複合容器
【課題】紙製容器本体の胴体の重ね合わせ部の上部開口側であって合成樹脂製の環状部材の溶着片を対応位置させる部分において、超音波溶着するときに、段差が極めて小さくなるか、或いはその段差が無いようにして、合成樹脂製の環状部材が紙製容器本体の上部開口に適正に溶着されるようにする。
【解決手段】壁板材2の側端辺3同士を重ね合わせた重ね合わせ部11の容器内方の側端辺3の上部14と容器外方の側端辺3の上部13との少なくとも一方に切り欠き15を設けた。
【解決手段】壁板材2の側端辺3同士を重ね合わせた重ね合わせ部11の容器内方の側端辺3の上部14と容器外方の側端辺3の上部13との少なくとも一方に切り欠き15を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙を主体とする板材により得られた紙製の容器本体のその上部に合成樹脂製のリングを配して、キャップや蓋材などの別部材を組み合わせし易くした複合容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から各種容器において合成樹脂材料の使用割合を小さくすることを目的として紙材と合成樹脂材とを組み合わせた複合容器が提案されてきている。その複合容器の一つとして、紙を主体とする積層材である板材を壁板材にして容器の胴体とするとともに同じ板材からなる天板及び底板を胴体に組み合わせて紙製の缶を得て、合成樹脂材にて別成形した注出口具を天板の飲み口に嵌め付け、そしてオーバーキャップを容器上部に被せるようにした工夫が提案されている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2001−114327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、胴体及び底部を板紙から成形したカップ状の紙製容器本体の上部に、別形成された部材のキャップや蓋材を取り付け易くするために、前記紙製容器本体の上部開口に合成樹脂材の環状部材を設ける複合容器を得る試みがある。
図9に示すようにこの複合容器1を得る場合、まず、上記紙缶の成形と同じように、壁板材2を筒状にして側端辺3同士を重ね合わせた胴体4を作成し、その胴体4の容器底部となる側に、前記壁板材2と同じ板紙からなる底板材5を配し、底板材5の折り倒した周辺を胴体4の折り上げた下部開口の周辺に掛けて底板材5の周辺と胴体4の下部開口の周辺とを圧着して、カップ状の紙製容器本体6を作成している。
合成樹脂製の環状部材7は、別部材のキャップや蓋材を受ける断面形状に成形された上構造部8と、上構造部8の下面に一体となっていて紙製容器本体6の上部開口の内周面に亘って溶着させる断面舌片状の溶着片9とからなるものである。そして、上記紙製容器本体6の上部開口の内周面に前記溶着片9を対応させるようにして環状部材7を紙製容器本体6の上部開口に配置して超音波溶着を行なっている。
【0004】
しかしながら、紙製容器本体の上部開口に上記環状部材を超音波溶着で取り付けた場合、以下の問題が生じていた。
超音波溶着を行なう場合、図10に示すように紙製容器本体6をアンビルaの凹所に置き、このアンビルaと環状部材7の内側に嵌め入れるホーンbとで胴体4の上端辺10と環状部材7の溶着片9とを挟み込んで超音波を加えることになるが、胴体4において、図11に示すように壁板材2の側端辺3同士を重ね合わせた重ね合わせ部11には容器内方及び容器外方に壁板材2の厚さ分の段差ができている。
そして、一部に段差のある胴体の上端部を、ほぼ正円形状のホーンとアンビルとで挟み込んで超音波を加えるため、上部開口の不特定の部分に応力が集中するとともに環形状の溶着片にもその影響を受けて不特定の部分に応力が集中したり大きな振れを起こし、その結果、環状部材の上記上構造部の薄肉部分などに割れや変形を生じさせていた。
また、重ね合わせ部は壁板材二枚分の厚さがあるが、ホーンとアンビルとの挟み込みでこの重ね合わせ部に溶着片が強く押し付けられるため、溶着片の強く押し付けられた部分12に過度の振動エネルギーが伝わり、この部分12が必要以上に溶融し、超音波溶着後には前記部分12に凹みが発生して、紙製容器本体の内部の外観を損なうなど、複合容器として不良となるという不都合があった。
【0005】
そこで本発明は上記事情に鑑み、紙製容器本体の胴体の重ね合わせ部の上部開口側であって合成樹脂製の環状部材の溶着片を対応位置させる部分において、上記ホーンとアンビルとで挟み込むときに、段差が極めて小さくなるか、或いはその段差が無いようにすることを課題とし、合成樹脂製の環状部材が紙製容器本体の上部開口に適正に溶着されるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1の発明)
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、壁板材の側端辺同士を重ね合わせて壁板材を筒状にした胴体を有するカップ状の紙製容器本体と、この紙製容器本体の上部開口の内周面に亘って溶着した合成樹脂製の環状部材とからなる複合容器であって、前記壁板材の側端辺同士を重ね合わせた重ね合わせ部の前記環状部材に対応する容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との少なくとも一方に切り欠きを設けて、前記容器内方の側端辺の上部と前記容器外方の側端辺の上部とを胴体の周方向に面一にしたことを特徴とする複合容器を提供して、上記課題を解消するものである。
【0007】
(請求項2の発明)
また、本発明において、前記容器内方の側端辺の上部と前記容器外方の側端辺の上部との両方に切り欠きが設けられていることが良好である。
【0008】
(請求項3の発明)
また、本発明において、前記切り欠きが、合成樹脂製フィルムで覆われていることが良好である。
【0009】
(請求項4の発明)
また、本発明において、前記重ね合わせ部の容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との間が、合成樹脂製フィルムで覆われていることが良好である。
【0010】
(請求項5の発明)
また、本発明において、前記重ね合わせ部の容器内方の側端辺の上部に切り欠きが設けられ、この切り欠きの端面と容器内方の側端辺の端面とが重ね合わせ部の長さ方向に沿った合成樹脂製フィルムで覆われていることが良好である。
【0011】
(請求項6の発明)
また、本発明において、前記合成樹脂製フィルムは、層構成中にガスバリア層を含んでいる積層フィルムであることが良好である。
【発明の効果】
【0012】
(請求項1の発明の効果)
請求項1の発明によれば、壁板材の重ね合わせ部における容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との少なくとも一方に切り欠きを設けて、容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部とを胴体の周方向に面一にしたので、合成樹脂製の環状部材を紙製容器本体の上部開口に配して上記ホーンとアンビルとで挟み込みして超音波溶着する際、紙容器本体の上部開口に不均一な応力が加わらず、この紙容器本体の胴体の上端辺とともに環状部材に適正な状態で超音波振動のエネルギーを受けることとなる。
そのため、環状部材に従来のような割れや変形が生じないようになる。また、溶着片についても胴体に対して局部的に強く当接する部分がなくなるため、重ね合わせ部に対応した部分で過度に溶融するという従来の不具合を生じさせることがない。
【0013】
(請求項2の発明の効果)
請求項2の発明によれば、壁板材の容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との両方に切り欠きが設けられているので、切り欠きそれぞれを壁板材の上端辺方向に沿って深く切り込まなくとも、容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との重なりを無くすことが容易になる。よって、重ね合わせ部で壁板材の側端辺同士の重ね合わせに高い精度を要求することなく、両方の切り欠きの端面を胴体の周方向に面一にすることができる。
【0014】
(請求項3の発明の効果)
筒状の胴体を得るに際して、壁板材を側端辺同士を重ね合わせて、容器内方の側端辺の上部の端面と容器外方の側端辺の上部の端面とが突き合った状態となるのが好ましい。
しかしながら、壁板材の側端辺同士を重ねて貼り合わせるときに誤差が生じ易く、必ずしも上記端面同士がぴったりと突き合った状態にすることは製造上、効率のよいものではない。
