説明

複合材料用繊維処理剤及びガラスクロス

【課題】1液でガラスクロスのホツレ防止性に優れ、発泡エポキシ樹脂など、他の部材との良好な接着性を与える複合材料用繊維処理剤を提供する。
【解決手段】(A)カルボキシル基、アミド基、エポキシ基、水酸基、アルコキシル基及びニトリル基を含まないエチレン性不飽和基含有単量体及び(B)カルボキシル基、アミド基、エポキシ基、水酸基、アルコキシル基、ニトリル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を持つエチレン性不飽和基含有単量体を含む混合物100質量部を、水溶性高分子5〜30質量部の存在下で重合させることによって得られる複合材料用繊維処理剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料用繊維にホツレ防止性、剛性、他の部材との良好な接着性を与える複合材料用繊維処理剤及び該繊維処理剤で処理したガラスクロスに関する。
【背景技術】
【0002】
発泡樹脂のような多孔性材料、ゴムあるいはエポキシ系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂などのプラスチックが、建築用材料、土木工事用材料、機械用材料、自動車用材料、その他芯材などとして広く用いられており、強度を大ならしめるためにガラス繊維あるいはガラスクロスが補強材として混入され、使用されていることは知られている。一般的に、有機−無機ポリマーのハイブリッドポリマーを複合材料と称し、有機ポリマーにシリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ、希土類酸化物等の無機物が混入している。
【0003】
例えば、自動車関連では、アルミニウム合金、SUS、鉄などの車体材料に、前述した発泡樹脂とガラスクロスが、強度アップ、振動防止、そして軽量化を同時に付与できる手段として用いられている。このようなガラス繊維やガラスクロスは、一般に経糸間に緯糸を挿入後切断する、いわゆる断片織機がその高効率性から多く用いられる。織物の両端部(耳部)は緯糸のみが房状に連続して並んでおり(房状部)、この房状部は本来不用であるため切断するが、ホツレ防止を施さないで切断すると、ワニス含浸などの処理を行うと、織物の経糸が容易にホツレてしまい、様々な不具合を起こしてしまう。
【0004】
この現象を解決するため種々の方法が提案されている。例えば、レーザー光線を使って房状部を溶断し、それと同時に切断端部を溶着する方法や、エチレン−酢酸ビニル共重合体あるいはダイマー酸系ポリアミドを有機溶剤に溶解してガラス織物の房状部や耳部に塗布、乾燥した後、切断する方法などがある。しかしながら、レーザー光線による方法では接着強度が低い。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体あるいはダイマー酸系ポリアミドの溶液を塗布、乾燥する方法では、前記樹脂がワニスに用いる有機溶剤に膨潤したり、若干溶解したりするので、ワニスに樹脂類が溶出してしまうことがあり、乾燥後にガラス織物を巻き取った際、ブロッキングの原因となることがある。
【0005】
また、ジカルボン酸成分の40〜90モル%がテレフタル酸であり、10〜40モル%がイソフタル酸及び炭素数4〜20の飽和脂肪族ジカルボン酸の中から選ばれた少なくとも1種であるジカルボン酸成分と炭素数2〜10のアルキレングルコールから選ばれた少なくとも1種のグリコール成分から構成される共重合ポリエステルを主剤とするものも提案されている(特許文献1:特公平2−023626号公報)。しかしながら、このポリエステル樹脂からなる処理剤は、耐溶剤性には比較的優れているものの、ジメチルホルムアミドのような極性溶媒に対しては多少膨潤し、また、ガラス織物に対する接着性やホツレ防止の点で満足できるものではない。
【0006】
更に、ガラスクロスをフェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂により目止め処理すること、これを用いた薄膜補強用の接着シートに関する提案もなされている(特許文献2:特開平2−080479号公報)。しかしながら、フェノール樹脂やメラミン樹脂はガラスクロスに処理後、硬化までに時間を要し、生産性の面で必ずしも満足できるとはいい難い。
また更に、樹脂エマルジョンを2種使用して接着性改善を試みているものもある(特許文献3:特開2005−060862号公報)。しかしながら、2液となることで生産性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平2−023626号公報
【特許文献2】特開平2−080479号公報
