説明

複合材料および複合材料を用いた発光素子並びに発光装置

【課題】有機化合物と無機化合物とを含み、駆動電圧の低い発光素子を提供することを目的とする。
【解決手段】一対の電極間に、発光物質を含む層を有し、発光物質を含む層は、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体と、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む層を有する発光素子を提供する。このような構成とすることにより、カルバゾール誘導体と無機化合物との間で電子の授受が行われ、キャリアが内在的に発生し、発光素子の駆動電圧を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物と無機化合物とを複合した複合材料であって、キャリア輸送性および有機化合物へのキャリア注入性に優れ、かつ可視光の透過率に優れた複合材料に関する。また、前記複合材料を用いた電流励起型の発光素子に関する。また、発光素子を有する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光性の有機化合物を用いた発光素子の研究開発が盛んに行われている。これら発光素子の基本的な構成は、一対の電極間に発光性の有機化合物を含む層を挟んだものである。この素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子およびホールがそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子およびホール)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0003】
なお、有機化合物が形成する励起状態の種類としては、一重項励起状態と三重項励起状態が可能であり、一重項励起状態からの発光が蛍光、三重項励起状態からの発光が燐光と呼ばれている。
【0004】
このような発光素子は、例えば0.1μm程度の有機薄膜で形成されるため、薄型軽量に作製できることが大きな利点である。また、キャリアが注入されてから発光に至るまでの時間は1μ秒程度あるいはそれ以下であるため、非常に応答速度が速いことも特長の一つである。これらの特性は、フラットパネルディスプレイ素子として好適であると考えられている。
【0005】
また、これらの発光素子は膜状に形成されるため、大面積の素子を形成することにより、面状の発光を容易に得ることができる。このことは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0006】
このように、発光性の有機化合物を用いた電流励起型の発光素子は、発光装置や照明等への応用が期待されているが、未だ課題も多い。その課題の一つとして、消費電力の低減が挙げられる。消費電力を低減するためには、発光素子の駆動電圧を低減することが重要である。そして、電流励起型の発光素子は流れる電流量によって発光強度が決まるため、駆動電圧を低減するためには、低い電圧で多くの電流を流すことが必要となってくる。
【0007】
これまで、駆動電圧を低減させるための手法として、バッファ層を電極と発光性の有機化合物を含む層との間に設けるという試みがなされている。例えば、カンファースルホン酸をドープしたポリアニリン(PANI)からなるバッファ層をインジウム錫酸化物(ITO)と発光層との間に設けることにより、駆動電圧を低減できることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。これは、PANIの発光層へのキャリア注入性が優れているためと説明されている。なお、非特許文献1では、バッファ層であるPANIも電極の一部と見なしている。
【0008】
しかしながら、非特許文献1に記載してある通り、PANIは膜厚を厚くすると透過率が悪くなるという問題点がある。具体的には、250nm程度の膜厚で、透過率は70%を切ると報告されている。すなわち、バッファ層に用いている材料自体の透明性に問題があるため、素子内部で発生した光を効率良く取り出すことができない。
【0009】
また、特許文献1によれば、発光素子(特許文献1では発光ユニットと記載されている)を直列に接続することにより、ある電流密度当たりの輝度、すなわち電流効率を高めようという試みがなされている。特許文献1においては、発光素子を直列に接続する際の接続部分に、有機化合物と金属酸化物(具体的には酸化バナジウムおよび酸化レニウム)とを混合した層を適用しており、この層はホールや電子を発光ユニットへ注入できるとされている。
【0010】
しかしながら、特許文献1で開示されている有機化合物と金属酸化物との混合層は、実施例を見てもわかる通り、赤外領域だけでなく可視光領域(500nm付近)にも大きな吸収ピークが発生しており、やはり透明性に問題が生じている。したがって、やはり素子内部で発生した光を効率良く取り出すことができず、素子の発光効率が低下する。
【0011】
【非特許文献1】Y.Yang、他1名、アプライド フィジクス レターズ、Vol.64(10)、1245−1247(1994)
【特許文献1】特開2003−272860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで本発明では、有機化合物と無機化合物とを複合した複合材料であって、キャリア輸送性および有機化合物へのキャリア注入性に優れ、かつ可視光透過率にも優れた複合材料を提供することを課題とする。
【0013】
また、前記複合材料を電流励起型の発光素子に適用することにより、低駆動電圧の発光素子を提供することを課題とする。さらに、前記発光素子を用いて発光装置を作製することにより、消費電力の小さい発光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、有機化合物と、その有機化合物に対して電子を授受できる無機化合物とを含む層を用いることにより、課題を解決できることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明の複合材料は、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体と、前記一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体に対して電子受容性を示す無機化合物とを含むことを特徴とする。
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、R11およびR13は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、Ar11は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基のいずれかを表し、R12は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表し、R14は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、一般式(2)で示される置換基のいずれかを表し、一般式(2)で示される置換基において、R15は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、Ar12は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基のいずれかを表し、R16は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表す。)
【0018】
【化2】

【0019】
上記構成において、無機化合物は、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体に対して電子受容性を示す物質であることが望ましい。具体的には、遷移金属の酸化物であることが望ましく、特に、チタン酸化物、バナジウム酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物のいずれか一種もしくは複数種であることが好ましい。
【0020】
上記一般式(1)において、R11およびR13のどちらか一方は、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることが好ましい。より好ましくは、R11およびR13は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基のいずれかであることが好ましい。カルバゾール骨格の窒素と結合している置換基が、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることにより、キャリア輸送性が向上するという効果が得られる。
【0021】
また、上記一般式(1)において、R12は、水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることが好ましい。
【0022】
また、上記一般式(1)において、R14は、水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることが好ましい。
【0023】
また、上記一般式(1)において、R14は一般式(2)で示される置換基であることが好ましい。R14が一般式(2)で示される置換基であることにより、より耐熱性の高いカルバゾール誘導体を得ることができる。また、一般式(2)において、R15は、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることが好ましい。カルバゾール骨格の窒素と結合している置換基が、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることにより、キャリア輸送性が向上するという効果が得られる。また、一般式(2)において、R16は水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることが好ましい。
【0024】
また、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体のうち、下記一般式(3)で示されるカルバゾール誘導体を用いることが好ましい。
【0025】
【化3】

(式中、R21は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、R22は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表し、R23は、一般式(4)で示される置換基を表し、一般式(4)で示される置換基において、R24は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、Ar21は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基のいずれかを表し、R25は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表す。)
【0026】
【化4】

【0027】
上記構成において、R22は、水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることが好ましい。
【0028】
さらに好ましくは、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体のうち、一般式(5)で示されるカルバゾール誘導体を用いることが好ましい。
【0029】
【化5】

(式中、R21は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、R22およびR23は、一般式(6)で示される置換基を表し、一般式(6)で示される置換基において、R24は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、Ar21は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基のいずれかを表し、R25は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表す。)
【0030】
【化6】

【0031】
上記構成において、R25は、水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることが好ましい。
【0032】
また、上記構成において、R21は、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることが好ましい。
【0033】
カルバゾール骨格の窒素と結合している置換基が、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることにより、キャリア輸送性が向上するという効果が得られる。
【0034】
また、好ましくは、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体のうち、一般式(7)で示されるカルバゾール誘導体を用いることが好ましい。
【0035】
【化7】

(式中、Ar31は、フェニル基またはナフチル基を表す。)
【0036】
また、好ましくは、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体のうち、一般式(8)で示されるカルバゾール誘導体を用いることが好ましい。
【0037】
【化8】

(式中、Ar41およびAr42は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、フェニル基またはナフチル基を表す。)
【0038】
また、本発明の複合材料は、発光素子に用いることができる。したがって、本発明の発光素子は、一対の電極間に発光物質を含む層を有し、発光物質を含む層は、上記の複合材料を含む層を有することを特徴とする。
【0039】
上記構成において、本発明の複合材料を含む層は、一対の電極のうち陽極として機能する電極と接するように設けられていてもよいし、陰極として機能する電極と接するように設けられていてもよい。また、一対の電極それぞれと接するように一層ずつ設けられていてもよい。
【0040】
また、本発明は、上述した発光素子を有する発光装置も範疇に含めるものである。本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を範疇に含めるものである。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【0041】
また、本発明の発光素子を表示部に用いた電子機器も本発明の範疇に含めるものとする。したがって、本発明の電子機器は、表示部を有し、表示部は、上述した発光素子と発光素子の発光を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0042】
本発明を実施することで、有機化合物と無機化合物とを複合した複合材料であって、キャリア輸送性および有機化合物へのキャリア注入性に優れ、かつ可視光透過率にも優れた複合材料を提供することができる。
【0043】
本発明の発光素子は、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体と、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む層を有しているため、カルバゾール誘導体と無機化合物との間で電子の授受が行われ、キャリアが発生する。キャリアが内在的に発生していることにより、駆動電圧を低減することができる。
【0044】
また、本発明の複合材料は、可視光の透過率が高いため、発光素子に用いることにより、発光効率の高い発光素子を得ることができる。
【0045】
また、本発明の複合材料は、耐熱性に優れているため、耐熱性、耐久性に優れた発光素子を得ることができる。
【0046】
また、本発明の発光素子を用いることにより、低消費電力で、欠陥が少ない発光装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0048】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の複合材料について説明する。本発明の複合材料は、下記一般式(1)で示すカルバゾール誘導体と、無機化合物とを含む。
【0049】
【化9】

(式中、R11およびR13は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、Ar11は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基のいずれかを表し、R12は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表し、R14は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、一般式(2)で示される置換基のいずれかを表し、一般式(2)で示される置換基において、R15は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、Ar12は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基のいずれかを表し、R16は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表す。)
【0050】
【化10】

【0051】
炭素数1〜6のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n―プロピル基、n―ブチル基、n―ヘキシル基等が挙げられる。また、iso−プロピル基、tert−ブチル基等の分岐を有するアルキル基でもよい。
【0052】
炭素数6〜25のアリール基としては、具体的には、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基、9―アントリル基、9―フェナントリル基、1―ピレニル基、9,9’―ジメチル―2―フルオレニル基、スピロ―9,9’―ビフルオレン―2―イル基等が挙げられる。また、m―トリル基、p―トリル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基等の置換基を有するアリール基でもよい。
【0053】
炭素数5〜9のヘテロアリール基としては、具体的には、2―ピリジル基、8―キノリル基、3―キノリル基等が挙げられる。
【0054】
アリールアルキル基としては、具体的には、ベンジル基等が挙げられる。
【0055】
炭素数1〜7のアシル基としては、具体的には、アセチル基、ベンゾイル基、プロピオニル基等が挙げられる。
【0056】
上記一般式(1)において、R11およびR13のどちらか一方は、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることが好ましい。より好ましくは、R11およびR13は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基のいずれかであることが好ましい。カルバゾール骨格の窒素と結合している置換基が、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることにより、キャリア輸送性が向上するという効果が得られる。
【0057】
また、上記一般式(1)において、R12は、水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることが好ましい。
【0058】
また、上記一般式(1)において、R14は水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることが好ましい。
【0059】
また、上記一般式(1)において、R14は一般式(2)で示される置換基であることが好ましい。R14が一般式(2)で示される置換基であることにより、より耐熱性の高いカルバゾール誘導体を得ることができる。また、一般式(2)において、R15は、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることが好ましい。カルバゾール骨格の窒素と結合している置換基が、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることにより、キャリア輸送性が向上するという効果が得られる。また、一般式(2)において、R16は水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることが好ましい。
【0060】
また、上記一般式(1)に示される構造を有するカルバゾール誘導体のうち、下記一般式(3)に示される構造を有するカルバゾール誘導体は合成が容易であり、好ましい。
【化11】

(式中、R21は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、R22は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表し、R23は、一般式(4)で示される置換基を表し、一般式(4)で示される置換基において、R24は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、Ar21は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基のいずれかを表し、R25は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表す。)
【0061】
【化12】

【0062】
上記構成において、R22は、水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることが好ましい。
【0063】
また、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体のうち、下記一般式(5)に示される構造を有するカルバゾール誘導体であることが好ましい。
【化13】

(式中、R21は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、R22およびR23は、一般式(6)で示される置換基を表し、一般式(6)で示される置換基において、R24は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、Ar21は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基のいずれかを表し、R25は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表す。)
【0064】
【化14】

【0065】
上記構成において、R25は、水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることが好ましい。
【0066】
また、上記構成において、R24は、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることが好ましい。
【0067】
また、上記構成において、R21は、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることが好ましい。
【0068】
また、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体のうち、下記一般式(7)で示される構造を有するカルバゾール誘導体であることが好ましい。
【0069】
【化15】

(式中、Ar31は、フェニル基またはナフチル基を表す。)
【0070】
また、下記一般式(8)で示される構造を有するカルバゾール誘導体であることが好ましい。
【0071】
【化16】

(式中、Ar41およびAr42は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、フェニル基またはナフチル基を表す。)
【0072】
また、本発明に用いるカルバゾール誘導体の具体例としては、下記の構造式(9)〜(71)に示されるカルバゾール誘導体を挙げることができる。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0073】
【化17】

【0074】
【化18】

【0075】
【化19】

【0076】
【化20】

【0077】
【化21】

【0078】
【化22】

【0079】
【化23】

【0080】
【化24】

【0081】
【化25】

【0082】
【化26】

【0083】
【化27】

【0084】
【化28】

【0085】
【化29】

【0086】
【化30】

【0087】
構造式(9)〜(20)に示すカルバゾール誘導体は一般式(1)におけるR12が水素の場合のものであり、構造式(21)〜(34)に示すカルバゾール誘導体は一般式(1)におけるR12がアルキル基の場合のものである。
【0088】
構造式(35)〜(48)に示すカルバゾール誘導体は、カルバゾール骨格に同じ置換基が結合した構造をしており、異なる置換基が結合した構造のカルバゾール誘導体よりも合成が容易である。つまり、一般式(3)において、R22とR23は一般式(4)で示される同一の構造を有している場合、カルバゾール骨格に同じ置換基を結合させればよいため、合成が容易となる。
【0089】
また、本発明のカルバゾール誘導体は、構造式(49)〜(57)に示すように、フッ素を有していてもよい。
【0090】
また、構造式(58)〜(69)に示すように、カルバゾール骨格の6位には、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基が結合していることが好ましい。カルバゾール骨格の6位に、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基の置換基があることにより、カルバゾール骨格が化学的に安定化し、副反応を抑制することができる。
【0091】
本発明に用いるカルバゾール誘導体の合成方法としては、種々の反応の適用が可能である。例えば、下記の反応スキーム(A−1)や反応スキーム(A−2)に示す方法が挙げられる。ただし、本発明に用いるカルバゾール誘導体の合成方法は、これに限定されることはない。
【0092】
【化31】