容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との重なりが生じないようにすることが重要であることから、胴体を形成したときに重ねあわせ部での容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との間に隙間を形成することが望ましい。
このようにすることで、重ね合わせ部の上部開口側では面一となり、合成樹脂製の環状部材を超音波溶着する上でも、その環状部材に不具合を生じさせないメリットがある。
【0015】
一方、隙間が形成されると、その隙間での切り欠きの端面が外部空気になどの晒される結果となる。特に切り欠きについては切断により形成されていて、板紙材の紙層が切断端面で露出する。そして、外部空気中の酸素などがその端面の紙層に入り込み易くなる。
そこで、請求項3の発明によれば、切り欠きが設けられた部分の端面が本複合容器の周りの外部空気に晒されないようになる。そのため、切り欠きのある部分の端面に外部空気中の酸素が入り込み、壁板材の内部を通って容器内に入るのを抑えることができる。即ち、壁板材自体のバリア性を低下させることがない。よって、本複合容器を利用して収納容器を構成しても、未開封の段階(流通時)で内容物の変質などを抑える上で効果がある。
【0016】
(請求項4の発明の効果)
上述したように重ね合わせ部での容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との間に隙間を形成することで、重ね合わせ部の上部開口側では面一となり、合成樹脂製の環状部材を超音波溶着する上でも、その環状部材に不具合を生じさない。
一方、胴体の上部開口に合成樹脂製の環状部材を溶着する場合に、取付誤差によって環状部材の溶着片が胴体に対して上方に位置ずれした状態で溶着される場合もある。
そして、重ね合わせ部での容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との間に隙間があるため、内側から環状部材の溶着片が対応位置するとしても、切り欠きの下端高さ位置と溶着片の下端高さ位置とが容器高さ方向に僅かに開き、切り欠きの下辺の上に空気が容器内外に移動する孔が生じる。そのため、容器としてバリア性が低下する。
請求項4の発明によれば、合成樹脂製フィルムで、容器内方の側端辺の上部と前記容器外方の側端辺の上部との間を覆うので、本複合容器を用いた収納容器が未開封の状態時(例えば流通段階)に、容器内方の側端辺の上部と前記容器外方の側端辺の上部との間から外部の空気などが容器内に入り込むのを防止できる。
【0017】
(請求項5の発明の効果)
請求項5の発明によれば、切り欠きが設けられた部分の端面が本複合容器の周りの空間などの外部環境に対して晒されないようになる。そのため、例えば切り欠きのある部分の壁板材の端面に外部空気中の酸素が入り込み、そして、その壁板材の内部を通って容器内に入り込むようになるのを抑えることができる。よって、本複合容器を利用して包装容器を構成しても、収納する内容物の変質などを抑える上で効果がある。
また、容器内方の側端辺の端面が切断端面であっても、合成樹脂製フィルムで保護されることとなる。そのため、本複合容器を利用した包装容器に収納する内容物が、食用油脂などの紙に対して浸透性のある成分を含むものであり、そして、容器内方の側端辺の端面が切断端面であったとしても、その切断端面の部分から前記浸透性のある成分の染み込みを抑止する上で効果がある。
【0018】
(請求項6の発明の効果)
請求項6の発明により、容器外部から合成樹脂製フィルムを通して容器内部へ、また、容器内部から合成樹脂製フィルムを通して容器外部へガスが透過するのを防止できる。
そのため、本複合容器を利用した包装容器に収納する内容物を、外部空気に触れさせないようにする場合により一層の良好な効果があり、また、内容物が発するガス(香りなど)があるような場合にも、そのガスが容器外部に発散するのを抑える上でより一層の良好な効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
つぎに本発明を図1から図8の実施の形態に基づいて詳細に説明する。なお、図9から図11に示す検討技術と構成が重複する部分は同符号を付してその説明を省略する。
複合容器1は上述したように壁板材2の側端辺3同士を重ね合わせて壁板材2を筒状とした胴体4を有する紙製容器本体6と、この紙製容器本体6の上部開口に超音波溶着にて溶着された合成樹脂製の環状部材7とからなるものである。紙製容器本体6の壁板材2と底板材5とはそれぞれ紙を主体とする積層構成の板紙を用いている。
【0020】
上記壁板材2の側端辺3同士を重ね合わせた重ね合わせ部11における胴体4の上端部側であって、この胴体4の上端部の内側に超音波溶着された環状部材7の溶着片9に対応する領域内で、壁板材2の容器外方の側端辺3の上部13に図示のように略L字型にした切り欠き15を設けている。そして、前記切り欠き15を設けた容器外方の側端辺3の上部13と容器内方の側端辺3の直線状の上部14とが重なることなく胴体4の周方向に面一にしている(図2参照)。
この実施の例では、胴体4の径が約60mmとなるように壁板紙2が巻かれているもので、紙製容器本体6の容器高さは60mmとしている。そして、壁板板2の側端辺3同士を重ねてヒートシールにより貼り合わせる際の製造誤差などを考慮して、前記切り欠き15の縦辺16の端面と、容器内方の側端辺3の上部の端面とが約1.5mm程度の隙間17を持って相対している。
切り欠き15は、予め壁紙板2を筒状にする前の平板形態の時点で設けられており、上述した製造誤差を考慮した隙間17が得られるように壁板紙2の上端辺に沿って設定された長さにして切り欠かれている。
【0021】
また、切り欠き15の下辺18の位置は、壁板材2における溶着片9の溶着領域の下辺より僅かに上方となる高さ位置に設定されていて、仮に環状部材7自体が許容誤差の範囲で胴体4に対して上方に位置ずれして溶着されたとしても、この切り欠き15の下辺18が溶着片9の下縁に対して下方とならないようにしている。
このように切り欠き15の下辺18の高さ位置より上方に溶着片9の下縁が位置することがないようにしているため、切り欠き15の部分で胴体の内部が透けて見えるような透孔が生じない。
【0022】
上述したように複合容器1では、壁板材2の重ね合わせ部11における容器外方の側端辺3の上部13に切り欠き15を設けて、容器外方の側端辺3の上部13と容器内方の側端辺3の上部14とが重なることなく胴体4の周方向に面一にしているので、この面一とした部分では従来の壁板材2の重ね合わせによる段差はなく、ホーンとアンビルとで壁板材の上端辺と環状部材7の溶着片9とを挟み込んだ状態で超音波溶着を行なっても、壁板材2の上端辺や環状部材7の溶着片9の何れの部分にも均等に超音波振動エネルギーが加わり、また、溶着片9も面一部分では壁板材2の重ね合わせには相対せず、過剰な超音波振動のエネルギーを受けることもなくなる。
なお、切り欠き15の下辺18部分は容器内方の側端辺3と重なった状態となり、壁板材2における溶着領域内で相対しているが、超音波溶着時にこの部分に入力される超音波振動のエネルギーは周囲の壁板材に適正に伝播されるため、この部分での溶着不良は生じない。
【0023】
上述しているように上記実施の形態では、壁板材2の容器外方の側端辺3の上部13に切り欠き15を設けていて、前記切り欠き15を設けた容器外方の側端辺3の上部13と容器内方の側端辺3の直線状の上部14とが重なることなく胴体4の周方向に面一にしている。
そして、上記切り欠き15は壁板材2を切り込んだものであり、切り欠き15の縦辺16及び下辺18それぞれの端面は切断端面となっている。さらに、縦辺16の端面は容器内方の側端辺3の上部14の端面とピッタリと突き合っているものではなく、上述したように隙間17がその間に存在していることから縦辺16の端面は外部空気に晒され、下辺18の端面も外部空気に晒されている。なお、容器内方の側端辺3の上部14の端面が切断端面である場合もある。
【0024】
(隙間の覆い)
これら端面が外部空気に直接晒されている状態が好ましく無い場合には、図3の仮想線で示すようにガスバリア性を有する層構成とした合成樹脂フィルム19を、容器外方側から隙間17を閉じるように、そして、切り欠き15の下辺18も覆うようにして貼り付けることが良好である。
【0025】
(隙間覆いのフィルム)
