説明

複合型積層磁性部品

【課題】複数のコイルパターン間の高い磁気結合を確保するとともに、さらに大電流を印加することを可能とする。
【解決手段】複合型積層磁性部品10は、一のコイルパターン部の引出電極が接続される端子電極と、他のコイルパターン部の引出電極が接続される端子電極とが異なるように、一のコイルパターン部及び他のコイルパターン部を組み合わせて積層し、磁性体部11に形成される磁路は一つであるとともに、積層したコイルパターン部によって励磁された磁束は、磁路を共通して流れることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として一つの積層体内に複数のコイルパターンを埋設して構成される積層トランスや積層コモンモードコイル等に好適に適用される複合型積層磁性部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上に高密度で部品が実装されたり、電子機器が小型化されたりしている。このような電子機器の小型化に伴い、電子機器に搭載される一般的なフェライトコア、巻線コイル等を用いたトランス、コモンモードコイル等もまた小型化や低背化の要求が強まっている。しかしながら、複雑な形状であるフェライトコアの製造条件や巻線条件、巻線構造等は煩雑化しており、トランス、コモンモードコイル等をさらに小型化することは極めて困難な状況にある。そこで、導体パターンと絶縁層とを交互に積層した複合型積層磁性部品が用いられるようになってきた。複合型積層磁性部品は、内部導体を配置した複数の基板層を積み重ねた積層体と、磁性体部とを一体焼結して形成されるため、巻線型のコイル部品と比較して、小型化への対応が可能であり機械強度に優れるという構造上の利点がある。
【0003】
複合型積層磁性部品で用いられる積層トランスと積層コモンモードコイルの内部構造は、ほぼ同一に形成されるものである。このため、複合型積層磁性部品の内部に形成した複数種類のコイルパターンによって、巻数の調整、巻方向の設定、入出力端子の配置設定等を変えている。このように設定を変えることにより、積層磁性部品を積層トランスとして用いたり、積層コモンモードコイルとして用いたりすることができる。
【0004】
積層磁性部品をトランスとして用いる場合は、1次コイルとその他のコイルとの巻数比を制御することで、所望の出力電圧を得ることができる。一方、積層磁性部品をコモンモードコイルとして用いる場合は、1次コイルとその他のコイルとの巻数を同一とすることで、所望のノーマルモード特性とコモンモード特性の両方、又はいずれか一方の特性をとることができる。ただし、いずれの仕様においても、好適な特性を確保するためには、複数のコイル間における磁気結合係数:kが十分な値を有していることが必須の条件となる。
【0005】
特許文献1には、磁性部品の小型化に対する要求を達成できる磁性部品として、磁性体部内に、共通の巻軸を中心として螺旋状に巻かれた複数個のコイルを有する、積層トランス又は積層コモンモードコイルについて開示されている。ここで、従来の積層磁性部品の内部構成例について、図12の分解斜視図を参照して説明する。誘電体セラミックス又は磁性体セラミックスで形成された絶縁体層101a〜101f上に、コイル用導体パターン102a〜102f,103a〜103fが形成されている。絶縁層101a〜101fを積層することで、コイル用導体パターン102a〜102fを接続している。同様に、絶縁層101a〜101fを積層することで、コイル用導体パターン103a〜103fも接続している。このように絶縁体層101a〜101fと絶縁体層101gを積層して、積層磁性部品100を形成している。
【0006】
また、特許文献2には、磁性体部に埋設されたコイルパターンから励磁される磁束と磁路を一つとすることで、直流重畳特性を確保した積層型の磁性素子について開示されている。
【特許文献1】特開2004−200544号公報
【特許文献2】特開2006−24739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載された積層トランスや積層コモンモードコイルは、1次コイルと、その他のコイルの両方、又はいずれか一方に電流が印加されたときにマイナーループが発生してしまう。ここで、マイナーループの例について、図13を参照して説明する。
【0008】
図13(a)は、積層磁性部品100の外観斜視図の例である。直方体形状の積層磁性部品100は、コイル用導体パターンを形成した複数の絶縁体層を重ねて形成した部品である。今、A−A′線に沿って切断した場合における、積層磁性部品100の断面の構成例について検討する。
【0009】
図13(b)は、A−A′線に沿う積層磁性部品100の断面の構成例である。図13(b)では、コイル用導体パターン102a〜102fを1次コイルとし、コイル用導体パターン103a〜103fをその他のコイルとしている。誘電体セラミックス又は磁性体セラミックスで形成された絶縁体層101a〜101fを、複数枚積層することで磁性体部105を形成している。磁気結合による共通磁路106は、コイル用導体パターン102a〜102f,103a〜103fに電流を通すことで発生する磁界が磁気結合することによって発生する共通磁路を表す。ここで、コイル用導体パターン(1次コイル)102a〜102fには、磁束のマイナーループ(ショートパスとも称する。)107が発生していることが分かる。マイナーループ107が発生すると、磁気結合を大きくすることができなくなってしまう。
【0010】
また、トランスとして用いた場合にはコイル用導体パターン(1次コイル)102a〜102fと、コイル用導体パターン(その他のコイル)103a〜103fとの間における伝達効率が下がってしまう。また、積層磁性部品100を、コモンモードコイルとして用いた場合には、十分なノーマルモード特性とコモンモード特性の両方、又はいずれか一方が得られないといった不具合を生じてしまう。また、積層トランス又は積層コモンモードコイルに電流が流れた直後には、マイナーループ107が主な原因となるインダクタンス値の低下が大きくなるため、実用上、マイナーループ107はなくすことが望ましい。
【0011】
図13(c)は、コイル用導体パターン(1次コイル)102a〜102fのみに着目した、A−A′線に沿う積層磁性部品100の断面の構成例を示す。このとき、A側では3本のコイルパターン(コイル用導体パターン102a,102c,102f)が形成されているのに対し、A’側に形成されているコイルパターンは2本(コイル用導体パターン102b,102e)である。つまり、積層トランス又は積層コモンモードコイルとして駆動するため、コイル用導体パターン(1次コイル)102a〜102fに比較的大きな電流を印加した際に、A側のコイルパターンとA’側のコイルパターンとで励磁される磁束と磁界強度が異なってしまう。このため、磁性体部105の磁気飽和が不均一になる可能性があるため、許容電流値が低下するという問題が生じる。
