説明

複合構造体およびそれを用いたフィルター

【課題】消臭、抗菌性能に優れ、有害物質を効率よく除去する複合構造体及びそれからなるフィルターを提供する。
【解決手段】極細繊維と繊維構造体とが積層してなる複合構造体とし、該極細繊維の直径を1〜1000nm、該繊維構造体を構成する繊維の直径を1〜100μmとし、かつ該複合構造体に光励起により物質を分解する無機材料を担持させる。また、上記複合構造体を用いたフィルターとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は極細繊維と繊維構造体とが積層してなる複合構造体およびそれを用いたフィルターに関するものである。また、室内の空気や排水中に含まれる有害化学物質を除去するフィルター、マスクなどに好適に使用できる複合構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、消臭、抗菌機能を繊維布帛に付与するため、光触媒層を設けたものが提案されている(例えば、特許文献1など)。
【0003】
これに対し市場においては高いレベルの消臭、抗菌機能の求められており、また、有害物質を効率よく除去したいといった要求が出ている。しかしながら、従来、こうした光触媒を担持させる基材としてはポリエステルなどの汎用の合成繊維からなる織物や不織布が用いられており、これらに担持可能な光触媒量に限界があり、有害化学物質を除去するフィルターやシートなどの用途に使用する場合、その性能が十分に発揮されないという欠点がある。
【特許文献1】特開平10−1879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記背景技術の有する問題点を解決し、消臭、抗菌性能に優れ、有害物質を効率よく除去する複合構造体及びそれを用いたフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ナノレベルの極めて細い繊度の極細繊維を積層した繊維構造体に光励起により物質を分解する無機物質(光触媒)を該極細繊維に担持させ、これをフィルターなどとして用いたとき、従来にない優れた抗菌消臭性能を発揮し、しかも効率よく有害物質を除去できることがわかった。
【0006】
かくして本発明によれば、極細繊維と繊維構造体とが積層してなる複合構造体であって、該極細繊維の直径が1〜1000nm、該繊維構造体を構成する繊維の直径が1〜100μmであり、かつ該複合構造体に光励起により物質を分解する無機材料が担持されていることを特徴とする複合構造体が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、上記の特定の繊度を有する極細繊維と繊維構造体とが積層された構造が有害物質を吸着させながら分解するのに適しており、特に比表面積の極めて大きい極細繊維に光触媒が担持されていることによってガス状有害物質などを該複合構造体に流した際、接触効率が極めて高くため、効率よく有害物質を分解することができる。これにより、本発明の複合構造体は、優れた抗菌、消臭効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の複合構造体は、極細繊維と繊維構造体とが積層してなる複合構造体である。本発明においては、極細繊維の直径が1〜1000nm、繊維構造体を構成する繊維の直径が1〜100μmであり、しかも複合構造体に光励起により物質を分解する無機材料(光触媒)が担持されていることが肝要である。このように、特に比表面積の極めて大きい極細繊維に光触媒が担持されていることによってガス状有害物質など該複合構造体これに流した際、接触効率が高くなり、効率よく有害物質を分解することができる。また、上記のように極細繊維と繊維構造体との積層された構造は、有害物質を吸着させながら分解するのに適しており、しかも圧力損失の低下が少なく高い通気性を長時間維持できるといったメリットも有している。
【0009】
よって、本発明においては、極細繊維の単繊維の直径が1〜1000nm、好ましくは10〜800nmである必要がある。上記の単繊維の直径が1nm未満の場合は、複合構造体の強力が低下し、一方、単繊維の直径が1000nmを超える場合は、本発明の目的とする高い消臭、抗菌性能などの機能が得られない。
【0010】