【0093】
【化32】

【0094】
また、本発明の複合材料に用いる無機化合物としては、遷移金属酸化物が好ましく、具体的には、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどが挙げられる。特に、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、扱いやすく好ましい。
【0095】
なお、本発明の複合材料の製造方法は、湿式法、乾式法を問わず、どのような手法を用いても良い。例えば、本発明の複合材料は、カルバゾール誘導体と無機化合物との共蒸着で作製することができる。なお、酸化モリブデンは真空中で蒸発しやすく、作製プロセスの面からも好ましい。
【0096】
上記一般式(1)で示すカルバゾール誘導体と、無機化合物とを含むことにより、可視光領域に吸収ピークの無い複合材料を得ることができる。よって、可視光の透過率が高い複合材料を得ることができる。
【0097】
また、一般式(1)で示すカルバゾール誘導体と、無機化合物とを含むことにより、一般式(1)で示すカルバゾール誘導体と無機化合物とが相互作用し、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れた複合材料を得ることができる。なお、一般式(1)で示すカルバゾール誘導体と無機化合物との相互作用が大きいと近赤外域に吸収スペクトルが生じるため、本発明の複合材料は、800nm〜1300nmの間に吸収ピークを持つことが好ましい。
【0098】
また、一般式(1)で示すカルバゾール誘導体は、ガラス転移点が高いため、本発明の複合材料は耐熱性に優れている。
【0099】
よって、本発明の複合材料は、発光素子や、光電変換素子、薄膜トランジスタ等の半導体素子に用いることが可能である。本発明の複合材料を用いることにより、駆動電圧の低減が可能になる。また、可視光の透過率に優れているため、発光素子や、光電変換素子に用いることにより、効率の良い半導体素子を得ることができる。
【0100】
(実施の形態2)
本発明の発光素子は、一対の電極間に複数の層を有する。当該複数の層は、電極から離れたところに発光領域が形成されるように、つまり電極から離れた部位でキャリア(担体)の再結合が行われるように、キャリア注入性の高い物質やキャリア輸送性の高い物質からなる層を組み合わせて積層されたものである。
【0101】
本発明の発光素子の一態様について図1(a)を用いて以下に説明する。
【0102】
本形態において、発光素子は、第1の電極102と、第1の電極102の上に順に積層した第1の層103、第2の層104、第3の層105、第4の層106と、さらにその上に設けられた第2の電極107とから構成されている。なお、本形態では第1の電極102は陽極として機能し、第2の電極107は陰極として機能するものとして以下説明をする。
【0103】
基板101上は発光素子の支持体として用いられる。基板101としては、例えばガラス、またはプラスチックなどを用いることができる。なお、発光素子を作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。
【0104】
第1の電極102としては、さまざまな金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。例えば、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素を含有したインジウム錫酸化物、酸化インジウムに2〜20%の酸化亜鉛(ZnO)を混合したIZO(Indium Zinc Oxide)の他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−シリコン(Al−Si)、アルミニウム−チタン(Al−Ti)、アルミニウム−シリコン−銅(Al−Si−Cu)または金属材料の窒化物(TiN)等、を用いることができるが、第1の電極を陽極として用いる場合には、その中でも、仕事関数の大きい(仕事関数4.0eV以上)などで形成されていることが好ましい。
【0105】
なお、本発明の発光素子において、第1の電極102は仕事関数の大きい材料に限定されず、仕事関数の小さい材料を用いることもできる。
【0106】
第1の層103は、実施の形態1で示した複合材料を含む層である。つまり、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体と無機化合物とを含む層である。
【0107】
第2の層104は、正孔輸送性の高い物質、例えば4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:α−NPD)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)などの芳香族アミン系(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物からなる層である。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、第2の層104は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものであってもよい。
【0108】
第3の層105は、発光性の高い物質を含む層である。例えば、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)や3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(略称:クマリン6)等の発光性の高い物質とトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)や9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)等のキャリア輸送性が高く膜質がよい(つまり結晶化しにくい)物質とを自由に組み合わせて構成される。但し、AlqやDNAは発光性も高い物質であるため、これらの物質を単独で用いた構成とし、第3の層105としても構わない。
【0109】
第4の層106は、電子輸送性の高い物質、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる層である。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を第4の層106として用いても構わない。また、第4の層106は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0110】
第2の電極107を形成する物質としては、仕事関数の小さい(仕事関数3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の1族または2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(Mg:Ag、Al:Li)が挙げられる。しかしながら、第2の電極107と発光層との間に、電子注入を促す機能を有する層を、当該第2の電極と積層して設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、珪素を含むITO等様々な導電性材料を第2の電極107として用いることができる。
【0111】
なお、電子注入を促す機能を有する層としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の化合物を用いることができる。また、この他、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有させたもの、例えばAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いることができる。
【0112】
また、第1の層103、第2の層104、第3の層105、第4の層106の形成方法は、蒸着法、インクジェット法、またはスピンコート法などを用いてもよい。また各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0113】
以上のような構成を有する本発明の発光素子は、第1の電極102と第2の電極107との間に生じた電位差により電流が流れ、発光性の高い物質を含む層である第3の層105において正孔と電子とが再結合し、発光するものである。つまり第3の層105に発光領域が形成されるような構成となっている。但し、第3の層105の全てが発光領域として機能する必要はなく、例えば、第3の層105のうち第2の層104側または第4の層106側にのみ発光領域が形成されるようなものであってもよい。
【0114】
発光は、第1の電極102または第2の電極107のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極102または第2の電極107のいずれか一方または両方は、透光性を有する物質で成る。第1の電極102のみが透光性を有する物質からなるものである場合、図1(a)に示すように、発光は第1の電極102を通って基板側から取り出される。また、第2の電極107のみが透光性を有する物質からなるものである場合、図1(b)に示すように、発光は第2の電極107を通って基板と逆側から取り出される。第1の電極102および第2の電極107がいずれも透光性を有する物質からなるものである場合、図1(c)に示すように、発光は第1の電極102および第2の電極107を通って、基板側および基板と逆側の両方から取り出される。
【0115】
なお第1の電極102と第2の電極107との間に設けられる層の構成は、上記のものには限定されない。発光領域と金属とが近接することによって生じる消光が抑制されるように、第1の電極102および第2の電極107から離れた部位に正孔と電子とが再結合する領域を設けた構成であり、且つ、実施の形態1で示した複合材料を含む層を有するものであれば、上記以外のものでもよい。
【0116】
つまり、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質または正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質等から成る層を、本発明の複合材料を含む層と自由に組み合わせて構成すればよい。また、第1の電極102上には、酸化珪素膜等からなる層を設けることによってキャリアの再結合部位を制御したものであってもよい。
【0117】
図2に示す発光素子は、陰極として機能する第1の電極302の上に電子輸送性の高い物質からなる第1の層303、発光性の高い物質を含む第2の層304、正孔輸送性の高い物質からなる第3の層305、本発明の複合材料を含む層である第4の層306、陽極として機能する第2の電極307とが順に積層された構成となっている。なお、301は基板である。
【0118】
本実施の形態においては、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に発光素子を作製している。一基板上にこのような発光素子を複数作製することで、パッシブ型の発光装置を作製することができる。また、ガラス、プラスチックなどからなる基板以外に、例えば薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板上に発光素子を作製してもよい。これにより、TFTによって発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の発光装置を作製できる。なお、TFTの構造は、特に限定されない。スタガ型のTFTでもよいし逆スタガ型のTFTでもよい。また、TFTアレイ基板に形成される駆動用回路についても、N型およびP型のTFTからなるものでもよいし、若しくはN型またはP型のいずれか一方からのみなるものであってもよい。
【0119】
本発明の発光素子は、実施の形態1で示した複合材料、つまり、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体と無機化合物とを含む層を有する。本発明の複合材料は、キャリアが内在的に発生していることにより導電性が高く、そのため発光素子の低電圧駆動を実現することができる。
【0120】
また、本発明で用いる複合材料は可視光の透過率が高いため、発光層で発光した光を効率良く外部へ取り出すことができる。
【0121】
また、本発明で用いる複合材料は可視光の透過率が高いため、複合材料を含む層を厚膜化した場合でも光の取り出し効率の低減を抑制することができる。よって、駆動電圧の上昇を抑制しつつ、外部への光の取り出し効率が高くなるように複合材料を含む層の膜厚を最適化することが可能となる。
【0122】
また、駆動電圧を上昇させることなく、光学設計による色純度の向上を実現することができる。
【0123】
また、本発明の複合材料は、ガラス転移点の高い有機化合物を含んでいる上に、無機化合物も含んでおり、耐熱性に優れているため、本発明の発光素子は、耐熱性、耐久性に優れている。
【0124】
また、複合材料を含む層を厚膜化することにより、ゴミや衝撃等による短絡を防止することができるため、信頼性の高い発光素子を得ることができる。例えば、通常の発光素子の電極間の膜厚が100nm〜150nmであるのに対し、複合材料を含む層を用いた発光素子の電極間の膜厚は、100〜500nm、好ましくは、200〜500nmとすることができる。
【0125】
また、本発明の発光素子に用いる複合材料を含む層は、電極とオーム接触することが可能であり、電極との接触抵抗が小さい。そのため、仕事関数等を考慮することなく、電極材料を選ぶことができる。つまり、電極材料の選択肢が広がる。
【0126】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2に示した構成とは異なる構成を有する発光素子について、図5および図6を用いて説明する。本実施の形態で示す構成は、陰極として機能する電極に接するように本発明の複合材料を含む層を設けることができる。
【0127】
図5(a)に本発明の発光素子の構造の一例を示す。第1の電極401と、第2の電極402との間に、第1の層411、第2の層412、第3の層413が積層された構成となっている。本実施の形態では、第1の電極401が陽極として機能し、第2の電極402が陰極として機能する場合について説明する。
【0128】
第1の電極401、第2の電極402は、実施の形態2と同じ構成を適用することができる。また、第1の層411は発光性の高い物質を含む層である。第2の層412は電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層であり、第3の層413は実施の形態1で示した複合材料を含む層である。第2の層412に含まれる電子供与性物質としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属およびそれらの酸化物や塩であることが好ましい。具体的には、リチウム、セシウム、カルシウム、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物、炭酸セシウム等が挙げられる。
【0129】
このような構成とすることにより、図5(a)に示した通り、電圧を印加することにより第2の層412および第3の層413の界面近傍にて電子の授受が行われ、電子と正孔が発生し、第2の層412は電子を第1の層411に輸送すると同時に、第3の層413は正孔を第2の電極402に輸送する。すなわち、第2の層412と第3の層413とを合わせて、キャリア発生層としての役割を果たしている。また、第3の層413は、正孔を第2の電極402に輸送する機能を担っていると言える。
【0130】
また、第3の層413は、極めて高い正孔注入性、正孔輸送性を示す。そのため、駆動電圧を低減することができる。また、第3の層413を厚膜化した場合、駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0131】
また、第3の層413を厚膜化しても、駆動電圧の上昇を抑制することができるため、第3の層413の膜厚を自由に設定でき、第1の層411からの発光の取り出し効率を向上させることができる。また、第1の層411からの発光の色純度が向上するように、第3の層413の膜厚を設定することも可能である。また、第3の層413は可視光の透過率が高く、厚膜化による発光の外部取り出し効率の低減を抑制できる。
【0132】
また、図5(a)を例に取ると、第2の電極402をスパッタリングにより成膜する場合などは、発光性の物質が存在する第1の層411へのダメージを低減することもできる。
【0133】
なお、本実施の形態の発光素子においても、第1の電極401や第2の電極402の材料を変えることで、様々なバリエーションを有する。その模式図を図5(b)、図5(c)および図6に示す。なお、図5(b)、図5(c)および図6では、図5(a)の符号を引用する。また、400は、本発明の発光素子を担持する基板である。
【0134】
図5は、基板400側から第1の層411、第2の層412、第3の層413の順で構成されている場合の例である。この時、第1の電極401を光透過性とし、第2の電極402を遮光性(特に反射性)とすることで、図5(a)のように基板400側から光を射出する構成となる。また、第1の電極401を遮光性(特に反射性)とし、第2の電極402を光透過性とすることで、図5(b)のように基板400の逆側から光を射出する構成となる。さらに、第1の電極401、第2の電極402の両方を光透過性とすることで、図5(c)に示すように、基板400側と基板400の逆側の両方に光を射出する構成も可能となる。
【0135】
図6は、基板400側から第3の層413、第2の層412、第1の層411の順で構成されている場合の例である。この時、第1の電極401を遮光性(特に反射性)とし、第2の電極402を光透過性とすることで、図6(a)のように基板400側から光を取り出す構成となる。また、第1の電極401を光透過性とし、第2の電極402を遮光性(特に反射性)とすることで、図6(b)のように基板400と逆側から光を取り出す構成となる。さらに、第1の電極401、第2の電極402の両方を光透過性とすることで、図6(c)に示すように、基板400側と基板400の逆側の両方に光を射出する構成も可能となる。
【0136】
なお、本実施の形態における発光素子を作製する場合には、湿式法、乾式法を問わず、種々の方法を用いることができる。
【0137】
また、図5に示すように、第1の電極401を形成した後、第1の層411、第2の層412、第3の層413を順次積層し、第2の電極402を形成してもよいし、図6に示すように、第2の電極402を形成した後、第3の層413、第2の層412、第1の層411を順次積層し、第1の電極401を形成してもよい。
【0138】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0139】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態2および実施の形態3に示した構成とは異なる構成を有する発光素子について、図3および図4を用いて説明する。本実施の形態で示す構成は、発光素子の2つの電極に接するように本発明の複合材料を含む層を設けることができる。
【0140】
図3(a)に本発明の発光素子の構造の一例を示す。第1の電極201と、第2の電極202との間に、第1の層211、第2の層212、第3の層213、第4の層214が積層された構成となっている。本実施の形態では、第1の電極201が陽極として機能し、第2の電極202が陰極として機能する場合について説明する。
【0141】
第1の電極201、第2の電極202は、実施の形態2と同じ構成を適用することができる。また、第1の層211は実施の形態1で示した複合材料を含む層であり、第2の層212は発光性の高い物質を含む層である。第3の層213は電子供与性物質と電子輸送性の高い化合物とを含む層であり、第4の層214は実施の形態1で示した複合材料を含む層である。第3の層213に含まれる電子供与性物質としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属およびそれらの酸化物や塩であることが好ましい。具体的には、リチウム、セシウム、カルシウム、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物、炭酸セシウム等が挙げられる。
【0142】
このような構成とすることにより、図3(a)に示した通り、電圧を印加することにより第3の層213および第4の層214の界面近傍にて電子の授受が行われ、電子と正孔が発生し、第3の層213は電子を第2の層212に輸送すると同時に、第4の層214は正孔を第2の電極202に輸送する。すなわち、第3の層213と第4の層214とを合わせて、キャリア発生層としての役割を果たしている。また、第4の層214は、正孔を第2の電極202に輸送する機能を担っていると言える。なお、第4の層214と第2の電極202との間に、さらに第2の層および第3の層を再び積層することで、タンデム型の発光素子とすることも可能である。
【0143】
また、第1の層211や第4の層214は、極めて高い正孔注入性、正孔輸送性を示す。そのため、発光素子の駆動電圧を低減することができる。
また、第1の層211や第4の層214を厚膜化した場合、駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0144】
また、第1の層211や第4の層214を厚膜化しても、駆動電圧の上昇を抑制することができるため、第1の層211や第4の層214の膜厚の自由に設定でき、第2の層212からの発光の取り出し効率を向上させることができる。また、第2の層212からの発光の色純度が向上するように、第1の層211や第4の層214の膜厚を設定することも可能である。また、第1の層211や第4の層214は可視光の透過率が高く、厚膜化による発光の外部取り出し効率の低減を抑制できる。
【0145】
また、本実施の形態の発光素子は、発光機能を担う第2の層の陽極側および陰極側を非常に厚くすることが可能となり、さらに発光素子の短絡を効果的に防止できる。また、図3(a)を例に取ると、第2の電極202をスパッタリングにより成膜する場合などは、発光性の物質が存在する第2の層212へのダメージを低減することもできる。さらに、第1の層211と第4の層214を同じ材料で構成することにより、発光機能を担う層を挟んで両側に同じ材料で構成された層を設けることができるため、応力歪みを抑制する効果も期待できる。
【0146】
なお、本実施の形態の発光素子においても、第1の電極201や第2の電極202の材料を変えることで、様々なバリエーションを有する。その模式図を図3(b)、図3(c)および図4に示す。なお、図3(b)、図3(c)および図4では、図3(a)の符号を引用する。また、200は、本発明の発光素子を担持する基板である。
【0147】
図3は、基板200側から第1の層211、第2の層212、第3の層213、第4の層214の順で構成されている場合の例である。この時、第1の電極201を光透過性とし、第2の電極202を遮光性(特に反射性)とすることで、図3(a)のように基板200側から光を射出する構成となる。また、第1の電極201を遮光性(特に反射性)とし、第2の電極202を光透過性とすることで、図3(b)のように基板200の逆側から光を射出する構成となる。さらに、第1の電極201、第2の電極202の両方を光透過性とすることで、図3(c)に示すように、基板200側と基板200の逆側の両方に光を射出する構成も可能となる。
【0148】
図4は、基板200側から第4の層214、第3の層213、第2の層212、第1の層211の順で構成されている場合の例である。この時、第1の電極201を遮光性(特に反射性)とし、第2の電極202を光透過性とすることで、図4(a)のように基板200側から光を取り出す構成となる。また、第1の電極201を光透過性とし、第2の電極202を遮光性(特に反射性)とすることで、図4(b)のように基板200と逆側から光を取り出す構成となる。さらに、第1の電極201、第2の電極202の両方を光透過性とすることで、図4(c)に示すように、基板200側と基板200の逆側の両方に光を射出する構成も可能となる。
【0149】
なお、第1の層211が、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含み、第2の層212が発光性の物質を含み、第3の層213が実施の形態1で示した複合材料を含む層であり、第4の層214が、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む構成にすることも可能である。
【0150】
なお、本実施の形態における発光素子を作製する場合には、湿式法、乾式法を問わず、種々の方法を用いることができる。
【0151】
また、図3に図示するように、第1の電極201を形成した後、第1の層211、第2の層212、第3の層213、第4の層214を順次積層し、第2の電極202を形成してもよいし、図4に図示するように、第2の電極202を形成した後、第4の層214、第3の層213、第2の層212、第1の層211を順次積層し、第1の電極を形成してもよい。
【0152】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0153】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態2〜実施の形態4に示した構成とは異なる構成を有する発光素子について説明する。本実施の形態で示す構成は、複数の発光ユニットを積層した構成の発光素子の電荷発生層として、本発明の複合材料を適用した構成である。
【0154】
本実施の形態では、複数の発光ユニットを積層した構成の発光素子(以下、タンデム型素子という)について説明する。つまり、第1の電極と第2の電極との間に、複数の発光ユニットを有する発光素子である。図31に2つの発光ユニットを積層したタンデム型素子を示す。
【0155】
図31において、第1の電極501と第2の電極502との間には、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512が積層されている。第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512との間には、電荷発生層513が形成されている。
【0156】
第1の電極501と第2の電極502は、種々の材料を用いることができる。
【0157】
第1の発光ユニット511および第2の発光ユニット512は、それぞれ種々の構成を用いることができる。
【0158】
電荷発生層513には、実施の形態1で示した本発明の複合材料が含まれている。本発明の複合材料は、可視光の透過率が高いため、第1の発光ユニットおよび第2の発光ユニットで発光した光の透過率が高く、外部取り出し効率を向上させることが可能である。
【0159】
なお、電荷発生層513は、本発明の複合材料と種々の材料とを組み合わせて形成してもよい。例えば、実施の形態3で示したように、本発明の複合材料からなる層と、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層とを組み合わせて形成してもよい。また、本発明の材料からなる層と、透明導電膜とを組み合わせて形成してもよい。
【0160】
本実施の形態では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、同様に、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子についても、本発明の材料を適用することが可能である。例えば、3つの発光ユニットを積層した発光素子は、第1の発光ユニット、第1の電荷発生層、第2の発光ユニット、第2の電荷発生層、第3の発光ユニット、の順に積層されるが、本発明の複合材料は、いずれか一つの電荷発生層のみに含まれていてもよいし、全ての電荷発生層に含まれていてもよい。
【0161】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0162】
(実施の形態6)
本実施の形態では、発光素子の光学設計について説明する。
【0163】
実施の形態2〜実施の形態5に示した発光素子において、各発光色を発する発光素子ごとに、少なくとも第1の電極及び第2の電極を除く各層のいずれか一つの膜厚を異ならせることにより、発光色毎の光の取り出し効率を高めることができる。
【0164】
例えば、図10に示すように、赤系色(R)、緑系色(G)、青系色(B)を発光する発光素子は、反射電極である第1の電極1101、及び透光性を有する第2の電極1102を共有しており、それぞれ第1の層1111R、1111G、1111B、第2の層1112R、1112G、1112B、第3の層1113R、1113G、1113B、第4の層1114R、1114G、1114Bを有する。そして、第1の層1111R、1111G、1111Bを発光色毎に異ならせる。
【0165】
なお、図10に示す発光素子において、第2の電極1102の電位よりも第1の電極1101の電位が高くなるように電圧を印加すると、第1の層1111(R,G,B)から第2の層1112(R,G,B)へ正孔が注入される。第3の層1113(R,G,B)および第4の層1114(R,G,B)の界面近傍にて電子の授受が行われ、電子と正孔が発生し、第3の層1113(R,G,B)は電子を第2の層1112(R,G,B)に輸送すると同時に、第4の層1114(R,G,B)は正孔を第2の電極1102に輸送する。正孔と、電子とが、第2の層1112(R,G,B)において再結合し、発光物質を励起状態にする。そして、励起状態の発光物質は、基底状態に戻るときに発光する。
【0166】
図10に示すように、第1の層1111R、1111G、1111Bの膜厚を発光色毎に異ならせることにより、直接第2の電極を介して認識する場合と、第1の電極で反射して第2の電極を介して認識する場合とで光路が異なることによる、光の取り出し効率の低下を防止することができる。
【0167】
具体的には、第1の電極に光が入射した場合、反射光には位相の反転が生じ、これによって生じる光の干渉効果が生じる。その結果、発光領域と反射電極との光学距離、つまり屈折率×距離が、発光波長の(2m−1)/4倍(mは任意の正の整数)、即ち、1/4、3/4、5/4・・・倍の時には、発光の外部取り出し効率が高くなる。一方、m/2倍(mは任意の正の整数)即ち、1/2、1、3/2・・・倍の時には発光の外部取り出し効率が低くなってしまう。
【0168】
したがって、本発明の発光素子において、発光領域と反射電極との光学距離、つまり屈折率×距離が、発光波長の(2m−1)/4倍(mは任意の正の整数)となるように、第1の層から第4の層のいずれかの膜厚を各発光素子で異ならせる。
【0169】
特に、第1の層から第4の層において、電子と正孔が再結合する層から反射電極との間の層の膜厚を異ならせるとよいが、電子と正孔が再結合する層から透光性を有する電極との間の膜厚を異ならせてもよい。さらに両者の膜厚を異ならせても構わない。その結果、発光を効率よく外部に取り出すことができる。
【0170】
第1の層から第4の層のいずれかの膜厚を異ならせるためには、層を厚膜化する必要がある。本発明の発光素子は、厚膜化する層に、実施の形態1で示した複合材料を含む層を用いることを特徴とする。
【0171】
一般に、発光素子の層を膜厚化すると、駆動電圧が増加してしまうため、好ましくなかった。しかし、厚膜化する層に、実施の形態1で示した複合材料を用いると、駆動電圧自体を低くでき、厚膜化することによる駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0172】
なお、図10では、赤系色(R)の発光素子の発光領域と反射電極との光学距離が発光波長の1/4倍、緑系色(G)の発光素子の発光領域と反射電極との光学距離が発光波長の3/4倍、青系色(B)の発光素子の発光領域と反射電極との光学距離が発光波長の5/4倍のものを示した。なお、本発明はこの値に限られず、適宜mの値を設定することが可能である。また、図10に示すように、発光波長の(2m−1)/4倍のmの値は各発光素子で異なっていてもよい。
【0173】
また、第1の層から第4の層のいずれかを厚膜化することにより、第1の電極と第2の電極とが短絡することを防止でき、量産性を高めることもでき、非常に好ましい。
【0174】
このように本発明の発光素子は、少なくとも第1の層から第4の層の膜厚を、各発光色で異ならせることができる。このとき、電子と正孔が再結合する層と反射電極との間とある層の膜厚を、各発光色で異ならせることが好ましい。さらに厚膜化する必要のある層には、実施の形態1で示した複合材料を含む層とすると、駆動電圧が高くならず好ましい。
【0175】
なお、本実施の形態では、実施の形態4に示した構成の発光素子を用いて説明したが、他の実施の形態と適宜組み合わせることも可能である。
【0176】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の発光素子を有する発光装置について説明する。
【0177】
本実施の形態では、画素部に本発明の発光素子を有する発光装置について図7を用いて説明する。なお、図7(A)は、発光装置を示す上面図、図7(B)は図7(A)をA−A’およびB−B’で切断した断面図である。点線で示された601は駆動回路部(ソース側駆動回路)、602は画素部、603は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0178】
なお、引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0179】
次に、断面構造について図7(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0180】
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するTFTは、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施例では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0181】
また、画素部602はスイッチング用TFT611と、電流制御用TFT612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0182】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
【0183】
第1の電極613上には、発光物質を含む層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極613に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、または珪素を含有したインジウム錫酸化物膜、2〜20%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
【0184】
また、発光物質を含む層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。発光物質を含む層616は、実施の形態1で示した複合材料を含む層を有している。また、発光物質を含む層616を構成する他の材料としては、低分子系材料、中分子材料(オリゴマー、デンドリマーを含む)、または高分子系材料であっても良い。また、発光物質を含む層に用いる材料としては、通常、有機化合物を単層もしくは積層で用いる場合が多いが、本発明においては、有機化合物からなる膜の一部に無機化合物を用いる構成も含めることとする。
【0185】
さらに、発光物質を含む層616上に形成され、陰極として機能する第2の電極617に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Ag、Li、Ca、またはこれらの合金MgAg、MgIn、AlLi、CaF、または窒化カルシウム)を用いることが好ましい。なお、発光物質を含む層616で生じた光が第2の電極617を透過させる場合には、第2の電極617として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、珪素を含有したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
【0186】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される場合もある。
【0187】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0188】
以上のようにして、本発明の発光素子を有する発光装置を得ることができる。
【0189】
本発明の発光装置は、実施の形態1で示した複合材料、つまり、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体と無機化合物とを含む層を有しているため、駆動電圧を低減することができ、消費電力を低減することが可能となる。
【0190】
また、本発明で用いる複合材料は可視光の透過率が高いため、発光層で発光した光を効率良く外部へ取り出すことができる。
【0191】
また、本発明の発光装置は、複合材料を含む層を厚くしても駆動電圧の上昇を抑制することができる。また、本発明で用いる複合材料は、可視光の透過率が高い。よって、複合材料を含む層を厚くして、発光素子の短絡を防止することができる。また、光学設計により発光の外部取り出し効率の向上を実現することができる。よって、消費電力が少なく、信頼性の高い発光装置を得ることができる。
【0192】
以上のように、本実施の形態では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアクティブ型の発光装置について説明したが、この他、トランジスタ等の駆動用の素子を特に設けずに発光素子を駆動させるパッシブ型の発光装置であってもよい。図8には本発明を適用して作製したパッシブ型の発光装置の斜視図を示す。図8において、基板951上には、電極952と電極956との間には発光物質を含む層955が設けられている。電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。また、パッシブ型の発光装置においても、低駆動電圧で動作する本発明の発光素子を含むことによって、低消費電力で駆動させることができる。
【0193】
(実施の形態8)
本実施の形態では、実施の形態7に示す発光装置をその一部に含む本発明の電気機器について説明する。本発明の電気機器は、実施の形態1に示した複合材料を含み、低消費電力の表示部を有する。また、ゴミや衝撃等による短絡が抑制された信頼性の高い表示部を有する。
【0194】
本発明の発光装置を用いて作製された電気機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電気機器の具体例を図9に示す。
【0195】
図9(A)はテレビ受像機であり、筐体9101、支持台9102、表示部9103、スピーカー部9104、ビデオ入力端子9105等を含む。本発明の発光装置をその表示部9103に用いることにより作製される。本発明の発光装置を表示部に用いることにより、低消費電力で、信頼性の高い表示部を有するテレビ受像機を提供することができる。なお、テレビ受像機は、コンピュータ用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用装置が含まれる。
【0196】
図9(B)はコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングマウス9206等を含む。本発明の発光装置をその表示部9203に用いることにより作製される。本発明の発光装置を表示部に用いることにより、低消費電力で、信頼性の高い表示部を有するコンピュータを提供することができる。
【0197】
図9(C)はゴーグル型ディスプレイであり、本体9301、表示部9302、アーム部9303を含む。本発明の発光装置をその表示部9302に用いることにより作製される。本発明の発光装置を表示部に用いることにより、低消費電力で、信頼性の高い表示部を有するゴーグル型ディスプレイを提供することができる。
【0198】
図9(D)は携帯電話であり、本体9401、筐体9402、表示部9403、音声入力部9404、音声出力部9405、操作キー9406、外部接続ポート9407、アンテナ9408等を含む。本発明の発光装置をその表示部9403に用いることにより作製される。なお、表示部9403は黒色の背景に白色の文字を表示することで携帯電話の消費電力を抑えることができる。本発明の発光装置を表示部に用いることにより、低消費電力で、信頼性の高い表示部を有する携帯電話を提供することができる。
【0199】
図9(E)はカメラであり、本体9501、表示部9502、筐体9503、外部接続ポート9504、リモコン受信部9505、受像部9506、バッテリー9507、音声入力部9508、操作キー9509、接眼部9510等を含む。本発明の発光装置をその表示部9502に用いることにより作製される。本発明の発光装置を表示部に用いることにより、低消費電力で、信頼性の高い表示部を有するカメラを提供することができる。
【0200】
以上の様に、本発明の発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電気機器に適用することが可能である。本発明の発光装置を用いることにより、低消費電力で、信頼性の高い表示部を有する電気機器を提供することが可能となる。
【実施例1】
【0201】
本発明のカルバゾール誘導体の一例として、構造式(12)で示される3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)の合成方法について説明する。
【0202】
【化33】