【0012】
また、特許文献2で開示された積層型の磁性部品は、磁性体部に一つのコイルパターンを埋設して形成した積層インダクタ等に関するものであった。しかしながら、複数のコイルパターンを内部に形成する積層トランスや積層コモンモードコイル等の構成について開示したものではなかった。
【0013】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、複数のコイルパターン間の高い磁気結合を確保するとともに、さらに大電流を印加することを可能とした複合型積層磁性部品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の複合型積層磁性部品は、磁性材料からなる磁性体部と、内部電極及び引出電極で形成されたコイルパターンを有するコイルパターン部と、引出電極に接続される複数の端子電極とを備えるとともに、複数のコイルパターン部が積層されていることを前提としている。そして、本発明の複合型積層磁性部品は、一のコイルパターン部の引出電極が接続される端子電極と、他のコイルパターン部の引出電極が接続される端子電極とが異なるように、一のコイルパターン部及び他のコイルパターン部を組み合わせて積層し、磁性体部に形成される磁路は一つであるとともに、積層したコイルパターン部によって励磁された磁束は、磁路を共通して流れることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数のコイルパターン部を組み合わせて積層することによって磁性体部の内部に形成される磁路は一つであるとともに、複数のコイルパターンによって励磁された磁束は、磁路を共通して流れるため、高い磁気結合を確保することができる。そして、複合型積層磁性部品に大電流を印加することが可能であり、機械的強度に優れた複合型積層磁性部品を得ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、図1〜図11を参照して説明する。本実施の形態では、内部導体と磁性体部とを積層構造とし、大電流を印加できる複合型積層磁性部品10に適用した例として説明する。
【0017】
始めに、複合型積層磁性部品の構成例について、図1を参照して説明する。図1(a)は、複合型積層磁性部品10の外観斜視図の例である。図1(b)は、複合型積層磁性部品を上面視した例である。
【0018】
図1(a)は、ほぼ直方体状に形成した複合型積層磁性部品10を示す。複合型積層磁性部品10は、後述する所定のコイルパターンで内部導体を配置したコイルパターン部と、フェライトシートを積層したフェライトプレートを重ねて一体焼結して形成される。フェライトプレートは、積層されたコイルパターン部の上下面に配置される。コイル複合型積層磁性部品10の長手方向の両端部には、導電性材料で形成された端子電極13a〜13fが形成される。端子電極の導電性材料及び形成方法としては、Agペーストをディッピングによって塗布する手段が好適に用いられる。また、上記の他、例えば、銅、アルミニウム、錫、亜鉛、ニッケル、それらの合金などが用いられる。端子電極13a〜13fは、コイルパターン部の引出電極15a〜15f(後述の図1(b)参照)に接続される。複合型積層磁性部品10の両側面には、非導電性の非磁性材料を用いた絶縁層12a,12bが形成されている。
【0019】
図1(b)は、複合型積層磁性部品10を上面から透視した例を示す。図1(b)では、内部導体が形成するコイルパターンをコイルパターン14として破線で表している。コイルパターン14は、複数のコイルパターン部を重ね合わせ、上面より透視したものである。フェライトプレート上に形成される個別のコイルパターンについては後述する。内部導体には、銀(Ag)が好適に用いられ、その他、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等の導電性材料が用いられる。コイルパターン14から引き出されている引出電極15a〜15fは、端子電極13a〜13fのいずれかの電極に接続されている。コイルパターン14の内部には、磁性材料からなる磁性体部11を形成している。
【0020】
コイルパターン部とフェライトプレートを重ねただけでは、複合型積層磁性部品10は、側面から内部電極又は引出電極(コイルパターン)が露出してしまう。そして、複合型積層磁性部品10の側面から内部電極や引出電極が露出した状態で、端子電極13a〜13fの形成と端子電極13a〜13fへのメッキ処理の両方、又はいずれか一方を行うと、内部電極と引出電極に端子電極用ペーストやメッキ被膜が被覆されて、互いに短絡してしまう。このため、引出電極と端子電極とが接続される面と直交する両側面に、非導電性の非磁性材料からなる絶縁層絶縁層12a,12bを形成することで短絡を防いでいる。絶縁層12a,12bは、非導電性材料かつ非磁性材料で形成されている。
【0021】
また、絶縁層12a,12bを、非導電性材料かつ非磁性材料とする理由は、磁束が絶縁層12a,12bを通過することを防ぐためである。絶縁層12a,12bに用いる具体的な材料としては、Si(ガラス)を主成分とし、かつ600℃前後で焼成可能に調整された絶縁ペーストが望ましい。上述に伴い、絶縁層22の形成は、後述する図8におけるバレル研磨工程:ステップ13とステップ14:端子電極形成との間で行うことが望ましい。こうすることで、後に行う端子電極の焼成工程:ステップS15の際に、一括して絶縁層12a,12bを焼成することができる。このため、経済的に複合型積層磁性部品10を製造できるという利点がある。なお、絶縁層12a,12bの材料として絶縁性樹脂を用いることで、コーティング等の形成工程を経るようにしてもよい。
【0022】
次に、複合型積層磁性部品10に形成されるコイルパターンについて、図2を参照して説明する。図2は、端子電極と絶縁層を取り除いた複合型積層磁性部品10を上面視した場合の例を示す。本実施の形態例においてはコイルパターンとして図2(A)〜図2(G)に示す7種類を用意した。なお、図2の実線で示す電極は露出されており上面から可視であることを意味する。一方、破線で示す電極は複合型積層磁性部品10の内部に形成されており上面から不可視であることを意味する。後述する第1の引出電極と第2の引出電極は、図示しない非磁性体部を介するため、互いに接触することはない。
【0023】
図2(A)のコイルパターンでは、複合型積層磁性部品10の一方の端部における中心付近に第1の引出電極16aが形成される。第1の引出電極16aは、複合型積層磁性部品10の長辺方向に伸ばされ、複合型積層磁性部品10の他方の端部付近で二股に分かれた内部電極17aとして形成される。内部電極17aは、複合型積層磁性部品10の両側面に沿って形成され、複合型積層磁性部品10の一方の端部における中心付近に第2の引出電極18aとして形成される。第2の引出電極18aは、複合型積層磁性部品10の他方の端部まで伸ばされる。