また、極細繊維の目付を0.001〜1.0g/m、好ましくは0.001〜0.5g/mとするのが望ましい。0.001g/m未満では、繊維構造体表面に一様に極細繊維を被覆するのが難しくなる傾向にあり、一方、0.5g/mを超えると、十分な通気性が得られなくなる傾向にある。
【0011】
なお、本発明の複合構造体をフィルターに用いる場合は、それを設置するフィルターユニットの構造に応じて極細繊維の目付を適宜変えることができる。具体的には、図1に示すような複合構造体表面に対し、垂直(複合構造体の断面方向)にガス状有害化学物質を流す垂直流ユニットに用いる場合、十分な通気性を確保し、圧力損失を小さくするために、極細繊維の目付を0.001〜0.1g/mの範囲とするのが好ましい。一方、図2に示すような複合構造体表面に対し、平行(複合構造体表面方向)にガス状有害化学物質を流す平行流ユニットに用いる場合、ガス状有害化学物質と複合構造体の接触効率を向上させるため、極細繊維の目付を0.001〜0.5g/mの範囲とするのが好ましい。
【0012】
上記極細繊維は、1種あるいは2種以上のポリマーから、エレクトロスピニング法により形成されるものが好ましい。なお、このエレクトロスピニング法については、後で詳しく述べる。
【0013】
本発明において、極細繊維を構成するポリマーとして上記エレクトロスピンニング法などにより前述した繊度の極細繊維とすることができるものであれば良い。特に、成形性やフィルターなどと実用化できるだけでなく、耐熱性などのさらなる他の性能を付与できる点でアクリロニトリルや、芳香族ポリアミド、特にポリメタフェニレンイソフタルアミドを主成分とする芳香族ポリアミドが好ましい。
【0014】
次に、本発明において使用する繊維構造体とは、織編物、不織布、紙状物などをいう。また、上記繊維構造体を構成する繊維としては、木綿、麻などの天然繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維などの無機繊維、及び、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアクリロニトリル繊維などの合成繊維を挙げることができ、複合繊維構造体により高い耐熱性、耐薬品性が必要とされる場合は無機繊維や、合成繊維では芳香族ポリアミド繊維がより好ましい。
【0015】
また、前述したようにポリアクリロニトリル系重合体の極細繊維の場合は、これを積層する繊維構造体として1000℃以上の耐熱性を持つ耐熱繊維、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維などを選択するにより、これらを積層した後で1000℃以上での焼成することが可能となり、ポリアクリロニトリル極細繊維を炭素化して、ガス状有害化学物質などの吸着性能をさらに向上した複合構造物とすることができる。
【0016】
上記の繊維構造体を構成する繊維の直径は、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは3〜50μmである。上記の繊維の直径が1μm未満では、繊維構造体全体が、目が詰まった構造となりやすく十分な通気性が得られにくくなり、抗菌、消臭効果も低下する傾向にある。一方、100μmを超えると、繊維間空隙が大きくなり、捕集対象粒子の繊維への衝突機会の減少により、捕集効率や、抗菌、消臭効果も低下する傾向にある。
【0017】
また、上記の繊維の形状としては、短繊維糸条、長繊維糸条、スプリットヤーン、テープヤーンなどのいずれの形状であってもよい。
【0018】
本発明においては、上記複合構造体の極細繊維に、光励起により物質を分解する無機材料が担持されている必要がある。ここで、光励起により物質を分解する無機材料とは、TiO、ZnO、SnO、SrTiO、WO、Bi、Feなどから選ばれる無機材料であって、紫外光や可視光により光励起作用を発現するものをいう。
【0019】
また、本発明において、上記無機材料を極細繊維の表面に担持させるためのバインダーとしては、シリコン原子に結合された有機基の少なくとも一部が水酸基に置換されたシリコーン樹脂であることが好ましい。上記シリコーン樹脂とは、オルガノアルコキシシランとして、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、フェニルメチルジイソプロポキシシランなどやそれらの混合物が例示される。
【0020】
