説明

複合木質構造材および複合木質構造材の製造方法

【課題】より高い燃え止まり機能を備えた複合木質構造材等を提供する。
【解決手段】荷重を支持するための、木材からなる荷重支持層と、前記荷重支持層の外側に設けられる燃え止まり層と、前記燃え止まり層の外側に設けられ所定の燃えしろ厚さを有し、矩形状の隅角部に、燃え止まり層と点接触または非接触に配置され、高熱容量材、不燃材にしてかつ断熱性を有する断熱材、難燃処理木材または前記燃えしろ層の木材より熱慣性の高い木材からなる補強部材を有する燃えしろ層と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃え止まり機能を備えた複合木質構造材および複合木質構造材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃え止まり機能を備えた複合木質構造材としては、長期荷重を支持するに足り木材からなる荷重支持層と、該荷重支持層の外側に配置され、木材より熱容量が大きい高熱容量材、熱慣性の高い木材、不燃材にしてかつ断熱性を有する断熱材等の異種材を有する燃え止まり層と、該燃え止まり層の外側に配置され所定の燃えしろ厚さを有する木材からなる燃えしろ層とを備えた複合木質構造材が知られている。そして、荷重支持層と燃えしろ層とは、複数の木質板又は角柱状の木質単材が集成されて、また、燃え止まり層は、複数の木質板又は角柱状の木質単材と異種材とが集成されて、接着剤を介して集積されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、燃え止まり層を、複数の断熱材にて荷重支持層の全周を連続的に囲うように配置した複合木質構造材も知られている(例えば、特許文献2参照)。さらに、燃え止まり層を比較的高密度の木材単材を集積して構成し、燃えしろ層を比較的低密度の木材単体を集積して構成した複合木質構造材も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
そして、木質板からなる単板と、木質板及び異質材からなる単板とを、異種材が燃え止まり層のみに配置されるように集成して複数の複合木質ブロックを形成し、これら複合木質ブロックを互いに直角となるように配置しつつ組み合わせて緊結することにより複合木質構造材を製造することが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2005−36456号公報
【特許文献2】特開2005−36457号公報
【特許文献3】特開2005−48585号公報
【特許文献4】特開2005−53195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の複合木質構造材は、燃え止まり層の内部に荷重支持層を備えることにより、長い時間火炎や熱に晒されても荷重支持層が燃焼しにくいような燃え止まり機能を有している。しかしながら、火災の時などには、角柱状の複合木質構造材の角部に2方向から火炎や熱が加えられるため、一方向から火炎や熱が加えられる側面部より角部の方が燃焼しやすい。このため、複合木質構造材の角部が早く燃焼することにより、複合木質構造材の燃え止まり機能が十分に発揮できていないという課題があった。
【0006】
本発明は、以上の課題を解決するものであり、その目的は、より高い燃え止まり機能を備えた複合木質構造材及びこの複合木質構造材の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る複合木質構造材は、荷重を支持するための、木材からなる荷重支持層と、前記荷重支持層の外側に設けられる燃え止まり層と、前記燃え止まり層の外側に設けられ所定の燃えしろ厚さを有する燃えしろ層と、を有し、断面が矩形状をなす複合木質構造材であって、前記燃え止まり層は、高熱容量材、不燃材にしてかつ断熱性を有する断熱材、難燃処理木材または前記燃えしろ層の木材より熱慣性の高い木材からなり、前記燃えしろ層は、前記矩形状の隅角部に前記燃え止まり層と点接触または非接触に配置され、高熱容量材、不燃材にしてかつ断熱性を有する断熱材、難燃処理木材または前記燃えしろ層の木材より熱慣性の高い木材からなる補強部材と、木材と、からなることを特徴とする複合木質構造材である。
【0008】
このような複合木質構造材によれば、矩形状をなす複合木質構造材の断面における隅角部に高熱容量材、断熱材または前記燃えしろ層の木材より熱慣性の大きな木材からなる補強部材が設けられているので、隅角部の耐火性能を向上させることが可能である。例えば、複合木質構造材の隅角部に2方向から火炎や熱が加えられたとしても、隅角部に設けられた補強部材により燃焼しにくいので、隅角部が他の部位より極端に早く燃焼することを防止することが可能である。
【0009】