【0024】
図2(B)のコイルパターンでは、複合型積層磁性部品10の一方の端部における中心付近に第1の引出電極16bが形成される。第1の引出電極16bは、複合型積層磁性部品10の長辺方向に伸ばされ、複合型積層磁性部品10の他方の端部付近で内部電極17bとして形成される。内部電極17bは、複合型積層磁性部品10の左側面に沿って形成され、複合型積層磁性部品10の一方の端部における中心付近に第2の引出電極18bとして形成される。第2の引出電極18bは、複合型積層磁性部品10の他方の端部まで伸ばされる。
【0025】
図2(C)のコイルパターンでは、複合型積層磁性部品10の一方の端部における中心付近に第1の引出電極16cが形成される。第1の引出電極16cは、複合型積層磁性部品10の長辺方向に伸ばされ、複合型積層磁性部品10の他方の端部付近で内部電極17cとして形成される。内部電極17cは、複合型積層磁性部品10の右側面に沿って形成され、複合型積層磁性部品10の一方の端部における中心付近に第2の引出電極18cとして形成される。第2の引出電極18cは、複合型積層磁性部品10の他方の端部まで伸ばされる。
【0026】
図2(D)のコイルパターンでは、複合型積層磁性部品10の一方の端部における両側面に一対の第1の引出電極16dが形成される。第1の引出電極16dは、複合型積層磁性部品10の長辺方向に伸ばされ、複合型積層磁性部品10の他方の端部付近で中心に内部電極17dとして接合して形成される。内部電極17dは、複合型積層磁性部品10の中心に沿って長辺方向に伸ばされる。そして、内部電極17dは、複合型積層磁性部品10の一方の端部付近で二股に分かれて、第2の引出電極18dとして形成される。第2の引出電極18dは、複合型積層磁性部品10の両側面に沿って形成され、複合型積層磁性部品10の他方の端部まで伸ばされる。
【0027】
図2(E)のコイルパターンでは、複合型積層磁性部品10の一方の端部における左側面に第1の引出電極16eが形成される。第1の引出電極16eは、複合型積層磁性部品10の長辺方向に伸ばされ、複合型積層磁性部品10の他方の端部付近で中心に内部電極17eとして形成される。内部電極17eは、複合型積層磁性部品10の中心に沿って長辺方向に伸ばされる。そして、内部電極17eは、複合型積層磁性部品10の一方の端部で第2の引出電極18eとして形成される。第2の引出電極18eは、複合型積層磁性部品10の左側面に沿って形成され、複合型積層磁性部品10の他方の端部まで伸ばされる。
【0028】
図2(F)のコイルパターンでは、複合型積層磁性部品10の一方の端部における右側面に第1の引出電極16fが形成される。第1の引出電極16fは、複合型積層磁性部品10の長辺方向に伸ばされ、複合型積層磁性部品10の他方の端部付近で中心に内部電極17fとして形成される。内部電極17fは、複合型積層磁性部品10の中心に沿って長辺方向に伸ばされる。そして、内部電極17fは、複合型積層磁性部品10の一方の端部で第2の引出電極18fとして形成される。第2の引出電極18fは、複合型積層磁性部品10の右側面に沿って形成され、複合型積層磁性部品10の他方の端部まで伸ばされる。
【0029】
図2(G)のコイルパターンでは、複合型積層磁性部品10の一方の端部における両側面に一対の第1の引出電極16gが形成される。第1の引出電極16gは、複合型積層磁性部品10の長辺方向に伸ばされ、複合型積層磁性部品10の他方の端部付近で中心に一対の内部電極17gとして形成される。一対の内部電極17gは、複合型積層磁性部品10の中心に沿って長辺方向に伸ばされる。ただし、一対の内部電極17gは、互いに接触しないように形成される。そして、一対の内部電極17gは、複合型積層磁性部品10の一方の端部で第2の引出電極18gとして形成される。第2の引出電極18gは、複合型積層磁性部品10の両側面に沿って形成され、複合型積層磁性部品10の他方の端部まで伸ばされる。
【0030】
次に、本実施の形態における複合型積層磁性部品10の製造工程の例について説明する。
【0031】
図3は、磁性体部11に相当する積層体10′を説明するために用いる分解斜視図である。積層体10′は、焼結前段階とする。積層体10′は、フェライトプレート21aと、第1のコイルパターン部22と、その他のコイルパターン部23と、フェライトプレート21bとを厚み方向に重ねて形成される。フェライトプレート21a,21bは、後述する工法によって形成したフェライトシートを、所望の枚数だけ積層して形成される。第1のコイルパターン部22とその他のコイルパターン部23には、それぞれ異なる図示しないコイルパターンが形成されている。第1のコイルパターン部22と、その他のコイルパターン部23の製造工程については後述する。なお、本実施の形態例では、第1のコイルパターン部22を1次コイルとし、その他のコイルパターン部23を2次コイルとして説明する。なお、フェライトプレート21a,21bで挟み込むコイルパターン部は、3枚以上としてもよい。
【0032】
複合型積層磁性部品10は、以下に説明する工程と工法により製造することができる。なお、最終的な形態が、複合型積層磁性部品10と同様のものであれば、その工程と工法は特に限定されるものではない。
【0033】
(フェライトシートとフェライトプレートの製造工程)
ここで、フェライトプレート21a,21bの製造工程の例について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0034】
まず、必要な磁気特性を有するNi−Cu−Zn系フェライト粉末、結着剤の原料となる樹脂粉末、フェライトシートに可撓性を与える可塑剤、有機溶剤等をそれぞれ必要な量だけ秤量する(ステップS1)。そして、秤量した材料を混合容器に投入し、材料が十分に分散するまで混合することで(ステップS2)、フェライトスラリーを生成する。
【0035】
その後、生成したフェライトスラリーを混合容器から回収し、ドクターブレード法等の工法によってフェライトスラリーを必要な厚みのシートに塗工する(ステップS3)。さらに、適正な温度条件の下で、塗工したフェライトスラリーのシートを乾燥させる(ステップS4)。
【0036】
次に、乾燥させたフェライトスラリーのシートを特定の大きさに切り出し(ステップS5)、複数枚のフェライトシートを作成する。切り出したフェライトシートは、空気が残らないように積層する(ステップS6)。そして、積層したフェライトシートを上下の厚み方向からプレス機等を用いて仮圧着し、仮圧着フェライトシートを生成する(ステップS7)。