上記該光触媒の担持量は、複合構造体の重量に対して、0.1〜10重量%、好ましくは4〜8重量%である。0.1重量%未満では、ガス状有害化学物質を吸着分解する能力が不十分であり、一方、10重量%を超えると、過剰な光触媒により繊維間空隙がつぶれ易く、フィルターとした際、圧力損失が大きくなるといった問題が起こりやすい。
【0021】
以上に説明した複合構造体を製造する方法としては、次の方法を採用することができる。すなわち、繊維構造体に極細繊維を積層する方法としては、前述したエレクトロスピニング法を好ましく採用することができる。エレクトロスピニング法とは、ポリマー溶液に高電圧を印加することによって、溶液をスプレーし、極細繊維を形成させるものである。極細繊維の太さは、印加電圧、溶液濃度、スプレーの飛散距離に依存する。基板上に連続的に極細繊維を作製することによって、立体的な網目を持つ三次元構造の薄膜が得られる。例えば、これまで研究されてきた機能性薄膜を三次元構造にすることで、新しい特性や機能の向上が期待される。また、この方法により、膜を不織布などの布帛のように厚くすることが可能であり、サブミクロンの網目を持つ不織布を製造することができる。
【0022】
具体的には、ポリアクリロニトリルを主成分とするポリマーの粉末状体を溶媒N,N−ジメチルホルムアミドに0.1〜20重量%の重量比で溶解させ、印加電圧0.1〜30kVの範囲のうち最適な条件を選択して繊維構造体上に紡糸することにより得ることができる。
【0023】
ここで、上記ポリアクリロニトリルを主成分とするポリマーの粉末状体を溶解させる溶媒は、沸点が低く極性の高い溶媒が好適である。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルカプロラクタム、N−メチルビペリジンなどが例示されるが、好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミドを選択する。
【0024】
また、ポリマー濃度(粘度)についても、粘度を下げるために低濃度にすると、帯電するポリマーの絶対量が減り、ポリマーの帯電量減少により溶液の変形が起こりにくくなるため、極細繊維が形成されずにフィルム状になる。逆に高濃度にすると、ポリマー帯電量増加により、容易に極細繊維を形成可能だが、溶媒量が減り、蒸発速度が早まる為に固化が急速に進み、繊維径が大きくなる。
【0025】
以上のことを考慮し、ポリアクリロニトリル極細繊維の作製においては、溶媒はN,N−ジメチルホルムアミドを選択し、ポリマー濃度を10〜15重量%とするのが好ましい。
【0026】
また、他の例として芳香族ポリアミド極細繊維の場合は、ポリメタフェニレンイソフタルアミドを主成分とする芳香族ポリアミドを溶媒に0.1〜20重量%の濃度で溶解させた溶液に1〜50kVの電圧を印加して紡糸し芳香族ポリアミド極細繊維を成形し、これを繊維構造体上に積層させる方法が好ましく採用される。
【0027】
上記の芳香族ポリアミド繊維を溶解させる溶媒は、沸点が低く極性の高い極性溶媒が好適である。例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチル尿素、N−メチルカプロラクタム、N−メチルビペリジンなどが例示され、特にN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0028】
また、アルカリ金属塩を溶液に添加することにより、帯電し易くなり、紡糸状態が非常に安定する。アルカリ金属塩は、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムなどが例示されるが、特に塩化リチウム、塩化カルシウムが好ましい。上記のアルカリ金属塩の添加量としては、溶媒の重量に対して0.1〜1.0重量%が好ましい。
【0029】
極細繊維には、ガス状有害化学物質との接触機会を向上させるため、繊維表面に微細孔を持たせてもよい。また、かかる観点から、極細繊維を不織布状に積層する際、エレクトロスピニングの製糸条件を選んで嵩高な構造にすることが好ましい。
【0030】