重ね合わせ部11の上部開口側となる部分に貼り付けて隙間17を閉じる上記合成樹脂製フィルム19としては、従来の紙缶の容器内方となる包装材端面を保護するエッジプロテクトテープと同等のものを利用することがこのましい。例えば、以下に示す層構成を有するものが利用できる。
ポリエチレン樹脂層(PE30μm)/ガスバリア層(ポリエチレンテレフタレートフィルムに酸化けい素を蒸着したフィルム12μm)/ポリエチレン樹脂層(PE30μm)
【0026】
(切り欠き端面の保護)
また、端面からの酸素の侵入などを抑止するために合成樹脂製フィルム19で隙間17を覆うようにして貼り付けているが、切り欠き15の縦辺16、下辺18、容器内方の側端辺3の上部14それぞれの端面に対してこの合成樹脂製フィルム19を直接貼り付けて覆うようにすることも可能である。
【0027】
(切り欠きの他の形状)
また、上述した実施の形態において切り欠き15を略L字型に切り欠いたものとして示したが、切り欠き15の形状は限定されるものではなく、図4に示すように、斜めに切り欠いたもの(イ)としたり、円弧状に切り欠いたもの(ロ)とすることができる。
【0028】
(外切り欠きのある複合容器の検討)
つぎに、切り欠きの形態によって紙製容器本体の上部開口に超音波溶着した環状部材に割れが生じるかどうかの検討と、環状部材を取り付けた複合容器の上面をバリア性の高い蓋材で閉鎖して酸素バリア性の検討を行なった。
図5に紙製容器本体に取り付ける合成樹脂製(ポリエチレン樹脂製)の環状部材の縦断面形状を示していて、この環状部材を検討に用いた。この図5に示すように環状部材7はキャップなどの蓋材を取り付けることができるように設計された上構造部8が、中段で外方に向けて張り出る顎状部分を基端としている。そして、上構造部8の基端から断面舌片状にして溶着片9が設けられていて、溶着片9の外周面側には、壁板材2に溶着し易くした厚肉部20が上下二段にして設けられている。なお、図5は図3のV−V線に沿った断面位置を示している。
【0029】
図3に示すように横方向(壁板材の上端辺に沿った方向)の切り込み長さXと縦方向の切り込み長さYを以下のようにした切り欠きを有する紙製包装容器を作成した。
設計上、横方向で、6mmの切り込みをした切り欠きを有する壁板紙を巻くことで、容器外方の側端辺の上部(切り欠きの縦辺)と容器内方の側端辺の上部とが、極めて僅かな隙間を有した状態で面一になるものとしている。そのため、横方向の切り込み長さを6mmを中心にして、より広い隙間が形成される8mmの切り込み長さと、重なり(切り欠きの縦辺と容器内方の側端辺の上部との重なり)が2mm幅で生じる4mmの切り込み長さ、さらに重なりが4mm幅となる2mmの切り込み長さとした、
また、縦方向の切り込み長さYを5mm、7mmとしたものを用意した。そして、このように横方向、縦方向の切り込み長さが異なる紙製容器本体を作成して環状容器本体を超音波溶着し、上述したように割れと酸素バリア性を検討した。割れについての結果を表1、酸素バリア性についての結果を表2に示す。
なお、縦方向の切り込み長さを7mmとした場合、切り欠き5の下辺18の高さ位置が溶着領域の下辺より下方となり、隙間が溶着片で塞がれずに孔が生じた。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
表1に示すように、重ね合わせ部において、横方向の切り込みの長さを8mm、6mmとし、縦方向の切り込み長さを5mmにして容器外方の側端辺の上部と容器内方の側端辺の上部に重なりを無くした場合に、環状部材に割れが生じないことが確認できた。縦方向の切り込み長さを7mmとすると下辺高さ位置が溶着領域の下辺の下方となっていた。
また、表2に示すように、壁板材における溶着領域内に切り欠きの下辺が位置し、かつ、容器外方の側端辺の上部と容器内方の側端辺の上部とが面一であるときに、その間に隙間があっても、容器として酸素バリア性が良好であることが確認できた。
上記検討では切り欠きを略L字型に切り欠いたものを有する複合容器についてのものであるが、切り欠きを斜めとして検討も行なっていて、同じ結果が得られた。
【0033】
(容器内方の側端辺に切り欠きを設けた例)
上記実施の形態では、重ね合わせ部11の容器外方の側端辺3の上部13に切り欠き15を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されず、容器内方の側端辺3の上部14に切り欠き15を設けてもよく、以下に容器内方の側端辺3の上部14に切り欠き15を設けた実施の形態について説明する。
【0034】
図6に示す実施の形態では、上記切り欠き15を、重ね合わせ部11における容器内方の側端辺3の上部14に設けている。そして、この例において、切り欠き15の縦辺16および下辺18の端面、さらに容器内方の側端辺3の前記切り欠き15以外の端面(直線部分の端面)も、壁板材2を板材から形成する上で生じる切断端面であり、それぞれの端面には紙層が表出している。
そして、矢印Aでい示すように、切り欠き15の前記縦辺16及び下辺18の位置で外方に対して表出している端面から例えば酸素が入り、図示のように側端辺3の紙層部分に進んで胴体4の内方で表出している側端辺3の直線部分の端面から抜け出る可能性があるものである。
このようにして外部空気中の酸素が容器の内分部に入り込むのを抑えなければならない場合がある。上述した容器外方の側端辺の上部に切り欠きを設けているものでは、切り欠きの端面からガスが侵入したとしても、その抜け口はやはり容器外方の側端辺の端面であり、それほど問題となることが少ないが、容器内方の側端辺の上部に切り欠き15の端面と容器内方の側端辺の直線部分の端面との距離が短かいため、切り欠き15の端面から侵入した酸素などが容器内方に入り込み易くなる可能性がある。
よって、例えば本複合容器1の環状部材7に蓋材などを取り付けて包装容器とし、収納物に対し、少なくとも蓋材で密封している流通段階で外部空気中の酸素などの入り込みを抑えて酸化、変質を防ぐ対策を取る必要がある場合、上記構成のままでは不都合である。
【0035】
そこで、この複合容器1においては、図6に示すように壁板材2の容器内方の側端辺3の上部14にある切り欠き15に対して側端辺側から被せ付けるようにして二つ折りした合成樹脂製フィルム21の間に挟み込み、その合成樹脂製フィルム21を紙板材2の厚さ方向に加熱圧着して、切り欠き15の縦辺16と下辺18との端面を覆っており、切り欠き15で外方に表出した端面から酸素などのガスが入り込むのを抑える。
【0036】
切り欠き15を間に挟み込んでその切り欠き15の端面を覆う合成樹脂製フィルム21の上端辺は、壁板材2の上端辺と高さ位置が揃えられており、また、合成樹脂製フィルム21の壁板材2の胴回り方向での側端(折り曲げ部分)は、その壁板材2の側端辺のほぼ延長線上に揃えられている。
そのため、合成樹脂製フィルム21で切り欠き15が覆われた壁板材2の側端辺3同士を重ね合わせて貼り合わせたときには、切り欠き15と容器外方の側端辺3の上部13との間で形成される隙間17が前記合成樹脂製フィルム21で容器内方側から閉じられる。
そして、上記環状部材7が許容の範囲で胴体4に対して上に位置ずれした状態で超音波溶着されても、隙間17自体が合成樹脂製フィルム21で閉じられているため、隙間17の位置で容器内外に連通する貫通した孔は生じず、この複合容器を用いて包装容器を形成すれば、未開封時の容器内に孔を通して外部空気などが入り込むのを防止するようになるメリットも有する。
【0037】
切り欠き15を覆う合成樹脂製フィルム21としては重ね合わせ部11の側端辺3の対向面それぞれにヒートシール性を有する積層フィルムであれば、側端辺3の対向面に適正に貼り付き、また、切り欠き15の上記端面にも密着した状態で覆うとともに、フィルム相互でも密着して薄形の状態で容器外方の側端辺の内方面側に貼り付けることができる上で良好である。
【0038】
さらに、上記合成樹脂製フィルム21は、容器内方の側端辺13にも亘る長さを有していて、側端辺13を切り欠き15も含めて覆っている。
即ち、合成樹脂製フィルム21は、壁板材2における重ね合わせ部11の長さ方向に沿って位置していて、側端辺3の端面と切り欠き15の端面を一つの合成樹脂製フィルム21で覆うという簡易な構成により、切り欠き15の端面の覆いと側端辺3の端面の覆いと隙間17の閉鎖が手数を要することなく行なえ、頗る有用である。
【0039】
(側端辺を覆う合成樹脂製フィルム)
合成樹脂フィルム製品には空気中の酸素などのガスを透過させてしまうものもあるが、壁板材2の端面で紙層が表出したままとなっているものと比較すれば、任意の合成樹脂製フィルムで切り欠き15の端面を覆うようにすることの方が、酸素などの入り込みを抑える上で効果がある。