【0037】
さらに、仮圧着フェライトシートを一体化するために、CIP(冷間等方圧加工法:Cooling Isostatic Pressing)処理を行う(ステップS8)。こうして、フェライトシートを一体化させたフェライトプレート21a,21bを得ることができる。
【0038】
(コイルパターン部の製造)
次に、第1のコイルパターン部22と、その他のコイルパターン部23の製造工程について説明する。以降の説明では、第1のコイルパターン部22と、その他のコイルパターン部23とをコイルパターン部とも称する。コイルパターン部の製造工程では、導電性金属ペーストを基材に印刷するとともに、絶縁層を形成する必要がある。コイルパターン部は、主に、ビルドアップ工法あるいはスルーホール工法の2種類の製造工法を用いて形成される。これらの工法では、Agペースト印刷により内部導体となるコイルパターンを形成する。本実施の形態例においては、ビルドアップ工法を用いるものとする。
【0039】
(1)ビルドアップ工法
ここで、ビルドアップ工法について説明する。ビルドアップ工法とは、内部導体と絶縁層を形成するために、一貫してスクリーン印刷を行う工法である。ビルドアップ工法の利点は、印刷条件(印刷回数や、用いるペーストの粘度等の条件)を変えることによって内部導体や絶縁層の厚みを制御できることにある。このため、積層チップコイル毎に要求される構造条件(例えば、内部導体や絶縁層の厚み寸法等)に細かく対応できる。
【0040】
一般的に積層磁性部品10は、図5に示すように、一つの印刷ワーク25から複数個の積層体10′が得られるように形成される。このため、例えば、7.0mmL×3.5mmWのサイズであるグリーンチップコイル(焼結前工程のコイル)を製造する場合、印刷ワーク25のコイル印刷範囲が120mmL×120mmWであれば、600個弱の積層体10′が得られる。
【0041】
コイルパターン部の製造工程では、内部導体となる導電ペーストを基材に印刷し、内部導体にコイルパターンを形成するための絶縁層を形成する。絶縁層は、既に説明したフェライトシートの原料となる磁性粉末と同じ材料に、有機溶剤や可塑剤等を混合させることによって形成される。
【0042】
ビルドアップ工法によるコイルパターン部の形成工程は、基本的には、図6と図7に示すプロセスを経る。説明を簡略化するために3ターン仕様としたコイルパターンの製造工程例について説明する。
【0043】
このとき、印刷工程(1)を行うにあたり、採用し得る基材の材質や原料としては、離形材が塗布されたPETフィルム、フェライトシート、フェライトプレートが好適である。本実施の形態例においては、1次コイルとなる第1のコイルパターン部22には、図4の工程で得られたフェライトプレートを用いている。一方、その他のコイルパターン部23には、PETフィルムを用いている。そして、印刷工程(1)〜(16)を行うようにしている。
【0044】
まず、印刷工程(1)〜(8)について、図6を参照して説明する。図6は、縦に印刷工程(1)〜(8)、横に印刷パターン(a)〜(g)を表している。印刷パターン(a)〜(g)は、図2で説明したコイルパターン(A)〜(G)を形成する印刷工程毎に上面視したものである。
【0045】
印刷工程(1)は、基材に非磁性体部を形成する工程である。
【0046】
印刷パターン(a)〜(g)では、コイルパターン部が形成される基材30a〜30gに対してそれぞれ非磁性体部31a〜31gが形成される。非磁性体部31a〜31gの内部には、ほぼ長方形状であって、外側の長辺の両端部を円弧状とした左右対称な一対の非印刷領域が形成されている。非磁性体部31a〜31gによって形成される一対の非印刷領域は、互いに接触していない。そして、非磁性体部31a〜31gには、他の電極と接続するための窓部は形成されていない。
【0047】
印刷工程(2)は、基材に磁性体部を形成する工程である。
【0048】
印刷パターン(a)〜(g)では、印刷工程(1)で形成された非磁性体部31a〜31gの非印刷領域に対して、それぞれ磁性体部32a〜32gが形成される。
【0049】
印刷工程(3)は、非磁性体部に第1の引出電極を形成する工程である。
【0050】
印刷パターン(a)〜(g)では、非磁性体部31a〜31gに対してそれぞれ第1の引出電極33a〜33gが形成される。
印刷パターン(a)では、非磁性体部31aの中心付近から基材30aの長辺に対する一方の端部にかけて第1の引出電極33aが形成される。
印刷パターン(b)では、非磁性体部31bの両側面の中心付近から基材30bの長辺に対する一方の端部にかけて一対の第1の引出電極33bが形成される。
印刷パターン(c)では、非磁性体部31cの中心付近から基材30cの長辺に対する一方の端部にかけて第1の引出電極33cが形成される。ただし、第1の引出電極33cは、右側の磁性体部32cに接触していない。
【0051】
印刷パターン(d)では、非磁性体部31dの中心付近から基材30dの長辺に対する一方の端部にかけて第1の引出電極33dが形成される。ただし、第1の引出電極33dは、左側の磁性体部32dに接触していない。
印刷パターン(e)では、非磁性体部31eの左側面の中心付近から基材30eの長辺に対する一方の端部にかけて第1の引出電極33eが形成される。
印刷パターン(f)では、非磁性体部31fの右側面の中心付近から基材30fの長辺に対する一方の端部にかけて第1の引出電極33fが形成される。
印刷パターン(g)では、非磁性体部31gの両側面の中心付近から基材30gの長辺に対する一方の端部にかけて一対の第1の引出電極33gが形成される。
【0052】
印刷工程(4)は、非磁性体部に第1の内部電極を形成する工程である。
【0053】
印刷パターン(a)〜(g)では、非磁性体部31a〜31gに対してそれぞれ第1の内部電極34a〜34gが形成される。第1の内部電極34a〜34gは、第1の引出電極33a〜33gに対してそれぞれ接続される。
印刷パターン(a)では、第1の引出電極33aより、磁性体部32aの下側から磁性体部32aの両側面に向かって第1の内部電極34aが形成される。
印刷パターン(b)では、第1の引出電極33bより、磁性体部32bの下側から磁性体部32bの中心に向かって第1の内部電極34bが形成される。
印刷パターン(c)では、第1の引出電極33cより、磁性体部32cの下側から磁性体部32cの左側面に向かって第1の内部電極34cが形成される。
【0054】
印刷パターン(d)では、第1の引出電極33dより、磁性体部32dの下側から磁性体部32dの右側面に向かって第1の内部電極34dが形成される。
印刷パターン(e)では、第1の引出電極33eより、磁性体部32eの下側から磁性体部32eの中心に向かって第1の内部電極34eが形成される。ただし、第1の内部電極34eは、右側の磁性体部32eに接触していない。
