説明

複合多孔材料及びその製造方法

【課題】高空隙率を維持しつつ、脆弱性を克服した多孔材料;及びその製造方法の提供。
【解決手段】繊維積層体の空孔に、シリカ、有機合成高分子及び天然有機高分子からなる群から選ばれる多孔体が充填される複合多孔材料であって、該複合多孔材料は乾燥体であり、多孔体の代表空孔径が500nm以下、好ましくは200nm以下であり、複合多孔材料の窒素吸着BET比表面積が20m/g以上、好ましくは40m/g以上である、上記複合多孔材料により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合多孔材料及びその製造方法に関する。特に、本発明は、相対的に空孔径の大きい繊維積層体と、該空孔に充填される、相対的に空孔径が小さい多孔体とを有する複合多孔材料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多孔材料、特に代表的空孔径が数百nm以下であるナノ多孔材料、特にシート状成形体は、フィルタ、触媒担体、電極、電池やキャパシタの隔壁(セパレータ)、薬剤担持材料、熱分解炭素前駆体、などの高機能材料として用途が広がっている。
そのような材料として、無機および有機の各種物質が利用される。この種の材料は最終利用場面では空隙に液体または固体を充填した状態で使用されることもあるが、製品として出荷される際には多孔性を維持した乾燥固体であることが望ましい。
【0003】
ナノ多孔材料を調製する方法として、液体中で調製した多孔体、即ちゲルを、溶媒置換乾燥(超臨界乾燥を含む)によって空隙を維持して乾燥多孔体、即ちエアロゲルとする方法が有効である。そのような材料の例として、ゾルゲル法で得られるシリカゲルを超臨界乾燥したシリカエアロゲル(非特許文献1及び2、特許文献1及び2)、及び再生セルロースゲルを溶媒置換乾燥したセルロースエアロゲル(非特許文献3及び4、特許文献3)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−81382号公報。
【特許文献2】USP6,956,066。
【特許文献3】特開2008−231258号公報。
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of Non-Crystalline Solids 225 (1998) 364-368. M. Schmidt, F. Schwertfeger, “Applications for silica aerogel products”。
【非特許文献2】Angew. Chem. Int. Ed., 37 (1998) 22-45. Nicola Husing and Ulrich Schubert, “Aerogels--Airy Materials: Chemistry, Structure, and Properties”。
【非特許文献3】Chem. Rev. 2002, 102, 4243-4265. Alain C. Pierre and Gerard M."Chemistry of Aerogels and Their Applications"。
【非特許文献4】ChemSusChem 2008, 149-154. Cai, J., Kimura, S., Wada, M., Kuga S. "Novel cellulose aerogel from alkali hydroxide-urea aqueous solution"。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、高空隙率のエアロゲルは一般に脆弱であり、特に薄いシート状に成形すると割れや崩壊を生じやすく、取り扱いが困難であった。例えば、エアロゲルのうち無機物からなるもの(例えば特許文献1)は一般に、可撓性に欠け脆弱であり、特に厚さ0.5mm以下のシート材料として提供することは困難である。他方、有機高分子材料は一般に、可撓性と靭性に富むので、そのエアロゲルをシート材料として提供できるならば利用価値が高い。
そこで、本発明の目的は、高空隙率を維持しつつ、脆弱性を克服した多孔材料を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記目的に加えて、そのような多孔材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、次の発明を見出した。