さらに、得られた複合繊維に光触媒を、前述したバインダーを介して複合構造体、特に極細繊維に担持させる方法としては、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、ディップコーティング法の他公知のコーティング法等が例示できる。特に、極細繊維表面に均一に光触媒を塗布するには、ディップコーティング法が好ましい。また、該光触媒層の厚みは濃度によって調整でき、極細繊維複合フィルターの目付に応じて調整する。さらに、使用する光触媒は、一次粒子の平均径が0.1μm以下のものが好ましく、光触媒溶液の最適濃度は、1〜4重量%の範囲が好ましい。
【0031】
かくして得られた複合構造体は、室内空気清浄用フィルター、排水浄化用フィルターなど大気中および水中に含まれる有害化学物質の吸着分解を必要とする用途に使用することが望ましい。フィルターなどに付着した有害化学物質は吸着するだけでは大気中および水中から完全に除去することができないため、吸着をさせながら同時に分解もしなければならないが、本発明の複合構造体は、極細繊維と繊維構造体とが積層されていることにより、ガスの吸着と分解が容易に起こることがわかった。
【0032】
また、光触媒の酸化還元反応によるガス状有害化学物質の分解能力においては、一般的フィルターなど使用される繊維に比べ、たとえ極細繊維の積層量が少量であっても、光触媒の担持量が増加し、比表面積が大きくなることで光触媒活性が著しく高くなり、分解効率が格段に向上する。例えば、アンモニアガスを処理した場合に生成、発生する一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)などの窒素酸化物(NO)やフィルターより検出されるアンモニウムイオン(NH4)、硝酸イオン(NO3)の濃度を測定した場合、極細繊維を積層したフィルターは、高い分解能力を示す。
【実施例】
【0033】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例における各物性は以下の方法により求めたものである。
【0034】
有害化学物質としてアンモニアガス(下記、実施例1及び比較例1では10ppm、実施例2及び比較例2では100ppm)を図1、図2に示す複合構造体を設置するフィルターユニット内をガス風量5.0L/分にて流し、紫外線ランプ(強度2mW/m)を照射しながら、評価装置内のガス排出口側のガス濃度を一定時間ごとに測定した。アンモニアガス濃度、NO濃度についてはガス検知管を用い、同時に、分解の進行度を確認するため、試験後のフィルターに残存する分解生成物(アンモニウムイオン(NH4)、硝酸イオン(NO3))をイオンクロマトグラフィーにて測定した。また、アンモニアの除去性能については、次式を用いて除去率として算出した。一定時間経過後の除去率が高い程、性能が優れていると言える。(表1及び3)
(除去率)=[1−(一定時間後のアンモニア濃度/初期アンモニア濃度)]×100
さらに、ガス検知管による測定結果及びイオンクロマトグラフィーによる測定結果から分解の進行度を窒素のマスバランスとして算出した。(表2)
【0035】
[実施例1]
ポリエステル繊維不織布(繊維径25μm、目付11.2g/m)表面にポリアクリロニトリルを主成分とするポリマーの粉末状体と溶媒N,N−ジメチルホルムアミドとを11:89の重量比で溶解させたポリマー溶液を調製し、エレクトロスピニング法にて印加電圧20kV下で繊維径が約200nmのポリアクリロニトリル極細繊維を目付0.5g/m積層させ、複合構造体(目付11.7g/m)を作製した。この複合構造体に、イソプロピルアルコールとメタノールの混合溶媒(重量比50/50)と4%光触媒二酸化チタンスラリー溶液(パルチタン3607;日本パーカライジング(株)製)を50/50で混合して作製した溶液を5.5重量%塗布し、光触媒を担持させた複合構造体(目付12.4g/m)を作製した。
【0036】
次いで、図1に示すような複合構造体表面に対し、垂直(複合構造体断面方向)にガス状有害化学物質を流す垂直流ユニット、および、図2に示すような複合構造体面に対し、平行(複合構造体表面方向)にガス状有害化学物質を流す平行流ユニットに上記の光触媒を担持させた複合構造体を4枚(20cm角)設置し、ガス分解性能試験を実施した。結果を表1及び2に示す。
【0037】
[比較例1]
ポリアクリロニトリル極細繊維を積層しない以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル繊維不織布にイソプロピルアルコールとメタノールの混合溶媒と、4%光触媒二酸化チタンスラリー溶液混合して作製した溶液を塗布し、光触媒を担持させた不織布を作製した。次いで、実施例1と同様にしてこの不織布のガス分解性能試験を実施した。結果を表1及び2に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