印刷パターン(f)では、第1の引出電極33fより、磁性体部32fの下側から磁性体部32fの中心に向かって第1の内部電極34fが形成される。ただし、第1の内部電極34fは、左側の磁性体部32fに接触していない。
印刷パターン(g)では、第1の引出電極33gより、磁性体部32gの下側から磁性体部32gの中心に向かって一対の第1の内部電極34gが形成される。ただし、第1の内部電極34gは、互いに接触していない。
【0055】
印刷工程(5)は、印刷工程(4)まで印刷パターンを形成した基材に第1の非磁性体部を形成する工程である。
【0056】
印刷パターン(a)〜(g)では、印刷工程(1)で形成した非磁性体部31a〜31gと同様の形状とした第1の非磁性体部35a〜35gが形成される。ただし、第1の非磁性体部35a〜35gには、第1の内部電極34a〜34gと後述する第2の内部電極38a〜38gとを接続するための窓部36a〜36gが形成されている。第1の非磁性体部35a〜35gは、印刷工程(1)における非磁性体部31a〜31gと同様の形状とした非印刷領域を設けている。
印刷パターン(a)では、第1の非磁性体部35aの両側面の中心付近に窓部36aが形成される。
印刷パターン(b)では、第1の非磁性体部35bの中心付近に窓部36bが形成される。
印刷パターン(c)では、第1の非磁性体部35cの左側面の中心付近に窓部36cが形成される。
【0057】
印刷パターン(d)では、第1の非磁性体部35dの右側面の中心付近に窓部36dが形成される。
印刷パターン(e)では、第1の非磁性体部35eの中心付近に窓部36eが形成される。ただし、窓部36eは、右側の磁性体部32eには接触していない。
印刷パターン(f)では、第1の非磁性体部35fの中心付近に窓部36fが形成される。ただし、窓部36fは、左側の磁性体部32fには接触していない。
印刷パターン(g)では、第1の非磁性体部35gの中心付近に一対の窓部36gが形成される。ただし、窓部36gは、互いに接触していない。
【0058】
印刷工程(6)は、印刷工程(2)で形成した磁性体部に対して、新たに磁性体部を形成する工程である。
【0059】
印刷パターン(a)〜(g)では、磁性体部32a〜32gに対してそれぞれ磁性体部37a〜37gが形成される。磁性体部37a〜37gは、印刷工程(2)における磁性体部32a〜32gと同様の形状としている。
【0060】
印刷工程(7)は、第1の非磁性体部に第2の内部電極を形成する工程である。
【0061】
印刷パターン(a)〜(g)では、第1の非磁性体部35a〜35gに対してそれぞれ第2の内部電極38a〜38gが形成される。第2の内部電極38a〜38gは、それぞれ窓部36a〜36gを介して第1の内部電極34a〜34gに接続される。
印刷パターン(a)では、窓部36aを介して、磁性体部37aの上側から磁性体部37aの中心に向かって第2の内部電極38aが形成される。
印刷パターン(b)では、窓部36bを介して、磁性体部37bの上側から磁性体部37bの両側面に向かって第2の内部電極38bが形成される。
印刷パターン(c)では、窓部36cを介して、磁性体部37cの上側から磁性体部37cの中心に向かって第2の内部電極38cが形成される。ただし、第2の内部電極38cは、右側の磁性体部37cに接触していない。
【0062】
印刷パターン(d)では、窓部36dを介して、磁性体部37dの上側から磁性体部37dの中心に向かって第2の内部電極38dが形成される。ただし、第2の内部電極38dは、左側の磁性体部37dに接触していない。
印刷パターン(e)では、窓部36eを介して、磁性体部37eの上側から磁性体部37eの左側面に向かって第2の内部電極38eが形成される。
印刷パターン(f)では、窓部36fを介して、磁性体部37fの上側から磁性体部37fの右側面に向かって第2の内部電極38fが形成される。
印刷パターン(g)では、窓部36gを介して、磁性体部37gの上側から磁性体部37gの両側面に向かって一対の第2の内部電極38gが形成される。ただし、第2の内部電極38gは、互いに接触していない。
【0063】
印刷工程(8)は、印刷工程(7)まで印刷パターンを形成した基材に第2の非磁性体部を形成する工程である。
【0064】
印刷パターン(a)〜(g)では、印刷工程(1)で形成した非磁性体部31a〜31gと同様の形状とした第2の非磁性体部40a〜40gが形成される。ただし、第2の非磁性体部40a〜40gには、第2の内部電極38a〜38gと後述する第3の内部電極42a〜42gとを接続するための窓部39a〜39gが形成されている。第2の非磁性体部40a〜40gは、印刷工程(1)における非磁性体部31a〜31gと同様の形状とした非印刷領域を設けている。
印刷パターン(a)では、第2の非磁性体部40aの中心付近に窓部39aが形成される。
印刷パターン(b)では、第2の非磁性体部40bの両側面の中心付近に窓部39bが形成される。
印刷パターン(c)では、第2の非磁性体部40cの中心付近に窓部39cが形成される。ただし、窓部39cは、右側の磁性体部37cには接触していない。
【0065】
印刷パターン(d)では、第2の非磁性体部40dの中心付近に窓部39dが形成される。ただし、窓部39dは、左側の磁性体部37dには接触していない。
印刷パターン(e)では、第2の非磁性体部40eの左側面の中心付近に窓部39eが形成される。
印刷パターン(f)では、第2の非磁性体部40fの右側面の中心付近に窓部39fが形成される。
印刷パターン(g)では、第2の非磁性体部40gの両側面の中心付近に一対の窓部39gが形成される。
【0066】
引き続き、印刷工程(9)〜(16)について、図7を参照して説明する。図7は、縦に印刷工程(9)〜(16)、横に印刷パターン(a)〜(g)を表している。
【0067】
印刷工程(9)は、印刷工程(6)で形成した磁性体部に対して、新たに磁性体部を形成する工程である。
【0068】
印刷パターン(a)〜(g)では、磁性体部37a〜37gに対してそれぞれ磁性体部41a〜41gが形成される。磁性体部41a〜41gは、印刷工程(2)における磁性体部32a〜32gと同様の形状としている。
【0069】
印刷工程(10)は、第2の非磁性体部に第3の内部電極を形成する工程である。
【0070】
印刷パターン(a)〜(g)では、第2の非磁性体部40a〜40gに対してそれぞれ第3の内部電極42a〜42gが形成される。第3の内部電極42a〜42gは、それぞれ窓部39a〜39gを介してそれぞれ第2の内部電極38a〜38gに接続される。第3の内部電極42a〜42gは、第1の内部電極34a〜34gと同様の形状としている。
印刷パターン(a)では、窓部39aを介して、磁性体部41aの下側から磁性体部41aの両側面に向かって第3の内部電極42aが形成される。