<1> 繊維積層体の空孔に、シリカ、有機合成高分子及び天然有機高分子からなる群から選ばれる多孔体が充填される複合多孔材料であって、該複合多孔材料は乾燥体であり、多孔体の代表空孔径が500nm以下、好ましくは200nm以下であり、複合多孔材料の窒素吸着BET比表面積が20m/g以上、好ましくは40m/g以上である、上記複合多孔材料。
【0008】
<2> 上記<1>において、多孔体は、有機合成高分子及び天然有機高分子からなる群から選ばれるのがよい。
<3> 上記<1>又は<2>において、有機合成高分子は、ポリイミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリエステル及びポリアクリルアミドからなる群から選ばれるのがよく、好ましくはポリイミド、ポリオレフィン及びハロゲン化ポリオレフィンからなる群から選ばれるのがよい。
<4> 上記<1>又は<2>において、天然有機高分子は、セルロース、キチン、アガロース及びβ-1,3グルカンからなる群から選ばれるのがよく、特にセルロースであるのがよい。
【0009】
<5> 上記<1>〜<4>のいずれかにおいて、繊維積層体は、ガラス繊維、セルロース系繊維、炭素繊維及び合成有機高分子繊維からなる群から選ばれる繊維からなる積層体であるのがよい。
<6> 上記<1>〜<5>のいずれかにおいて、繊維積層体の空孔の平均径は1μm以上、好ましくは5μm以上、100μm以下であるのがよい。
<7> 上記<1>〜<6>のいずれかの複合多孔材料は、厚さ1mm以下のシート状成形体であるのがよい。
【0010】
<8> 繊維積層体の空孔に、シリカ、有機合成高分子及び天然有機高分子からなる群から選ばれる多孔体が充填される複合多孔材料であって乾燥体である複合多孔材料の製造方法であり、該方法が、
A)繊維積層体を準備する工程;
B)繊維積層体の空孔に高分子又はその前駆体を含む液を充填する工程;
C)高分子又はその前駆体を多孔体へと調製する工程;及び
D)多孔体が充填された繊維積層体を乾燥する工程;
を有することにより、乾燥体である複合多孔材料を調製し、多孔体の代表空孔径が500nm以下、好ましくは200nm以下である、上記方法。
<9> 上記<8>において、複合多孔材料の窒素吸着BET比表面積が20m/g以上、好ましくは40m/g以上であるのがよい。
【0011】
<10> 上記<8>又は<9>において、B)工程の高分子又はその前駆体が、i)セルロース以外の天然高分子、シリカ及び/又は有機合成高分子、もしくはそれらの前駆体;及びii)セルロース;の混合体であり、
B)工程において、混合体を含む液を繊維積層体の空孔に充填し、
C)工程において、
C)−1) 混合体からその多孔体、即ちi)セルロース以外の天然高分子、シリカ及び/又は有機合成高分子;とii)セルロース;との多孔体、へと調製する工程を有するのがよい。
<11> 上記<10>において、C)−1)工程後、C)−2)セルロースを加水分解又は熱分解によって除去する工程を有してもよい。なお、この場合、セルロース以外の天然高分子、シリカ及び/又は有機合成高分子のみからなる多孔体が繊維積層体の空孔に充填される複合多孔材料を調製することができる。
【0012】
<12> 上記<8>〜<11>のいずれかにおいて、多孔体は、有機合成高分子及び天然有機高分子からなる群から選ばれるのがよい。
<13> 上記<8>〜<12>のいずれかにおいて、有機合成高分子は、ポリイミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリエステル及びポリアクリルアミドからなる群から選ばれるのがよく、好ましくはポリイミド、ポリオレフィン及びハロゲン化ポリオレフィンからなる群から選ばれるのがよい。
<14> 上記<8>〜<13>のいずれかにおいて、天然有機高分子は、セルロース、キチン、アガロース及びβ-1,3グルカンからなる群から選ばれるのがよく、特にセルロースであるのがよい。
【0013】
<15> 上記<8>〜<14>のいずれかにおいて、繊維積層体は、ガラス繊維、セルロース系繊維、炭素繊維及び合成有機高分子繊維からなる群から選ばれる繊維からなる積層体であるのがよい。