上記合成樹脂製フィルム21を選択するのであれば、紙缶の胴貼り部分において容器内方の端辺の端面を覆う目的で使用されるエッジプロテクトテープが良好に採用できる。
また、この合成樹脂製フィルム21は、層構成中にガスバリア層を含んでいる積層フィルムであることが良好であり、前述としたエッジプロテクトテープとして採用されている以下の積層構成を有するフィルムが特に良好である。
ポリエチレン樹脂層(PE30μm)/ガスバリア層(ポリエチレンテレフタレートフィルムに酸化けい素を蒸着したフィルム12μm)/ポリエチレン樹脂層(PE30μm)
【0040】
(長手の合成樹脂製フィルムによる隙間の閉鎖の有無でのバリア性比較)
上記エッジプロテクトテープを利用した合成樹脂製フィルム21で隙間を閉じた複合容器(図6参照)と、同じくエッジプロテクトテープを利用した合成樹脂製フィルム21で端面のみを保護した複合容器(図7)とで、隙間の閉鎖の有無によって容器としてのバリア性を検討した。
【0041】
比較で形成した複合容器の各素材の構成(材質)は以下の通りとした。
・壁板材(容器外面となる側から容器内面となる側の層構成)
ポリエチレン樹脂層(30μm)/紙層(坪量310g)/ポリエチレンテレフタレート樹脂層(12μm)/ガスバリア層(ポリエチレンテレフタレートフィルムに酸化けい素を蒸着したフィルム12μm)/直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層(40μm)
・底板材(容器外面となる側から容器内面となる側の層構成)
ポリエチレン樹脂層(30μm)/紙層(坪量310g)/ポリエチレンテレフタレート樹脂層(12μm)/ガスバリア層(ポリエチレンテレフタレートフィルムに酸化けい素を蒸着したフィルム12μm)/ポリエチレン樹脂層(30μm)
・合成樹脂製フィルム(エッジプロテクトテープ)
ポリエチレン樹脂層(30μm)/ガスバリア層(ポリエチレンテレフタレートフィルムに酸化けい素を蒸着したフィルム12μm)/ポリエチレン樹脂層(30μm)
・環状部材
ポリエチレン樹脂にて成形した。
・切り欠き形状
切り欠き15の形状は表1、表2で良好とされた横方向の切り込み長さを6mm、縦方向の切り込み長さを5mmとした。
【0042】
上記各部材を用いて複合容器を作成し、アルミニウム箔/ポリエチレン樹脂層の層構成を有するシーラントフィルムを上記環状部材に貼って上部開口を閉鎖した。
【0043】
・合成樹脂製フィルムにて隙間17も閉じた複合容器の場合、
酸素バリア性 0.006(cc/pkg・day・atm)
水蒸気バリア性 0.007(g/pkg・day)
の計測値が得られた。
【0044】
・合成樹脂製フィルムにて端面のみを覆い、隙間は合成樹脂製フィルムでは覆っていない複合容器の場合、
酸素バリア性 0.1以上(cc/pkg・day・atm)
水蒸気バリア性 0.1以上(g/pkg・day)
の計測値となり、計測機器の計測限界以上に、酸素及び水蒸気が複合容器から外方に向けて漏れ出ていると判断される。
よって、この複合容器の場合にはバリア性は低いと考えられる。
しかし、両複合容器とも、環状部材が紙製容器本体の上部開口に適正に溶着されていることが確認できており、切り欠きの部分の隙間を合成樹脂製フィルムで閉じるか、或いは閉じないかについては、合成樹脂製の環状部材の溶着を良否を決定するものではないことが、判断できる。
【0045】
つぎに上記重ね合わせ部の容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との何れか一方に切り欠きを設けて、その容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部とを胴体の周方向に面一にした複合容器と、この切り欠きを設けずに作成した複合容器とにおいて、溶着固定した環状部材が正円に対して何mm変形しているか(円の径方向でのずれ量)を測定したところ、切り欠きを設けている前記複合容器では、0〜0.3mm程度の変形が確認できた。一方、切り欠きを設けずに重ね合わせ部の上部開口側でも壁板材が重なっている複合容器の場合、環状部材が0.4〜0.8mm程度変形していることが確認できた。
よって、切り欠きを設けることで環状部材側に変形を生じさせる力が小さいことが分かった。
【0046】
上述した実施の形態では、容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との何れか一方に切り欠きを設けた複合容器を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との両方に切り欠きを設けることも可能である。
胴体4の壁板材2は、図8に示すように原反からその長さ方向に定ピッチで切断されていて、その切断の際に底折り込み用ノッチカット22を壁板材2の下端辺の両隅に施すが、この底折り込み用ノッチカット22を、連続する次の壁板材の上端辺の両隅に図示のように掛かるようにして入れれば、容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との両方に切り欠きを設けることでき、切り欠き15の形成が容易に行なえる利点がある。
【0047】
なお、本願の上記実施の例で、容器内方の側端辺3の上部14と容器外方の側端辺3の上部13を重ねた場合、つまり、容器外方の側端辺3の上部13に切り欠き15を設けておけば、容器内方の側端辺3が、容器外方の側端辺3の上部13に重なっても上述した効果を得ることができる場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る複合容器の一例を示す説明図である。
【図2】一例における胴体の横断面を示す説明図である。
【図3】一例における重ね合わせ部の上部開口側を示す説明図である。
【図4】切り欠きの他の例を示す説明図である。
【図5】環状部材と重ね合わせ部の上部開口側とを図3のV−V線の位置の断面で示す説明図である。
【図6】容器内方の側端辺の上部の切り欠きと端面を覆うフィルムを示す説明図である。
【図7】容器内方の側端辺の端面を覆うフィルムを示す説明図である。
【図8】壁板材原反に対する壁板材と底折り込み用ノッチカットの配置を示す説明図である。
【図9】切り欠きを有しない複合容器を示す説明図である。
【図10】超音波溶着のホーンとアンビルによる溶着片と壁板材の挟み込みを概略的に示す説明図である。
【図11】切り欠きを有しない壁板材による胴体を横断面で示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1…複合容器
2…壁板材
3…側端辺
4…胴体
5…底板材
6…紙製容器本体
7…合成樹脂製の環状部材
9…環状部材の溶着片
11…重ね合わせ部
13…容器外方の側端辺の上部
14…容器内方の側端辺の上部
15…切り欠き
16…切り欠きの縦辺
17…隙間
18…切り欠きの下辺
19…合成樹脂製フィルム
21…合成樹脂製フィルム
【技術分野】
【0001】
本発明は紙を主体とする板材により得られた紙製の容器本体のその上部に合成樹脂製のリングを配して、キャップや蓋材などの別部材を組み合わせし易くした複合容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から各種容器において合成樹脂材料の使用割合を小さくすることを目的として紙材と合成樹脂材とを組み合わせた複合容器が提案されてきている。その複合容器の一つとして、紙を主体とする積層材である板材を壁板材にして容器の胴体とするとともに同じ板材からなる天板及び底板を胴体に組み合わせて紙製の缶を得て、合成樹脂材にて別成形した注出口具を天板の飲み口に嵌め付け、そしてオーバーキャップを容器上部に被せるようにした工夫が提案されている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2001−114327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、胴体及び底部を板紙から成形したカップ状の紙製容器本体の上部に、別形成された部材のキャップや蓋材を取り付け易くするために、前記紙製容器本体の上部開口に合成樹脂材の環状部材を設ける複合容器を得る試みがある。
図9に示すようにこの複合容器1を得る場合、まず、上記紙缶の成形と同じように、壁板材2を筒状にして側端辺3同士を重ね合わせた胴体4を作成し、その胴体4の容器底部となる側に、前記壁板材2と同じ板紙からなる底板材5を配し、底板材5の折り倒した周辺を胴体4の折り上げた下部開口の周辺に掛けて底板材5の周辺と胴体4の下部開口の周辺とを圧着して、カップ状の紙製容器本体6を作成している。