ところで、例えば鉄のような熱慣性の大きな部材は、熱伝達性能が高いため、部材が直接火炎や熱に曝される場合は多くの熱を吸収し、また部材内部へ熱を伝達するため耐火性能の低下を招く恐れがある。そして、補強部材として例えば熱慣性が大きな部材が設けられており、この補強部材と燃え止まり層とが面接触している場合には、補強部材から燃え止まり層を経由して内部に熱が伝達され易く複合木質構造材の内部が燃焼し易くなる畏れがある。ところが、本発明の複合木質構造材は隅角部に設けられた補強部材が燃え止まり層と点接触または非接触に配置されているので、内部に熱が伝達されることを抑えることが可能である。このため、より高い燃え止まり機能を備えた複合木質構造材を実現することが可能である。
【0010】
かかる複合木質構造材であって、前記荷重支持層と、前記燃え止まり層と、前記燃えしろ層とは各々、単材を複数集成し、隣接する単材間を接合してなる集成材を複数積層して構成されていることが望ましい。
このような複合木質構造材によれば、単材を複数集成して接合するだけで、荷重支持層と、荷重支持層を囲む燃え止まり層と、燃え止まり層の外側に設けられ隅角部に補強部材を備える燃えしろ層とを有する複合木質構造材を容易に形成することが可能である。
【0011】
かかる複合木質構造材であって、前記燃えしろ層の前記補強部材を除く部位は、米松、唐松、杉、あすなろ等の一般木造建築の木材にて構成されていることが望ましい。
このような複合木質構造材によれば、燃えしろ層の補強部材を除く部位が一般木造建築の木材なので、コストを抑えることが可能である。また、燃えしろ層の木材を一般木造建築の木材としたので美観に優れ、建設地産の国産材を利用することも可能である。
【0012】
かかる複合木質構造材であって、前記補強部材の外側に前記燃えしろ層を構成する前記木材が配置され、前記補強部材は外側に露出しないことが望ましい。
このような複合木質構造材によれば、補強部材は外側に露出しないので、木材の持つ質感を損なうことなく、また、美観に優れた複合木質構造材を提供することが可能である。
【0013】
また、荷重を支持するための、木材からなる荷重支持層と、前記荷重支持層の外側に配置される燃え止まり層と、前記燃え止まり層の外側に設けられ所定の燃えしろ厚さを有する燃えしろ層と、を有し、前記燃え止まり層は、高熱容量材、不燃材にしてかつ断熱性を有する断熱材、難燃処理木材または前記燃えしろ層の木材より熱慣性の高い木材からなる複合木質構造材の製造方法であって、断面が矩形状の矩形材を複数所定方向に連ねて集成し、隣接する矩形材間を接合して断面が矩形状となる集成材を複数形成するステップと、複数の集成材を前記所定方向と交差する交差方向に積層して、断面が矩形状となるように隣接する集成材間を接合するステップと、を有し、前記複数の集成材が積層された際に、前記交差方向の両端に配置される集成材には、前記所定方向の両端側に前記高熱容量材、不燃材にしてかつ断熱性を有する断熱材、難燃処理木材または前記燃えしろ層の木材より熱慣性の高い木材からなる補強部材が備えられていることを特徴とする複合木質構造材の製造方法である。
このような複合木質構造材の製造方法によれば、完成された複合木質構造材の断面における隅角部に補強部材を容易に備えることが可能である。
【0014】
かかる複合木質構造材の製造方法であって、前記交差方向の両端に配置される集成材の、前記所定方向において最端に位置する矩形材は木材であることが望ましい。
このような複合木質構造材の製造方法によれば、交差方向の外周面に位置する矩形材は木材なので、少なくとも交差方向においては木材の持つ質感を損なうことなく、また、美観に優れた複合木質構造材容易に製造することが可能である。
【0015】
かかる複合木質構造材の製造方法であって、前記補強部材は、木材と接合されて前記矩形材を形成し、前記隣接する集成材間が接合された際には、前記補強部材は、前記木材より内側に配置されることが望ましい。
このような複合木質構造材の製造方法によれば、補強部材は木材より内側に配置されるので、補強部材が外部に露出することはない。このため、木材の持つ質感を損なうことなく、また、さらに美観に優れた複合木質構造材を容易に製造することが可能である。
【0016】
かかる複合木質構造材の製造方法であって、前記隣接する集成材間が接合された際に配置される4つの前記補強部材より内側の領域に、前記燃え止まり層が配置されることが望ましい。