<16> 上記<8>〜<15>のいずれかにおいて、繊維積層体の空孔の平均径は1μm以上、好ましくは5μm以上であるのがよい。
<17> 上記<8>〜<16>のいずれかにおいて、A)工程で準備する繊維積層体が、厚さ1mm以下のシート状であるのがよい。
<18> 上記<8>〜<15>のいずれかの複合多孔材料は、厚さ1mm以下のシート状成形体であるのがよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、高空隙率を維持しつつ、脆弱性を克服した多孔材料を提供することができる。
また、本発明により、上記効果に加えて、そのような多孔材料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1の走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」と略記する)像である。
【図2】実施例1のSEM像である。
【図3】実施例2のSEM像である。
【図4】実施例3のSEM像である。
【図5】実施例1で用いたガラスペーパーのSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、複合多孔材料及びその製造方法を提供する。以下、順に説明する。
<複合多孔材料>
本発明の複合多孔材料は、繊維積層体の空孔に、シリカ、有機合成高分子及び天然有機高分子からなる群から選ばれる多孔体が充填されてなる。
ここで、繊維積層体は、相対的に空孔平均径が大きく、その空孔の平均径は1μm以上、好ましくは5μm以上であるのがよい。
一方、繊維積層体の空孔に充填される多孔体は、相対的に孔の代表径が小さく、その代表径が500nm以下、好ましくは200nm以下であるのがよい。
なお、ここで、代表径とは、走査型電子顕微鏡による表面観察、または透過型電子顕微鏡による超薄切片観察で観察される多孔体の網目構造で典型的に観察される網目要素間の間隔を意味する。
また、本発明の複合多孔材料は、その窒素吸着BET比表面積が20m/g以上、好ましくは40m/g以上であるのがよい。
【0017】
このような特性を有する本発明の複合多孔材料は、従来脆弱であった多孔材料を、機械的に安定したものとすることができる。このため、移送、さらなる加工等において、取り扱いが容易な材料を提供することができ、例えば、厚さ1mm以下のシート状材料として提供することができる。
【0018】
<<繊維積層体>>
本発明の複合多孔材料のうち、繊維積層体は、ガラス繊維、セルロース系繊維、炭素繊維及び合成有機高分子繊維からなる群から選ばれる繊維からなる積層体であるのがよい。
例えば、繊維積層体として、天然植物繊維からなる紙および板紙、ガラス繊維紙、再生セルローススポンジ、合成ゴムスポンジ、多孔セラミックス、カーボンペーパー、合成繊維不織布、及び再生セルロース不織布などを挙げることができるが、これらに限定されない。
繊維積層体は、上述のように、相対的に空孔の平均径が大きく、その空孔の平均径は1μm以上、好ましくは5μm以上であるのがよい。
本発明の複合多孔材料を上述の厚さのシート状材料とするために、繊維積層体は、その厚さが1mm以下であるのがよい。
【0019】
<<多孔体>>
本発明の複合多孔材料のうち、多孔体は、シリカ、有機合成高分子及び天然有機高分子からなる群から選ばれる1種又はそれ以上であるのがよく、好ましくは有機合成高分子及び天然有機高分子からなる群から選ばれる1種又はそれ以上であるのがよい。
有機合成高分子として、ポリイミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリエステル及びポリアクリルアミドからなる群から選ばれるのがよく、好ましくはポリイミド、ポリオレフィン及びハロゲン化ポリオレフィンからなる群から選ばれるのがよい。
また、天然有機高分子として、セルロース、キチン、アガロース及びβ-1,3グルカンからなる群から選ばれるのがよく、特にセルロースであるのがよい。
【0020】
本発明の複合多孔材料は、例えば次のような製法により製造することができる。
即ち、A)繊維積層体を準備する工程;
B)繊維積層体の空孔に高分子又はその前駆体を含む液を充填する工程;
C)高分子又はその前駆体を多孔体へと調製する工程;及び
D)多孔体が充填された繊維積層体を乾燥する工程;