【0203】
[ステップ1]
まず、3−ブロモ−9−フェニルカルバゾールの合成方法について説明する。3−ブロモ−9−フェニルカルバゾールの合成スキームを(A−3)に示す。
【0204】
【化34】

【0205】
9−フェニルカルバゾール24.3g(100mmol)を氷酢酸600mLに溶かし、N−ブロモコハク酸イミド17.8g(100mmol)をゆっくり加え、室温で一晩撹拌した。この氷酢酸溶液を氷水1Lに撹拌しながら滴下した。析出した白色固体を水で3回洗浄した。この固体をジエチルエーテル150mLに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で洗浄した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。これを濾過し、得られたろ液を濃縮した。得られた残渣にメタノールを約50mLを加え、均一に溶解させた。この溶液を静置することで白色固体が析出した。この固体を回収し乾燥させる事で、白色粉末の3−ブロモ−9−フェニルカルバゾールを28.4g(収率88%)を得た。
【0206】
[ステップ2]
次に、3−(N−フェニルアミノ)−9−フェニルカルバゾール(略称:PCA)の合成方法について説明する。PCAの合成スキームを(A−4)に示す。
【0207】
【化35】

【0208】
窒素雰囲気下で、3−ブロモ−9−フェニルカルバゾール19g(60mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)340mg(0.6mmol)、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン1.6g(3.0mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド13g(180mmol)の混合物に、脱水キシレン110mL、アニリン7.0g(75mmol)を加えた。これを窒素雰囲気下にて90℃、7.5時間加熱撹拌した。反応終了後、この懸濁液に温トルエン約500mLを加え、これをフロリジール、アルミナ、セライトを通して濾過した。得られたろ液を濃縮し、この残渣をヘキサン−酢酸エチルを加えて超音波を照射した。得られた懸濁液を濾過し、このろ物を乾燥し、クリーム色粉末の3−(N−フェニルアミノ)−9−フェニルカルバゾール15g(収率75%)を得た。NMRのデータを以下に示す。H−NMR(300MHz、CDCl):δ=6.84(t、J=6.9、1H)、6.97(d、J=7.8、2H)、7.20−7.61(m、13H)、7.90(s、1H)、8.04(d、J=7.8、1H)。また、H−NMRのチャートを図25に、図25における5.0〜9.0ppmの部分を拡大したものを図26に示す。
【0209】
[ステップ3]
3−ヨード−9−フェニルカルバゾールの合成方法について説明する。3−ヨード−9−フェニルカルバゾールの合成スキームを(A−5)に示す。
【0210】
【化36】

【0211】
9−フェニルカルバゾール24.3g(100mmol)を氷酢酸600mLに溶かし、N−ヨードコハク酸イミド22.5g(100mmol)をゆっくり加え、室温で一晩撹拌した。生じた析出物を濾過し、ろ物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液、水、メタノールで洗浄した後、乾燥させた。白色粉末の3−ヨード−9−フェニルカルバゾール24.7g(収率67%)を得た。
【0212】
なお、3−ヨード−9−フェニルカルバゾールは以下に示す方法を用いても合成することができる。3−ヨード−9−フェニルカルバゾールの合成スキームを(A−5b)に示す。
【0213】
【化37】

【0214】
9−フェニルカルバゾール10g(10.0mmol)、ヨウ化カリウム838mg(5.0mmol)、ヨウ素酸カリウム1.1g(5.0mmol)、氷酢酸30mLを三口フラスコに入れ、120℃で1時間還流した。反応後、反応溶液を十分さましてから水に加えて、トルエンで抽出し、有機層を飽和食塩水で1回洗浄してから硫酸マグネシウムにより乾燥した。この溶液を自然濾過し、得られたろ液を濃縮してから、アセトン、メタノールにより再結晶したところ、目的物の白色固体を8.0g、収率50%で得た。
【0215】
合成スキーム(A−5b)に示す合成方法を用いることにより、より安価な材料を用いて、3−ヨード−9−フェニルカルバゾールを合成することができるため、コストの削減が可能である。
【0216】
[ステップ4]
3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)の合成方法について説明する。PCzPCA1の合成スキームを(A−6)に示す。
【0217】
【化38】

【0218】
窒素雰囲気下で、3−ヨード−9−フェニルカルバゾール3.7g(10mmol)、PCA 3.4g(10mmol)ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)57mg(0.1mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン49w%ヘキサン溶液200mL(0.5mmol)ナトリウム−tert−ブトキシド3.0g(30mmol)の混合物に、脱水キシレン40mLを加えた。これを窒素雰囲気下にて90℃、6.5時間加熱撹拌した。反応終了後、この懸濁液に温トルエン約500mLを加え、これをフロリジール、アルミナ、セライトを通して濾過した。得られたろ液を濃縮し、この残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:1)にて分取した。これを濃縮し、得られた残渣に酢酸エチル−ヘキサンを加えて再結晶を行った。クリーム色粉末の3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール3.2g(収率56%)を得た。NMRのデータを以下に示す。H−NMR(300MHz、DMSO−d):δ=6.85(t、J=7.5、1H)、6.92(d、J=7.8、2H)、7.17−7.70(m、22H)、8.05(d、J=2.1、2H)、8.12(d、J=7.8、2H)。また、H−NMRのチャートを図11に、図11における6.50〜8.50ppmの部分を拡大したものを図12に示す。
【0219】
得られたPCzPCA1の熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。その結果を図19に示す。図19において、左側の縦軸は示差熱分析(DTA)における示差熱(熱電対の起電力(μV))を表し、右側の縦軸は熱重量測定(TG測定)における重量(%;測定開始時の重量を100%として表した重量)を表す。さらに、下側の横軸は、温度(℃)を表す。なお、測定には示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子工業株式会社製,TG/DTA 320型)を用い、窒素雰囲気下、10℃/minの昇温速度で熱物性を評価した。その結果、重量と温度の関係(熱重量測定)から、常圧下で、測定開始時における重量に対し95%以下の重量になる温度は、375℃であった。
【0220】
また、PCzPCA1のトルエン溶液およびPCzPCA1の薄膜の吸収スペクトルを図13に示す。測定には、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製し、それぞれ石英の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図13に示した。図13において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。最大吸収波長はPCzPCA1のトルエン溶液の場合では320nm、PCzPCA1の薄膜の場合で321nmであった。また、PCzPCA1のトルエン溶液およびPCzPCA1の薄膜の発光スペクトルを図14に示す。図14において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。最大発光波長はPCzPCA1のトルエン溶液の場合では435nm(励起波長325nm)、PCzPCA1の薄膜の場合で443nm(励起波長380nm)であった。
【0221】
また、PCzPCA1の薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った。HOMO準位の値は、光電子分光装置(理研計器(株)製、AC−2)を用いて測定したイオン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位の値は、図13における薄膜の吸収端をエネルギーギャップとし、HOMO準位の値に加算することにより得た。その結果、HOMO準位とLUMO準位はそれぞれ−5.17eVと−1.82eVであった。
【0222】
また、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定により、PCzPCA1の酸化反応特性について調べた。なお測定には、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600A)を用いた。
【0223】
CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−BuNClO)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象であるPCzPCA1を1mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(5cm))を、基準電極としてはAg/Ag電極(ビー・エー・エス(株)製、RE5非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。
【0224】
酸化反応特性については次のようにして調べた。
基準電極に対する作用電極の電位を−0.16から0.5Vまで変化させた後、0.5Vから−0.16Vまで変化させる走査を1サイクルとし、100サイクル測定した。なお、CV測定のスキャン速度は0.1V/sに設定した。
【0225】
PCzPCA1の酸化反応特性について調べた結果を図21に示す。図21において、横軸は基準電極に対する作用電極の電位(V)を表し、縦軸は作用電極と補助電極との間に流れた電流値(1×10−6A)を表す。
【0226】
図21から酸化電位は0.27V(vs.Ag/Ag電極)であることが分かった。また、100サイクルもの走査を繰り返しているにもかかわらず、酸化反応においてはCV曲線のピーク位置やピーク強度にほとんど変化が見られない。このことから、本発明のカルバゾール誘導体は酸化反応に対して極めて安定であることが分かった。
【0227】
また、得られた化合物PCzPCA1のガラス転移温度について、示差走査熱量分析装置(DSC:Differential Scanning Calorimetry、パーキンエルマー製、型番:Pyris1 DSC)を用いて調べた。DSCによる測定結果を図23に示す。測定結果から、得られた化合物のガラス転移温度は112℃であることが分かった。このように、得られた化合物は、112℃という高いガラス転移温度を示し、良好な耐熱性を有するものである。また、図23において、得られた化合物の結晶化を表すピークは存在せず、得られた化合物は結晶化し難い物質であることが分かった。
【実施例2】
【0228】
本発明のカルバゾール誘導体の一例として、構造式(38)で示される3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)の合成方法について説明する。
【0229】
【化39】