このような複合木質構造材の製造方法によれば、隅角部に配置される4つの補強部材の内側の領域に燃え止まり層が配置されるので、補強部材と燃え止まり層とは点接触または非接触に配置され、補強部材と燃え止まり層とが面接触することはない。このため、たとえ補強部材が鉄のような熱慣性の大きな部材であったとしても、燃え止まり層を通じて内部に熱が伝達されることを抑えることが可能である。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明により明らかなように、本発明による複合木質構造材及び複合木質構造材の製造方法にあっては、より高い燃え止まり機能を備えた複合木質構造材及びこの複合木質構造材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る複合木質構造材の内部を示す部分断面図である。図2は、複合木質構造材の端面を示す図である。
【0019】
図1、図2に示すように、複合木質構造材1は、荷重を支持するための荷重支持層10と、荷重支持層10の外側に当該荷重支持層を取り囲むように設けられた燃え止まり層20と、燃え止まり層20の外側に設けられ所定の燃えしろ厚さを有する燃えしろ層30との三層に観念的に区分して構成されている。また、複合木質構造材1は、断面が矩形の角材状の単材が集成されて形成されており、荷重支持層10、燃え止まり層20、燃えしろ層30はいずれも棒状の部材の集合体である。
【0020】
荷重支持層10は、例えば複合木質構造材1が柱として用いられる場合には、軸方向の長期荷重の全部又は一部を支持する断面積を有するように、角材に製材された木製の単材が複数集成され接着剤を介して接着されている。荷重支持層10に用いられる木製の単材としては、米松、唐松、檜、杉、あすなろなど一般の木造建築の柱材として用いられる樹種や後述する燃え止まり層20に用いられる木材と同種の木材等が選択される。以下の説明では、一般の木造建築として用いられる樹種の木製の単材を一般木製単材という。製材された一般木製単材の一本当りの断面積は小さいため、これらの樹種の間伐材などの使用が可能であり、資源を有効に活用することが可能である。
【0021】
燃え止まり層20には、一般木製単材より熱容量(熱吸収量)が大きな高熱容量材、断熱材または一般木製単材より熱慣性が高い木材等の部材が用いられている。ここで高熱容量材としては、例えば、モルタル、石材、ガラス、繊維補強セメント等の無機質材料、各種の金属材料の他、中空矩形断面の金属製のパイプ内に無機材料、液体金属、水、無機水和塩、消石灰等の蓄熱材料を充填して一体化したもの等が挙げられる。また、不燃材にしてかつ断熱性を有する断熱材としては、例えば、珪酸カルシウム板、ロックウール、グラスウール等が挙げられる。また、一般木製単材より熱慣性の高い木材としては、セランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等が挙げられる。
【0022】
燃え止まり層20を構成する単材は、例えば断面が矩形の角材状に形成されており、この単材が接着剤を介して荷重支持層10の外側に複数設けられて燃え止まり層20が形成されている。本実施形態においては、燃え止まり層20を構成する単材を、一般木製単材より熱容量が大きな高熱容量材とした例について説明する。
【0023】
燃えしろ層30は、例えば荷重支持層10に用いた一般木製単材と、燃え止まり層20を構成している一般木製単材より熱容量(熱吸収量)が大きな高熱容量材でなる補強部材32と、にて構成されている。補強部材32は、断面が矩形状をなし複合木質構造材1の隅角部1aに配置されている。このとき補強部材32は、補強部材32の角部が燃え止まり層20の外縁の角部と点接触または非接触に配置されている。図1,図2は点接触している例を示している。なお、各単材を接着する接着剤としては、例えば耐火性能の高いレゾルシノール樹脂接着剤を用いることが望ましい。
【0024】
図3は、本実施形態に係る複合木質構造材の製造方法を説明するための図である。図3(a)は、複合木質構造材を構成する単材を説明するための図である。図3(b)は、単材を接合して形成される集成材を説明するための図である。図3(c)は、集成材を積層して完成した複合木質構造材を説明するための図である。以下の説明では、図3の紙面における上下方向を所定方向、左右方向を所定方向と交差する交差方向として説明する。
【0025】
本実施形態の製造方法では、前述した荷重支持層10、燃え止まり層20、燃えしろ層30の3つの層という区分とは別に、まず、一般木製単材、高熱容量材でなる単材(以下、高熱容量単材という)を適宜集成したブロック状の6つの集成材51、52、53、54、55、56を形成し、これら6つの集成材51、52、53、54、55、56を積層して接着剤にて接着することにより複合木質構造材1が形成される。以下説明の便宜上、図3における6つの集成材51、52、53、54、55、56を左から、第1集成材51、第2集成材52、・・・、第6集成材56と称する。各々の集成材は、交差方向の長さが同じ複数の矩形材が所定方向に連ねて連結されて水平断面が矩形状になるように形成されている。ここで、矩形材とは、単一の集成材を構成し、交差方向の長さが同一に形成された単材または複数の単材を組み合わせたものを示している。例えば、第1集成材51の所定方向の最端に配置される矩形材51aは、1つの一般木製単材を示し、所定方向の最端から2つめの矩形材51bは、交差方向の幅が第1集成材51の幅の半分の一般木製単材と高熱容量単材との2つの単材が組み合わされたものを示している。