を有することにより、上述の複合多孔材料を調製することができる。
なお、製法において用いる語、例えば「繊維積層体」、「多孔体」などの上述と同じ語は、上述と同じ内容を有するため、その説明を省略する。
【0021】
A)工程は、繊維積層体を準備する工程である。準備には、繊維積層体を市販購入しても、別途調製してもよい。
【0022】
B)工程は、上記A)工程で準備した繊維積層体の空孔に、高分子又はその前駆体を含む液を充填する工程である。
ここで、前駆体とは、後に多孔体に成り得る物質をいう。例えば、多孔体がシリカからなる場合、後にシリカに成り得る物質として、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケートなどを挙げることができるがこれに限定されない。
また、多孔体が上述の有機合成高分子の場合、前駆体として、それらのモノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー、プレポリマーなどを挙げることができるがこれに限定されない。
【0023】
B)工程において、充填は、高分子又はその前駆体を含む液に繊維積層体を浸漬する方法;高分子又はその前駆体を含む液を繊維積層体に塗布する方法、例えば液を繊維積層体に噴霧する方法、ローラなどを用いて転写する方法;などにより行うことができる。
ここで、用いる液は、用いる高分子又はその前駆体の種類、用いる繊維積層体の種類などに依存する。液として、高分子又はその前駆体の溶液、懸濁液等を挙げることができ、好ましくは高分子又はその前駆体の溶液であるのがよい。
【0024】
C)工程は、高分子又はその前駆体を多孔体へと調製する工程である。
例えば、前駆体としてシリカ前駆体、例えば、テトラエチルオルソシリケート(以下、「TEOS」と略記する場合がある)を用いた場合、いわゆるゾルゲル法でシリカ多孔体を調製する方法などを挙げることができる。
また、高分子としてセルロースを用いた場合、繊維積層体の空孔にセルロース溶液が充填されたものを、セルロースの非溶媒、例えばメタノールなどに接触させる方法、例えばメタノールなどに浸漬する方法などにより、セルロース多孔体を調製する手法などを挙げることができる。
なお、C)工程での、高分子又はその前駆体を多孔体への調製法は、用いる高分子、用いる前駆体、用いる繊維積層体などに依存し、上述の具体的に挙げた手法に限定されない。
【0025】
D)工程は、C)工程後、得られたもの、即ち多孔体が充填された繊維積層体を乾燥する工程である。
この乾燥工程により、繊維積層体に充填された多孔体をエアロゲルとすることができる。
乾燥工程は、溶媒置換及びその後の該溶媒の乾燥により行うことができる。なお、溶媒置換として、超臨界二酸化炭素置換も含まれる。
【0026】
乾燥として、凍結乾燥法、超臨界乾燥法、加熱乾燥法などを挙げることができる。各方法においての条件は、用いる繊維積層体の種類、用いる多孔体の種類、用いる液などに依存するが、例えば、次のような手法を用いた場合、以下の乾燥法を用いることができる。即ち、繊維積層体としてガラスペーパーを、多孔体となる高分子としてセルロースを用いる。アルカリ−尿素水溶液を用いてセルロース溶液とし、該セルロース溶液にガラスペーパーを浸漬し、付着液を除去してからメタノールに浸漬してセルロースをゲル状に再生させる。該湿潤セルロースゲルをエアロゲル化する場合には、含有液をエタノールに置換し、次いでフッ素系溶剤に置換し、次いで凍結乾燥する方法を挙げることができる。なお、上記において、フッ素系溶剤の代りに液体二酸化炭素を用いるならば、超臨界乾燥法で行うことができる。
以上のように、A)〜D)工程を用いることにより、本発明の複合多孔材料を得ることができる。
【0027】
なお、繊維積層体の空孔に充填させる多孔体が、セルロース以外の天然高分子、シリカ及び/又は有機合成高分子である場合、次のような手法を用いて調製することもできる。
即ち、B)工程の「高分子又はその前駆体」として、i)セルロース以外の天然高分子、シリカ及び/又は有機合成高分子、もしくはそれらの前駆体;及びii)セルロース;の混合体を用いる。
その後、上述のB)工程と同様に、該混合体を含む液を繊維積層体の空孔に充填する。
さらに、C)工程において、