合成樹脂製の環状部材7は、別部材のキャップや蓋材を受ける断面形状に成形された上構造部8と、上構造部8の下面に一体となっていて紙製容器本体6の上部開口の内周面に亘って溶着させる断面舌片状の溶着片9とからなるものである。そして、上記紙製容器本体6の上部開口の内周面に前記溶着片9を対応させるようにして環状部材7を紙製容器本体6の上部開口に配置して超音波溶着を行なっている。
【0004】
しかしながら、紙製容器本体の上部開口に上記環状部材を超音波溶着で取り付けた場合、以下の問題が生じていた。
超音波溶着を行なう場合、図10に示すように紙製容器本体6をアンビルaの凹所に置き、このアンビルaと環状部材7の内側に嵌め入れるホーンbとで胴体4の上端辺10と環状部材7の溶着片9とを挟み込んで超音波を加えることになるが、胴体4において、図11に示すように壁板材2の側端辺3同士を重ね合わせた重ね合わせ部11には容器内方及び容器外方に壁板材2の厚さ分の段差ができている。
そして、一部に段差のある胴体の上端部を、ほぼ正円形状のホーンとアンビルとで挟み込んで超音波を加えるため、上部開口の不特定の部分に応力が集中するとともに環形状の溶着片にもその影響を受けて不特定の部分に応力が集中したり大きな振れを起こし、その結果、環状部材の上記上構造部の薄肉部分などに割れや変形を生じさせていた。
また、重ね合わせ部は壁板材二枚分の厚さがあるが、ホーンとアンビルとの挟み込みでこの重ね合わせ部に溶着片が強く押し付けられるため、溶着片の強く押し付けられた部分12に過度の振動エネルギーが伝わり、この部分12が必要以上に溶融し、超音波溶着後には前記部分12に凹みが発生して、紙製容器本体の内部の外観を損なうなど、複合容器として不良となるという不都合があった。
【0005】
そこで本発明は上記事情に鑑み、紙製容器本体の胴体の重ね合わせ部の上部開口側であって合成樹脂製の環状部材の溶着片を対応位置させる部分において、上記ホーンとアンビルとで挟み込むときに、段差が極めて小さくなるか、或いはその段差が無いようにすることを課題とし、合成樹脂製の環状部材が紙製容器本体の上部開口に適正に溶着されるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1の発明)
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、壁板材の側端辺同士を重ね合わせて壁板材を筒状にした胴体を有するカップ状の紙製容器本体と、この紙製容器本体の上部開口の内周面に亘って溶着した合成樹脂製の環状部材とからなる複合容器であって、前記壁板材の側端辺同士を重ね合わせた重ね合わせ部の前記環状部材に対応する容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との少なくとも一方に切り欠きを設けて、前記容器内方の側端辺の上部と前記容器外方の側端辺の上部とを胴体の周方向に面一にしたことを特徴とする複合容器を提供して、上記課題を解消するものである。
【0007】
(請求項2の発明)
また、本発明において、前記容器内方の側端辺の上部と前記容器外方の側端辺の上部との両方に切り欠きが設けられていることが良好である。
【0008】
(請求項3の発明)
また、本発明において、前記切り欠きが、合成樹脂製フィルムで覆われていることが良好である。
【0009】
(請求項4の発明)
また、本発明において、前記重ね合わせ部の容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との間が、合成樹脂製フィルムで覆われていることが良好である。
【0010】
(請求項5の発明)
また、本発明において、前記重ね合わせ部の容器内方の側端辺の上部に切り欠きが設けられ、この切り欠きの端面と容器内方の側端辺の端面とが重ね合わせ部の長さ方向に沿った合成樹脂製フィルムで覆われていることが良好である。
【0011】
(請求項6の発明)
また、本発明において、前記合成樹脂製フィルムは、層構成中にガスバリア層を含んでいる積層フィルムであることが良好である。
【発明の効果】
【0012】
(請求項1の発明の効果)
請求項1の発明によれば、壁板材の重ね合わせ部における容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との少なくとも一方に切り欠きを設けて、容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部とを胴体の周方向に面一にしたので、合成樹脂製の環状部材を紙製容器本体の上部開口に配して上記ホーンとアンビルとで挟み込みして超音波溶着する際、紙容器本体の上部開口に不均一な応力が加わらず、この紙容器本体の胴体の上端辺とともに環状部材に適正な状態で超音波振動のエネルギーを受けることとなる。
そのため、環状部材に従来のような割れや変形が生じないようになる。また、溶着片についても胴体に対して局部的に強く当接する部分がなくなるため、重ね合わせ部に対応した部分で過度に溶融するという従来の不具合を生じさせることがない。
【0013】
(請求項2の発明の効果)
請求項2の発明によれば、壁板材の容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との両方に切り欠きが設けられているので、切り欠きそれぞれを壁板材の上端辺方向に沿って深く切り込まなくとも、容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との重なりを無くすことが容易になる。よって、重ね合わせ部で壁板材の側端辺同士の重ね合わせに高い精度を要求することなく、両方の切り欠きの端面を胴体の周方向に面一にすることができる。
【0014】
(請求項3の発明の効果)
筒状の胴体を得るに際して、壁板材を側端辺同士を重ね合わせて、容器内方の側端辺の上部の端面と容器外方の側端辺の上部の端面とが突き合った状態となるのが好ましい。
しかしながら、壁板材の側端辺同士を重ねて貼り合わせるときに誤差が生じ易く、必ずしも上記端面同士がぴったりと突き合った状態にすることは製造上、効率のよいものではない。
容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との重なりが生じないようにすることが重要であることから、胴体を形成したときに重ねあわせ部での容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との間に隙間を形成することが望ましい。
このようにすることで、重ね合わせ部の上部開口側では面一となり、合成樹脂製の環状部材を超音波溶着する上でも、その環状部材に不具合を生じさせないメリットがある。
【0015】
一方、隙間が形成されると、その隙間での切り欠きの端面が外部空気になどの晒される結果となる。特に切り欠きについては切断により形成されていて、板紙材の紙層が切断端面で露出する。そして、外部空気中の酸素などがその端面の紙層に入り込み易くなる。
そこで、請求項3の発明によれば、切り欠きが設けられた部分の端面が本複合容器の周りの外部空気に晒されないようになる。そのため、切り欠きのある部分の端面に外部空気中の酸素が入り込み、壁板材の内部を通って容器内に入るのを抑えることができる。即ち、壁板材自体のバリア性を低下させることがない。よって、本複合容器を利用して収納容器を構成しても、未開封の段階(流通時)で内容物の変質などを抑える上で効果がある。
【0016】
(請求項4の発明の効果)
上述したように重ね合わせ部での容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との間に隙間を形成することで、重ね合わせ部の上部開口側では面一となり、合成樹脂製の環状部材を超音波溶着する上でも、その環状部材に不具合を生じさない。
一方、胴体の上部開口に合成樹脂製の環状部材を溶着する場合に、取付誤差によって環状部材の溶着片が胴体に対して上方に位置ずれした状態で溶着される場合もある。
そして、重ね合わせ部での容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との間に隙間があるため、内側から環状部材の溶着片が対応位置するとしても、切り欠きの下端高さ位置と溶着片の下端高さ位置とが容器高さ方向に僅かに開き、切り欠きの下辺の上に空気が容器内外に移動する孔が生じる。そのため、容器としてバリア性が低下する。
