説明

複合板

【目的】製造後の反りを生じにくい新規な構成の複合板を提供する。
【構成】奇数枚の単板11a〜11eからなる合板11の表面に繊維板12を配してこれらを積層接着一体化してなる複合板10において、合板において隣り合った単板同士の繊維方向が直交し、且つ、最表面側単板11aと最裏面側単板11eの繊維方向が複合板の長手方向と略一致しており、最表面側単板が最裏面側単板より厚く、繊維板と最表面側単板の厚さ合計が全体厚の50%未満である。第2単板と第4単板の厚さは略同一であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として住宅建築用の部材や家具、建具などの材料として使用される複合板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の複合板としては、たとえば、下記特許文献1に記載のものが知られている。この複合板は、針葉樹基材の表面に接着剤を介して、全体厚に対して約8〜17%であって且つ2mm以下の厚さの木質繊維板を載置した後、全体を熱圧することにより製造される。
【特許文献1】特許第2530952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
基材に木質繊維板を接着剤を介して重ね合わせ、熱圧により貼着すると、木質繊維板の表面が加熱され、その表面側の水分が放散するので、木質繊維板の表面側の含水率が低下する。木質繊維板は略等方性であるため、表面側の含水率が低下すると、裏面側を凸とする椀状の反りや変形が生ずることになるので、これを防止するために、上記特許文献1においては、木質繊維板の厚さを小さなものとしているが、反面、表面傷や凹みなどの損傷を受けやすくなり、また、平坦度が損なわれやすくなるなどの不利欠点が生じ、用途上の制約が大きくなる恐れがある。
【0004】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、製造後の反りが生じにくい新規な構成の複合板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するため、請求項1にかかる本発明は、奇数枚の単板からなる合板の表面に繊維板を配してこれらを積層接着一体化してなる複合板において、合板において隣り合った単板同士の繊維方向が直交し、且つ、最表面側単板と最裏面側単板の繊維方向が複合板の長手方向と略一致しており、最表面側単板が最裏面側単板より厚く、繊維板と最表面側単板の厚さ合計が全体厚の50%未満であることを特徴とする。
【0006】
請求項2にかかる本発明は、合板の第2単板と第4単板の厚さが略同一であることを特徴とする。
【0007】
本発明の複合板は、合板の表面に繊維板が貼着されてなり、主として住宅建築用の部材や家具、建具などの材料として使用される。
【0008】
本発明の複合板に用いる合板は、隣り合う単板の繊維方向が互いに直交するように奇数枚の単板を積層してなるものであり、3プライ、5プライ、7プライなどの奇数プライの合板として使用することができる。最表面側単板及び最裏面側単板は複合板の長手方向に略一致するように配される。合板を形成する各単板は、針葉樹単板であっても広葉樹単板であっても良く、これらを任意に組み合わせた合板を用いても良い。
【0009】
単板同士または単板と繊維板との間に介在させる接着剤は、ホルムアルデヒドの発散が少ない熱硬化性接着剤を用いることが好ましく、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂またはそれらの変性樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、合成ゴム系接着剤などから任意選択される一種または複数種を使用することが好ましい。
【0010】
繊維板は、複合板の用途によりミディアムデンシティファイバーボード(以下、MDFという。)やハードファイバーボードなどから選定することができ、その厚さは1.0〜4.0mmの範囲のものが好適に使用可能である。合板を形成する単板として針葉樹材を使用する場合、繊維板の板厚は比較的大きい(厚い)ものを使用し、たとえば2.5mmを超えるものを使用することができる。複合板の用途が床材以外であって表面への負荷が比較的小さいものである場合は、合板の単板として広葉樹材を使用して、その表面に比較的薄い繊維板を積層させることができ、たとえば1.5mm厚前後の繊維板も使用可能である。
【0011】
合板を形成する各単板及び繊維板の厚さについては、最表面側単板が最裏面側単板より厚いこと、及び、最表面側単板と木質繊維板の厚さ合計が複合板全体厚の50%未満であることが本発明の必須要件である。また、最表面側単板と最裏面側単板との間に挟まれた複数(奇数)枚の中間単板は厚さ方向において対称とする(5プライの合板の場合、表面から2枚目の単板と4枚目の単板の厚さを同一とする)ことが好ましい。これらの理由については後述する。
【0012】