【0026】
本実施形態の複合木質構造材1を製造する際には、まず、図3(a)に示すように、一般木製単材と高熱容量単材とを所定の位置に配置して接着剤にて接着し、集成材51、52、53、54、55、56を形成する。このとき、第1集成材51、第3集成材53、第4集成材54、第6集成材56は、各々所定方向に18コの矩形材が連ねられて配置されている。そして、第1集成材51と第6集成材56との、所定方向における端から2番目の矩形材51b、56aは、交差方向の幅が第1集成材51及び第6集成材56の幅の半分の一般木製単材及び高熱容量単材で構成する。一般木製単材と高熱容量単材とで構成された4つの矩形材51b、56aは、いずれも複合木質構造材1として完成した際に、一般木製単材が外側に位置するように配置する。
【0027】
また、第3集成材53と第4集成材54との、所定方向における端から3番目の矩形材53a、54aは、交差方向の幅が第3集成材53及び第4集成材54の幅の半分の高熱容量単材を2つ交差方向に並べて配置する。
【0028】
そして、第2集成材52と第5集成材55とは、所定方向に6つの矩形材を連ねて配置する。このとき、第2集成材52と第5集成材55との、所定方向における両端の矩形材52a、55aとして一般木製単材を配置する。第2集成材52と第5集成材55の両端に配置される一般木製単材の所定方向における長さは、第1集成材51、第3集成材53、第4集成材54、第6集成材56を構成する単材の所定方向における長さの2倍の長さを有している。第2集成材52と第5集成材55の所定方向の両端に配置される一般木製単材間には、4つの高熱容量単材を配置する。
【0029】
本実施形態の複合木質構造材1は、第1集成材51、第3集成材53、第4集成材54、第6集成材56における各矩形材の所定方向の長さ、及び、第2集成材52と第5集成材55における交差方向の長さを等しく構成し、この長さを基準長さとして、第1集成材51と第6集成材56との交差方向の長さを基準長さの2倍とすると、第1集成材51と第6集成材56との一般木製単材と、第2集成材52と第5集成材55との一般木製単材とを共通化することが可能である。また、第2集成材52と第5集成材55の高熱容量単材の所定方向の長さは基準長さの3.5倍とし、第3集成材53と第4集成材54の交差方向の長さを基準長さの7倍とすると、第2集成材52と第5集成材55との高熱容量単材と第3集成材53と第4集成材54における高熱容量単材、すなわち燃え止まり層20を形成する全ての高熱容量単材を共通化してコストを低減させることが可能である。
【0030】
このように配置した矩形材を、集成材51、52、53、54、55、56毎に接着剤にて接着して6つの集成材51、52、53、54、55、56を形成する。このとき、各集成材51、52、53、54、55、56は水平断面が矩形状となるように形成し、交差方向において隣接する集成材が接着される面は平坦になるように接着する。
【0031】
そして、形成された6つの集成材51、52、53、54、55、56を交差方向に積層して接着剤にて接着する。このように、複合木質構造材1を製造することにより、荷重支持層10の外側に当該荷重支持層10を囲むように燃え止まり層20と、燃え止まり層20の外側に燃えしろ層30とを備え、燃えしろ層30の隅角部1aに燃え止まり層20と点接触するように補強部材32としての高熱容量単材を備えた複合木質構造材1を容易に製造することが可能である。
【0032】
本実施形態の複合木質構造材1によれば、矩形状をなす複合木質構造材1の断面における隅角部1aに高熱容量単材からなる補強部材32が設けられているので、隅角部1aの耐火性能を向上させることが可能である。このため、例えば複合木質構造材1の隅角部1aに2方向から火炎や熱が加えられたとしても、隅角部1aに設けられた補強部材32により燃焼しにくいので、隅角部1aが他の部位より極端に早く燃焼することを防止することが可能である。
【0033】
また、複合木質構造材1の隅角部1aに設けられる補強部材32は燃え止まり層20の高熱容量単材と点接触に配置されているので、補強部材32が火炎等により加熱されたとしてもその熱が燃え止まり層20を介して荷重支持層10に伝達されることを抑えることが可能である。
【0034】