請求項4の発明によれば、合成樹脂製フィルムで、容器内方の側端辺の上部と前記容器外方の側端辺の上部との間を覆うので、本複合容器を用いた収納容器が未開封の状態時(例えば流通段階)に、容器内方の側端辺の上部と前記容器外方の側端辺の上部との間から外部の空気などが容器内に入り込むのを防止できる。
【0017】
(請求項5の発明の効果)
請求項5の発明によれば、切り欠きが設けられた部分の端面が本複合容器の周りの空間などの外部環境に対して晒されないようになる。そのため、例えば切り欠きのある部分の壁板材の端面に外部空気中の酸素が入り込み、そして、その壁板材の内部を通って容器内に入り込むようになるのを抑えることができる。よって、本複合容器を利用して包装容器を構成しても、収納する内容物の変質などを抑える上で効果がある。
また、容器内方の側端辺の端面が切断端面であっても、合成樹脂製フィルムで保護されることとなる。そのため、本複合容器を利用した包装容器に収納する内容物が、食用油脂などの紙に対して浸透性のある成分を含むものであり、そして、容器内方の側端辺の端面が切断端面であったとしても、その切断端面の部分から前記浸透性のある成分の染み込みを抑止する上で効果がある。
【0018】
(請求項6の発明の効果)
請求項6の発明により、容器外部から合成樹脂製フィルムを通して容器内部へ、また、容器内部から合成樹脂製フィルムを通して容器外部へガスが透過するのを防止できる。
そのため、本複合容器を利用した包装容器に収納する内容物を、外部空気に触れさせないようにする場合により一層の良好な効果があり、また、内容物が発するガス(香りなど)があるような場合にも、そのガスが容器外部に発散するのを抑える上でより一層の良好な効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
つぎに本発明を図1から図8の実施の形態に基づいて詳細に説明する。なお、図9から図11に示す検討技術と構成が重複する部分は同符号を付してその説明を省略する。
複合容器1は上述したように壁板材2の側端辺3同士を重ね合わせて壁板材2を筒状とした胴体4を有する紙製容器本体6と、この紙製容器本体6の上部開口に超音波溶着にて溶着された合成樹脂製の環状部材7とからなるものである。紙製容器本体6の壁板材2と底板材5とはそれぞれ紙を主体とする積層構成の板紙を用いている。
【0020】
上記壁板材2の側端辺3同士を重ね合わせた重ね合わせ部11における胴体4の上端部側であって、この胴体4の上端部の内側に超音波溶着された環状部材7の溶着片9に対応する領域内で、壁板材2の容器外方の側端辺3の上部13に図示のように略L字型にした切り欠き15を設けている。そして、前記切り欠き15を設けた容器外方の側端辺3の上部13と容器内方の側端辺3の直線状の上部14とが重なることなく胴体4の周方向に面一にしている(図2参照)。
この実施の例では、胴体4の径が約60mmとなるように壁板紙2が巻かれているもので、紙製容器本体6の容器高さは60mmとしている。そして、壁板板2の側端辺3同士を重ねてヒートシールにより貼り合わせる際の製造誤差などを考慮して、前記切り欠き15の縦辺16の端面と、容器内方の側端辺3の上部の端面とが約1.5mm程度の隙間17を持って相対している。
切り欠き15は、予め壁紙板2を筒状にする前の平板形態の時点で設けられており、上述した製造誤差を考慮した隙間17が得られるように壁板紙2の上端辺に沿って設定された長さにして切り欠かれている。
【0021】
また、切り欠き15の下辺18の位置は、壁板材2における溶着片9の溶着領域の下辺より僅かに上方となる高さ位置に設定されていて、仮に環状部材7自体が許容誤差の範囲で胴体4に対して上方に位置ずれして溶着されたとしても、この切り欠き15の下辺18が溶着片9の下縁に対して下方とならないようにしている。
このように切り欠き15の下辺18の高さ位置より上方に溶着片9の下縁が位置することがないようにしているため、切り欠き15の部分で胴体の内部が透けて見えるような透孔が生じない。
【0022】
上述したように複合容器1では、壁板材2の重ね合わせ部11における容器外方の側端辺3の上部13に切り欠き15を設けて、容器外方の側端辺3の上部13と容器内方の側端辺3の上部14とが重なることなく胴体4の周方向に面一にしているので、この面一とした部分では従来の壁板材2の重ね合わせによる段差はなく、ホーンとアンビルとで壁板材の上端辺と環状部材7の溶着片9とを挟み込んだ状態で超音波溶着を行なっても、壁板材2の上端辺や環状部材7の溶着片9の何れの部分にも均等に超音波振動エネルギーが加わり、また、溶着片9も面一部分では壁板材2の重ね合わせには相対せず、過剰な超音波振動のエネルギーを受けることもなくなる。
なお、切り欠き15の下辺18部分は容器内方の側端辺3と重なった状態となり、壁板材2における溶着領域内で相対しているが、超音波溶着時にこの部分に入力される超音波振動のエネルギーは周囲の壁板材に適正に伝播されるため、この部分での溶着不良は生じない。
【0023】
上述しているように上記実施の形態では、壁板材2の容器外方の側端辺3の上部13に切り欠き15を設けていて、前記切り欠き15を設けた容器外方の側端辺3の上部13と容器内方の側端辺3の直線状の上部14とが重なることなく胴体4の周方向に面一にしている。
そして、上記切り欠き15は壁板材2を切り込んだものであり、切り欠き15の縦辺16及び下辺18それぞれの端面は切断端面となっている。さらに、縦辺16の端面は容器内方の側端辺3の上部14の端面とピッタリと突き合っているものではなく、上述したように隙間17がその間に存在していることから縦辺16の端面は外部空気に晒され、下辺18の端面も外部空気に晒されている。なお、容器内方の側端辺3の上部14の端面が切断端面である場合もある。
【0024】
(隙間の覆い)
これら端面が外部空気に直接晒されている状態が好ましく無い場合には、図3の仮想線で示すようにガスバリア性を有する層構成とした合成樹脂フィルム19を、容器外方側から隙間17を閉じるように、そして、切り欠き15の下辺18も覆うようにして貼り付けることが良好である。
【0025】
(隙間覆いのフィルム)
重ね合わせ部11の上部開口側となる部分に貼り付けて隙間17を閉じる上記合成樹脂製フィルム19としては、従来の紙缶の容器内方となる包装材端面を保護するエッジプロテクトテープと同等のものを利用することがこのましい。例えば、以下に示す層構成を有するものが利用できる。
ポリエチレン樹脂層(PE30μm)/ガスバリア層(ポリエチレンテレフタレートフィルムに酸化けい素を蒸着したフィルム12μm)/ポリエチレン樹脂層(PE30μm)
【0026】
(切り欠き端面の保護)
また、端面からの酸素の侵入などを抑止するために合成樹脂製フィルム19で隙間17を覆うようにして貼り付けているが、切り欠き15の縦辺16、下辺18、容器内方の側端辺3の上部14それぞれの端面に対してこの合成樹脂製フィルム19を直接貼り付けて覆うようにすることも可能である。
【0027】
(切り欠きの他の形状)
また、上述した実施の形態において切り欠き15を略L字型に切り欠いたものとして示したが、切り欠き15の形状は限定されるものではなく、図4に示すように、斜めに切り欠いたもの(イ)としたり、円弧状に切り欠いたもの(ロ)とすることができる。
【0028】
(外切り欠きのある複合容器の検討)
つぎに、切り欠きの形態によって紙製容器本体の上部開口に超音波溶着した環状部材に割れが生じるかどうかの検討と、環状部材を取り付けた複合容器の上面をバリア性の高い蓋材で閉鎖して酸素バリア性の検討を行なった。
図5に紙製容器本体に取り付ける合成樹脂製(ポリエチレン樹脂製)の環状部材の縦断面形状を示していて、この環状部材を検討に用いた。この図5に示すように環状部材7はキャップなどの蓋材を取り付けることができるように設計された上構造部8が、中段で外方に向けて張り出る顎状部分を基端としている。そして、上構造部8の基端から断面舌片状にして溶着片9が設けられていて、溶着片9の外周面側には、壁板材2に溶着し易くした厚肉部20が上下二段にして設けられている。なお、図5は図3のV−V線に沿った断面位置を示している。
【0029】
図3に示すように横方向(壁板材の上端辺に沿った方向)の切り込み長さXと縦方向の切り込み長さYを以下のようにした切り欠きを有する紙製包装容器を作成した。
