタ用磁脚構成部71b、71bの端面同士、後方側で外磁脚構成部71c、71cの端面同士を接合することにより、インダクタ用磁脚部73と外磁脚部74とを備えたインダクタコア70が構成される。
【0077】
(磁気絶縁シート80)
磁気絶縁シート80は、図5に示すように、トランスコア60と3つのインダクタコア70との間に配置される透磁率が低いシート部材である。
また、磁気絶縁シート80は、図6に示すように、2枚の磁気シート部材81、81から構成されており、上下方向からトランスコア60とインダクタコア70との間、及び、インダクタコア70同士の間に挿入されている。
【0078】
つぎに、複合型変圧器1bの使用方法について説明する。なお、以下において、第1の巻線51に電流が流れた場合、第1の巻線51に巻き回しされる磁脚部75aに生じる磁束を磁束B3と称し、また、第1の巻線51から生じる磁束B3であって、第1トランス用磁脚部64a内に生じる磁束を磁束B3Tと称し、インダクタコア70内に生じる磁束を磁束B3Lと称する。
第2の巻線52に電流が流れた場合、第2の巻線52に巻き回しされる磁脚部(図示を省略する)に生じる磁束を磁束B4と称し、また、第2の巻線52から生じる磁束B4であって、第2トランス用磁脚部64b内に生じる磁束を磁束B4Tと称し、インダクタコア70内に生じる磁束を磁束B4Lと称する。
第3の巻線53に電流が流れた場合、第3の巻線53に巻き回しされる磁脚部(図示を省略する)に生じる磁束を磁束B5と称し、また、第3の巻線53から生じる磁束B5であって、第3トランス用磁脚部64c内に生じる磁束を磁束B5Tと称し、インダクタコア70内に生じる磁束を磁束B5Lと称する。
【0079】
まず、第1の巻線51〜第3の巻線53のそれぞれに電流が流れた場合におけるトランスコア60内の磁束について説明する。
第1の巻線51の接続端子51aから接続端子51b側に向かって電流が流れた場合、図9に示すように、第1の巻線51に巻き回しされる第1磁脚部75aの第1トランス用磁脚部64aに生じる磁束B3Tが生じる。
また、第1トランス用磁脚部64a内に生じる磁束B3Tは、磁束方向が上方方向であり、上部側のトランス用基部21aに向かう。
また、上部側のトランス用基部62は、第2トランス用磁脚部64bと第3トランス用磁脚部64cとに接続している。そのため、上部側のトランス用基部62内の磁束B3Tは、第2トランス用磁脚部64bと第3トランス用磁脚部64cと内に向かう。
そして、第2トランス用磁脚部64bと第3トランス用磁脚部64c内の磁束B3Tは、下部側のトランス用基部62を通過して、第1トランス用磁脚部64aに戻り、トランスコア60における磁路を周回する。
【0080】
一方で、第2の巻線52の接続端子52aから接続端子52b側に向かって電流が流れた場合、図9に示すように、第2の巻線52に巻き回しされる第2トランス用磁脚部64bに生じる磁束B4Tが生じる。
ここで、第1トランス用磁脚部64b内に生じる磁束B4Tは、磁束方向が上方方向であり、上部側のトランス用基部62に向かう。
上部側のトランス用基部62は、第1トランス用磁脚部64aと第3トランス用磁脚部64cとに接続している。そのため、上部側のトランス用基部62内の磁束B4Tは、第1トランス用磁脚部64aと第3トランス用磁脚部64cと内に向かう。
そして、第1トランス用磁脚部64aと第3トランス用磁脚部64c内の磁束B4Tは、下部側のトランス用基部62を通過して、第2トランス用磁脚部64bに戻り、トランスコア60における磁路を周回する。
【0081】
他方で、第3の巻線53の接続端子53aから接続端子53b側に向かって電流が流れた場合、図9に示すように、第3の巻線53に巻き回しされる第3トランス用磁脚部64cに生じる磁束B5Tが生じる。
ここで、第1トランス用磁脚部64b内に生じる磁束B4Tは、磁束方向が上方方向であり、上部側のトランス用基部62に向かう。