【特許文献3】特開2005−060862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、1液でガラスクロスのホツレ防止性に優れ、発泡エポキシ樹脂など、他の部材との良好な接着性を与える複合材料用繊維処理剤及び該繊維処理剤で処理したガラスクロスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、(A)カルボキシル基、アミド基、エポキシ基、水酸基、アルコキシル基及びニトリル基を含まないエチレン性不飽和基含有単量体及び(B)カルボキシル基、アミド基、エポキシ基、水酸基、アルコキシル基、ニトリル基から選ばれる少なくとも1種のエチレン性不飽和基含有単量体を含む混合物を、水溶性高分子の存在下で重合させることによって得られる複合材料用繊維処理剤が、ホツレ防止性に優れ、発泡エポキシ樹脂などの他の部材との良好な接着性を与えることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、下記に示す複合材料用繊維処理剤及び該繊維処理剤で処理したガラスクロスを提供する。
〔請求項1〕
(A)カルボキシル基、アミド基、エポキシ基、水酸基、アルコキシル基及びニトリル基を含まないエチレン性不飽和基含有単量体及び(B)カルボキシル基、アミド基、エポキシ基、水酸基、アルコキシル基、ニトリル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を持つエチレン性不飽和基含有単量体を含む混合物100質量部を、水溶性高分子5〜30質量部の存在下で重合させることによって得られる複合材料用繊維処理剤。
〔請求項2〕
(A)エチレン性不飽和基含有単量体100質量部に対して、(B)カルボキシル基、アミド基、エポキシ基、水酸基、アルコキシル基、ニトリル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を持つエチレン性不飽和基含有単量体を0.3〜10質量部含んでなる混合物を用いる請求項1記載の複合材料用繊維処理剤。
〔請求項3〕
(A)エチレン性不飽和基含有単量体が、(メタ)アクリル酸エステル、塩化ビニル、酢酸ビニルから選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載の複合材料用繊維処理剤。
〔請求項4〕
請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合材料用繊維処理剤で処理したガラスクロス。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、良好なガラスクロスのホツレ防止性を発揮するうえ、発泡エポキシ樹脂など、他の部材との良好な接着性を与えるものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の複合材料用繊維処理剤は、(A)カルボキシル基、アミド基、エポキシ基、水酸基、アルコキシル基及びニトリル基を含まない、つまり下記(B)成分以外のエチレン性不飽和基含有単量体及び(B)カルボキシル基、アミド基、エポキシ基、水酸基、アルコキシル基、ニトリル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を持つエチレン性不飽和基含有単量体を含む混合物を、水溶性高分子の存在下で重合させることによって得られる複合材料用繊維処理剤である。
【0013】
なお、本発明において、アルコキシル基−ORは、−CR’OR(但し、Rはアルキル基、R’は水素原子又は1価炭化水素基を示す)の形態で存在するものを指称し、エステル基−COOR(Rはアルキル基を示す)の形態にあるORをアルコキシル基と指称しないものと定義する。つまり、本発明において、(A)成分はエステル基−COORを有するエチレン性不飽和基含有単量体を包含する。
【0014】
ここで、(A)成分のエチレン性不飽和基含有単量体としては、酢酸ビニル、エチレン、プロピレンのほか、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有単量体類、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル単量体類、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体類、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン系単量体類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル等のエチレン性不飽和モノカルボン酸エステル類、イタコン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジブチル等のエチレン性不飽和ポリカルボン酸エステル類などが挙げられるが、酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル類が好ましく、エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル類の中では、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0015】
また、(B)成分として、カルボキシル基、アミド基、エポキシ基、水酸基、アルコキシル基、ニトリル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を持つエチレン性不飽和基含有単量体が使用される。
具体的に、カルボキシル基を含有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられ、これらを単独又は2種以上組み合わせて用いることができるが、重合安定性からアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
アミド基含有単量体としては、アクリルアミドが挙げられ、これを単独又は他官能基と併用して用いることができる。
【0016】
エポキシ基含有単量体としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸のモノ及びジグリシジルエステル、2,3−ジカルボン酸のモノ及びジグリシジルエステル、p−スチレンカルボン酸のクリシジルジエステルなどが挙げられ、これらを単独又は2種以上組み合わせて用いることができるが、コスト、性能のバランスからグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートが好ましい。
【0017】
水酸基含有単量体としては、2−ヒドロキシアクリレート、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシエチルなどが挙げられ、これらを単独又は2種以上組み合わせて用いることができるが、反応性の面から2−ヒドロキシアクリレートが好ましい。
アルコキシル基含有単量体類としては、メトキシエチルアクリレートが、ニトリル基含有単量体類としては、アクリロニトリルが挙げられる。
【0018】
(B)カルボキシル基、アミド基、エポキシ基、水酸基、アルコキシル基、ニトリル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を持つエチレン性不飽和基含有単量体の配合量は、(A)エチレン性不飽和基含有単量体100質量部に対して0.3〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部が更に好ましい。0.3質量部未満だと、ガラスクロスと他の部材との十分な接着性が得られないといった不具合を生じることがあり、10質量部を超えると処理剤作製時、ゲル化、凝集するといった不具合を生じることがある。
【0019】
本発明の複合材料用繊維処理剤を得るためには、上記(A)、(B)成分を水溶性高分子の存在下で重合するものであり、乳化重合で合成することが好ましい。一般の界面活性剤のみで重合した場合、本発明のような良好なホツレ防止効果を発揮することはできない。重合に用いられる水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられ、1種又は2種以上が使用される。中でも、コスト、乳化重合時の安定性などの面からポリビニルアルコール(以下、PVAと表記する。)が好ましい。
【0020】
なお、PVAの重合度は300〜3,500が好ましく、500〜1,800が更に好ましい。300未満であると乳化安定性が低下するといった不都合が生じる場合があり、3,500を超えると乳化重合時にゲル化、凝集するといった不都合が生じる場合がある。
【0021】
水溶性高分子の使用量は、上記(A)エチレン性不飽和基含有単量体と(B)官能基を持つエチレン性不飽和基含有単量体との総量100質量部に対して5〜30質量部が好ましく、10〜20質量部が更に好ましい。5質量部未満の場合は、乳化重合時の乳化安定性が低下し、且つ十分なガラスクロスのホツレ防止効果が得られないといった不具合を起こしてしまい、30質量部を超える場合は、十分なガラスクロスのホツレ防止効果が得られないといった不具合を起こしてしまう。
【0022】
上記乳化重合には、公知のあらゆる乳化重合法を採用することができる。単量体及びその他の重合助剤(例えば、アルキル硫酸エステル塩等の乳化剤、過硫酸アンモニウム等の重合開始剤、メルカプタン類等の連鎖移動剤、炭酸ソーダ等のpH調整剤、各種消泡剤他)を初期に一括添加してもよいし、連続的に添加してもよいし、その一部を重合中に連続又は分割して添加してもよい。
【0023】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、ノニオン系界面活性剤やアニオン系乳化剤を上記水溶性高分子と併用することもできる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、又はアセチレンアルコール、アセチレングリコール及びそれらのエチレンオキサイド付加物等の界面活性剤である。
【0024】
上記乳化重合に用いられる重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、2,2’−ジアミジノ−2,2’−アゾプロパンジ塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物、酒石酸などが挙げられる。また、公知のレドックス系開始剤、例えば過硫酸カリウムと亜硫酸水素ナトリウムなども挙げられる。重合開始剤の使用量は、上記単量体((A)、(B)成分の総量)に対して、通常は0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜2質量%である。
【0025】
上記乳化重合を行う重合温度は、通常は10〜90℃、望ましくは50〜85℃である。重合時間は3〜20時間である。この重合は、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気中で行うのが望ましい。
【0026】
また、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョンや酢酸ビニル樹脂エマルジョン、アクリル酸エステル樹脂エマルジョンなどをシードとして、重合を行っても構わない。
【0027】
上記重合により得られた複合材料用繊維処理剤の蒸発残分は、10〜50質量%が好ましく、20〜40質量%が更に好ましい。10質量%未満であるとエマルジョン粒子が沈降する場合があり、50質量%を超えるとエマルジョンがゲル化する場合がある。
【0028】
なお、重合終了後に可塑剤、無機もしくは有機充填剤、増粘剤、有機溶剤などを本発明の複合材料用繊維処理剤の性能を損なわない範囲で添加することもできる。
【0029】
本発明で得られた複合材料用繊維処理剤をガラスクロスに処理する際の方法は特に限定されないが、含浸処理が好ましい。この場合の処理量は、処理後のガラスクロス質量の1〜20質量%が好ましく、3〜15質量%が更に好ましい。その後、好ましくは130〜200℃の乾燥温度で乾燥して製品を得ることができる。
【実施例】
【0030】
以下、製造例と実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、部及び%はそれぞれ質量部、質量%を示す。
【0031】
[製造実施例1]
撹拌機、還流冷却器、温度計を取り付けた3Lガラス製容器を用意し、ガラス製容器にイオン交換水173部、PVA JF−05(ポリビニルアルコール、日本酢ビポバール社製、ケン化度98.5、重合度500)を15部入れ、窒素で空気置換を十分行った後、撹拌を開始した。
ガラス製容器の内温を80℃まで上昇させ、酢酸ビニルモノマー100部、アクリル酸1部、グリシジルメタクリレート2.5部及び10%過酸化水素水1部と10%酒石酸水溶液1.5部を、それぞれ4時間連続追加した。その後、80℃で1時間反応を継続させ(5時間反応)た後、30℃まで冷却した。
蒸発残分35.0%の酢酸ビニル系重合体エマルジョン(複合材料用繊維処理剤)が得られた。
【0032】
[製造実施例2〜11、製造比較例1〜5]
表1に示すような組成で、実施例1と同様の乳化重合を実施して、複合材料用繊維処理剤を得た。
【0033】
[加工方法]
<ガラス繊維の処理>
[実施例1〜10、比較例1〜5]
ガラスクロス(32本/inch(緯糸、経糸が共に32本/inch施されている)、熱処理品)に、製造実施例、製造比較例で得た繊維処理剤100部、純水125部、KBM−403(信越化学工業(株)製シランカップリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)0.75部の混合液を含浸処理し、170℃にて2分間乾燥させた。乾燥質量は、ガラスクロス処理後質量の6%であった。
【0034】
[実施例11]
KBM−403を添加しなかった以外は、実施例1〜10と同様の処理を行った。乾燥質量は、ガラスクロス処理後質量の6%であった。
【0035】
<剥離試験用サンプルの加工>
処理後のガラスクロスを10cm×2.5cmに切断し、5cm×2.5cmの大きさに調製したエポキシ樹脂板の片面に貼り付け、反対の面にSUS(ステンレススチール)板を貼り、60℃のホットプレートにて1分間加温後、常温で50kgf/cmの荷重で1分間圧着した。その後、180℃で30分間熱処理し、エポキシ樹脂を発泡させ試験片とした。
【0036】
[評価方法]
<蒸発残分>
試料(複合材料用繊維処理剤)約1gをアルミニウム箔製の皿に正確に量り取り、約105℃に保った乾燥器に入れ、1時間加熱後、乾燥器から取り出してデシケーターの中にて放冷し、試料の乾燥後の重さを量り、次式により蒸発残分を算出した。
【数1】

R:蒸発残分(%)
W:乾燥前の試料を入れたアルミニウム箔皿の質量(g)
L:アルミニウム箔皿の質量(g)
T:乾燥後の試料を入れたアルミニウム箔皿の質量(g)
アルミニウム箔皿の寸法:70φ×12h(mm)
【0037】
<ホツレ防止性>
加工後のガラスクロスの端を割いて糸のホツレの程度を確認した。
○ 糸がすぐ切れる(糸がホツレず、ちぎれる)
× 糸が切れずガラスクロスから抜ける
【0038】
<剥離試験(接着性)>
剥離試験用サンプルのエポキシ樹脂板とガラスクロスの界面の接着力を測定した。
T型(180°)剥離、引張スピード:100mm/min、n=3
試験環境:室温23℃、湿度50%
接着力は、一般的に1,000g/inch以上が必要とされるが、1,300g/inch以上であることが更に好ましい。
【0039】
【表1】

JF−05:PVA(ポリビニルアルコール)、日本酢ビポバール社製、ケン化度
98.5、重合度500
JP−05:PVA(ポリビニルアルコール)、日本酢ビポバール社製、ケン化度
88.0、重合度500
エマルゲン1135S−70:花王製、ノニオン乳化剤
ハイテノールNF−13:第一工業製薬製、アニオン・ノニオン乳化剤
【0040】
【表2】

【0041】
表1,2の結果から明らかなように、本発明のエチレン性不飽和基含有単量体と官能基を持つエチレン性不飽和基含有単量体を、水溶性高分子存在下で重合した実施例は、いずれもホツレを防止でき、発泡樹脂との接着性にも優れるものであった。
これに対して、官能基を持つエチレン性不飽和基含有単量体を使用せず、エチレン性不飽和基含有単量体のみを水溶性高分子の存在下で重合した比較例1,5は、ホツレ防止性に優れるものの、発泡樹脂との接着性に劣るものであった。
また、エチレン性不飽和基含有単量体と官能基を持つエチレン性不飽和基含有単量体を一般乳化剤存在下で重合した比較例2は、発泡樹脂との接着性は良好であるものの、ホツレ防止性に劣るものであった。
更に、エチレン性不飽和基含有単量体及び官能基を持つエチレン性不飽和基含有単量体に対して、水溶性高分子量が本発明の範囲より少ない比較例3は、ホツレ防止性に劣るものであり、水溶性高分子量が本発明の範囲より多い比較例4はホツレ防止性、発泡樹脂との接着性のいずれにも劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基、アミド基、エポキシ基、水酸基、アルコキシル基及びニトリル基を含まないエチレン性不飽和基含有単量体及び(B)カルボキシル基、アミド基、エポキシ基、水酸基、アルコキシル基、ニトリル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を持つエチレン性不飽和基含有単量体を含む混合物100質量部を、水溶性高分子5〜30質量部の存在下で重合させることによって得られる複合材料用繊維処理剤。
【請求項2】
(A)エチレン性不飽和基含有単量体100質量部に対して、(B)カルボキシル基、アミド基、エポキシ基、水酸基、アルコキシル基、ニトリル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を持つエチレン性不飽和基含有単量体を0.3〜10質量部含んでなる混合物を用いる請求項1記載の複合材料用繊維処理剤。
【請求項3】
(A)エチレン性不飽和基含有単量体が、(メタ)アクリル酸エステル、塩化ビニル、酢酸ビニルから選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載の複合材料用繊維処理剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合材料用繊維処理剤で処理したガラスクロス。

【公開番号】特開2010−280994(P2010−280994A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132720(P2009−132720)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000226666)日信化学工業株式会社 (40)
【Fターム(参考)】