C)−1)混合体からその多孔体、即ちi)セルロース以外の天然高分子、シリカ及び/又は有機合成高分子;とii)セルロース;との多孔体、へと調製する工程を有するのがよい。
さらに、C)−1)工程後、C)−2)セルロースを加水分解又は熱分解によって除去する工程を有してもよい。この場合、セルロース以外の天然高分子、シリカ及び/又は有機合成高分子からなる多孔体のみが繊維積層体の空孔内に充填される複合多孔材料が調製される。
【0028】
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
<セルロース溶液の調製>
水酸化リチウム4.6wt%と尿素15wt%とを含む水溶液100gを−12℃に冷却し、これにろ紙パルプ(純粋なセルロース。アドバンテック東洋製)2gを加えて攪拌するとセルロースは速やかに溶解し透明な溶液を与えた。
該セルロース溶液に、日本板硝子(株)製ガラスペーパー(厚さ:50μm、繊維径:0.5〜2μm、密度:約0.14g/cm、空隙率:90%以上、平均孔径:2〜5μm、最大孔径:10〜15μm。用いたガラスペーパーについて走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」と略記する)で観察した結果を図5に示す。)を浸漬し、付着液を除去してからメタノールに浸漬し、十分に水洗してセルロースをゲル化させてセルロースヒドロゲル含有ガラスペーパーを得た。
【0030】
該複合ゲルの含有液を水→エタノール→フッ素系溶剤(日本ゼオン(株)製ゼオローラH)と置換し、該ゲルを液体窒素に浸漬して凍結し、ヤマト科学(株)製フリーズドライヤDC-800により凍結乾燥して、ガラスペーパー担持セルロースエアロゲルを得た。該エアロゲルは、窒素吸着解析において43.9m/gの比表面積を有した。
また、SEM観察をした結果、図1および図2に示す像を得た。図1及び図2から、該エアロゲルは、代表値100〜200nmの空隙径を有していた。 基材である該ガラスペーパーは窒素吸着法により26.8m/gの比表面積を有していたので、組成解析から、担持されたセルロースエアロゲルの比表面積は143.9m/gと計算された。
【実施例2】
【0031】
実施例1と同じセルロースヒドロゲル含有ガラスペーパーを、含有液を水とした状態から、ヤマト科学(株)製フリーズドライヤDC-800により、水凍結乾燥してガラスペーパー担持セルロースエアロゲルを得た。
得られたエアロゲルを、実施例1と同様に、窒素吸着解析、及びSEM像観察を行った。その結果、窒素吸着解析において、31.0m/gの比表面積を有することがわかった。また、SEM像観察において、代表値200〜1000nmの空隙径を有することがわかった(図3参照)。
また、実施例1と同様の計算から、担持されたセルロースエアロゲルの比表面積は64.9m/gと計算された。
【実施例3】
【0032】
<ポリイミド前駆体の合成>
ポリアミド酸の調製は常法により、以下のように行った。絶乾した4-,4’-ジアミノジフェニルエーテルを脱水N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させておき、当モル量の無水ピロメリット酸の粉末を投入してすばやく攪拌した。この反応系は濃度が15重量%となるように調製した。
【0033】
<ポリイミド前駆体溶液のガラスペーパーへの含浸とイミド化>
実施例1と同じガラスペーパーを前記ポリアミド酸溶液に浸漬し、付着液体をろ紙吸取りで除去してから無水酢酸-ピリジン混液(1:1)に浸漬して化学イミド化を行った。
該複合体の含液ゲルを溶媒置換により超臨界CO(35℃、8000kPa)から乾燥し、ガラスペーパー担持ポリイミドエアロゲルを調製した。
得られたポリイミドエアロゲルを、実施例1と同様に、窒素吸着解析、及びSEM像観察を行った。その結果、窒素吸着解析において、62.2m/gの比表面積を有することがわかった。また、SEM像観察において、代表値200〜1000nmの空隙径を有することがわかった(図4参照)。
【実施例4】
【0034】