印刷パターン(b)では、窓部39bを介して、磁性体部41bの下側から磁性体部41bの中心に向かって第3の内部電極42bが形成される。
印刷パターン(c)では、窓部39cを介して、磁性体部41cの下側から磁性体部41cの左側面に向かって第3の内部電極42cが形成される。
【0071】
印刷パターン(d)では、窓部39dを介して、磁性体部41dの下側から磁性体部41dの右側面に向かって第3の内部電極42dが形成される。
印刷パターン(e)では、窓部39eを介して、磁性体部41eの下側から磁性体部41eの中心に向かって第3の内部電極42eが形成される。ただし、第3の内部電極42eは、右側の磁性体部41eに接触していない。
印刷パターン(f)では、窓部39fを介して、磁性体部41fの下側から磁性体部41fの中心に向かって第3の内部電極42fが形成される。ただし、第3の内部電極42fは、左側の磁性体部41fに接触していない。
印刷パターン(g)では、窓部39gを介して、磁性体部41gの下側から磁性体部41gの中心に向かって一対の第3の内部電極42gが形成される。ただし、第3の内部電極42gは、互いに接触していない。
【0072】
印刷工程(11)は、印刷工程(10)まで印刷パターンを形成した基材に第3の非磁性体部を形成する工程である。
【0073】
印刷パターン(a)〜(g)では、印刷工程(5)で形成した非磁性体部35a〜35gと同様の形状とした第3の非磁性体部43a〜43gが形成される。ただし、第3の非磁性体部43a〜43gには、第3の内部電極42a〜42gと後述する第4の内部電極46a〜46gとを接続するための窓部44a〜44gが形成されている。第3の非磁性体部43a〜43gは、印刷工程(5)における非磁性体部31a〜31gと同様の形状とした非印刷領域を設けている。
印刷パターン(a)では、第3の非磁性体部43aの両側面の中心付近に窓部44aが形成される。
印刷パターン(b)では、第3の非磁性体部43bの中心付近に窓部44bが形成される。
印刷パターン(c)では、第3の非磁性体部43cの左側面の中心付近に窓部44cが形成される。
【0074】
印刷パターン(d)では、第3の非磁性体部43dの右側面の中心付近に窓部44dが形成される。
印刷パターン(e)では、第3の非磁性体部43eの中心付近に窓部44eが形成される。ただし、窓部44eは、右側の磁性体部41eには接触していない。
印刷パターン(f)では、第3の非磁性体部43fの中心付近に窓部44fが形成される。ただし、窓部44fは、左側の磁性体部41fには接触していない。
印刷パターン(g)では、第3の非磁性体部43gの両側面の中心付近に一対の窓部44gが形成される。ただし、窓部44gは、互いに接触していない。
【0075】
印刷工程(12)は、印刷工程(9)で形成した磁性体部に対して、新たに磁性体部を形成する工程である。
【0076】
印刷パターン(a)〜(g)では、それぞれの磁性体部41a〜41gに磁性体部45a〜45gが形成される。磁性体部45a〜45gは、印刷工程(2)における磁性体部32a〜32gと同様の形状としている。
【0077】
印刷工程(13)は、第3の非磁性体部に第4の内部電極を形成する工程である。
【0078】
印刷パターン(a)〜(g)では、第3の非磁性体部43a〜43gに対してそれぞれ第4の内部電極46a〜46gが形成される。第4の内部電極46a〜46gは、それぞれ窓部44a〜44gを介して第3の内部電極42a〜42gに接続される。また、第4の内部電極46a〜46gは、第2の内部電極38a〜38gと同様の形状としている。
印刷パターン(a)では、窓部44aを介して、磁性体部45aの上側から磁性体部45aの中心に向かって第4の内部電極46aが形成される。
印刷パターン(b)では、窓部44bを介して、磁性体部45bの上側から磁性体部45bの両側面に向かって第4の内部電極46bが形成される。
印刷パターン(c)では、窓部44cを介して、磁性体部45cの上側から磁性体部45cの中心に向かって第4の内部電極46cが形成される。ただし、第4の内部電極46cは、右側の磁性体部45cに接触していない。
【0079】
印刷パターン(d)では、窓部44dを介して、磁性体部45dの上側から磁性体部45dの中心に向かって第4の内部電極46dが形成される。ただし、第4の内部電極46dは、右側の磁性体部45dに接触していない。
印刷パターン(e)では、窓部44eを介して、磁性体部45eの上側から磁性体部45eの左側面に向かって第4の内部電極46eが形成される。
印刷パターン(f)では、窓部44fを介して、磁性体部45fの上側から磁性体部45fの右側面に向かって第4の内部電極46fが形成される。
印刷パターン(g)では、窓部44gを介して、磁性体部45gの上側から磁性体部45gの両側面に向かって一対の第4の内部電極46gが形成される。ただし、第4の内部電極46gは、互いに接触していない。
【0080】
印刷工程(14)は、第3の非磁性体部に第2の引出電極を形成する工程である。
【0081】
印刷パターン(a)〜(g)では、第3の非磁性体部43a〜43gに対してそれぞれ第2の引出電極47a〜47gが形成される。第2の引出電極47a〜47gは、それぞれ第4の内部電極46a〜46gに接続される。
印刷パターン(a)では、第3の非磁性体部43aの中心付近から基材30aの長辺に対する他方の端部にかけて第2の引出電極47aが形成される。
印刷パターン(b)では、第3の非磁性体部43bの両側面の中心付近から基材30bの長辺に対する他方の端部にかけて一対の第2の引出電極47bが形成される。
印刷パターン(c)では、第3の非磁性体部43cの中心付近から基材30cの長辺に対する他方の端部にかけて第2の引出電極47cが形成される。ただし、第2の引出電極47cは、右側の磁性体部45cに接触していない。
【0082】
印刷パターン(d)では、第3の非磁性体部43dの中心付近から基材30dの長辺に対する他方の端部にかけて第2の引出電極47dが形成される。ただし、第2の引出電極47dは、左側の磁性体部45dに接触していない。
印刷パターン(e)では、第3の非磁性体部43eの左側面の中心付近から基材30eの長辺に対する他方の端部にかけて第2の引出電極47eが形成される。
印刷パターン(f)では、第3の非磁性体部43fの右側面の中心付近から基材30fの長辺に対する他方の端部にかけて第2の引出電極47fが形成される。
印刷パターン(g)では、第3の非磁性体部43gの両側面の中心付近から基材30gの長辺に対する他方の端部にかけて一対の第2の引出電極47gが形成される。
【0083】
印刷工程(15)は、印刷工程(14)までの印刷パターンを形成した基材に窓部がない非磁性体部を形成する工程である。
【0084】