上部側のトランス用基部62は、第1トランス用磁脚部64aと第2トランス用磁脚部64bとに接続している。そのため、上部側のトランス用基部62内の磁束B5Tは、第1トランス用磁脚部64aと第2トランス用磁脚部64bと内に向かう。
そして、第1トランス用磁脚部64aと第2トランス用磁脚部64b内の磁束B5Tは、下部側のトランス用基部62を通過して、第3トランス用磁脚部64cに戻り、トランスコア60における磁路を周回する。
【0082】
以上説明したように、三つの巻線50において、いずれかに一つに電流を流した場合には、他の二つの巻線50が電磁誘導されて、よって、他の二つの巻線50が昇圧されて、正極と接続する他の二つの巻線には、正極と接続する接続端子51a、52a、53aから、負極と接続する接続端子51a、52a、53aに向かって電流が流れ、トランスとして機能することが可能となる。
【0083】
次に、第1の巻線51〜第3の巻線53に電流が流れた場合のインダクタコア60について第1の巻線51を例にとって説明する。
第1の巻線51に電流が流れた場合、インダクタ用磁脚部73に生じる磁界B3Lは、磁束方向が上方方向であり、インダクタ用基部71aに向かう。また、インダクタ用基部71aを通過し、外磁脚部74に生じる磁束B3Lの磁束方向は、下方方向であり、インダクタ用基部71を通過して、インダクタ用磁脚部73に戻り、インダクタコア70を周回することとなる。
そして、第1の巻線51に電流が流れている限り、磁気エネルギーとして、インダクタコア70に蓄積することとなり、インダクタとして機能することとなる。
【0084】
以上、第2実施形態における複合型変圧器1bについて説明したが、複合型変圧器1bによれば、図9に示すように、トランスコア60内に発生する、第1の巻線51から生じる磁束B3Tの向きと、第2の巻線52から生じる磁束B4Tの向きと、第3の巻線53から生じる磁束B5Tの向きが対向する。よって、トランスコア60内の残留磁束を低減されることができ、トランスコア60における磁気飽和を防止させることが可能となり、特に、残留磁束(特に直流磁束)を低減することができる。
【0085】
また、複合型変圧器1bによれば、三つの巻線50のそれぞれに対応するように、トランス用磁脚部64が設けられているため、トランス用磁脚部64で磁束が飽和することを防止できる。
よって、巻線50から生じた磁束がトランスコアの飽和磁束密度を超えてしまい、磁気エネルギーが損失するということを回避できる。
【0086】
さらに、複合型変圧器1bによれば、トランスコア60の閉磁路の構成において、巻線の軸方向の磁路は、巻線が巻き回されるトランス用磁脚部である。よって、トランスコアにおいて、巻線50が巻きまわされるトランス用磁脚部64以外に、巻線の軸方向に延びる磁路を必要せず、複合型変圧器1bの小型化を図ることが可能となる。
【0087】
また、複合型変圧器1bによれば、第1の巻線51の接続端子51a、51bと、第2の巻線52の接続端子52a、52bと、第3の巻線53の接続端子53a、53bとが、同一方向に引きだされており、複合型変圧器のある前後方向における前側にまとめてられている。
よって、複合型変圧器1bに接続される接続する配線を複合型変圧器の一方側にまとめることができ、複合型変圧器を用いたDC/DCコンバータの縮小化を図ることが可能となる。
【0088】
(実施例1)
次に、複合型変圧器を実施した例について説明する。
本実施例においては、実施形態における複合型変圧器をDC/DCコンバータに設けるとともに、DC/DCコンバータにおけるスイッチング素子をON、OFFさせて、印加電圧の昇圧を行った。
また、本実施例の実験においては、実施例の複合型変圧器が備える巻線の巻き数を変更させて、その巻数の場合における複合型変圧器の体積を測定した。
併せて、実施例の複合型変圧器の巻数を変更した複合型変圧器毎に、所定電圧を印加するとともに所定電流量を流した場合における磁気部品における損失である銅損と鉄損(W)を計算した。なお、印加電圧等の計算条件は、下記の(表1)に示す通りである。
【0089】
【表1】

【0090】