設計上、横方向で、6mmの切り込みをした切り欠きを有する壁板紙を巻くことで、容器外方の側端辺の上部(切り欠きの縦辺)と容器内方の側端辺の上部とが、極めて僅かな隙間を有した状態で面一になるものとしている。そのため、横方向の切り込み長さを6mmを中心にして、より広い隙間が形成される8mmの切り込み長さと、重なり(切り欠きの縦辺と容器内方の側端辺の上部との重なり)が2mm幅で生じる4mmの切り込み長さ、さらに重なりが4mm幅となる2mmの切り込み長さとした、
また、縦方向の切り込み長さYを5mm、7mmとしたものを用意した。そして、このように横方向、縦方向の切り込み長さが異なる紙製容器本体を作成して環状容器本体を超音波溶着し、上述したように割れと酸素バリア性を検討した。割れについての結果を表1、酸素バリア性についての結果を表2に示す。
なお、縦方向の切り込み長さを7mmとした場合、切り欠き5の下辺18の高さ位置が溶着領域の下辺より下方となり、隙間が溶着片で塞がれずに孔が生じた。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
表1に示すように、重ね合わせ部において、横方向の切り込みの長さを8mm、6mmとし、縦方向の切り込み長さを5mmにして容器外方の側端辺の上部と容器内方の側端辺の上部に重なりを無くした場合に、環状部材に割れが生じないことが確認できた。縦方向の切り込み長さを7mmとすると下辺高さ位置が溶着領域の下辺の下方となっていた。
また、表2に示すように、壁板材における溶着領域内に切り欠きの下辺が位置し、かつ、容器外方の側端辺の上部と容器内方の側端辺の上部とが面一であるときに、その間に隙間があっても、容器として酸素バリア性が良好であることが確認できた。
上記検討では切り欠きを略L字型に切り欠いたものを有する複合容器についてのものであるが、切り欠きを斜めとして検討も行なっていて、同じ結果が得られた。
【0033】
(容器内方の側端辺に切り欠きを設けた例)
上記実施の形態では、重ね合わせ部11の容器外方の側端辺3の上部13に切り欠き15を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されず、容器内方の側端辺3の上部14に切り欠き15を設けてもよく、以下に容器内方の側端辺3の上部14に切り欠き15を設けた実施の形態について説明する。
【0034】
図6に示す実施の形態では、上記切り欠き15を、重ね合わせ部11における容器内方の側端辺3の上部14に設けている。そして、この例において、切り欠き15の縦辺16および下辺18の端面、さらに容器内方の側端辺3の前記切り欠き15以外の端面(直線部分の端面)も、壁板材2を板材から形成する上で生じる切断端面であり、それぞれの端面には紙層が表出している。
そして、矢印Aでい示すように、切り欠き15の前記縦辺16及び下辺18の位置で外方に対して表出している端面から例えば酸素が入り、図示のように側端辺3の紙層部分に進んで胴体4の内方で表出している側端辺3の直線部分の端面から抜け出る可能性があるものである。
このようにして外部空気中の酸素が容器の内分部に入り込むのを抑えなければならない場合がある。上述した容器外方の側端辺の上部に切り欠きを設けているものでは、切り欠きの端面からガスが侵入したとしても、その抜け口はやはり容器外方の側端辺の端面であり、それほど問題となることが少ないが、容器内方の側端辺の上部に切り欠き15の端面と容器内方の側端辺の直線部分の端面との距離が短かいため、切り欠き15の端面から侵入した酸素などが容器内方に入り込み易くなる可能性がある。
よって、例えば本複合容器1の環状部材7に蓋材などを取り付けて包装容器とし、収納物に対し、少なくとも蓋材で密封している流通段階で外部空気中の酸素などの入り込みを抑えて酸化、変質を防ぐ対策を取る必要がある場合、上記構成のままでは不都合である。
【0035】
そこで、この複合容器1においては、図6に示すように壁板材2の容器内方の側端辺3の上部14にある切り欠き15に対して側端辺側から被せ付けるようにして二つ折りした合成樹脂製フィルム21の間に挟み込み、その合成樹脂製フィルム21を紙板材2の厚さ方向に加熱圧着して、切り欠き15の縦辺16と下辺18との端面を覆っており、切り欠き15で外方に表出した端面から酸素などのガスが入り込むのを抑える。
【0036】
切り欠き15を間に挟み込んでその切り欠き15の端面を覆う合成樹脂製フィルム21の上端辺は、壁板材2の上端辺と高さ位置が揃えられており、また、合成樹脂製フィルム21の壁板材2の胴回り方向での側端(折り曲げ部分)は、その壁板材2の側端辺のほぼ延長線上に揃えられている。
そのため、合成樹脂製フィルム21で切り欠き15が覆われた壁板材2の側端辺3同士を重ね合わせて貼り合わせたときには、切り欠き15と容器外方の側端辺3の上部13との間で形成される隙間17が前記合成樹脂製フィルム21で容器内方側から閉じられる。
そして、上記環状部材7が許容の範囲で胴体4に対して上に位置ずれした状態で超音波溶着されても、隙間17自体が合成樹脂製フィルム21で閉じられているため、隙間17の位置で容器内外に連通する貫通した孔は生じず、この複合容器を用いて包装容器を形成すれば、未開封時の容器内に孔を通して外部空気などが入り込むのを防止するようになるメリットも有する。
【0037】
切り欠き15を覆う合成樹脂製フィルム21としては重ね合わせ部11の側端辺3の対向面それぞれにヒートシール性を有する積層フィルムであれば、側端辺3の対向面に適正に貼り付き、また、切り欠き15の上記端面にも密着した状態で覆うとともに、フィルム相互でも密着して薄形の状態で容器外方の側端辺の内方面側に貼り付けることができる上で良好である。
【0038】
さらに、上記合成樹脂製フィルム21は、容器内方の側端辺13にも亘る長さを有していて、側端辺13を切り欠き15も含めて覆っている。
即ち、合成樹脂製フィルム21は、壁板材2における重ね合わせ部11の長さ方向に沿って位置していて、側端辺3の端面と切り欠き15の端面を一つの合成樹脂製フィルム21で覆うという簡易な構成により、切り欠き15の端面の覆いと側端辺3の端面の覆いと隙間17の閉鎖が手数を要することなく行なえ、頗る有用である。
【0039】
(側端辺を覆う合成樹脂製フィルム)
合成樹脂フィルム製品には空気中の酸素などのガスを透過させてしまうものもあるが、壁板材2の端面で紙層が表出したままとなっているものと比較すれば、任意の合成樹脂製フィルムで切り欠き15の端面を覆うようにすることの方が、酸素などの入り込みを抑える上で効果がある。
上記合成樹脂製フィルム21を選択するのであれば、紙缶の胴貼り部分において容器内方の端辺の端面を覆う目的で使用されるエッジプロテクトテープが良好に採用できる。
また、この合成樹脂製フィルム21は、層構成中にガスバリア層を含んでいる積層フィルムであることが良好であり、前述としたエッジプロテクトテープとして採用されている以下の積層構成を有するフィルムが特に良好である。
ポリエチレン樹脂層(PE30μm)/ガスバリア層(ポリエチレンテレフタレートフィルムに酸化けい素を蒸着したフィルム12μm)/ポリエチレン樹脂層(PE30μm)
【0040】
(長手の合成樹脂製フィルムによる隙間の閉鎖の有無でのバリア性比較)
上記エッジプロテクトテープを利用した合成樹脂製フィルム21で隙間を閉じた複合容器(図6参照)と、同じくエッジプロテクトテープを利用した合成樹脂製フィルム21で端面のみを保護した複合容器(図7)とで、隙間の閉鎖の有無によって容器としてのバリア性を検討した。
【0041】
比較で形成した複合容器の各素材の構成(材質)は以下の通りとした。
・壁板材(容器外面となる側から容器内面となる側の層構成)
ポリエチレン樹脂層(30μm)/紙層(坪量310g)/ポリエチレンテレフタレート樹脂層(12μm)/ガスバリア層(ポリエチレンテレフタレートフィルムに酸化けい素を蒸着したフィルム12μm)/直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層(40μm)
・底板材(容器外面となる側から容器内面となる側の層構成)
ポリエチレン樹脂層(30μm)/紙層(坪量310g)/ポリエチレンテレフタレート樹脂層(12μm)/ガスバリア層(ポリエチレンテレフタレートフィルムに酸化けい素を蒸着したフィルム12μm)/ポリエチレン樹脂層(30μm)
・合成樹脂製フィルム(エッジプロテクトテープ)
ポリエチレン樹脂層(30μm)/ガスバリア層(ポリエチレンテレフタレートフィルムに酸化けい素を蒸着したフィルム12μm)/ポリエチレン樹脂層(30μm)
・環状部材
ポリエチレン樹脂にて成形した。
・切り欠き形状
切り欠き15の形状は表1、表2で良好とされた横方向の切り込み長さを6mm、縦方向の切り込み長さを5mmとした。