また、複合木質構造材1を、単材を複数集成し、隣接する単材間を接合してなる集成材を複数積層した構成としたので、単材を複数集成して接合するだけで、荷重支持層10と、荷重支持層10を囲む燃え止まり層20と、燃え止まり層20の外側に設けられ隅角部1aに補強部材32を備える燃えしろ層30とを有する複合木質構造材1を容易に形成することが可能である。
【0035】
荷重支持層10と、燃えしろ層30の補強部材32を除く部位を、一般木造建築の木材としたので、コストを抑えることが可能である。また、燃えしろ層30の木材を一般木造建築の木材としたので美観に優れ、建設地産の国産材を利用することも可能である。
【0036】
更に、補強部材32の外側に一般木製単材を配置したので補強部材32が外部に露出することはない。このため、木材の持つ質感を損なうことなく、また、美観に優れた複合木質構造材1を提供することが可能である。
【0037】
図4は、本発明に係る複合木質構造材の変形例を示す図である。図4(a)は、第1変形例を示す図である。図4(b)は、第2変形例を示す図である。図4(c)は、第3変形例を示す図である。図4(d)は、第4変形例を示す図である。図4(e)は、第5変形例を示す図である。本実施形態の変形例について説明するが、上記実施形態と同様の部材には同じ符号を付して説明を省略する。
【0038】
上記実施形態においては、補強部材32を燃えしろ層30において一般木製単材の内側に配置して外部に露出しない例について説明したが、図4(a)に示すように、第1集成材51及び第6集成材56の所定方向における両端部から2つの矩形材を高熱容量単材としたり、図4(b)第1集成材51及び第6集成材56の所定方向における両端部から2つ目の矩形材のみ高熱容量単材としてもよい。
【0039】
また、燃え止まり層20を高熱容量単材が繋がって荷重支持層10を取り囲むように配置した例について説明したが、図4(c)に示すように燃え止まり層20を高熱量単材と一般木製単材とを交互に配置して、荷重支持層10を取り囲む構成としてもよい。このとき、図4(d)に示すように、第1集成材51及び第6集成材56の所定方向における両端部から2つの矩形材を高熱容量単材としてもよい。更に、補強部材32と燃え止まり層20の矩形材とを同一の高熱容量単材にて構成した例について説明したが、必ずしも同一である必要はない。例えば、補強部材32と燃え止まり層20の矩形材とをそれぞれ、モルタルや鉄等の高熱容量材、一般木製単材より熱慣性の高い木材、密度、熱伝導率の大きい木材、不燃材にしてかつ断熱性を有する断熱材、難燃処理木材のうちのいずれかとして、それらの組み合わせについてはいずれであっても構わない。なお、燃え止まり層20を不燃材にしてかつ断熱性を有する断熱材とする場合は、断熱材単材が繋がって荷重支持層を取り囲むようにする。さらに、上記実施形態においては、補強部材32と燃え止まり層20とが点接触する例について説明したが、図4(e)に示すように、補強部材32が燃え止まり層20から離れた位置に配置される構成であっても構わない。
【0040】
図5は、複合木質構造材を梁として使用する際の一例を示す図である。図5のように、例えばコンクリートの床スラブ60の下に、この床スラブ60に接触させて複合木質構造材1の梁65が設けられている場合には、床スラブ60と接している側の隅角部には、補強部材を設けなくともよい。図5に示す梁65のような場合には、荷重支持層10の床スラブ60側には燃えしろ層30及び燃え止まり層20が設けられておらず、両側方と下方の三方から荷重支持層10を囲む燃え止まり層20が、床スラブ60により閉塞されることにより荷重支持層10と燃えしろ層30とが縁切りされている。このため、梁65の上面側に炎が回り込むことはなく、梁65の上側の隅角部が2方向から炎や熱に晒されることは無いため、下側の隅角部のみに例えば高熱容量単材からなる補強部材32が設けられていればよい。
【0041】
なお、以上は、荷重支持層10と燃え止まり層20と燃えしろ層30とで構成される三層構造で説明したが、燃え止まり層20が燃えしろ層30の木材より熱慣性の高い木材からなる場合においては、荷重支持層10と燃え止まり層20の木材を同種にすることにより、観念的に二層構造となる場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合木質構造材の内部を示す部分断面図である。
【図2】複合木質構造材の端面を示す図である。
【図3】本実施形態に係る複合木質構造材の製造方法を説明するための図である。図3(a)は、複合木質構造材を構成する単材を説明するための図である。図3(b)は、単材を接合して形成される集成材を説明するための図である。図3(c)は、集成材を積層して完成した複合木質構造材を説明するための図である。
【図4】本発明に係る複合木質構造材の変形例を示す図である。図4(a)は、第1変形例を示す図である。図4(b)は、第2変形例を示す図である。図4(c)は、第3変形例を示す図である。図4(d)は、第4変形例を示す図である。図4(e)は、第5変形例を示す図である。