また、実施例の複合型変圧器において、トランスコアの原材料としてフェライトを使用し、インダクタコアの原材料としてダストパーマロイを使用した。
なお、実施例の複合型変圧器の測定結果の比較対象として、比較例1〜比較例3を用意した。比較例1は、図11(a)に示す従来型のインダクタ(コアの原材料は、ダストパーマロイ)を用意し、比較例2は、図11(b)に示すルーズカップルドインダクタ(コアの原材料はフェライト)を用意し、比較例3は、図11(c)に示すL型チョッパ(コアの原材料は、ダストパーマロイ)と磁気相殺型トランス(コアの原材料はフェライト)との組み合わせた場合である。
【0091】
なお、実施例1と比較例1〜3における巻線は共通ものを使用した。以下、計算結果を図12に示す。なお、図12におけるグラフにおいて、縦軸は体積を示し、下から上に向かうほど体積が大きくなることを示し、横軸は磁気部品の銅損と鉄損を示し、左側から右側に向かうほど損失が大きいことを示す。よって、図12におけるグラフにおいて、左下に位置するプロットほど、小型であり、かつ、損失が小さいことを示すものである。
【0092】
また、全体的に、比較例1〜3に比べて、実施例1のほうが、図12のグラフの左下の方に位置しており、小型化と磁気エネルギー損失の低減を図れるという結果となった。
【0093】
(実施例2)
次に、第2実施形態の複合型変圧器における実施した例について説明する。
実施例2においては、第1実施例と同様に、巻線の巻き数を変更させて、その巻数の場合における複合型変圧器の体積(cc)を測定した。
また、併せて、実施例の複合型変圧器の巻数を変更した複合型変圧器毎に、所定電圧を印加するとともに所定電流量を流した場合における磁気部品における損失である銅損と鉄損(W)を計算した。なお、印加電圧等の計算条件は、下記の(表2)に示す通りである。
【0094】
【表2】

【0095】
また、本実施例の複合型変圧器において、トランスコアの原材料としてフェライトを使用し、インダクタコアの原材料として、ダストパーマロイを使用した。
比較例は、実施例1で用いた比較例1比較例3と、その他に比較例4を用意した。
なお、比較例4は、インダクタ(コアの原材料は、ダストパーマロイ)と三相磁気相殺型トランス(コアの原材料はフェライト)を用意した。実施例2と比較例1、3、4における巻線は共通ものを使用した。以下、測定結果を図13に示す。
【0096】
なお、図13におけるグラフにおいて、実施例1と同様に、縦軸は体積を示し、下から上に向かうほど体積が大きくなることを示し、横軸は磁気部品の銅損と鉄損を示し、左側から右側に向かうほど損失が大きいことを示す。よって、図13におけるグラフにおいて、左下に位置するプロットほど、小型化であり、かつ、損失が小さいことを表しており、優秀な変圧器であることを示すものである。
【0097】
全体的に、実施例2における複合型変圧器は、比較例1〜3に比べて、巻戦がいずれの巻数であっても、比較例1、3、4に比べ、図13のグラフの左下の方に位置しており、小型化と磁気エネルギー損失の低減を図ることができるという結果を示した。
【符号の説明】
【0098】
1a 複合型変圧器
10(11、12) 巻線(第1の巻線、第2の巻線)
11a、11b、12a、12b 接続端子
20 トランスコア
21、21 トランスコア部材
21a トランス用基部
21b、21b トランス用磁脚構成部
23 トランス用磁脚部
30(31、32) インダクタコア(左部インダクタコア、右部インダクタコア)
34、34 インダクタコア部材
34a インダクタ用基部
34b インダクタ用磁脚構成部
34c 外磁脚構成部
37 インダクタ用磁脚部
38 外磁脚部
39(39a、39b) 磁脚部(第1磁脚部、第2磁脚部)
40 磁気絶縁シート
41 磁気絶縁シート部
50(51〜53) 巻線(第1の巻線〜第3の巻線)
51a、51b、52a、52b、53a、53b 接続端子
60 トランスコア
61、61 トランスコア部材
62 トランス用基部
63a〜63c トランス用磁脚構成部
64 トランス用磁脚部