【0230】
[ステップ1]
3,6−ジヨード−9−フェニルカルバゾールの合成方法について説明する。3,6−ジヨード−9−フェニルカルバゾールの合成スキームを(A−7)に示す。
【0231】
【化40】

【0232】
9−フェニルカルバゾール24.3g(100mmol)を氷酢酸700mLに溶かし、N−ヨードコハク酸イミド44.9g(200mmol)をゆっくり加え、室温で一晩撹拌した。生じた析出物を濾過し、ろ物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、メタノールで洗浄した後、乾燥させた。白色粉末の3,6−ジヨード−9−フェニルカルバゾール47.0g(収率95%)を得た。
【0233】
[ステップ2]
3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)の合成方法について説明する。PCzPCA2の合成スキームを(A−8)に示す。
【0234】
【化41】

【0235】
窒素雰囲気下で、3,6−ジヨード−9−フェニルカルバゾール2.5g(5mmol)、PCA 3.4g(10mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)30mg(0.05mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン49wt%ヘキサン溶液0.2mL(0.5mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド3.0g(30mmol)の混合物に、脱水キシレン30mLを加えた。これを窒素雰囲気下にて90℃、6.5時間加熱撹拌した。反応終了後、この懸濁液に温めたトルエン約500mLを加え、これをフロリジール、アルミナ、セライトを通して濾過した。得られたろ液を濃縮し、この濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:1)にて精製した。これを濃縮し、得られた濃縮液に酢酸エチル−ヘキサンを加えて再結晶を行った。クリーム色粉末の3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール2.5g(収率55%)を得た。NMRのデータを以下に示す。H−NMR(300MHz、DMSO−d):δ=6.74−6.80(m、6H)、7.08−7.64(m、33H)、7.94−8.04(m、6H)。また、H−NMRのチャートを図15に、図15における6.50〜8.50ppmの部分を拡大したものを図16に示す。
【0236】
得られたPCzPCA2の熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。その結果を図20に示す。図20において、左側の縦軸は示差熱分析(DTA)における示差熱(熱電対の起電力(μV))を表し、右側の縦軸は熱重量測定(TG測定)における重量(%;測定開始時の重量を100%として表した重量)を表す。さらに、下側の横軸は、温度(℃)を表す。なお、測定には示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子工業株式会社製,TG/DTA 320型)を用い、窒素雰囲気下、10℃/minの昇温速度で熱物性を評価した。その結果、重量と温度の関係(熱重量測定)から、常圧下で、測定開始時における重量に対し95%以下の重量になる温度は、476℃であった。
【0237】
また、PCzPCA2のトルエン溶液およびPCzPCA2の薄膜の吸収スペクトルを図17に示す。測定には、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製し、それぞれ石英の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図17に示した。図17において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。最大吸収波長はPCzPCA2のトルエン溶液の場合では320nm、PCzPCA2の薄膜の場合では320nmであった。また、PCzPCA2のトルエン溶液およびPCzPCA2の薄膜の発光スペクトルを図18に示す。図18において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。最大発光波長はPCzPCA2のトルエン溶液の場合では442nm(励起波長325nm)、PCzPCA2の薄膜の場合で449nm(励起波長320nm)であった。
【0238】
また、PCzPCA2の薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った。HOMO準位の値は、光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)を用いて測定したイオン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位の値は、図17における薄膜の吸収端をエネルギーギャップとし、HOMO準位の値に加算することにより得た。その結果、HOMO準位とLUMO準位はそれぞれ−5.10eVと−1.75eVであった。
【0239】
また、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定により、PCzPCA2の酸化特性について調べた。なお測定には、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600A)を用いた。
【0240】
CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−BuNClO)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象であるPCzPCA2を1mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(5cm))を、基準電極としてはAg/Ag電極(ビー・エー・エス(株)製、RE5非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。
【0241】
酸化反応特性については次のようにして調べた。基準電極に対する作用電極の電位を−0.01から0.33Vまで変化させた後、0.33Vから−0.01Vまで変化させる走査を1サイクルとし、100サイクル測定した。なお、CV測定のスキャン速度は0.1V/sに設定した。
【0242】
PCzPCA2の酸化反応特性について調べた結果を図22に示す。図22において、横軸は基準電極に対する作用電極の電位(V)を表し、縦軸は作用電極と補助電極との間に流れた電流値(1×10−6A)を表す。
【0243】
図22から酸化電位は0.22V(vs.Ag/Ag電極)であることが分かった。また、100サイクルもの走査を繰り返しているにもかかわらず、酸化反応においてはCV曲線のピーク位置やピーク強度にほとんど変化が見られない。このことから、本発明のカルバゾール誘導体は酸化に対して極めて安定であることが分かった。
【0244】
また、得られた化合物PCzPCA2のガラス転移温度について、示差走査熱量分析装置(DSC:Differential Scanning Calorimetry、パーキンエルマー製、型番:Pyris1 DSC)を用いて調べた。DSCによる測定結果を図24に示す。測定結果から、得られた化合物のガラス転移温度は168℃であることが分かった。このように、得られた化合物は、168℃という高いガラス転移温度を示し、良好な耐熱性を有するものである。また、図24において、得られた化合物の結晶化を表すピークは存在せず、得られた化合物は結晶化し難い物質であることが分かった。
【実施例3】
【0245】
本発明のカルバゾール誘導体の一例として、構造式(17)で示される3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)の合成方法について説明する。
【0246】
【化42】

【0247】
[ステップ1]
まず、3−[N−(1−ナフチル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCN)の合成方法について説明する。PCNの合成スキームを(A−9)に示す。
【0248】
【化43】

【0249】
窒素雰囲気下で、3−ヨード−9−フェニルカルバゾールの3.7g(10mmol)、1−アミノナフタレン1.6g(5mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)60mg(0.1mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン49wt%ヘキサン溶液0.2mL(0.5mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド3g(30mmol)の混合物に、脱水キシレン12mLを加えた。これを窒素雰囲気下にて90℃、7時間加熱撹拌した。反応終了後、この懸濁液に温めたトルエン約200mLを加え、これをフロリジール、アルミナ、セライトを通して濾過した。得られたろ液を濃縮し、この濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:1)にて精製した。これを濃縮し、得られた濃縮液を酢酸エチル−ヘキサンで再結晶を行った。クリーム色粉末の3−[N−(1−ナフチル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールを得た。1.5g、収率79%だった。NMRのデータを以下に示す。H−NMR(300MHz、DMSO−d):δ=7.13−7.71(m、15H)、7.85−7.88(m、1H)、8.03(s、1H)、8.15(d、J=7.8、1H)、8.24(s、1H)、8.36−8.39(m、1H)。また、H−NMRのチャートを図27に、図27における6.50〜8.50ppmの部分を拡大したものを図28に示す。
【0250】
[ステップ2]
次に、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)の合成方法について説明する。PCzPCN1の合成スキームを(A−10)に示す。
【0251】
【化44】