【図5】複合木質構造材を梁として使用する際の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 複合木質構成材、1a 隅角部、10 荷重支持層、
20 燃え止り層、30 燃えしろ層、32 補強部材、
51 集成材、51a 矩形材、51b 矩形材、
52 集成材、52a 矩形材、53 集成材、53a 矩形材、
54 集成材、54a 矩形材、55 集成材、55a 矩形材、
56 集成材、56a 矩形材、60 床スラブ、65 梁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を支持するための、木材からなる荷重支持層と、
前記荷重支持層の外側に設けられる燃え止まり層と、
前記燃え止まり層の外側に設けられ所定の燃えしろ厚さを有する燃えしろ層と、を有し、断面が矩形状をなす複合木質構造材であって、
前記燃え止まり層は、高熱容量材、不燃材にしてかつ断熱性を有する断熱材、難燃処理木材または前記燃えしろ層の木材より熱慣性の高い木材からなり、
前記燃えしろ層は、前記矩形状の隅角部に前記燃え止まり層と点接触または非接触に配置され、高熱容量材、不燃材にしてかつ断熱性を有する断熱材、難燃処理木材または前記燃えしろ層の木材より熱慣性の高い木材からなる補強部材と、木材と、からなることを特徴とする複合木質構造材。
【請求項2】
請求項1に記載の複合木質構造材であって、
前記荷重支持層と、前記燃え止まり層と、前記燃えしろ層とは各々、単材を複数集成し、隣接する単材間を接合してなる集成材を複数積層して構成されていることを特徴とする複合木質構造材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の複合木質構造材であって、
前記燃えしろ層の前記補強部材を除く部位は、米松、唐松、杉、あすなろ等の一般木造建築の木材にて構成されていることを特徴とする複合木質構造材。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の複合木質構造材であって、
前記補強部材の外側に前記燃えしろ層を構成する前記木材が配置され、前記補強部材は外側に露出しないことを特徴とする複合木質構造材。
【請求項5】
荷重を支持するための、木材からなる荷重支持層と、
前記荷重支持層の外側に配置される燃え止まり層と、
前記燃え止まり層の外側に設けられ所定の燃えしろ厚さを有する燃えしろ層と、を有し、前記燃え止まり層は、高熱容量材、不燃材にしてかつ断熱性を有する断熱材、難燃処理木材または前記燃えしろ層の木材より熱慣性の高い木材からなる複合木質構造材の製造方法であって、
断面が矩形状の矩形材を複数所定方向に連ねて集成し、隣接する矩形材間を接合して断面が矩形状となる集成材を複数形成するステップと、
複数の集成材を前記所定方向と交差する交差方向に積層して、断面が矩形状となるように隣接する集成材間を接合するステップと、
を有し、
前記複数の集成材が積層された際に、前記交差方向の両端に配置される集成材には、前記所定方向の両端側に前記高熱容量材、不燃材にしてかつ断熱性を有する断熱材、難燃処理木材または前記燃えしろ層の木材より熱慣性の高い木材からなる補強部材が備えられていることを特徴とする複合木質構造材の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の複合木質構造材の製造方法であって、
前記交差方向の両端に配置される集成材の、前記所定方向において最端に位置する矩形材は木材であることを特徴とする複合木質構造材の製造方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の複合木質構造材の製造方法であって、
前記補強部材は、木材と接合されて前記矩形材を形成し、
前記隣接する集成材間が接合された際には、前記補強部材は、前記木材より内側に配置されることを特徴とする複合木質構造材の製造方法。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の複合木質構造材の製造方法であって、
前記隣接する集成材間が接合された際に配置される4つの前記補強部材より内側の領域に、前記燃え止まり層が配置されることを特徴とする複合木質構造材の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−2189(P2008−2189A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173711(P2006−173711)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】