印刷パターン(a)〜(g)では、印刷工程(1)で形成した非磁性体部31a〜31gと同様の形状とした非磁性体部48a〜48gが形成される。なお、非磁性体部48a〜48gには、他の電極と接続するための窓部は形成されていない。第3の非磁性体部43a〜43gは、印刷工程(5)における非磁性体部31a〜31gと同様の形状とした非印刷領域を設けている。
【0085】
印刷工程(16)は、印刷工程(12)で形成した磁性体部に対して、新たに磁性体部を形成する工程である。
【0086】
印刷パターン(a)〜(g)では、磁性体部45a〜45gに対してそれぞれ磁性体部49a〜49gが形成される。磁性体部49a〜49gは、印刷工程(2)における磁性体部32a〜32gと同様の形状としている。
【0087】
このように印刷工程(1)〜(16)を経ることで、任意の巻き数としたコイルパターン部を得ることができる。図6と図7の印刷工程では、形成されたコイルパターンの巻数が3ターンの場合について説明した。コイルパターンの巻数を4ターン以上とするためには、印刷工程(1)〜(13)を経た後、印刷工程(8)〜(13)を繰り返し、所望の巻数となった時点で、印刷工程(14)以降の工程を行えばよい。
【0088】
なお、印刷パターン(a)で形成されるコイルパターン図2(A)と印刷パターン(d)で形成されるコイルパターン図2(D)の場合、磁性体部11の中央に配置された内部電極の幅寸法を、両側に配置された内部電極の幅寸法の2倍にしておくと、直流抵抗値:DCRを低く保つことができる。
【0089】
次に、コイルパターン部を得た後、複合型積層磁性部品10が完成するまでの工程について、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0090】
コイルパターンの印刷工程が完了した複数のコイルパターン部と、先に作成したフェライトプレートとを用いて積層工程を行う(ステップS10)。各部材の配置関係は、図3で説明した通りである。積層工程では、各部材を積層した厚み方向よりプレス等の手段を用いて仮圧着を行う。さらに一体化するためにCIP処理を行うことにより、積層体10′を得る。
【0091】
次に、積層体10′を切削ブレードによって所望の寸法を有するよう、複数個の積層チップコイルに切り出す(ステップS11)。その後、積層チップコイルを所定温度にて焼結する(ステップS12)。そして、後工程として面取りを行うためにバレル研磨を行う(ステップS13)。また、端子電極用導体(Ag)ペーストを、複合型積層磁性部品の両端部に露出した引出電極の位置に塗布し(ステップS14)、焼成した後(ステップS15)、再度バレル研磨を行う(ステップS16)。バレル研磨は、メッキ処理においてメッキ付着強度を高めるために行われる。その後、形成した端子電極にNi、Sn等のメッキ処理を行う(ステップS17)。
【0092】
以上の工程を経ることで、複合型積層磁性部品10が完成する。
【0093】
ところで、複合型積層磁性部品10を、積層トランス又は積層コモンモードコイルとして構成する場合は、複合型積層磁性部品10を透過上面視した際に、引出電極が互いに重複しない組み合わせとする必要がある。このため、図2(A)〜図2(G)に示されるコイルパターンを適切に選択することが必須の要件となる。これは、引出電極が重複してしまうと端子電極を形成する際に、複数のコイルパターン同士が短絡してしまうためである。
【0094】
なお、図2(A)〜図2(G)に示されるコイルパターンによって構成可能な積層トランス又は積層コモンモードコイルは、6端子(1次コイル〜3次コイル:例えば、図2(A),図2(E),図2(F)の組み合わせ等)の磁性部品が考えられる。しかしながら、引出電極の引き回しを工夫することによって、6端子以上の複合型積層磁性部品を得ることも可能となる。
【0095】
次に、本発明に係る複合型積層磁性部品10が有している作用と効果について、図9を参照して詳細な説明を行う。図9は、積層トランス50において、1次コイルに交流電流を印加することによって励磁される磁束と磁路の様子を示している。
【0096】
図9では、図2(A)のコイルパターンを1次コイル53とし、図2(D)のコイルパターンを2次コイル54として構成した積層トランス50を例に説明する。1次コイル53と2次コイル54の周囲は、非導電性の非磁性体部52で覆われている。
【0097】
積層トランス50として構成した、本発明に係る複合型積層磁性部品10において、1次コイル53によって励磁される磁束の流れと磁路51は一つとなる。2次コイル54は、この磁束と磁路を利用して起電力を発生することとなる。そして、非磁性体部52によって、1次コイル53のコイルパターンと2次コイル54のコイルパターンには、磁束のマイナーループが発生しない。このため、磁束の流れと磁路51が乱されることがないので磁気結合度に優れた積層トランスを得ることができる
【0098】
次に、本発明に係る複合型積層磁性部品10を積層トランスとして応用した場合のコイルパターンの組合せの例について、図10と図11を参照して説明する。図10と図11は、図2(A)〜図2(G)に示されるコイルパターンから好適な組み合わせを選定して例示したものである。なお、断面図は、複合型積層磁性部品10の幅方向に中心付近で切断した場合のコイルパターンの断面例を示す。また、複合型積層磁性部品10を形成する1次コイルと2次コイル(場合によって3次コイル)は、1次コイルから順番に積層したものとする。
【0099】
組合せ例1は、1次コイルに図2(A)、2次コイルに図2(D)のコイルパターンを組み合わせた例である。
組合せ例2は、1次コイルに図2(A)、2次コイルに図2(E)のコイルパターンを組み合わせた例である。
組合せ例3は、1次コイルに図2(A)、2次コイルに図2(F)のコイルパターンを組み合わせた例である。
組合せ例4は、1次コイルに図2(A)、2次コイルに図2(E)、3次コイルに図2(F)のコイルパターンを組み合わせた例である。
【0100】
組合せ例5は、1次コイルに図2(A)、2次コイルに図2(G)のコイルパターンを組み合わせた例である。
組合せ例6は、1次コイルに図2(B)、2次コイルに図2(D)のコイルパターンを組み合わせた例である。
組合せ例7は、1次コイルに図2(B)、2次コイルに図2(E)のコイルパターンを組み合わせた例である。
組合せ例8は、1次コイルに図2(B)、2次コイルに図2(F)のコイルパターンを組み合わせた例である。
【0101】
組合せ例9は、1次コイルに図2(B)、2次コイルに図2(E)、3次コイルに図2(F)のコイルパターンを組み合わせた例である。
組合せ例10は、1次コイルに図2(B)、2次コイルに図2(G)のコイルパターンを組み合わせた例である。
組合せ例11は、1次コイルに図2(C)、2次コイルに図2(D)のコイルパターンを組み合わせた例である。