[実施例2]
ポリエステル繊維不織布(繊度0.2dtex:0.3dtex:1.2dtex=35:50:15の混率、目付7.5g/m)表面にポリメタフェニレンイソフタルアミドを主成分とする粉末状体と塩化リチウム、溶媒N,N−ジメチルアセトアミドを10:89:1の重量比で溶解させたポリマー溶液を調製し、エレクトロスピニング法にて印加電圧20kV下で繊維径が65nmの芳香族ポリアミド極細繊維を目付0.5g/m積層させ、複合構造体(目付8.0g/m)を作製した。得られた複合構造体に、イソプロピルアルコールとメタノールの混合溶媒(重量比50/50)と4%光触媒二酸化チタンスラリー溶液(パルチタン3607;日本パーカライジング(株)製)を50/50で混合して作製した溶液を1.0g/m塗布し、光触媒を担持した複合構造体を作製した。次いで、図1に示すような複合構造体表面に対し、垂直(複合構造体断面方向)にガス状有害化学物質を流す垂直流ユニットに上記の光触媒を担持した複合構造体を4枚(20cm角)設置し、ガス分解性能試験を実施した。結果を表3に示す。
【0041】
[比較例2]
芳香族ポリアミド極細繊維を積層しない以外は、実施例2と同様にして、ポリエステル繊維不織布にイソプロピルアルコールとメタノールの混合溶媒と、4%光触媒二酸化チタンスラリー溶液を混合して作製した溶液を塗布して、光触媒を担持した不織布を作製した。次いで、実施例2と同様にしてこの不織布のガス分解性能試験を実施した。結果を表3に示す。
【0042】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明においては、前述した特定の直径を有する極細繊維と繊維構造体とが積層された構造が、有害物質を吸着させながら分解するのに適しており、特に比表面積の極めて大きい極細繊維に光触媒が担持されていることによってガス状有害物質などを該複合構造体に流した際、接触効率が極めて高く、効率よく有害物質を分解することができる。これにより、本発明の複合構造体は優れた抗菌、消臭効果を発揮し、フィルター、マスクなどに好ましく用いることができる。特に、上記繊維構造体を用いたフィルターとしたとき、従来にない極めて高い抗菌、消臭性能を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】フィルターのガス分解性能を評価する垂直流ユニット装置の一例を示す概略図である。
【図2】フィルターのガス分解性能を評価する平行流ユニット装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0045】
1:UVランプ
2:光触媒担持複合構造体
3:試験ガス封入口
4:試験ガス排出口
5:ガス流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極細繊維と繊維構造体とが積層してなる複合構造体であって、該極細繊維の直径が1〜1000nm、該繊維構造体を構成する繊維の直径が1〜100μmであり、かつ該複合構造体に光励起により物質を分解する無機材料が担持されていることを特徴とする複合構造体。
【請求項2】
繊維構造体の目付が0.001〜1.0g/mの範囲である請求項1記載の複合構造体。
【請求項3】
無機材料の担持されている量が複合構造体の重量に対して0.1〜10重量%である請求項1記載の複合構造体。
【請求項4】
極細繊維がポリアクリロニトリル系重合体からなる極細繊維である請求項1記載の複合構造体。
【請求項5】
極細繊維がポリメタフェニレンイソフタルアミド系芳香族ポリアミドからなる極細繊維である請求項1記載の複合構造体。
【請求項6】
請求項1〜5の複合構造体を用いたフィルター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−15202(P2007−15202A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198489(P2005−198489)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】