【0252】
窒素雰囲気下で、3−ヨード−9−フェニルカルバゾールの1.8g(5mmol)、PCN 2.5g(6.6mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)30mg(0.05mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン49wt%ヘキサン溶液0.2mL(0.5mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド700mg(7mmol)の混合物に、脱水キシレン7mLを加えた。これを窒素雰囲気下にて90℃、4.5時間加熱撹拌した。反応終了後、この懸濁液に温めたトルエン約500mLを加え、これをフロリジール、アルミナ、セライトを通して濾過した。得られたろ液を濃縮し、この濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:1)にて精製した。これを濃縮し、得られた濃縮液を酢酸エチル−ヘキサンで再結晶を行った。黄色粉末のPCzPCN1 2.1g(収率62%)を得た。NMRのデータを以下に示す。H−NMR(300MHz、DMSO−d):δ=7.04−7.65(m、24H)、7.78(d、J=8.4、1H)、7.82(d、J=2.1、2H)、7.88(d、J=7.8、2H)、7.95(d、J=8.4、1H)、8.10(d、J=9.0、1H)。また、H−NMRのチャートを図29に、図29における6.50〜8.50ppmの部分を拡大したものを図30に示す。
【0253】
得られたPCzPCN1の熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を実施例1および実施例2と同様に行った。その結果を図40に示す。図40において、左側の縦軸は示差熱分析(DTA)における示差熱(熱電対の起電力(μV))を表し、右側の縦軸は熱重量測定(TG測定)における重量(%;測定開始時の重量を100%として表した重量)を表す。さらに、下側の横軸は、温度(℃)を表す。なお、測定には示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子工業株式会社製,TG/DTA 320型)を用い、窒素雰囲気下、10℃/minの昇温速度で熱物性を評価した。その結果、重量と温度の関係(熱重量測定)から、常圧下で、測定開始時における重量に対し95%以下の重量になる温度は、400℃であった。
【0254】
また、PCzPCN1のトルエン溶液およびPCzPCN1の薄膜の吸収スペクトルを図41に示す。測定には、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製し、それぞれ石英の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図41に示した。図41において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。最大吸収波長はPCzPCN1のトルエン溶液の場合では314nm、PCzPCN1の薄膜の場合では320nmであった。また、PCzPCN1のトルエン溶液およびPCzPCN1の薄膜の発光スペクトルを図42に示す。図42において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。最大発光波長はPCzPCN1のトルエン溶液の場合では475nm(励起波長320nm)、PCzPCN1の薄膜の場合で485nm(励起波長320nm)であった。
【0255】
また、PCzPCN1の薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った。HOMO準位の値は、光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)を用いて測定したイオン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位の値は、図41における薄膜の吸収端をエネルギーギャップとし、HOMO準位の値に加算することにより得た。その結果、HOMO準位とLUMO準位はそれぞれ−5.15eVと−2.82eVであった。
【0256】
また、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定により、PCzPCN1の酸化特性について調べた。なお測定には、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600A)を用いた。
【0257】
CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−BuNClO)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象であるPCzPCN1を1mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(5cm))を、基準電極としてはAg/Ag電極(ビー・エー・エス(株)製、RE5非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。
【0258】
酸化反応特性については次のようにして調べた。基準電極に対する作用電極の電位を−0.20から0.50Vまで変化させた後、0.50Vから−0.20Vまで変化させる走査を1サイクルとし、100サイクル測定した。なお、CV測定のスキャン速度は0.1V/sに設定した。
【0259】
PCzPCN1の酸化反応特性について調べた結果を図49に示す。図49において、横軸は基準電極に対する作用電極の電位(V)を表し、縦軸は作用電極と補助電極との間に流れた電流値(1×10−6A)を表す。
図49から酸化電位は0.25V(vs.Ag/Ag電極)であることが分かった。また、100サイクルもの走査を繰り返しているにもかかわらず、酸化反応においてはCV曲線のピーク位置やピーク強度にほとんど変化が見られない。このことから、本発明のカルバゾール誘導体は酸化に対して極めて安定であることが分かった。
【0260】
また、得られた化合物PCzPCN1のガラス転移温度について、示差走査熱量分析装置(DSC:Differential Scanning Calorimetry、パーキンエルマー製、型番:Pyris1 DSC)を用いて調べた。DSCによる測定結果を図50に示す。測定結果から、得られた化合物のガラス転移温度は142℃であることが分かった。このように、得られた化合物は、142℃という高いガラス転移温度を示し、良好な耐熱性を有するものである。また、図50において、得られた化合物の結晶化を表すピークは存在せず、得られた化合物は結晶化し難い物質であることが分かった。
【実施例4】
【0261】
本実施例では、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体と、前記カルバゾール誘導体に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む層の具体例を例示する。前記カルバゾール誘導体としては、実施例1で合成した構造式(12)で示される3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)を用い、前記無機化合物としては酸化モリブデンを用いた。
【0262】
まず、ガラス基板を真空蒸着装置内の基板ホルダーに固定する。そして、PCzPCA1と酸化モリブデン(VI)とをそれぞれ別の抵抗加熱式の蒸発源に入れ、真空に引いた状態で、共蒸着法によりPCzPCA1と酸化モリブデンとを含む層を形成した。この時、PCzPCA1と酸化モリブデンの比率が重量比で4:1となるように共蒸着した。したがって、モル比では、PCzPCA1:酸化モリブデン=1.0:1.0となっている。なお、膜厚は90nmとした。
【0263】
このようにして成膜したPCzPCA1−酸化モリブデン複合膜の吸収スペクトルを測定した結果を、図32中のCに示す。比較のため、PCzPCA1のみの膜の吸収スペクトル(図中A)も合わせて図示した。
【0264】
図32からわかる通り、Cの複合膜は、PCzPCA1単独の膜では見られなかった新たな吸収が見られた(図中、破線で囲った部分であり、1070nm付近にピークがある)。これは、PCzPCA1と酸化モリブデンが電子の授受を行っているためであり、酸化モリブデンがPCzPCA1から電子を受け取り、PCzPCA1にホールが発生しているものと考えられる。
【0265】
したがって、本実施例で成膜したPCzPCA1:酸化モリブデン複合膜は、キャリアが内在的に発生しており、発光素子の駆動電圧を低減できることができる。
【0266】
また、図32に示す通り、PCzPCA1−酸化モリブデン複合膜では、可視光領域(400nm〜700nm)には顕著な吸収ピークは見られなかった。
【実施例5】
【0267】
本実施例では、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体と、前記カルバゾール誘導体に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む層の具体例を例示する。前記カルバゾール誘導体としては、実施例1で合成した構造式(36)で示される3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)を用い、前記無機化合物としては酸化モリブデンを用いた。
【0268】
まず、ガラス基板を真空蒸着装置内の基板ホルダーに固定する。そして、PCzPCA2と酸化モリブデン(VI)とをそれぞれ別の抵抗加熱式の蒸発源に入れ、真空に引いた状態で、共蒸着法によりPCzPCA2と酸化モリブデンとを含む層を形成した。この時、PCzPCA2と酸化モリブデンの比率が重量比で4:1となるように共蒸着した。したがって、モル比では、PCzPCA2:酸化モリブデン=1.0:1.6となっている。なお、膜厚は90nmとした。
【0269】
このようにして成膜したPCzPCA2−酸化モリブデン複合膜の吸収スペクトルを測定した結果を、図33中のCに示す。比較のため、PCzPCA2のみの膜の吸収スペクトル(図中A)も合わせて図示した。
【0270】
図33からわかる通り、Cの複合膜は、PCzPCA2単独の膜では見られなかった新たな吸収が見られた(図中、破線囲った部分であり、960nm付近にピークがある)。これは、PCzPCA2と酸化モリブデンが電子の授受を行っているためであり、酸化モリブデンがPCzPCA2から電子を受け取り、PCzPCA2にホールが発生しているものと考えられる。
【0271】
したがって、本実施例で成膜したPCzPCA2:酸化モリブデン複合膜は、キャリアが内在的に発生しており、発光素子の駆動電圧を低減できることができる。
【0272】
また、図33に示す通り、PCzPCA2−酸化モリブデン複合膜では、可視光領域(400nm〜700nm)には顕著な吸収は見られなかった。
【実施例6】
【0273】
次に、実施例4および実施例5で作製した複合膜の可視光の透過率について図34に示す。
【0274】
図32および図33の縦軸を吸光度から透過率に換算し、同一のグラフ上で比較した図を図34に示す。なお、図34では、横軸の波長を可視光領域(400nm〜700nm)に限定した。図34に示す通り、実施例4で作製したPCzPCA1−酸化モリブデン複合膜、および、実施例5で作製したPCzPCA2−酸化モリブデン複合膜の可視光領域における透過率は90%程度か、あるいはそれ以上を示している。
【0275】
また、実施例4で作製したPCzPCA1−酸化モリブデン複合膜、および、実施例5で作製したPCzPCA2−酸化モリブデン複合膜の青(450nm)〜赤(650nm)における1μm当たりの吸光度を図71に示す。図71からわかるように、本発明の複合材料の1μm当たりの吸光度はいずれも場合も2(μm)―1以下であり、青(450nm)〜赤(650nm)において吸光度が小さい。よって、本発明の複合材料は青(450nm)、緑(520nm)、赤(650nm)にわたり、高い透光性を有しており、フルカラーディスプレイに好適である。
【0276】
以上のことから、本発明の複合材料は、従来の複合材料に比べて可視光の透光性に優れていることがわかった。
【実施例7】
【0277】
本実施例では、本発明の複合材料を用いた発光素子について説明する。
【0278】
まず、基板上に発光素子の第1の電極を形成する。本実施例では、第1の電極は陽極として機能する。材料として透明導電膜である酸化珪素を含有するインジウム錫酸化物を用い、スパッタリング法により電極サイズ(2mm×2mm)の陽極を形成した。
【0279】
次に、第1の電極が形成された基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに第1の電極が形成された面を下方にして固定し、共蒸着法により50nmの膜厚でPCzPCA1と酸化モリブデンとを含む層を形成した。この時、PCzPCA1と酸化モリブデンの比率が重量比で4:2となるように共蒸着した。
【0280】
次に正孔輸送性に優れた材料により正孔輸送層を形成する。正孔輸送層を形成する材料としては、種々の正孔輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、α−NPDを蒸着法により、10nmの膜厚で形成した。
【0281】
次に発光層を形成する。なお、発光層において正孔と電子が再結合し、発光を生じる。本実施例では、ホスト材料となるAlqと、ゲスト材料となるクマリン6とを用い、クマリン6が1重量%の割合でAlq中に含まれるように、共蒸着法により40nmの膜厚で形成した。
【0282】
次に、電子輸送層を形成する。電子輸送層を形成する材料としては、種々の電子輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、Alqを用い、10nmの膜厚で蒸着法により形成した。
【0283】
次に、電子注入層を形成する。電子注入層には、種々の電子注入性材料を用いることができるが、本実施例では、Alqとリチウムとを用い、リチウムが1重量%の割合でAlq中に含まれるように、共蒸着法により30nmの膜厚で形成した。
【0284】
このようにして、本発明の複合材料を含む層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入層を積層して形成される発光物質を含む層を形成した後、第2の電極をスパッタリング法または蒸着法により形成する。本実施例では、第2の電極は陰極として機能する。本実施例では、Alを蒸着法により形成した。
【0285】
以上により、本実施例の発光素子が作製される。本実施例で作製した発光素子の電流―電圧特性を図35に、輝度―電圧特性を図36に、電流効率―輝度特性を図37に示す。
【0286】
図35より、本発明の複合材料を発光素子に用いることにより、電流が流れやすくなったことがわかる。また、図36より、発光素子の駆動電圧が低減されたことがわかる。図37より、発光効率が高くなっていることがわかる。本発明の複合材料は可視光の透過率が高いため、発光の取り出し効率が向上したと考えられる。
【0287】
つまり、本発明の複合材料を発光素子に用いることにより、一定輝度の発光を得るための駆動電圧を低減できることがわかる。具体的には、1000cd/mの輝度で発光させるために必要な電圧は、本実施例で作製した発光素子では5.2Vであり、このときの電流密度は8.4mA/cmであった。つまり、本発明の複合材料を発光素子に用いることにより、低電圧駆動、低電流駆動が可能となったことがわかる。
【実施例8】
【0288】
本実施例では、本発明の複合材料を用いた発光素子について説明する。
【0289】
まず、基板上に発光素子の第1の電極を形成する。本実施例では、第1の電極は陽極として機能する。材料として透明導電膜である酸化珪素を含有するインジウム錫酸化物を用い、スパッタリング法により電極サイズ(2mm×2mm)の陽極を形成した。
【0290】
次に、第1の電極が形成された基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに第1の電極が形成された面を下方にして固定し、共蒸着法により50nmの膜厚でPCzPCA1と酸化モリブデンとを含む層を形成した。この時、PCzPCA1と酸化モリブデンの比率が重量比で4:1となるように共蒸着した。
【0291】
次に正孔輸送性に優れた材料により正孔輸送層を形成する。正孔輸送層を形成する材料としては、種々の正孔輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、α−NPDを蒸着法により、10nmの膜厚で形成した。
【0292】
次に発光層を形成する。なお、発光層において正孔と電子が再結合し、発光を生じる。本実施例では、ホスト材料となるAlqと、ゲスト材料となるクマリン6とを用い、クマリン6が1重量%の割合でAlq中に含まれるように、共蒸着法により40nmの膜厚で形成した。
【0293】
次に、電子輸送層を形成する。電子輸送層を形成する材料としては、種々の電子輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、Alqを用い、10nmの膜厚で蒸着法により形成した。
【0294】
次に、電子注入層を形成する。電子注入層には、種々の電子注入性材料を用いることができるが、本実施例では、Alqとリチウムとを用い、リチウムが1重量%の割合でAlq中に含まれるように、共蒸着法により30nmの膜厚で形成した。
【0295】
このようにして、本発明の複合材料を含む層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入層を積層して形成される発光物質を含む層を形成した後、第2の電極をスパッタリング法または蒸着法により形成する。本実施例では、第2の電極は陰極として機能する。本実施例では、Alを蒸着法により形成した。
【0296】
また、本実施例で作製した発光素子の規格化輝度時間変化を図38に、電圧時間変化を図39に示す。測定方法としては、初期輝度を3000cd/mに設定し、一定電流を流し続けることにより、輝度の時間変化および電圧の時間変化を測定した。
【0297】
図38より、本実施例で作製した発光素子は、経時変化による輝度の低下が少ないことがわかる。また、図39より、本実施例で作製した発光素子は、経時的な電圧の上昇が小さい。よって、本発明の複合材料を用いた発光素子は長寿命で、信頼性が高いことがわかる。
【実施例9】
【0298】
本実施例では、本発明の複合材料を用いた発光素子について説明する。
【0299】
まず、基板上に発光素子の第1の電極を形成する。本実施例では、第1の電極は陽極として機能する。材料として透明導電膜である酸化珪素を含有するインジウム錫酸化物を用い、スパッタリング法により電極サイズ(2mm×2mm)の陽極を形成した。
【0300】
次に、第1の電極が形成された基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに第1の電極が形成された面を下方にして固定し、共蒸着法により50nmの膜厚でPCzPCA1と酸化モリブデンとを含む層を形成した。この時、PCzPCA1と酸化モリブデンの比率が重量比で4:2となるように共蒸着した。
【0301】
次に正孔輸送性に優れた材料により正孔輸送層を形成する。正孔輸送層を形成する材料としては、種々の正孔輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、α−NPDを蒸着法により、10nmの膜厚で形成した。
【0302】
次に発光層を形成する。なお、発光層において正孔と電子が再結合し、発光を生じる。本実施例では、発光層を形成する材料のうちホスト材料となるAlqと、ゲスト材料となるクマリン6とを用い、クマリン6が1重量%の割合でAlq中に含まれるように、共蒸着法により40nmの膜厚で形成した。
【0303】
次に、電子輸送層を形成する。電子輸送層を形成する材料としては、種々の電子輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、Alqを用い、10nmの膜厚で蒸着法により形成した。
【0304】
次に、電子注入層を形成する。電子注入層には、種々の電子注入性材料を用いることができるが、本実施例では、Alqとリチウムとを用い、リチウムが1重量%の割合でAlq中に含まれるように、共蒸着法により10nmの膜厚で形成した。
【0305】
このようにして、本発明の複合材料を含む層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入層を積層して形成される発光物質を含む層を形成した後、第2の電極をスパッタリング法または蒸着法により形成する。本実施例では、第2の電極は陰極として機能する。本実施例では、Alを蒸着法により形成した。本実施例で作製した発光素子を素子1とする。
【実施例10】
【0306】
本実施例では、本発明の複合材料を用いた発光素子について説明する。
【0307】
まず、基板上に発光素子の第1の電極を形成する。本実施例では、第1の電極は陽極として機能する。材料として透明導電膜である酸化珪素を含有するインジウム錫酸化物を用い、スパッタリング法により電極サイズ(2mm×2mm)の陽極を形成した。
【0308】
次に、第1の電極が形成された基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに第1の電極が形成された面を下方にして固定し、共蒸着法により50nmの膜厚でPCzPCN1と酸化モリブデンとを含む層を形成した。この時、PCzPCN1と酸化モリブデンの比率が重量比で4:2となるように共蒸着した。
【0309】
次に正孔輸送性に優れた材料により正孔輸送層を形成する。正孔輸送層を形成する材料としては、種々の正孔輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、α−NPDを蒸着法により、10nmの膜厚で形成した。
【0310】
次に発光層を形成する。なお、発光層において正孔と電子が再結合し、発光を生じる。本実施例では、ホスト材料となるAlqと、ゲスト材料となるクマリン6とを用い、クマリン6が1重量%の割合でAlq中に含まれるように、共蒸着法により40nmの膜厚で形成した。
【0311】
次に、電子輸送層を形成する。電子輸送層を形成する材料としては、種々の電子輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、Alqを用い、10nmの膜厚で蒸着法により形成した。
【0312】
次に、電子注入層を形成する。電子注入層には、種々の電子注入性材料を用いることができるが、本実施例では、Alqとリチウムとを用い、リチウムが1重量%の割合でAlq中に含まれるように、共蒸着法により10nmの膜厚で形成した。
【0313】
このようにして、本発明の複合材料を含む層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入層を積層して形成される発光物質を含む層を形成した後、第2の電極をスパッタリング法または蒸着法により形成する。本実施例では、第2の電極は陰極として機能する。本実施例では、Alを蒸着法により形成した。本実施例で作製した発光素子を素子2とする。
【0314】
実施例9で作製した素子1と、実施例10で作製した素子2の電流―電圧特性を図43に、輝度―電圧特性を図44に、電流効率―輝度特性を図45に示す。
【0315】
図43より、本発明の複合材料を発光素子に用いることにより、電流が流れやすくなったことがわかる。また、図44より、発光素子の駆動電圧が低減されたことがわかる。図45より、発光効率が高くなっていることがわかる。このことは、本発明の複合材料は可視光の透過率が高く、発光の取り出し効率が向上したためと考えられる。また、素子2はキャリアバランスが向上したため、更に発光効率が向上したと考えられる。
【0316】
つまり、本発明の複合材料を発光素子に用いることにより、一定輝度の発光を得るための駆動電圧を低減できることがわかる。具体的には、1000cd/mの輝度で発光させるために必要な電圧は、素子1では5.0Vであり、このときの電流密度は9.9mA/cmであった。また、1000cd/mの輝度で発光させるために必要な電圧は、素子2では5.0Vであり、このときの電流密度は7.5mA/cmであった。つまり、本発明の複合材料を発光素子に用いることにより、低電圧駆動、低電流駆動が可能となったことがわかる。
【実施例11】
【0317】
本実施例では、本発明の複合材料を用いた発光素子について説明する。
【0318】
まず、基板上に発光素子の第1の電極を形成する。本実施例では、第1の電極は陽極として機能する。材料として透明導電膜である酸化珪素を含有するインジウム錫酸化物を用い、スパッタリング法により電極サイズ(2mm×2mm)の陽極を形成した。
【0319】
次に、第1の電極が形成された基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに第1の電極が形成された面を下方にして固定し、共蒸着法により50nmの膜厚でPCzPCA1と酸化モリブデンとを含む層を形成した。この時、PCzPCA1と酸化モリブデンの比率が重量比で4:2となるように共蒸着した。
【0320】
次に正孔輸送性に優れた材料により正孔輸送層を形成する。正孔輸送層を形成する材料としては、種々の正孔輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、α−NPDを蒸着法により、10nmの膜厚で形成した。
【0321】
次に発光層を形成する。なお、発光層において正孔と電子が再結合し、発光を生じる。本実施例では、ホスト材料となるAlqと、ゲスト材料となるクマリン6とを用い、クマリン6が1重量%の割合でAlq中に含まれるように、共蒸着法により40nmの膜厚で形成した。
【0322】
次に、電子輸送層を形成する。電子輸送層を形成する材料としては、種々の電子輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、Alqを用い、10nmの膜厚で蒸着法により形成した。
【0323】
次に、電子注入層を形成する。電子注入層には、種々の電子注入性材料を用いることができるが、本実施例では、Alqとリチウムとを用い、リチウムが1重量%の割合でAlq中に含まれるように、共蒸着法により10nmの膜厚で形成した。
【0324】
次に、共蒸着法により20nmの膜厚でPCzPCA1と酸化モリブデンとを含む層を形成した。この時、PCzPCA1と酸化モリブデンの比率が重量比で4:2となるように共蒸着した。
【0325】
このようにして、本発明の複合材料を含む層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、本発明の複合材料を含む層を積層して形成される発光物質を含む層を形成した後、第2の電極をスパッタリング法または蒸着法により形成する。本実施例では、第2の電極は陰極として機能する。本実施例では、Alを蒸着法により形成した。本実施例で作製した発光素子を素子3とする。
【実施例12】
【0326】
本実施例では、本発明の複合材料を用いた発光素子について説明する。
【0327】
まず、基板上に発光素子の第1の電極を形成する。本実施例では、第1の電極は陽極として機能する。材料として透明導電膜である酸化珪素を含有するインジウム錫酸化物を用い、スパッタリング法により電極サイズ(2mm×2mm)の陽極を形成した。
【0328】
次に、第1の電極が形成された基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに第1の電極が形成された面を下方にして固定し、共蒸着法により50nmの膜厚でPCzPCN1と酸化モリブデンとを含む層を形成した。この時、PCzPCN1と酸化モリブデンの比率が重量比で4:2となるように共蒸着した。
【0329】
次に正孔輸送性に優れた材料により正孔輸送層を形成する。正孔輸送層を形成する材料としては、種々の正孔輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、α−NPDを蒸着法により、10nmの膜厚で形成した。
【0330】
次に発光層を形成する。なお、発光層において正孔と電子が再結合し、発光を生じる。本実施例では、ホスト材料となるAlqと、ゲスト材料となるクマリン6とを用い、クマリン6が1重量%の割合でAlq中に含まれるように、共蒸着法により40nmの膜厚で形成した。
【0331】
次に、電子輸送層を形成する。電子輸送層を形成する材料としては、種々の電子輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、Alqを用い、10nmの膜厚で蒸着法により形成した。
【0332】
次に、電子注入層を形成する。電子注入層には、種々の電子注入性材料を用いることができるが、本実施例では、Alqとリチウムとを用い、リチウムが1重量%の割合でAlq中に含まれるように、共蒸着法により10nmの膜厚で形成した。
【0333】
次に、共蒸着法により20nmの膜厚でPCzPCN1と酸化モリブデンとを含む層を形成した。この時、PCzPCN1と酸化モリブデンの比率が重量比で4:2となるように共蒸着した。
【0334】
このようにして、本発明の複合材料を含む層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、本発明の複合材料を含む層を積層して形成される発光物質を含む層を形成した後、第2の電極をスパッタリング法または蒸着法により形成する。本実施例では、第2の電極は陰極として機能する。本実施例では、Alを蒸着法により形成した。本実施例で作製した発光素子を素子4とする。
【0335】
実施例11で作製した素子3と、実施例12で作製した素子4の電流―電圧特性を図46に、輝度―電圧特性を図47に、電流効率―輝度特性を図48に示す。
【0336】
図46より、本発明の複合材料を発光素子に用いることにより、電流が流れやすくなったことがわかる。また、図47より、発光素子の駆動電圧が低減されたことがわかる。図48より、発光効率が高くなっていることがわかる。本発明の複合材料は可視光の透過率が高いため、発光の取り出し効率が向上したと考えられる。
【0337】
つまり、本発明の複合材料を発光素子に用いることにより、一定輝度の発光を得るための駆動電圧を低減できることがわかる。具体的には、1000cd/mの輝度で発光させるために必要な電圧は、素子3では5.6Vであり、このときの電流密度は9.7mA/cmであった。また、1000cd/mの輝度で発光させるために必要な電圧は、素子4では5.6Vであり、このときの電流密度は8.8mA/cmであった。つまり、本発明の複合材料を発光素子に用いることにより、低電圧駆動、低電流駆動が可能となったことがわかる。
【実施例13】
【0338】
本実施例では、本発明の複合材料を含む層を形成するための蒸着装置について説明する。蒸着装置の一例として、斜視図を図51(A)に示す。以下に蒸着装置の機構を簡略に示す。
【0339】
基板701は、予め蒸着マスク702と位置合わせされており、位置合わせされたまま矢印706の方向に基板が搬送される。基板は搬送されて、防着シールド703aの上方を通過する。防着シールド703aは開口部703bを有しており、蒸着源704からの蒸着材料が開口部703bから昇華するようになっている。開口部703bから蒸着材料の昇華方向(矢印710の方向)を維持するために防着シールド703aは、防着シールド自体には付着しないように加熱されている。
【0340】
蒸着源704は複数のルツボが設置できるようになっており、さらに矢印705の方向に移動することが可能である。蒸着方法は、抵抗加熱法を用いる。また、蒸着源が移動する範囲は基板の幅Waよりも広いことが望ましい。また、防着シールドの幅Wbも基板の幅Waよりも広くすることが蒸着膜の膜厚均一性を向上させる。
【0341】
つまり、図51(A)に示す蒸着装置は、成膜室に蒸着材料の昇華方向を維持するために防着シールドが設けられており、開口部が複数設けられ、それらの開口部から蒸着材料が昇華する機構となっている。防着シールドの下方には、基板の移動方向(搬送方向とも呼ぶ)とは垂直な方向に移動可能な蒸着源を有している。また、防着シールドの幅Wbは、基板の幅Waよりも広くさせて、蒸着膜の膜厚均一性を向上させている。
【0342】
なお、図51(A)の蒸着装置において、開口部703bの形状や数は特に限定されない。
【0343】
また、蒸着源のルツボに蒸着材料を補給するため、成膜室にゲートを介して連結する設置室を設けてもよい。また、一つの成膜室に複数の蒸着源と防着シールドを設けてもよい。複数の蒸着源を設け、設置室を設けた場合の蒸着装置の上面図を図51(B)に示す。蒸着源の移動方向(矢印705の方向)に設置室707を設置し、蒸着材料を補給する際には、蒸着源を設置室まで移動させて補給を行えばよい。蒸着源が成膜室に固定されている場合には、蒸着源に蒸着材料を補給するためには成膜室内を大気圧としなければならず、再度蒸着するためには成膜室内を真空にするのに時間を要してしまう。設置室707を設ければ、成膜室700の真空度を維持したまま、設置室内のみを大気圧と真空とに切り替えればよいため、短時間で蒸着材料の補給が可能となる。
【0344】
また、防着シールド703aと平行に2つ目の防着シールド709を設け、基板の搬送方向と垂直方向に移動する2つ目の蒸着源708を設けてもよい。複数の蒸着源を一つの成膜室に設けることによって、連続的な積層成膜が可能となる。ここでは一つの成膜室に2つの蒸着源を設けた例を示したが、一つの成膜室にそれ以上の数の蒸着源を設けてもよい。
【0345】
つまり、一つの成膜室内に対して、基板の搬送方向とは垂直な方向に2つの防着シールドを設け、それぞれに蒸着源を設けて同じ蒸着材料を連続的に成膜してもよい。このような蒸着装置とすることで成膜速度を上げることができる。なお、2つの防着シールド同士は平行に設けられ、十分な間隔を有している。
【0346】
また、異なる蒸着材料を2つの蒸着源にセットして連続的に積層成膜してもよい。例えば、1つ目の蒸着源の2つのルツボに第1の有機化合物(カルバゾール誘導体)と無機化合物とを別々にセットし、1つ目の蒸着源の上方に基板を通過させることで基板に本発明の複合材料を含む層を蒸着する。次いで、基板を移動させて2つ目の蒸着源のルツボに第2の有機化合物をセットし、2つ目の蒸着源の上方に基板を通過させることで本発明の複合材料を含む層上に発光層を蒸着することができる。
【実施例14】
【0347】
本実施例では、複合材料を含む層において、有機化合物と無機化合物との混合比の異なる複数の発光素子の素子特性について図52〜54に示す。本実施例において作製した発光素子の素子構成は表1に示した通りである。
【0348】
【表1】

【0349】
始めに、本実施例において作製した発光素子の作製方法について説明する。まず、基板上に発光素子の第1の電極を形成する。本実施例では第1の電極とは陽極として機能する。材料として透明導電膜である酸化ケイ素を含有するインジウム錫酸化物を用い、スパッタリング法により成膜し、2mm×2mmの形状とした。
【0350】
次に、第1の電極が形成された基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに第1の電極が形成された面を下方にして固定し、共蒸着法によりPCzPCN1と酸化モリブデンとを含む複合材料を含む層を50nmの膜厚で形成した。
【0351】
続いて、正孔輸送性に優れた材料により正孔輸送層を形成する。正孔輸送層を形成する材料としては種々の正孔輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、α―NPDを用い、10nmの膜厚に形成することによって正孔輸送層を形成した。
【0352】
その後、発光層を形成する。この発光層において正孔と電子が再結合し、発光を得ることができる。本実施例では発光層はホストーゲスト型の発光層とし、ホスト材料としてはAlqをゲスト材料としてはクマリン6を用いた。成膜はAlqとクマリン6が重量比で1:0.01となるように共蒸着法により成膜し、膜厚は40nmとした。
【0353】
発光層を形成したら、続いて電子輸送層を形成する。電子輸送層を形成する材料としては種々の電子輸送性材料を用いることができるが、本実施例ではAlqを用い、膜厚が40nmとなるように蒸着法によって形成した。
【0354】
次に、電子注入層を形成する。電子注入層には種々の電子注入性材料を用いることができるが、本実施例ではフッ化リチウムを1nm成膜することによって形成した。
【0355】
最後に第2の電極を形成して本実施例の発光素子が作製される。本実施例では第2の電極はAlを蒸着法によって成膜することによって形成した。
【0356】
なお、本実施例では複合材料を含む層の有機化合物と無機化合物の混合比が異なる発光素子を6種類(素子5〜素子10)作製し、そのデータを図52〜図54に示す。なお、各々の素子の混合比(PCzPCN1:酸化モリブデン)は重量比で示され、素子5が4:0.5、素子6が4:1、素子7が4:2、素子8が4:3、素子9が4:4、素子10が4:5である。
【0357】
図52には素子5〜素子10の電流効率−輝度特性を示した。これから本実施例で作製した発光素子における複合材料の混合割合範囲においては、複合材料を含む層における無機化合物の量が少ないほど電流効率が良好であることがわかった。
【0358】
図53には素子5〜素子10の電流−電圧特性を示した。これから本実施例で作製した発光素子における複合材料の混合割合範囲においては、複合材料を含む層における無機化合物の量が、多いほど電流−電圧特性が良好であることがわかった。
【0359】
図54には素子5〜素子10の輝度−電圧特性を示した。これより、本実施例で作製した発光素子における複合材料の混合割合範囲においては、いずれも良好な輝度−電圧特性を示すことが分かった。
【0360】
また、図67に本実施例で作製した素子5〜素子10のパワー効率−輝度特性を示す。パワー効率が高いほど消費電力が低いことを意味している。図67から本実施例で作製した発光素子における複合材料の混合割合範囲においては、複合材料を含む層における無機化合物の量が少ないほどパワー効率が良好であることがわかった。
【実施例15】
【0361】
本実施例では、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体と、前記カルバゾール誘導体に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む層の具体例を例示する。前記カルバゾール誘導体としては、PCzPCN1を用い、前記無機化合物としては酸化モリブデンを用いた。
【0362】
まず、ガラス基板を真空蒸着装置内の基板ホルダーに固定する。そして、PCzPCN1と酸化モリブデン(VI)とをそれぞれ別の抵抗加熱式の蒸発源に入れ、減圧下、共蒸着法によりPCzPCN1と酸化モリブデンとを含む層を形成した。この時、PCzPCN1と酸化モリブデンの比率が重量比で4:2となるように共蒸着した。なお、膜厚は100nmとした。
【0363】
このようにして成膜したPCzPCN1−酸化モリブデン複合膜の吸収スペクトルを測定した結果を、図55に示す。
【0364】
図55からわかるように、PCzPCN1−酸化モリブデン複合膜は、PCzPCN1単独の膜では見られなかった新たな吸収が見られた(図中、破線で囲った部分であり、1120nm付近にピークがある)。これは、PCzPCN1と酸化モリブデンが電子の授受を行っているためであり、酸化モリブデンがPCzPCN1から電子を受け取り、PCzPCN1にホールが発生しているものと考えられる。
【0365】
したがって、本実施例で成膜したPCzPCN1−酸化モリブデン複合膜は、キャリアが内在的に発生しており、発光素子の駆動電圧を低減できることができる。
【0366】
また、図55に示す通り、PCzPCN1−酸化モリブデン複合膜では、可視光領域(400nm〜700nm)には顕著な吸収は見られなかった。
【実施例16】
【0367】
次に、実施例15で作製した複合膜の可視光の透過率について図56に示す。
【0368】
図55の縦軸を吸光度から透過率に変換した図を図56に示す。なお、図56では、横軸の波長を可視光領域(400nm〜700nm)に限定した。図56に示す通り、実施例15で作製したPCzPCN1−酸化モリブデン複合膜の可視光領域における透過率は90%程度有している。
【0369】
また、実施例15で作製したPCzPCN1−酸化モリブデン複合膜の青(450nm)〜赤(650nm)における1μm当たりの吸光度を図72に示す。図72からわかるように、本発明の複合材料の1μm当たりの吸光度はいずれも場合も2(μm)―1以下であり、青(450nm)〜赤(650nm)において吸光度が小さい。よって、本発明の複合材料は青(450nm)、緑(520nm)、赤(650nm)にわたり、高い透光性を有しており、フルカラーディスプレイに好適である。
【0370】
以上のことから、本発明の複合材料は、従来の複合材料に比べて可視光の透光性に優れていることがわかった。
【実施例17】
【0371】
本実施例では、本発明の複合材料を含む層の電流―電圧特性を測定した。
【0372】
まず、ガラス基板上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極を形成した。なお、電極サイズは2mm×2mmとした。
【0373】
次に、第1の電極が形成された面が下方となるように、第1の電極が形成された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定した。
【0374】
その後真空装置内を排気し、減圧した後、第1の電極上に、PCzPCN1と酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、本発明の複合材料からなる層を形成した。膜厚は200nmとした。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。PCzPCN1と酸化モリブデン(VI)との比率は、重量比で4:2となるように調節した。
【0375】
本発明の複合材料を含む層上に、抵抗加熱による蒸着法を用いアルミニウム(Al)を成膜することにより、第2の電極を形成することで、本発明の発光素子を作製した。
【0376】
電流―電圧特性の測定は、ITSOを陽極、Alを陰極としたときを順方向とし、ITSOを陰極、Alを陽極とした場合を逆方向として、二端子法により行った。
【0377】
室温(25℃)における電流−電圧特性の結果を図57に示す。本実施例で作製した素子では、順方向、逆方向ともに電流が流れ、その電流−電圧特性は原点を中心に対称となっていることがわかる。ITSOとAlと異なる電極を用いているにもかかわらず対称性を有していることから、電極と本発明の複合材料を含む層との界面はショットキー接触ではないと考えられる。
【実施例18】
【0378】
本実施例では、複合材料を含む層を有する発光素子を作製し、素子の発光特性に及ぼす有機化合物と無機化合物の混合比の影響について検討した。その結果を、図58〜60に示す。本実施例において作製した発光素子の素子構成は表2に示した通りである。
【0379】
【表2】

【0380】
始めに、本実施例において作製した発光素子の作製方法について説明する。まず、基板上に発光素子の第1の電極を形成する。本実施例では第1の電極は陽極として機能する。電極材料として透明導電膜である酸化ケイ素を含有するインジウム錫酸化物を用い、スパッタリング法により成膜した。
【0381】
次に、第1の電極が形成された基板を真空蒸着装置の基板ホルダに第1の電極が形成された面を下方にして固定し、共蒸着法によりPCzPCN1と酸化モリブデンとを含む複合材料を含む層を120nmの膜厚で形成した。
【0382】
続いて、正孔輸送性に優れた材料により正孔輸送層を形成する。正孔輸送層を形成する材料としては種々の正孔輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、α―NPDを用い、10nmの膜厚に形成することによって正孔輸送層を形成した。
【0383】
その後、発光層を形成する。この発光層において正孔と電子が再結合し、発光を得ることができる。本実施の形態では発光層はホストーゲスト型の発光層とし、ホスト材料としてはAlqを、ゲスト材料としてはクマリン6を用いた。成膜はAlqとクマリン6が重量比で1:0.01となるように共蒸着法により成膜し、膜厚は40nmとした。
【0384】
発光層を形成した後、続いて電子輸送層を形成する。電子輸送層を形成する材料としては種々の電子輸送性材料を用いることができるが、本実施例ではAlqを用い、膜厚が30nmとなるように蒸着法によって形成した。
【0385】
次に、電子注入層を形成する。電子注入層には種々の電子注入性材料を用いることができるが、本実施例ではフッ化リチウムを1nm成膜することによって形成した。
【0386】
最後に第2の電極を形成して本実施例の発光素子が作製される。本実施例では第2の電極はAlを蒸着法によって200nm成膜することによって形成した。
【0387】
なお、本実施例では複合材料を含む層の有機化合物と無機化合物の混合比が異なる発光素子を3種類(素子11〜素子13)作製し、そのデータを図58〜図60に示す。なお、各々の素子の混合比(PCzPCN1:酸化モリブデン)は重量比で示され、素子11が4:0.5、素子12が4:1、素子13が4:2である。
【0388】
図58には素子11〜素子13の電流−電圧特性を示した。図58より、本実施例で作製した発光素子における複合材料の混合割合範囲においては、複合材料を含む層における無機化合物の量が多いほど電流−電圧特性が良好であることがわかった。
【0389】
図59には素子11〜素子13の電流効率−輝度特性を示した。図59より、本実施例で作製した発光素子における複合材料の混合割合範囲においては、いずれも良好な電流効率−輝度特性を示すことが分かった。
【0390】
図60には素子11〜素子13の輝度−電圧特性を示した。図60より、本実施例で作製した発光素子における複合材料の混合割合範囲においては、複合材料を含む層における無機化合物の量が、多いほど輝度−電圧特性が良好であることがわかった。
【実施例19】
【0391】
本実施例では、本発明の複合材料を用いた発光素子について説明する。
【0392】
まず、基板上に発光素子の第1の電極を形成する。本実施例では、第1の電極は陽極として機能する。材料として透明導電膜である酸化珪素を含有するインジウム錫酸化物を用い、スパッタリング法により陽極を形成した。
【0393】
次に、第1の電極が形成された基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに第1の電極が形成された面を下方にして固定し、共蒸着法により120nmの膜厚でPCzPCN1と酸化モリブデンとを含む層を形成した。この時、PCzPCN1と酸化モリブデンの比率が重量比で4:2となるように共蒸着した。
【0394】
次に正孔輸送性に優れた材料により正孔輸送層を形成する。正孔輸送層を形成する材料としては、種々の正孔輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、α−NPDを蒸着法により、10nmの膜厚で形成した。
【0395】
次に発光層を形成する。なお、発光層において正孔と電子が再結合し、発光を生じる。本実施例では、ホスト材料となるAlqと、ゲスト材料となるクマリン6とを用い、クマリン6が1重量%の割合でAlq中に含まれるように、共蒸着法により37.5nmの膜厚で形成した。
【0396】
次に、電子輸送層を形成する。電子輸送層を形成する材料としては、種々の電子輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、Alqを用い、37.5nmの膜厚で蒸着法により形成した。
【0397】
次に、電子注入層を形成する。電子注入層には種々の電子注入性材料を用いることができるが、本実施例ではフッ化リチウムを1nm成膜することによって形成した。
【0398】
最後に第2の電極を形成して本実施例の発光素子が作製される。本実施例では第2の電極はAlを蒸着法によって200nm成膜することによって形成した。本実施例で作製した発光素子を素子14とする。
【0399】
本実施例で作製した素子14の電流―電圧特性を図61に、電流効率―輝度特性を図62に、輝度―電圧特性を図63に示す。
【0400】
図61〜図63に示すように、本実施例で作製した素子14は電流―電圧特性、電流効率―輝度特性、輝度―電圧特性、いずれも優れていることがわかる。これは、本発明の複合材料を含む層が可視領域に大きな吸収ピークを持たないことに一部起因する。また、本発明の複合材料を含む層は導電性が高いため、良好な電流―電圧特性を示す。
【0401】
つまり、本発明の複合材料を発光素子に用いることにより、一定輝度の発光を得るための駆動電圧を低減できることがわかる。具体的には、1000cd/mの輝度で発光させるために必要な電圧は、素子14では5.8Vであり、このときの電流密度は8.5mA/cmであった。つまり、本発明の複合材料を発光素子に用いることにより、低電圧駆動、低電流駆動が可能となったことがわかる。
【0402】
また、本実施例で作製した素子14のパワー効率−輝度特性を図64に示す。パワー効率が高いほど消費電力が低いことを意味しており、図64から本発明の発光素子は良好なパワー効率を示すことがわかる。
【0403】
本実施例で作製した素子14の規格化輝度の経時変化を図65に示す。測定は、初期輝度を3000cd/mに設定し、室温において定電流条件下で通電し、輝度の時間変化および電圧の時間変化をモニターすることで行った。
【0404】
図65より、本実施例で作製した発光素子は、経時変化による輝度の低下が少ないことがわかる。よって、本発明の複合材料を用いた発光素子は長寿命で、信頼性が高いことがわかる。
【実施例20】
【0405】
本実施例では、本発明の複合材料を用いた発光素子について説明する。
【0406】
まず、基板上に発光素子の第1の電極を形成する。本実施例では、第1の電極は陽極として機能する。電極材料として透明導電膜である酸化珪素を含有するインジウム錫酸化物を用い、スパッタリング法により陽極を形成した。
【0407】
次に、第1の電極が形成された基板を真空蒸着装置の基板ホルダに第1の電極が形成された面を下方にして固定し、共蒸着法によりPCzPCN1と酸化モリブデンとを含む複合材料を含む層を120nmの膜厚で形成した。
【0408】
次に正孔輸送性に優れた材料により正孔輸送層を形成する。正孔輸送層を形成する材料としては、種々の正孔輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、α−NPDを蒸着法により、10nmの膜厚で形成した。
【0409】
次に発光層を形成する。なお、発光層において正孔と電子が再結合し、発光を生じる。本実施例では、ホスト材料となるAlqと、ゲスト材料となるクマリン6とを用い、クマリン6が1重量%の割合でAlq中に含まれるように、共蒸着法により37.5nmの膜厚で形成した。
【0410】
次に、電子輸送層を形成する。電子輸送層を形成する材料としては、種々の電子輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、Alqを用い、37.5nmの膜厚で蒸着法により形成した。
【0411】
次に、電子注入層を形成する。電子注入層には種々の電子注入性材料を用いることができるが、本実施例ではフッ化リチウムを1nm成膜することによって形成した。
【0412】
このようにして、本発明の複合材料を含む層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入層を積層して形成される発光物質を含む層を形成した後、第2の電極をスパッタリング法または蒸着法により形成する。本実施例では、第2の電極は陰極として機能する。本実施例では、Alを蒸着法により200nmの膜厚で形成した。
【0413】
なお本実施例では、複合材料を含む層の有機化合物と無機化合物の混合比が異なる発光素子を2種類(素子15〜素子16)作製し、そのデータを示す。なお、各々の素子の混合比(PCzPCN1:酸化モリブデン)は重量比で示され、素子15が4:1、素子16が4:2である。
【0414】
本実施例で作製した素子15および素子16の規格化輝度時間変化を図66に示す。測定方法は、初期輝度を3000cd/mに設定し60℃において、定電流条件下で通電し、輝度の時間変化および電圧の時間変化を測定することによって行った。
【0415】
図66より、本実施例で作製した発光素子は、経時変化による輝度の低下が少ないことがわかる。特に、酸化モリブデンの濃度が低い素子15は経時変化による輝度の低下がより少ない。よって、本発明の複合材料を用いた発光素子は長寿命で、信頼性が高いことがわかる。
【実施例21】
【0416】
本実施例では、本発明の複合材料を含む層の電子状態について測定を行った。
【0417】
石英基板状に、共蒸着法により、200nmの膜厚となるよう、PCzPCA1と酸化モリブデンとを含む層を形成した。この時、PCzPCA1と酸化モリブデンの比率が重量比で1:0.5となるように共蒸着した。このPCzPCA1と酸化モリブデンとを含む層のESR(Electron Spin Resonance:電子スピン共鳴)測定を行った。その結果を図68に示す。ESR測定とは、不対電子を有する試料に強い磁場をかけて、不対電子のエネルギー準位がゼーマン分裂を起こし、その準位間のエネルギー差であるマイクロ波の共鳴吸収遷移を利用した測定方法である。このESR測定では、吸収が起きるときの周波数、および磁場の強さを測定することで、不対電子の有無、スピン状態がわかる。さらに、吸収強度から、電子スピンの濃度を求めることもできる。測定は、電子スピン共鳴分析装置、JES−TE200(日本電子製)を使用し、共振周波数9.3GHz、変調周波数100kHz、変調幅0.63mT、増幅度50、時定数0.1sec、マイクロ波入力1mW、掃引時間4min、測定温度は室温、の条件で行った。なお、磁場校正用試料として、酸化マグネシウムに担持されたマンガンを用いた。また、比較例として、PCzPCA1単膜(膜厚200nm)、酸化モリブデン単膜(膜厚200nm)についてもESR測定を行った。PCzPCA1単膜のESR測定結果を図69に、酸化モリブデン単膜のESR測定結果を図70に示す。
【0418】
図68〜図70より、PCzPCA1単膜および酸化モリブデン単膜ではESRシグナルが検出されなかったが、PCzPCA1と酸化モリブデンとを含む層ではESRシグナルが検出された。このことから、PCzPCA1と酸化モリブデンとを含む層は、不対電子を有しており、不対電子を有していないPCzPCA1単膜および酸化モリブデン単膜とは異なる電子状態にあるということがわかった。なお、図68より、PCzPCA1と酸化モリブデンとを含む層のg値は2.0024と求まり、自由電子のg値である2.0023と非常に近い値であることがわかった。一方、線幅は0.67mTと狭く、スピン濃度は3.4×1020スピン/cmであることがわかった。
【実施例22】
【0419】
本実施例では、実施例1に示した合成方法とは異なる合成方法により、構造式(12)で示される3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)の合成する方法について説明する。合成スキームを(D−1)に示す。
【0420】
【化45】

【0421】
3−ヨード−9−フェニルカルバゾール1.60mg(4.33mmol)、ヨウ化銅(I)19.0mg(0.1mmol)、tert−ブトキシカリウム1.10g(10mmol)、トリ−n−ブチルホスフィン(0.2mol/L脱水ヘキサン溶液)1.0mLを200mL三口フラスコへ入れフラスコ内の雰囲気を窒素置換し、キシレン10mL、アニリン0.2mL(2.1mmol,195.6mg)を加えて135℃で6時間還流した。反応溶液を室温にさましてから、フロリジール、セライトを通してトルエン100mLを加えて濾過を行った。得られたろ液を水で2回洗浄後、水層をトルエンで2回抽出し、抽出溶液を有機層と合わせて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を自然濾過し、ろ液を濃縮して得られた化合物を、シリカゲルクロマトグラフィー(トルエン、ヘキサン混合溶液)にかけて目的物を得た。淡黄色固体を140mg、収率21%で得た。
【0422】
本実施例で示す合成方法を用いることにより、一段階の反応で本発明のカルバゾール誘導体を得ることができる。
【実施例23】
【0423】
本実施例では、実施例3に示した合成方法とは異なる合成方法により、構造式(17)で示される3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)の合成する方法について説明する。合成スキームを(D−2)に示す。
【0424】
【化46】

【0425】
3−ヨード−9−フェニルカルバゾール3.69g(0.01mol)、1−ナフチルアミン716mg(5mmol)、ヨウ化銅385mg(2mmol)、炭酸カリウム2.74g(0.02mol)、18−クラウン−6−エーテル771mg(0.02mol)、を200mL三口フラスコへ入れフラスコ内の雰囲気を窒素置換し、DMPU8mLを加えて170℃で24時間攪拌した。反応溶液を室温にさましてから、水で2回洗浄後、水層をトルエンで2回抽出し、この抽出溶液を先に洗浄した有機層と合わせて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を自然濾過し、ろ液を濃縮して得られた化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トルエン=7:3)により精製したところ目的物の淡黄色固体を1.52g、収率48%で得た。
【0426】
本実施例で示す合成方法を用いることにより、一段階の反応で本発明のカルバゾール誘導体を得ることができる。
【実施例24】
【0427】
本発明のカルバゾール誘導体の一例として、構造式(70)で示される3−{N−[9−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾール(略称:BCzBCA1)の合成方法について説明する。
【0428】
【化47】

【0429】
[ステップ1]
まず、9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの合成方法について説明する。9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの合成スキームを(B−1)に示す。
【0430】
【化48】

【0431】
三口フラスコに4−ブロモビフェニルを12g(50mmol)、カルバゾールを8.4g(50mmol)、酢酸パラジウム230mg(1mmol)、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンを1.8g(3.0mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシドを13g(180mmol)を加えフラスコ内の雰囲気を窒素置換した後、脱水キシレンを80mL加え脱気を行った。これを窒素雰囲気下にて120℃、7.5時間加熱撹拌した。反応終了後、この懸濁液に温めたトルエン約600mLを加え、これをフロリジール、アルミナ、セライトを通して2回濾過した。得られたろ液を濃縮し、ヘキサンを加えて再結晶を行った。これを濾過し、この濾物を回収、乾燥し、クリーム色粉末の9−(4−ビフェニリル)カルバゾールを14g、収率87%で得た。
【0432】
[ステップ2]
次に、3−ブロモ−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの合成方法について説明する。3−ブロモ−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの合成スキームを(B−2)に示す。
【0433】
【化49】

【0434】
9−(4−ビフェニリル)カルバゾール3.1g(10mmol)をクロロホルム100mLに溶かし、ここにN−ブロモこはく酸イミド1.8g(10mmol)をゆっくり加えた。これを一晩(約24時間)撹拌した後、水で洗浄した。これに硫酸マグネシウムを加え水分を除き、濾過して濾液を得た。これを濃縮して回収、乾燥させた。ベージュ色粉末の3−ブロモ−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールを3.7g、収率95%で得た。
【0435】
[ステップ3]
次に、9−(4−ビフェニリル)−3−ヨード−カルバゾールの合成方法について説明する。9−(4−ビフェニリル)−3−ヨード−カルバゾールの合成スキームを(B−3)に示す。
【0436】
【化50】

【0437】
9−(4−ビフェニリル)カルバゾール3.2g(10mmol)を氷酢酸200mL、トルエン200mL、酢酸エチル50mLの混合液に溶かし、ここにN−ヨードこはく酸イミド2.3g(10mmol)をゆっくり加えた。これを一晩(約24時間)撹拌した後、水、チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。これに硫酸マグネシウムを加え水分を除き、濾過して濾液を得た。これを濃縮してアセトン、ヘキサンを加え超音波をかけて再結晶を行った。これを濾過し、濾物を回収、乾燥させた。ベージュ色粉末の9−(4−ビフェニリル)−3−ヨード−カルバゾールを4.4g、収率98%で得た。
【0438】
[ステップ4]
次に、9−[(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミン(略称:BCA)の合成方法について説明する。BCAの合成スキームを(B−4)に示す。
【0439】
【化51】

【0440】
三口フラスコに、3−ブロモ−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールを3.7g(9.2mmol)、酢酸パラジウム63mg(0.3mmol)、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンを330mg(0.6mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシドを1.5g(15mmol)を加え、フラスコ内の雰囲気を窒素置換した後、脱水キシレンを20mLを加え脱気した後、アニリンを9.3g(10mmol)加えた。これを窒素雰囲気下にて130℃、4時間加熱撹拌した。反応終了後、この懸濁液に温めたトルエン約300mLを加え、これをフロリジール、アルミナ、セライトを通して濾過した。得られたろ液を濃縮し、ヘキサンを加えて超音波にかけ析出させた。これを濾過し、このろ物を乾燥し、クリーム色粉末の9−[(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミン(BCA)を3.5g、収率93%で得た。
【0441】
[ステップ5]
次に、3−{N−[9−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾール(略称:BCzBCA1)の合成方法について説明する。BCzBCA1の合成スキームを(B−5)に示す。
【0442】
【化52】

【0443】
三口フラスコに、9−(4−ビフェニリル)−3−ヨード−カルバゾールを3.5g(7.9mmol)、9−[(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミンを3.3g(8.0mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)を230mg(0.4mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド1.2g(12mmol)を加えフラスコ内の雰囲気を窒素置換した後、ここに脱水キシレン30mLを加え脱気を行った。ここに、トリ−tert−ブチルホスフィン10wt%ヘキサン溶液1.4mL(1.2mmol)を加え、窒素雰囲気下にて110℃、3時間加熱撹拌した。反応終了後、この懸濁液に温めたトルエン約500mLを加え、これをフロリジール、アルミナ、セライトを通して濾過した。得られたろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:1)にて目的物を得た。これを濃縮し、ヘキサンを加えて超音波をかけて析出させた。クリーム色粉末の3−{N−[9−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾール(略称:BCzBCA1)を1.1g、収率19%で得た。H−NMRのデータを以下に示す。H−NMR(300MHz、DMSO−d):δ=6.86(t、J=7.2、1H)、6.94(d、J=7.8、2H)、7.18−7.24(m、4H)、7.30(dd、J=8.9、1.8、2H)、7.41−7.54(m、12H)、7.70(d、J=8.4、4H)、7.77(d、J=7.2、4H)、7.94(d、J=8.4、4H)、8.06(d、J=2.1、2H)、8.12(d、J=7.8、2H)。また、H−NMRのチャートを図73に示す。また、図73(A)における6.0〜9.0ppmの部分を拡大したものを図73(B)に示す。また、13C−NMRのデータを以下に示す。(75.5MHz、DMSO−d):δ=109.6、110.7、117.4、119.4、119.7、119.8、120.5、120.5、122.4、123.7、125.0、126.2、126.5、126.8、127.5、128.1、128.8、136.0、136.9、139.1、139.1、140.6、140.8、149.3。また、13C−NMRのチャートを図74に示す。また、図74(A)における6.0〜9.0ppmの部分を拡大したものを図74(B)に示す。
【0444】
得られたBCzBCA1の熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を実施例1〜実施例3と同様に行った。測定には示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子工業株式会社製,TG/DTA 320型)を用い、窒素雰囲気下、10℃/minの昇温速度で熱物性を評価した。その結果、重量と温度の関係(熱重量測定)から、常圧下で、測定開始時における重量に対し95%以下の重量になる温度は、425℃であった。
【0445】
また、示差走査熱量測定装置(DSC)(パーキンエルマー社製、PyRis1)を用いて、ガラス転移点(Tg)を測定した。まず、試料を40℃/minで−10℃から400℃まで加熱した後、40℃/minで−10℃まで冷却した。その後10℃/minで400℃まで昇温することにより、図75のDSCチャートを得た。このチャートから、BCzBCA1のガラス転移点(Tg)は137℃であることがわかった。このことから、BCzBCA1は高いガラス転移点を有することがわかった。なお、本測定においては、融点を示す吸熱ピークは観測されなかった。
【0446】
また、BCzBCA1のトルエン溶液の吸収スペクトルを図76に示す。測定には、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れてサンプルを作製し、石英の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図76に示した。図76において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。最大吸収波長はBCzBCA1のトルエン溶液の場合では395nmであった。また、BCzBCA1のトルエン溶液の発光スペクトルを図77に示す。図77において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。最大発光波長はBCzBCA1のトルエン溶液の場合では434nm(励起波長323nm)であった。
【0447】
また、BCzBCA1の薄膜の吸収スペクトルを図78に示す。測定には、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製し、それぞれ石英の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図78に示した。図78において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。最大吸収波長は、BCzBCA1の薄膜の場合では318nmであった。また、BCzBCA1の薄膜の発光スペクトルを図79に示す。図79において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。最大発光波長は、BCzBCA1の薄膜の場合で445nm(励起波長318nm)であった。
【0448】
また、BCzBCA1の薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った。HOMO準位の値は、光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)を用いて測定したイオン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位の値は、図78における薄膜の吸収端をエネルギーギャップとし、HOMO準位の値に加算することにより得た。その結果、HOMO準位とLUMO準位はそれぞれ−5.14eVと−2.04eVであった。
【実施例25】
【0449】
本発明のカルバゾール誘導体の一例として、構造式(71)で示される3,6−ビス[N−(1−ナフチル)―N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−(4−ビフェニリル)カルバゾール(略称:BCzPCN2)の合成方法について説明する。
【0450】
【化53】

【0451】
[ステップ1]
まず、9−(4−ビフェニリル)−3,6−ジブロモ−カルバゾールの合成方法について説明する。9−(4−ビフェニリル)−3,6−ジブロモ−カルバゾールの合成スキームを(C−1)に示す。
【0452】
【化54】

【0453】
9−(4−ビフェニリル)カルバゾール9.6g(30mmol)をトルエン250mLと酢酸エチル250mL、氷酢酸50mLの混合液に溶かし、ここにN−ブロモこはく酸イミド13g(75mmol)をゆっくり加えた。これを5日間(約100時間)撹拌した後、水、チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水酸化ナトリウム水溶液で中和し、再び水で洗浄した。これに硫酸マグネシウムを加え水分を除き、濾過して濾液を得た。これを濃縮して回収、乾燥させた。ベージュ色粉末の9−(4−ビフェニリル)−3,6−ジブロモ−カルバゾールを15g、収率100%で得た。NMRのデータを以下に示す。H−NMR(300MHz、CDCl−d):δ=7.29(d、J=8.7、2H)、7.40(t、J=7.5、1H)、7.47−7.56(m、6H)、7.67(d、J=7.5、2H)、7.81(d、J=8.4、2H)、8.20(d、J=2.1、2H)。また、H−NMRのチャートを図80に示す。また、図80(A)における6.0〜9.0ppmの部分を拡大したものを図80(B)に示す。また、13C−NMRのデータを以下に示す。13C−NMR(75.5MHz、CDCl−d):δ=111.6、113.3、123.3、123.3、124.2、127.2、127.3、127.9、128.8、129.0、129.5、136.1、140.1、141.3。また、13C−NMRのチャートを図81に示す。また、図81(A)における100〜150ppmの部分を拡大したものを図81(B)に示す。
【0454】
[ステップ2]
次に、3,6−ビス[N−(1−ナフチル)―N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−(4−ビフェニリル)カルバゾール(略称BCzPCN2)の合成方法について説明する。BCzPCN2の合成スキームを(C−2)に示す。
【0455】
【化55】