組合せ例12は、1次コイルに図2(C)、2次コイルに図2(E)のコイルパターンを組み合わせた例である。
【0102】
組合せ例13は、1次コイルに図2(C)、2次コイルに図2(F)のコイルパターンを組み合わせた例である。
組合せ例14は、1次コイルに図2(C)、2次コイルに図2(E)、3次コイルに図2(F)のコイルパターンを組み合わせた例である。
組合せ例15は、1次コイルに図2(C)、2次コイルに図2(G)のコイルパターンを組み合わせた例である。
組合せ例16は、図2(G)のコイルパターンの例である。なお、図2(G)は、2次コイルと3次コイルを同時に有している構成である。
【0103】
以上説明した、本実施の形態における複合型積層磁性部品10は、コイルパターンの形状を変えた複数のコイルパターン部を1つの複合型積層磁性部品10に形成することが可能である。このため、複合型積層磁性部品に大電流を印加することが可能であり、定格電流が向上するという効果がある。また、用途に応じてコイルパターンを選択することができるため、設計の自由度が向上するという効果がある。なお、コイルパターンの形状が同じ複数のコイルパターン部を積層して複合型積層磁性部品を形成してもよい。
【0104】
また、高さ方向に積層される1次コイル53のコイルパターンと2次コイル54のコイルパターンの間と周囲には、非磁性体部52を形成するようにしている。このため、それぞれのコイルパターンには、磁束のマイナーループが発生しない。さらに、複数のコイルパターンで1つの磁束と磁路を共有することができるため、磁束と磁路を乱されることがなくなり、磁気結合度に優れた積層トランスを得ることができるという効果がある。したがって、高効率の積層トランスを得ることが可能となる。
【0105】
また、複合型積層磁性部品10が磁気結合度に優れるという効果は、積層コモンモードコイルとして応用した場合にも利点を生じる。すなわち、ノーマルモードではインピーダンス特性が低く抑えられ、コモンモードではインピーダンス特性が高められることによって、コモンモードノイズを低減できる高性能な積層コモンモードフィルタを得ることが可能となる。
【0106】
なお、図10と図11の中で、積層コモンモードコイルに適用して好適な組み合わせ例としては、組合せ例1〜3,組合せ例5〜8,組合せ例10〜13,組合せ例15,組合せ例16が考えられる。ただし、本発明は図10と図11の組合せ例に限定されることなく、発明の本質を逸脱しない範囲において、個々のコイルパターンやコイルパターンの組み合わせを様々に変更することができる。
【0107】
また、上述した実施の形態における複合型積層磁性部品10の両端部に、端子電極を6個形成するようにしたが、採用するコイルパターンの種類に応じて端子電極の数を増減させてもよい。また、複合型積層磁性部品10の両側面に絶縁層を形成したが、コイルパターンの形状を変えることで絶縁層を被覆しない領域を設けて端子電極を形成するようにしてもよい。
【0108】
本発明に係る複合型積層磁性部品は、LCフィルタ用のインダクタンス素子としての表面実装コイルや、ノイズフィルタ用のインピーダンス素子としての表面実装コイルなどに利用することができる。また、その他の用途に用いても同様の機能、効果を得ることができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の一実施の形態における複合型積層磁性部品の例を示した構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態におけるコイルパターンの例を示した説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態における積層体の例を示した分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態におけるフェライトシートとフェライトプレートの製造工程の例を示したフローチャートである。
【図5】本発明の一実施の形態における印刷ワークの例を示した説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態における印刷工程の例を示した説明図である。
【図7】本発明の一実施の形態における印刷工程の例を示した説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態における複合型積層磁性部品の製造工程の例を示したフローチャートである。
【図9】本発明の一実施の形態における積層トランスの例を示した説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態におけるコイルパターンの組合せの例を示した説明図である。
【図11】本発明の一実施の形態におけるコイルパターンの組合せの例を示した説明図である。
【図12】従来の積層磁性部品の例を示した分解斜視図である。
【図13】従来の積層磁性部品の例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0110】
10…複合型積層磁性部品、10′…積層体、11…磁性体部、12a,12b…絶縁層、13a〜13f…端子電極、14…コイルパターン、15a〜15f…引出電極、21a,21b…フェライトプレート、22…第1のコイルパターン部、23…その他のコイルパターン部、25…印刷ワーク、50…積層トランス、51…磁束の流れ/磁路、52…非磁性体部、53…1次コイル、54…2次コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料からなる磁性体部と、
内部電極及び引出電極で形成されたコイルパターンを有するコイルパターン部と、
前記引出電極に接続される複数の端子電極とを備えるとともに、
複数の前記コイルパターン部が積層されている複合型積層磁性部品であって、
一のコイルパターン部の引出電極が接続される端子電極と、他のコイルパターン部の引出電極が接続される端子電極とが異なるように、前記一のコイルパターン部及び他のコイルパターン部を組み合わせて積層し、前記磁性体部に形成される磁路は一つであるとともに、前記積層したコイルパターン部によって励磁された磁束は、前記磁路を共通して流れることを特徴とする
複合型積層磁性部品。
【請求項2】
前記積層したコイルパターン部に形成されたそれぞれの前記コイルパターンの間及び周囲には、非磁性体部が形成されていることを特徴とする
請求項1に記載の複合型積層磁性部品。
【請求項3】
前記引出電極と前記端子電極とが接続される面と直交する両側面には、非導電性の非磁性材料からなる絶縁層が形成されていることを特徴とする
請求項1又は2に記載の複合型積層磁性部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate