説明

複合材料部品を機械加工する工具

【課題】本発明は、複合材料部品を機械加工するための工具と、このような工具を備えた工作機械に関する。
【解決手段】工具はほぼ円筒形の本体を有する。本発明に従って、本体は主軸線(2)を有し、直径がDの研磨部分(1)と、直径がDの研削部分(3)とを備え、この場合D<Dであり、研削部分(3)が前記主軸線に対してセンタリングされている。さらに、研削部分(3)がその端部(4)に、複合材料部品への工具の貫入を可能にする少なくとも1つの切削素子(5)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料部品を機械加工するための工具と、このような工具を備えた工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複合材料は多くの工業分野においてきわめて重要になってきた。当初主として航空と宇宙であった複合材料の用途分野は、現在では自動車、鉄道または娯楽産業(セールボード等)のようないろいろな部門に広がっている。
【0003】
航空部品工業では、機械加工が重要な方法である。この機械加工は製造部品の正確な寸法を得るのを助けるだけでなく、さもなければ変形が困難である材料から、複雑な部品を得ることを可能にする。
【0004】
複合材料に関して、部品のトリミング作業は最終表面処理で直接的に行われ、この場合、部品の厚さ内で1回または複数回の切り込みを行う機械加工工具が用いられる。必要な切り込み回数は厚さに依存する。
【0005】
しかしながら、複合材料のトリミングが部品の欠陥を生じることが分かった。このようにして得られる最終製品は、期待される機械的性質に達しない。繊維の折り曲げの増大によって生じるこのような欠陥は、「金属剥離(spalling)」と呼ばれる。品質管理のときに部品が排除されないと、このような欠陥は使用中の部品の破壊につながる。
【0006】
このような部品の厚さにおける切り込みの深さをチェックしないことによって生じるこのような機械加工工具の多少早い摩耗は、2回の切り込みの間で認められる。工具のこのような早すぎる摩耗は、工作機械と熟練した職人の行動を頻繁に停止する。工具の交換コストと、操作人の作業時間による生産性低下は、航空部品産業の経済的債務と両立できない。
【0007】
更に、複合材料部品を機械加工するために使用される従来技術の機械加工工具は、このような部品に穴または空所を形成することができない。
【0008】
このような機械加工工具で大きな寸法の板を切断することによって部品を機械加工することは、切断すべき第1部分に到達するためにこのような板の1つのエッジから開始する必要がある。機械は部品の切断開始点に直接行くことはできない。なぜなら、この切断開始点が板の座標である位置決めグリッド内でのその座標によって配置されるからである。
【0009】
従って、付加的な材料の切断は、板から部品を切断するために必要な時間を大幅に増大し、機械加工工具の早すぎる摩耗を伴う。
【0010】
複合材料の機械加工は、削り屑量を大幅に増大し、それに伴い複合材料部品のトリミング加工のための時間を減らす更に進んだ切削工具を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、設計および作業手順が簡単で、経済的で、このような工具の切り込み深さのチェックを行うことができ、切り込みを通じて深さが一定であり、そしてトリミング中部品の予備加工と仕上げ加工を同時に行う、複合材料部品を機械加工するための工具を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、部品の材料内に直接貫入することによって予備加工と仕上げ加工を同時に行うことができる機械加工工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的のために、本発明はほぼ円筒形の本体を備えた、複合材料部品を機械加工するための工具に関する。
【0014】
本発明に従い、本体は、主軸線を有し、直径がDの研磨部分と、直径がDの研削部分とを備え、この場合D<Dであり、研削部分は主軸線に対してセンタリングされている。更に、研削部分はその端部に、前記部品への工具の侵入を可能にする少なくとも1つの切削素子を備え、研削部分のこのような切削素子は逆截頭円錐形をした凹部である。
【0015】
このような機械加工工具の種々の特別な実施形はそれぞれ特有の利点を有し、この実施形のために多くの技術的組み合わせが可能である。
【0016】
−工具はその潤滑のための少なくとも1つの中央通路を備え、この中央通路は研削部分の外面に開口している。
【0017】
工具の潤滑が工具の本体の中央に配置されかつ切削素子の高さレベルで研削部分の端部に開口している通路によって行われると有利である。
【0018】
−中央通路は更に、研削部分の外面に開口する少なくとも1つの付属の溝に流体接続している。
【0019】
このような付属の溝は好ましくは、研削部分の外面を均一に潤滑するために、研削部分の幾つかの高さレベルに配置されている。使用される潤滑液は例えば切削油または乳濁液である。
【0020】
−研削部分は研削粒を有し、この研削粒の平均粒度は約300〜1000μmである。
【0021】
−研削部分は研削粒を有し、この研削粒の平均粒度は約100〜600μmである。
【0022】
研削粒の大きさは一般的に、研削粒の最も大きな直径によって決定される。勿論、このような研削粒平均粒度の周囲に粒度分布が存在する。それでもなお、粒度分布の一層重要な制御を行うことができるので、このようにして決定された研磨部分は複合材料部分の一層均一な仕上げを行う。
【0023】
−研磨部分は研削粒の間に空隙を有する。
【0024】
このような空隙の平均的な大きさは10〜500μmである。
【0025】
−研磨部分は工具の掴みを可能にする少なくとも1つの連続表面領域または非連続表面領域を有する。
【0026】
本発明は、切削工具を受け入れるための少なくとも1個の工具保持装置を備えた、複合材料部品のための工作機械に関する。
【0027】
本発明に従い、このような切削工具は上記のような工具である。
【0028】
添付の図を参照して本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本発明の特別な一実施の形態による複合材料部品を機械加工するための工具を示している。このような工具はほぼ円筒形の本体を有する。このような本体はその一端に、直径Dの研磨部分1を有し、他端に直径Dの研削部分3を有する。この研磨部分は主軸線2を有する。この場合D<Dである。研削部分3が上記主軸線2に対してセンタリングされているので、両部分の直径の差(D−D)/2は、工具の側方仕上げ加工厚さを決定する。
【0030】
本体のこれらの2つの部分1,3の間の直径の差によって生じる肩部は、トリミングすべき部品の厚さがどうであろうとも、工具の切り込みを一定の深さに保つことができる。
【0031】
更に、研磨部分1と研削部分3は、工作機械で工具を交換しないで、部品の予備加工と仕上げ加工を同時に行うことができる。本体は一体部品である。本体を金属、例えば鋼から作ると有利である。
【0032】
本体の研削部分3はその端部4に、部品内への工具の貫入を可能にする少なくとも1つの切削素子5を備えている。このような切削素子5は例えば複合材料部品に穴または凹部をあけることができる。
【0033】
切削工具5は研削部分3の端部に位置する逆截頭円錐形をした凹部によって形成されている。図2は部品6の材料内に貫入したこのような工具の断面を示している。工具は矢印7で示した貫入方向に右から左へ移動する。工具は材料内に入り込む切刃8を研削部分内に備えている。
【0034】
研削部分3はほぼ300〜1000μm、好ましくは400〜850μmの平均粒度を有する研削粒を備えている。
【0035】
このような研削粒が立方晶窒化ホウ素、単結晶ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、炭化物およびこれらの素子の組み合わせを含む郡から選択されると有利である。
【0036】
研削部分3の研削粒が多結晶ダイヤモンドである場合、これらの粒の付着は、電気めっきによって、ろう付け金属の付着またはろう付け多結晶ダイヤモンドの付着によってあるいは化学蒸着技術(CVD−Chemical vapour deposition)によるダイヤモンド層の付着を介して行うことができる。当業者に知られているこのような付着技術はここでは説明しない。
【0037】
直径Dを有する研磨部分1はほぼ100〜600μm、好ましくは250〜500μmの平均粒度を有する研削粒を備えている。
【0038】
研磨部分1のための研削粒はダイヤモンド、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムおよびこれらの素子の組み合わせを含む郡から選択可能である。
【0039】
研磨部分1の研削粒が多結晶ダイヤモンドの場合、このような粒の付着は、電気メッキによるダイヤモンドの付着によって行うことができる。
【0040】
研磨部分1は好ましくは、工具を工作機械の工具ホルダに取付けるためあるいは工具ホルダから取り外すために職人による工具の掴みを可能にする、図示しない少なくとも1つの連続面または非連続を有する。
【0041】
工具は更に、工具の本体の背後に位置する部分を有する。この部分の形状は、工具ホルダへの工具の挿入を可能にする。このような部分は、当業者に知られているすべての種類の連結部に取付けられるように、いろいろな方法で形成可能である。この場合、このような部分は修正円筒ハンドルを備えているので、工具はSAタイプ、クランプタイプまたは焼結タイプの連結ハンドルに有利に取付け可能である。
【0042】
研磨部分1の直径Dは好ましくは10〜32mm±10%であり、研削部分3の直径Dは直径Dよりも小さい。直径Dは例えば6〜28mm±10%である。
【0043】
このような直径の研削部分3と研磨部分1を有する工具に関して、截頭円錐部5は4〜24mm±10%の直径を有する底面11と、2〜20mm±10%の直径を有する上面12を備えている。切削素子のこのような形状寸法は工具の最大貫入角度を決定する。
【0044】
工具は研削部分3の外面に開口する中央通路9を有する。この中央通路は中央からの工具の液体冷却を可能にする。中央通路9は好ましくは、切削素子5の潤滑のために切削素子の高さレベルで研削部分3の端部4に開口している。中央通路9は研削部分3の外面に出口10を有する。
【0045】
図3は複合材料部品を機械加工するための工具の他の実施の形態を示している。図1の構成素子と同じ参照符号を付けた図3のこれらの構成素子は、同じ目的を有する。本体の研削部分3はその端部4に、部品への工具の貫入を可能にする切削素子5を備えている。研削部分3の外面の部分13はダイヤモンドで被覆されている。中央通路9は幾つかの高さレベルに配置され出口10で開口する付属の噴霧溝14〜20のセットに接続している。このような付属の噴霧溝14〜20は好ましくは、工具の外面、特にダイヤモンド被覆部分13に液体を均一に噴霧するように、研削部分3の本体内に分配されている。付属の噴霧溝14〜20において一定である常に十分な噴霧圧力が得られるように、中央通路9の直径は付属の噴霧溝14〜20の直径よりも大きくなっている。研磨部分1側における中央通路9の端部が加圧潤滑液供給システムに接続されていると有利である。このような加圧圧力は好ましくは、工具ホルダ/工具アセンブリを通る潤滑液の流れを確保するために、10バール以上である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
工具の中央からのこのような液体冷却は、工具の寿命が延び、従来技術の装置で知られているスケーリングが減少し、機械加工品質を守るためのこのような工具の切削速度が低下するという利点がある。
【0047】
多結晶ダイヤモンドエッジ(PCD)を有する切削工具を用いた技術と比べた、複合材料部品を機械加工するための本発明による工具によって得られる工具コスト/生産性の比として示した増幅率は、95〜98%のオーダーである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1a】複合材料部品を機械加工するための、本発明の実施の形態による工具の概略的に示す側面図である。
【図1b】複合材料部品を機械加工するための、本発明の実施の形態による工具の概略的に示す断面図である。
【図2】部品の材料内に貫入した研削部分を示す、図1の工具の部分断面図である。
【図3a】複合材料部品を機械加工するための他の実施の形態による工具の概略的を示す端部を切断して示す側面図である。
【図3b】複合材料部品を機械加工するための他の実施の形態による工具の概略的を示す機械加工工具の研削部分の端部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 研磨部分
2 主軸線
3 研削部分
4 研削部分の端部
5 切削素子
6 部品
7 矢印
8 切刃
9 中央通路
10 出口
11 底面
12 上面
13 被覆部分
14〜20 噴霧溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ円筒形の本体を有する、複合材料部品を機械加工するための工具において、
主軸線(2)を有し、直径がDの研磨部分(1)と、
直径がDの研削部分(3)とを備え、この場合D<Dであり、前記研削部分(3)が前記主軸線(2)に対してセンタリングされており、
前記研削部分(3)がその端部に、前記部品への前記工具の貫入を可能にする少なくとも1つの切削素子(5)を備え、
前記研削部分(3)の前記切削素子(5)が逆截頭円錐形をした凹部であることを特徴とする工具。
【請求項2】
工具がその潤滑のための少なくとも1つの中央通路(9)を備え、この中央通路が前記研削部分(3)の外面に開口していることを特徴とする請求項1に記載の工具。
【請求項3】
前記中央通路(9)が更に、前記研削部分(3)の外面に開口する少なくとも1つの付属の溝(14〜20)に流体接続していることを特徴とする請求項2に記載の工具。
【請求項4】
前記研削部分(3)が研削粒を有し、この研削粒の平均粒度が約300〜1000μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の工具。
【請求項5】
前記研削部分(3)が立方晶窒化ホウ素、多結晶ダイヤモンド、炭化物およびこれらの素子の組み合わせを含む郡から選択された研削粒を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の工具。
【請求項6】
前記研磨部分(1)が研削粒を有し、この研削粒の平均粒度が約100〜600μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の工具。
【請求項7】
前記研磨部分(1)が研削粒の間に空隙を有することを特徴とする請求項6に記載の工具。
【請求項8】
前記研磨部分(1)がダイヤモンド、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムおよびこれらの素子の組み合わせを含む郡から選択された研削粒を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の工具。
【請求項9】
前記研磨部分(1)が前記工具の掴みを可能にする少なくとも1つの連続表面領域または非連続表面領域を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の工具。
【請求項10】
工具が本体の背後に位置する部分を有し、この部分の形状が工具ホルダへの前記工具の挿入を可能にすることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の工具。
【請求項11】
前記研磨部分(1)の直径Dが10〜32mm±10%であり、前記研削部分(3)の直径Dが6〜28mm±10%であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の工具。
【請求項12】
前記円錐台が4〜24mm±10%の直径の底面(11)と、2〜20mm±10%の直径の上面(12)を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の工具。
【請求項13】
切削工具を受け入れるための少なくとも1個の工具保持装置を備えた、複合材料部品を機械加工するための機械において、前記切削工具が請求項1〜12のいずれか1項に記載の工具であることを特徴とする機械。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2009−513369(P2009−513369A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537079(P2008−537079)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067699
【国際公開番号】WO2007/048781
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(501446228)エアバス・フランス (93)
【Fターム(参考)】