本発明の複合板の製造方法は任意であり、奇数枚の単板及びその上に繊維板を順次に積層したものを一回の熱圧で成形する方法(ワンショット法)、単板からあらかじめ形成した合板の上に繊維板を配して熱圧接着する方法(練り合わせ法)などを採用することができる。熱圧は、たとえば、表面が平坦な上下二つの熱圧盤の間に積層体を挟んで熱圧プレスすることによって行い、熱圧条件としては、たとえば熱圧圧力:8〜20kgf/cm、熱圧盤温度:110〜150°C、熱圧時間:1〜10分であり、具体的条件の一例は熱圧圧力:10kgf/cm、熱圧盤温度:125°C、熱圧時間:5分である。熱圧されたままの繊維板の表面は、不要な凹凸や傷などがあるので、サンダーやプレーナーなどにより表層を削って平滑化すると良い。また、同一厚さの最表面側単板及び最裏面側単板を含む奇数枚の単板を用いて上記ワンショット法や練り合わせ法などで成形した後に最裏面側単板をサンダーやプレーナーなどで削ってその厚さを減少させる製造方法を採用しても良い。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明によれば、単板の積層体である合板と繊維板を組み合わせて用い、且つ、合板における各単板及び繊維板が前述の繊維方向及び厚さ関係の要件を満たすことによって、各単板が繊維方向と直交する方向に収縮膨張しようとする動きを互いに拘束し打ち消し合う作用が発揮され、さらに、合板の最表面側単板が最裏面側単板より厚いものとされているので、後述するように、熱圧後に解圧したときに、その長手方向においても短手方向においても、複合板の上反り及び下反りに対して拮抗した影響を与え、結果として複合板の反りを実質的に防止する作用を果たす。さらに、合板を長手方向及び短手方向の両方向に折り曲げようとする負荷に対する曲げ強度にも優れ、表面に繊維板が配されることから表面平滑性、色調の均質性、硬さなどにも優れた複合板が得られる。
【0014】
請求項2に係る本発明によれば、合板における第2単板と第4単板の厚さが略同一とされているので、解圧後の反りの発生をより効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の一実施例による複合板10を長手方向Xに直交する垂直面で切断したときの断面図であり、図2はこの複合板10を短手方向Yに直交する垂直面で切断したときの断面図である。この複合板10における合板11は、隣り合った単板同士が互いに直交する繊維方向を持つように積層された5プライの合板であり、第1単板(最表面側単板)11a、第3単板11c及び第5単板(最裏面側単板)11eの繊維方向は複合板10の長手方向Xに略一致しており、第2単板11bと第4単板11dの繊維方向は複合板10の短手方向Yに略一致している。合板11の表面には繊維板(MDF)12が積層され、合板11における各単板11a〜11e同士及び第1単板11aとMDF12が接着剤により一体化されて複合板10を形成している。図示しないが、MDF12の表面には化粧シート貼着や塗装などによる化粧が施され得る。複合板10の大きさは、製品寸法でたとえば幅W=303mm、厚みT=12mm、長さL=1818mmである。この寸法は製品寸法であるので、熱圧による圧縮代や削り代を予め考慮して製造される。
【0016】
この実施形態において、合板11における各単板11a〜11eの厚さt1〜t5は、t1=1.5mm、t2=2.25mm、t3=1.5mm、t4=2.25mm、t5=1.2mmである。すなわち、t1>t5であり、かつ、t2=t4の関係を満たしている。また、MDF12の厚さT=3mmであって、MDF12と第1単板11aの合計厚(T+t1=4.5mm)が複合板10の全体厚(T+t1+t2+t3+t4+t5=11.7mm)の50%未満となっている。また、複合板10全体としての厚さ中心Zは第2単板11bの厚さ範囲内にある。
【0017】
このような複合板10は後述するような方法により熱圧成形されるが、熱圧後に解圧すると、繊維方向が長手方向Xに略一致している第1単板11a、第3単板11c及び第5単板11eは短手方向Yに大きく収縮しようとする。これに対して、繊維方向が短手方向Yに略一致している第2単板11b及び第4単板11dは長手方向Xに大きく収縮しようとする。また、繊維方向が無方向性であるMDF12は長手方向X及び短手方向Yに収縮しようとするが、その収縮率は単板が繊維方向と直交する方向に収縮しようとする収縮率に比べれば小さい。また、収縮が複合板10全体の反りに対して与える影響は、複合板10の厚み中心からの距離が遠いほど大きくなる。
【0018】
これらを前提として、複合板10の短手方向Yにおいて解圧後の収縮が複合板10の反りに対して与える影響について検討すると、長手方向Xに沿う繊維方向を持つ第3単板11cは短手方向Yの収縮率が大きいものの、複合板10全体としての厚さ中心Zに比較的近い位置にあるため複合板10の反りに対する影響は小さく、また、第2単板11bと第4単板11dは短手方向Yに沿う繊維方向を持つため同方向の収縮率は小さい。第1単板11aと第5単板11eは、それらの厚さ関係が前述のようにt1>t5であることから、第1単板11aの収縮の方が大きく、合板としては下反り(下方に凸となる反り)の影響を受けるが、第1単板11aの表面に積層貼着されているMDF12が第1単板11aの収縮を抑制するように作用する。結果として、MDF12と第1単板11aを合わせた積層部分の収縮が第5単板11eの収縮と拮抗し、バランスの取れたものとなって、複合板10の反りを無視できる程度に抑制することができる。