【0456】
三口フラスコに、9−(4−ビフェニリル)−3,6−ジブロモ−カルバゾールを2.4g(5.0mmol)、PCNを3.8g(10mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)を580mg(1.0mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン10wt%ヘキサン溶液6.0mL(3mmol)およびナトリウム−tert−ブトキシド3.0g(30mmol)を加えフラスコ内の雰囲気を窒素置換した後、ここに脱水キシレン10mLを加え脱気を行った。これを窒素雰囲気下にて130℃、12時間加熱撹拌した。反応終了後、この懸濁液に温めたトルエン約550mLを加え、これをフロリジール、アルミナ、セライトを通して濾過した。得られたろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=2:1)にて目的物を得た。これを濃縮し、ヘキサンを加えて超音波をかけて析出させた。レモン色粉末の3,6−ビス[N−(1−ナフチル)―N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−(4−ビフェニリル)カルバゾール(略称:BCzPCN2)を2.7g、収率51%で得た。NMRのデータを以下に示す。H−NMR(300MHz、DMSO−d):δ=6.88−7.67(m、45H)、7.76−7.79(d、J=7.8、4H)、7.84−7.86(d、J=7.8、2H)、7.97−7.99(d、J=7.8、2H)。また、H−NMRのチャートを図82に示す。また、図82(A)における6.0〜9.0ppmの部分を拡大したものを図82(B)に示す。また、13C−NMRのデータを以下に示す。13C−NMR(75.5MHz、DMSO−d):δ=109.3、110.1、110.5、113.3、113.3、114.5、114.6、119.4、120.2、122.0、122.2、123.1、123.2、123.3、124.0、124.7、125.2、125.6、125.9、126.2、126.4、126.5、127.1、127.4、127.9、128.1、128.7、129.7、129.8、134.8、135.8、136.1、136.7、136.8、138.8、139.0、140.4、142.9、143.3、144.8。また、13C−NMRのチャートを図83に示す。また、図83(A)における100〜150ppmの部分を拡大したものを図83(B)に示す。
【0457】
得られたBCzPCN2の熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を実施例1〜実施例4と同様に行った。測定には示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子工業株式会社製,TG/DTA 320型)を用い、窒素雰囲気下、10℃/minの昇温速度で熱物性を評価した。その結果、重量と温度の関係(熱重量測定)から、常圧下で、測定開始時における重量に対し95%以下の重量になる温度は、500℃以上であった。
【0458】
また、示差走査熱量測定装置(DSC)(パーキンエルマー社製、PyRis1)を用いて、ガラス転移点(Tg)を測定した。まず、試料を40℃/minで−10℃から400℃まで加熱した後、40℃/minで−10℃まで冷却した。その後10℃/minで400℃まで昇温することにより、図84のDSCチャートを得た。このチャートから、BCzPCN2のガラス転移点(Tg)は185℃であることがわかった。このことから、BCzPCN2は高いガラス転移点を有することがわかった。なお、本測定においては、融点を示す吸熱ピークは観測されなかった。
【0459】
また、BCzPCN2のトルエン溶液の吸収スペクトルを図85に示す。測定には、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れてサンプルを作製し、石英の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図85に示した。図85において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。最大吸収波長はBCzPCN2トルエン溶液の場合では370nmであった。また、BCzPCN2のトルエン溶液の発光スペクトルを図86に示す。図86において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。最大発光波長はBCzPCN2トルエン溶液の場合では465nm(励起波長320nm)であった。
【実施例26】
【0460】
本実施例では、本発明の複合材料を用いた発光素子について説明する。
【0461】
まず、基板上に発光素子の第1の電極を形成する。本実施例では、第1の電極は陽極として機能する。材料として透明導電膜である酸化珪素を含有するインジウム錫酸化物を用い、スパッタリング法により陽極を形成した。
【0462】
次に、第1の電極が形成された基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに第1の電極が形成された面を下方にして固定し、共蒸着法により50nmの膜厚でBCzBCA1と酸化モリブデンとを含む層を形成した。この時、BCzBCA1と酸化モリブデンの比率が重量比で4:1(=BCzBCA1:酸化モリブデン)となるように共蒸着した。
【0463】
次に正孔輸送性に優れた材料により正孔輸送層を形成する。正孔輸送層を形成する材料としては、種々の正孔輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、α−NPDを蒸着法により、10nmの膜厚で形成した。
【0464】
次に発光層を形成する。なお、発光層において正孔と電子が再結合し、発光を生じる。本実施例では、ホスト材料となるAlqと、ゲスト材料となるクマリン6とを用い、重量比で1:0.01(=Alq:クマリン6)となるように、共蒸着法により40nmの膜厚で形成した。
【0465】
次に、電子輸送層を形成する。本実施例では、Alqを用い、10nmの膜厚で蒸着法により形成した。
【0466】
次に、電子注入層を形成する。本実施例でAlqとリチウムとを、重量比で1:0.01(=Alq:リチウム)となるように調整し、20nm成膜することによって形成した。
【0467】
最後に第2の電極を形成して本実施例の発光素子が作製される。本実施例では第2の電極はAlを蒸着法によって200nm成膜することによって形成した。本実施例で作製した発光素子を素子17とする。
【0468】
本実施例で作製した素子17の電流―電圧特性を図87に、電流効率―輝度特性を図88に、輝度―電圧特性を図89に示す。
【0469】
図87〜図89に示すように、本実施例で作製した素子17は電流―電圧特性、電流効率―輝度特性、輝度―電圧特性、いずれも優れていることがわかる。これは、本発明の複合材料を含む層が可視領域に大きな吸収ピークを持たないことに一部起因する。また、本発明の複合材料を含む層は導電性が高いため、良好な電流―電圧特性を示す。
【0470】
つまり、本発明の複合材料を発光素子に用いることにより、一定輝度の発光を得るための駆動電圧を低減できることがわかる。具体的には、1000cd/mの輝度で発光させるために必要な電圧は、素子17では5.8Vであり、このときの電流密度は9.1mA/cmであった。つまり、本発明の複合材料を発光素子に用いることにより、低電圧駆動、低電流駆動が可能となったことがわかる。
【0471】
また、本実施例で作製した素子17のパワー効率−輝度特性を図90に示す。パワー効率が高いほど消費電力が低いことを意味しており、図90から本発明の発光素子は良好なパワー効率を示すことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0472】
【図1】本発明の発光素子を説明する図。
【図2】本発明の発光素子を説明する図。
【図3】本発明の発光素子を説明する図。
【図4】本発明の発光素子を説明する図。
【図5】本発明の発光素子を説明する図。
【図6】本発明の発光素子を説明する図。
【図7】本発明の発光装置を説明する図。
【図8】本発明の発光装置を説明する図。
【図9】本発明の発光装置を用いた電気機器を説明する図。
【図10】本発明の発光素子を説明する図。
【図11】3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図12】3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図13】3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールの吸収スペクトルを示す図。
【図14】3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールの発光スペクトルを示す図。
【図15】3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図16】3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図17】3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールの吸収スペクトルを示す図。
【図18】3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールの発光スペクトルを示す図。
【図19】3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールの熱重量測定結果を示す図。
【図20】3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールの熱重量測定結果を示す図。
【図21】3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールのCV特性を示す図。
【図22】3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールのCV特性を示す図。
【図23】3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールの示差走査熱量分析した測定結果を示す図。
【図24】3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールの示差走査熱量分析した測定結果を示す図。
【図25】3−(N−フェニルアミノ)−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図26】3−(N−フェニルアミノ)−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図27】3−[N−(1−ナフチル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図28】3−[N−(1−ナフチル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図29】3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図30】3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図31】本発明の発光素子を説明する図。
【図32】本発明の複合材料の吸収スペクトルを示す図。
【図33】本発明の複合材料の吸収スペクトルを示す図。
【図34】本発明の複合材料の透過率を示す図。
【図35】実施例7で作製した発光素子の電流―電圧特性を示す図。
【図36】実施例7で作製した発光素子の輝度―電圧特性を示す図。
【図37】実施例7で作製した発光素子の電流効率―輝度特性を示す図。
【図38】実施例7で作製した発光素子の規格化輝度時間変化を示す図。
【図39】実施例7で作製した発光素子の電圧時間変化を示す図。
【図40】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールの熱重量測定結果を示す図。
【図41】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールの吸収スペクトルを示す図。
【図42】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールの発光スペクトルを示す図。
【図43】実施例9および実施例10で作製した発光素子の電流―電圧特性を示す図。
【図44】実施例9および実施例10で作製した発光素子の輝度―電圧特性を示す図。
【図45】実施例9および実施例10で作製した発光素子の電流効率―輝度特性を示す図。
【図46】実施例11および実施例12で作製した発光素子の電流―電圧特性を示す図。
【図47】実施例11および実施例12で作製した発光素子の輝度―電圧特性を示す図。
【図48】実施例11および実施例12で作製した発光素子の電流効率―輝度特性を示す図。
【図49】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールのCV特性を示す図。
【図50】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールの示差走査熱量分析した測定結果を示す図。
【図51】蒸着装置の斜視図。
【図52】実施例14で作製した素子の電流効率−輝度特性を示す図。
【図53】実施例14で作製した素子の電流−電圧特性を示す図。
【図54】実施例14で作製した素子の輝度−電圧特性を示す図。
【図55】本発明の複合材料の吸収スペクトルを示す図。
【図56】本発明の複合材料の透過率を示す図。
【図57】実施例17で作製した素子の電流−電圧特性を示す図。
【図58】実施例18で作製した素子の電流−電圧特性を示す図。
【図59】実施例18で作製した素子の電流効率−輝度特性を示す図。
【図60】実施例18で作製した素子の輝度−電圧特性を示す図。
【図61】実施例19で作製した素子の電流−電圧特性を示す図。
【図62】実施例19で作製した素子の電流効率−輝度特性を示す図。
【図63】実施例19で作製した素子の輝度−電圧特性を示す図。
【図64】実施例19で作製した素子のパワー効率−輝度特性を示す図。
【図65】実施例19で作製した素子の規格化輝度経時変化を示す図。
【図66】実施例20で作製した素子の規格化輝度経時変化を示す図。
【図67】実施例14で作製した発光素子のパワー効率−輝度特性を示す図。
【図68】PCzPCA1と酸化モリブデンとを含む層のESR測定結果を示す図。
【図69】PCzPCA1単膜のESR測定結果を示す図。
【図70】酸化モリブデン単膜のESR測定結果を示す図。
【図71】本発明の複合材料の1μm当たりの吸光度を示す図。
【図72】本発明の複合材料の1μm当たりの吸光度を示す図。
【図73】3−{N−[9−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図74】3−{N−[9−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの13C−NMRチャートを示す図。
【図75】3−{N−[9−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールのDSCチャートを示す図。
【図76】本発明のカルバゾール誘導体である3−{N−[9−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールのトルエン溶液の吸収スペクトルを示す図。
【図77】本発明のカルバゾール誘導体である3−{N−[9−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールのトルエン溶液の発光スペクトルを示す図。
【図78】本発明のカルバゾール誘導体である3−{N−[9−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの薄膜の吸収スペクトルを示す図。
【図79】本発明のカルバゾール誘導体である3−{N−[9−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの薄膜の発光スペクトルを示す図。
【図80】3,6−ジブロモ−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図81】3,6−ジブロモ−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの13C−NMRチャートを示す図。
【図82】3,6−ビス[N−(1−ナフチル)―N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図83】3,6−ビス[N−(1−ナフチル)―N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの13C−NMRチャートを示す図。
【図84】3,6−ビス[N−(1−ナフチル)―N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールのDSCチャートを示す図。
【図85】3,6−ビス[N−(1−ナフチル)―N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの吸収スペクトルを示す図。
【図86】3,6−ビス[N−(1−ナフチル)―N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの発光スペクトルを示す図。
【図87】実施例26で作製した素子の電流−電圧特性を示す図。
【図88】実施例26で作製した素子の電流効率−輝度特性を示す図。
【図89】実施例26で作製した素子の輝度−電圧特性を示す図。
【図90】実施例26で作製した素子のパワー効率−輝度特性を示す図。
【符号の説明】
【0473】
101 基板
102 第1の電極
103 第1の層
104 第2の層
105 第3の層
106 第4の層
107 第2の電極
200 基板
201 第1の電極
202 第2の電極
211 第1の層
212 第2の層
213 第3の層
214 第4の層
302 第1の電極
303 第1の層
304 第2の層
305 第3の層
306 第4の層
307 第2の電極
400 基板
401 第1の電極
402 第2の電極
411 第1の層
412 第2の層
413 第3の層
501 第1の電極
502 第2の電極
511 第1の発光ユニット
512 第2の発光ユニット
513 電荷発生層
601 ソース側駆動回路
602 画素部
603 ゲート側駆動回路
604 封止基板
605 シール材
607 空間
608 配線
609 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
610 素子基板
611 スイッチング用TFT
612 電流制御用TFT
613 第1の電極
614 絶縁物
616 発光物質を含む層
617 第2の電極
618 発光素子
623 nチャネル型TFT
624 pチャネル型TFT
700 成膜室
701 基板
702 蒸着マスク
703a 防着シールド
703b 開口部
704 蒸着源
705 矢印
706 矢印
707 設置室
708 蒸着源
709 防着シールド
710 矢印
951 基板
952 電極
953 絶縁層
954 隔壁層
955 発光物質を含む層
956 電極
1101 第1の電極
1102 第2の電極
1111 第1の層
1112 第2の層
1113 第3の層
1114 第4の層
9101 筐体
9102 支持台
9103 表示部
9104 スピーカー部
9105 ビデオ入力端子
9201 本体
9202 筐体
9203 表示部
9204 キーボード
9205 外部接続ポート
9206 ポインティングマウス
9301 本体
9302 表示部
9303 アーム部
9401 本体
9402 筐体
9403 表示部
9404 音声入力部
9405 音声出力部
9406 操作キー
9407 外部接続ポート
9408 アンテナ
9501 本体
9502 表示部
9503 筐体
9504 外部接続ポート
9505 リモコン受信部
9506 受像部
9507 バッテリー
9508 音声入力部
9509 操作キー
9510 接眼部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体と、前記一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む複合材料。
【化1】

(式中、R11およびR13は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、Ar11は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基のいずれかを表し、R12は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表し、R14は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、一般式(2)で示される置換基のいずれかを表し、一般式(2)で示される置換基において、R15は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、Ar12は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基のいずれかを表し、R16は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表す。)
【化2】

【請求項2】
請求項1において、R11およびR13のどちらか一方は、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることを特徴とする複合材料。
【請求項3】
請求項1において、R11およびR13のどちらか一方は、フェニル基であることを特徴とする複合材料。
【請求項4】
請求項1において、R11およびR13は、同一であり、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることを特徴とする複合材料。
【請求項5】
請求項1において、R11およびR13は、同一であり、フェニル基であることを特徴とする複合材料。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、R12は、水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることを特徴とする複合材料。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、R14は水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることを特徴とする複合材料。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、R14は一般式(2)で示される置換基であることを特徴とする複合材料。
【請求項9】
請求項8において、R15は、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることを特徴とする複合材料。
【請求項10】
請求項8または請求項9において、R16は水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることを特徴とする複合材料。
【請求項11】
一般式(3)で示されるカルバゾール誘導体と、前記一般式(3)で示されるカルバゾール誘導体に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む複合材料。
【化3】

(式中、R21は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、R22は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表し、R23は、一般式(4)で示される置換基を表し、一般式(4)で示される置換基において、R24は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、Ar21は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基のいずれかを表し、R25は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表す。)
【化4】

【請求項12】
請求項11において、R22は、水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることを特徴とする複合材料。
【請求項13】
一般式(5)で示されるカルバゾール誘導体と、前記一般式(5)で示されるカルバゾール誘導体に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む複合材料。
【化5】

(式中、R21は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、R22およびR23は、一般式(6)で示される置換基を表し、一般式(6)で示される置換基において、R24は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、Ar21は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基のいずれかを表し、R25は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表す。)
【化6】

【請求項14】
請求項13において、R25は、水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることを特徴とする複合材料。
【請求項15】
請求項11乃至請求項14のいずれか一項において、R24は、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることを特徴とする複合材料。
【請求項16】
請求項11乃至請求項14のいずれか一項において、R24は、フェニル基であることを特徴とする複合材料。
【請求項17】
請求項11乃至請求項16のいずれか一項において、R21は、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることを特徴とする複合材料。
【請求項18】
請求項11乃至請求項16のいずれか一項において、R21は、フェニル基であることを特徴とする複合材料。
【請求項19】
一般式(7)で示されるカルバゾール誘導体と、前記一般式(7)で示されるカルバゾール誘導体に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む複合材料。
【化7】

(式中、Ar31は、フェニル基またはナフチル基を表す。)
【請求項20】
一般式(8)で示されるカルバゾール誘導体と、前記一般式(8)で示されるカルバゾール誘導体に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む複合材料。
【化8】

(式中、Ar41およびAr42は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、フェニル基またはナフチル基を表す。)
【請求項21】
請求項1乃至請求項20のいずれか一項において、前記無機化合物は、遷移金属の酸化物であることを特徴とする複合材料。
【請求項22】
請求項1乃至請求項20のいずれか一項において、前記無機化合物は、チタン酸化物、バナジウム酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物のいずれか一種もしくは複数種であることを特徴とする複合材料。
【請求項23】
一対の電極間に発光物質を含む層を有し、前記発光物質を含む層は、請求項1乃至請求項22のいずれか一項に記載の複合材料を含む層を有することを特徴とする発光素子。
【請求項24】
請求項23において、前記複合材料を含む層は、前記一対の電極のうち陽極として機能する電極と接するように設けられていることを特徴とする発光素子。
【請求項25】
請求項23において、前記複合材料を含む層は、前記一対の電極のうち陰極として機能する電極と接するように設けられていることを特徴とする発光素子。
【請求項26】
請求項23において、前記複合材料を含む層は、前記一対の電極それぞれと接するように一層ずつ設けられていることを特徴とする発光素子。
【請求項27】
請求項23乃至請求項26のいずれか一項に記載の発光素子と、前記発光素子の発光を制御する制御手段とを有する発光装置。
【請求項28】
表示部を有し、
前記表示部は、請求項23乃至請求項26のいずれか一項に記載の発光素子と前記発光素子の発光を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図77】
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【図78】
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【図79】
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【図80】
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【図81】
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【図82】
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【図83】
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【図84】
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【図85】
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【図86】
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【図87】
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【図88】
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【図89】
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【図90】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図41】
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【図42】
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【図66】
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【図71】
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【公開番号】特開2007−36188(P2007−36188A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79352(P2006−79352)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】