実施例1においてガラスペーパーの代りにろ紙(アドバンテック製定量ろ紙5C)を用いた以外、実施例1と同様に、該ろ紙をセルロース溶液に浸漬し、その後も同様に処理することにより、ろ紙担持セルロースエアロゲルを得た。該エアロゲルをSEM観察したところ、図示しないが、セルロースゲルがろ紙繊維間の空隙に充填され、図1及び図2のガラスペーパー担持セルロースエアロゲルと同様の構造を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維積層体の空孔に、シリカ、有機合成高分子及び天然有機高分子からなる群から選ばれる多孔体が充填される複合多孔材料であって、該複合多孔材料は乾燥体であり、前記多孔体の代表空孔径が500nm以下であり、前記複合多孔材料の窒素吸着BET比表面積が20m/g以上である、上記複合多孔材料。
【請求項2】
前記多孔体は、有機合成高分子及び天然有機高分子からなる群から選ばれる請求項1記載の複合多孔材料。
【請求項3】
前記有機合成高分子は、ポリイミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリエステル及びポリアクリルアミドからなる群から選ばれる請求項1又は2記載の複合多孔材料。
【請求項4】
前記天然有機高分子は、セルロース、キチン、アガロース及びβ-1,3グルカンからなる群から選ばれる請求項1〜3のいずれか1項記載の複合多孔材料。
【請求項5】
前記繊維積層体は、ガラス繊維、セルロース系繊維、炭素繊維及び合成有機高分子繊維からなる群から選ばれる繊維からなる積層体である請求項1〜4のいずれか1項記載の複合多孔材料。
【請求項6】
前記繊維積層体の空孔の平均径は1μm以上である請求項1〜5のいずれか1項記載の複合多孔材料。
【請求項7】
繊維積層体の空孔に、シリカ、有機合成高分子及び天然有機高分子からなる群から選ばれる多孔体が充填される複合多孔材料であって乾燥体である複合多孔材料の製造方法であり、該方法が、
A)繊維積層体を準備する工程;
B)繊維積層体の空孔に高分子又はその前駆体を含む液を充填する工程;
C)高分子又はその前駆体を多孔体へと調製する工程;及び
D)多孔体が充填された繊維積層体を乾燥する工程;
を有することにより、乾燥体である複合多孔材料を調製し、多孔体の代表空孔径が500nm以下である、上記方法。
【請求項8】
前記B)工程の高分子又はその前駆体が、i)セルロース以外の天然高分子、シリカ及び/又は有機合成高分子、もしくはそれらの前駆体;及びii)セルロース;の混合体であり、
前記B)工程において、混合体を含む液を繊維積層体の空孔に充填し、
前記C)工程において、
C)−1) 混合体からその多孔体へと調製する工程を有する請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記C)−1)工程後、C)−2)セルロースを加水分解又は熱分解によって除去する工程をさらに有する請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記多孔体は、有機合成高分子及び天然有機高分子からなる群から選ばれる請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
前記有機合成高分子は、ポリイミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリエステル及びポリアクリルアミドからなる群から選ばれる請求項8〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記天然有機高分子は、セルロース、キチン、アガロース及びβ-1,3グルカンからなる群から選ばれる請求項8〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記繊維積層体は、ガラス繊維、セルロース系繊維、炭素繊維及び合成有機高分子繊維からなる群から選ばれる繊維からなる積層体である請求項8〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記繊維積層体の空孔の平均径は1μm以上である請求項8〜13のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−80171(P2011−80171A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234764(P2009−234764)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】