64a〜64c 第1トランス用磁脚部〜第3トランス用磁脚部
70 インダクタコア
71、71 インダクタコア部材
71a インダクタ用基部
71b インダクタ用磁脚構成部
71c 外磁脚構成部
73 インダクタ用磁脚部
74 外磁脚部
75 磁脚部
75a 第1磁脚部
80 磁気絶縁シート
81 磁気絶縁シート部
B1〜B5(B1T〜B5T,B1L〜B5L) 磁束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の巻線と、
前記巻線の軸線方向に延び、前記巻線が巻き回し可能なトランス用磁脚部を複数有するトランスコアと、
前記巻線の軸線方向に延び、前記巻線が巻き回し可能なインダクタ用磁脚部を有するとともに、前記インダクタ用磁脚部が前記トランス用磁脚部に対して、前記巻線の軸線に直交する方向に隣り合うように配置される複数のインダクタコアとを備え、
前記複数の巻線が、前記トランス用磁脚部と前記インダクタ用磁脚部とから構成される磁脚部に巻き回しされ、通電により前記トランス用磁脚部と前記インダクタ用磁脚部に磁束を生じ、単一のトランスと複数のインダクタとが構成される複合型変圧器であり、
前記トランスコアは、
前記巻線の軸線に直交する方向に配列される前記複数のトランス用磁脚部と、
前記複数のトランス用磁脚部が配列する配列方向に延び、トランス用磁脚部の両端側に対向するように位置して、前記複数のトランス用磁脚部の両端同士を接続する一対のトランス用基部と、を備えることにより、前記複数のトランス用磁脚部に生じるそれぞれの磁束の閉磁路が構成され、
前記インダクタコアは、
前記インダクタ用磁脚部と、
前記インダクタ用磁脚部と平行に前記巻線の軸線方向に延び、前記インダクタ用磁脚部に巻き回しされる巻線の外周面側に配置される外磁脚部と、
前記インダクタ用磁脚部と前記外磁脚部との両端同士を接続する一対のインダクタ用基部と、を備えることにより、前記インダクタ用磁脚部に生じる磁束の閉磁路が構成され、
前記複数の磁脚部に巻き回しされる複数の巻線は、前記複数のトランス用磁脚部に生じるそれぞれの磁束の磁束方向がいずれの組み合わせをとっても、前記トランスコアにおける閉磁路において互いに打ち消すように巻き回しされていることを特徴とする複合型変圧器。
【請求項2】
前記巻線は、外部電気回路に接続する両極の接続端子が同一方向に引き出すように形成されており、
前記複数の巻線のそれぞれは、前記両極の接続端子が同一方向を向くように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の複合型変圧器。
【請求項3】
前記トランスコアと前記インダクタコアとの間に介在する磁気絶縁シートをさらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複合型変圧器。
【請求項4】
前記トランスコアは、
前記一対のトランス用基部において上部側に位置する上部トランス用基部と、
前記複数のトランス用磁脚部を軸線方向に直交する方向で切った場合の上部側に位置し、前記上部トランス用基部に接続する上部トランス用磁脚部と、が一体的に形成されてなる上部トランスコア部と、
前記一対のトランス用基部において下部側に位置する下部トランス用基部と、
前記複数のトランス用磁脚部を軸線方向に直交する方向で切った場合の下部側に位置し、前記下部トランス用基部に接続する下部トランス用磁脚部と、が一体的に形成されてなる下部トランスコア部と、から構成されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の複合型変圧器。
【請求項5】
前記複数の巻線は、同心円状に巻き回してなる円筒形状の第1の巻線と第2の巻線とから構成され、
前記複数のインダクタコアは、前記第1の巻線が巻き回しされる第1インダクタコアと、前記第2の巻線が巻き回しされる第2インダクタコアとから構成され、