【0042】
上記各部材を用いて複合容器を作成し、アルミニウム箔/ポリエチレン樹脂層の層構成を有するシーラントフィルムを上記環状部材に貼って上部開口を閉鎖した。
【0043】
・合成樹脂製フィルムにて隙間17も閉じた複合容器の場合、
酸素バリア性 0.006(cc/pkg・day・atm)
水蒸気バリア性 0.007(g/pkg・day)
の計測値が得られた。
【0044】
・合成樹脂製フィルムにて端面のみを覆い、隙間は合成樹脂製フィルムでは覆っていない複合容器の場合、
酸素バリア性 0.1以上(cc/pkg・day・atm)
水蒸気バリア性 0.1以上(g/pkg・day)
の計測値となり、計測機器の計測限界以上に、酸素及び水蒸気が複合容器から外方に向けて漏れ出ていると判断される。
よって、この複合容器の場合にはバリア性は低いと考えられる。
しかし、両複合容器とも、環状部材が紙製容器本体の上部開口に適正に溶着されていることが確認できており、切り欠きの部分の隙間を合成樹脂製フィルムで閉じるか、或いは閉じないかについては、合成樹脂製の環状部材の溶着を良否を決定するものではないことが、判断できる。
【0045】
つぎに上記重ね合わせ部の容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との何れか一方に切り欠きを設けて、その容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部とを胴体の周方向に面一にした複合容器と、この切り欠きを設けずに作成した複合容器とにおいて、溶着固定した環状部材が正円に対して何mm変形しているか(円の径方向でのずれ量)を測定したところ、切り欠きを設けている前記複合容器では、0〜0.3mm程度の変形が確認できた。一方、切り欠きを設けずに重ね合わせ部の上部開口側でも壁板材が重なっている複合容器の場合、環状部材が0.4〜0.8mm程度変形していることが確認できた。
よって、切り欠きを設けることで環状部材側に変形を生じさせる力が小さいことが分かった。
【0046】
上述した実施の形態では、容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との何れか一方に切り欠きを設けた複合容器を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との両方に切り欠きを設けることも可能である。
胴体4の壁板材2は、図8に示すように原反からその長さ方向に定ピッチで切断されていて、その切断の際に底折り込み用ノッチカット22を壁板材2の下端辺の両隅に施すが、この底折り込み用ノッチカット22を、連続する次の壁板材の上端辺の両隅に図示のように掛かるようにして入れれば、容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との両方に切り欠きを設けることでき、切り欠き15の形成が容易に行なえる利点がある。
【0047】
なお、本願の上記実施の例で、容器内方の側端辺3の上部14と容器外方の側端辺3の上部13を重ねた場合、つまり、容器外方の側端辺3の上部13に切り欠き15を設けておけば、容器内方の側端辺3が、容器外方の側端辺3の上部13に重なっても上述した効果を得ることができる場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る複合容器の一例を示す説明図である。
【図2】一例における胴体の横断面を示す説明図である。
【図3】一例における重ね合わせ部の上部開口側を示す説明図である。
【図4】切り欠きの他の例を示す説明図である。
【図5】環状部材と重ね合わせ部の上部開口側とを図3のV−V線の位置の断面で示す説明図である。
【図6】容器内方の側端辺の上部の切り欠きと端面を覆うフィルムを示す説明図である。
【図7】容器内方の側端辺の端面を覆うフィルムを示す説明図である。
【図8】壁板材原反に対する壁板材と底折り込み用ノッチカットの配置を示す説明図である。
【図9】切り欠きを有しない複合容器を示す説明図である。
【図10】超音波溶着のホーンとアンビルによる溶着片と壁板材の挟み込みを概略的に示す説明図である。
【図11】切り欠きを有しない壁板材による胴体を横断面で示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1…複合容器
2…壁板材
3…側端辺
4…胴体
5…底板材
6…紙製容器本体
7…合成樹脂製の環状部材
9…環状部材の溶着片
11…重ね合わせ部
13…容器外方の側端辺の上部
14…容器内方の側端辺の上部
15…切り欠き
16…切り欠きの縦辺
17…隙間
18…切り欠きの下辺
19…合成樹脂製フィルム
21…合成樹脂製フィルム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁板材の側端辺同士を重ね合わせて壁板材を筒状にした胴体を有するカップ状の紙製容器本体と、この紙製容器本体の上部開口の内周面に亘って溶着した合成樹脂製の環状部材とからなる複合容器であって、
前記壁板材の側端辺同士を重ね合わせた重ね合わせ部の前記環状部材に対応する容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との少なくとも一方に切り欠きを設けて、前記容器内方の側端辺の上部と前記容器外方の側端辺の上部とを胴体の周方向に面一にしたことを特徴とする複合容器。
【請求項2】
前記重ね合わせ部の容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との両方に切り欠きが設けられている請求項1に記載の複合容器。
【請求項3】
前記切り欠きが、合成樹脂製フィルムで覆われている請求項1または2に記載の複合容器。
【請求項4】
前記重ね合わせ部の容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との間が、合成樹脂製フィルムで覆われている請求項1から3の何れか一項に記載の複合容器。
【請求項5】
前記重ね合わせ部の容器内方の側端辺の上部に切り欠きが設けられ、この切り欠きの端面と容器内方の側端辺の端面とが重ね合わせ部の長さ方向に沿った合成樹脂製フィルムで覆われている請求項1から4の何れか一項に記載の複合容器。
【請求項6】
前記合成樹脂製フィルムは、層構成中にガスバリア層を含んでいる積層フィルムである請求項3から5の何れか一項に記載の複合容器。
【請求項1】
壁板材の側端辺同士を重ね合わせて壁板材を筒状にした胴体を有するカップ状の紙製容器本体と、この紙製容器本体の上部開口の内周面に亘って溶着した合成樹脂製の環状部材とからなる複合容器であって、
前記壁板材の側端辺同士を重ね合わせた重ね合わせ部の前記環状部材に対応する容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との少なくとも一方に切り欠きを設けて、前記容器内方の側端辺の上部と前記容器外方の側端辺の上部とを胴体の周方向に面一にしたことを特徴とする複合容器。
【請求項2】
前記重ね合わせ部の容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との両方に切り欠きが設けられている請求項1に記載の複合容器。
【請求項3】
前記切り欠きが、合成樹脂製フィルムで覆われている請求項1または2に記載の複合容器。
【請求項4】
前記重ね合わせ部の容器内方の側端辺の上部と容器外方の側端辺の上部との間が、合成樹脂製フィルムで覆われている請求項1から3の何れか一項に記載の複合容器。
【請求項5】
前記重ね合わせ部の容器内方の側端辺の上部に切り欠きが設けられ、この切り欠きの端面と容器内方の側端辺の端面とが重ね合わせ部の長さ方向に沿った合成樹脂製フィルムで覆われている請求項1から4の何れか一項に記載の複合容器。
【請求項6】
前記合成樹脂製フィルムは、層構成中にガスバリア層を含んでいる積層フィルムである請求項3から5の何れか一項に記載の複合容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−280270(P2009−280270A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136890(P2008−136890)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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