【0019】
次に、複合板10の長手方向Xにおいて解圧後の収縮が複合板10の反りに対して与える影響について検討すると、第3単板11cは長手方向Yの収縮率が小さく且つ厚さ中心Zに比較的近い位置にあるため複合板10の反りに対する影響はほとんど無視することができ、また、第2単板11bは短手方向Yに沿う繊維方向を持つため長手方向Xの収縮率は大きいが、複合板全体の厚さ中心Zに近いため反りに対する影響は大きくない。さらに、第1単板11aと第5単板11eは長手方向Xの繊維方向を持つため同方向の収縮率は本来的に小さい。そして、短手方向Yに沿う繊維方向を持つ第4単板11dが収縮して複合板10を上反りさせようとする影響と、MDF12の収縮による下反りの影響が拮抗してバランスが取れたものとなるため、複合板10の反りを無視できる程度に抑制することができる。
【0020】
したがって、複合板10においては、熱圧後に解圧したときに、その長手方向Xにおいても短手方向Yにおいても、上反り及び下反りが抑制されたものとなる。
【0021】
この複合板10の製造方法について図3〜図5を参照して説明する。
【0022】
図3に示す第1の製造方法は、いわゆるワンショット法であり、MDF12及び合板11を形成する各単板11a〜11eの最終(仕上げ)厚さT、t1〜t5に対して熱圧の圧縮代を見込んだ厚さT‘、t1’〜t5’の各板を準備し、熱硬化性接着剤を介して積層して積層体13を形成する。この積層体13を熱圧プレスの下側熱盤14上に載置し、上側熱盤15との間において一回の工程(ワンショット)で熱圧して、MDF12及び各単板11a〜11eの最終厚さがT〜t5となるように成形して、複合板10を製造する。
【0023】
図4に示す第2の製造方法は、いわゆる練り合わせ法であり、厚さt1〜t5の各単板11a〜11eからなる合板11をあらかじめ形成または準備した後、この合板11上に厚さTのMDF12を熱硬化性接着剤を介して積層して熱圧接着して、複合板10を製造するものである。
【0024】
図5に示す第3の製造方法は、合板11を形成する第5単板11dとして最終厚さt5に熱圧後の削り代分Δtを見込んだt5‘’=t5+Δtの厚さのもの(たとえばt5‘’=t1)を用いて積層体13‘とし、これを図3に示すと同様にしてワンショットで熱圧して成形体16を得る。得られた成形体16は、合板11として表裏の収縮バランスが取れたものにMDF12が積層一体化された構成を有しているため、第1単板11aの収縮をMDF12が抑制する作用を果たし、第5単板11eの収縮の方が大きくなって収縮バランスが崩れ、解圧直後に上反りが生ずる(同図(b))。これを是正するために、第5単板11eの裏面を所期の削り代分Δtだけ削ってその厚さをt5(<t1)とすることでその収縮の影響を低下させ、表裏バランスが取られた反りのない複合板10となる。なお、この製造方法はワンショット法を前提として説明したが、図4に示す練り合わせ法において第5単板の厚さを熱圧後の削り代分Δtを見込んでt5‘’=t5+Δtとして成形体16を得た後に、削り代分Δtだけ削ってその厚さをt5(<t1)として複合板10を製造しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態による複合板を長手方向と直交する垂直面で切断したときの断面図である。
【図2】この複合板を短手方向と直交する垂直面で切断したときの断面図である。
【図3】この複合板の第一の製造方法を示す説明図である。
【図4】この複合板の第二の製造方法を示す説明図である。
【図5】この複合板の第三の製造方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
10 複合板
11 合板
11a 第1単板(最表面側単板)
11b 第2単板
11c 第3単板
11d 第4単板
11e 第5単板(最裏面側単板)
12 MDF(繊維板)
13,13‘ 積層体
14 下側熱圧盤
15 上側熱圧盤
16 成形体
X 複合板の長手方向
Y 複合板の短手方向
T MDFの厚さ
t1〜t5 第1〜第5単板の厚さ(最終厚さ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
奇数枚の単板からなる合板の表面に繊維板を配してこれらを積層接着一体化してなる複合板において、合板において隣り合った単板同士の繊維方向が直交し、且つ、最表面側単板と最裏面側単板の繊維方向が複合板の長手方向と略一致しており、最表面側単板が最裏面側単板より厚く、繊維板と最表面側単板の厚さ合計が全体厚の50%未満であることを特徴とする複合板。
【請求項2】
合板における第2単板と第4単板の厚さが略同一であることを特徴とする、請求項1記載の複合板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−205634(P2006−205634A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23034(P2005−23034)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(390030340)株式会社ノダ (146)
【Fターム(参考)】