前記トランスコアにおける前記複数のトランス用磁脚部は、前記第1の巻線が巻き回しされる半円柱状の第1トランス用磁脚部と、前記第2の巻線が巻き回しされ、前記第1トランス用磁脚部と平行に延びる半円柱状の第2トランス用磁脚部と、から構成され、
前記第1インダクタコアと前記第2インダクタコアとにおける前記インダクタ用磁脚部は、半円柱状に形成されており、
前記第1の巻線は、
前記トランスコアの第1トランス用磁脚部に対して、前記第1インダクタコアが前記巻線の軸線に直交する方向に隣り合うように配置され、前記インダクタ用磁脚部と前記第1トランス用磁脚部とから構成される円柱状の第1磁脚部に巻き回しされ、
前記第2の巻線は、
前記トランスコアの第2トランス用磁脚部に対して、前記第2インダクタコアが前記巻線の軸線に直交する方向に隣り合うように配置され、前記インダクタ用磁脚部と前記第2トランス用磁脚部とから構成される円柱状の第2磁脚部に巻き回しされており、
前記第1磁脚部に巻き回しされる第1の巻線と前記第2磁脚部に巻き回しされる第2の巻線とは、前記第1トランス用磁脚部に生じる磁束と、前記第2トランス用磁脚部に生じる磁束とが、前記トランスコアにおける閉磁路において互いに打ち消すように巻き回しされていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の複合型変圧器。
【請求項6】
前記複数の巻線は、軸線方向から見て矩形状に巻き回してなる第1の巻線と第2の巻線と第3の巻線とから構成され、
前記複数のインダクタコアは、前記第1の巻線が巻き回しされる第1インダクタコアと、前記第2の巻線が巻き回しされる第2インダクタコアと、前記第3の巻線が巻き回しされる第3インダクタコアとから構成され、
前記トランスコアにおける前記複数のトランス用磁脚部は、
前記第1の巻線が巻き回しされる矩形状の第1トランス用磁脚部と、
前記第2の巻線が巻き回しされ、前記第2トランス用磁脚部と平行に延びる矩形状の第2トランス用磁脚部と、
前記第2の巻線が巻き回しされ、前記第1トランス用磁脚部と平行に延びる矩形状の第2トランス用磁脚部と、
前記第3の巻線が巻き回しされ、前記第1トランス用磁脚部と平行に延びる矩形状の第3トランス用磁脚部と、から構成され、
前記第1の巻線は、
前記トランスコアにおける前記第1トランス用磁脚部に対して、前記第1インダクタコアが前記巻線の軸線に直交する方向に隣り合うように配置されて、前記インダクタ用磁脚部と前記第1トランス用磁脚部とから構成される角柱状の第1の磁脚部に巻き回しされ、
前記第2の巻線は、
前記トランスコアにおける第2トランス用磁脚部に対して、前記第2インダクタコアが前記巻線の軸線に直交する方向に隣り合うように配置されて、前記インダクタ用磁脚部と前記第2トランス用磁脚部とから構成される角柱状の第2の磁脚部に巻き回しされており、
前記第3の巻線は、
前記トランスコアにおける第3トランス用磁脚部に対して、前記第3インダクタコアが前記巻線の軸線に直交する方向に隣り合うように配置されて、前記インダクタ用磁脚部と前記第3トランス用磁脚部とから構成される角柱状の第3の磁脚部に巻き回しされており、
前記第1の磁脚部に巻き回しされる第1の巻線と、前記第2の磁脚部に巻き回しされる前記第2の巻線と、前記第3の磁脚部に巻き回しされる前記第3の巻線とは、
前記第1トランス用磁脚部に生じる磁束と、前記第2トランス用磁脚部に生じる磁束と、前記第3トランス用磁脚部に生じる磁束とが、前記トランスコアにおける閉磁路においてそれぞれ互いに打ち消す方向となるように巻き回しされていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の複合型変圧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−54484(P2012−54484A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197415(P2010−197415)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】